平成17年度各会計決算特別委員会 委員会質疑

柿沢未途(民主党)
■学校教育
 
 ▼柿沢委員
 まず、いじめの問題についてお伺いいたします。
  このところ、子どもがいじめが原因であるという遺書を残してみずから命を断つという、いわゆるいじめ自殺のニュースが後を絶ちません。ことし十月には、北海道滝川市の教育委員会が、昨年九月に教室で自殺した小学六年の女子児童の自殺を、これを一年たって、いじめ自殺と認めたというケースがありました。また、その後十一日に、福岡の筑前町で中学二年の男子生徒が、いじめが原因です、至って本気ですと書いた遺書を残して自宅の物置でやはりみずから命を断っています。そして、それからまた二週間もたたない十月二十三日には、今度は岐阜県瑞浪市の中学二年生の女子生徒が、やはり自宅で首をつって自殺をするということがございました。
  そして、この連日のようないじめ自殺をめぐる報道の中で明らかに感じられるようになってきたのは、遺族や、さらに国民の、教師や学校、教育委員会、文部科学省に対する大きな不信感ではないかと思います。言葉のいじめで苦しんでいたと遺書にはっきり書いてあるにもかかわらず、自殺の原因に直接結びつくようなことは書かれていなかったと話した教育長のこの発言、ほかにも、あろうことか、からかいやすかったからということで率先していじめのきっかけをつくっていたという元担任教師のニュースもありました。
  また同時に、これだけ深刻な実態が連日のように報道されているにもかかわらず、文部科学省の調査では、これまで七年間、いじめ自殺はずっとゼロと報告をされてきたというような事実も明らかになりました。
  教師は、学校は、また教育委員会、そして文部科学省は、今の現実を本当にわかっているのか、わかろうとしているのか、あるいは、わかっていながら自分たちに都合の悪い事実を押し隠して、隠ぺいしようとしているんじゃないか。多くの人が教育行政の当事者に対してそのような疑いのまなざしを向けている、私にはそのように感じられます。
  このような状況は、教師にとっても、また保護者にとっても、そして何より子どもたちにとってよいものではありません。今のいじめ自殺の問題をある種の契機として沸き起こってきた教育不信、学校不信というものを解消して、教育行政に対して国民、都民の信頼を取り戻すようなメッセージを発信をしていかなければならないというふうに考えております。その観点から何問か伺わせていただきます。
  まず初めに、都内において小中学校におけるいじめの状況というのがどうなっているのかを伺います。十年前と今との比較において、どのような状況になっているか、お答えください。
 
 ▼教育長
 都教育委員会は、文部科学省の調査に基づきまして、いじめの発生件数を初め、いじめの態様や発見の端緒、学校の対応などの実態を把握しております。
  お話しの十年前の平成八年度、都内の公立小学校のいじめの発生件数は二千三百七十二件、公立中学校の発生件数は二千百八十九件でありまして、平成十七年度の都内公立小学校のいじめ発生件数は二百八十九件、公立中学校の発生件数は五百九十七件でございます。この十年間、全体として減少傾向を示しております。
 

 
 ▼柿沢委員
 小学校では二千三百七十二件が十年後に二百八十九件、中学校では二千百八十九件あったのが五百九十七件になっている。小学校では十分の一とはいきませんけれども、そのぐらいに減っている。随分減っているなという印象を持ちますけれども……。
  ところが一方で、最近の報道によりますと、法務省の調査では、この間いじめはむしろ増加しているということをいっています。長勢法務大臣自身が記者会見でそのように話しているという記事に接しました。先ほどのいじめが減っているというご答弁の数字は、この法務省の調査と照らして実態を反映していると思うかどうか、確認させてください。
 
 ▼教育長
 文部科学省の調査は全国の小中学校全体を対象としたものでございます。法務省の調査は、各地の法務局など人権擁護機関への相談件数でございまして、調査方法、内容が異なるものでございます。
  文部科学省の調査によりますと、都内の公立小中学校のいじめの発生件数は全体として減少傾向を示しておりますが、平成十七年度は、前年度と比較しますと、中学校ではわずかに増加しております。
  また、個々の事例を見ますと、長期化したり、あるいは再発したりするなど、深刻な事例もございまして、児童生徒の健全育成上の重大な課題であると認識しております。
 

 
 ▼柿沢委員
 調査の方法が異なるというお話がありました。確かに法務省の調査は調査方法が異なります。だが、これは、いじめに遭ったのに学校が適切に対応してくれなかったということで、生徒や親が法務省に人権侵害を訴えるケースというのが対象になっているわけで、学校が適切に対処をしてくれなかったということで法務局に駆け込むケース、これがふえているということは、むしろやはり深刻な今の実態を反映している部分があるんじゃないかなというふうに思っています。
  さて、では過去十年間の都内の公立小中学校における児童生徒の自殺の件数、そしてその理由について伺いたい。お願いします。
 
 ▼教育長
 文部科学省の調査によりますと、過去十年間の都内の公立小中学校の児童生徒の自殺件数は十九件でございます。自殺の理由につきましては、家庭の事情などでありまして、いじめを含む学校問題を原因とするものではございません。
 

