多摩を広域的都市圏の中核に 24時間の小児医療の確保を |
山下太郎(民主党) |
私は、都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。
九月六日、悠仁親王殿下がご誕生されました。都議会民主党を代表し、秋篠宮同妃両殿下、天皇皇后両陛下に心からお祝いを申し上げますとともに、親王殿下の健やかなご成長を祈念申し上げます。
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■東京オリンピック |
質問1 オリンピック招致について伺います。
都は、世界的知名度と強い財政力から、国内立候補都市に選ばれました。しかし、次のステージである国際選考では、私たちがこれまで主張してきたように、世界の各都市にまさる開催理念を示さなければ、オリンピックに向けた都市間競争に勝つことは困難と考えます。
そこで私たちは、知事も所信表明で語った、平和の祭典オリンピックの原点、平和運動から理念を再構築することを提案いたします。
先日、テレビドラマ「僕たちの戦争」が放映されました。現代の青年が昭和十九年にタイムスリップして、海軍の特攻隊、回天の乗組員と入れかわり、戦争に巻き込まれる内容です。特攻隊員が、若者に突き倒されたお年寄りをだれも助けない現在の東京のまちを見て、国を守るために命を捨てていったあのとうとい犠牲は、こんな世の中をつくるためだったのかと叫んだ言葉が私の胸に突き刺さりました。
私たちは、日本が享受している平和への意識が次第に薄らいできていると考えています。この平和がさきの戦争によるとうとい犠牲の上に成り立っていることを、今こそ自覚しなければなりません。
オリンピックが開催される二〇一六年は、戦後七十年になります。敗戦と復興の歴史をたどり、悲惨な戦争を決して忘れてはならないという先人の思いを現代につなぐとともに、今戦火に苦しむ世界の人々に平和構築への連帯の意思を示すメッセージを、この二十一世紀に改めて東京から世界へと発信していくことが重要と私たちは考えます。知事の所見を伺います。 答弁1 ▼知事 平和の祭典オリンピックについてでありますが、戦後六十年以上にわたり平和を堅持してきた国は、この世界にこの日本をおいてほかにはなく、国際社会も平和国家日本を大いに評価しております。ゆえにも、日本人はもっと自信を持ち、誇りを持つべきであると思いますし、十年後の東京オリンピックでは、平和であり続けた私たちの姿を全世界に披瀝し、世界の平和と発展に貢献していきたいと思っております。
しかし、平和の中で失われつつあるものもありまして、受け継ぐべき価値観や志が希薄になっているのが日本の現状であると思います。
ご指摘にありましたが、幾つかの自治体が、東京の中でもオリンピックについて無関心ということでありますが、これは、オリンピックに関する情報の提供にかかわるタイムスパンの問題もあるでしょうが、その以前に、やっぱり他人ごととしてしか物を見ないという、何といいましょうか、国家と国民の一体感の欠如というものも、どこかに起因しているんじゃないかという気がいたします。
いずれにしろ、そうした意味からも、六十年前、先ほどドラマを引用されましたが、家族や最愛の人を守るために、あえて死んでいった多くの若者たちがいたということを、私たちは決して忘れてはならないと思います。
質問2 都は、選考過程で指摘された多くの課題を解決するため、計画の変更を行おうとしています。私たちは、必要な経費を否定するものではありませんが、むだな経費は極力排除し、過大な財政投資にならない、品格があるオリンピックを求めます。
現在、招致決議を採択していない都内の自治体は十三区市になります。これは、招致表明から候補都市選定までの時間が短く、計画が十分理解を得られていなかったことと考えます。改めて都と区市町村との話し合いを求めます。
私たちは、都全体のオリンピックに対する盛り上げとして、六十二区市町村による招致の取り組み、一自治体一国運動を提案します。オリンピックに参加した国と地域が二百二、IOC委員が所属する国と地域は七十八にも上ります。この人々との交流を各自治体が行うのです。子どもたちがオリンピックや国際交流、国際親善について考え、将来に夢を抱く絶好の機会となります。都内の全自治体が参加する東京ならではの招致活動です。所見を伺います。 答弁2 ▼東京オリンピック招致本部長 都内の各自治体が、オリンピック招致に向けまして、世界の各国あるいは各都市と交流することは、招致機運を盛り上げるために有効であると考えてございます。
今後、都の外部に設立する招致組織と連携し、都内の自治体を対象に、さまざまな世代が国際交流を通じてオリンピック招致への参加意識を持つとともに、東京の魅力を世界に発信する機会のあり方について検討してまいります。
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■多摩国体 |
質問1 多摩・島しょを中心とした東京国体、いわゆる多摩国体について伺います。
平成二十五年には多摩国体の開催が計画されています。オリンピックもそうですが、国体も今、国体の改革二〇〇三や国体の今後のあり方といった新たな改革が打ち出され、各開催予定地で議論が行われています。
八月末、東京都がオリンピック国内立候補都市に選ばれ、三年前に開催される多摩国体の意義が増していますが、国体は、開催自治体の人的、財政的負担の増大や、トップアスリート参加の困難さなど、数々の課題を抱えています。
都では、東京らしさや、都民が注目し共感を呼ぶ国体を議論していますが、私たちも、国体に関して、ハード面の整備はもちろんですが、ソフト面での充実も図っていく必要があると考えています。
多摩国体の競技会としての質などを高めるため、大会運営の簡素効率化、トップアスリートの参加を促す資格の柔軟化、プロ競技者の参加、ジュニア育成とJOCとの連携など、充実した多摩国体への検討が必要だと考えます。多摩国体の基本的な考え方について、知事に所見を伺います。 答弁1 ▼知事 多摩・島しょ地区を中心に開催する東京国体においては、競技のレベルアップや大会運営の効率化などの改革を進め、これまでにない国内最高となる総合スポーツ大会を実現していくつもりでございます。
また、国体に向け、地域に根差したジュニア選手の育成や競技環境の整備を図り、すべての都民がスポーツに親しむスポーツ都市東京を実現する考えであります。ジュニア選手の育成は、決して日本に限らず、途上国の子弟をも対象にしたいと思っております。
今後も、都議会や区市町村、各競技団体の協力をいただきながら、東京大マラソン祭りや東京国体を成功させ、その成果を東京オリンピックにつなげ、内外にインパクトを与えるスポーツムーブメントとしていきたいと思っております。
質問2 今年度は多摩国体の会場地選定の調査期間になっています。七月末には、市長会と町村会から会場整備などの要望が提出されました。都は、国体の成功のため、市町村との積極的な連携協力を推し進めていただきたいと考えます。
オリンピックとパラリンピックがセットで行われるように、国体には障害者スポーツ大会、略して障スポがセットで開催されます。ことしは兵庫で、のじぎく国体、のじぎく大会が行われる予定です。
先日、我が会派は、都における障害者スポーツの現状を視察するため、北区の都障害者総合スポーツセンターを訪問しました。年間十九万人が利用するスポーツセンターは、リハビリ利用が主であり、器具の使用は並んで待つことがあると伺いました。障害者がスポーツをする場所が足りないなど、障害者スポーツには課題があり、プレパラリンピックとしての障スポの盛り上げにもかかわります。
