認定こども園制度活用に支援を 都市農業の新たな担い手活用を |
坂本たけし(自民党) |
■認定こども園 |
質問1 子どもが健やかに生まれ育つ環境をつくることは、親はもとより社会全体の責任であります。この考えは、次世代育成支援対策推進法にも生かされており、この法の第九条のもとに東京都は次世代育成支援行動計画を策定いたしました。これに基づき、すべての子どもと子育て家庭を支援するさまざまな取り組みが進められ、子育てに対して大きな成果を上げようとしております。
また、この中に示されている地域で安心して子育てができる新たな仕組みづくりや、次代を担う子どもたちがたくましく成長し、自立できる基盤づくりなどの施策は、生きた制度としてぜひ推進するべきであります。そのためには、福祉や教育での取り組みはもちろんのこと、労働、住宅、税制など、あらゆる側面から次世代育成支援に立った取り組みを推進していく必要があります。
たとえ保育サービスが充実しても、育児休業など働き方の見直しが進まなければ、真に子育ての環境が整った社会とはいえません。子どもと子育て環境を支援するためには、さまざまな分野における総合的な取り組みが不可欠であると考えます。
そこで、次世代育成支援に取り組む基本的な考え方について、知事の所見を伺います。 答弁1 ▼知事 子どもたちが健やかに成長するための環境整備は、各行政分野での横断的、複合的な取り組みとともに、親はもとより、都民や企業など社会全体で責任を持って取り組むべき課題であると思います。
都はこれまでも、独自の認証保育所制度の創設や小児救急医療体制の整備、教育改革など、次世代育成に向けた取り組みを国に先駆けて進めてきたつもりであります。あわせて、環境対策や治安対策など、東京が都市としての活力を発展させていくための取り組みを推進し、子どもたちが未来に希望の持てる社会の実現に努めてまいりました。
今後とも、次代を担う子どもたちがたくましく成長し、自立できる社会を築くため、組織のラインの壁を越えて、ハード、ソフト両面にわたって積極的に取り組みを展開していきたいと思っております。
質問2 次代を担う子どもたちに対する教育と保育の充実の観点から、認定こども園について伺います。
認定こども園制度は、就学前の子どもの教育と保育における多様なニーズに対応して、保護者の就労の有無にかかわらず、すべての子どもを対象とすることや、利用者と施設が直接契約すること等、評価できる制度であります。
そこで伺いますが、これまで認証保育所制度を進めてきた都として、今回の認定こども園制度の創設をどのように評価しているか、所見を伺います。 答弁2 ▼福祉保健局長 都はこれまで、利用者本位の保育サービスの実現に向けて独自の認証保育所制度を創設し、その拡充に取り組むとともに、国に対して保育所制度の抜本的改革を提案要求してまいりました。
認定こども園は、親の就労の有無にかかわらず利用でき、また、利用者と施設が直接契約する方式となっているなど、都がこれまで実践し、国に働きかけてきた内容が取り入れられたものでございまして、一定の評価をしているところでございます。
質問3 これまでは、親の就労等の状況で、保護者が働いていれば保育所で、働いていなければ幼稚園でと、幼児期を過ごす施設が別々に分かれていたため、保育と教育の両方を受けることが難しい面がありました。しかし、認定こども園ができたことにより、保護者の就労にかかわらず、幼稚園において保育も受けられ、また、保育所に通う子どももより充実した教育を受けられるようになります。
そもそも幼児期の教育は、生涯にわたる人間形成の基礎を育むものであり、すべての幼児が受けられるようにすべきであります。特に幼稚園は、就学前教育の場として子どもの人間形成上重要な役割を果たしてまいりました。そうした点から認定こども園制度が広がれば、これまで以上に幼稚園の担う役割が大きくなるはずと考えます。
さらに、現在、東京都には約五千人の保育の必要な待機児童がおり、保育サービスの充実が求められております。
こうした面からも、認定こども園において、待機児童解消のための有効な方策の一つとして幼稚園が保育所機能を果たすことで、その期待が高まります。
認定子ども園は、このように意義ある制度であり、都としても第四回都議会定例会での認定こども園の条例提案とその後の制度化に向けて、仕組みや支援策についてしっかりと検討すべきであります。
ところで、認定こども園制度ができても、既存施設からの転換を希望する幼稚園や保育園が手を挙げなければ、せっかくの制度も絵にかいたもちになりかねません。この制度の設置基準の制定につきましては、単に国の基準に倣うのではなく、既存の認可幼稚園、認可保育所、認証保育所の長所を生かし、大都市東京の特性を踏まえた基準ですべきであると考えますが、所見を伺います。 答弁3 ▼福祉保健局長 認定基準の設定に当たりましては、就学前の教育、保育に対するさまざまなニーズにこたえ、地域において子どもが健やかに育成される環境の整備に資するものとする必要がございます。
