平成17年度公営企業会計決算特別委員会 委員会質疑

泉谷つよし(民主党)
■災害及び危機管理対策
 
 ▼泉谷委員
 私からは、災害及び危機管理対策というテーマ一つに絞り、関係各局に質問いたします。
  まず、下水道事業における震災対策についてお伺いします。
  首都圏においても大地震が発生する可能性が非常に高いといわれております。一たび地震が起きれば、避難所に多くの都民が避難することになります。新潟県の中越地震を例にとりますと、地震発生後一カ月を過ぎても一万人余りの人々が避難所生活を送っております。被災者の生活の中心となる避難所の生活環境の整備は極めて重要であると考えます。
  中でもトイレ機能の確保は、これまでの地震の経験からも、避難所生活者にとって大きな問題であります。中越地震では、避難している方がトイレを我慢して水分を控えていたため、血液の循環が悪くなり、エコノミークラス症候群で亡くなったことから、トイレの問題が大きくクローズアップされました。
  そこで、避難所のトイレ機能を確保するための取り組みについてお伺いいたします。
 
 ▼下水道局長
 下水道局では、震災時のトイレ機能を確保するため、避難所や災害拠点病院などに指定されております約二千カ所を対象に、これらの施設の排水を受け入れる枝線管渠の耐震化を重点的に進めております。実施に当たりましては、下水道管渠だけを耐震化しても十分な効果を発揮することはできません。避難所などの建物や排水設備の耐震化などと整合を図りながら行っておりまして、これまでに約七百カ所を実施しております。
 

 
 ▼泉谷委員
 避難所などの排水を受ける管渠の耐震化を行っているということでありましたが、地震はいつ起こるかわかりません。したがって、未対策の箇所についても早急に対策を進めるべきだと要望しておきます。
  地震時には、下水道に限らず各ライフラインにも支障が出ることが予想されます。地震が原因ではありませんが、ことしの八月には、旧江戸川でクレーン船が東京電力の送電線に接触したことによって長時間の停電が発生しました。東京都の複数の施設で影響があったことは記憶に新しいところです。
  下水道局では、都内の電力使用量の約一%に当たる大量の電力を消費しているということですが、停電時の対応が強く求められると考えます。そこで、地震などにより停電が生じた場合の対策についてお伺いいたします。
 
 ▼下水道局長
 下水道局では、水再生センターやポンプ所におきまして、停電時の雨水排除などの機能を確保できますよう、非常時の発電設備などの整備を順次進めております。また、一たん緊急事が発生しましたときの対応につきましても、マニュアルの整備を行うとともに、訓練を実施いたしまして災害に備えております。
  今後とも、都民生活の安全を守り、停電時における下水道機能を確保するための対策を着実に進めてまいります。
 

 
 ▼泉谷委員
 管渠の耐震化や非常用発電設備などの震災対策を着実に進めていることはよくわかりました。それでも対策はまだ万全ではないと思います。いざ大地震が起きれば、大きな被害が発生すると予想されます。
  緊急事態に迅速に対処するためには、みずからの備えとともに、民間や他都市との協力が不可欠ではないでしょうか。下水道局は、阪神・淡路大震災や中越地震の際に現地で支援活動を行っており、下水道施設の復旧に貢献したと聞いております。
  そこで、こうした経験を踏まえた下水道局における震災時の協力体制についてお伺いいたします。
 
 ▼下水道局長
 管渠や水再生センターなどの施設の震災時対応といたしまして、それぞれの専門的な技術を持った民間団体と協定を締結いたしまして、早期に復旧できる体制を構築しております。また、他の政令指定都市などとの発災時の円滑な支援体制などについて具体的に定めまして、それに基づき全国的に毎年訓練を実施しております。
  ご指摘のとおり、阪神・淡路大震災の際には当局職員及び関連の民間団体から約七百名、中越地震では同じく約八百五十名を派遣いたしまして、テレビカメラを用いて被災状況の調査や災害査定の支援を行った実績がございます。このような経験を今後の復旧体制の充実に生かしまして、震災時における都民生活の安全確保に貢献していくつもりでございます。
 

