オリンピック招致のためには 晴海地区公共交通の整備が必要 |
立石晴康(自民党) |
■オリンピック招致とまちづくり |
質問1 人生、いつも始発駅。私は、ちょうど八月三十日、ベトナムで同僚議員とともに、恒例、マングローブの植林を終えたところでしたが、JOC選定結果が気になり、夕刻、東京に帰り、選定会場に行きました。熱気あふれる会場で、やがて東京に決定の知らせを受け、招致議連の仲間とともに大変喜び合いました。
しかし、いうまでもなく、これでようやく世界各都市との競争のスタートラインに立つことができたというわけです。本当の戦いはこれからです。アメリカが一九九六年のアトランタ大会以来の開催をねらっており、リオデジャネイロも南米で初めてのオリンピック招致を目指すと聞いています。世界の強敵を打ち破り、オリンピック招致を勝ち取るためには、二〇一六年の都市像を明確に打ち出し、世界の人々が認める、東洋の、日本らしい都市像を描くことが重要であります。加えて、オリンピック招致の機運を都民、国民全体で盛り上げながら、招致レースに挑むことが大切です。
このような観点から、オリンピックとまちづくりについて質問いたします。
まず初めに、メーンスタジアムの建設が予定されている晴海地区のまちづくりについてお伺いいたします。
世界一コンパクトで高密度な大会を目指す今回のオリンピック計画では、主要施設を半径十キロメートル圏内に配置し、道路交通の整備とともに、東京の多様な公共交通網を利活用することで、来場者の安全迅速、快適な移動を実現させることとしています。
しかし、晴海地区においては、公共交通機関は都バスと都営大江戸線しかありません。また、最も最寄りの勝どき駅は、トリトンスクエアなど、勤労者で慢性的な混雑に悩まされています。このため、周辺の住環境への配慮や、地域交通の利便性を向上させる交通インフラの整備が重要です。
交通インフラの整備として、大江戸線の延伸、既存地下鉄のループ化など、鉄道のネットワーク化があります。これ以外にも、勝どき駅から晴海地区への地下道の整備による歩道渋滞の緩和や、環状二号線を利用したLRTの導入、さらには水路の活性化による羽田空港との広域的水上交通網など、数々の案が考えられます。いずれにしても、オリンピック終了後の関連施設の環境、防災等の有効利用や、東京の顔となるこの地域の東京インナーハーバーとしての将来の活性化を見据えた多角的な公共交通の整備が必要です。
そこで、オリンピックに向けた公共交通整備の今後の方向性について、知事のご所見をお伺いいたします。 答弁1 ▼知事 晴海地区に整備が予定されているオリンピックスタジアムは、開会式や閉会式で常に大会関係者や多くの観客が集まる施設であるだけに、そこへの交通アクセスの確保は極めて重大であります。
現にその証左として、従来毎夏行われております東京湾花火も、そのたびに十万人の人が出て大変混雑しておりますが、ゆえにも今後、晴海地区などの交通の現況や開発の状況を勘案しながら、オリンピックスタジアムへの円滑な交通アクセスの方策について検討していきたいと思っております。
質問2 メディアセンターの建設が予定されている築地市場跡地の利用計画についてお伺いいたします。
築地市場は平成二十四年に豊洲新市場に移転することが決まり、現在、この跡地にメディアセンターを建設する計画になっています。しかし、築地市場移転やこの跡地利用に関しては、移転に断固反対の立場をとっていた地元中央区との長年にわたる経緯があります。中央区では、築地市場と一体となって築地の伝統と食文化を形成していた、四百店舗を数える場外市場の活気とにぎわいを守るため、築地市場地区の活気とにぎわいビジョンを作成し、鮮魚マーケットの設置や、銀座、浜離宮、汐留、月島地域との連携など、独自のまちづくりを提案しています。そこでこのビジョン実現に向け、都との協議を求めています。
このように、オリンピック招致以前から着々と進められていた計画や地元との協議内容と、新たなオリンピック計画とのよき整合性をいかに図っていくのかが課題であります。東洋の魅力ある、二〇一六年新東京の都市像を描いていく上で、地元の民意や自治体との連携がとられなければなりません。
そこでお伺いいたします。築地市場跡地の利用計画の具体化に向けて、メディアセンターを整備するに当たり、今後、地元区とのどのような調整を図っていくのか、所見を伺います。 答弁2 ▼東京オリンピック招致本部長 オリンピック関連施設の整備につきましては、地元の自治体や住民、企業の皆様などの幅広い協力が欠かせません。築地は東京の台所として大都市東京の食文化を支えてきた土地柄でございますし、地元住民や業界もそうした伝統に愛着を抱いていることは十分承知してございます。メディアセンターの整備に当たりましては、こうした地域の特性も勘案しながら、地元区のご意見も十分に拝聴し、理解を得てまいりたいと考えております。
質問3 次に、有明の選手村についてであります。
