平成18年第3回定例会 一般質問

圏央道を視野に物流拠点整備を
過疎町村財政に強力な支援を

林田 武(自民党)
■災害対策
 
質問1
 まず最初に、東京都の災害対策について伺います。
  いつ発生するかわからない、しかし、発生する可能性が極めて高い首都直下地震は、首都東京に甚大な被害をもたらすことが確実に想定されます。
  東京を襲った大地震としては、大正十二年九月一日に起こった関東大震災があり、七万人余の命を奪いました。平成七年一月十七日に発生した阪神・淡路大震災は、大都市における震災の恐ろしさを全国に知らしめました。高層ビルが林立する大東京、そして家々が密集する大東京において、震災対策、災害対策は容易なことではないと、正直思います。
  東京都は、阪神・淡路大震災を契機に、従前の東京都震災予防条例を全面的に改正し、平成十三年四月に東京都震災対策条例を施行しました。この条例は、自助、共助の理念に都民が立ち、公助の役割を持った行政、都、区市町村とが、それぞれの責務と役割を持って連携を図っていくというものであります。
  問題なのは、マグニチュード七、直下型大地震がある日突然起こる。これは今、人間の力ではどうにもならないことであります。そこで、被害を可能な限り最小限にしていく対策は必要ですが、同時に、災害が起こってしまった後、都民の生命、財産をいかに守るかが大事だと思います。
  ことしも、九月一日、防災の日には全国各地で防災訓練が行われ、三十七都道府県で約八十万人が参加したとのことです。東京都でも石原知事を先頭に合同防災訓練が行われました。東京湾北部を震源とするマグニチュード七・三の地震が発生したという想定で実施されました。この規模の地震が起きると、中央防災会議が試算した被害想定では、最悪で一万一千人が死亡、八十五万棟が全壊・焼失、都市からの帰宅困難者は約六百五十万人に上るだろうといわれております。
  今回の訓練で大きな前進は、従来の行政、都民、自衛隊による訓練に加えて、石原知事が在日米軍に参加を呼びかけ、実行されたことであります。
  私も横田基地での防災訓練に参加しましたが、横田基地を出発した米軍ヘリコプターが、六本木の軍施設まで医療用品を運ぶ訓練が行われ、また晴海ふ頭では、帰宅困難者移送訓練に当たる海上自衛隊の護衛艦と海上保安庁の巡視船に並び、被害者役の都職員約三十人を運ぶ米フリゲート艦「ゲイリー」が参加しました。また、韓国ソウル特別市のレスキュー隊が東京消防庁と合流し、訓練に参加しました。私は、石原知事の英断に心から賛同いたしました。
  申し上げたいことは、いざ大被災が起きたときに、今回のように、都民はもとより、消防庁、警視庁に加え、プロフェッショナルの自衛隊、そして米軍の力も遠慮なく加わって防災システムをつくっておくことが極めて大事であるということであります。
  このことで思うことは、元内閣安全保障室長佐々淳行氏の話であります。佐々氏は、あの阪神・淡路大震災の後、残念ながら戦後の日本は、骨抜き憲法によって、危機管理のできない国になってしまった、阪神・淡路大震災のとき、村山首相のもと、笹山神戸市長が革新市長で、自衛隊の救援を求めなかった、そのため、六千四百三十三人の死者を出してしまったと述べております。自衛隊の救援が早急になされていたならば、多くの命が助かったという話であります。まさに言語道断だと思います。
  知事は今定例会の所信表明の中に少し触れられておりましたが、改めて知事に伺います。今回の防災訓練に、自衛隊に加え、在日米軍にも参加を要請されたお考えと、今回の訓練の成果を率直にお聞きいたします。
 
答弁1
 ▼知事
 総合防災訓練における米軍参加についてでありますが、災害時の救援活動に必要となる人員、資機材、輸送力などを有する在日米軍に対して人的、物的支援を求めることは、有効な、また当然な手段であると思います。
  今回の訓練では、在日米軍が空、海の機動力を発揮し、緊急支援物資や帰宅困難者の輸送を行うなど、緊急時の後方支援として役割を十分果たすことを確認することができました。特に海軍の出動は、東京湾を活用して、神奈川県、千葉県への帰宅困難者の援助、救済のために非常に有効であることを再確認いたしました。
  国はいまだに海外への支援要請の仕組みや受け入れ体制を整備しておりませんが、東京の試みが国にとっても初めての経験でありまして、よいモデルケースになったと思っております。
  今回の成果を踏まえ、今後とも外国の支援部隊の参加による実践的訓練を実施するとともに、災害時における在日米軍の協力のより広い枠組みを構築するなど、災害対応能力を高めていきたいと思います。
  なお、付言されませんでしたが、今回は韓国のソウルの、要するに災害対策特殊部隊も、あれは消防関係でしょうか、出動してくれまして、両国の友好な関係のために大きなよすがになったと思っております。
 

