平成17年度各会計決算特別委員会 委員会質疑

野上純子(公明党)
■財政問題
 
 ▼野上委員
 まず最初に、財政問題についてお伺いいたします。
  平成十七年度決算は実に十六年ぶりに実質収支が黒字となり、経常収支比率も八五・八%と、九〇%以下の水準にまで改善しました。これは、内部努力、施策の見直しなどに着実に取り組んで財源不足の解消に努めてきたことが財政の健全化に功を奏し、景気の回復も追い風になり、当初の見込みよりも税収が伸びたものと思っております。
  せっかく増収となったのに、都民のためにお金が使われていないのではないかといったような声が一部から聞こえてきますが、体力が回復してきた今こそ、さらなる体力の増進を図るべきです。
  そこで、十六年度及び十七年度決算において、財政基盤の強化に向け具体的にどのような取り組みを行ったかについてお伺いします。
 
 ▼財務局長
  この間、幸いにも、景気の回復によりまして、都税収入が当初の見込みよりも増収となってきております。都では、こうした機会を都財政の体力を回復する絶好のチャンスととらえ、補正予算などを通じ、ご指摘の財政基盤の強化を優先課題として取り組んでまいりました。
  具体的な取り組みといたしましては大きく二点ございまして、一つは、減債基金の積み立て不足など、隠れ借金を大幅に圧縮したことでございます。十五年度末に一兆円を超えていた隠れ借金は、十七年度末に約八千億円となり、十八年度の取り組みも含めれば六千億円を下回るなど、ピーク時からは半減させることができております。
  もう一つは、基金残高の確保に努めたことでございます。十五年度末には約一千五百億円と、財政規模のわずか二%から三%にまで減少した基金残高は、十七年度末には五千億円を超え、十八年度末には約六千五百億円と、隠れ借金を上回る水準になる見込みであるなど、都の財政基盤は着実に改善を続けていると認識しております。
 

 
 ▼野上委員
 この二年間における財政基盤の強化に向けた取り組みをお伺いいたしましたが、こうした取り組みは今後も続けていく必要があります。
  都は、ことしの七月に今後の財政運営の指針を策定いたしました。その中においても、強固で弾力的な財政基盤の確立に向けて取り組んでいくことを掲げています。
  そのための具体的な取り組みの一つとして、基金の積極的活用を行っていくとしております。特に都税収入は、景気の変動を受けやすい法人二税が多くを占めております。都税収入はこれまでも大きな増減を繰り返すなど、不安定な構造となっており、最近は堅調に推移しているものの、いずれまた大きく反転することも考慮し、収入減に備えておくことが肝要です。
  そこで、過去の経験を伺いますが、バブル崩壊後、具体的には平成元年度以降の都税収入の変動について、どうだったんでしょうか。
 
 ▼主税局長
 平成元年度以降の都税収入の状況でございますが、平成三年度の四兆八千億円、これを最高にいたしまして、その後三年連続で前年を下回りまして、平成六年度には三兆九千億円となっております。したがいまして、この間には約一兆円の開きがございます。
  その後、四兆円台前半を中心に推移してまいりましたけれども、直近の平成十七年度には、徴税努力に向けたさまざまな創意工夫を凝らしました取り組み、そしてまた近年の景気回復を反映いたしまして、四兆六千億円となっております。
 

 
 ▼野上委員
 かつて都税収入が三年間で九千億円、約一兆円もの減収となったことを踏まえれば、今の税収増に決して安心することはできないと思います。これまで以上に基金の積み立てを図る必要があります。
  そのためには、先ほどの十七年度決算での取り組みにもあったように、税収が伸びたときこそ積極的に基金に積み立て、税収の変動などのリスクに備えておくべきです。また、積み立ての額についても、多いことにこしたことはありませんが、安定的に都財政を運営していくために、今後基金への積み立てはどれぐらい必要と考えているのか、お伺いいたします。
 
