直接飲める水道文化を次世代に 高尾地域連絡会の運営は協働で |
串田克巳(自民党) |
■水道事業 |
質問1 最近、飲み水として水道水の質に満足している都民は増加傾向にあるとのことです。このような傾向は、水道局が、安全でおいしい水プロジェクトを推進し、高度浄水処理の導入、ペットボトル「東京水」の配布、販売、小学校を訪問して水道に関する授業を行う水道キャラバンなどの取り組みを積極的に行ってきたことが功を奏したものといえます。
知事も愛用しているペットボトル「東京水」は、高度浄水処理をした水がそのまま詰められており、私も飲みましたが、非常においしいと感じました。
ところで、知事は、さきの所信表明の中で、成熟した都市の新しい可能性を世界に示していくとおっしゃられました。また、現在の東京に引き継がれてきた歴史と伝統を未来につないでいくことは、後の世代に対する私たちの責務であるとも発言されております。知事がおっしゃった意味で、これまで営々として築き上げてきた東京の水道も、世界に誇れるレベルにあると思います。例えば蛇口から直接水を飲めることは、日本の水道文化といっても過言ではありません。
こうした水道の文化を確実に次世代に引き継いでいくことが重要であると思いますが、知事のお考えを伺います。 答弁1 ▼知事 水道の文化についてでありますが、都市の発展に水が欠かせないことは、もう歴史が証明しております。しかし、世界の主要都市で、水道があっても、直接蛇口から水を飲める都市はめったにありません。非常に少ないです。
東京の水道は、江戸上水、そして近代水道を経て現在に至るまで、四百年の歴史があります。この歴史の中で培われた、蛇口から水を直接飲めるということは、まさに世界に誇れる水道文化であると思います。
あえて持参しましたこの東京の水道水、これは「東京水」という名目で、普通のペットボトルより安く売っていますけれども、水は決してただじゃないんですが、これは、都市の水道でミネラルウオーターと同じぐらい水が優秀で、並べて売れる水道というのは東京しかないです。これは第五次処理までやっていまして、本当に高度の処理で、冷やして飲めばそこらのミネラルウオーターと全く変わりありません。
ちなみに、最近、イスタンブールで世界の主要都市の水道のコンテストをしましたが、日本が圧倒的な投票で一位でありました。
こういう文化を次世代に引き継ぐことは大きな責務でありまして、公立小学校の水飲み栓を初めとする、直接給水化の推進によりまして、高度浄水処理した東京の水の資質の高さを、広く広く発信していきたいと思っております。
質問2 一方で、いまだに飲み水としての水道水に都民が不満を訴えているのも事実であります。その大きな原因の一つとして考えられるのが、受水タンクを経由して給水する貯水槽水道です。点検や清掃など、管理が不十分な例が小規模貯水槽水道の場合に見られ、こうした不満に結びつくのだろうと思います。
そもそも貯水槽は設置者が管理しているため、水道局の対応にも限界があることは理解をいたしますが、蛇口離れの歯どめをかける手だてが必要なことに疑う余地はありません。
ところで、さきに公表された行財政改革実行プログラムによりますと、新たにCSR、すなわち企業の社会的責任の遂行という視点で、公立小学校の水飲み栓の直結化を推進するモデル事業を実施していくことが明らかにされました。
そこで、その背景などを含めて、モデル事業の概要について伺います。 答弁2 ▼水道局長 水道局では、高度浄水処理の導入や貯水槽水道対策を初めとした安全でおいしい水プロジェクトを推進しておりますが、さらに都民の理解を得るための一歩踏み込んだ取り組みが必要であると考えております。
こうした状況を踏まえまして、蛇口から安心して水を飲めるという日本の水道文化を次世代に引き継いでいくため、CSRといった新たな視点に立ちまして、公立小学校の水飲み栓直結給水化を促進するモデル事業を行うことといたしました。
このモデル事業は、平成十九年度におきまして、都営水道区域の公立小学校が給水栓を直結給水方式に切りかえを行う際、水道局が技術支援を行うほか、工事費の一部を負担いたしまして、区市町単位で一校、計四十八校を対象としております。
質問3 このモデル事業を通して、次世代を担う小学生が蛇口から直接水道水を飲みたいと思うような環境をできる限り多くつくることが極めて重要であると思うのです。一部の区市町からは、モデル実施の対象校が少ないとの声も聞きます。モデル事業の学校数をふやすなり、あるいは継続的に取り組んでいくことなどによって、事業効果が数段上がるのではないかと思います。思い切った対応が必要だと思いますが、今後の事業展開についてお考えを伺います。 答弁3 ▼水道局長 直結給水方式への切りかえ工事は、小学校の設置者であります区市町が行うことになりますが、都営水道区域の公立小学校は約千三百校ございまして、事業効果を一層高めるための対策が必要であると認識しております。
