平成18年第4回定例会 一般質問

平成18年12月8日(金)

特別区の財政的自立を進めよ
私学の独自性・自主性尊重を

柿沢 未途(民主党)
■都区のあり方
 
質問1
 特別区の再編については、平成十四年の第一回定例会で、私もパネルを出して質問させていただきました。
 その後、主要五課題をめぐる都区協議の結果として、都と区が合同で都区のあり方を検討する都区のあり方に関する検討会が設置されることになり、先月十四日には議論の取りまとめが公表されています。その中では、再編を含む区域のあり方について議論が必要であるということが明記されており、いよいよ特別区の再編が公式の議題として都区の間で議論されることとなりました。
 さらに、都が昨年十月に設置した東京自治制度懇談会の「議論のまとめ」でも、大都市経営の制度論の一環として、都区制度の見直し、特別区の規模、区域の見直しがうたわれたところであります。
 そのような状況の中、特別区の再編について、日本経済新聞が連載記事で特集を組むなど、にわかに大きな注目が集まるようになってきました。その連載の中では、私が掲げた構想が取り上げられたり、また、横山副知事へのインタビューの中では、都が特別区再編の試案を示すこともあり得ると、踏み込んだ発言も紹介をされております。
 石原知事もかねてから、二十三区の現在の区割りが合理的なものだとは思わないという発言をこれまで繰り返し行ってまいりました。半ばお蔵入りにはなっていますけれども、かつては予算特別委員会の答弁で、都が二十三区の一番合理的な統廃合の素案のようなものを示して、それをたたき台とするという考えを示したこともありました。
 そこで、都区検討会の議論、東京自治制度懇談会のまとめを踏まえて、区割りや権限、財源の配分を含めて、特別区の今後のあり方をどのように考えているか、石原知事の基本認識を伺います。


答弁1
 ▼知事
 特別区は、基礎的な自治体としてこれまで以上に地域の事務を担い、みずからの責任で行政のサービスを行う必要があると思います。
 特別区がこうした役割を果たすには、都からの事務移管をさらに進め、これに見合った権限や財源を持つべきでありますが、各区の行財政規模にかなりの格差があるなど、現状の区割りのままでは、その役割を十分に果たすことはまことに困難であります。
 このため、この六十年間変わっていない特別区の区割りを抜本的に見直す必要があると思います。
 既に都区間で、区域を初め都区のあり方の議論が始まっておりまして、今後、根本的かつ発展的に議論を行っていきたいと思っております。しかし、これは論ずるにはやすいのですが、いざ実際に区分をし直すことになると極めて難しい問題でありまして、ゆえにも、さらに多角的な検討というものが必要だと思います。



 
質問2
 都区財政調整制度について伺います。
 都区のあり方に関する検討会の取りまとめ結果では、大都市の一体性確保のために都が行う必要のある事務を除いて、特別区への事務移管をさらに進めるべきと記されています。私たち民主党も、東京政策二〇〇五の中で、特別区を再編成し、市として自立する自治制度改革を進めていきますと、特別区の自立を進める方向性を明記しております。
 しかし、現在の区割りのまま例えば市になろうとすれば、財政的に立ち行かなくなる区が出てくることは必定です。
 都区はその財政的不均衡を是正するために都区財調を行っているわけですが、そもそも国に対して地方交付税制度の見直しを求めている都が、その内側に地方交付税制度に似た水平的な財政調整の制度を抱えているのは、自己矛盾ともいえるのではないかと思います。特別区が基礎的自治体として真に自立をして行政運営を行っていくためには、特別区財政調整交付金への依存度を低め、調整三税の税源移譲も含めて、区の財政的自立を進めていくべきと考えますが、所見を伺います。


答弁2
 ▼総務局長
 特別区間には税源の大きな偏在がありますことから、今後とも財政調整は必要と考えております。同時に、住民に対し第一義的な責任を負う特別区は、財調交付金に過度に依存することなく、行政サービスを主体的に提供していくべきであります。
 なお、都区のあり方に関する検討会におきまして取りまとめられておりますように、都区財政調整制度を含む税財政制度は、事務配分や区域の議論を踏まえて最終的に整理すべきものであると考えておりまして、今後、都区間で議論を積極的に進める中で、都区財政調整制度のあり方につきましても十分に検討を行ってまいります。
 
