平成18年第4回定例会 代表質問

学校体質改善でいじめ対応強化
臨海三セク再生の見通しを示せ

馬場 裕子(民主党)
■予算編成に関わる課題
 
質問1
 私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長にお伺いいたします。
 最初に、平成十九年度東京都予算編成にかかわる課題について何点か伺います。
 さきの月例経済報告では、消費に弱さが見られるという文言が加わったものの、景気は回復しているとし、日本経済は、月例経済報告上ではイザナギ景気を超えました。企業収益、雇用情勢ともに改善し、先行きについても、企業部門の好調さが持続しており、これが家計部門へ波及し、国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれるとしています。
 中長期的な展望においても、二〇〇八年度まで二%前後の伸びを続けた後、二〇二〇年度まで平均しておおむね一%台半ばとする予測も示されています。
 しかし、その一方では、川上のインフレ、川下のデフレというように、川上の資源、原材料価格が高騰する一方で、川下の製品価格は経済のグローバル化により低価格化し、企業経営の厳しさが増しているとの指摘もあります。
 こうした中では、当面の税収増は期待できるとしても、中長期的には不安定さはぬぐえず、また、現在の川上のインフレのもとでは、川上の資源、原材料価格の高騰を過度にあおるような公共投資には抑制的であるべきです。
 よって、平成十九年度予算編成においては、これまでの財政再建期に積み残してきたいわゆる隠れ借金、負の遺産を清算し、一部は基金に積み立て、強固で弾力的な財政基盤の構築に力を注ぐべきと考えますが、ご所見を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 東京はさまざまな課題を抱えておりますけれども、最たるものの一つは、三十年以上放置され続けてきた外環道の整備でありまして、立ちおくれた状況にある道路、港湾などの整備を加速させる必要があります。
 したがって、今後の都政において、都民生活の安全確保など、直面する課題だけではなく、都市インフラの整備や災害に強いまちづくりなど、東京の将来を見据えた施策への積極的な取り組みが求められております。
 一方、都財政は着実な回復を続けておりますが、隠れ借金や負の遺産など、課題も残っておりまして、完全な体質改善にはまだ至っておりません。
 こうしたことから、十九年度予算においては、中長期視点を重視して、将来への投資を積極的に行うと同時に、隠れ借金の解消などマイナス面の払拭にも精力的に取り組み、社会基盤の整備と財政基盤の強化という二つの課題を両立していきたいと考えております。
 

 
質問2
 予算の執行管理においては、これまで建設局が道路、橋梁、河川などについて先駆的に行ってきたアセットマネジメントについて、来年度は水道局も導入に向けた調査検討を行おうとしています。これは、施設を資産ととらえ、各施設の状態を客観的に把握、評価し、資産の状態を予測するとともに、いつどのような対策をどこに行うのが最適かを考慮し、計画的かつ効率的に管理する手法で、こうした手法に人口減少を加味した社会資本の総量に対するコントロールを加え、今後の右肩下がりの時代に社会資本を効率的、効果的に管理、更新していくことは、今後の都政全体にとっても重要な課題であると考えますが、ご所見を伺います。
 
答弁2
 ▼財務局長
 社会資本の効率的、効果的な管理、更新についてでございますが、大都市東京が必要としている社会資本の整備はいまだ十分といえる状況ではなく、首都圏の大動脈となる三環状道路や国際競争力を高める港湾施設の整備、集中豪雨に対する河川の改修などを着実に推進していく必要がございます。
 一方、高度成長期やバブル期に整備された社会資本や大規模施設などが更新時期を迎えていることから、その財政需要への対応は都政の重要な課題であり、アセットマネジメントの実施などにより更新経費の平準化と縮減を図り、効率的、効果的な管理に努めていくことが大切であると考えております。
 人口減少社会にあっても活力ある東京を維持するため、必要な社会資本を効率的、効果的に充実し、維持していくことが都の重要な責務であると認識しております。
 

 
質問3
 さて、この間、石原知事の海外出張を初めとした予算の使い方について、都民の批判、苦情が相次いでおります。
 例えば海外出張において、石原知事が必要な仕事のために規程に基づいて海外出張を行っているのであれば、何も問題はありません。しかし、その必要性に疑義が唱えられ、夫人同伴の規定がないことなど、関係者をも含めて規定額を大幅に上回っていては、必要な手続をしたとおっしゃっても、都民の批判は免れません。しかも、その時期が、知事自身が都財政の危機を訴え、財政再建のために各種予算を削り、職員の給与をカットしていた時期とあっては、都民を大きく失望させるものであります。
 知事は、事務局に任せている、規程はよく知らないし、それから外れているなら直さなければいけないと思うなどと語ったと報じられております。それはそれで事実でありましょうが、最終的な決裁責任者は石原知事自身であります。また、例えば知事の側近が、あたかも知事の命令であるかのごとく事務局に指示すれば、事務局はそれに従わざるを得ないでありましょう。事務局、職員が都民を視野に入れずに知事のために働けば、知事は裸の王様に見えてしまいます。
 いずれにしても、なぜこのようなことが起きたのかを知事みずからが真摯に検証し、正していかなければ、石原知事の都政運営に対する都民の不信感をぬぐうことはできません。知事の所見を伺います。
 
答弁3
 ▼知事
 海外出張についてでありますが、既に会見の場などでも説明してきましたとおり、出張に関する事務処理については、事務局がルールにのっとって適正に行っており、私の方から条件や注文をつけたことは一度もございません。正すべき点があれば、早急に正していきたいと思います。
 しかし、行政という仕事は、毎日机にしがみついているだけでは何もできません。現場に直接出向いて自分の目で確かめてこそ、斬新なアイデアも施策も生まれてくるのであります。
 例えば、横田の共同使用などについても、ワシントンで、知己である幾つかの調査機関を活用して、多角的なアプローチをし、問題の促進に役立ってきたと思いますし、ガラパゴスの出張やアメリカの国立公園などに足を運んだことが、実は小笠原や多摩の貴重な自然を守るレンジャー制度に結実したのでありまして、宝石のようで、しかし結果として荒れ果てた南島も、ガラパゴスの印象を起点にして施策を講じたために見事によみがえってまいりました。また、ロンドンでのトップ会談を通じて、温暖化を阻止する世界の諸都市の輪に、むしろ向こうから請われて参加するようになりました。
 また、国内においても、ディーゼル車の排気ガス規制では、かつて環境科学研究所を視察したときに、一日にペットボトル十二万本の粒子状物質がディーゼル車から吐き出されているというその実態を、ボトルに詰められた粉を見ることで、眺めて慄然として、あの施策を思いついたわけであります。
 ですから、これからも、国内外を問わずさまざまな現場にどんどんと出向き、現場主義を貫いてまいります。
 
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■自治制度
 
質問1
 次に、先日、東京自治制度懇談会の「議論のまとめ」が発表されました。そこで伺います。
 地方自治制度そのものの改革も視野に入れ制度改革を提言するとして、東京圏の自治体のあり方、大都市行政のあり方、国との関係の整理、税財政制度のあり方について検討する、これは、平成十二年十二月にまとめられた都政改革ビジョンⅠが、次のビジョンⅡを策定するために示したものです。以来六年の月日を経て、やっとこの「議論のまとめ」が発表されました。
 しかし、この懇談会は、東京都に助言、提言するために設置された懇談会であるはずなのに、今回は「議論のまとめ」でしかありません。六年にわたって棚上げとなっていた都政改革ビジョンⅡの策定がやっと棚からおろされると思っていたら、いまだ途中にとどまっており、棚からおろされるのかどうか定かでありません。
 都は何のためにこの東京自治制度懇談会を設置したのか、改めて伺うとともに、今回の「議論のまとめ」をどのように位置づけているのか伺います。
 