 
 ▼柿沢委員
 同僚議員の方にちょっと資料を配っていただきたいんですけれども、今ご答弁にありましたところ、都内の公立小中学校において、過去十年間においていじめによる自殺はゼロということであります。都内の公立小中学校においてはこれが実態なのであろうというふうに考えたいと思いますけれども、全国的に見ると、遺書が残っているなど、明らかにいじめが原因と考えられるようなケースがあるにもかかわらず、文部科学省の調査で、いじめ自殺はずっとゼロということになってきたわけです。これがまさに、学校は、自分の学校のマイナス評価につながるので、いじめによる自殺を報告しないで隠ぺいしているのではないかというような一部の見方につながっているわけです。そういう可能性も私、なくもないと思いますけれども、しかし、今回調べてみて、私は、この文部科学省の調査の仕方というのが余りよくないんじゃないか、問題があるんじゃないかというふうに感じております。
  国の調査フォーマットというのは、今お配りした資料のとおり、こうなっているんですよね。これは児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査、いわゆる問行調査といわれるもののようですけれども、この中の一項目として、小中学校における自殺の状況というのがありまして、下に理由別の状況が書いてありますけれども、家庭事情、学校問題。学校問題の中に、学業不振、進路問題、教師の叱責、友人との不和、いじめ、その他とあるわけですけれども、これを書き込む学校側は、あるいは教育委員会の側は、これだけ列挙された自殺の理由を一つ選んで選択をする、そして報告をするということが注のところに書いてあります。また、理由が不分明な場合は、その他の欄に記入しなさいということも書いています。
  これはやはりだれでもそうだと思うんですけれども、だれかがみずから命を断った、その原因を断定的に他人が判断するというのは非常に難しいことなんだろうというふうに思います。それを、これだけの列挙されたものの一つを選んで、これだといって記入をして、文部科学省に報告をする、これで間違いなくいじめだといって書けるようなフォーマットになっていないんじゃないかというふうに思います。結果として、いじめかもしれないし、そうでないかもしれないというものがその他に分類をされてしまったり、そういった形で遺書が残されているケースにおいても、いじめではないという報告が文部科学省に上がってしまって、それが結果として、実態に合わない、ここまで七年間のいじめ自殺ゼロというのを生んでいる。そしてこの七年間、文部科学省の把握ではいじめ自殺はありませんでしたということを文部科学省からいうことによって、国民から見れば、本当にわかっているのかな、いじめ自殺を隠ぺいしようとしているんじゃないか、そんなある種の不信感につながってきてしまっているのではないかと思います。
  この調査方法、国がやっているフォーマットですので、都教委としてもこれに従って区市町村教委から報告を上げてもらって、都教委が取りまとめて、文部科学省に報告をしているということだと思いますけれども、このフォーマットでなかなかいじめ自殺の実態というのはつかみにくい。そうであるとすれば、東京都として、都教委として、自殺の原因を、この調査の方法以外にも把握するような調査をしていないのかどうか。
  また、小中学校の自殺に関連して、こういう書き方ではなくて、いじめに関するささいな周辺情報でもあれば、必ず学校が、区市町村教委が書き込んで報告を上げてくるというような、独自のフォーマットをつくって調査を開始するというようなお考えがないかどうか、お伺いをさせていただきたいと思います。
 
 ▼教育長
 都教育委員会では、昭和六十一年の二月、都内の区立中学生がいじめにより自殺したという大変痛ましい事件以来、自殺という極めて深刻な事態につきましては、これまでも個別に区市町村教育委員会や学校から詳細な聞き取りを行うなどいたしまして、自殺の原因や背景について把握してきたところでございます。
  今後、文部科学省は、自殺にかかわる調査項目等につきまして検討を加えるという方向だと聞いております。都教育委員会といたしましては、こうした国の動向を踏まえまして、今後とも自殺の原因や背景につきまして的確な把握に努めてまいります。
 

 
 ▼柿沢委員
 国の方でも、この調査フォーマットに変更を加えるべく、何か有識者会議をつくって検討に着手をするというような、きのう、きょうのニュースだと思いますけれども、そんな報道にも接してはおりますけれども、一方で、この今まさに教育不信や学校不信がこれだけ高まっている状況の中、都教委としてもしっかり現実を把握をしている、また、把握をしようとしているというメッセージを、迅速かつ的確に都民に対して発していくことも大事ではないかというふうに思っております。
  折しもきのうの未明ですけれども、伊吹文部科学大臣あてに、いじめをやめなければ自殺するという趣旨の、小学生か中学生かわかりませんけれども、匿名の手紙が届きました。これに対して都教委として、けさ、緊急アピールというのを出したというふうに聞いております。「いじめを許さず、尊い命を守るために」という中村教育長の名前での緊急アピール、子どもたちへのメッセージで、皆さんの思いを受けとめることは、私たち大人の責任ですということが書いてあります。
  そういう意味では、この問題に対して大変迅速にこうしたメッセージを発信されたことは評価をしたいと思いますし、また、この緊急アピールには、いじめ等問題対策室の電話番号も書いてあるんですけれども、きょうはこの質疑があるので、教育庁の指導部の方に接触をしましたら、このいじめ等問題対策室に対して、この発表と同時に問い合わせやさまざまな電話が殺到していて、この質疑を控えての私の問い合わせの電話も実はつながらなかったというようなことがあったんです。そのぐらいやはりこうした行政側、教育委員会の側から、私たちはあなたたちのことをちゃんと理解しようと努めていますよというメッセージをしっかり発信をしていく、適時適切にやっていくということがいかに大事かということがわかるというふうに思います。このような形でしっかりとこれからも学校が抱える問題に向き合っていっていただきますようにお願いを申し上げて、教育の問題、次に移りたいと思います。
 

 
 ▼柿沢委員
 次は、コミュニティスクールについてです。
  今、国会では教育基本法の改正案が審議をされています。私たち民主党も、対案として、日本国教育基本法案というのを提出しております。私たちの、民主党の教育基本法案、ここで力点が置かれているのは、地域の人たちが学校に参加をするということです。いわゆる地域が学校をつくる、地域主権の考え方です。
  その具現化になるものがこのコミュニティスクールというものだというふうに思っております。コミュニティスクールというのは地域立学校ともいうべきものでありまして、地域の人たちが学校理事会や学校運営協議会をつくって、学校運営の責任ある担い手となる、学校教育の基本方針を決めていくというものであります。今まで、ともすれば教師と生徒だけの閉ざされた空間であった学校が、地域の人たちの目が届いて、地域の人たちの声が反映される、開かれた学校になる、生まれ変わるというふうにいわれています。
  国では、平成十六年度にコミュニティスクールを制度化して、全国ではことし五月現在で五十三校できているというふうに聞きます。
  それでは、都内でコミュニティスクールは今何校できているのか、伺います。
 