 
質問2
 平成十八年度重要施策、都民の安全・安心を守る震災対策で災害情報システムを構築するとしていますが、都民にとって有効で、かつわかりやすく活用できる情報提供が必要であります。どのようなシステムを考えているのか伺います。
 
答弁2
 ▼総務局長
 災害情報提供システムについてでございます。
  災害時には、都民がどのような場所、状況にあっても適切な行動をとれるよう、発災直後から、その時々に必要とする情報を提供していくことが重要でございます。
  このために、本システムでは、都民がパソコンや携帯電話で直接アクセスでき、避難所や帰宅支援ステーションでも情報を受け取れるようにいたします。提供する情報といたしましては、発災時には地震情報や都内各地の被害状況等を、その後は道路、鉄道、ライフラインの復旧状況、避難所の開設状況等を予定しております。
  今年度末からの一部稼働を目指し、さらに画面構成や情報内容の精査を行い、都民が活用しやすいシステムとなるよう整備してまいります。
 

 
質問3
 災害時における高齢者を初めとする要援護者対策ですが、平成十六年七月、新潟での豪雨など、各地で相次いだ水害で多くの高齢者が被災したことで、国が各自治体に災害時要援護者のリストづくりを要請した中で、新聞社が調査したところ、東京二十三区、政令市、県庁所在地の全国七十二の自治体のうち、十九自治体しか作成できていないという報道がありました。個人情報保護が壁になり、なかなかリストづくりが進んでいないことはわかりますが、少なくとも十九の自治体は熱心に取り組んだわけで、このリストづくりを含め、都として区市町村での災害時の要援護者対策が進むよう支援していくべきだと思いますが、ご所見を伺います。
 
答弁3
 ▼福祉保健局長
 高齢者等の災害要援護者の迅速な避難を行うためには、区市町村が主体となって要援護者の所在などを事前に把握し、支援に結びつけることが重要でありますけれども、昨今、個人情報に関する保護意識が高まり、こうした情報の収集は困難を来してきております。
  こうした中で、国は本年三月、避難対策に関するガイドラインを改定しまして、避難支援体制を整備する目的での個人情報の利用や第三者への提供を積極的に打ち出したところでございます。都においても、こうした国のガイドライン改定の趣旨を踏まえ、本年度中に区市町村向けの災害対策に関する指針を改定する予定でございます。
  今後、この指針に基づき、ご指摘の要援護者名簿の作成を含め、情報の収集と共有化を働きかけるなど、区市町村における災害要援護者対策の強化を支援してまいります。
 
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■多摩地域における物流拠点の整備
 
質問1
 多摩地域における物流拠点の整備について伺います。
  多摩地域において待望の圏央道八王子ジャンクションが平成十九年六月に開通となり、中央道と結ばれます。予定では、平成二十四年には東名道海老名ジャンクション及び東北道久喜ジャンクションまで通じることとなりました。一日も早い完成を願うものです。
  さて、圏央道が関越道と中央道が結ばれることによって交通の利便性が一段と高くなり、同時に物流の動きも活発化されることが想定されます。私は、平成十六年の一定の一般質問でこのことについて伺った経緯があります。そのとき、当時の勝田都市計画局長のご答弁は、多摩地域への輸送の多くは区部の物流拠点を経由しているため、輸送距離が長く、道路も混雑し、非効率な輸送形態となっている、圏央道インターチェンジ周辺に新たな物流拠点を整備する必要があると述べておられます。今まさにその時期が来たものと思われます。
  そこでまず、多摩地域、特に圏央道インターチェンジ周辺における物流拠点の整備に向けたこれまでの検討状況について伺います。
 