したがいまして、ご指摘の点を踏まえ、モデル事業の対象枠を小学校数の一定割合に拡大するとともに、複数年の事業化に向けまして、関係区市町と協議しながら積極的に検討してまいります。
質問4 ただ、小学校は、貯水槽水道全体から見ればごく一部にすぎません。都内に約二十二万件ある貯水槽水道のうち、八割を超える約十九万件が小規模貯水槽水道であり、水道局は、都民の蛇口回帰を目指すならば、特に小規模貯水槽に対して適切な管理の徹底や直結給水方式への切りかえを積極的に働きかけていく必要があるのではないでしょうか。そのためには、このモデル事業を起爆剤と位置づけて、積極的にPRすることが極めて有効であると思います。
そこで、直結給水方式の普及促進に向けたモデル事業のPRについて、お考えを伺います。 答弁4 ▼水道局長 このモデル事業を積極的にPRすることは、直結給水方式の普及促進に極めて有効な手段と考えております。このため、あらゆる機会をとらえて、教育関係者などの協力を得ながら、次世代を担う小学生や保護者などを対象に、蛇口回帰を促進するキャンペーンを実施してまいります。
こうした取り組みを積極的に展開するとともに、貯水槽水道の適正管理、直結給水化の普及促進など、総合的な施策を推進することにより、水道の信頼をより確かなものとしてまいります。
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■自然の力・東京事業 |
質問1 都が進めている自然の力・東京事業について伺います。
多摩地域は、その七割が緑地であり、その大部分が自然公園として都民の利用に提供されております。
自然公園は、子どもから高齢者までのだれでもが季節に応じて変化する自然を満喫でき、また、健康増進の上からも極めて貴重な自然地であります。また、多摩地域の観光や地域産業の振興に大いに期待できることから、将来にわたって末永く都民に親しまれる自然公園として、今後も発展していくことを強く望むところであります。
そのためには、自然を保護していくだけではなく、都、市町村、都民が協働して多様な手法を導入し、都民の幅広い利活用を通して、良質な自然環境を保全していく自然の力・東京事業の推進が大いに期待されるところであります。
このような観点から、何点か伺います。
この数年間に、異常気象というか、局地的な大雨や落雷が頻繁に起こっていますが、山間部ではこの異常気象が極めて要注意で、時には樹木の倒壊等により、山道の使用が危ぶまれる状況になる場合があります。
これらの地域では、常にこのような心配があるため、地域の人たちが簡易補修などを行っており、高尾山では、薬王院や商工会などが参拝者や登山者の安全のために山道整備などを行うなど、公園の維持管理に努力しています。
現在、明治の森高尾国定公園で、都は、八王子市や地元の関係団体等と高尾地域連絡会を設置し、将来の高尾山のあり方を検討しているが、この連絡会はこうした考え方で運営されるべきと考えますが、所見を伺います。 答弁1 ▼環境局長 自然公園の整備、運営のあり方についてでありますが、自然公園の良質な環境を保全していくためには、地域と連携してこれに取り組む必要がございます。
お話しの明治の森高尾国定公園では、こうした考え方から、地元の自治体や事業者、環境団体、地権者などに参加いただき、高尾地域連絡会を設置しております。この連絡会における意見交換の結果などを踏まえまして、今年度、関係者のご協力をいただき、山頂の見晴らし台の拡充整備などを行うこととしております。これにより、高尾山頂からの眺望は格段に改善することが期待されます。
今後とも、こうした地域との連携を一層推進し、施設の整備や利用ルールの策定など、地域に支えられた自然公園づくりを進めてまいります。
質問2 新たな視点による自然公園の整備ですが、自然公園の登山道の中には、整備した当時に比べ、付近の樹木の成長により薄暗くなり、快適性が失われた状況にあるものが少なくありません。これでは、せっかく訪れた登山者はがっかりで、中高年を中心に人気の出ている登山やハイキングブームに水を差し、今後の利用者増にブレーキがかかることが危惧されます。
この原因の一つに、自然公園法に基づく事業では十分な対応ができない荒廃した民有林が多く存在していることが挙げられます。眺望の確保という新しい視点に立ち、多摩の四季折々の自然を楽しめるよう整備し、利用者の満足度を一層高めていくことが重要であると考えますが、所見を伺います。 答弁2 ▼環境局長 利用者の満足度を高める自然公園の整備についてでありますが、多摩の自然を守っていく上では、多摩の山々がより多くの登山者に愛され、快適に利用されることが大切でございますが、お話しのように、自然公園法の枠内の事業だけでは、そうした必要に対応できない場合がございます。
こうした観点から、自然公園内において森林の整備事業を活用いたしまして、登山道沿いの、眺望を遮っている民有林の樹木の間伐や伐採を行うなどして、自然公園に来られる都民が四季折々の自然を楽しめることを目指す取り組みとして、「四季彩(しきさい)の道」づくりというふうに名づけて実施してまいります。