私たちとしては、まず、国体の競技施設の新設、改修には、福祉的機能を入れたユニバーサルデザインとする、後利用も視野に入れることや、移動手段におけるバリアフリーを推進することを求めます。所見を伺います。 答弁2 ▼教育長 お話しのように、平成二十五年には、国体と障害者スポーツ大会を東京都で開催いたします。両大会の開催に向けまして、障害者を初め、子どもから高齢者まですべての人が安心してスポーツに参加し、楽しむことができるように、ユニバーサルデザインの考え方を取り入れた施設整備を進めていくべきである、そういうふうに考えております。
今後、区市町村や競技団体等の意見を十分伺いながら、関係局と連携して対応してまいります。
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■東京の都市像 |
質問1 二〇一六年東京の都市像について伺います。
私たちは、今後、都民の理解を得、都民の厚い支持のもとでオリンピック開催に結びつけていくためにも、やはり東京の将来ビジョンが不可欠であると考えます。
石原都政の長期計画、東京構想二〇〇〇は、五十年先を展望した十五年後の東京の望ましい姿を千客万来の世界都市東京として描きました。行政評価を行うために、都民にわかりやすい東京都政策指標を初めて設定しています。
その後、東京構想二〇〇〇はどう進行しているのでしょうか。例えば、取り組みの成果である政策指標の目標数値を見ると、ゼロ、一歳の保育サービス待機児童数を二〇〇四年度までに、ゼロ人とする、は、現在も五千人の児童が保育サービスを待ち続けている状態です。
構想の進捗状況などを検証し、見直しを行っていくことは、成果重視の都政運営の実現と行政の透明性と説明責任からも必要です。都は、東京構想二〇〇〇をどう検証して二〇一六年東京の都市像に反映させていくのか、一体的な都政改革の結果もたらされる東京の都市像がしっかりと都民、世界に示されるよう求めて、所見を伺います。 答弁1 ▼知事本局長 まず、東京の都市像についてでございますが、都は、平成十二年、魅力と活力にあふれた千客万来の世界都市東京を目指し、その実現に向けた取り組みや施策を明らかにする東京構想二〇〇〇を策定いたしました。その後、構想に示されたさまざまな取り組み等をより戦略的に実施していくため、進捗状況などの検証を踏まえ、重要施策、重点事業による先駆的な政策展開を図っております。
今回策定する都市像では、十年後のオリンピック開催を見据え、これまでの先駆的な取り組みを一層推進し、より機能的で魅力的な東京の姿を示してまいります。
質問2 一方、東京は、都心部、区部だけでなく、多摩と呼ばれる武蔵野の面影を残した街並みや奥多摩地域の美しい山間地域など、さまざまな特色ある地域を有しています。
総合ビジョン、多摩の将来像二〇〇一では、十五年後の多摩地域のあるべき姿、二〇一五年度末における活力と魅力にあふれた多摩を明確に打ち出しました。その後、都は、この将来像を具体化する取り組み、多摩アクションプログラム、多摩振興での基本施策、多摩リーディングプロジェクトを相次いで策定、事業を推進しています。
多摩は、先端技術産業等の集積や豊かな人材など、都心部とは異なる優位性があり、広域的な都市間ネットワークを強め、都市圏の中核になることが求められています。
そこで、この東京の将来像、二〇一六年東京の都市像の中に多摩がどう位置づけられていくのか、伺います。 答弁2 ▼知事本局長 多摩は、時代の先端を行く企業や大学、研究機関などが数多く集積し、大きな発展の可能性を有する地域でございます。今回策定する都市像では、成熟した都市にふさわしい姿として、三環状道路の整備等による都市機能の向上、地域に根差した生涯スポーツの振興、超高齢社会における良質な生活環境の確保などについて、多摩地域も含め東京全体を視野に入れながら描いてまいります。
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■防災対策 |
質問1 まず、危機管理についてです。
八月十四日、クレーン車と送電線の接触によって大規模停電が発生し、エレベーターでの閉じ込め、信号機の停止、鉄道の運休や一時停止など、都民生活に大きな影響が出ました。停電時の対応マニュアルが整備されていたこともあり、混乱は比較的短時間で終息しましたが、今回のような長時間の停電は想定されていなかったとのことです。
都は、翌日から緊急点検を実施し、九月十四日には、その結果と今後の対策について報告をまとめるとともに、国と電力会社に対策の要請を行っています。迅速な対応については評価いたします。
しかし、事故によって、都内のライフラインの弱点の一部が図らずも明らかになってしまったことにより、今度は、悪意を持った人物が意図的にその弱点をつき、都民生活に混乱を招くという事態の懸念も生じています。
都は、地域防災計画や国民保護計画などにおいて、さまざまな災害やテロを含む武力攻撃等を想定した対策を定めています。昨年の第三回定例会において、都議会民主党は、大規模な自然災害が立て続けに発生したことを踏まえ、被害想定や防災計画の見直しを求めました。
今回の事故の発生を教訓とし、専門家の意見も取り入れながら、改めて都内で起こり得る危機事態をチェックし直し、危機管理体制を強化すべきと考えますが、所見を伺います。 答弁1 ▼総務局長 危機管理の強化についてでございますが、東京は、地震などの自然災害に加え、テロの発生も懸念されるなど、あらゆる危機に直面をしております。都は、これまで、危機管理の専門家を参与に迎えるとともに、警察、消防、自衛隊の現職幹部を危機管理のもとに配置し、その専門的能力や経験を活用して、さまざまな危機への対応力を高めてまいりました。
しかしながら、不測の事態が発生することもあり得ることから、今後は国内外における危機事態の分析をさらに進めまして、その結果を地域防災計画やマニュアルなどに反映をさせ、迅速かつ的確な対応が図れるよう、危機管理体制を一層強化してまいります。
質問2 防災まちづくりについてです。
防災まちづくりにおいて、建物の耐震化、不燃化は欠かせません。都は、今年度より、耐震診断・耐震改修助成を行い、耐震化の促進に着手していますが、この制度では地域が限定され、さらに道路閉塞を起こす可能性が高い木造住宅を対象としているため、都内全体の旧耐震基準の木造住宅約七十二万戸のうち、わずか三%しか対象となっていません。私たちの試算では、これら七十二万戸すべてを無償で耐震診断を行い、さらに平均百六十二万円の耐震改修工事費に十五年間の無利子貸付を行うと、四千三百億円の公費負担となります。
四千三百億円の公費負担というと莫大に聞こえますが、都は、今後四年間で、オリンピック開催のための基金を四千億円積み立てるのです。十年後のオリンピックのための基金も必要かもしれませんが、そのオリンピックが開催される前に、あすにでも首都直下地震が襲うかもしれないといわれている今、何よりもまず、都民の生命を守るための投資については、都はもっと積極的に行ってもよいのではないかと考えます。
旧耐震基準の木造住宅の耐震診断・耐震改修について、対象の拡大など、さらに一歩踏み込んだ対策が必要と考えますが、所見を伺います。 答弁2 ▼都市整備局長 住宅の耐震化は、自助、共助、公助の原則を踏まえ、所有者によって行われることが基本でございます。しかしながら、建物の倒壊による道路閉塞を防止するなど震災対策上公共性が高い地域の住宅については、耐震化の促進を図るため、耐震診断・改修に関する助成制度を本年四月から開始しております。
