平成18年第1回定例会 代表質問

オリンピック招致理念を明確に
環境配慮が内在化された社会へ

柿沢未途(民主党)
 
 都議会民主党を代表して、都政の主要課題について知事並びに関係局長に伺います。
 
■オリンピック
 
質問1
 まず、オリンピックについてです。
 まず、我が会派の基本的な考え方を申し上げます。
 石原知事による東京オリンピック招致の意思表明を受けて、今定例会には、都議会でのオリンピック招致決議が上程されることになると思われます。オリンピック招致問題は、今定例会の最大のテーマであるといっていいでしょう。
 昨年九月の本会議で石原知事が招致の意思表明をして以来、私たちは、オリンピック招致に向けた基本構想や財政計画を早期に示すよう求めてきました。そして、第一回定例会の開会直前の今月十七日になってようやく基本構想懇談会の報告書がまとまり、公表されるに至りました。
 私たちは、この報告書をベースに、なぜ今東京がオリンピックを招致するのか、どのようなオリンピックを考えているのか、都の財政は大丈夫なのか、こういった点についてさまざまな角度から都の考えを聞くとともに、私たちの考えも述べた上で判断を下したいと考えております。そうした議論を経ることもなく、ただただもろ手を挙げてオリンピック賛成というのでは、言論の府である議会として、責任放棄であるといわざるを得ません。
 私は、NHK長野放送局の記者として、一九九八年の長野オリンピックを、まさに最前線で取材をしました。オリンピックのすばらしさは、私が一番わかっているつもりであります。しかし、同時に、オリンピックだからといってすべてがバラ色になるわけではないことも知っています。オリンピックは、都市が抱える問題を解決する魔法のつえでは決してありません。オリンピックの招致や開催を行った都市で、残された巨大な負の遺産に今なお苦しんでいるところもあるのです。
 都議会民主党は、無条件賛成でも無条件反対でもなく、未来に向けた責任ある議論を十分に行った上で、最終的な判断を下したいと考えております。質問に先立ち、そのことをあえて申し上げておきます。
 さて、今月十七日、オリンピック基本構想懇談会から報告書「東京オリンピックの実現に向けて」が公表されました。しかし、報告書を見る限り、東京で再びオリンピックをと国内外に訴えかける理念は、いまだ不十分であるという印象を持ちます。
 前回、一九六四年の東京オリンピックは、世界じゅうを巻き込んだ戦争の後、一度は中止となったオリンピックを再び東京に誘致し、敗戦後の荒廃から力強く復興した日本の姿を国際社会に見せようという理念がありました。
 それに対して、今回の報告書では、日本全体を覆っている閉塞感を打開するためにオリンピックを開催したいということが書かれています。しかし、これだけでは、国際社会に向けたオリンピックの理念としては不十分なのではないでしょうか。内向きの、ドメスチックなメッセージという印象がぬぐえません。
 世界の平和や民族間の相互理解に、オリンピックを通じて日本がどのような貢献をしていくのか。今後、招致活動がIOCの場に移り、世界の支持を獲得していくには、国際社会に通じるもう一段のメッセージが求められるのではないでしょうか。
 いずれにしても、今回の報告書は、あくまでも有識者懇談会の報告書であって、都としての基本理念がこれによって打ち出されたわけではありません。
 そこで、なぜ再び東京にオリンピックを招致するのか、都としての基本理念を明らかにすべきと考えますが、石原知事の所見を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 まず、なぜ再び東京にオリンピックを招致するかについてでありますが、繰り返して申しますけれども、今日の日本人は、みずからのポテンシャルを過小評価といいましょうか、正式に把握せずに、殊さらに萎縮してしまっていると思います。今なすべきことは、国家、民族としての向かうべき方向を定めて、みずから立つ国としての自己を取り戻すことだと思います。オリンピックを契機とする東京の積極的な取り組みが二十一世紀の新しい都市モデルを提示し、世界の大都市問題の解決に大いに貢献するものと確信しております。この国において、国家を牽引し日本の存在を象徴する都市は、東京が第一だと私は信じております。
 ゆえにも、この東京にオリンピックを招致したいわけでありますけれども、今日の日本の閉塞感というものに対する認識は、私は、党派を超えて、ほとんどの日本人に共通してあるんじゃないかと思います。そういったものを突破する一つのよすがとして、地域に限られていても、やはり大きなナショナルイベントが必要だと思いますし、そのナショナルイベントとしての効力が最大のものは、私はオリンピックではないかと思います。
 これから関係の職員が、局長を含めて、東京オリンピックの、まだ決して一〇〇%できているものじゃございませんけれども、かなりの具体的な案件について説明に上がりますが、その結果、民主党、東京都における民主党が賛否どうされるかわかりませんし、また、東京における民主党と、これはやはりナショナルイベントでありますから、国もまたこれ協力せざるを得ないし、またそれで初めて完成できるものでありますが、その段階で、国政において、国政の民主党がこれをどうとらえるか、これも私たち刮目して見守るところであります。
 東京オリンピックのコンパクト性について先ほど尋ねられましたけれども、これは、詳細な報告が後であると思いますが、第一に、既存の施設というものをほとんど多く使える。例えば東京ドームでありますとか、武道館でありますとか、あるいは国際フォーラムでありますとか、あるいは駒沢の諸施設でありますが、ただ、あの神宮のメーンスタジアムは、IOCの規格にもはや合いませんから、どこかに新規に構築する必要があります。
 それから、加えて、ちょうど十年先の我々が目指しているころ、東京にはかなりたくさんの空き地ができる。築地は、市場は豊洲に移転しまして、その跡があきます。それから、臨海副都心の幾つかの埋め立てが完成します。例えば有明の北側であるとか、中央防波堤の内側とか、そういうものを活用しまして、ありがたいことに、東京オリンピックの開催に際して新規に土地を購入する必要は全くありません。これは後で係が図面を持って説明に上がりますけれども、半径十キロ以内という非常に限られた地域に、実に見事に行事の開催場所がおさまるということになります。
 加えて、この二十三区をとりましても、これだけの限られた地域の中に、これほど便利な、地下鉄を含めて列車、電車が縦横無尽に、左右、とにかく縦横に走っている。その駅の数がこれほど稠密にある首都というものは世界に例を見ません。
 それから、有識者の懇談会の報告について言及されましたが、これはあの限りのことでございまして、決してあれをもって私は十全としておりませんし、またそこから啓発されまして、日本の独特の最も進んだ技術の一つでありますIT関係のベンチャーテクノロジーを、これからさらにどう開発し、どう利用するかということの、オリンピック開催にかかわるITの専門家のコミッティーもつくりまして、いろいろ近未来的なサジェスチョンをいただくつもりでおります。
 そういうことでひとつ十分ご理解いただきまして、可能性を信じて、東京都においても民主党がオリンピック反対の政党であるというようなイメージをお持ちにならないように、ひとつご配慮願いたいと思います。
 