このため、これまで認可幼稚園、認可保育所、認証保育所で培ってきた教育及び保育の実績を生かし、多様な勤務形態など、大都市の特性に応じたニーズに的確に対応するものとなるよう、現在、関係局と連携しながら検討を進めているところでございます。
質問4 待機児童の解消や保護者に多様な子育ての場を提供するためには、地域に身近な存在である私立幼稚園が認定子ども園となることが一番有効であり、その事業者が積極的に取り組める環境づくりが不可欠であります。幼稚園では、従前より、平常教育時間を超えた時間に子どもを預かる預かり保育や、地域の親子の交流の場の提供など、従来の幼稚園教育の枠組みを超えた幅広いニーズにこたえてまいりました。そのため、新たな制度である認定こども園にも深い関心を持っていると聞いております。
しかし、認定こども園制度は、多様な類型を認める複雑な制度であることから、多くの幼稚園事業者からは理解しにくいとの声も聞こえてまいります。また、認定を受けた幼稚園がこれからも質の高い教育と保育を提供するためには、施設や教員等の充実も強く求められてまいります。
そこで、既存の幼稚園の認定こども園での転換を推進するため、必要な情報の提供などの積極的な支援策を展開していくべきと考えますが、私立幼稚園行政を所管する立場からの見解を伺います。 答弁4 ▼生活文化局長 私立幼稚園は、地域に身近な存在であるとともに、幼児教育の中核を担ってきました。
ご指摘のように、これからは、保護者の就労状況にかかわらず、教育及び保育を一体的に提供できるよう、こども園として積極的な役割を果たすことが期待されております。
都はこれまでも、私立幼稚園を対象に、認定こども園に関する説明会や幼稚園の代表者との意見交換を行ってきました。今後、こども園の認定が円滑に進むよう、必要な情報を積極的に提供するなど支援に努めてまいります。
認定こども園という新たな制度に取り組もうとする幼稚園、保育所の努力はもちろんでありますが、それをしっかりと支え、後押しをする行政の役割は大きく、生きた制度として地域に定着するよう東京都の支援をお願いし、次の質問に移ります。
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■構造計算書偽装事件の再発防止に向けた取組 |
質問1 昨年十一月に事件が発覚してから十カ月が経過し、その報道も一時期に比べるとかなり減りつつありますが、大切なのはまさにこれからであります。本来、魅力あるまちづくりや豊かな都民生活の実現は、社会資産としての建築物の安全性の上に成り立っているということは、いうまでもありません。この問題により、これまでの建築確認制度や建築士制度など、建築を取り巻く社会システムの信頼が失われ、都民は依然として不安を抱いております。
この間、建築にかかわるあらゆる分野におきまして、健全な設計や生産システムのあり方、法令規制実施専門組織のあり方、建築分野における保険制度のあり方などさまざまな議論が交わされ、多くの提言がなされてまいりました。私も昨年の第四回定例会の一般質問において、自身の経験からこの問題を取り上げ、米国カリフォルニア州のピアチェックシステムなどを具体的に紹介しながら質問いたしました。
国においても、社会資本整備審議会で再発防止に向けた検討がなされ、この六月に建築基準法が改正されました。この中で、第三者が構造計算書をチェックするピアチェックと同様の仕組みが導入されました。従来は、建築主事や指定確認検査機関が図面と書類を中心に審査し、建築確認されました。改正後は、一定の建築物について、建築構造に関する技術と経験を備えた第三者機関が構造計算書を再計算、チェックをし、適合性を判定することになります。これにより、悪意を持った偽装や構造計算上のミスの防止が期待できることになります。
しかし、国が法律を制定するだけでは、建築物の安全性への信頼は回復できるとはいえません。実際の現場で都民の信頼にこたえるのは、都を初めとした地方自治体であります。建築構造計算書を初めとする建築基準法は、以前は専門家の領域ではありましたが、マンションや住宅を購入する都民、現に住んでいる都民にとっても大変身近な重要な問題であり、建築行政に対する期待も大変大きくなっております。
改正建築基準法は速やかに施行されると思いますが、都においては、執行体制の整備や厳格な審査の実施など、建築物の安全性の確保に向けて全力で取り組んでいただきたいと思います。
そこで、建築行政を担う都として、事件の再発防止に向けどのように取り組むのか、所見を伺います。 答弁1 ▼都市整備局長 都では、耐震偽装の疑いのある建築物の再チェックを行うとともに、構造審査マニュアルを作成し、関係機関へ周知するなど、いち早く対応してまいりました。
また、構造計算書を第三者がチェックする、いわゆるピアチェック制度の導入など、建築基準法の抜本的な改正を国に強く要求し、先般、一定の改正がなされたところでございます。