この制度は、区と連携して実施することから、助成制度を設けた区が倍増するなど、耐震化に向けた行政の取り組みも強化されております。都としては、今後とも関係区と協力して、耐震診断・改修の実施を住民に働きかけるなど、制度の周知を強力に進めてまいります。
質問3 住宅の耐震化といえば、とかく古い木造住宅が注目されがちですが、旧耐震基準のマンションの方が、倒壊した場合の危険はより大きいといえないでしょうか。
都は、今年度より、旧耐震基準のマンションの耐震診断補助にも着手していますが、診断後の耐震改修費用については、都独自の制度としては、一%の利子補給しかないのが現状です。住宅が倒壊しないことに公的支出の根拠、正当性があるとするならば、木造住宅同様に、マンションについても耐震改修に対する補助制度などの公的助成制度を創設することは、決しておかしな論理ではないはずです。
旧耐震基準のマンションについても、耐震診断だけでなく、診断後の耐震改修等への支援が必要と考えますが、所見を伺います。 答弁3 ▼都市整備局長 分譲マンションは共同住宅であることから、改修の実施には、多数の区分所有者による合意が必要とされるなどの課題がございます。このため、都は、アドバイザーの派遣などにより円滑な合意形成を促すとともに、大規模修繕や耐震改修を行う管理組合に対して利子補給の支援を行ってまいりました。また、本年四月から新たに耐震診断についても助成を開始したところであり、区市町村や関係団体などとともに、管理組合に対し、こうした制度の活用を幅広く働きかけてまいります。
質問4 これまで述べたように、都が木造住宅や分譲マンションについて耐震診断・耐震改修制度を充実させつつあることについては、私たちも評価いたします。しかし、せっかくつくった制度も、利用されないことには意味がないのも事実です。
都が「あなたのまちの地域危険度」の出版、道路整備と一体的に進める沿道まちづくり、都立工業高校の建築科生徒による木造住宅の耐震診断などを実施するとともに、ソフト、ハードの両面から区市町村の取り組みへ支援を行っていることは評価します。
そこで、今後、住宅の一層の耐震化促進に向けてどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。 答弁4 ▼都市整備局長 耐震化を一層促進するためには、都民がその必要性を認識し、主体的に取り組んでいくことが重要でございます。このため、都は、都民が安心して耐震診断・改修ができるよう、安価で信頼できる改修工法の展示や施工業者に関する情報提供などを行っております。
今後とも区市町村や関係団体と連携しつつ、さまざまな機会を利用して新たな助成制度の普及に努めるとともに、耐震改修等にかかわる情報提供の充実を図り、震災に強い都市づくりを進めてまいります。
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■景観施策 |
質問1 景観施策について伺います。
今定例会では、平成十六年十二月に施行された景観法を受け、地方自治法に基づく自主条例であった景観条例の全面改正が提案されています。
今回の景観条例の改正理由の一つに、景観法の規定に基づく景観計画の策定が挙げられています。
これまでの自主条例では、規制に法的な強制力がなく、実効性が上がらないという課題がありました。今後は、法委任条例に基づき景観計画を策定することで、建築物等の色彩などに変更命令を出すことが可能となります。遅きに失した感もありますが、都が強制力のある景観行政に踏み出したことは評価いたします。
景観計画の策定に当たり、条例案では、東京都景観審議会の意見を聞かなければならないこととなっています。この種の行政計画の策定の際には、今では広く一般都民の意見を聞くことが常識となっていますが、条例案では、この部分が不透明な印象を受けます。
今後、景観計画を策定する中での、広く一般都民の意見を集約するためのプロセスについてどのように考えているのか、所見を伺います。 答弁1 ▼都市整備局長 東京を良好な景観を備えた魅力ある都市としていくためには、都民や事業者の参加と協力を得て施策を展開していくことが重要でございます。このため、都は今後、景観計画の検討過程においてパブリックコメントを実施し、広く都民などの意見を聴取するとともに、業界団体などと意見交換を行ってまいります。
また、都民代表や学識経験者などで構成する景観審議会に計画案を諮ることとしており、これらの意見を踏まえながら景観計画を策定してまいります。
質問2 今回の改正案では、容積率などの規制緩和等を適用する大規模建築物などについて、企画段階から景観への配慮を含めた協議を行う事前協議制度の創設が盛り込まれています。制度の趣旨については大いに賛成するものでありますが、条例の運用面では、協議における客観性の確保や迅速な手続などが求められると思います。
そのためには、景観審議会の活用が重要だと考えますが、都は、今後の景観審議会の役割についてどのように考えているのか、所見を伺います。 答弁2 ▼都市整備局長 今回の条例改正では、大規模建築物の事前協議などの景観誘導において、一定の強制力を発揮できる制度の創設を提案しております。
こうした制度を公正に運用するためには、景観の専門家など第三者からの意見聴取が重要であり、条例案では審議会の機能を強化することにしております。具体的には、設計変更などを命令する場合には、あらかじめ審議会の意見を聴取するとともに、事前協議制度においても、必要に応じて審議会に意見を求めることとしております。また、これらの手続を迅速に進めるための規定も定めており、新たな制度の円滑かつ適切な運用を図ってまいります。
質問3 都が景観行政団体となった一方で、区市町村も景観法に定める景観行政団体となり、景観計画を定めることができるようになりました。都の調査によれば、区部では約半数、多摩地域では約二割の市町村が景観行政団体となる意向を示しています。
各区市町村がそれぞれの地域特性を生かした取り組みを行おうとしていることは望ましいことではありますが、独自の景観計画によって、ばらばらな基準を定めることも考えられます。例えば、一つの幹線道路の沿道や大規模な公園の周辺で、区市町村ごとに取り組みの差が生じ、広域にわたり統一感のある景観形成が困難になることも予想されます。
都は、区市町村が景観計画を定めて施策を行う場合、都の施策とどのように調整を図っていくのか、所見を伺います。 答弁3 ▼都市整備局長 景観法では、一つの行政区域において、都または区市町村のいずれか一方が景観行政団体となり、法に基づく景観計画を定めることになっております。現在、都内全域について都が景観行政団体となっており、区市町村は都と協議し、同意を得ることにより、景観行政団体となることが可能でございます。
今後、区市町村から協議の申し出があった場合には、都が景観計画で定める基準の共有を求めることによって施策の整合性を確保し、東京全体として良好な景観形成を積極的に進めてまいります。
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■環境施策 |
質問1 環境政策について伺います。
都は、オリンピック招致に関して、カーボンマイナスという理念を打ち出し、大会までに、大会開催によって排出されるCO2の総量を大幅に上回るCO2削減を達成することを掲げています。