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■私立学校への対応
 
質問1
 私学への指導について質問します。
 きのうの代表質問でも取り上げられておりましたが、私立学校の現場では、さまざまな創意工夫による教育活動が行われています。私自身も私立の麻布という中学、高校の出身であって、いいか悪いかはわかりませんが、私のこの性格は麻布の教育を受けなければ生まれなかったと人にはよくいわれます。
 ほとんどの生徒が高校に進学する時代になってきている今、高校へはさまざまな学力や価値観を持った生徒が入学してきます。画一的な基準で、個々の生徒の能力に配慮しない一律的な教育では、生徒に豊かな知識と経験を身につけさせることはできません。
 例えば、中には、数学でいえば分数や小数もわからない生徒も入学してくる場合もあります。その生徒に対して、しゃくし定規に高校段階の数学を教えることが本当にその生徒のためといえるでしょうか。帰国したばかりの帰国子女を受け入れる場合もあります。小さいころから海外生活を送り、半ば英語を母国語として育ったその生徒に、あえて初歩の英語の授業を受けさせて、そして進んだ国語の授業を受けさせることが、果たしてその生徒の能力を伸ばす教育といえるでしょうか。
 このような生徒の個々の事情に合わせて柔軟性を持った対応を行うことによって、他の生徒についていけない、学校に適応できない、こういった悩みを持つことも少なくなり、結果的に不登校の生徒なども少なくなるはずです。
 このように、私学では、昔から生徒の学力や生活態度を見ながら、創意工夫を凝らし、独自性のある、きめ細やかな教育を行ってきています。これは、私学の自主性、独自性が尊重されることがあって初めて可能となることです。私立学校が全高校の半数以上を占めている東京においては、そうした個性ある私学の教育が東京の豊かな教育を支えているといっても過言ではありません。
 文部科学省は、学習指導要領は、公立学校同様、私学にもすべて適用されるとしています。しかし、国は、先ほど私が述べたような実態を踏まえた上で、学校現場や生徒に何が一番大切なのかということを考慮して、私学の自主性、独自性と学習指導要領のあり方について議論すべきなのではないかと考えます。
 都においても、この私学の教育の独自性、自主性を尊重しなければならないと考えますが、知事の見解を伺って、次の質問に移ります。



答弁1
 ▼知事
 私立学校は、生徒の個性や能力に応じて創意工夫に基づいた教育を実践しておりまして、それが私立学校のすぐれた点であると思います。それぞれの学校では、独自の校風と長い歴史の中で培われてきた伝統がありまして、生徒、保護者もそれを望んで入学しているわけであります。
 今後とも、私立学校における教育の自主性、独自性は、あくまで強く尊重されるべきと考えております。
 
■向精神薬
 
質問1
 精神科や心療内科で処方される薬で、リタリンという向精神薬があります。難治性のうつ病、ナルコレプシーが適応症とされており、服用すると、覚せい、気分高揚、意欲増進のほかに多幸感、万能感、爽快感などが得られ、薬理効果としてはほとんど覚せい剤に近いものといわれています。
 しかし、リタリンは、同じ量では次第に効果が得られなくなるので、服用量がふえ、乱用につながりやすいという副作用があります。また、覚せい剤と同じように、長期間の服用によって不眠や不安、幻覚症状があらわれます。
 このリタリンの安易な処方によって、服用者がリタリンに依存し、多くのリタリン乱用者が生まれています。今やリタリンは、合法的に処方される覚せい剤として、頭文字のRをとってビタミンRなどとも呼ばれ、リタラーと呼ばれる乱用者を次々と生み出しているのです。
 インターネットの掲示板では、こうしたリタラーたちの驚くべき書き込みでいっぱいです。スニッフといって、薬を粉々に砕いて、ストローを使って鼻から吸引する方法がありますけれども、初スニってみました、かなりいい感じですてきですとか、一時期は二十錠を超える日々を送ってきましたが、今は六錠に抑えています、よくクラブに行くんだけど、そういう日はいっぱい持っていきますね、だけど、一回死にかけたことがあるので、皆さんも気をつけましょうとか、このような見ていて恐ろしくなるような書き込みが平気で書かれています。
 そして、そうしたリタラーの中には、リタリン依存の果てに深刻な禁断症状を起こしたり、果ては自殺する人まで出ています。医療機関から処方される薬で薬物依存を引き起し、あげく、このような悲劇が起きてしまうというのは、あってはならないことではないでしょうか。
 ところが、リタリンによって依存症、乱用者に陥った人の家族でつくる、リタリン問題を考える会の人たちによると、インターネットの掲示板では、このクリニックに行けば、何もいわずにリタリンを大量処方してくれるという医療機関の情報がはんらんをし、中でも、都内のある心療内科のクリニックが有名な存在として知れ渡っています。このクリニックは、リタリン販売所とすら呼ばれ、ろくな診察もなく、副作用の説明も何もなく、患者にいわれるがままに大量のリタリンを処方しているというのです。
 さらに、患者の中にも、医療機関のかけ持ちや、あるいはコピーした処方せんを薬局に出すなどの方法で不正に大量入手したリタリンを売りさばく者が、インターネットの掲示板でリタリン売りますと堂々と書き込んで、リタリンの売買が行われております。
 このような行為に関しては、都が早急な実態調査と適切な措置を講ずることが必要だと考えますが、見解を伺います。