 ▼教育長
 足立区立の五反野小学校外十一校、合わせて十二校でございます。
 

 
 ▼柿沢委員
 では、その十二校できている都内のコミュニティスクール、あるいは全国の事例も含めて、コミュニティスクールの今までのところの都教委としての評価というのはどうなっているでしょうか。
 
 ▼教育長
 コミュニティスクールにつきましては、学校運営協議会を通じまして、保護者や地域住民が一定の権限と責任を持ちまして学校運営に参画することによって、そのニーズを迅速、的確に学校運営に反映させ、学校、地域、家庭が一体となって、よりよい教育の実現に取り組むことができる一つの仕組みであるというふうに考えております。
 

 
 ▼柿沢委員
 よりよい教育ができる一つの仕組みというお話がご答弁としてありました。いろいろなコミュニティスクールに関するやりとりをさせていただく中で、もっと高い評価をしていただきたいなという思いがあったんですけれども、私自身は、このコミュニティスクールというのが、先ほど来申し上げてきたいじめの問題や不登校、あるいは不適格教員の問題、あるいは学級崩壊、そうした今の学校が抱えているさまざまな問題を解決する本当に切り札になり得るものだというふうに思っています。
  学校を取り巻く地域の住民が、ただ参加をする、ある意味ではゲストのように入っていくわけではなくて、主体的に学校経営、学校運営の現場に出ていく。そのことによって風通しがよくなり、また地域の人の目が、周囲の人の目が届くようになる。例えば教室の中に担任の先生とは違う、例えば地域の大人の目があるだけでも、子どもたちと担任の先生が向き合う姿勢というのは、それぞれ大きく変化をしてくるのではないかというふうに思っております。
  私は平成十六年度、五反野小学校がコミュニティスクールになってすぐに五反野小学校を見に行きましたけれども、あそこにはすべての教室に校長先生のいすと机が置いてありまして、子どもたちの机といすの列の一番後ろに、子どもたちと全く同じ机といすで校長先生の席というのが全教室にあるんですね。校長先生、三原先生という民間から来られた方ですけれども、不意に教室にふらっとあらわれて授業を見て、子どもたちと一緒に授業に参加をして、そしてまた帰っていくというような形で教室めぐりをしていました。こういう形で目が届いていく。これが例えば地域の大人であってもいいというふうに思うんですけれども、こうしたさまざまな角度からの目が届くことによって、学校においていじめが学校の中で放置されるということもなくなるでしょうし、見て見ぬふりを続けることもできなくなるでしょうし、あろうことか、教師がいじめを助長したりするようなことも絶対許されなくなるというふうに思います。
  こうした観点から、私は将来的には都内の全小中学校に学校理事会や学校運営協議会というものが設置をされて、全小中学校がコミュニティスクールに生まれ変わっていくというのが理想だというふうに思っています。都としても、そうした将来に向けて、ロードマップ、行程表みたいなものをつくって、小中学校の設置主体である区市町村を支援し、促していくべきだというふうに思っておりますけれども、いかがでしょうか。
 
 ▼教育長
  コミュニティスクールの指定は、小中学校の設置者であります区市町村教育委員会が、地域の実情を踏まえまして主体的に決定すべきものというふうに考えております。都教育委員会といたしましては、コミュニティスクールとなった学校の取り組み状況につきまして、区市町村教育委員会に情報提供を行ってまいります。
 

 
 ▼柿沢委員
 今、区市町村が主体的に判断するものだと。これは本当に確かにそのとおりなんですけれども、しかし、残念ながら今までの動きや取り組みを見ていると、区市町村教育委員会は、非常に地域によって、このコミュニティスクールの導入に対して熱心なところと、そうでないところと、大変なばらつきがあるのが現実です。そういう意味で、残念ながらそういう状況の中で、東京都としても積極的な評価をこのコミュニティスクールに対してしていただいて、そして区市町村教育委員会あるいは学校も含めて、コミュニティスクールに生まれ変わるという、そうした流れをぜひつくり出していただきたいというふうに思っております。
  同時に、学校理事会、学校運営協議会に参加をするという形だけではなくて、地域の人たちがさまざまな形で学校現場に参加をするということが、学校をよくして、そして学校教育をよくすることにつながるというふうにも思います。
  三鷹市の市立第四小学校では、保護者や地域の人たちが中心になって、夢育支援ネットワークという教育支援のNPOが立ち上げられています。この夢育支援ネットワークには、保護者や地域の人たち百五十人ぐらいが今メンバーになっているそうですけれども、授業のお手伝いとか、あるいは放課後の居場所づくりなんかにもメンバーの人たちがボランティアで参加をしているということです。何でも職員室の隣にこのNPOのスタッフルームが設置をされていて、そこには張り紙があって、何月何日にこれこれこういう授業をやるので、ボランティア何人が必要ですということが張り出されているんだそうです。それを見て、都合のつくメンバーがボランティアとして授業に参加をするという形になっているそうです。
  例えば家庭科の時間で調理実習をしたときに、先生一人に対して生徒四十人では目が届かないので、危なくて子どもに包丁を持たせられないというようなことがあります。調理実習といっても、先生が野菜を切るのを見せて、あとは何人か生徒の代表にやってもらうということになってしまっているというような話を聞きます。でも、ここでボランティアでお母さんが五人参加をしてくれればどうでしょうか。ボランティアのお母さんが教室内に散らばって、子どもたちに実際に包丁を握らせて料理をさせることができるようになります。包丁を持っていても、それだけの人数が目を届かせていますので、危険性は低くなりますし、しかも、実際に毎日料理をしているお母さんが手ほどきをするわけですから、場合によっては、教員になりたての家庭科の先生よりもお母さんの方がよっぽどうまいということもあるかもしれません。しかも、お母さんはボランティアですから、補助教員をつけるのとは違って、全く人件費がかからない。地域の人たちが参加をすることでよりよい教育ができるまさに好例だというふうに思っております。
  このような形で地域の人たちが教育現場に積極的にかかわることが、教育効果を高める上で大変有効であると考えますけれども、都教委の所見を伺います。
 