今後とも、多様な事業との連携を重視するこのような取り組みを積み重ねながら、利用者に一層親しまれる自然公園づくりに努めてまいります。
質問3 自然の利用と保護の両立のための都レンジャー事業について伺います。
利用者の増加により自然破壊が心配されることは、全国各地の自然公園の状況が示しているとおりであり、もはや登山者のマナーやモラルに頼るだけで、自然公園の適正利用は困難と思います。
都では、平成十六年度から、全国に先駆け、自然公園等に導入した都レンジャーが巡回しながら適正な利活用を呼びかけています。広大な自然公園の中では苦労が多いと思います。
今後、自然公園の利用者を増加、拡大させていくと同時に、貴重な財産である自然保護を両立させるために、都レンジャーの仕組みを今後どのように展開しようとしているのか伺います。
また、高尾地域連絡会の成果を多摩地域の他の自然公園にも広げ、多摩地域の観光などに大いに役立つ自然公園として今後も発展していくことを要望しておきます。 答弁3 ▼環境局長 都レンジャー事業の今後の展開についてでありますが、自然公園の利用の促進と自然の保護を両立させるためには、都民の利用マナーの一層の向上を図ることが必要であります。
都は、自然公園の利用者に直接、自然の知識や利用マナーの指導、啓発を行うため、都レンジャーを配置しておりますが、今年度、その機能を一層強化するため、多摩地域で三名増員し、九名体制といたしました。
あわせて、都レンジャーの活動を補佐するため、首都大学東京と連携をいたしましてサポートレンジャーを育成しておりまして、本年十月から一期生六十三名が活動を開始いたします。
今後とも、都レンジャーとサポートレンジャーが一体となった体制を充実いたしまして、多摩地域の自然の利用と保護の両立を図る取り組みを推進してまいります。
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■自立支援法施行後の対応 |
質問1 障害者施策について伺います。
障害者自立支援法は、地域で安心して自立した生活を営むことができる社会の実現を目的としております。
我が党は、十月の施行に先立ち、障害者の方々や関係団体等から、さまざまなご意見を踏まえ、改善すべき事項について国に強く働きかけ、その結果、八月末には、障害児施設の利用負担が軽減されることとともに、円滑な事業運営のため、報酬が引き上げられるなど、新たな五つの改善策が講じられました。
都においては、本年一月に、障害者自立支援法の趣旨を踏まえ、すべての障害者が地域で自立して生活するために必要な生活基盤の整備に取り組むとともに、障害者の経済的自立を促す就労を支援する障害者地域生活就労促進三か年プランを策定いたしました。
障害者自立支援法では、東京都障害者福祉計画の策定が義務づけられており、現行の三カ年プランをさらに充実し、新たな計画を策定すべきと考えますが、計画に当たっての基本的な考え方をお伺いいたします。 答弁1 ▼福祉保健局長 障害福祉計画の策定についてでございますが、平成十八年度中に策定する東京都障害福祉計画においては、障害者自立支援法の趣旨を踏まえた三つの障害の制度の一元化と、これまで都が率先して取り組んできました地域生活移行や就労支援等の強化を基本に据えまして、そのために必要なサービスの数値目標を定めることとしております。
今後、都は、東京都障害者施策推進協議会や東京都地方精神保健福祉審議会の報告など、広範な意見を取り入れるとともに、各区市町村の障害福祉計画との整合性を図りながら、本年一月に策定いたしました障害者地域生活支援・就労促進三か年プランをさらに発展させて、東京都障害福祉計画の策定に取り組んでまいります。
質問2 また、障害者自立支援法における特色の一つに、身体、知的、精神三障害共通のサービス利用の枠組みとなったことが挙げられます。
精神障害者については、ようやく他の二障害と同一の制度となったところであり、今後、精神障害者施策を一層充実する必要がありますが、そのためには、まず、区市町村、事業者、関係団体としっかり連携をしていける推進体制を確保強化していくことが重要であります。
精神障害者施策については、本年六月に東京都地方精神保健福祉審議会の最終答申が出されましたが、私もこの審議会の一員として参画してまいりました。
この答申では、精神障害者の地域生活中心への構造変革に向けて、いわゆる社会的入院の解消だけでなく、将来にわたってその発生を予防する仕組みづくりとして位置づけ、地域での居住の場や日中活動の場の確保、医療中断防止対策、精神科医療と地域保健福祉の連携などの包括的なシステムを機能させることが必要であるとしています。
都では、精神障害者の日中活動の場や住まいの場の確保対策を今後どのように進めていく考えであるか、お伺いいたします。 答弁2 ▼福祉保健局長 いわゆる社会的入院を解消するため、精神障害者の退院を促進するに当たっては、通所施設やグループホームなど、地域生活の基盤整備が極めて重要であると認識しております。