答弁1
 ▼知事本局長
 東京自治制度懇談会についてでありますが、東京自治制度懇談会は、大都市制度や道州制など、東京をめぐる地方制度の課題や改革の方向について調査検討する目的で設置されたものでありまして、今回の「議論のまとめ」は、昨年九月発足以降の議論を取りまとめ、東京都に対し助言、提言を行ったものであります。
 真の地方分権を実現するため、今後、懇談会への助言、提言を踏まえ、国の検討の動向も見据えつつ、都としての考え方を取りまとめ、国に対して主張してまいります。
 

 
質問2
 現在、三年間の時限立法として国会に提出されている地方分権改革推進法案が成立すれば、この法に基づく地方分権改革推進委員会が発足し、三年間で実現すべきことが具体的に問われることになります。地方六団体が設置した新地方分権構想検討委員会は、この機会を第二期地方分権改革と位置づけ、このほど、分権型社会のビジョン「豊かな自治と新しい国のかたちを求めて」を発表しました。その中で、同委員会は、一日も早く意見、利害を超えて、地方六団体が詳細な工程表、ロードマップ、具体案をつくり、国民、国会、政府に対して投げかける必要があると訴えています。
 都は地方交付税不交付団体であり、それゆえに、自治体を代表して国に対して最も物がいえる自治体でありますが、残念ながら、この間の分権改革における都の位置は、四十七府県の中の一府県にすぎないものでした。鈴木都政が分権改革において主導的役割を果たしたこととは大きな違いであります。
 「孤立か連帯か―次なる分権改革と東京都の責任」、これはある雑誌に掲載された論文の見出しであります。私たちは、これまでにも繰り返し他自治体との連帯を求めてきましたが、今、都はどの道を選択しようとお考えなのか伺います。
 
答弁2
 ▼知事
 地方分権の改革についてでありますが、中央集権の統治システムが歴史的使命を終えた今、地方がみずからの課題をみずからの権限と責任で解決し得る地方分権改革の実現が必要であることを、全国知事会においても強く主張してまいりました。
 一昨年の全国知事会議では、義務教育費国庫負担金をめぐる議論で意見が分かれましたが、小異を捨てて大同につくという立場から、時の小泉総理に対して分権改革の推進を強く迫っております。
 また、八都県市首脳会議においても、首脳全員で協議し、国に対して、分権改革の推進を求めるアピールを再三行ってきております。
 しかし、これまでの国のいわゆる三位一体改革は、省益を墨守しようとする中央省庁の抵抗などによりまして、終始数字合わせに終わっておりまして、国と地方の役割分担のあり方など、地方分権改革の本質的議論が一向に行われてきませんでした。
 今後も、国に対して、真の地方分権改革を実現するよう、他の自治体とも連携して強く働きかけてまいります。
 
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■新しい「公」の構築と育成
 
質問1
 新しい公の育成について伺います。
 都は、地方の自主自立と多様な主体が公を担う二十一世紀型の新たな行財政システムを構築するため、スリムで仕事ができる効率的な都庁の実現を目指すとしています。ここで仕事を分担する多様な主体は、都民や町会、自治会、企業、大学、NPOなどの民間で、都とさまざまな事業を通してかかわり合っています。しかし、それらの事業は、必ずしも新しい公に必要な協働意識、協力して働く意識の醸成や関係の明文化、対等な立場での協議、自立性の強化が伴っているわけではなく、真の協働関係はいまだ道半ばの状況です。
 都は、民間との間で相互に理解を深め、緊密なパートナーシップのもと新しい公を構築し、東京のより一層の活性化に取り組むべきと考えます。
 長い歴史を持つがさまざまな問題を抱える町会、自治会、高い専門性を持つが信用力や資金的困難などが課題のNPOなど、大都市がかかわる諸課題の克服に都が連携してかかわれる部分があります。都は、今後、これらの公を担う多様な主体の育成に取り組むべきと考えますが、知事のご見解を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 かつて福沢諭吉が、「立国は私なり、公に非ざるなり」と訴えたとおり、地域を思い、国を思う個々の人間、私の集積こそがまさに公を築くわけでありまして、日本は、明治の太政官制度以来続いております官尊民卑の発想からいまだに抜け出ずにおりますが、これからは、社会全体の利益につながる活動に多様な主体が積極的にかかわる仕組みをつくり上げていく必要がございます。
 今後とも、都は、二十一世紀にふさわしい新しい公の形を目指して、多様な主体の育成に取り組んでいきたいと思っております。
 

 
質問2
 次に、地域力向上について伺います。
 このほど、都庁内のメンバーによる地域力向上方策検討委員会で検討されてきた八つのモデル事業が示されました。関係団体からのヒアリングや地域での協働を進めてきた区市町村からのアンケートなどをもとに事業が選定されています。この中には、連合町会、自治会などによる提案型事業も設定され、今後、審査委員会によって選定が行われると聞きます。
 都は今回、モデル事業を二年間実施した後、評価、分析を踏まえ、広く波及させる考えを持っていますが、それと並行して、大都市における地域力の向上や地域との協働などを区市町村や関係者と総合的に議論を行っていく検討会が必要だと考えます。
 大都市における町会、自治会の課題の一つに加入率の低下があります。そして、平成十六年版国民生活白書では、地域の活動に現在参加していないが、今後は参加したいと考える人は五割程度あるとしています。このうち、活動する時間がないと回答した人は三六・六%と最も高く、次いで、参加するきっかけが得られないこと一四・四%、身近に団体や活動内容に関する情報がないこと一一・三%となっていることから、きっかけづくりが重要な課題であると結んでいます。
 都は、こうした声をつなぐ仕組みづくりも検討することが必要と考えます。都の見解を伺います。
 
答弁2
 ▼知事本局長
 この事業は、これまで、都議会での議論や各方面の意見を踏まえ、平成十九年度の重点事業として位置づけ、防犯、防災、福祉などの課題に対し、地域の担い手である町会、自治会などが連携して取り組むモデル事業等を、都と区市町村が支援するものでございます。
 今後の実施に当たりましては、地域力向上方策検討委員会において、関係各局と連携し、地域の声も集約しながら、モデル事業の評価分析を行い、施策の充実を図ってまいります。
 

 
質問3
 NPOへの支援について伺います。
 NPO法が制定されてから、今月でちょうど八年になります。その後、認定NPO法人制度も導入され、国でも現在、NPO法人制度の見直しの議論が行われています。一方、昨年内閣府が実施した調査では、七割のNPO法人が課題として活動資金の不足を挙げています。NPO法人の資金基盤の強化が必要とされる中、来年度の都の重点事業で、NPOに対する融資制度を創設することが打ち出され、都政においてようやくNPOが認知され始めたと感じました。
 既に他県で融資制度が構築されている中、都は、つなぎの融資や事業拡大への資金など、需要に応じた使い勝手のよい支援策としていく必要があります。ことしの六月、地域の五十一団体から成る多摩NPO協会は、多摩信用金庫が開発したNPO事業支援ローンに連携して取り組むことに合意し、融資の際の審査業務に協会が協力することで融資の円滑化を図っていくことになりました。このことも一つの参考になるのではないでしょうか。
 新しい公のパートナーであるNPOの自立に向けた支援を求める上で、都の融資制度の基本的な考え方と仕組みなど、その見解を伺います。
 
