平成18年第3回定例会 一般質問

介護ベッドの利用継続へ支援を
ものづくり企業へ支援策充実を

かち佳代子(日本共産党)
■高齢者介護
 
質問1
 まず、高齢者介護について質問します。
  四月から改定された介護保険制度のもとで、保険料が大幅値上げになる一方、介護度が低いと判定された高齢者からヘルパー派遣やデイサービスが打ち切られています。介護ベッドや車いすの貸与が認められず、各地で悲鳴が上がっています。政府がいってきた自立支援や介護の社会化と逆行する深刻な事態です。このままでは、保険料だけ取り立てて介護は受けさせない制度になりかねません。
  そこで、以下、緊急の問題について提案します。
  第一に、介護保険料の負担軽減です。
  住民税増税に連動した負担増が高齢者に押し寄せているだけに切実な課題です。保険料を下げるには、国の財政負担をふやすことが必要です。事業費全体の二五%が国の負担とされていますが、そのうち五%は調整交付金で、後期高齢者比率の低い自治体には少ししか配分されません。東京都全体で国から来る調整交付金は三・六%にすぎません。
  全国市長会、町村会、東京都市長会、町村会も、調整交付金は国庫支出金の別枠にしてほしい、すなわち、国庫負担割合を現行の二五%から三〇%に上げてほしいと政府に要望しています。介護保険事業を安定的に運営していく上で切実な要望だと思いますが、所見を伺います。
 
答弁1
 ▼福祉保健局長
 介護保険の調整交付金についてでございますが、この交付金は、保険財政の自治体間格差を是正するため、国庫支出金の法定の負担割合である二五%のうちの五%分を財源として財政調整を図る仕組みでございます。
  具体的には、要介護者の発生割合の高い後期高齢者が多い区市町村や高齢者の所得水準が相対的に低い区市町村に対し、国費を傾斜配分しているものでございます。
  都内の各区市町村における介護保険財政は、相対的に見れば健全かつ円滑に運営が行われており、現行の調整交付金の仕組みは十分に機能しているものと認識しております。
 

 
質問2
 東京都全体で二五%の国庫負担がきちんと支払われた場合、約六十五億円の増収となり、年間保険料は高齢者一人当たり平均二千八百円値下げができます。都として、国庫支出金の不足分を区市町村に支援し、保険料軽減ができるようにすることを提案するものです。見解を伺います。
 
答弁2
 ▼福祉保健局長
 調整交付金は、保険財政の自治体間格差を是正する有効な仕組みであり、その五%相当額と交付実績の差額について都道府県が支援することは、公費負担割合を明確に規定しております介護保険制度の趣旨から適当ではないと考えております。
 

 
質問3
 第二に、介護ベッドなど福祉用具の問題です。
  東京都社会福祉協議会の介護保険居宅事業者連絡会は、介護保険制度改定に伴う利用者への影響調査結果を七月に発表しました。それによれば、約五割の人が、今まで利用していた時間や回数を減らさざるを得なくなった、四割の人が、今まで利用していたサービスが利用できなくなったと回答しています。
  このアンケート調査を見ても、今まで利用していたベッドが借りられなくて困るなど、軽度の利用者からの苦情や相談が事業者にも寄せられていることがわかります。この調査結果をどう受けとめていますか。
 
答弁3
 ▼福祉保健局長
 お話の調査は、制度改正直後の時期に、介護事業者の団体が会員事業者を対象として実施したものであり、その中で利用者からの声を事例として紹介していることは承知しております。
  今回の制度改正は、心身の状態から見て特殊寝台の利用が想定しにくい要支援などの軽度者について、保険給付の対象外とし、適正化を図るものでございます。ただし、軽度者であっても、客観的判定に基づき、起き上がりや寝返りができない方、そういう方は対象とされます。
  この半年間、保険者である区市町村や現場の介護支援専門員などの取り組みによりまして、利用者の理解も進み、円滑に見直しが図られてきているところでございます。
 

 
質問4
 あるひとり暮らしの七十代の女性の一例ですが、大腿骨に障害があり、歩行困難と痛みに苦しんでいます。心臓疾患で心臓に負担をかけられない生活です。ベッドで起き上がるのも、さくがなければ起き上がれません。ところが、要介護1だから、ベッドは九月末までに返すようにいわれ、途方に暮れています。この人は生活保護のため、自費でベッドを買うことも借りることもできません。
  二十三区介護保険課長会でも、人工関節で脱臼しやすい、全身が衰弱しているなど介護ベッドなしでは起き上がりが著しく困難になるケースがあるとの意見が出されています。こういう問題が現に生まれているからこそ、港、北、新宿、中央、千代田、江戸川区、そして調布市のように、独自の支援を行う自治体が相次いでいるのです。
  区市町村が自立支援のため必要と認めた高齢者に対し、独自にベッドを貸し出す事業などについて、区市町村から申請があれば、包括補助制度、福祉改革推進事業の活用について検討していただきたいと思いますが、どうでしょうか。
 