 
質問2
 夏のオリンピックは、一八九六年のアテネ大会以来、過去二十八回開催され、開催国は十七カ国を数えるまでになっています。わずか十四カ国三百人の参加で始まったオリンピックは、今や二百二の国と地域、そして一万人の選手が参加する大会へと肥大化しています。
 それに伴って、オリンピックを招致する都市も世界的な大都市に限られるようになっています。現に二〇一二年の夏のオリンピックの最終選考に残った都市は、ロンドン、パリ、ニューヨークなど、すべて先進国の首都クラスの大都市でした。世界じゅうでオリンピズムを推進するというオリンピック憲章の理念を考えたとき、開催経験のある先進国の大都市ばかりがたらい回しのようにオリンピックを開催することが果たしていいのか、むしろ開催したことのない国や都市にチャンスを与えるべきではないかという意見もあります。
 国内候補地についても同じことがいえます。二〇一六年オリンピックについて、JOCは、多くの国内候補地が手を挙げるよう、広く立候補を呼びかけました。それにこたえて昨年四月に福岡市が招致を表明しましたが、続いて九月、石原知事が招致を正式に発表し、東京以外にあり得ないと主張をされました。
 後追いの形で招致を宣言いたしましたけれども、東京は既に四十年前にオリンピックを開催しています。オリンピックによって日本の閉塞感が打開されると考えるのであれば、地方都市での開催であってもそれは同じなはずです。そうした状況の中、東京がなぜ招致に名乗りを上げたのか、伺います。
 