答弁1
 ▼福祉保健局長
 向精神薬リタリンの乱用についてでございますが、都は本年四月、医師の処方せんを偽造し、リタリンを不正に入手した事件を摘発するなど、指導取り締まりを強化しております。
 処方せん偽造の実態については、既に薬局の協力を得て調査中でございまして、啓発ポスターやステッカーを作成して都民の注意喚起も図っております。
 また、不適切な対応を行っている医療機関について通報があれば、直ちに関係機関と連携して立入調査を実施します。
 今後とも、東京都医師会や東京都薬剤師会などと連携し、不正入手など違法行為には厳格に対処して、向精神薬の乱用防止に強力に取り組んでまいります。

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■映像文化の振興
 
質問1
 東京国際映画祭について伺います。
 新聞報道などによりますと、経済産業省では、来年から国際コンテンツカーニバルとして、アニメやゲームなどの映像メディアを幅広く取り込んだ国際イベントを秋に立ち上げ、第二十回となる東京国際映画祭も、その中の一つの柱として位置づけられるということです。
 ところが、この東京国際映画祭、私が映画関係者に聞きましても、世界十二大映画祭の一つといいながら、カンヌやベルリンなどと比べれば、国際的な存在感はいま一つというのが実情であります。
 さらに、以前から映画産業を戦略的に育てているお隣の韓国では、釜山国際映画祭が最近目覚ましい成功を上げており、片や東京国際映画祭は、今や九月の釜山に集まった世界の映画関係者が、東京にもついでに立ち寄るか、それとも真っすぐ帰るかといったような扱いになってしまっているといわれております。
 こうした東京国際映画祭の評価は、どのような作品を対象として、どのような審査基準のもと出品作を選び、賞を出しているかという、映画祭としてのカラーがはっきり見えないことがその原因となっているといわれています。
 これは全くの私見でありますけれども、世界の映画祭サーキットの一番後ろにある東京国際映画祭は、例えば世界各地の十二大映画祭でグランプリを受賞した作品を一堂に集めて、その年のベスト・オブ・ザ・ベストを選ぶ、そんな映画祭にするのがいいのではないかと思います。
 東京国際映画祭のあり方について見解を伺って、私の一般質問を終わります。
 ありがとうございました。


答弁1
 ▼生活文化局長
 東京国際映画祭についてでございますが、この映画祭は日本の映画産業関係者が中心となって開催しており、平成十六年度以降、アジアを中心とした新たな企画に取り組むとともに、世界じゅうからコンテンツ産業の関係者が集まるマーケット部門を設置、強化するなど、映画祭の活性化にも取り組んでおります。
 しかし、近年、釜山や香港、上海などの国際映画祭が台頭し、映画祭間の競争が大変厳しくなっている状況でございます。
 今後、東京国際映画祭の主催者に対して、海外での評価を調査し、より映画祭の知名度を上げていくなど、魅力向上に一層取り組むよう働きかけてまいります。
 なお、ご提案の趣旨につきましては、一つのアイデアとして主催者に伝えたいと思います。
 
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