 
 ▼泉谷委員
 相互支援体制は、震災時に東京都が支援を受けると同時に、当然、東京都も他都市を支援する体制でありますので、ふだんから都市間のコミュニケーションを密にして、震災時には円滑な支援活動が行えることを期待したいと思っております。
  首都東京の都市活動や都民生活の安全性をより一層高めるためにも、今後も下水道局の震災対策を進めていただきたいことを申し上げ、次の質問に移ります。


 ▼泉谷委員
  続きまして、水道事業における震災対策についてお伺いいたします。
  政治経済の中枢機能が集積している首都東京では、一たび水道の供給が途絶えると、都民の日常生活だけでなくさまざまな都市機能を麻痺させ、国内のみならず世界経済に大きな影響を及ぼすことが懸念されます。このため、水道施設におきましても水源から蛇口まで計画的に耐震化を進め、安定した給水を確保していく必要があると考えております。
  二度の大きな震災災害については、古くなった管が破損するなど水道管の被害が大きかったと聞いております。首都圏におきましては首都直下型地震の切迫性が指摘され、いつ大地震に襲われてもおかしくないといわれております。
  そこで、水道管路の耐震化の考えと、平成十七年度はどのような対策を講じ、現状はどのようになっているのかお伺いいたします。
 
 ▼水道局長
 水道局では、地球半周に相当します約二万五千キロメートルの管路を管理しております。災害時におきましても都民に対する給水をできる限り確保するためには、震災被害を最小限にとどめる必要がございます。このため、水道局におきましては東京都水道局震災対策事業計画を策定いたしまして、水道管路などの施設の耐震性強化に努めております。
  具体的には、関東大震災級の地震を想定いたしまして、昭和四十年代前半までに布設されました経年管、いわゆる老朽化した管路を、耐震性の高いダクタイル管や鋼管に鋭意取りかえてきておりまして、平成十七年度末では経年管の九五%の取りかえが終了し、耐震化が図られております。
  さらに、阪神・淡路大震災を契機といたしまして、抜け出し防止機能などの高度な耐震性を備えた耐震継ぎ手管を全面的に採用しておりまして、平成十七年度までに全管理延長の二〇%の管が抜け出し防止型の耐震継ぎ手管となっております。
 

 
 ▼泉谷委員
 今の答弁で、経年管の解消は非常に進んでいるということでしたが、震災はいつどのような形でやってくるかわかりません。日ごろから、震災が発生した際にも都民が飲料水を確保できるよう、東京の被害想定を見ましても、断水の被害は甚大なものとなることが予想されています。
  そこで、震災時にどのように水を確保していくのかお伺いいたします。
 
 ▼水道局長
 水道局では、震災時の飲料水を確保するため、居住場所からおおむね二キロメートルの範囲に給水拠点を整備しております。給水拠点は百二十二カ所の浄水所や給水所に加えまして、公園や学校の校庭の地下などを利用して設置しております応急給水槽が七十八カ所ございまして、合計で二百カ所となっております。これには常時百万立方メートルの水量を確保しております。
  また、埼玉県や川崎市など近隣の水道事業者と共同で連絡管を整備いたしまして、広域的な水の相互融通を行う体制を構築しているところでございます。
 

 
 ▼泉谷委員
 ただいま、二キロメートルの範囲内ということでしたが、道路が寸断されたり、さまざまな通行の障害が発生し、それがさらにふえるため、お年寄りなど給水拠点まで遠くて歩けない住民も出てくると思います。これらの住民に対しては、区市町村が開設する避難場所で対応することと思います。また、都内には数多くの避難場所のほか、臨時の避難所も開設されております。車両による応急給水を行うということですが、給水車などを出すことになると、数多くの避難場所に対して水道局だけで対応できるのかが心配です。
  そこで、避難場所等の応急給水はどのように対応するのかお伺いいたします。
 