 ▼財務局長
 ご指摘のとおり、不安定な税収の動向に左右されず、将来にわたって必要な都民サービスを安定的に提供していくためには、税収の増減に応じて積極的に基金の積み立てや取り崩しを行うことにより、年度間の財源調整を図っていくことが極めて重要でございます。
  バブル崩壊後の税収激減という事態に直面した際には、最大一兆円を超えていた基金のほとんどを取り崩すことによって何とか財政運営を維持したものでございまして、仮にそうした蓄えがなければ、財政再建団体への転落が現実のものとなり、都民生活を脅かす深刻な事態に陥っていたのではないかと考えております。
  一時は底をついた基金残高も順調に回復してきてございますけれども、現在の積立額では十分に安心できる規模ではなく、過去の経験なども勘案すれば、少なくとも一兆円を超える額が必要であると考えてございます。
 

 
 ▼野上委員
 一兆円を超える額が必要ということですね。十分な残高を確保し、税収の変動によって都民サービスの低下を招くといったことにつながらないように取り組んでいっていただきたいと思います。
  さて、財政基盤の強化に向けては、今後も引き続き経費の削減に取り組んでいくことが求められます。中でも職員定数の削減を初めとする内部努力は、財政再建推進プランにおける財源確保の柱の一つとして、これまでも厳しい取り組みが行われてきております。
  そこで、第二次財政再建プランにおける内部努力による目標額と確保額についてお伺いいたします。
 
 ▼財務局長
 第二次財政再建推進プランでは、いわゆる内部努力分として一千億円の財源確保を目標としてまいりました。職員定数の削減や各種手当の見直しなどによる給与関係費の削減や、監理団体に対する財政支出の見直しなどによりまして、十六年度から十八年度までの三年間で、目標を超える千百二十八億円を確保したところでございます。
 

 
 ▼野上委員
 財政再建の過程で、内部努力による財源確保が目標どおりに達成されたことがわかりました。
  内部努力ということでは、やはりことしの七月に行財政改革実行プログラムが出されて、定数削減や監理団体の改革などに引き続き取り組んでいくことが示されています。財政構造改革を進めるに当たっては、今後とも内部努力を行っていくことが欠かせません。むしろ、財政の状況が好転しているときこそ、腰を据えてじっくりと進めていくべきではないかと思います。今後、内部努力を含め、行財政改革を積極的に進めていく方途について伺います。
 
 ▼総務局長
 社会構造の変化に的確に対応し、活力ある東京を創造していくためには、不断の行財政改革を推進し、都政の対応力を高めていくことが必要でございます。
  こうした観点から、都は昨年十一月、行財政改革の新たな指針を策定し、この七月には、今後三カ年の具体的な取り組みを明らかにした行財政改革実行プログラムを策定いたしました。
  今後は、本プログラムに基づきまして、平成十九年度から平成二十一年度までの三年間で、都の内部努力として、四千人の職員定数の削減に取り組みますとともに、多様な経営改革手法の活用、監理団体改革や公営企業改革の一層の推進などの取り組みを行い、時代の要請に即した行財政改革に努めてまいります。
 

 
 ▼野上委員
 高度成長期やバブル期に整備された社会資本や大規模施設が次々と更新期を迎えること、また、少子高齢社会により介護保険や老人医療などの負担増が見込まれること、また、減債基金の積立方式変更に伴う公債費負担の増加など、一歩かじ取りを間違えれば、予測不能な事態へと転がってしまう危険性を含んでおります。社会状況の変化にかかわらず持続可能な財政に取り組んでいくためにも、徹底した内部努力を含め、行財政改革をこれまで以上に積極的に進めていただきたいことを要望いたします。
  次の問題に移ります。
 
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■行政改革
 
 ▼野上委員
 次は、地方独立行政法人制度について伺います。
  地方独立行政法人制度は、地方公共団体が直接行っている事務事業のうちの試験研究や大学の設置、管理など、地方公共団体とは別の法人を設立し、事務事業を担わせることにより、より効率的、効果的な行政サービスの提供を目指すものであります。
  都においては、この制度を活用し、平成十七年四月に公立大学法人首都大学東京を設立するとともに、都立の四大学を再編統合し、首都大学東京を開学いたしました。
  先ごろ、首都大学東京の初年度の業務実績について、東京都地方独立行政法人評価委員会による評価結果が議会に報告されました。法人設立から一年半たちましたが、首都大学東京は、独立行政法人化したことによって、大学運営、特に経営面においてどのようなメリットがあるのか、伺います。
 