答弁1
 ▼都市整備局長
 これまでの検討状況についてでございますが、多摩地域においては、物流の量に対し相対的に物流施設が少ないことなどから輸送効率が低下しており、新たな拠点整備が求められております。
  都はこれまで、東京西南部における物流拠点の整備に関する調査を実施し、圏央道インターチェンジ周辺など五カ所の候補地を選定、公表してまいりました。また、物流関連企業の進出意欲についてのヒアリング調査を行うとともに、各地域の実情を踏まえた面的な整備手法や、PFIなど民間活力を生かした施設の整備方策についても検討してまいりました。
 

 
質問2
 東京都では本年二月、東京都が取り組むべき物流対策について、「東京からはじまる物流改革 総合物流ビジョン」として公表しております。その中で、東京西南部物流拠点の整備促進をするという方針を策定しておりますが、これはまさに圏央道を視野に入れた施策であります。そして、このビジョンで掲げている市街化調整区域における開発許可のあり方については、物流拠点を必要とする企業や土地所有者にとって最大の関心事となっております。
  いろいろな意見、声が私のところにも寄せられております。総合物流ビジョンを策定した東京都として、拠点整備に向け積極的に方向性を示す必要があると思いますが、今後の取り組みについて伺います。
 
答弁2
 ▼都市整備局長
 都は、多摩地域の物流の将来動向等を踏まえ、それぞれの候補地にふさわしい拠点の規模や施設の内容について、本年度、調査を実施いたします。これを受け、都及び関係市町による協議会を設置し、候補地における開発のあり方などについても検討することとしております。
  今後、これらの調査結果などを取りまとめ、拠点整備に向けて取り組む関係市町に対し広域的な立場から支援に努め、圏央道の整備を見据えた多摩地域の物流の効率化を推進してまいります。
 
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■過疎町村対策
 
質問1
 過疎町村対策について質問と要望をさせていただきます。
  まず、過疎町村への財政支援についてであります。
  都内で過疎地域自立促進特別措置法に基づく過疎地域に指定されている町村は、西多摩地区の奥多摩町と檜原村、島しょ地区で三宅村、新島村、青ヶ島村となっております。過疎地域の主な指定要件は、人口減少率や高齢化率の高さ、財政力の弱さなどであります。これらに起因する地域活力の低下は極めて厳しいものがあります。
  しかしながら、西多摩、島しょの過疎地域の町村も東京都であり、都全体の行政需要が高度多様化していることに伴い、都内の他地域と同様に、都市基盤や生活基盤となる各種公共施設の整備が求められていることは極めて当然であると考えます。
  加えて、町村には豊かな森林や澄んだ水の流れ、島には広大な海があり、これらは、全都民共有の財産として、貴重な自然環境の創出、憩いの場の提供など大きな役割を果たしております。それぞれの町村が抱える問題は東京都全体の問題といっても過言ではありません。都としても過疎町村財政に対する強力な支援が必要であると思います。
  そこで伺います。過疎地域の指定を受けている町村は、その指定要件からも、当然財政力が極めて脆弱であることから、都独自の財政支援や各種補助率のかさ上げ措置を講ずるべきだと考えます。また、本年度都が創設した市町村総合交付金について、これら町村の財政力や特殊事情などを勘案し、弾力的、効果的に配分すべきだと考えますが、見解を伺います。
 
答弁1
 ▼総務局長
 過疎地域の町村は、人口減少や高齢化が進む中、公共交通や保健、医療の確保、郵便局の統廃合など多くの課題を抱えるとともに、厳しい財政状況にございます。
  こうした町村に対しましては、過疎地域自立促進特別措置法に基づく国の財政措置に加えまして、都も各種補助金を交付し、手厚い支援を行ってきております。また、都独自の一般財源補完制度として本年度創設いたしました市町村総合交付金におきましても、各団体の財政力や事業動向などを十分に勘案した、弾力的、効果的な配分を行うこととしているところでございます。
  このような取り組みを通じまして、今後とも過疎地域の町村の行財政基盤の安定化を図り、地域の振興を促進してまいりたいと考えております。
 