さきにドイツで開催されたFIFAワールドカップでは、カーボンニュートラルを掲げ、開催に伴う交通量の増加等によって排出されるであろう約十万トンのCO2を相殺するために、発展途上国に約一億七千万円を提供し、温室効果ガス削減プロジェクトを実施しました。都の掲げるカーボンマイナスオリンピックは、これ以上のことをしようとする意気込みはわかりますが、資金提供するだけでは、世界に訴えかけるインパクトには欠けるのではないでしょうか。
私は、オリンピック開催期間中のCO2相当量の削減は当然のこととして、開催前から、世界各都市に対して都の取り組みを世界にアピールしていくとともに、世界のCO2削減に大胆に貢献していくべきと考えますが、知事の所見を伺います。 答弁1 ▼知事 CO2削減への取り組みについてでありますが、地球温暖化問題は、人類がこの現代に至って直面した最も深刻な環境問題でありまして、その進行を阻止するためには、二十一世紀半ばに全世界でCO2の排出量を劇的に減少させる必要があります。
このため、都は、世界に先んじてCO2半減都市モデルの実現を目指し、都政のあらゆる分野でCO2の大幅な削減を目指す新たな十年プロジェクトを開始いたします。
最先端の技術による省エネルギー対策や、再生可能エネルギーの多量普及を図るなど、民間企業や都民を巻き込みながら、東京を世界で最も環境負荷の少ない都市としていきたいと思っております。
そしてまた、こうした取り組みの成果を折に応じて、機を見て、世界に示していきたいと思っております。
質問2 知事は、施政方針の中で、都政のあらゆる分野でCO2の大幅な削減に取り組むため、新たな十年プロジェクトを開始すると述べ、特に、東京全体での緑の増加や自然エネルギーの大量普及を図ると述べられました。
そこで、まず、緑の増加について伺います。
東京のみどり率は、都の積極的な取り組みにもかかわらず、この間減少を続けており、その対策は急務です。ことしの二月、都が策定した持続可能な東京の実現を目指す新戦略プログラムでは、緑施策の抜本的見直しを掲げていましたが、いまだ具体的な取り組みは進んでいません。
とりわけ、私は、緑化義務や開発許可制の見直し、強化といった規制的な取り組みを早急に講じていく必要があると考えますが、都の所見を伺います。 答弁2 ▼環境局長 東京を成熟した環境都市にしていくためには、緑の減少を食いとめるのはもとより、さらに緑をよみがえらせ、大幅な緑の増加を図ることが必要であります。
都はこれまで、緑化指導、開発規制等を行うとともに、保全地域の指定や利活用を行い、緑の保全、創出に努めてまいりました。今後の緑施策の推進に当たりましては、規制的手法や、企業、都民の自主的な意欲を高める手法など、実効性ある取り組みを一層強めてまいります。
質問3 自然エネルギーの大量普及について伺います。
自然エネルギーを大量に普及させていくには、大規模事業者や再開発事業において、一定水準以上の利用を義務づけるなど、都市づくりと連携が重要ですが、まずは、都自身が率先して取り組んでいく必要があります。
特に、太陽光パネルは、保育園や学校などに設置することで、環境教育にも役立ち、ある保育園では、園児が皆で水道水の節約をしたり、日中の園内の電気を消したりと、みずから省エネに対して積極的に取り組むようになったとも報告されています。
また、最近、都内の公立学校からは、クーラー設置の要望も多くなっていますが、暑さのピークに効果を発揮する太陽光パネルの設置は、温暖化の面からも有効ではないでしょうか。
私は、太陽光発電などの自然エネルギーを公共施設において積極的に導入していくべきだと考えますが、都の所見を伺います。 答弁3 ▼環境局長 都は、これまでも、都議会議事堂や浄水場などの公共施設への再生可能エネルギーの導入を積極的に行ってまいりました。
CO2を大幅に削減していくためには、省エネルギー対策の推進とともに、太陽光発電などの再生可能エネルギーの一層の普及を図る必要があります。今後、こうした観点に立って、公共施設などへの再生可能エネルギーの導入方策について検討してまいります。
質問4 次に、自動車交通量の総合的な抑制策について伺います。
自動車交通対策は、もはや、これまでのディーゼル車規制や幹線道路の整備だけでは限界があります。
ロンドンプランでは、土地利用政策と交通運輸政策とを連携させ、自動車による移動の必要性を減少させることを掲げています。アメリカのポートランド市でも、交通政策と土地利用の統合をうたい、実際にさまざまな施策を講じています。
あわせて、来年三月には、私鉄、地下鉄で利用できるパスネットがIC化され、JR東日本のSuica などとの相互乗り入れがスタートしますが、このIC化を民間のポイントカード化と連携させれば、公共交通機関への転換を飛躍的に進めることが可能になります。
私は、都市づくりの視点やライフスタイルの変革も含めて、都民の移動を徒歩や自転車、公共交通機関に転換していく総合的な自動車交通抑制策が必要であると考えますが、所見を伺います。 答弁4 ▼環境局長 東京において自動車交通の混雑解消、大気汚染の改善、CO2の大幅な削減を実現するためには、三環状を初めとする道路の整備、燃費など車両の環境性能の向上とともに、自動車交通量の抑制に取り組んでいく必要がございます。
都内の自動車走行量の六割は乗用車が占めていることから、公共交通機関利用への転換を促進するなど、都民のライフスタイルを変え、自動車利用のあり方を見直すことが重要な課題であります。今後とも、こうした観点に立って総合的な交通量抑制策を推進してまいります。
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■雇用・産業対策 |
質問1 東京の産業振興について伺います。
都は、今年度中に産業振興ビジョンを策定すべく、先日、産業振興の将来像に関する懇談会を立ち上げました。産業振興ビジョンでは、中小企業の振興策はもちろんのこと、ものづくりや観光といった産業の振興策なども盛り込まれるものと考えます。
しかし、東京の産業振興を図る上で何よりも重要なことは、私たち一人一人が産業活動に携わりたい、働きたい、スキルアップを図りたいという希望を見出せる社会の構築ではないでしょうか。
景気がよくなったとしても、働くことに希望が持てなければ、ニートをふやすことにもなりかねません。一獲千金を夢見て株式投資にのめり込むならまだしも、お金欲しさに脱法行為や違法行為を働くようなことは決して好ましいことではありません。
私は、東京の産業振興を図るためには、働く人あるいは働こうとする人の視点に立って、雇用環境の整備や職業教育の充実などがまず何よりも重要であると考えますが、所見を伺います。 答弁1 ▼産業労働局長 中小企業に働く人々が意欲を持ち、キャリアアップを図ることは、東京の産業を支える上で重要であると認識しております。しかし、中小企業では雇用管理ノウハウの蓄積が少なく、また、従業員の能力開発の機会も必ずしも十分でありません。このため、都は、職場改善訪問事業や雇用管理の実務者研修などにより、働きやすい職場づくりを支援するとともに、技術専門校での在職者訓練等により、従業員のキャリアアップに取り組んでまいりました。
今後とも都民が意欲と希望を持って働けるよう、中小企業の雇用環境整備や人材育成の促進に努めてまいります。
質問2 中小企業への支援については、金融支援や人材育成などの充実に加えて、企業の社会的責任を促す取り組みも必要ではないでしょうか。