 ▼総務局長
 法人化によりまして大学運営における経営と教学の分離を図りまして、経営面では理事長が、教育研究面では学長がそれぞれリーダーシップを発揮し、強力に大学改革を推進していく体制を構築しております。
  経営面では、これまでの官庁会計から企業会計方式に転換をし、複数年度契約による経費節減が図られ、中期計画の範囲内での予算の前倒し執行が可能となるなど、状況の変化に迅速に対応できるようになりました。
  また、損益計算において生じた利益を翌年度に繰り越して活用できる仕組みとなり、これにより弾力的な大学運営が可能となっております。
 

 
 ▼野上委員
 独立法人化によって弾力的な大学運営が可能になったということですが、平成十七年度の業務実績評価書の財政運営の改善に関する目標という大項目のうち、剰余金の適切な活用による戦略的な事業展開に関する目標というのがあります。これを見ると、年度計画を十分に実施できていないと評価されております。
  法人化初年度の決算においては具体的にどの程度の剰余金が生じたのか、そして、この評価を受けて、法人は今後剰余金の有効な活用と効果的な財政運営にどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。
 
 ▼総務局長
 法人化初年度の十七年度の決算では、教員の計画的な採用を初め、複数年度契約や業務コストの抑制などに努めました結果、約二十三億円の剰余金が生じております。
  法人におきましては、評価委員会の指摘を踏まえ、決算で生じた剰余金につきましては、教育研究、社会貢献及びこれらを支える法人運営の充実強化に資する事業に充当し、大学改革を一層推進することとしております。
  また、財政運営面では、部門別決算や四半期決算などの管理会計方式の考え方を取り入れまして、迅速かつ計画的な予算の執行管理を行いますとともに、余裕資金を活用した資金管理を効果的に行うなど、戦略的な財政運営を推進していくこととしております。
 

 
 ▼野上委員
 経営面における独立行政法人化のメリットについてはいろいろと伺いましたが、大学において重要なことは、いうまでもなく、教育研究の質の向上であります。
  大学の教育研究の主たる担い手は教員でありますが、教員には、教育研究に取り組むだけではなく、研究成果の社会への還元や、それを通した外部資金の獲得にも大きな役割が期待されております。首都大学東京が学生や都民にとって魅力ある大学となるためには、優秀でやる気のある教員を一人でも多く集めることが不可欠です。
  首都大学東京では、教員のやる気を引き出すために、開学に合わせ、教員に任期制、年俸制を導入したと聞いております。それらの制度の運用状況についてお伺いいたします
 
 ▼総務局長
 首都大学東京では、意欲ある教員のステップアップと教育研究の活性化を図りますために、教員に任期制、年俸制を導入いたしました。
  まず、任期制は、教員に原則五年の任期を定めて任用いたしまして、節目ごとに再任の判定を行い、上位職への昇任の契機とするとともに、教育研究の質の維持向上を図り、人材の適切な流動性を確保し、組織の活性化にも資するものとして制度化をいたしました。
  また、年俸制は、教員の給与に職務職責の差異や業績を反映させることができる制度でございまして、今後、教員の業績評価制度を整備し、業績を年俸に的確に反映させることにより、教員のやる気と努力にこたえる制度としてまいりたいと考えております。
 

 
 ▼野上委員
 独立行政法人化によって運営面や人事面でかなり改善が図られたことは理解できました。
  一方、急激な社会経済情勢の変化とともに、人材に対するニーズも多様化、そして高度化しております。特に大学における人材育成には、都民や地域企業からさまざまな注文や要望が寄せられております。
  首都大学東京には、これらの声に迅速に対応し、広く社会で活躍できる人材の育成に貢献することが求められているのではないかと考えます。人材育成は大学の大きな使命の一つですが、具体的にはどのような取り組みを行っているのか、お伺いいたします。
 