  ご承知のとおり、都議会では、平成十八年六月二十一日に、川島議長名で国会へ、郵政事業分割・民営化に伴う地域住民の利便性確保に関する意見書を提出しました。
  郵政事業は、来年十月から、民営化の上、五つの株式会社に分割されます。檜原村では、これに伴って来年三月で郵便集配業務が廃止されることになりました。村民は、今後実際に起こるだろう郵便集配回数の減少、配達のおくれ、貯金や保険の外務員不在によるサービスの低下など、突然強いられる不便な状況に対して、特に高齢者の方々や身体の不自由な人たちにとっては深刻な問題であり、不安感は今全村に広がり、マスコミでも報道されているところであります。
  檜原村の坂本村長は、このような村民の声を受け、先月、総務大臣と郵政公社総裁に対し、集配業務を行う郵便局の存続と過疎地域におけるサービス低下防止策の実施について要望書を提出しました。
  郵便局の分割・民営化は国策であり、今さらもとに戻るものではないことは十分に承知しております。しかし、合理化の対象となった郵便局のある町村にとって、郵便局の廃止、サービスの低下が過疎化のスピードを加速することにはならないか、非常に大きな問題であります。このような状況下にある過疎町村の声に真摯に耳を傾け、町村と一体となって過疎対策を東京都としてしっかり講じていただきたいと思います。
 

 
質問2
 過疎町村における地場産業の育成支援について質問いたします。
  特に、林業の振興と木材を製材する製材所の育成支援が必要であります。申し上げるまでもなく、東京都では、平成十四年から東京の森再生計画を進め、人工林三万一千ヘクタールのうち、民有林一万八千ヘクタールを対象に、都と所有者が管理契約を結び、林業関係者に委託して間伐する施策が進められております。また、特に平成十八年から花粉発生源対策が開始され、重要施策の一つとして多摩の森林対策に都として大きく踏み出していただき、感謝いたしております。
  しかし、東京の森再生を着実に進めるためには森林所有者の理解が不可欠であるため、森林所有者の集まりである東京都森林組合と連携して事業に取り組んでもらいたいと思います。
  多摩地域では、長引く木材価格の低迷により林業経営が困難となり、森林整備が進まず、木材産業全体が地盤低下を起こしているのが現状です。西多摩地域の製材所では経営が成り立たず、平成に入ってからも、平成八年に五十二社あったものが、現在稼働中の製材所が二十社と激減しております。
  木材産業がこのような状況の中で、森林再生ができるのか、花粉発生源対策ができるものなのかと思います。机上の施策でなく、実態に合った施策を進めていくためには、林業そのものに財政的投資、政策的投資をしていかなければならないと思いますが、木材産業への支援をどのように考えられているのか、伺います。
 
答弁2
 ▼産業労働局長
 木材産業への支援についてでございます。
  都はこれまでも、木材産業に対して、材木の品質向上を図るための乾燥施設導入や、間伐材の搬出などに対する支援を行ってきたところであります。今後、花粉症対策の取り組みにより多摩産材の流通量が倍増することから、多摩産材の販路開拓を進めるとともに、製材業を初めとする木材産業の経営体質の強化に積極的に取り組んでまいります。
 

 
質問3
 過疎町村に活力と活性化を育てていくためには、地場産業に対して東京都の大きな支援が必要と思います。現在、西多摩過疎町村では、水産業や農産物にいろいろな工夫を凝らし、特産品化を進めています。例えば、檜原村特産のユズやジャガイモを使ったワインやしょうちゅう、奥多摩では、森林を荒らすシカの食材利用、東京都が開発した大型の奥多摩やまめなどがあります。しかし、このような特産品があるにもかかわらず、生産・販売体制がまだ十分でないため、残念ながら、地元食材やお土産物として観光客など一般の人に広く提供されるには至っておりません。
  そこで、今後東京都では、過疎町村対策として、地場産業振興の観点から、どのように生産・販売体制の整備を支援していくのか、伺います。
  以上で終わります。
 
答弁3
 ▼産業労働局長
 都では、山村振興等特別対策事業などにより、檜原漬等の特産品の開発、奥多摩のみそやそばなど地元食材の加工施設、直売施設等の整備を進め、地域産業の振興に貢献してまいりました。現在では、ジャガイモしょうちゅうなど、地元みずからの取り組みによる新たな特産品の開発も行われるようになりました。
  今後も、こうした取り組みに対し、食品技術センターによる生産、加工技術の指導を強化するなど支援を行ってまいります。また、観光施策とも連携させながら、特産品のパンフレット作成やキャンペーンの実施など、販売拡大を支援してまいります。
 
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