法令を遵守するコンプライアンスという考え方は定着しつつありますが、法律さえ守っていれば何をしてもいいという風潮に私はくみするものではありません。地域社会への貢献や人権尊重、雇用対策、消費者対策など、企業には企業として果たすべき社会的責務があるはずです。
現在、大手金融機関などでは、社会的信用投資というものが商品化されつつあり、また大手製造業などでは、部品や資材を調達する基準をグリーン調達から社会的責任調達に拡大する動きも見られます。しかし、中小企業が社会的責任というものに取り組もうとしても、資金や人材、知識やノウハウが不足しているとも指摘されています。
そこで私は、ファンドの設置や制度融資での優遇、人材や知識、ノウハウの提供などにより、中小企業に対する社会的責任の取り組みを積極的に支援していくべきと考えますが、所見を伺います。 答弁2 ▼産業労働局長 これまでも都は、制度融資においてISOの取得や環境、福祉対策等を目的とした設備導入等を、有利な金利が適用される特定取り組み支援融資の対象としてまいりました。また、投資法人を活用し、福祉や環境分野に取り組む企業への投資を特色としたファンドへ出資してまいりました。こうした中小企業に対する適切な支援を行うことにより、社会的責任を果たすための取り組みが促されていくものと考えております。
質問3 次に、いわゆる非正規労働者の問題について伺います。
パート、アルバイト、派遣労働、業務請負といった、いわゆる非正規労働者の問題については、私たちは、これまでも、雇用者である企業に法令を遵守させるとともに、各企業において非正規労働者の処遇改善を図ることが重要であると主張してきました。
都では、今年度から、非正規と正規との均衡のとれた人事給与制度の導入などに取り組む中小企業への制度融資での優遇策や、中小企業への専門家派遣による雇用管理の支援に取り組んでいます。
これらの取り組みについては、まだまだスタートしたばかりではありますが、PRや支援内容の充実を図り、雇用環境の改善に積極的に取り組んでいくべきと考えますが、所見を伺います。 答弁3 ▼産業労働局長 非正規労働者については、正規労働者との均衡処遇を促進するなど、その雇用環境を良好なものとしていくことが重要であります。このため、都では、これまで非正規労働者の雇用環境に関するセミナーや相談会を実施するなど、普及啓発に努めてまいりました。さらに、今年度から賃金制度の整備など処遇改善に取り組む中小企業に専門家を派遣する事業を開始いたしました。
今後ともこうした事業のPRに努めながら、非正規労働者の雇用環境改善に向けた中小企業の取り組みを促進してまいります。
質問4 職場におけるメンタルヘルスについて伺います。
心の病、三十代社員急増。先日、ある新聞で、うつ病や神経症など、心の病を抱えている世代は三十代に最も多いと答えた企業が、二〇〇四年の約半数から二〇〇六年には六一%に急増していると報じられていました。
私は、この記事を読み、改めて私の友人や知人、そして私と同世代の人たちに思いをはせました。急速に進む成果主義、恒常的な長時間労働、リストラによってノウハウが引き継がれないまま管理職になった責任感による重圧、こうしたことの積み重ねで心身ともに疲れ果てている若い人たちは確実にふえています。
私は、こうした働く人々が、心身ともに健康で働き続けられるよう、職場のメンタルヘルスの確保に向けた施策を積極的に充実していくべきと考えますが、所見を伺います。 答弁4 ▼産業労働局長 近年、働く人の精神障害等がふえており、企業にとって心の健康対策が重要な課題となっております。このため、都は、これまで企業を対象にメンタルヘルスをテーマとするセミナーなどを実施してまいりました。さらに、今年度からは、労使双方向けに、ストレス対処法なども取り入れた実践的なセミナーを開始するとともに、労働相談情報センターにおける心の健康相談を三カ所から六カ所に拡大しております。
今後とも、だれもが健康で働き続けられるよう、職場におけるメンタルヘルスの確保の支援に努めてまいります。
質問5 人材の育成について伺います。
都は、現在、中学生の職場体験教育や東京版デュアルシステムなど、若年者への職業教育を初め、ものづくりの分野では、都立技術専門校でのものづくり名工塾などに取り組んでいるところです。
また、今年度からは、都立工業高専と都立航空高専を再編した都立産業技術高等専門学校において、平日の夕方以降の施設を活用して、地域の中小企業で働いている若手技術者に対するものづくり技術講座や、フリーターや休職中の人に対するものづくり講座を開いています。
しかし、都内には、工業高校の施設設備や普通高校のLL教室やパソコンルームなど、まだまだ門戸を開放できる学校、施設があるのではないでしょうか。高校生にとっても、同じ年代の仲間とだけ過ごすよりは、少し上の世代の人たちの学ぶ姿は、彼らの自己の意識を変革するきっかけにもなると思います。
私は、工業高校など、都の施設の有効活用を図り、より多くの若い人たちに対して、スキルアップや就業に向けたきっかけづくりに取り組んでいくべきと考えますが、所見を伺います。 答弁5 ▼教育長 都立産業技術高等専門学校では、地域の中小企業の若手技術者やフリーターを対象に、実習を重視したものづくりの講座を開講しております。
また、都立高校でも、都民が受講できるものづくり関係の講座を実施しているほか、一部の工業高校の定時制課程でも、社会人が聴講できる授業を開講しております。
これらの事業は、中小企業の若手技術者の育成に資するとともに、フリーター等若年者にものづくりへの興味や関心を持たせることになり、東京の産業を担う人材の育成にも寄与するものと考えております。
今後、工業高校などの施設や設備を有効に活用した人材の育成について、関係機関と調整を図ってまいります。
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■障害者施策 |
質問1 障害者施策について伺います。
障害者自立支援法が十月一日から本格施行となりますが、法の理念と施策には大きな乖離があるといわざるを得ません。
この間、私たち民主党も、数多くの障害当事者や支援を提供する方々、施設運営者の皆様方からのヒアリングを重ねました。また、地域の作業所や入所施設、グループホーム、デイサービスなどを訪問し、本当に多くの現場を見てお話を伺いました。こうした中からはっきりと感じたのは、自立支援法の施策には、障害者の生活実態への理解と生活の質への配慮が欠けているということです。
自立支援法の理念と実態の乖離をあらわす端的な事例は、住まいであるグループホームに対し、運営費補助を日払いで計算する方式とした点です。これにより、自立生活を営む障害者が週末や夏休みなどに実家を訪れ外泊すると、ホームは減収となります。
普通、賃貸住宅で、休日実家に帰ったりして留守にした分の家賃を払わないなどということはありません。しかし、普通のことを普通にしようとすると、経営が成り立たなくなるおそれがあるのです。障害があっても普通の暮らしを、QOLの向上をという改革の理念とは相入れない事態を招いてしまいます。国も一定の見直しを行っていますが、経営の安定を確保するのに十分とはいえません。