答弁4
 ▼福祉保健局長
 独自にベッドを貸与する区市町村への支援についてでございますが、今回の制度改正は、軽度者への特殊寝台の貸与を見直し、給付の適正化を図るものであり、介護保険対象外の方に対し、区市町村が独自に介護ベッドを貸し出す事業について、都が支援する考えはございません。
  なお、昨日の自民党の代表質問に対する答弁のとおり、制度改正以前から特殊寝台を利用してきた軽度者に対しまして区市町村がその購入費を助成する取り組みについては、都としては時限的な支援を実施することとしております。
 

 
質問5
 第三に、地域密着型サービスとリハビリテーションの充実です。
  通えて、泊まれて、住むこともできる小規模多機能ホームは、住みなれた地域で身近な人々との触れ合いの中で過ごすことができ、とりわけ認知症高齢者に大きな効果があります。
  小規模多機能ホームは、全国で百五十カ所整備されていますが、都内ではまだ五カ所です。都の計画では、今年度二千人分、約八十カ所、二〇〇八年度までに五千三百人分、約二百カ所の目標です。都として、小規模多機能ホームの役割の重要性をどう認識していますか。
  今年度からスタートした地域密着型サービス重点整備事業を来年度も継続し、小規模多機能型介護などの拠点について、一層、整備促進を図る必要があると思いますが、答弁を求めます。
 
答弁5
 ▼福祉保健局長
 小規模多機能型居宅介護についてでございますが、このサービスは、通所を中心に、利用者の希望による泊まりや自宅への訪問の機能により、住みなれた地域で高齢者の生活を支えていくサービスでございます。
  既に都は、今年度から三カ年の地域密着型サービス等重点整備事業を実施しており、これによりまして区市町村を支援し、小規模多機能型居宅介護拠点など、地域に密着した介護サービス基盤の整備促進に努めているところでございます。
 

 
質問6
 身近な地域におけるリハビリテーションの充実も緊急な課題であり、従事者研修や相談機関への支援などを行う支援センターの役割が重要となっています。今年度までに島しょを除く十二医療圏に一カ所ずつ整備が進められてきた地域リハビリテーション支援センターについて、今後その質の向上に積極的に取り組むべきと思いますが、所見を伺います。
 
答弁6
 ▼福祉保健局長
 地域リハビリテーション支援センターについてでございますが、都は、地域でのさまざまなリハビリテーション事業の充実を図るため、当該地域においてリハビリ医療の中核的な役割を果たしている病院を地域リハビリテーション支援センターとして指定しております。
  支援センターの活動については、リハビリの専門家や関係団体等で構成する東京都リハビリテーション協議会の意見を聞きながら、二年ごとに実績を評価し、これを踏まえて再指定する仕組みをつくるなど、質の向上を図っているところでございます。
 
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■ものづくり支援
 
質問1
 近年、海外に展開していた製造業の国内回帰が話題を呼び、国によるものづくり基盤法の制定など、日本のすぐれた製造業の再興に向けた流れが強まっています。
  地方自治体でも、大阪での工業集積支援や神奈川や神戸の臨海部地域での研究機関の集積、愛知での企業ブランドの取り組みなどが始まっています。こうしたもとで、国内のものづくり基盤産業の全国の出荷額は、二十年前と比べ、十五年間に二割伸び、製造品出荷額も二〇〇四年度のデータで、若干ですが、伸びを示しているのです。
  ものづくりの強化は欧米でも取り組まれています。ロンドンでは、世界都市に向かう過程で生まれた貧富の二極化を是正するために製造業を育成することに力を注いでいます。ドイツなどの欧州各国でも中小製造業の振興が大きな流れとなっています。
  こうした内外の取り組みに学んで、都内のものづくりの活性化に取り組むことが急がれているのではないでしょうか。
  そこで、何点か伺います。まず、都内には中小製造業が高密度に集積している城南地域を初めとして、先端産業、それを支える高度な基盤技術など、ものづくりが数多く存在しています。東京のこれからの経済的発展の一翼を担うものづくり企業の育成に向け、支援策を充実させるべきと考えますが、知事の所見を伺います。
  また、多摩川を挟んで京浜工業地帯を構成する城南地域と神奈川県と連携した広域的な工業支援の取り組みの強化を提案しておくものです。
 
答弁1
 ▼知事
 東京には世界に誇る高度な技術を持つ中小企業が集積しておりまして、日本の経済を牽引していく原動力となっております。こうした東京のものづくり産業の育成のため、これまでもベンチャー技術大賞の創設やナノテクノロジーセンターの開設など、先進性と独自性を持った施策を実施してまいりました。
  さらに、知的財産総合センターを設置し、国際競争力の強化を支援するなど、多面的に施策を展開しております。今後も、さらにこれらの試みを重視していくつもりであります。
 