そのため、都では、本年一月、障害者地域生活支援・就労促進三か年プランの中で初めて精神障害者のグループホームの整備等を計画化し、その着実な実施を図っているところでございます。
今後とも、東京都障害福祉計画に基づき、福祉サービスの実施主体である区市町村と密接に連携して、精神障害者の地域生活の基盤整備を促進してまいります。
質問3 また、私は、精神障害の特性として、医療との連携が極めて重要であると考えます。都では、このような地域での精神障害者の医療の確保について、今後どのように施策を充実していくか、お考えをお伺いいたします。 答弁3 ▼福祉保健局長 疾病と障害をあわせ持つ精神障害者の特性として、病状が変動しやすく、また、それを本人が自覚しづらいことなどから、継続的な医療と相談体制が不可欠であると認識しております。
このため、都では、いち早く精神科救急医療体制を整備するとともに、地域生活の中で医療の中断を防止するため、独自に低所得者に対する通院医療費の助成や、夜間こころの電話相談事業を実施してまいりました。
今後とも、精神障害者の地域生活を支えるため、関係団体等の協力を得ながら、精神科医療と相談体制の一層の充実を図ってまいります。
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■土砂災害の防止対策の推進 |
質問1 本年七月の九州から中部地方にかけて、記録的な豪雨が続き、全国で行方不明者は、八月四日現在三十二名で、このうち土砂災害では二十一名が犠牲になっています。
都内には土砂災害危険箇所が数千カ所あるといわれており、八王子市など多摩地域にその大半が存在しています。一たび豪雨による土砂災害に見舞われると、甚大な被害が生じるおそれがあります。
都では、土砂災害を防止するため、危険性が高い箇所から順次、土砂災害防止施設等の整備を進めておりますが、全体の施設整備などハード対策にはなお長期間を要すると聞いております。
このことから、従来のハード対策だけでなく、土砂災害のおそれのある箇所を土砂災害警戒区域に指定し、都民に危険箇所を明確に周知するとともに、区市町村が役割を担う避難体制の整備を支援するソフト対策の充実が急務と考えます。
また、土砂災害は、災害の兆候から発生まで三十分から一時間程度の時間的余裕があり、この時間的余裕を最大限活用し、発災前に避難ができるようになれば、人的被害を大きく減少することが可能になると思います。
このためには、避難に資する適切な情報提供、例えば降雨量や土壌条件など、科学的な根拠に基づいた警戒情報の提供が必要と考えます。
そこで、土砂災害警戒区域の指定や土砂災害警戒情報の提供が急務となっていますが、その対応についてどのように取り組んでいくのか、お伺いします。 答弁1 ▼建設局長 土砂災害警戒区域の指定などについてでございます。
都はこれまでも、土砂災害防止のため、砂防ダムなどの施設整備を行ってきておりますが、人的な被害を防止するには、これらに加えて、避難体制の基礎となる警戒区域の指定と警戒情報の提供が不可欠でございます。
警戒区域は、急傾斜地などの地形や地質を調査し、危険範囲を設定の上、地元調整を経て指定するものでございます。
本年三月、都内で初めて七十八カ所を指定し、引き続き今年度中に約三百カ所の指定を行ってまいります。
また、避難の目安となる警戒情報につきましては、科学的根拠に基づく基準が必要であり、現在、学識経験者などによる委員会で検討中でございます。
今年度中に基準を策定し、平成十九年度から区市町村への警戒情報の提供を試行してまいります。
質問2 避難体制の整備された後についてですが、避難場所の多くの場合は、集会所や公民館などが指定されています。これらの避難場所が土砂災害に遭うことになれば、避難体制の整備の意味がなく、避難場所が土砂災害危険箇所に立地している場合は、山間部では容易に変更できないし、したがって、このような箇所では、避難所の安全を確保するハード対策を優先して実施する必要があると考えます。
そこで、避難所が土砂災害箇所の中にある場合のハード対策の進め方についてお伺いし、質問を終わります。 答弁2 ▼建設局長 避難所の土砂災害防止対策についてでございますが、急傾斜地などの土砂災害危険箇所にある避難所については、都民が安心して避難できるよう、安全性の確保が重要な課題となっております。
このため、まず、避難所周辺の地形や地質調査などを実施し、これに基づき、工法や構造など技術的な検討を早急に行ってまいります。
引き続き、急傾斜地の崩壊を防ぐのり枠工事や砂防ダムなどの防災工事を、緊急度の高い箇所から重点的に実施してまいります。
今後とも、地元自治体と連携し、警戒区域の指定などのソフト対策を進めるとともに、避難所を守るハード対策を推進し、都民の安全確保に努めてまいります。
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