 ▼総務局長
 首都大学東京では、都市の抱えるさまざまな課題解決にリーダーシップを発揮できる人材の育成を目指しております。このために、入学者選抜では、ゼミナール入試ですとか、あるいは社会人AO入試など、選抜方法の充実を図り、多様な資質と能力を持つ学生の受け入れを進めております。
  また、学部編成やカリキュラムの面でも、都市問題の解決を図りますために、都市教養学部、都市環境学部などを設置し、都市教養プログラムや基礎ゼミナールといった特色のある教育を実践しております。
  さらに、平成十八年度には、高度な専門知識を持つ技術者を育成するために、実践的なカリキュラムを提供する産業技術大学院大学を開設したところでございまして、今後とも都民ニーズを反映した人材育成に積極的に取り組んでまいります。
 

 
 ▼野上委員
 今日の大学には、社会で活躍できる人材の育成に加え、大学が有する資源や研究成果を地域社会に還元することも重要な使命となっています。首都大学東京においても、産学公連携センターを設置し、コーディネーターを配置するなどの取り組みが行われていると伺っております。
  しかしながら、十七年度の業務実績評価書を見ると、産学公連携の成果である外部資金の増加に関する目標については、年度計画を十分に実施できていないと評価されています。具体的には、外部資金獲得額が十億円という数値目標を下回ったことが指摘されております。
  そこで、首都大学東京は産学公連携の推進による外部資金の獲得のために今後どのような取り組みをするのか、お伺いいたします。
 
 ▼総務局長
 産学公連携の推進は首都大学東京の使命の一つでございまして、大学における研究成果を社会に還元し、地域産業の活性化などに積極的に貢献することが重要でございます。
  法人におきましては、今回の指摘を踏まえまして、国の科学研究費補助金及び競争的研究資金の獲得を一層積極的に進めますとともに、産学公連携センターが主導し、大学のシーズを外部に積極的に提供、PRすることで企業との共同研究や受託研究を推進するなど、産学公連携の取り組みを強化いたしまして外部資金の増加を図ることとしております。
 

 
 ▼野上委員
 まだまだ初年度だけの成果ではありますが、首都大学東京の取り組み状況をいろいろと伺い、独立行政法人化によって、行政にとっても、また都民にとっても一定のメリットがある大学運営が行われているように思いました。
  首都大学東京が公立大学としての使命を果たし、学生にとって魅力ある大学となるとともに、地域社会や都民に貢献する大学となるよう期待し、次の質問に移ります。
 
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■住宅政策
 
 ▼野上委員
 都営住宅を活用した子育て支援についてお伺いいたします。
  都議会公明党は、子育て支援策として、子育て世帯への期限つき入居制度の導入を推進し、また昨年は、多子世帯向けや期限つき入居制度を推進してきました。成果を上げてきたところでございます。
  昨年十二月には国の運用指針が出され、本年六月には東京都住宅政策審議会の答申も出ており、都営住宅のセーフティーネットとしての役割はますます大きなものとなっております。都営住宅は都民共有の財産であり、真に住宅に困窮する低額所得者に対して公平かつ的確に供給していくことが重要と考えております。
  ことし八月の規則改正で、利用機会の公平を図るため都営住宅の使用承継制度の見直しが行われ、承継の範囲が、高齢者、障害者等への配慮を前提にして、従来、原則として配偶者及び一親等まであったものが、原則配偶者のみとなりました。来年の八月から実施されますが、ぜひとも居住者の不安を取り除くために周知に努めてもらいたいと思います。
  ところで、承継の対象外となり、公募に回る空き家はどの程度と見込まれますでしょうか。
 
 ▼都市整備局長
 平成十七年度の使用承継の実績は約三千九百件でございます。このうち配偶者への承継が約三千件、例外的に承継を認めることとなる高齢者、障害者、病弱者は約三百件あり、したがって、年間約六百戸の住宅が公募の対象になると見込まれております。
 