答弁3
 ▼産業労働局長
 現在、都内には五千以上のNPO法人が存在しております。その多くは財政基盤が脆弱であり、また、金融機関におきましても十分な資金供給が行われていない状況にあります。
 一方、これらNPOは、保健、医療、福祉などの分野で活動しており、新たな経済主体としても期待が寄せられております。
 このため、金融機関からNPOが融資を受ける際、保証機関による八割程度の保証を付することで融資を受けやすくするための仕組みを構築し、資金調達の円滑化を図ってまいります。
 

 
質問4
 次に、社会的責任を果たそうとする企業への支援について伺います。
 株式会社のような民間企業においても、株主や顧客、取引先だけでなく、従業員や消費者、そして地域や社会など関係するすべての人たち、いわゆるステークホルダーに対して責任ある行動をとっていくという考え方、いわゆる企業の社会的責任、CSRが重要視されています。現在、大手金融機関などでは社会的信用投資というものが商品化されつつあり、また、大手製造業などでは、商品や資材を調達する基準を、グリーン調達から社会的責任調達に拡大する動きも見られます。
 都においても、入札・契約制度で社会的責任調達を実施することで、グリーン調達や最低賃金法など労働条件の確保、あるいは法律で努力義務が課せられている次世代育成支援の導入など、企業の取り組みが進むものと考えますが、ご見解を伺います。
 
答弁4
 ▼財務局長
 環境や福祉などの政策課題の解決に寄与するような社会的責任に取り組む企業から製品やサービスを調達することには意義があると認識しております。
 これまでも、環境負荷ができるだけ小さい製品やサービスを選択して購入するグリーン調達、ISO認証取得者に対する格付の際の加算措置、障害者の多数雇用企業への優先指名など、企業の社会的責任に着目した措置を行っているところでございます。
 今後とも、公正性、競争性の確保を基本としながら、都の政策課題を踏まえた調達の方法について、さらに検討を進めてまいります。
 
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■まちづくり
 
質問1
 まず、住宅基本条例の全面改正についてです。
 私たちは、公共住宅こそが、良質な住宅ストックと良好な住環境の形成に向けた範を示すべきではないかと考えております。そのことにより、民間住宅への波及効果も期待できるのではないかと考えます。
 今後、都営住宅の建てかえを初めとする公共住宅の供給に当たっては、公共住宅ストックの質の向上という観点から、長寿命化、ユニバーサルデザイン化、環境性能の向上などのため、現行の設計基準や仕様を見直す必要があると考えます。また、良好な住環境の形成という観点からは、公共住宅の建物としてのハード面で地域の特性を十分に考慮するのはもちろんのこと、入居者が周辺地域と良好なコミュニティを形成しやすくするというソフト面においても、建物の計画段階から完成に至るまで、周辺地域との良好な関係を構築することが求められます。
 公共住宅が良質な住宅ストックと良好な住環境の形成に果たすべき役割について、ご所見を伺います。
 
答弁1
 ▼都市整備局長
 都営住宅などの公共住宅の供給に当たりましては、セーフティーネットとしての性格に留意しつつ、可能な限り良質な住宅ストックと良好な住環境の形成に寄与していくことが必要と認識しております。
 具体的には、コストの低減を図りながら、建てかえや改修を通じて、建物の長寿命化や設備の改善、バリアフリー化、省エネルギー化など、ストックの質の向上に努めております。
 また、建てかえ事業に際しましては、地域の活性化や防災性の向上に資するよう、必要に応じてその用地を活用し、公共公益施設の整備や良質な民間住宅の導入などを行っております。
 

 
質問2
 住宅市場の環境整備については、住宅取引の安全の確保や既存住宅の流通促進などが規定されますが、東京では、全世帯の四割弱が民間賃貸住宅に住んでいます。賃貸住宅市場においては、退去時の敷金精算や修繕などの管理をめぐるトラブルが多発しており、都が一昨年に敷金精算のルール、いわゆる東京ルールを賃貸住宅紛争防止条例として制定していることは、私たちも評価しています。
 しかし、それにもかかわらず、賃貸住宅に関するトラブルが減ったという話は耳にしないのが実情です。都民に対するルールの広報、周知の徹底、不動産業界とのさらなる連携強化など、積極的な取り組みが必要と考えますが、ご所見を伺います。
 
答弁2
 ▼都市整備局長
 都は、平成十六年に、宅建業者に対し原状回復の費用負担などについての説明を義務づける賃貸住宅紛争防止条例を制定し、宅建業者や家主への説明会を実施するとともに、都民向けリーフレットを作成するなど条例の周知を図ってまいりました。
 近年、都に寄せられた相談件数の増加は、こうした広報活動を通じ、家主や借り主などの契約当事者の関心が高まったこともその一因と考えております。
 今後とも、トラブル防止に向けて関係者の理解を深めるため、業界団体と連携して、条例の運用状況の把握に努め、その趣旨の一層の周知を図ってまいります。
 

 
質問3
 民間住宅の居住の安定の確保については、高齢者や障害者などの民間賃貸住宅への円滑な入居の促進に努めることが規定されます。特に、高齢者は賃貸住宅に入居しにくいといわれています。ある調査では、ことし四月現在、単身高齢者の入居を拒否している家主は全国で八・四%というデータがあります。平成十四年での一〇・七%に比べると減少していますが、まだまだ少なくないというのが現状ではないでしょうか。
 国には、こうした高齢者の賃貸住宅入居を支援する各種制度がありますが、建設戸数や制度の利用者数は伸び悩んでいるのが現状です。
 都でも、独自の制度としてあんしん入居制度を平成十三年に創設していますが、利用者数の伸び悩みから、昨年十月、地域の不動産店を対象とした申込窓口の拡大、利用料の値下げなど制度の改善を行っており、その後の一年間で契約件数の累計が二五%近く増加したとのことです。この伸び率だけを見る限り、制度改善の効果は着実にあらわれたようですが、実契約件数は二百一件にすぎません。
 拡大の進まない国の制度に対する改善提案や、広報、周知への協力、都のあんしん入居制度のさらなる改善方策の検討やPRの強化など、各種制度の一層の普及に向けた取り組みが必要と考えますが、ご所見を伺います。
 
答弁3
 ▼都市整備局長
 高齢者入居支援についてでございますが、民間賃貸住宅に円滑に入居できる制度を充実することは、高齢者の居住の安定を確保する上で重要でございます。
 このため、都は、区市町村や不動産関係団体と連携し、高齢者の入居を拒まない高齢者円滑入居賃貸住宅の登録の拡大を図ってまいりました。
 また、あんしん入居制度の利用促進に向け、昨年、利用者負担額の軽減や申込窓口の拡大を実施いたしました。
 今後とも、貸し主や住宅関連事業者等に加え、高齢者支援を行っている各種団体へ幅広く周知を図り、普及啓発の強化に努めるなど、制度の一層の利用促進に取り組んでまいります。
 

 
質問4
 次に、木造住宅密集地域における防災性の向上についてです。
 十年後の二〇一六年には、我が国は本格的な超高齢社会を迎え、人口も減少に向かう時代になることが予測されています。そして、昭和五十六年施行の新耐震基準に従って建築された住宅も築三十年以上を迎え始める時期となり、新耐震基準の住宅についても、老朽化によるリフォームや耐震性の確保が問題となる時代となります。
 私たちは、そのような時代を迎える前、これからの十年間に木造住宅密集市街地の防災性の向上がどこまでできるかが、二十一世紀の超高齢社会における震災被害の深刻さを決定するといっても過言でないと考えます。
 安全・安心のまち東京を実現するためには、現在都が早期に防災性の向上を図ることとしている重点整備地域について、より一層の重点化を進め、防災性向上のスピードアップと面的な展開を図っていく必要があると考えます。その上で、木造住宅密集地域の残りの地域については、耐震診断・耐震改修促進制度を活用し、個別の住宅の耐震化を進めていく。このような二つの手法を並行して進めていくことが求められると考えます。
 木造住宅密集地域の整備における都が抱える現状の課題についての認識と今後の取り組みの方向性について、所見を伺います。
 