特に、一法人一ホームという小規模な経営形態が多い都の状況からすると、グループホームの安全で安定した運営確保のためには十分な支援が必要と考えますが、都の所見を伺います。 答弁1 ▼福祉保健局長 総合的な自立支援システムの構築を目指す障害者自立支援法では、グループホームについて、一定の範囲に所在する複数の住居を一つの事業ととらえ、事業規模の拡大により運営の安定を図ることとされており、今後、都としても、個々の事業者が事業規模の拡大に積極的に取り組むよう支援してまいります。
なお、報酬の日額払い方式が導入されたグループホームについては、都は、先般、法の本格施行後も安定的な運営が確保されるよう、国に緊急要望したところでございます。これを受け、国は利用者の外泊時等も報酬算定上の加算措置を講じるなど、一定の改善が既に図られていると考えております。
質問2 都は、平成十五年から三カ年にわたり取り組んできた障害者地域生活支援緊急三か年プランに続き、本年一月には障害者地域生活支援・就労促進三か年プランを発表し、障害者の地域での自立生活を支援してきました。
これに基づき、障害当事者や区市町村、事業者とも一丸となって、グループホームなど地域居住の場、障害者が住まいから出かけて、さまざまな活動をするための場の整備に取り組んできました。
既存の地域居住の場が厳しい状況に置かれている中にあって、このように進めてきた障害者の地域生活移行は、今後も継続して取り組んでいかなければなりません。自立支援法による影響についてもきちんと把握し、プランの進捗に停滞を来さないようしっかりとした取り組みを求めるものですが、都の所見を伺います。 答弁2 ▼福祉保健局長 障害者地域生活支援・就労促進三か年プランの取り組みについてでございますが、都は、障害者が地域で自立して生活できるよう三か年プランを策定し、居住の場や日中活動の場などの整備を重点的に進めております。
障害者自立支援法が十月から本格施行され、各事業は新サービス体系に再編されるわけでございますが、事業の安定的な運営は事業規模の拡大など事業者の経営努力等により可能であり、今後とも事業者の参入が見込まれると考えております。
都は、三か年プランの着実な達成に努めるとともに、法の施行状況等も踏まえながら、必要に応じ国に対して制度の充実強化を求めてまいります。
質問3 先ほども申し上げましたが、国の施策は歳出削減を主眼としており、サービス利用にかかる一割負担と合わせて、実現すべき所得増について何ら見通しがありません。
都は、就労促進三カ年プランを策定し、集中した取り組みを始めたところです。就労したい人、可能な人が自分の可能性を伸ばし、生きがいを持って暮らせるようにする、法のうたい文句であったこのことが実行されなければ、到底当事者の理解を得られるものではありません。
法施行に伴い、これまで以上に就労支援を強化する必要があると考えますが、所見を伺います。 答弁3 ▼福祉保健局長 障害者自立支援法では、障害者が意欲と能力に応じて働くことができるよう、就労支援を抜本的に強化することとされました。
都は、法の趣旨を踏まえ、平成十八年度から二十年度までの障害者地域生活支援・就労促進三か年プランにおいて、区市町村障害者就労支援事業の拡充など、障害者の自立を目指す就労支援策を初めてプラン化したところでございます。都は、今後、三か年プランに基づく事業を推進するとともに、法に基づく就労支援に係る事業の実施を事業者に促しながら、障害者の就労を積極的に支援してまいります。
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■子ども施策 |
質問1 子どもの医療について伺います。
都は、都立清瀬小児病院と八王子小児病院を廃止するとしています。しかし、小児医療が充足されているとはいえない現状で、実質的に地域医療をも担ってきた小児病院を二つ閉じ、小児医療、特に救急医療が受けられなくなるという事態は決してあってはなりません。
一方で、府中キャンパスには新たな病院の開設が予定されています。不採算といわれ、医療資源の不足にあえぐ小児医療分野において、都が高レベルな医療を提供するセンター病院を整備する意義は高いものです。
ですが、こうした高度な取り組みだけでなく、日々、子どもの生命と健康を守る、急な病気のときに頼れる小児医療の充実もまた、しっかりと取り組まなければならない課題です。
都は、福祉・健康都市ビジョンで、小児医療を充実し、子どもの健康を守ります、小児医療体制の体系的な整備を進めますを重点プロジェクトとして取り組んでいます。しかし、依然として、子どもを持つ親にとって、休日や夜間、急な病気のときの苦労は絶えません。東京で二十四時間三百六十五日安心の医療は実現されているのか、実現するためには何が必要か、しっかりと考え、対応していかなければならないと考えます。
新聞等でも報じられているように、二次救急医療機関に、夜間、多数の救急患者が集中することによって、診療現場では小児科医師が疲弊し、疲弊する現場に人が集まらない、人手不足でさらに疲弊するという負のスパイラルに陥っており、疲労こんぱいした小児科医がやめていく、燃え尽き現象が問題となっています。
都の調査によれば、本来入院を必要とする状態の重症患者に対応する二次救急医療機関では、休日、夜間の救急患者のうち、結果的に入院の必要のなかった比較的軽症な患者さんは約九五%であったとのことです。あってはならないことですが、軽症患者で混雑する余り、本来の救急患者への対応がおくれる事態も危惧されるところです。
二次救急病院に患者が集中している、この点について都としてはどのような対策をとっておられるのか、伺います。 答弁1 ▼福祉保健局長 少子化、核家族化が進行する中で、若い世代の親は子育てに関する知識、経験が少なく、また、夜間には診療を行う医療施設が少ないことから、子どもが急病のときに、軽い症状であっても、大病院を受診する傾向がございます。このため、都では、すべての地域において、身近な診療施設等で受診できるよう初期救急体制の整備に努めてまいります。
また、親の不安を解消するため、子どもの病気に関する基礎知識、対処方法などの情報をインターネットで提供する「東京都こども医療ガイド」や、小児救急電話相談事業を実施しておるところでございます。
質問2 こうした状況について、本来は救急受診の必要性がない軽症患者は地域の診療所に行くべきという指摘もあります。しかし、東京の家庭は核家族が八六%以上です。そして、一人っ子が三六%となっている現在、乳幼児を持つ親の多くが新米お父さん、新米お母さんなのです。家庭に子育ての知識が蓄積され、判断できるという時代では既になくなっています。たとえ、ある程度の知識を持っていても、経験がなくては、目の前でぐったりしている自分の子どもが重症なのか軽症なのか、容易に判断することはできません。だからこそ、夜間、救急病院を多くの患者が訪れているのです。
子どもの発熱や腹痛など、よくある病気を診るのは地域のかかりつけ医の役割とされる一方で、地域の小児科医院がどうなっているかといえば、診療はおおむねウイークデーの数回、朝から夕方までと、ごく限られた時間になっています。
子どもは診療所の診察日や診療時間に合わせて病気になるわけではありません。最近の若い親はとの嘆きももっともな部分はありますが、夜間の二次救急病院での診療ニーズが高まっているのは、親の問題とばかりはいえないのではないでしょうか。
都のいう小児医療の充実は達成されていくのか、そして、二十四時間三百六十五日安心の医療は実現していくのか、まずは、夜間に子どもの診療をしてもらえる医療施設が十分に確保されること、それにより小児二次救急病院の現状を改善することが必要です。