 
 ▼野上委員
 今回の見直しにより約六百戸が新たに公募の対象となるということです。この六百戸というのは公募戸数のうちのどれぐらいの割合になるのか。そのためには、昨年度の都営住宅の公募実績は何戸なんでしょうか。
 
 ▼都市整備局長
 平成十七年度の公募実績は約六千四百戸でございます。
 

 
 ▼野上委員
 見直しにより公募に回る六百戸という戸数は、平成十七年度の公募戸数が六千四百戸なので、六千四百分の六百ということで約一〇%に当たるということですね。もちろん、単純にすべての住宅が公募に回るとはいえないのは承知していますが、これだけの数の住宅が公募に回り、それだけ入居の機会がふえることは大変意味のあることだと思っております。
  我が党は子育て支援についてはたびたび主張してきましたが、使用承継制度の見直しによって生み出される空き家については、今後子育てに積極的に活用すべきであると考えておりますが、どうでしょうか。
 
 ▼都市整備局長
 都営住宅につきましては、約二十六万戸のストックを有効に活用し、真に住宅に困窮する都民に的確に供給していくことが重要と考えております。
  都営住宅における子育て支援につきましては、これまで、ひとり親世帯や十八歳未満の子どもが三人以上いる多子世帯などに対し優先入居を行うとともに、若年ファミリー世帯や多子世帯向けに期限つき入居制度を導入してまいりました。
  使用承継の見直しによって発生する空き家につきましても、東京都住宅政策審議会の答申の趣旨を踏まえ、空き家の広さや間取りなどを勘案しながら、子育て世帯に対する支援の強化に活用する方向で検討してまいります。
 

 
 ▼野上委員
 都営住宅は都民全体のセーフティーネットとして有効に活用されるべきであり、近年の重要課題である少子化対策に全力で取り組んでいってもらいたいと思います。我が党は子育て支援策について引き続き積極的に提案をしてまいります。
  さて、近年、ドメスチックバイオレンス、DV被害者の問題がクローズアップされております。平成十三年に国は配偶者暴力防止法を制定し、その対応策の充実を図ってきたところでありますが、DV被害者に対する相談件数は、都の配偶者暴力相談支援センターに寄せられた相談件数で見ると、平成十三年度の三千三百三十四件から、平成十七年度には九千七百六十六件と、三倍近くに増加しております。
  都営住宅においてはDV被害者の方々にどのような政策を行ってきたのか、現状をお伺いいたします。
 
 ▼都市整備局長
 都営住宅におけるDV被害者への対応についてでございますが、都では、DVにより事実上婚姻関係が破綻していることが公的機関の証明により確認できる場合には、ひとり親世帯または単身世帯とみなして、都営住宅への入居者資格を認めております。
  このうちひとり親世帯については、住宅困窮度に応じて入居させるポイント方式や、当選倍率を優遇する抽せん方式の対象としてまいりました。
  そのほか、母子生活支援施設からの転出者などに対しても特別な募集枠により対応するなど、これまで既存の制度を可能な限り活用して柔軟に取り組んできたところでございます。
 

 
 ▼野上委員
 これまでも対応されてきたことはよくわかるんですけれども、何せ急増している現実があるんです。施策の多くは既存の制度を活用したものであり、DV被害者の増加への対応としては十分とはいえないのではないでしょうか。DV被害者のための制度を設けるべきだと考えますけれども、どうでしょうか。
 
 ▼都市整備局長
 DV被害者への対応につきましては、ことし六月の東京都住宅政策審議会答申で、住宅に困窮する事情が多様化している現状を踏まえ、優先入居の対象とするなどの検討を行うべきとされております。
  都といたしましては、DV被害者は、さまざまな要因から、市場においてみずから住宅を確保することが困難であると認識しておりまして、現在、提言の趣旨を踏まえて、優先入居について検討を進めているところでございます。
 