 ▼教育長
 子どもの安全・安心や基本的な生活習慣の確立を初め、子どもを取り巻く多様な教育課題に的確に対応するためには、お話しのように、学校のみならず地域が持つ教育力を学校内外の教育活動に積極的に取り入れるなど、社会全体で支えていくことが必要であるというふうに考えております。
  現在、お話しの自治体のほかにも、先進的に地域の人材などを積極的に教育活動に取り込んで効果、成果を上げている事例が多くの区市町村に広がってきております。今後、都教育委員会では、学校と地域が連携した活動事例等を積極的に情報提供するとともに、企業、NPO、大学と行政が協働いたしました地域教育推進ネットワーク東京都協議会を活用いたしまして、地域の教育力を活用する取り組みが全都に拡大するよう、区市町村へより一層支援を行ってまいります。
 

 
 ▼柿沢委員
 一層支援を行っていくという力強い答弁がありました。
  一方で、このコミュニティスクールの導入や、あるいは地域の人たちの学校現場への参加というのは、今まで教育現場を、独占とはいいませんけれども、もっぱら担ってきた教師の皆さん、そうした皆さんにとっては、聖域を侵されるといいますか、そういった面がある。また、今までどおりのやり方が変わっていくわけですから、その煩わしさというのがやはりあるのではないかと思います。そういう意味でいわば面倒くさいということでしょうか、なかなか現場から主体的に、コミュニティスクールに生まれ変わろうじゃないか、そういう機運が出てきにくい状況もあるのではないかというふうに思いますので、成功事例の普及啓発ということがお話としてありましたけれども、ぜひ都教委としても推進する立場で、これからも区市町村を積極的に支援をしていただきたいというふうにお願い申し上げて、次の質問に移ります。
 
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■少子化対策
 
 ▼柿沢委員
 少子化対策についてです。
  私は、この間の保育所制度に対する都の改革の試みというものについて基本的に評価をしている立場です。東京都は、平成十三年に認証保育所を立ち上げて、さらに平成十八年度からは、返す刀でといってはなんですけれども、認可保育所等に対する都加算補助金を交付金化をして、さらに政策誘導分を導入するなどしています。そうした形での保育所制度の改革というものを東京都が進めてきた、大まかな方向性については私は非常に評価をし、賛同している立場であります。
  認可保育所というのは、残念ながら今までゼロ歳児保育も延長保育も実施率が悪いのに、手厚い都加算補助というのが投入をされてきた。一方、認証保育所を見ると、ゼロ歳児、また十三時間開所というのが開所条件ですから、ゼロ歳児も延長保育も実施率一〇〇%なわけです。なのに国からお金も出ていませんし、今いった都加算補助もゼロで運営をされている。そうしたある種アンバランスな状況になってきたわけです。そもそも私の考えでいえば、保育所の設置者が官か民かというようなことで投入される補助金の額が違ったりすること自体がおかしいのではないかと思っております。
  しかも、その投入される補助金の格差というものが、結果的に利用者の負担する保育料にはね返ってきています。例えば保育料で比較をすれば、認可と認証で約二倍、額にして三万円とか四万円という保育料の格差が開いているという状況になっているわけです。そういう意味で、認可保育所と、あるいは認証保育所その他の保育所と対等な競争条件で、イコールフッティングのもとで、競争、競い合いを行っているというふうにはいえない現状が今もって続いているというふうに思います。
  私は、どのような設置主体であっても同じ競争条件にして、イコールフッティングのもとで競い合いながら、多種多様な保育サービスが供給をされていく、そして利用者はそれぞれのニーズに合ったサービスを主体的に選択をできる、そして認可保育所もその中の選択肢の一つである、そのような考え方が、都のこれまでの保育所制度に対する改革の基本的な考え方だったというふうに理解をしております。
  認証保育所は今月一日現在で、A型、B型を合わせて三百四十八カ所を数えるまでになりました。また、今般制度化された認定こども園の地方裁量型のいわゆるモデルにこの認証保育所制度がなったというふうにもいわれています。そうした形でこの認証保育所というのが大きな成功をおさめている。
  その一方で、先ほど申し上げたような部分においては、都が保育サービスについて、これからの将来どのようにしたいというふうに考えているのか、ある意味では踊り場に差しかかってきて、わからなくなってきているんじゃないかというふうに私は印象として思っています。
  というのも、認証保育所がある意味で非常に意欲的な挑戦であったのは事実ですけれども、実態としての使われ方を見ていると、結果として、認可保育所に入れるまでのつなぎとして利用されている部分が非常に強いのではないかというふうに思うからです。もともとそれは例えばゼロ、一、二に特化していたりとか、そうした形で立ち上げた制度ですので、ある意味ではゼロ、一、二で認可になかなか入ることができない、そうした人たちを受け入れるためにつくられたものであることも否定もしませんし、役割を果たしていることも否定もしませんけれども、しかし、この認証保育所の制度というのは、私の理解でいえば、認可保育所のそういう補完というか、つけ足しというか、垂直分業的な立場にとどまっていてはいけないのであって、むしろ先ほど申し上げたように、認可と認証が対等な条件のもとで競い合っていくことこそ目指していく方向性であるのではないかというふうに思っております。
  そのような観点から、都議会民主党として、私も関係しておりますけれども、これまでの代表質問などで、利用者に直接補助をする保育バウチャーの制度の導入や、一方で、認証保育所と認可保育所の保育料の格差の問題を解消するために、認証保育所の保育料の負担軽減を提案したこともあります。これらも認可と認証をイコールフッティングにして、本来の意味でどちらも選べる環境をつくろうという趣旨で提案してきたものであります。
  そこで、もう基本の基本ですけれども、この部分について都はどのように考えているのか。認可保育所が中心にどんとあって、そこからこぼれた需要を認証保育所やその他の家庭的保育のサービスなんかがカバーをする、落ち穂拾いをする、こういうふうに皆さんが考えておられるのか。あるいは、先ほど私が述べたように、あらゆる保育サービスがあって、その中で選択できる、イコールフッティングにしていくんだというふうに目指すべき方向性を考えているのか、都の基本的な考え方をお伺いしたいと思います。
 