都といたしましては、建築行政の信頼確立に向けて、区市、関係団体とも連携しながら、ピアチェック制度の的確な運用、指定確認検査機関への立入検査など、再発防止に万全を期してまいります。
また、指定確認検査機関の責任明確化などについて、今後とも国に強く働きかけてまいります。
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■農業の担い手確保のための支援策 |
質問1 都市農政について伺います。
私の住む板橋には、現在も三十一ヘクタールもの農地があり、生鮮農産物の地産地消ばかりでなく、都市の緑地空間としての重要な役割を果たしております。例えば板橋区では、これらの農地を対象に、災害時の避難場所確保や生鮮農作物の供給のため、地元農協との間で災害時における応急対策に関する協定を締結しております。また、農家の協力により、四十七カ所もの区民農園が開設され、区民に体験の場を提供しております。
このように、区民の生活と命を守る都市農業と農地はぜひ保全するべきであると思います。このためには、農業後継者の育成はもとより、新たな担い手を活用して農業が継続できるような支援が必要であると考えます。
ところで、私が所属する東京都議会自由民主党都市農政を考える議員連盟では、七月に青壮年農業者との懇談会を開きました。この中で、次代を担う方々の農業に対する熱い思いに触れ、大いに感動したところであります。板橋区でも、十名ほどの農業後継者が昨年、若葉の会を結成し、新たな農業技術の習得等に意欲的に取り組んでおります。
しかしながら、このように意欲的な若い農業者がいる一方で、板橋区の農家の半分以上に当たる方が、現在後継者がおりません。後継者がいない農家や、たとえ後継者がいてもすぐには就農できないような農家では、病気などで農作業ができなくなった場合、農業継続が困難にならざるを得ません。このような農家が相続税納税猶予制度を利用した場合、途中で農業をやめたことにより、猶予税額と利子税を合わせた、大変大きな、莫大な税金を払わなければなりません。農業の担い手がいれば、農業をやめるような事態は避けられると思います。
都は、このような状況も含め、農家が安心して農業を続けられるように、担い手の確保について支援をしていただくべきと思いますが、所見を伺います。 答弁1 ▼産業労働局長 都市農業を継続させていくためには、次代を担う農業後継者の育成にあわせて、新たな担い手の確保が重要であります。
都はこれまでも、農業後継者に対して、栽培技術や経営に関する継続的な指導のほか、無利子融資などの支援を行ってまいりました。また、今年度から、新たな担い手を確保するため、みずから農業を行いたいと考えている都民を対象に実践農業セミナーを開始し、高い技術力を持つ人材を育てております。
今後とも、農家が一時的に耕作できない場合でも、こうした人材を効果的に活用することなどにより、農業が継続できるよう支援してまいります。
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■都立高校跡地利用 |
質問1 都立志村高校の跡地利用について伺います。
地元の都立志村高校は、現在、都教育委員会が進めている都立高校改革推進計画により、今年度末で閉校になる予定であります。この間、開校から五十年の間、都立志村高校は、地域住民とともに、板橋区の都立高校として親しまれてまいりました。
今後、閉校となりますが、地域では、志村高校の跡地利用についてさまざまな期待と、その一方で不安の声が上がっております。
また、閉校後の跡地に養護学校が設置されるといったような検討をされているやにも伺っております。
跡地利用については、志村高校の広大な校地面積を考えますと、都教育委員会が教育財産として引き続き活用する検討とともに、地元や区民にも役立つ方策もぜひ検討をお願いしたいと思います。例えば、地域の防災拠点や区民のスポーツ活動の場にもなるような跡地を活用していくというのはいかがでしょうか。
今後、跡地利用の検討の際には、こうした私の提案も参考にしていただき、地元区とも十分に協議するよう強く要望し、都教育委員会の所見を伺い、私の質問を終わります。 答弁1 ▼教育長 都教育委員会は、都立高校改革推進計画第二次実施計画におきまして、板橋地区の北野高校と志村高校を発展的に統合いたしまして、北野高校の跡地に、本議会で設置を提案させていただいております板橋有徳高校を平成十九年度に開設することとしております。
お話のように、平成十八年度末をもって閉校となります志村高校の跡地につきましては、都教育委員会が引き続き教育財産として活用する方向で現在検討しているところでございます。
ご指摘の点を踏まえまして、地元板橋区とも協議いたしまして、跡地を有効に活用できるよう検討してまいります。
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