 
 ▼野上委員
 優先度が高まるということですね。ぜひ、DV被害者が入居しやすく、優先度が大幅にアップすることを期待しております。
  次に、あんしん入居制度についてお伺いいたします。
  高齢者の民間賃貸住宅への入居支援策ですが、高齢社会が進展する中、民間賃貸住宅に入居する高齢世帯が増加することが今後も予測されております。その一方で、平成十六年の財団法人日本賃貸住宅管理協会の調査によりますと、民間の賃貸住宅において、家主の約六割が高齢者の入居に消極的であるという結果が出されているんです。その理由は何かというと、病気や事故が心配であるとか、死亡、特に孤独死の不安などが挙げられています。
  そうした中、都ではこれまで、高齢者が民間賃貸住宅に入居しやすいよう、見守りサービスのほか、亡くなった際の葬儀や残存家具の片づけを行うあんしん入居制度により高齢者の入居支援を行ってきております。
  昨年十月には、それまで窓口が財団法人防災・建築まちづくりセンター一カ所しかないことなどから利用者が伸び悩んでおりました、あんしん入居制度への申し込みの取扱窓口を地域の不動産店に拡大したほか、利用料の引き下げを行うなど、制度の改善が図られてきたところです。
  そこで、制度改善が行われて約一年が経過したことから、これまでの取り組みについてお伺いいたします。
  まず、昨年制度を改善してからこれまでのあんしん入居制度の利用実績をお伺いいたします。
 
 ▼都市整備局長
 あんしん入居制度の利用実績についてでございますが、本年十月末現在で二百一件ございまして、制度改善前と比べて四十件増加しております。
 

 
 ▼野上委員
 この一年間で四十件利用実績がふえたということです。実績がある程度伸びたのは、これまで一カ所だった窓口を地域の不動産店まで広げて、利用しやすくしたためであると考えられます。
  そこで、これまで一カ所だった取扱窓口を何カ所に拡大したのか、お尋ねいたします。
 
 ▼都市整備局長
 昨年来、不動産業団体の研修会等の場を通じて制度の普及に努めてまいりました。その結果、本年十月末現在、四百六十五の不動産店が登録されております。
 

 
 ▼野上委員
 都内の不動産業者の数というのは約二万三千軒と聞いています。登録店の数が四百六十五店ということで、業者数全体から見るとまだまだ少ないですね。今後より利用しやすくしていくためには、身近にある不動産店の登録をさらに促進していくことが重要と考えますが、所見をお伺いいたします。
 
 ▼都市整備局長
 取扱不動産店の登録の促進についてでございますが、多くの不動産業者に対して制度への理解を深めてもらうため、引き続き説明会を開催するなど、不動産業団体との連携を強化し、登録店の拡大を図ってまいります。
 

 
 ▼野上委員
 これまでの制度改善の取り組みによって一定の成果はあったものの、あんしん入居制度の利用実績はまだまだ少ないと思います。
  昨年から障害者も利用できる制度になったところです。本制度の利用の拡大を図るためには、障害者団体も含め幅広くPRを図っていくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 
 ▼都市整備局長
 あんしん入居制度の周知についてでございますが、この制度は、高齢者や障害者が民間賃貸住宅に安心して入居するための支援制度でございまして、関係者に広く周知を図ることが重要と考えております。
  これまでも、区市町村や社会福祉協議会、居宅介護事業者等を通じて説明会を行ってまいりました。今後は障害者団体等にも説明対象範囲を広げ、制度の普及に努めてまいります。
 
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■若年者の就業支援
 
 ▼野上委員
 次に、若年者の就業支援についてお伺いいたします。
  平成十六年七月にオープンした東京しごとセンターは、すべての年齢層を対象に、就業に関するワンストップサービスを提供しております。平成十七年度には約七千七百人が就職したと伺っております。
  先日、しごとセンターを訪問した際にも、各年齢層に応じてきめ細かい対応を行っておりました。また、私が提案いたしました仕事と家庭の両立支援コーナーも設置されていて、感動した次第であります。また、特に若者についてはヤングコーナーを設けてあり、カウンセリングやセミナーなど、さまざまな取り組みについて拝見をいたしました。
  そこで、平成十七年度のしごとセンターにおける若年者向け事業の内容と実績についてお伺いいたします。
 