答弁2
 ▼知事本局長
 東京がなぜ名乗りを上げたのかについてでございますが、オリンピックは、成熟した都市の姿を世界に示し、改めて日本の存在をアピールする絶好の機会であります。東京は、都市機能の高密度な集中集積、正確で安全な公共交通網、日本独自の技術や文化の力、オリンピック開催にたえる健全な財政力などを備えております。これら東京の底力を総合的に考えると、日本を牽引する都市はこの東京こそふさわしく、オリンピック開催に最もふさわしい都市であると考えております。
 

 
質問3
 石原知事は施政方針演説で、オリンピックで示す東京と日本の存在感を述べましたが、その内容は、待ったなしの都市基盤整備とか快適な環境、都市空間の創出など、都市機能の集中による弊害の克服が主で、オリンピックそのものについては余り言及をされていません。
 とりわけオリンピックの競技施設や選手村がどこに配置されるのかについては、昨年末からマスコミを通じて、整備原案だとか青写真、構想だとか、そういった報道が続いています。いずれにしても、六月にはJOCに対して開催概要計画書を出すことになるわけで、そのときには、主要施設が都内のどこに配置されるのか明らかにしなければなりません。
 そうした中で、先日のオリンピック招致議員連盟の設立総会では、主要関係施設検討候補地図が示されたと聞いています。この検討候補地図はどういう位置づけのものなのか、見解を伺います。
 
答弁3
 ▼知事本局長
 主要関係施設検討候補地図の位置づけについてでございますが、この図は、オリンピックの主要施設の配置を検討するに当たって、コンパクトな配置、既存の施設、都有地の有効活用などを念頭に置いて、その候補となる場所を図示したものでございます。今後さらに検討を重ね、競技会場、選手村、メディアオペレーションなどの主要施設の位置を確定してまいります。後ほど各会派にご説明します。
 

 
質問4
 さて、この検討候補地図では、都心部から十キロ圏内に、主要な施設の候補地として五十カ所に上る地点が示されています。懇談会の報告書では、世界一コンパクトな大会という考え方が打ち出されており、石原知事の施政方針演説でも、都心部を中心とする半径十キロ圏内に競技場や関連施設を集中的に配置するとしています。
 ロンドンが二〇一二年オリンピック招致に成功したのは、コンパクトオリンピックという考え方を前面に押し出したことが勝因になったといわれています。その意味で、東京が世界一コンパクトな大会というコンセプトを打ち出すことは、時宜にかなったことだといえると思います。
 しかし、そのコンパクトさとは何でしょうか。施設の八〇%以上が十キロ圏内に配置されていることをもってコンパクトオリンピックと呼ぶのでしょうか。それだけでなく、オリンピックを開催することで都市にかかる負荷が少ないことがコンパクトオリンピックの条件であると私たちは考えています。
 先日、国内候補地に名乗りを上げている福岡市に視察に行ってまいりましたが、オリンピックを名目とした鉄道や高速の建設は一切行わないと話していました。五年前の福岡世界水泳では、世界初となる屋内の仮設プールを設置し、数百億かかるといわれる施設整備費をわずか三億円にコストダウンし、世界から高く評価された実績もあります。これこそがコンパクトオリンピックの考え方にかなうものなのではないでしょうか。
 都は、コンパクトな大会の意味するものはどのようなものだと考えているのか、所見を伺います。
 
答弁4
 ▼知事本局長
 コンパクトな大会の意味についてでございますが、都は、競技場や選手村などの主要施設を集中的に配置し、環境への影響を極力抑え、選手や大会関係者、さらには観客の移動時間の軽減や安全面の強化を図るなど、コンパクトな大会を目指しております。東京は、こうした配置を可能にする既存施設などの集積や、都市の再生が生み出した用地があります。半径十キロメートルの円内に八割以上の施設を配置することが可能であります。このようなコンパクトな大会は、IOCによる開催都市の選考でも高い評価が得られるものと確信してございます。
 