答弁4
 ▼都市整備局長
 木密地域は狭小敷地や道路に十分接していない建物が多いことに加え、権利関係がふくそうしていることなどから、建てかえが容易に進みにくく、防災上脆弱な状況にございます。
 都は、木密地域のうち、震災時に大きな被害が想定される地域を防災都市づくり推進計画で整備地域として定め、修復型の木密事業や新たな防火規制などを実施し、不燃化建てかえを推進しております。
 また、この地域においては、建物の倒壊による道路閉塞を防止するなど公共性が高い地区の住宅について、本年四月から耐震診断、改修への助成を開始したところでございます。
 さらに、集中的に事業を行う重点整備地域では、木密事業などに加え、道路や公園などの基盤整備事業を実施しております。
 今後とも、住民の協力を得ながら、地元区とも連携し、効果的に事業手法を組み合わせて、木密地域の安全性向上に積極的に取り組んでまいります。
 
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■子育て支援策
 
質問1
 認定こども園は、一言でいってわかりにくい制度です。現場を見れば、幼稚園と保育所、認証保育所という制度の違いによってやっていることが変わるわけではなく、個々の幼稚園や保育所によって違いがあるだけです。
 そこで、制度も一本化しようとするのがそもそもの発端でしたが、学校教育法と幼稚園を所管する文科省、児童福祉法と保育所を所管する厚労省の間の省益争いに決着がつかず、就学前の子どもを預かる場所は二つの法律に支配されたままです。
 認定こども園は、二つの制度を実施する箱を一本化することができますが、既存の認可保育所制度、幼稚園制度に加えた三元化となってしまいました。
 もう一段の改革が必要な制度ではありますが、私たちはこの制度を契機に、長期的には民主党が主張する幼保一本化が実現していくことを期待するものです。
 この東京には、休日や祝日、深夜や早朝に働き、都市の便利さを支えている親がいます。また、家庭にあって子育てに専念し、地域を守っている親もいます。こうした人が就学前の子どもを預けられる施設はとても限られていますが、認定こども園をきっかけに、対象年齢や開所時間が長い、必要に応じてだれでも預けられる場所を拡充していかなければなりません。
 国の制度では、従来からある認可以外の機能には財政的に裏づけがありません。そのため、認定こども園の類型によっては負担が大きく変わってしまうのです。国制度のままでは、認定を受ける園はほとんどないとまでいわれています。
 都としては、認定こども園が本来期待される機能を発揮できるよう、しっかりと対応すべきと考えますが、対応を伺います。
 
答弁1
 ▼福祉保健局長
 認定こども園への支援についてでございますが、国の財政措置の対象が保育所、幼稚園の認可を受けた部分に限定されていることから、認定こども園が地域の実情に応じた保育、教育の提供にあわせ、子育て支援事業を実施する上で不十分なものと認識しております。
 このため、都としては、認定こども園が大都市の多様な保育、教育等のニーズに柔軟に対応し、その機能が十分に発揮できるよう、独自の補助制度を創設する予定でございます。
 

 
質問2
 利用者ニーズに応じた多様なサービスの一つとして、事業所内保育施設があります。認可外保育施設ですが、仕事と家庭の両立支援策として国補助が行われています。しかし、国補助はサンセット方式で、時限が切れた後、安定して保育所を運営することができないなど、支援策としては不十分な面もあります。
 このような中でも、最近、資生堂が汐留に開設した保育所を初めとして、都心のオフィス内に事業所内保育所を設置する企業が出てきました。優秀な社員が出産、育児により流出するのを食いとめるためというのがその理由です。
 平成十五年七月に制定された次世代育成支援対策推進法により、国や自治体、企業には、仕事と子育てが両立しやすい職場環境の整備が求められるようになりました。企業にとっては負担が重いですが、不足する保育所の単なる補完ではなく、従業員の育児と仕事の両立を支援することに重要な役割を果たしています。
 こうした事業所内保育施設については、都としても積極的に支援していくべきと考えますが、いかがでしょうか。
 
答弁2
 ▼福祉保健局長
 都は、平成十七年四月に策定いたしました次世代育成支援東京都行動計画に基づき、仕事と子育てを両立できる雇用環境の整備を進めております。
 事業所内保育施設への支援は、企業の次世代育成に対する取り組みを促進するとともに、仕事と子育ての両立支援に対する事業主の理解を深めるという点からも有効なものと考えております。
 このため、都は、来年度の重点事業として、良質な保育サービスを確保しながら、中小企業なども取り組みやすい柔軟な支援策を講じることによりまして、事業所内保育施設の設置促進を図っていくこととしたものでございます。
 

 
質問3
 次世代育成支援に向けて、若年者の雇用不安を解消していくことも重要な課題です。
 昨年の国民生活白書でも、出生率が低下している要因として、結婚しても子どもを多く持てない夫婦がふえたことを指摘し、背景にパートやアルバイトで生活する低所得の若年者の増加があると分析しています。また、経済力に不安を抱える若者が増加することにより、若年者に占める未婚者の割合がふえて少子化を加速させることなどもいわれています。
 低所得ゆえに結婚できない若者、低所得ゆえに結婚しても子どもを持とうとしない若者への対策は急務です。特に、バブル経済の崩壊以降、民間企業での正規社員の採用が極端に減らされる中で、毎日を就職活動に費やしながらも、フリーターなどにならざるを得なかった若者たちに対しては、社会の責任で就職支援をしていくべきではないでしょうか。
 年長者のフリーターも含めた若年者の雇用対策について見解を伺います。
 
答弁3
 ▼産業労働局長
 若年者の就業を促進するためには、職業意識や就業に関する基礎的能力を付与することが重要であります。このため、しごとセンターにおいてカウンセリングや各種セミナーなどを行うとともに、技術専門校では、フリーター向けの単位制パソコン科などを実施しております。
 今後は、これらに加え、年長フリーターを対象とする合同就職面接会なども開催していくなど、若年者の雇用対策に取り組んでまいります。
 
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■教育におけるセーフティーネット
 
質問1
 次に、教育におけるセーフティーネットについて伺います。
 まずは、いじめについてです。いじめがあっても何もしない、いじめはないとしらを切る学校に、子どもを持つ親はとても怒り、そしてまた嘆いています。
 問題を深刻にしているのは、人をいじめてはならないという教えが、いつの間にかいじめはあってはならないという鉄則に変わってしまい、いじめによる自殺者ゼロという調査結果がまかり通る文部科学省という役所、ひいては学校の体質です。
 現実の社会では、ウマの合わない人ともつき合う知恵、度量を持たなければ生きていけません。ところが、学校や教育界では、みんな仲よく、いじめはあってはならないとなってしまいがちです。こうした、時に建前主義に過ぎる面が、いじめへの対応力を低下させているのではないでしょうか。
 いじめがあった場合には、まず隠さないこと、そして、そのためには、学校や教育委員会が組織として責任を持って解決に努力することが必要です。問題のあるなしではなく、いかにして迅速に察知するか、適切な対処ができるかが問われなければなりません。
 文科省の、全国でいじめによる自殺者ゼロは、東京のゼロでもあります。いじめの現実を糊塗するような調査結果といわれても仕方ありません。今後、都教委はいじめにどのように取り組むのか伺います。
 