 ▼産業労働局長
 十七年度の若年者向けの事業といたしましては、若者一人一人の適性や希望、職務経験等の状況を踏まえた個別カウンセリング、また、少人数のグループでアドバイザーの助言を受けながら、メンバー相互の情報交換等を通じ就職活動の意欲を高める就職コミュニティを実施いたしました。さらに、企業で営業や製造を初めとした就業体験を行うインターンシップなど、さまざまな職業体験事業等にも取り組みました。
  これらの各種事業を通じまして、二千人を超える若者が就職することができたところであります。
 

 
 ▼野上委員
 十七年度は各種事業を通じて約二千人の若者が就職できたということですが、特にしごとセンターならではの特色あるグループカウンセリング等の手法を用いた就職コミュニティについては、全二十期、約二百五十人が参加し、その半数以上が就職に結びついているということです。しごとセンターが着実に成果を上げていると評価するものでありますが、都内の若年者の完全失業率は五%を超えております。解決すべき問題が残されていることも事実であります。
  そこで、各種事業を実施した結果見えてきた、若者の就業をめぐる問題点についての認識を伺います。
 
 ▼産業労働局長
 しごとセンターを利用する若者の就業をめぐる問題点といたしましては、職業意識やコミュニケーション能力、ビジネスマナーなど、就業に関する基礎的な能力の不足、また、就職活動や就職後のつまずきから自信を失い、積極的な就職活動に踏み出せないなどの傾向が見受けられます。さらに、正社員を希望してもなかなか採用に至らないフリーターにつきましては、職業能力開発を受ける機会が十分に得られず、基礎的事務能力が不足していることも課題であります。
  こうした問題点を解決していくことが若年者の就業に結びつくと考えております。
 

 
 ▼野上委員
 若者の就業をめぐる問題をこのまま放置していれば、本人にとっても、社会にとっても大きな損失になりかねません。都は、しごとセンターの取り組みを通して見えてきた課題に対応し、若者の就職を進めるため十八年度から展開している新たな事業の内容について伺います。
 
 ▼産業労働局長
 若者には、一人一人の状況に応じたカウンセリングや職業能力開発など、きめ細かい就業支援が効果的であります。このため都では、従来の支援策に加えまして、十八年度からしごとセンターにおいて、社会人としての基本的なマナーなどを教え、就職活動に踏み出すための自信をつけさせるワークスタート支援プログラムを開始いたしました。
  また、技術専門校において、正社員を目指すフリーター向けに基礎的事務能力を付与する、夜間に利用できる単位制パソコン科も実施しております。
  今後とも、こうした取り組みの成果等を踏まえ、支援策を充実してまいります。
 

 
 ▼野上委員
 今お話があったように、しごとセンターを初め、都として、今後とも若者の就業支援を一層充実していただくようにお願いいたします。
  また、高齢者や障害者の就業支援についても引き続き積極的な取り組みをお願いして、次の質問に移ります。
 
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■教育
 
 ▼野上委員
 いじめについてお伺いいたします。
  昭和六十一年二月一日に中野富士見中学校で、いじめによりみずから命を絶つという痛ましい事件がありました。その約十年後、平成六年十一月二十七日には、愛知県でいじめを原因とする自殺が起こりました。
  子どもの間で起きるいじめは真実が見えにくい。多くの場合、被害を受けている子は、家族にもいえず、だれにもいえない苦痛をじっと耐えているのが実態です。いじめによる深刻な実態がある日突然起きるということではありません。いじめが発見され、教師の指導が入るまでに、いじめられる子は何らかのサインを送っています。
  最近、いじめの問題については、いじめによる自殺、また自殺予告の手紙が文部科学省の伊吹大臣あてに届いたり、いじめ自殺の連鎖など、大きな社会問題となっております。
  東京都の実態調査によると、今どのようないじめが多く起こっているのか、また、それに対して都教育委員会はどのような対応を行っているのでしょうか。
 