 
質問2
 新たな産業振興ビジョンの策定が進められていますが、城南を初めとする工業集積を柱に位置づけ、将来的な展望を踏まえた内容とすることが欠かせないと思いますが、どうでしょうか。
 
答弁2
 ▼産業労働局長
 産業振興のための基本戦略についてでございますが、産業振興の将来像に関する懇談会の第一回懇談会を九月六日に開催するなど、検討を開始したところであります。
 

 
質問3
 産業振興ビジョンの検討に当たっては、懇談会にとどまらず、中小企業対策審議会の開催や、区市町村、業者団体などの参画を働きかけ、よりよいものにすることも大切なことであると考えますが、見解を伺います。
 
答弁3
 ▼産業労働局長
 基本戦略における関係団体の参画についてでございますが、産業界を初め、観光、まちづくり、環境など幅広い委員で構成される産業振興の将来像に関する懇談会を設置し、意見を聞くこととしております。
 

 
質問4
 城南地域のものづくり活性化のためには、今、各企業が必要としている特許や技術などのシーズ、それを製品化し、販路を開拓するなどを一体的に支援するシステムが必要となっています。城南地域に試験研究と経営改善、インキュベーター施設、展示場や販路拡大などを一カ所に集約した施設をつくり、中小企業振興公社と連携した取り組みを展開することが急がれていると思いますが、いかがですか。
 
答弁4
 ▼産業労働局長
 現在、城南地域の中小企業振興の一大拠点として、中小企業振興センターを設置し、技術支援、経営支援などを展開しており、併設されている大田区産業プラザの展示場等と相まって機能集約が図られていると考えております。
  なお、同センターにおいては、産業技術研究センターと中小企業振興公社による連携した取り組みが行われているところであります。
 

 
質問5
 城南地域の企業は、工場の中の工場、フルセット産業といわれるように、提供する部品や材料が、最終製品を生産するための装置に活用されるものが多数占め、お互いに支え合う構造を持っています。
  メッキ産業はそのかなめをなすものであり、国が進めるものづくり基盤法に基づく支援が欠かせません。東京都として国の支援拡充を働きかけるとともに、都として、無公害型メッキへの技術革新支援、技能検定支援の拡充、用水型産業として上下水道料金の軽減の継続などの切実な要望にこたえることを提案するものですが、あわせて答弁を求めます。
 
答弁5
 ▼産業労働局長
 ものづくり基盤法に基づく国の支援についてでございます。
  いわゆるものづくり基盤法は本年六月に施行されております。現在、都としては、メッキ関連企業を含む中小企業に対し、中小企業振興公社及び業界団体を通じて、その普及啓発を行っているところであります。
 

 
質問6
 すぐれた技能や環境、雇用対策など優秀な企業を育成することは、これからの国際的な競争に打ち勝つ上で欠かせない要件となるといわれています。都には優秀な技術者を認定する東京マイスター制度がありますが、認定するだけで終わっており、産業振興につながらないなど改善の要望が寄せられています。
  そこで、都としてマイスターのPRを行うことや、マイスターのいる企業や環境、雇用などすぐれた企業を認定し、資格を授与するものづくり東京ブランドを創設することなどは検討に値すると考えますが、答弁を求めます。
 
答弁6
 ▼産業労働局長
 東京マイスター制度は、技能者の社会的評価を高め、技能水準の向上に寄与しており、その受賞者は、ものづくり技能の指導活動等を通して社会に貢献しております。都は、受賞者の名簿を作成し、区市町村や関係団体等に広くPRしているところであります。
 

 
質問7
 東京の製造業は重層的な下請構造で構成されており、大手企業による手形による実質値引きや不当な単価の引き下げなどに直面しています。
  そこで、手形発行期間の短縮、対象業種の拡大など下請二法の改正を国に求めるとともに、都として下請二法の遵守を徹底するよう求めるものです。答弁を求めます。
 
答弁7
 ▼産業労働局長
 都はこれまでも、親事業者で構成される主要業種団体協議会を開催し、下請取引の適正化や法の遵守について周知徹底を図っております。さらに、中小企業振興公社においても、下請取引改善のための指導を行っております。
  なお、いわゆる下請二法については、平成十五年に改正され、既に対象業種が拡大されたところであります。
 

 
質問8
 原油高騰に伴う鋼材費や原料費などの影響も深刻です。対策を国に求めるとともに、都として原油対策特別融資制度の創設を求めて、質問を終わります。
 
答弁8
 ▼産業労働局長
 本年六月、都は国に対し、原油・石油製品の価格や供給の安定化等について提案要求を行いました。また、原油高などにより事業活動に悪影響を受けている中小企業に対しては、既に制度融資において、有利な金利が適用される経営支援融資など、適切な金融支援を行っております。
 
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