 ▼福祉保健局長
 利用者本位の福祉サービスの実現のためには、多様な事業主体の参入や競い合いを促すことが重要でございます。認証保育所制度はこうした考え方を具体化したものでございまして、平成十三年度の制度創設以来、都民から広範な支持を得て、現在三百カ所を超える設置となっております。
  一方で、多様な事業者による対等な条件での競い合いが進むよう、認可保育所を対象とした都加算補助については、見直しを行ったところでございます。
  あわせて、直接契約の導入や保育料の自由な設定など、現行の認可保育所制度の改革を国に提案要求しているところでございます。
  今後ともこうした取り組みを一層進め、質の高い保育サービスを利用者が選択できるよう、仕組みづくりを進めてまいりたいと思っております。
 

 
 ▼柿沢委員
 今のご答弁で、多様な事業者による対等な条件での競い合いが進むよう、都加算補助の見直しや直接契約の導入、保育料の自由な設定など、この認可保育所制度の改革を国に提案要求をしているというようなお話がありました。まさに私が述べたような方向性が、東京都が目指している将来的な保育サービスにかかわる方向性なんだろうというふうに理解をさせていただきたいというふうに思います。
  次に、家庭的保育についてお伺いをいたします。
  都市における保育のニーズというのはまさにさまざまでありまして、深夜働いている人もいれば、短時間だけスポット的に保育サービスを必要としている人もいる。毎日九時-五時で働いている人ばかりではないのがこの大都市東京の現実でありまして、定型的な福祉施設型では対応できない保育ニーズというものがあるのではないかというふうに思っております。それをカバーするのが、そして柔軟にそうしたさまざまな保育ニーズに対応していけるのが、私はいわゆる家庭的保育といわれるような保育サービスではないかというふうに思っております。この東京では、施設型保育だけではなくて、家庭的保育のニーズがあると思いますけれども、まず、都の認識はどうなっているか、伺います。
 
 ▼福祉保健局長
 お話しのとおり、保育サービスには、施設で行われる保育のほか、主として保育者の自宅で子どもを預かる家庭的保育がございます。この家庭的保育には、NPOや個人が独自に自宅で子どもを預かるサービスや、都が補助を行っている家庭福祉員制度などがございます。
  都としては、家庭的な雰囲気のもと、少人数で保育を行う家庭福祉員制度について、多様な保育ニーズにこたえるための有効な施策の一つとして位置づけております。
 