 ▼水道局長
 応急給水につきましては、給水拠点において、水道局が飲料水や資機材の確保を行うとともに、区市町が被災者への直接給水を行うことにより、都と区市町が連携して対応することとなっております。
  ご質問の避難場所等への給水につきましては、区市町や関係行政機関からの要請に基づきまして、学校などの避難場所や災害拠点病院等へ、私どもの営業所の車両輸送班と水道特別作業隊の給水車により応急給水を行うとともに、車両が不足する場合は、災害対策用車両の供給協定に基づきまして、輸送事業協同組合等から車両の提供を受けることとなっております。また、区市町におきましても災害用飲料水などを確保しておりまして、それらと連携して避難生活に支障を来さないようにしております。
  さらに、被害が大きい場合には、災害時の相互援助協定に基づきまして、他の十三大都市の水道事業体の応援を求めるなど、万全の体制を確保しております。
 

 
 ▼泉谷委員
 今後も水道施設の耐震化を一層推進し、断水をできる限り少なくするように取り組んでいただきたいと思っております。また、断水した場合でも、応急給水の態勢づくりに万全を期していただきたいということも申し上げまして、次の質問へ移ります。


 ▼泉谷委員
  次に、都営地下鉄の安全対策についてお伺いします。
  都営地下鉄では、地下鉄火災を想定して、駅の排煙設備の整備や二方向避難路の確保など、急ピッチで整備を進めていると聞いております。また、駅だけではなく、走行中の列車に異常があれば、仮に満員なら一編成で千人を超える乗客が危機にさらされることもあり、車両においても万全な対策を講じるべきだと考えております。そこで、委員会質疑に当たり、まず地下鉄の車両における安全対策を中心にお伺いしたいと思います。
  地下鉄車両の安全性の確保のうち、平成十五年二月に発生した韓国・大邱市の地下鉄火災を踏まえた対策に交通局では重点的に取り組んでいると聞いております。この事件は、地下鉄の車両の中でガソリンをまいたことが直接の原因でありましたが、車両や駅の設備面の不備がその後の被害を拡大させたとされ、我が国においても対策が検討されるようになったのであります。その検討結果を踏まえ、国の火災対策基準が平成十六年十二月に改正されており、車両に関する基準が強化されたところであります。
  そこで、都営地下鉄では、国の火災対策基準の改正を踏まえ、平成十七年度にはどのような取り組みを行ったのかお伺いします。
 
 ▼交通局長
 委員お話しのように、韓国・大邱市の地下鉄火災を受けまして、国の火災対策基準が一昨年改正されましたが、地下鉄車両に関しては、火災の拡大防止のため、天井に使用している材質の変更と車両間の扉の設置が義務づけられたところでございます。その中で、既存車両につきましては、材質の変更や扉の設置は当該箇所の改修工事を行う際にあわせて実施するよう定められております。
  これを踏まえた平成十七年度の取り組みについてでございますが、まず天井材の材質変更につきましては、新宿線は基準に適応しておりますので、それ以外の浅草線及び三田線におきまして、各一編成ずつ改良を実施する一方で、大江戸線につきましては改修に着手いたしました。
  また、車両間の扉につきましては、浅草線だけが扉が二両に一カ所であり、今回の基準に適応していないため、新たに扉の設置が必要となりまして、平成十七年度には一編成で設置を行ったところでございます。残った車両の整備につきましては、大規模修繕などにあわせまして、今後計画的に実施していく予定でございます。
 

 
 ▼泉谷委員
 昨年のJR福知山線の事故につきましては、運転手が急カーブを制限速度を超えて走行したためとされておりますが、この事故を踏まえ、国においては、鉄道の安全性の一層の向上のために、学識経験者や鉄道事業者等から成る技術基準検討委員会を設置し、鉄道の安全水準のあり方について検討を行ったと聞いております。
  そこで、本年三月には、国はこの検討結果に基づいて省令の改正を行ったようでありますが、車両に関する改正の概要とこれに対する対応についてお伺いいたします。
 