答弁1
 ▼教育長
 いじめ問題への今後の取り組みについてであります。
 いじめは決して許されないことでありますが、どの学校でも起こり得るものであるという前提に立ちまして、学校教育に携わるすべての関係者が改めてこの問題の重大性を認識し、日ごろからいじめの兆候を把握し、迅速に対応できるようにすることが重要と考え、これまでも対処してきたところでございます。
 十一月八日から十二日まで実施いたしました、いじめ等問題対策室の緊急電話相談では、子どもや保護者からの相談のほかに、教職員の不適切な対応、家庭の教育力の向上の必要性など、さまざまな意見が寄せられました。
 今後、これまで都教育委員会が蓄積してきましたいじめ問題の解決の方策に加えまして、緊急相談の新たな相談内容等を整理分析して資料にまとめ、教員研修だけではなく、保護者会等におきましても活用するよう働きかけてまいります。
 

 
質問2
 去る十一月二十九日、政府の教育再生会議において、いじめに関する緊急提言がまとめられ、いじめた生徒への懲戒として、社会奉仕や別教室での教育が盛り込まれました。社会奉仕や別教室での指導そのものを否定するわけではありませんが、そこで肝心なのは、いじめた子が同じことを二度とやらないようにすることです。
 同級生をいじめた、この行為の責任は本人、子どもですが、その過ちを繰り返させないことには、大人の責任でしっかりと取り組まなければなりません。社会奉仕活動をする中で、みずからの行いで何が起きたのか、本当の意味で気づき、悔い改めるようにするには、よほどの思慮を持って丁寧なプログラムをつくり上げなければ、単なる罰になってしまいます。
 事の性質は全く同じではありませんが、子どもや高齢者への虐待、またDV、配偶者からの暴力の加害者にも、暴力や傷害の罪を罰するだけではなく、繰り返させないための加害者更生プログラムが研究され、各地で実施されています。他者への尊敬、コミュニケーション能力、他者との協働を学び、暴力への衝動をコントロールする術を学ぶことで、新たな被害者を出さないようにするのです。教育再生会議のような短絡的な懲戒では、大人の責任は果たせないと考えます。
 いじめについて、各所で議論が起こっていますが、知事の所見を伺います。
 
答弁2
 ▼知事
 いじめについてでありますけれども、いじめは、どの学校でも、どのような集団でも起こり得るものでありますが、子どもたちには思いやりの心を持ち、たくましく育ってもらいたいと思います。
 そのため、学校はもちろんのこと、家庭が責任を持って子どもの正義感や倫理観などをはぐくむことが必要であります。また、地域の大人が、我が子にも他人の子どもにも毅然とした態度で接することも必要であると思っております。
 

 
質問3
 次に、日本語指導が必要な子どもへの支援についてです。
 日本語指導が必要な子どもとは、帰国子女や来日外国人などです。義務教育である小学校、中学校までは日本語学級があり、指導が行われています。
 しかし、高等学校の段階では、入試試験における配慮はなされておらず、入学後の支援も十分とはいえません。東京には、毎年毎月、数多くの外国人が来ており、中学三年生、高校一年生で日本に来ても、それぞれの学齢に合わせた支援が必要です。ところが、現状では、国際高校の二十五人というごくわずかな枠を除いては、他の生徒と全く同じ条件で入試に合格しなければなりません。
 入学試験での配慮、入学前の春休みや入学直後に集中して日本語指導を行うなど、日本語の問題をクリアできれば、日本に来るまでの教育でつけた学力を継続して伸ばすことができます。日本語能力を身につけ、高校教育を受けられるようにすることは、卒業後、よき市民として生活していくことの助けとなり、それは東京にとってもプラスになるのです。
 多言語化が著しい現在、個々の学校だけでの対応が難しいことは理解しますが、地域の力をかり、都内の支援ネットワークを構築することも可能でしょう。
 入学枠の確保を含め、日本語指導を必要とする子どもの高校入学、卒業を支援すべきと考えますが、見解を伺います。
 
答弁3
 ▼教育長
 日本語指導を必要とする子どもへの支援についてであります。
 都教育委員会では、国際高校におきまして在京外国人を対象とした入試を実施しておりまして、また、他の都立高校におきましても、日本人と同様に、応募資格を満たしていれば、外国人生徒が受検し、入学することは可能であります。さらに、都立高校への入学後は、一人一人の生徒の日本語の習熟度に応じまして、他の生徒とは異なる学習内容によります個人指導や放課後等の補習授業を行っております。
 なお、国際中等教育学校として平成二十年度に設置を予定しております立川地区中高一貫六年制学校におきまして、一般生徒とは別に一定の枠を設けまして、帰国生徒及び在京外国人生徒についての新たな受け入れ体制を確保してまいります。
 

 
質問4
 特別支援教育について。
 障害のある人もない人も、ともに生きる社会をつくっていく上で欠かせないのが教育のバリアフリー化です。我が国においては、特別支援教育として、分離教育から統合教育へ向けて変革を行おうとしています。
 十九年四月の特別支援教育実施に向け、かぎとなるのは、特別支援コーディネーターが機能するかどうかです。昨年、国においては、特別支援教育における定数増が認められませんでした。早くも特別支援教育の成否に危険信号がともっているのではないでしょうか。
 これまで全く存在しなかった仕事を担う人材を、来年四月から各学校に一人配置しなければならず、なおかつ国では定数を措置しない、すなわち何の財政措置もありません。
 こうした中、特に特別支援教育についてのノウハウに乏しい小中学校での実施が大きな課題です。都においては、小中学校における特別支援教育の実施に向け、どのように取り組んでいるのか伺います。
 
答弁4
 ▼教育長
 小中学校におきます特別支援教育の実施に向けた取り組みについてであります。
 都教育委員会としましては、平成十六年度から本年度まで、四区市におきまして特別支援教育体制モデル事業を実施し、特別支援教育コーディネーターの具体的な役割、校内委員会など校内体制の整備、専門家、関係機関と連携した支援、個別の教育支援計画の作成などの方策につきまして成果を得ております。
 これらの成果を区市町村教育委員会に提供するとともに、区市町村との連携によりまして教員研修を充実するなどして、特別支援教育コーディネーターを初め、すべての教員が特別支援教育についての理解を深めるよう取り組んでまいります。
 今後とも、学校教育法改正後の国の動向を注視しながら、小中学校におきます特別支援教育のさらなる推進について検討してまいります。
 
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■障害者施策
 
質問1
 自立支援法の円滑な運用のためとして、国においては低所得者に対する四分の一の負担軽減措置や事業者の減収に対する激変緩和措置などを行う見込みです。
 民主党が法案作成時から指摘してきたことでもあり、十月に行った緊急提言を踏まえ、所得の低い障害者に対して負担軽減を行うこと、そもそも無理のあった運営費補助への日割り方式の欠点を補う予算が計上されることは、政府がみずから自立支援法の欠陥を認めたものとして、素直に評価するものです。
 しかし、経過措置にとどまらず、制度自体を見直し、しっかりとした対応を盛り込まなければ、真の対応とはいえません。また、自己負担の前提として必要な所得保障を一日も早く実現する必要があります。
 ところで、十月一日の本格実施のため、利用できるサービスを決定するための障害区分認定がすべての区市町村で行われました。関係者におかれましては、十月の本格施行をめぐり、事前の準備から事後の対応まで、いまだ多忙を極めておられます。こうした精力的な仕事に敬意を表するものでありますが、課題についてのみ申し上げます。
 障害者の生活を大きく左右する障害区分認定についてです。
 都は先日、状況調査結果を発表しました。この調査によれば、知的・精神障害者の四割以上が、一次審査判定結果が二次審査で上方に変更されています。二次審査では、医師による意見書と特記事項を参考に、一次判定結果について合議し、区分が決定されます。一次判定で調査員が知的や精神等の障害による特性をよく理解し、特記事項を記入できるかどうか、そして二次判定段階に特記事項の意味をきちんと読み取れる委員がいるかどうかで結果が大きく異なります。
 適切な判定が行われるよう、都もしっかりと指導する必要があります。今後どのように対応するのか伺います。
 