 
 ▼柿沢委員
 今ご答弁にもありましたが、家庭的保育というと、代表的なのはいわゆる保育ママですね、家庭福祉員。区市町村が実施主体になって、自宅で子どもを預かるサービスをやっています。
  一方、民間でも、自宅で子どもを預かるベビーシッターとかチャイルドマインダーといったようなサービスがあります。やっていることは基本的にこの保育ママと同じことです。
  実は今の法律でいうと、認可保育所でないものはすべて認可外ということになりますので、こうした自宅で子どもを預かる家庭的保育も、突き詰めていうと、認可外保育施設の一つという扱いになってしまうようです。それによって、実はこの家庭的保育の一部のサービスが都の認可外保育施設の指導監督基準の適用を受けているという実態があります。
  この認可外保育施設の指導監督基準というのは、一義的にいうと、ベビーホテルとか、いわゆる無認可保育所といって私たちが思うような、そうした施設型の保育を対象とした指導監督基準ですから、その中には、消火器の設置であるとか非常口などの設置、二方向避難とか、あるいは屋外階段をつけろとか、普通の人が自宅でやっている家庭的保育のサービスの中では、とてもではないけれども用意できないようなものが含まれておりまして、この基準をしゃくし定規に当てはめると、家庭的保育をやっているところはほとんどすべてがこの基準を満たしていない、基準外の不適切な保育施設ということになってしまいます。
  実際に、これはチャイルドマインダーさんですけれども、私が聞いたところだと、こういう形で東京都の認可外保育施設に対する立入調査を受けて、こんなことでは営業を続けさせるわけにはいきませんよというようなことをいわれて、私が見る限り余り問題なさそうに感じたんですけれども、本当に真っ青になったというような話も聞いたことがあります。しかし、そもそも十人、二十人という人数規模のベビーホテルや何かと、例えば一人の保育士さんが自宅で二人の子どもを見ているとかいう家庭的保育とで、規模も違えば、子どもたちに対する目の届き方も全然違うわけですから、同じ構造上の基準を当てはめるというのは非常に無理があるのではないかというふうに私は思います。
  しかも、この認可外保育施設の指導監督基準というのは、区市町村が主体でやっている保育ママ、家庭福祉員の事業には、一部が適用除外を認められています。ほとんど同じ家庭的保育のサービスをやっていながら、区市町村のやっている保育ママはこの基準を満たしていなくてもいいですよ、でも、民間のやっている家庭的保育サービスは認可外の基準そのとおりにやってもらわなきゃ困りますよというのは、これは私、非常に不公平なのではないかというふうに思います。
  こうした不合理といいますか、私からいわせれば不合理ですが、これを解消していくためには、もはや家庭的保育というのを認可外保育施設の一つというような位置づけをするのではなくて、施設型保育とは違ったカテゴリーのものとして独自の位置づけをしっかりとしていく、そして、それにふさわしい基準のあり方や規制のあり方、指導監督のあり方というものを考えていく必要があるのではないかというふうに思います。
  そういう意味で、広域自治体である東京都は、この家庭的保育について、一つの官民問わずのガイドラインというものをつくって、それにのっとって家庭的保育が行われていくように促していくことが必要ではないかというふうに思っているところです。
  こうした観点から、家庭的保育や病児保育を手がける民間団体が集まった日本地域保育協議会というのがありますけれども、この九月、家庭型在宅保育登録についての基準という案をまとめて発表しています。家庭で子どもを預かって保育をするというサービスについて、共通の基準をつくろうという動きです。
  この中には非常に詳細なチェックリストがついていまして、例えば、安全チェック項目では、包丁、はさみ、ナイフ、工具類は子どもの手の届かない安全なところに置いてあるかどうかとか、衛生チェックの項目では、ペットがテーブルの上に上る癖がないかとか、まさに自宅で家庭的保育をやっている現場を踏まえた、なるほどなと思うようなチェック項目が挙げられています。
  こうした形の基準づくりと、またそれによる把握というのを都がして、家庭的保育の質の向上につなげていくことが必要だと考えますけれども、家庭的保育の位置づけと統一した基準、ガイドラインの整備について見解を伺いたいと思います。
 
 ▼福祉保健局長
 保育を実施するに当たっては、子どもの安全が十分に確保されていることが最も重要でございます。こうしたことから、都は、認可外保育施設として届け出をすべき対象について、国が利用定員六名以上の事業者としているところを、利用定員一名以上のすべての事業者としているところでございます。
  また、お話しの家庭的保育については、認可外保育施設の中でも、子どもの人数に応じた職員の配置が特に重要と考えていることから、認可外保育施設指導監督基準に基づきまして、安全に重点を置いた指導を実施しているところでございます。
  なお、家庭的保育の一つでございます家庭福祉員については、本基準の一部の適用を除外し、普及拡大に努めているところでございます。
 

 
 ▼柿沢委員
 ご答弁いただきましたけれども、残念ながら、認可外保育施設の指導監督基準に基づいて安全に重点を置いて指導していくということですから、適用するということが当面変わらないということなのかなというふうに理解をさせていただきました。
  これから家庭的保育は非常に大きく成長していくというか、大きくなっていくカテゴリーだと思っています。いずれ施設型の保育所とは独立した地位を、位置づけを与えなければいけない時期が来ると思いますので、それに向けてぜひ積極的な検討と対応をお願い申し上げておきたいと思います。
  この項目の最後として、ファミリー・サポート・センターの事業についてお伺いをします。
  地域の住民同士が助け合う仕組みとしてファミリー・サポート・センター事業というのがありますが、急な用事で一時的に子どもを預けたいとか、保育園への送り迎えを頼みたいとか、子どもが病気なので一日だけ預かってほしいとか、そういうさまざまなニーズにこたえて、会員となった地域住民同士が助け合うというものです。
  もともと仕事と家庭の両立支援を図るために旧労働省が立ち上げた事業で、仕事をしている母親だけが対象だったようですけれども、現在は子どもを持つすべての家庭に広がっていて、今や地域の子育て支援のためのリソースとして非常に幅広く活用されていて、いわば気軽に使える保育サービスとして本当に受け入れられているというふうに思います。
  先ほどからいっているように、都市の保育ニーズというのはまさに多種多様ですから、必ずしも、月曜から金曜、九時-五時まで働いている人たちばかりではないし、また、そういう人たちだけが保育サービスを必要としているわけではありません。そうした多種多様なニーズに対して、官がやるのではなくて、地域住民の民の力を生かして適切な保育サービスを提供していく。まさにファミリー・サポート・センターというのはこれからの子育て支援において理想的な事業ではないかというふうに私は思っています。
  ファミリー・サポート・センターの実施主体は区市町村です。都内でも多くの区市町村で実施されるようになってきてはいますけれども、この地域住民の助け合いの仕組みを生かして、地域地域の子育て支援機能を一層充実させていくことが必要ではないかと思います。
  そこで、ファミリー・サポート・センター事業は、まさに地域のさまざまなニーズにこたえていくべく、都の子育て支援策と一体となって進めていくべきだと考えますけれども、見解を伺います。
 
 ▼福祉保健局長
 ファミリー・サポート・センターは、保育所への送迎や緊急時に預かりなどを行う事業でございまして、都民の切実な子育て支援に対するニーズに積極的に対応し、平成十八年十月現在、四十七区市町村で実施しておるところでございます。
  また、区市町村の子どもと家庭の総合的な相談、支援の拠点となる子ども家庭支援センターとも密接に連携するなど、地域の子育てを支える仕組みとして今後ますます重要な役割を果たすものと考えております。
  今後、都全体の子育て支援に関する取り組みをより一層充実する観点からも、お話しの施策の一体化について積極的に検討してまいります。
 