 ▼交通局長
 JR福知山線の事故を受けまして、本年三月に鉄道に関する技術上の基準を定める省令が改正されましたが、この中で車両に関する主な改正は三点となっております。
  まず第一に、線路のカーブなどにおいて列車の速度を制限する装置の設置が義務づけられ、都営地下鉄では浅草線でこの対応が必要となりますが、既に省令改正前から改修を始めているところでございます。
  第二に、自動的に列車をとめる装置の設置でありまして、この装置は既に各線車両に整備されておりますが、浅草線と三田線で一部改修を行っていかなければなりません。
  第三には、運転状況記録装置が義務づけられましたが、新宿線を除く三線で設置が必要となっております。
  これらの整備の対応につきましては、国の実施期限では、相互直通運転を行っている浅草線及び三田線が平成二十三年六月まで、大江戸線が平成二十八年六月までとなっておりますが、車両の安全対策上不可欠のものでありまして、今後できるだけ早期に完了するよう取り組んでまいります。
 

 
 ▼泉谷委員
 最後に、都民の安心や信頼を確保するため、車両を含め都営地下鉄の安全性を今後もさらに向上させていく必要があると考えますが、局長の決意をお伺いします。
 
 ▼交通局長
 お客様の安全を確保することは、交通事業者として最優先すべきサービスの基本でありまして、最大の使命でございます。委員からお話しありましたように、平成十五年には韓国・大邱市の地下鉄火災、またJR福知山線以降、列車脱線事故、ロンドンの地下鉄テロ等、鉄道の安全を揺るがす事態が発生する中で、安全の確保は重点的に取り組むべき課題であると認識しております。
  こうしたことから、浅草線全般にわたるAТSの改良など車両の安全対策に加えまして、二方向避難路の確保や排煙設備の設置といった駅の防災改良にも引き続き積極的に取り組んでまいります。
  また、緊急時に備えまして、日ごろから各種の訓練を重ねながら、ヒューマンエラー防止の取り組みを確実に実施する一方、本年十月から施行となりました安全マネジメント体制を適切かつ迅速に実施してまいります。
  今後とも、安全最優先の都営地下鉄を目指しまして、ハード、ソフト両面からより一層安全性向上に全力で取り組んでいく決意でございます。
 

 
 ▼泉谷委員
 次に、病院経営本部のことについてお伺いします。
  都立病院における震災対策、危機管理対策について、広尾病院は国の基幹災害医療センターとしての指定を受けております。また都立病院の救急災害医療センターでもあります。ハード、ソフト両面から医療危機管理体制を強化すべきですが、どのように取り組んでいるのかお伺いいたします。
 
 ▼病院経営本部長
 これまで広尾病院では、都立病院における救急災害医療センターとしての役割を果たすため、ハード、ソフト両面から段階的に整備を進めてまいりました。具体的には、ハード面では、臨時診療所に転用可能な災害研修室や備蓄倉庫を併設した職務住宅を平成十六年三月に整備したほか、平成十七年度におきましては災害用医療資機材の配備を増強してまいりました。また、ソフト面におきましては、発災時の即応体制を確保するために、医療救護班を常時編成するとともに、災害医療に関する専門スタッフの育成と職員への研修、さらには実際の災害を想定した訓練などを行ってまいりました。
  今後とも、都立病院全体の災害医療体制のモデルとなるように、医療危機管理体制の強化に努めてまいります。
 

 
 ▼泉谷委員
 もし災害等で広尾病院が機能し得ない状況になった場合には、他の都立病院が代替機能を果たさなければならない。また、多摩地域における対応も必要であると考えますが、どうでしょうか。
 
 ▼病院経営本部長
 お話しのような局所的な発災等により、救急災害医療センターである広尾病院の機能が停止した場合を想定し、区部におきましては墨東病院を、また、ご指摘の多摩地域におきましては府中病院を、救急災害医療センターの代替補完機能を担う病院に位置づけ、災害医療体制を整備しているところでございます。具体的には、広尾病院と同様に、多数傷病者の受け入れ体制を確保し、災害用医療資機材の備蓄整備などを行うことにしてございます。
 
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