 
質問5
 東京がオリンピック招致に立候補すると聞いて、都民が最も気がかりに感じているのは、決して潤沢ではないはずの都財政は本当に大丈夫なのかという点です。財政的なサスティナビリティーについて十分な説明責任を果たさなければ、幾らたきつけても、招致に向けた都民の機運は盛り上がることはないと思います。
 前回の東京オリンピックの総経費は一兆八百億円に上りました。今の貨幣価値は当時の約十倍です。最近行われたオリンピックでは、二〇〇四年のアテネ大会が一兆二千百五十億円、九八年の長野大会が一兆五千億円でした。二〇一六年のオリンピック招致を検討した札幌市は、アテネオリンピックを参考に、概算経費を一兆八千三百二十八億円とはじき出しました。その結果、札幌市長はオリンピック招致の断念を表明しているのです。
 東京は、二〇一三年多摩国体に続く二〇一六年東京オリンピックに係る巨額の財政負担にどう対応していくのでしょうか。
 本定例会に都は基金条例を提案し、来年度、まず一千億円の基金を積み立てる予定と聞いておりますが、オリンピックの招致と開催に伴う財政的なサスティナビリティーについてどのように考えているのか、伺います。
 なお、本来であれば、招致に踏み出すに当たって、オリンピックの招致と開催にかかわる具体的な財政計画を明らかにすべきです。六月には開催概要計画書をJOCに提出し、そこでは財政計画が盛り込まれるわけですから、今定例会の段階で一定の見通しを明らかにすることは可能なはずであります。我々が態度を決める上でも、一定の財政計画を速やかに明らかにすることを求めておきます。
 
答弁5
 ▼財務局長
 オリンピックに係る財政面の課題は、都として必要となります財源を安定的に確保し、オリンピックの前後を通じて堅実な財政運営を行うことでございます。
 今定例会に提案しております基金には、今後見込まれる財政需要に対しまして、早い段階から備えを始めることで年度間の負担を平準化する目的があり、基金を有効に活用することにより、議員ご指摘のサスティナビリティー、すなわち持続可能な財政運営をできると考えております。
 オリンピックは息の長い取り組みでございまして、国や民間に対し負担や協力を求めるとともに、都としては、基金のみならず都債なども適切に活用することで負担の平準化を図り、財政の健全性を維持できるものと考えております。
 

 
質問6
 オリンピック招致の推進には、各関係団体からあらゆる支援を仰ぐ必要があります。先日の視察では大阪市にも行ってきましたが、オリンピック招致に関して大阪は、国や大阪府のバックアップを十分に受けることができなかったという印象でした。その結果、国際社会に大阪をアピールできず、最終選考においてわずか六票という大敗をしてしまったと考えています。
 一方、九八年の長野オリンピックでは、長野市と長野県が一体となって招致運動に取り組み、当時JOC名誉会長だった堤義明氏がIOC初め国内外との関係をバックアップし、招致に成功しました。
 オリンピックの招致と開催に当たって、石原知事は、国も相応の覚悟を持って取り組むべきと述べていますが、それだけいい放っていても始まりません。都は、国から全面的バックアップを得るためにどのような働きかけを行っていくのでしょうか、所見を伺います。
 
答弁6
 ▼知事本局長
 国への働きかけについてでありますが、オリンピックは中長期にわたる国家的な一大プロジェクトでありまして、国の全面的なバックアップは必要不可欠でございます。今後、都議会における招致決議を契機に、国や関係団体との情報交換を活発に行うとともに、八月に東京が国内候補都市として決定した後には、都議会のご協力を得て、速やかにオリンピック招致の閣議了解を求めるなど、積極的に国に働きかけてまいります。
 

 
質問7
 東京オリンピック招致を石原知事がいっていますが、そこでいう東京とは、東京都のことなのでしょうか。本来ならば、オリンピックは都道府県でなく都市が開催するものであり、東京における基礎的自治体である特別区や市町村が招致に賛同することが、立候補の条件になってもいいはずです。
 都は既に特別区などに対して、オリンピック招致への賛同と議会での決議を内々求めているとも聞きますが、特別区や市町村の賛同、協力を得る必要をどう考えているか、そして、その見通しについて所見を伺います。
 
答弁7
 ▼知事本局長
 オリンピック招致に当たっての区市町村の賛同、協力についてでございますが、多くの自治体から幅広いコンセンサスを得ることは、オリンピック招致機運を盛り上げるために重要であり、開催都市選考の大切な要素でございます。既に昨年十月には関東地方知事会議、十一月には八都県市首脳会議、多摩・島しょの市長会、町村会から、招致に賛同する旨の決議をいただきました。
 今後とも都議会とも連携を深めながら、さまざまな機会をとらえて、区市町村や多くの都民、国民にオリンピック招致の理解を求め、賛同の輪を広げてまいりたいと考えております。
 