 
 ▼柿沢委員
 以下は意見とさせていただきたいと思いますけれども、しかし、このファミリー・サポート・センター事業というのは、ある種の、東京都の局別の縦割りの中でいうと、今までの子育て支援策、福祉保健局がやっている子育て支援策とはちょっと違うところに位置づけられてきた経過があります。
  先ほど申し上げたように、ファミリー・サポート・センター事業というのは旧労働省が立ち上げた事業ですので、その関係から、ファミリー・サポート・センターを都庁でどこが所管をしているかというと、かつては労働経済局、今は産業労働局が所管をしている。ある種の雇用就業支援の一環として産業労働局の所管となってきたわけです。
  しかし一方で、ファミリー・サポート・センターのニーズというのは、むしろ、地域における支え合いの子育て支援サービスというか、そういう形で利用されてきています。
  また一方で、国の省庁再編によって、厚生省と労働省がくっついて厚生労働省という一つの官庁になった。厚生労働行政というのがどう東京都庁で行われているかというと、厚生行政は福祉保健局、労働行政は産業労働局ですから、結果的に、その他のほとんどすべての子育て支援サービスは福祉保健局が所管をしていながら、このファミリー・サポート・センターだけ、ぽつんとといったらあれですけれども、産業労働局の所管で続いてきたわけです。
  こうした形で、施策の一体化というのができない--縦割りというと産業労働局さんのこの事業に対するご努力には申しわけないんですけれども--状況にあった。ぜひこれを一体化させて、子育て支援、子どもをめぐる施策というものは福祉保健局で一体となってやっていくんだという体制を構築していただきたい。これは要望にとどめさせていただきますけれども、そのことを申し上げさせていただいて、次に移りたいと思います。
 
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■東京臨海地域
 
 ▼柿沢委員
 次に、東京港臨海道路の二期事業についてのご質問をいたします。
  東京港臨海道路の二期事業として、中央防波堤外側埋立地から江東区の若洲の間、約四・六キロの整備が現在進められています。この事業は国直轄事業でありまして、一部区間を都が受託し、施行していると聞いていますけれども、都ではどの部分を受託施行しているのでしょうか。
  また、十七年度決算の説明では、十四年度から開始したこの事業の十七年度末の事業進捗率、約二〇%ということでありますけれども、この受託部分については具体的にこれまでどのような工事が行われてきたのか、あわせてお伺いをしたいと思います。
 
 ▼港湾局長
 都が受託しておりますのは、全体約四・六キロメートルのうち、第三航路横断部の約一・六キロメートルを除く、若洲側と中央防波堤外側地区を合わせました約三キロメートルの箇所でございます。
  都は平成十七年度までに、中央防波堤外側地区におきまして、南北水路横断橋、これは仮称でございますが、この横断橋の橋脚及び橋台の建設や地盤改良工事を行ってきております。
 

 
 ▼柿沢委員
 東京港臨海道路の、いわゆる大きな橋については国直轄--国直轄なんですけれども国施行ということで、それに附帯する南北水路横断橋というのを都施行で行っているということだと理解します。
  その南北水路横断橋の橋脚部の工事が既に行われたようですけれども、南北水路横断橋の基礎には、ちょっと専門的な話になりますけれども、鋼管矢板井筒工法という工法が採用されています。
  (パネルを示す)この鋼管矢板井筒というのは、こういう大きな鉄のパイプがありまして、これを組み合わせてこういう円形のものをつくっていくわけです。これにモルタルやコンクリートを流し込んで橋脚を形づくっていくという工法です。この工法が橋脚部分の施工方式として採用されたというふうに聞いております。
  土木の専門家の話によれば、類似の施工条件や工事費などを比較した場合には、ケーソン工法、これはコンクリートや鉄でつくった大きな箱を沈める方法ですけれども、こうした方法の採用も考えられるということであります。
  そこで、まず伺いますけれども、なぜこの鋼管矢板井筒工法というのを採用したのか、お伺いさせていただきます。
 
 ▼港湾局長
 東京港臨海道路二期事業では、全区間につきまして、基本設計を事業主体である国土交通省が行っております。南北水路横断橋の橋脚部の工法についても、国土交通省が実施した基本設計の中でこれが選定されております。
  選定に際しては、本工事箇所で実施可能な、お話しのケーソン工法などと比較検討の上、最終的に、軟弱地盤などの土質条件から、施工性、経済性にすぐれた鋼管矢板井筒工法が採用されたものと聞いております。
 

 
 ▼柿沢委員
 ちょっとわかりにくくて申しわけないんですけれども、以後、鋼管矢板井筒工法の技術的な話について確認をしたいと思います。
  先ほども述べたように、土木の専門家に話を聞いて勉強させてもらったところでは、鋼管矢板井筒工法というのは、鋼管矢板というこの鉄のパイプの周りに耳みたいなものがついていて、このリングの部分で鉄の管をつなげていくわけですけれども、この鋼管を真っすぐに、鉛直に地面に打ち込んでいくということが非常に重要で、施工管理における最重要項目になっているというふうに聞いています。
  しかも、鋼管というのはどうつくるかというと、スパイラル鋼管といって、いわゆる鋼板、鉄の板をねじみたいにこういうふうに斜めにらせん状につなぎ合わせて、例えば長さ五十メートルとかいう鉄のくいを、管をつくっていくわけですので、こういうらせん状の溶接の線が鋼管に残るんです。これが結構厄介でして、上からパイプを打ち込んでいくと、それに従ってくるくる鋼管が回ってしまう。それによって真っすぐ打つことが非常に難しいというふうにいわれております。
  しかし、これを見ていただくとわかるように、この鋼管には左右に継ぎ手という耳みたいなものがついていて、ここでひっかけて、こういうふうにして円状にするわけですから、これが回ってしまって真っすぐ打ち込めないというのは、全体の狂いにつながってくるので許されない。それを防ぐために、回転を防ぐためにジグという定規のような固定金具をあてがったり、現場に合わせてさまざまな苦労、工夫をされているそうです。それでも鋼管矢板というのは回転したり傾いたりしてしまうために、これらを極力小さくすることが施工管理の最重要項目となっているということです。
  そこで、この南北水路横断橋のケースで、基礎工事で打ち込んだ鋼管矢板の長さはどのぐらいで、施工業者に対してどの程度の施工管理精度を要求したのか、その結果、最も大きな値は幾らだったのか、伺わせていただきます。な
 