私は、この点についてしっかりと取り組むことは、二十四時間三百六十五日安心の医療を実現する上で非常に重要だと考えます。この問題は、今、対応を迫られている課題であり、都としても強力に取り組むべきと考えますが、所見を伺います。 答弁2 ▼福祉保健局長 都では、区市町村が行う夜間の初期救急事業に対する支援を行っておりますが、その実施に際しては、小児の救急患者に対応できる医師の確保など地域ごとにさまざまな課題がございます。このため、都では、こうした医師を確保するため、地域の医師を対象とした小児救急医療に関する研修事業を実施するとともに、複数の区市町村が共同で初期救急診療事業を実施する場合についても補助を行うなど、地域の実情を踏まえた支援策を講じております。
都としては、引き続き、区市町村、地域の医師会、病院等に働きかけ、早期にすべての区市町村において小児の初期救急診療事業が実施されるよう積極的に取り組んでまいります。
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■警察行政 |
質問1 警察行政について伺います。
まず、交番の統廃合についてであります。
警視庁は、平成十九年四月を目途に、空き交番を解消するとともに、都民からの要望の強い警察官によるパトロールの強化を図るため、交番は原則として一当務二人以上の配置とすることとし、隣接交番と近接している、業務負担が低い、老朽化しているなどの百二十一の交番については、再編・統廃合することとしています。
このことにより、交番には常に警察官がおり、さらに、地域のパトロールも常時行うことができるようになります。しかし、その一方で、百二十一の交番が交番でなくなるという現実は、いかにその交番の業務負担が低いとはいえ、警視庁自身が依然高い犯罪発生を認めている中にあっては、地域の住民にとっては大きな不安のもとです。
地域住民による防犯強化とはいっても、しょせん限界があるものであり、重大事件については警察官に頼らざるを得ないものであります。各警察署の警察官がわずかしかふえていないという現実は理解いたしますが、駐車違反確認事務の民間委託による交通部門からの配置がえや事務改善による配置がえなどによって、第一線の警察力を確保することも含めて、都民の不安払拭に努力されるよう求めるものですが、所見を伺います。 答弁1 ▼警視総監 交番の統廃合による都民の不安の払拭と第一線の警察力の確保についてお答えします。
第一線の警察力を確保していくためには、警察官の効率的な運用が不可欠であり、特に交番にあっては、警察官がパトロールを行う一方、その間も他の警察官が在所して、地域の方々のさまざまな要望、相談、届け出等の窓口としての機能を果たしていくことが重要であります。
このため、警視庁では、こうした交番機能強化に向け、地域警察官の増員にも努めてきたところでありますが、さらに交番の配置見直しを推進することとしたところであります。
また、第一線の警察力の増強については、これまでも、管理部門から地域部門や捜査部門等の実動部門への警察官の振りかえや、退職警察官の交番相談員としての配置などの施策を講じてまいりましたが、こうした内部努力とあわせ、警察官を増員することも重要であり、引き続き警察官の増員要求も行ってまいりたいと考えております。
また、駐車違反確認事務の民間委託に伴い合理化された人員については、第一線の警察力の強化のために再配置を行ってまいりたいと考えております。
なお、交番機能を廃止した施設についても、治安対策に関する知識や経験が豊富な警察官OBを配置し、警察相談の受け付けを初め各種会合や防犯活動等への参加による地域安全情報の提供など、地域の安全・安心活動を支える拠点としての活用を考えております。
質問2 駐車違反確認事務の民間委託について伺います。
この六月からスタートした違法駐車の取り締まり強化については、読売新聞の世論調査によると、駐車違反が減った、民間委託はよかったと評価する人が六割を超え、自分や家族のふだんの生活によい影響が多いという人も五割を超えているとのことであります。具体的な生活の変化は、駐車場のある店を選ぶようになった、道路の見通しがよくなった、駐車にお金がかかる、渋滞が緩和された、商店街の活気がなくなってきたなどの順でありますが、おおむね好意的に受けとめられているようであります。
取り締まり強化から三カ月を迎えようとしていますが、今回の駐車違反確認事務の民間委託に伴う取り締まり強化によってどのような効果があったのか伺います。
一方、同じ調査では、取り締まりの対象から高齢者や障害者の送迎、食事の配送に使われる車を除外した方がよいという人が八七%、宅配は七五%、商店への荷物の搬出入は七〇%に上っています。
厳正な取り締まりがあるからこそ効果が上がっているものであり、だれもが公平だと思う取り締まりルールをつくっていくのはなかなか難しい問題であると思います。しかし、一方では、高齢者や障害者の送迎、食事の配送に使われる車だけではなく、宅配や商店への荷物の搬出入にも高い率で配慮を求める声があります。こうした声を踏まえ、その事情がしんしゃくできる場合の救済策も考慮されるよう求めておきたいと思います。 答弁2 ▼警視総監 放置車両確認事務の民間委託など、新たな駐車対策法制による取り締まりの効果についてお答えいたします。
改正道交法の施行後、都心部の幹線道路を中心として、放置駐車の減少や交通渋滞の緩和、さらには平均走行時間の短縮など、都民が実感できる効果があらわれているものと思います。
具体的には、都内主要十路線における法施行三カ月後の調査結果では、施行前と比べ、放置駐車が約七四%の減少、渋滞の長さが約二七%の短縮、平均走行時間が約一〇%の短縮となっております。
また、駐車場やパーキングメーター等の利用が大幅に増加するなど、ドライバーの駐車モラルの向上も見られるところであり、交通の安全と円滑はもとより、経済上の便益や環境面での二酸化炭素排出量削減など、多方面にわたって相当な効果が上がっているものと受けとめております。
警視庁といたしましては、引き続き新法制のさらなる定着化を図り、違法駐車のない東京の実現に向けて努めてまいりたいと考えております。
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■行財政改革 |
質問1 行財政改革について伺います。
都が今回まとめた行財政改革実行プログラムでは、多様な主体がかかわる豊かな公の構築、政策対応力の高い執行体制の確立、スリムで効率的な行政運営の実現を改革の柱として、二百十二の実施計画を明らかにしています。
とりわけ、豊かな公の構築において、公イコール官ではなく、都民、地域活動の担い手として、自治会、町会、企業、NPOなどの多様な主体が、公共的な団体とともに公の役割を分担し合い、行政サービスの提供や公共的な課題の解決にかかわる、豊かな公を構築していくことが重要です、としている点は、私たちの視点と同じものであり、率直に評価するものであります。実施計画においても、多様な主体の育成や各種協働が盛り込まれ、経営改革手法の導入においても多様な選択肢が盛り込まれています。
知事は、都政におけるこの豊かな公の構築についてはどのようにお考えか、所見を伺います。 答弁1 ▼知事 あくまでも公は、それぞれの民が集積してでき上がるべきものであると思います。少子高齢化が進む一方、公共分野を担う民間主体が成長しておりまして、公を担うだけのシステムは、原点に立ち返って見直しをする必要があります。