答弁1
 ▼福祉保健局長
 障害程度区分の認定についてでございますが、区市町村が実施する障害程度区分の認定は、百六項目の認定調査に基づく一次判定結果に加えまして、学識経験者から成る区市町村審査会におきまして二次判定を行い、定量化が困難な障害の内容についても、合議の中で反映される仕組みとなっております。
 都は、公正かつ公平な認定が行われるよう、心身の状況について訪問調査を行う認定調査員や区市町村審査会の委員を対象とした研修を実施するなど、人材の育成に努めております。
 今後とも、こうした研修を実施するとともに、認定状況の調査や調査結果の情報提供などを通じまして、区市町村において、より精度の高い認定が行われるよう支援してまいります。
 

 
質問2
 心身障害者扶養年金について伺います。
 本制度については、去る十月二十七日、石原都知事の諮問に対し、東京都心身障害者扶養年金審議会から廃止の最終答申が出されました。
 最終答申では、運営者である東京都の責任は重いとした上で、扶養年金の利用者、利用していない障害者、一般都民、それぞれの立場について考慮し、すべての人にとって許容し得る限界点を示したと述べられており、まさに苦渋の選択であったものと思います。
 一方で、制度の利用者から、長期間無理をして払い込んだ制度を突然廃止するといわれても、到底承服できない。自分はよいが、これからの人にも同様の制度が必要だとの指摘が依然強いのも事実です。ここに至った経緯も含め、今後の対応についてはできる限り説明の機会を設けるなど、理解を得る努力を続けていただきたいと思います。
 また、これにかわる全国制度への加入を確実にするとともに、都制度廃止時期と全国制度加入にずれが生じた場合には、はざまで不利益をこうむる方が出るおそれもあります。都としてしっかりとした対応をする必要があります。ご所見を伺います。
 
答弁2
 ▼福祉保健局長
 都の心身障害者扶養年金制度の廃止と全国制度への加入についてでございますが、全国制度として実施されている心身障害者扶養保険制度について、国は、財政の健全化を図るため、平成十九年度中に見直しを行うと聞いております。
 この見直し後の新たな全国制度への加入は、改めて条例制定が必要となりますが、都制度の廃止に伴う平成二十年三月末までの経過措置期間内に全国制度へ加入できるよう、都として国との調整に努めてまいります。
 
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■消費生活条例の改正
 
質問1
 次に、消費生活条例の改正について伺います。
 高齢者や知的障害者をねらった悪質かつ高額な被害が後を絶ちません。次々と新たな手口で襲いかかってくる悪質事業者に対する厳しい対処が求められています。
 今回、悪質事業者への規制強化ということで、行政処分と罰則を導入するわけですが、これを実効あるものとするには、悪質事業者に対する立入調査や証拠資料の捕捉など、今まで以上に迅速かつ的確な現場対応が求められます。
 それには、取引指導に当たる職員の技量を一層高めることが必要となりますが、どのように取り組むのか伺います。
 
答弁1
 ▼生活文化局長
 取引指導に当たる職員の技量を一層高めるための取り組みについてでございます。
 悪質事業者に対する立入調査等を適切かつ効果的に行うため、現在、警視庁からの併任職員の応援を得て、証拠資料の発見や事業者からの聞き取りなどのノウハウについて、実地に即して確実に身につけるよう、積極的に取り組んでおります。
 また、経済産業省の執行実務研修などへ職員を継続して派遣し、最新の情報や知識の習得を図るとともに、機動的な現場対応の技法を確実に継承するため、実践的なマニュアル等を整備し、その活用を図っているところでございます。
 さらに、庁内公募制人事等を活用して、知識と意欲のある職員を集め、執行体制のレベルアップに努めております。
 今回の条例改正により、ご指摘のように、さらに迅速かつ的確な現場対応が求められることになるため、今後ともあらゆる機会を活用し、取引指導に携わる職員一人一人の技量を高めてまいります。
 

 
質問2
 また、悪質事業者の手口が巧妙化し、消費者トラブルがふえている現状を見ると、新たな消費者被害に対し、相談処理、被害情報の発信、事業者調査などについても、都全体としてのレベルアップが欠かせません。そのためには、情報の収集提供体制において区市町村との連携を格段に強化する必要があると思いますが、そのための具体的な取り組みについて伺います。
 
答弁2
 ▼生活文化局長
 情報の収集、提供体制における区市町村との連携強化の具体的取り組みについてでございます。
 都の消費生活総合センターでは、二十三区と多摩の両地域において、毎月情報連絡会を開催し、相談事例や悪質事業者の手口等に関する情報の共有化を図っております。また、相談処理を的確に行うための有用な情報については、随時相談実務情報として整理し、区市町村に発信しております。
 今後は、このような連携体制をさらに強化するため、さまざまな案件が持ち込まれる都や区市町村の相談部門において、関係職員が最新の被害情報や相談処理に必要な情報をリアルタイムで活用できるよう、来年度に専用のホームページを整備する準備を進めてまいります。
 

 
質問3
 さて、このたび国では、シュレッダーによる幼児の指切断などの悲惨な事故を受けて、消費生活用製品安全法の改正が行われ、生活用品のメーカーや輸入業者に対し、事故があった場合の国への報告が義務づけられました。
 しかし、生活用品の事故では、消費者が自分の不注意だったと考え、メーカーに伝えないことも多くあると見られます。メーカーを通じて事故情報を把握しようとする国の取り組みだけでは、小さな事故が把握し切れないおそれがあります。
 六本木ヒルズの自動回転ドアの事故を調査した工学院大学の畑村氏は、この種の事故には、一つの重大事故の裏には二十九件のかすり傷程度のけががあり、その裏には三百件の冷やりとした体験が存在するという労働災害の経験則、ハインリッヒの法則が見事に当てはまったと指摘しています。小さな事故は大事故の予兆と考えて安全対策を行うことは、重大事故を防ぐ上で非常に有効だと考えます。
 都としても、国の取り組みでは把握し切れない身近な事故情報を収集し、事故予防に役立てるためのサーベイランス、調査監視の取り組みが必要です。消防、病院など、事故情報が集まる現場と連携して情報収集することが有効と考えますが、具体的な取り組みについて伺います。
 
答弁3
 ▼生活文化局長
 事故情報を幅広く収集し、事故防止に役立てるためには、ご指摘のとおり、事故情報が集中する消防や病院等との連携が極めて有効であると考えております。これまでも、都立病院等のリスクマネジャーを通じて、病院で使用しているベッドや車いすなどに関する事故情報の収集を進めてまいりました。
 また、本年四月には、商品等事故情報連絡会を設置し、東京消防庁と定期的に情報交換を行っております。
 さらに、この十一月からは、病院経営本部がこの連絡会に参画し、消防、病院等との連携が一層強化されました。
 今後とも、積極的に事故情報を収集し、生活用品に起因する事故の未然防止に努めてまいります。
 