 ▼港湾局長
 南北水路横断橋の基礎工事に使用した鋼管矢板の長さは約五十メートルでございます。
  橋梁のような重要構造物につきましては、所定の品質を確保するために厳しい施工管理が必要でございます。このため、社団法人日本道路協会の鋼管矢板基礎設計施工便覧などの管理基準に基づき、鋼管矢板の横ずれをあらわす水平変位に対しましては十センチメートル以内になるように、また、鉛直方面からの傾きに対しては五百分の一以下になるように請負者に課しております。
  なお、本工事における水平変位は最大で六・二六センチメートル、傾斜は最大で五百分の一となっており、管理基準値内であることを確認しております。
 

 
 ▼柿沢委員
 水平変位について、横ずれについては、プラ・マイ十センチ許容限度があったのを六・二六センチでおさまっている。一方で、傾斜については、要求精度である五百分の一ぎりぎりだけれども、満たしているということでした。
  この点についても土木の専門家にお話聞きましたけれども、よくこの施工精度を守れたなというふうに感心しておりました。こうしたことから、非常に難しい工事なんだなということが率直な感想としてあります。
  それでは、皆さんに対する質問の最後として、鋼管矢板の継ぎ手部分のモルタル注入工事についてなんですけれども、これは鋼管矢板の継ぎ手の部分に組み合わせていくわけですけれども、ここの耳の部分は、つながり方としてはこういう形のつながり方をしているわけです。ぐるっと回ってひっかかっている。こうなると、三カ所に空隙というか、すき間の部分ができる。ここにモルタルを注入してつなぎ合わせる。それで強度を高めて、さらに内部への水の入り込みというのを防ぐということになるわけです。だから、ここにモルタルがちゃんと注入をされないと、工事としてうまくいかないということになります。
  この設計上、継ぎ手のすき間の部分にそれぞれ何立方メートルのモルタルが注入されることになっていたのか、そして、設計で指定された注入量がすべて確実に入っていたのかどうか、確認させていただきたいと思います。
 
 ▼港湾局長
 南北水路横断橋は二基の橋脚がございまして、この橋脚基礎に百四十四本の鋼管矢板を打設しております。この鋼管矢板の継ぎ手部分に、お話しのようにモルタルを注入しておりますが、これらの継ぎ手全体で、ご指摘の三カ所の空隙部分のうち、両サイドにはそれぞれ七十立方メートルずつ、合わせて百四十立方メートル、中央部に二十三・三立方メートル、合計で百六十三・三立方メートルを注入することとなっております。
  モルタルの注入量につきましては、打設時の注入量の管理と打設後の出来高計測により確実に確認しております。
 

 
 ▼柿沢委員
 以上、都が施行している南北水路横断橋の橋脚工事についての施工状況の実際を確認させていただきました。
  最初の質問では、第三航路上の海上部、一番大きな、非常に大きな橋ですけれども、ここは国の直轄というご答弁でしたけれども、東京港臨海大橋では、南北水路横断橋と同じ鋼管矢板井筒工法、しかも、大幅なコストダウンにつながる新技術ということで、継ぎ手部分に、しま鋼板という、中にぎざぎざが入っている鋼板、そして、高強度モルタルを入れて継ぎ手の強度を従来よりも大幅にアップしたというしま鋼管継ぎ手というものを採用しております。その結果として、必要となる鋼管矢板の本数を三五%減らすことができた、コストダウンに大幅につながったということが各種の専門誌でも公表されています。
  そこでこの質問をさせていただいたんですけれども、この鋼管矢板井筒工法というのは、真っすぐ、鉛直に打ち込む施工精度というのが非常に重要だというふうにいわれています。今回の都施行の南北水路横断橋でも、五百分の一という施工精度ぎりぎりだったということですけれども、東京港臨海道路の橋の部分について、橋脚の専門家の検討の資料を見させていただいたんですけれども、ここで国がしっかり施工するために要求している精度は、千五百分の一という施工精度になっているというふうに聞きました。
  この千五百分の一という施工精度は、土木の専門家にいわせると、実際上、行うのがほとんど不可能な数値なのではないかというふうに指摘をする方もいらっしゃいまして、ここがうまくいっていないということになると、先ほど申し上げたように、モルタルの注入が下まで行かない、そして強度が上がらない、そしてということにつながっていってしまうわけです。
  ここから先は、国施行の工事ですので、例えば国会での調査等をお願いしなければいけない世界になりますけれども、新工法として採用されたしま鋼管継ぎ手の鋼管矢板井筒工法の工事というものが、本当に当初の計画どおりに施工できているのかどうかということについては、業界内でもいろいろな意見が一部にあるというふうに聞いております。その検討は例えば国会等にお任せはしたいと思いますけれども、きょうは、この工法について都施行の部分で確認をさせていただいた上で、その問題について指摘をさせていただきました。
  残念ながら時間が尽きてしまいましたので、二項目も余してしまいましたけれども、質問を終わらせていただきたいと思います。
  以上です。
 
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