 ▼教育長
 文科省調査によりますと、東京都におけるいじめの態様は、冷やかし、からかい、これが最も多く、次いで、言葉でのおどし、仲間外れの順となっております。
  都教育委員会は、いじめの問題は児童生徒の健全育成上の重大な課題であると認識しておりまして、各学校がいじめへの取り組みを自己点検し、早期発見、早期対応に努める強化月間の実施やスクールカウンセラーの派遣、都教育相談センターにおけるいじめ相談の実施など、いじめの問題を解決するための取り組みの充実を図ってきたところでございます。
 

 
 ▼野上委員
 東京都では中学校全校にスクールカウンセラーが配置されておりますが、いじめの問題の解決に向けて期待されるスクールカウンセラーのかかわりについて伺いたいと思います。
  私も今、道徳の授業とかをそれぞれの中学校で参観しておりますが、必ず教育相談室、スクールカウンセラーのいらっしゃる部屋を訪ねるようにしております。やはり気づくことなんですが、なかなか不登校とかで悩んでいる子どもの家庭訪問とかには出かけない、相談が来るのを待ちの姿勢で待っているということが多いということを認識しております。積極的にスクールカウンセラーがいじめや不登校などにかかわっていくような制度にしていかなければいけないと思っているのですけれども、その点についてどうでしょうか。
 
 ▼教育長
 スクールカウンセラーがいじめの問題の解決に向けましてその役割を十分果たすためには、生徒との信頼関係を一層深めるとともに、教員の相談活動への支援を充実することが重要であるというふうに考えております。
  このため、スクールカウンセラーが生徒と触れ合う機会をふやすとともに、校内研修会等で教員の教育相談技能の向上に努めるなど、いじめの問題の解決に向けた相談活動を充実するよう指導してきたところでございます。
  今後、スクールカウンセラーが、学校や家庭はもとより、地域や関係機関との連携を一層深め、積極的に相談活動を行うよう連絡会などを通して指導してまいります。
 

 
 ▼野上委員
 小学校の児童や親御さんにも、中学校区のスクールカウンセラーに相談しやすい体制を整えていくことが大事だと思います。本来ならば、小学校にもスクールカウンセラーが導入されるのがいいんでしょうけれども、時間給五千円を超えるということで、予算措置が大変難しいと思いますので、今ある制度をむだにしないように、有効に活用を図っていただきたいと思っております。
  教師自身がいじめに気がつかなかったり、あるいは、教師自身がいじめに加わったり、いじめを助長するような行為をする場合があります。いじめの問題を解決するためには、何よりも教員の資質の向上を図るための研修が必要と考えております。
  その見解と、もう一つは、全庁を挙げてこのいじめ問題について取り組むことが大事であると思いますので、この二点についてまとめてご答弁をお願いします。
 
 ▼教育長
 ご指摘のように、教員の資質の向上を図るためには何よりも教員研修の充実が必要でございます。
  現在、東京都教育委員会は、各学校でいじめの早期発見、早期対応等を目指す校内研修を充実するためのチェックシートを配布いたしまして、その活用、推進に努めているところでございます。
  また、教職員研修センターにおきまして、いじめの具体的な事例を取り入れた実践的な研修を実施するなど、研修の充実を図り、教員の資質向上に今後も取り組んでまいります。
  また、いじめの問題を解決するためには、学校と保護者、地域社会が連携することが極めて重要でございます。また、ご指摘のように、生活文化局、病院経営本部、福祉保健局、警視庁、教育庁の相談窓口の担当者が連絡会を定期的に開催するなど、全庁を挙げていじめ等の問題に対応する体制も必要でございます。
  都教育委員会は、保護者や地域の方々がいじめを早期に発見するための新たなチェックリストを作成し、十月二十七日に区市町村教育委員会を通して配布してきたところでございます。
  今後、いじめが疑われるような場合には、速やかに学校や相談窓口に連絡できるようにするなど、学校、家庭、地域社会が一体となった取り組みを推進してまいります。
 
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