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■文化行政
 
質問1
 さきの第一回定例会において、民主党は、都が芸術文化振興において担う役割は、若手の育成だけでは語り切れない、上海や韓国が台頭する中、東京がアジアアートシーンのハブとなるためにはどのように取り組むのかと伺いました。
 その際、知事は、都の役割について、新しい創造的な文化を生み出し、発信するための環境整備と、都の魅力と都市のイメージを高め、歴史と文化を次代に継承することとし、今後アートカウンシルを設置して、東京ならではの先進的な文化政策をしていくと答弁しました。
 都の芸術文化振興には、若手の育成だけにとどまらない、広範な視野に立った芸術文化振興、特に伝統文化の継承についてもしっかりと取り組む必要があります。
 評議会は、知事の附属機関として設置されます。設置のための条例改正案の提案に当たり、評議会にどのようなミッションを課し、都の文化振興施策をどのように展開しようとの考えなのか、さらに具体的にお聞かせください。
 
答弁1
 ▼生活文化局長
 東京芸術文化評議会のミッションと文化振興施策についてでございます。
 東京芸術文化評議会の機能は、東京の文化振興に関する基本的な方針や政策について、専門的な見地から調査、審議を行うとともに、社会環境の変化に機敏に対応した提言を行うことでございます。
 そのため、知事の諮問に応じて審議を行うだけにとどまらず、評議会みずからが新たな文化施策などを発案する権限を付与されているものでございます。
 今後は、評議会の提言を生かし、オリンピック及びパラリンピックの招致及び開催も見据えて、東京の文化的魅力を一層高める施策を総合的かつ効果的に展開してまいります。
 

 
質問2
 さて、さきの所信表明で、石原知事は、トーキョーワンダーサイト青山について述べましたが、若手芸術家の育成に取り組む、その意図は評価いたします。そのために、NPOの法人などを設立し、寄附によりトーキョーワンダーサイト事業を展開しているのであれば、何の問題もありません。その事業を知事の知人やご子息が担っておられれば、それは高い評価を得ることとなったでしょう。
 しかしながら、それが都民の税金、公費によって賄われ、お茶の水、渋谷の一等地、青山の一等地を使用するということであれば、人事も費用の支出も厳正に行わなければなりません。それが、人事は知事の知人夫妻とご子息、費用の支出はずさんとあれば、都政の私物化といわれても仕方がありません。
 知事は、余人にかえがたいと述べられました。確かにご子息は、父親である石原慎太郎氏にとっては余人にかえがたいでしょうが、都知事である石原慎太郎氏が公的業務に知人とご子息を充てたとあっては、世論の批判にはたえられません。こうしたことが東京芸術文化評議会の人選にまで及ぶのであれば、都政の私物化もきわまることになってしまいます。
 知事みずからがトップダウンで進めている事業と力を入れて発言されているこの事業については、今後の人事や運営について知事みずからに伺わざるを得ません。李下に冠を正さずです。知事のご所見を伺います。
 
答弁2
 ▼知事
 東京文化評議会の人選についてでありますが、評議会は、東京の芸術文化を一層振興していくため、外部の専門家を集め、具体的な提案や知恵を集結する場として設置するものであります。
 今後、この評議会を東京の芸術文化振興の頭脳部と位置づけ、そこから得られる独創的で斬新的な提言をもとに、東京の文化的な魅力のさらなる向上を目指してまいります。
 これまでも、文化行政を進めることに当たり、写真美術館や現代美術館などの運営を民間の卓抜した経営者に任せるなどして、外部の人材を適切に活用し、大きな成果を上げてまいりました。
 評議会の人選に当たっても、我が国が世界に誇る当代きっての第一人者を、美術、音楽、建築、伝統芸能などの分野からえりすぐり、頭脳部にふさわしい人材として活用していきたいと思っております。
 なお、トーキョーワンダーサイトについてでありますけれども、これは、適切な行政手続のもとに、限られた世界でありますから、ごく限られた、しかも能力のある人材の協力をもとに行っておりまして、そういう意味で、現代アートに精通した人材を館長に起用し、海外においても、若手芸術家の育成支援の拠点として、既に高い評価を得ております。
 ぜひご認識願いたいんですが、いわゆるコンテンポラリーアート、現代美術というのは、非常に世界が狭くて、まだまだ日本では未成熟であります。しかし、どの国でも、進んだ近代都市は、いわゆるコンテンポラリーアーチストをさまざまに起用しまして新しいまちをつくっているので、これから東京が未来的な都市として、環境も整備し、魅力のあるまちとして育てていくためにも、現代芸術家たちの協力というのは不可欠でありまして、今さら丸の内に日本画を飾るというのはとてもミスマッチで、とてもそんなことはできません。
 現に、丸の内で先般、形の決まった牛に、それぞれの現代芸術家に彩色してもらいました。その中にはワンダーサイトから育った作家が何人かおりましたが、そういう形でこれからもこの事業を大いに活用して、東京の環境整備に努めていきたいと思います。
 お話しのような指摘をされるいわれは一切ございません。
 
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■新銀行東京
 
質問1
 十一月三十日、新銀行東京の中間決算が発表され、百五十四億円の赤字を計上したことや、中小企業への融資も依然進んでいないことが明らかとなりました。石原知事は、十二月一日の定例記者会見で、ちょっと思惑違いがあったなどと述べられましたが、都民の税金が一千億円も投入されているわけですから、思惑違いでは済みません。
 私たちは、二〇〇四年三月の代表質問でも、新銀行のターゲットとなる中小企業群への融資は、都市銀行や地方銀行などの金融機関の主戦場になることが予想されるとして、それでもなお、新銀行設立の意義は変わらないのかとただしてきましたが、石原知事は、都市銀行などの取り組みは、規模も小さく、融資対象も優良な企業が中心だと反論していたではないですか。
 また、石原知事は、これからちょっと違う業務を展開しないといけないと思うと、路線の転換ともとれる発言をしていますが、私たちは、中小企業対策という当初の設立目的で事業が立ち行かないのであれば、民間への売却も含めて、新銀行東京のあり方を早急に検討すべきだと考えます。一千億円の出資、信頼して預金している多くの都民に向けて、石原知事として十分な説明がなされなければなりません。
 知事の新銀行東京に対する評価と今後の事業展開についてご見解を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 新銀行東京についてでありますが、新銀行東京は、これまでに一万件以上の融資、保証を行ってきましたが、その九割以上は赤字企業を含む中小企業に対するものでありまして、中小企業の金融において重要な役割を果たしてまいりました。
 ただ、当初、かなり大きな銀行から来られた責任者たちが、中小企業の借り手としての評価、見きわめというものはなかなか困難でありまして、その部分がかなり焦げついた節もありますけれども、いずれにしろ、経営環境の厳しい中小企業にも融資を行ってまいりました。
 しかしながら、収入の確保や不良債権の抑制、経費の削減など、経営面においてまだまだ思い切り改良する点がございます。今後とも、新銀行東京が中小企業支援に軸足を置きながら、改善を進めつつ積極的な事業展開を行うように、知恵を出すべきところは出し、必要な働きかけを行ってまいるつもりであります。
 

 
質問2
 また、石原知事は、株主総会で立て直すための知恵を出そうとも述べています。私たちも、技術力や将来性にすぐれた中小企業を総合的に支援していくためには、協力を惜しむものではありません。
 しかし、ことしの予算議会において、例えば新銀行東京の資本の関係がどのようになっているのか、あるいは融資の商品別の実績はどのようになっているのか、あるいはATMが設置費用に比べて効果的に機能しているのかなど、私たちが質問をしてきたことに対して、都はさまざまな理由をつけて、こうした情報の公開を拒んできたのです。
 銀行をつくるまではマスタープランを示すなどして議会に説明をしておきながら、会社設立後は説明責任を果たさないのでは、それこそ協力してくれるなといっているのに等しいのではないでしょうか。
 新銀行東京の経営内容、事業内容の公開について見解を伺います。
 