官民の役割分担を徹底して見直し、民間が行えることは民間にゆだねるとともに、防犯、防災や環境問題など、社会全体の利益につながる活動に多様な主体がかかわる仕組みをつくり、豊かな公を構築していくことが重要であると思っております。
これからも、こうした不断の行財政改革を積極的に推進し、二十一世紀にふさわしい公の形を東京から全国に発信していきたいと思っております。
質問2 官と民との対等な協力、協働、競争や、官の組織の中での任期つき職員や民間専門家などの積極的な活用も評価するものでありますが、さらに一歩踏み込んだ官と民との融合ともいうべき新たな公の構築もまた、考えてみるべきではないでしょうか。
例えば、官がある政策目標を実現するための事業を実施している場合、その政策目的とあわせて、官が行っている事業内容を事業別バランスシートも含めて常に公開する。民は、官の政策目的をよりよく実現するための具体的な事業を企画し、官の事業と置きかえることを提案する。そして、それが評価に値するものであれば、市場化テストなどにより、官の事業と置きかえ、民にその事業を委託することがあってもよいのではないでしょうか。
そこで、市場化テストを行う際には、事前に政策目的や事業内容を公開し、民の改革提案を受け付けるような仕組みを導入すべきと考えますが、所見を伺います。 答弁2 ▼総務局長 市場化テストの実施についてでございますが、市場化テストは、官民が対等な関係で競い合い、公共サービスの提供主体を決定する手法であり、民間事業者が参加しやすい環境を整備することが課題でございます。そのため、民間事業者の意見を積極的に取り入れる一方、官の情報を適切に開示することが必要でございます。
こうした観点から、今年度実施するモデル事業におきましては、民間の能力や創意工夫を生かせるよう意見募集を先般行ったところでございまして、また、今後、事業者の公募時には詳細なコスト情報を公表する予定でございます。
来年度以降、市場化テストを本格実施していく際には、対象事業のバランスシートの作成など情報公開をさらに推進するとともに、民間事業者のよりよい意見や提案を取り入れ、事業に活用してまいります。
質問3 さて、私たちはこれまでにも、中長期的な視点に立った財政運営を求めてきましたが、さきにまとめられた「今後の財政運営の指針」で、大規模施設の改修、改築を計画的に実施するとしたことや、大規模プロジェクトなどの全体計画を公表するとしたことなどは、当然のこととはいえ、評価されるべきと考えます。しかし、各局の主体的取り組みの推進において、今まで続けてきたシーリングとの違いが見えません。
地方分権改革の中で、国は自治体のはしの上げ下げにまで口を挟むといわれましたが、今までと同じような予算編成手法が続くのであれば、はしの上げ下げは局の裁量にゆだねるが、料理内容は財務局が口を挟むといっているのに等しいのではないでしょうか。マネジメントサイクルの確立とあわせて評価すべきですが、事業別バランスシートや事務事業評価との併用などにより、さらに効果的な予算編成が可能だと考えますが、所見を伺います。 答弁3 ▼財務局長 これからの財政運営において重要なことは、財政を質的に転換し、強固で弾力的な基盤を確立することでございます。シーリングを主体としたこれまでの手法だけでは、限界があるのも事実でございます。そのため、庁内分権の視点に立った経費区分の見直しなどにより、各局の自主的、自発的な取り組みを促すとともに、それだけではなく、事務事業評価制度あるいは事業別バランスシートなどを活用し、決算分析の充実と翌年度予算への反映を徹底していくことといたしました。
こうした新しい仕組みを取り入れ、新陳代謝を絶え間なく行っていくことで、これまで以上に効率的、効果的に予算を編成してまいります。
質問4 この事務事業評価は、今年度より財務局が所管することとなり、各局と財務局が予算編成過程の中で実施することとされ、予算査定と一体化することとなりました。しかし、これと一体であるべき政策評価の所管については明らかにされていません。個々の事務事業は、ある政策目標を実現するために行われているものであり、個々の事務事業評価のみにとどまっていては、その政策目標自身の検証が不問に付されることになります。
設立に当たってさまざまな議論のあった首都大学東京の平成十七年度業務実績評価について、このほど評価委員会から知事に報告がありました。このように、都立から公立大学法人となった首都大学東京の業務実績については評価委員会による評価が出されているのに、都事業については、今、明確なのは事務事業評価だけで、事務事業評価と政策評価という行政評価全体の所管局は不明であり、ましてや第三者評価制度は検討の対象にもなっていません。
この行政評価、とりわけ政策評価についてはどのようにお考えなのか、所見を伺います。 答弁4 ▼知事本局長 都は、都政の構造改革を総合的に推進していくため、重要施策を策定し、戦略的取り組みを行っております。昨年十二月には、これまで進めてきた改革の検証、評価を踏まえ、今後、都政全体で取り組むべき新たな七つの重要施策を選定したところであります。
また、行財政改革の新たな指針では、重要施策及び重点事業における、いわゆるPDCAサイクルを強化するため、毎年度、検証を経て改定することといたしました。事後検証の機能を充実することで、事業の執行状況を管理するだけでなく、政策に対する検証、評価、政策目標の設定をさらに的確に行ってまいります。
質問5 さて、都の財政については、これまでも国の恣意的な差配に振り回され、不合理な財政調整にさらされてきました。平成十八年度予算も例外ではなく、法人事業税の分割基準見直しや地方特例交付金の廃止などによって大きな影響を受けることとなりました。鳴り物入りの三位一体改革も、しょせんは国庫補助負担金、地方交付税の削減と、その三分の一の税源移譲でしかなく、分権には何の貢献もないものでありました。
こうした中で、現在、東京自治制度懇談会において、道州制を含む広域的自治体のあり方や、東京における大都市制度などについて検討が行われ、平成十八年度中にも自治制度改革について懇談会報告が取りまとめられることになっています。
東京発自治論として、新たな自治の仕組みを発信するに当たっては、一自治体としての都の個別的利害にこだわることなく、国家全体の利益という視点に立って、地方税財政制度のあるべき姿を明確にし、自治体間の強固な連携のもと、国に対して、その実現を働きかけていくべきと考えますが、所見を伺います。
以上で都議会民主党を代表しての質問を終わります。
ご清聴ありがとうございました。 答弁5 ▼知事 東京発自治論についてでありますが、小泉内閣が行った国のいわゆる三位一体改革は、しょせん数字合わせに終始しまして、国と地方の役割分担のあり方など、本質的な議論が行われなかったと思います。
こうした中で、東京発の自治論の発信に向けて、東京自治制度懇談会の知恵もかりまして、税財政制度を含めた自治制度のあり方について検討を深めております。
既に行ってきました、環境問題などを含めまして幾つかの隣県の神奈川、埼玉、千葉県と一緒にやりました広域行政などは、これからあるべき自治論のための一つの大きなよすがになるのではないかと思っております。
国家全体の利益という視点に立てば、この国の形をかえる地方分権改革は、是が非でもなし遂げなければならない課題でありまして、地方分権の時代にふさわしい自治制度のあり方について、新しい内閣や他の自治体に対しても強く発信していく考えでございます。
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