都が現在計画している選手村は、四十九階と三十六階の高層棟がメーンであり、JOCからは、IOCの評価に合わないとの意見を受けたと聞いております。
私は、先日、スウェーデンのウメオ市で環境対策について視察し、その際、エコロジーとしての中高層木造住宅を見てきました。木造でありながら、五階建てや八階建てが可能であるばかりか、バイオマスの利用など、省資源に配慮しつつ、また、意外にも燃えにくい、安全性を兼ね備えた住宅でした。
私は、東京オリンピックが日本の文化やおもてなしを標榜する意味からも、そうした木造住宅のよさを選手村に取り入れるべきと考えます。特に東京には多摩産材や木場の貯木場など、昔ながらの木の文化があります。そこで、東京オリンピックの選手村についても木造建築を取り入れ、東京の文化や環境への配慮を積極的にアピールすべきと考えますが、見解を伺います。 答弁3 ▼東京オリンピック招致本部長 日本の伝統的な木造建築は、日本人の美意識を表象するとともに、我が国の気候風土に適し、環境負荷の小さいことが特徴でございます。開催概要計画書では、日本文化を堪能する大会、環境を最優先した大会を大会コンセプトとしてございます。選手村の整備におきましても、日本文化を味わえるサービスの提供や、環境共生型の都市モデルの創造を掲げてございます。選手村の整備に当たりましては、日本文化あるいは環境への配慮を積極的にアピールするために、木造建築の要素を取り入れることも視野に入れまして、検討を進めてまいります。
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■東京の緑 |
質問1 都心部には浜離宮などの文化財庭園や日比谷公園などの都市公園の緑があり、快適な都市環境の形成に重要な役割を果たしています。このような都心部の緑は、都民の生活に潤いを与えるばかりでなく、防災上も重要です。
関東大震災の際には、タブノキを初め常緑樹が多く植えられた江東区の岩崎別邸、今の清澄庭園に避難した約二万人の人々が、一人の焼死者も、タブノキのおかげで焼死者は一人もなく救われたということです。片や、本所被服廠に避難した四万人近い方々の犠牲者の悲劇は長く伝えられています。
知事は先日の所信表明で、今後、オリンピックをてこに東京をさらに先進的な環境都市にする必要があると述べられました。そのための手法の一つとして、埋立地を緑の森に変えていく二十一世紀の公園づくり、海の森構想をぜひ推進していただきたいと思います。私は、東京の発展を見守り、ときには東京の人々を守ってきた、この文化財的庭園などにあるいわゆるふるさとの木を大切にすることが重要であり、次の世代にも伝えていくことが必要です。私は、それを継承する場として海の森がふさわしいと考えています。いわば二十一世紀の鎮守の森ともいってよいと思います。
そこで、この海の森ではどのような種類の樹木を植林しようと考えているのか。
また、大勢の都民が参加できる森づくりをどのように進めようとしているのか、所見を伺います。 答弁1 ▼港湾局長 海の森の樹木の種類についてでございますが、海の森は、東京港の玄関口に豊かな自然を再生し、緑の島を出現させようとする計画でございます。樹木の種類は、東京港の自然条件に適合し、潮風による塩害や乾燥にも強いものを考えております。
また、高さ三十メートルほどの台地状の地形であることから、斜面を常緑樹を主体とした防風機能を果たす風の森で囲み、潮風の影響の少ない場所には落葉樹も配置してまいります。例えば風の森の樹木は、浜離宮庭園のタブノキ林が好例でございますが、ご指摘のように、ふるさとの木など、東京都の沿岸部に自然に生育するものが主体になることが有効であると考えております。
今後、具体的な樹木の種類の選定に当たりましては、専門家の意見を十分踏まえて、豊かな自然環境の再生を図ってまいります。
次に、海の森における都民参加の緑づくりについてでございます。
この事業の進め方の大きな特徴は、長期間にわたり、企業、NPOなど、広範な都民との協働による森づくりを事業の基本方針としていることでございます。こうした方針のもとに、都の費用負担によらずに、樹木の枝葉を堆肥化し、海の森の土壌改良を行っていく協働事業者を本年七月に選定してまいりました。
また、都内の児童生徒に、海上公園などに生育する常緑樹のドングリから苗木を育てていただいております。
今後とも、植樹祭の開催や森の育成、環境学習など、森づくり全体を通じて都民との多様な協働を実現し、ふるさとの木を大事に思う心を継承する場として、海の森事業を進めてまいります。
質問2 都心部の緑は、上空から見ると、皇居の森、代々木公園、新宿御苑など、多くの緑があり、コンクリートの海に浮かぶ島のようにも見えます。しかし、島をつなぐ緑が見えないのが残念でなりません。私は、緑の島を結んでいくのは街路樹や屋上緑化であると考えています。現在の街路樹をより大きく育てるとともに、屋上緑化が東京の緑のネットワークの充実につながり、環境のみならず、火災からの火よけや保水性など、防災機能の向上にもさまざまな効果が期待できます。風格ある都市をつくるために、都心部の街路樹の育成に積極的に取り組むべきと思いますが、所見を伺います。 答弁2 ▼建設局長 豊かな街路樹は、道路空間の快適性を向上させるとともに、風格ある都市の景観や緑のネットワークを形成する重要な役割を果たしております。