答弁2
 ▼産業労働局長
 新銀行東京では、中間、期末決算に加え、今年度からは、上場企業並みに四半期ごとの決算を開示しております。また、融資商品別の実績を発表するなど、積極的な情報開示を行っております。さらに、開業から本年十一月末までのプレス発表は五十件、これを含め、ホームページ上における情報提供は百三十三件に達するなど、開かれた経営に努めております。
 なお、他の金融機関との競争において不利益になるような情報につきましては、企業経営上、公開しておりません。
 
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■臨海副都心開発
 
質問1
 今定例会には、臨海三セクの民事再生法の手続に伴う債権放棄の事件案などが提案されています。今回の民事再生手続、いわゆる破綻については、私たち都議会民主党はこれまでも責任の明確化と原因の究明を主張し、またビル事業についても、都が関与して継続していくことに対する疑問を投げかけてきました。
 責任論については、石原知事は、国のせい、バブルのせいだと一貫して繰り返していますが、それは余りにも無責任ではないでしょうか。石原知事は、一九九〇年の日米構造協議の合意にかこつけて、しばしば私たち民主党の小沢一郎代表のことを批判されますが、他党の党首を批判するのであれば、まずみずからの行動を振り返るべきです。
 平成三年四月、この年の予算議会で臨海関連の予算が凍結されました。迎えた都知事選挙で鈴木知事が四選を果たし、その結果、ビル事業では、計画されていた五棟のフロンティアビルのうち三棟が建設され、テレコムセンタービルにもゴーを出したのです。
 私たちは、政治家として、政治的な俎上に上ることの多かった臨海副都心開発について、もっともっと関心を持って総括する必要があるのではないでしょうか。
 特に、石原知事は、当時の鈴木知事の四選を党紀に逆らって積極的に支持した一人でもあり、この鈴木四選が、結果としてビル事業の見直しを最小限にとどめ、現在に至っていることを考えるならば、国のせい、バブルのせいだと他人事のように語るのではなく、当時の政策判断に対する政治的な責任の所在についても言及する必要があるのではないでしょうか。
 今回、臨海三セクの債権放棄を提案するに当たり、石原知事はこの責任の所在についてどのように認識していらっしゃるのか、伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 臨海三セクの民事再生についてでありますが、私が知事に就任しましたときは、臨海副都心開発はバブル崩壊の直撃を受けて、進むも地獄、退くも地獄という状況でありました。しかし、一回出てしまった船を途中で沈めるわけにはいきません。難局を打開し、開発をやり遂げることが行政の責任であると受けとめ、ひるむことなく取り組んでまいりました。
 都も、いろいろ工夫をし、腐心し、知恵を出してやってまいりましたが、臨海三セクもこれまでさまざまな経営努力を重ね、その改善の成果を上げてまいりましたが、借入金の完済に長期間を要することや、現在及び将来の金融情勢などを総合的に勘案しますと、都民に一定の負担は生じますが、今この時点で民事再生による経営再建を決断することが、とり得る最善の方策と判断いたしました。
 民事再生後の臨海三セクは、持ち株会社グループのもとで今後も有効に活用し、総仕上げの段階に入った臨海副都心開発を一層強力に推進してまいります。
 

 
質問2
 債権放棄さえすれば、もう二度と都民が失敗のツケを払うことはないのでしょうか。
 都は、経営安定化策を策定した平成十年にも、事業継続に確かな見通しがついたといっていました。中間見直しを行った平成十五年にも、計画を上回って経営改善が進んでいると答弁していました。昨年九月の段階でも、金融機関は臨海三セクを支援する、あるいは経営改善に一定の成果を上げているなどと述べていました。
 大丈夫だ、大丈夫だと繰り返してきた結果が今回の破綻という結果だったということを踏まえれば、何が問題であったのかの原因を究明し、それをどのように再生計画の中に生かしているのかといったことを示すべきだと考えます。
 少なくとも、各年度ごとの収支見通しや返済計画を明らかにするなど、具体的な根拠を示さなければ、今度こそ大丈夫だといわれても信用できるものではありません。再生計画の実効性の担保について見解を伺います。
 
答弁2
 ▼港湾局長
 民事再生計画案の実効性についてでございます。
 今回の再生計画案は、東京地方裁判所の民事再生手続の中で、弁護士や公認会計士といった専門家、金融機関を初めとする債権者等の協議のもと作成されたものでございまして、臨海三セク再生の経済合理性や実現可能性が十分確認されたものと認識しております。
 再生計画案の内容と今後の見通しについてでございますが、債権額三千六百十一億円につきまして、二千百三十七億円の放棄を受けるなどによりまして、建物の資産価値見合いである千三百十一億円にまで債権額が圧縮いたします。また、底地の現物出資により地代負担が軽減いたします。
 この結果、年間支払い利息額が、これまでの約六十億円から二十六億円程度にまで減少するとともに、営業利益は七十億円から九十億円、経常利益は四十億円から八十億円と見込んでおります。
 圧縮された債権額千三百十一億円につきましては、年平均八十五億円のキャッシュフローを用いまして、毎年元本五十億円程度を返済し、二十五年で完済する予定でございます。
 なお、今年度末までに一連の手続を終え、十九年四月には、三社の合併後、現物出資を経て、経営基盤が強化された新会社が誕生いたします。
 

 
質問3
 三セクのビル事業について、私たちの主張に対して、都は、臨海副都心開発の先導的役割を果たしているとか、地域冷暖房などの供給処理施設が地下に併設されているなどとして、平行線が続いています。
 しかし、そもそも思い起こしてださい。臨海建設株式会社は、当時の臨海開発の工事に関する膨大な積算、発注を民間からの出向職員に担わせるための受け皿となる第三セクターであったこと、また、フロンティアビルの建設は、その三セクに収益事業を行わせるための事業であったことを。さらに、テレコムセンタービル建設の発端となった昭和六十年、当時の鈴木知事が第一回世界テレポート連合創立総会で打ち出したテレポート構想が、もはやどれほど今日的でないものかを思い起こしてください。
 時代とともに役割も変わります。臨海副都心開発が総仕上げに向かっている中、また、官と民との役割の見直しが進むなど、社会経済状況は大きく変化しています。臨海三セクは、引き続き、その存在意義を検証し、団体の将来のあり方について不断の見直しを行っていくべきと考えますが、ご所見を伺います。
 
答弁3
 ▼港湾局長
 臨海三セクの将来のあり方や、事業の見直しについてでございます。
 臨海三セクは、臨海副都心に進出している約八百五十社のうち約百三十社が三セクビルに入居するなど、多様な企業の集積拠点として大事な機能を果たしております。
 また、副都心内のライフラインにかかわる重要なインフラ管理など、民間の経済合理性だけでは対応できない公益的な役割を担っております。
 今後、経営基盤が抜本的に強化された臨海三セクは、持ち株会社グループの一員として、開発に引き続き有効に活用し、社会経済状況の変化に的確に対応し、経営の効率化など見直しを不断に行ってまいります。




質問は以上ですが、本日の定例会の冒頭で知事は次期への続投を表明されました。ただいま私の質問でも数件取り上げましたが、選挙までの間、今まで二期八年の総まとめをあらゆる機会に知事に問うことになります。都民に選択の情報を提示することが議会の役割と考えます。
 知事及び関係局長の真摯な答弁を求め、以上で都議会民主党を代表しての質問を終わります。
 ご清聴ありがとうございました。
 
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