しかし、都心の街路樹は、生育空間に制約があるなど、十分な大きさに育ちにくい状況にございます。そのため、豊かな街路樹を育成するため、雨水浸透や土壌改良などに取り組んでまいりました。特に公園などの緑の拠点を連続して結ぶ道路では、樹木本来の形を維持するため、生育環境の改善や適切な剪定などを行う、のびのび街路樹育成事業を実施しているところでございます。
今後とも風格ある都市の形成を目指して、本事業などをさらに進め、連続した緑豊かな街路樹を積極的に育成してまいります。
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■都の物品購入工事の発注 |
質問1 都の物品購入と工事の発注についてお伺いいたします。
私の地元であり、育ったところの日本橋問屋街では、よく半値八掛け二割引きと子どものころから聞きなれた言葉がありました。さて、都のホームページなどから、物品購入や入札価格で、いわゆる低入札や、落札率が文字どおり半値を切る例もあると仄聞いたしました。安いことはいいことですが、また、安かろう悪かろうで品質の低下を招かないかと心配です。発注者としての都も、品質管理や安全管理など、徹底した管理を行うべきです。
そこで、都は、物品購入や公共工事の発注において、適正な履行や低価格による品質の確保に、あるいは安全管理のあり方など、今後どう取り組んでいくのか、所見を伺います。 答弁1 ▼財務局長 契約の発注においては、価格競争を基本としながら、品質や履行における効率性、安全性、環境への配慮等を考慮することが重要でございます。
公共工事の契約では、低価格入札に対する調査制度、あるいは最低制限価格制度の活用を図るとともに、競争参加者の技術的能力を価格とあわせて総合的に審査する手法を取り入れてまいりました。今月からは、工事成績等を一層きめ細かく反映するよう改善を図ったところでありまして、その実施対象の拡大を進めてまいります。
今後とも、契約の適正な履行と品質の確保に向け、入札・契約制度の充実に取り組んでまいります。
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■都税収入 |
質問1 都税収入の確保について伺います。
都の歳入の七割以上を占める都税収入は、最近の大企業の景気回復を反映して好調であると聞いています。また、主税局の徴収率が三年連続で過去最高を更新するなど、大きな結果が出ています。今後の都財政の基盤をしっかりと築くため、今後の取り組みについて所見を伺います。 答弁1 ▼主税局長 都民のご期待にこたえる施策を引き続き実現していくためには、都政を財政面から支えております都税の徴収確保に向けた努力が不可欠でございます。都はこれまでも、全国に先駆けたインターネット公売の実施、あるいは東京から全国に広がりつつある自動車へのタイヤロックの装着など、さまざまな創意工夫によりまして税収確保を進め、平成十七年度決算見込みでは都税の徴収率は九七・三%と、過去最高を更新しております。
今後とも適正公平な課税に努める一方、区市町村との密接な連携による個人住民税の確保など、全国の模範となるよう、創意工夫を凝らしながら、都政を支える都税のさらなる徴税努力を重ね、唯一の歳入所管局に課された責務を全力で果たしてまいります。
質問2 来年はいよいよ所得税から個人住民税への三兆円の税源移譲が実現します。今回の税源移譲では、所得税と個人住民税を合わせた全体の税額は変わらないわけです。住民税の課税事務を行っている区市町村だけでなく、都みずからが税制改正の内容をきちんと都民に説明し、理解を得る必要があります。積極的な広報活動を行っていくべきと考えますが、所信を伺って、質問を終わります。(拍手) 答弁2 ▼主税局長 来年実施される所得税から個人住民税への税源移譲は、地方の自主財源を拡充し、地方自治の確立に資するものでございます。この税源移譲により、所得税と個人住民税とを合わせた税負担額は変わらない仕組みとなっております。しかしながら、個人住民税だけを見ますと税負担が増える納税者も多いこと、さらには定率減税廃止の影響もあることから、納税者に対する事前の十分な周知が必要でございます。
税源移譲の意義や改正内容につきまして、広報誌やホームページによるPR、納税貯蓄組合など各種団体への説明など、あらゆる機会をとらえて丁寧な広報活動を積極的に展開し、他の自治体や課税実務を行っている区市町村とも連携しながら、都としての説明責任を着実に果たしてまいります。
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