 
質問8
 招致活動についても、いたずらに華美で派手な招致活動を行うべきではありません。長野オリンピックの招致活動費は総額二十八億三千四百万円でしたが、その後、会計帳簿を焼却処分したと説明し、何に幾ら使われたかはずっとやみの中でした。この帳簿問題について調べてきた長野県の調査委員会は、過剰接待と九千万円の使途不明金を認定し、それを隠ぺいするために招致委員会の会計帳簿を廃棄したと結論づけています。
 ちなみに、過剰接待といわれる内訳は、一人当たり約五百四十万円の接待と約六十六万円のお土産です。後に外国メディアは、長野を、箱ごと資料を焼いた長野の面々は一国の恥であると書きました。オリンピックを成功させた長野市民が、オリンピック招致によって世界から非難されたのです。
 さらに、招致に失敗した大阪市は、長野を上回る約四十八億円の招致活動費を投じたにもかかわらず、最終選考で百二票中わずか六票しか獲得できず、莫大な招致費用は水の泡になってしまいました。
 そうした教訓を踏まえ、招致活動は簡素にすべきです。これから東京が招致活動に向かっていくとしたら、長野や大阪の招致活動の問題点を教訓化し、東京オリンピック招致活動に生かしていくべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁8
 ▼知事本局長
 オリンピック招致の活動についてでございますが、国際的な都市間競争に打ちかつオリンピック招致を実現するためには、綿密な大会計画の策定、招致機運の盛り上げ、都市の魅力の向上、平和、人権、環境への取り組みなど、さまざまな活動が必要であります。これらの多岐にわたる招致活動を効果的に展開するため、長野オリンピック、大阪市、ロンドンなどの招致活動などさまざまな事例を十分に研究し、オリンピック憲章及び国際オリンピック委員会・IOCの倫理規程を遵守し、招致活動を行ってまいります。
 
▲ページのトップへ
■都政運営
 
質問1
 今後の都政運営について伺います。
 ただいまオリンピックについてるる伺ってまいりました。私は、石原知事の強烈なアピールにもかかわらず、オリンピック招致の機運がいま一つ現段階で盛り上がらない原因の一つに、東京都の長期計画、東京の将来ビジョンの欠如があるのではないかと思います。昨年の第三回定例会でも触れましたが、二〇一二年オリンピック開催予定のロンドンにロンドンプランがあるように、東京にもまた、東京の将来ビジョンが必要なのではないでしょうか。
 財政再建に一つの区切りがついたと語っているように、これまでの緊縮財政一辺倒から、新しい都政の積極的な展開を考える時期が来ているように思います。
 今までの石原都政の施策は、緊縮財政の中、派手な打ち上げ花火を単発的に打ち上げる式のものだったように思います。閉塞状況を打破するための一点突破もあながち否定はしませんが、十年後、二十年後の東京の姿を明示し、それに至る具体的な道筋を示していくこともまた重要です。
 本格的な都政の長期計画は、東京構想二〇〇〇以来、策定されておりません。今こそ東京の将来ビジョン策定に取りかかるべきだと考えますが、所見を伺います。
 
答弁1
 ▼知事本局長
 東京の将来ビジョンについてのお尋ねでございますが、少子高齢化の急速な進展、経済のグローバル化や産業技術の高度化、あるいは公共分野を担う多様な主体の成長など、都政を取り巻く社会経済環境は大きく変化しております。こうした社会経済の構造的変化の中にある現在、長期的な視点から時代の潮流をとらえ、将来展望を持って政策を展開することが重要であります。加えて、急速に変化する外部環境にも的確かつ柔軟に対応していかなければなりません。
 このため、東京の将来を見据え、政策課題を明確にした上で取り組みの方向を示し、取り組み状況と効果を検証していく新たな枠組みとして、重要施策及び平成十八年度重点事業を策定しました。
 

 
質問2
 そうしたビジョンの中で、都と特別区との関係をどう位置づけていくのかも重要な課題です。
 都区財政調整にかかわる主要五課題については、都の最終回答が区長会から受け入れを拒否され、一時、決裂状態に陥っていましたが、今月十六日の都区協議会において、高橋区長会長が都の提案の受け入れを表明し、一応の決着を見ました。
 その中で、今後の都区の事務配分、再編を含めた区域のあり方、税財政制度などを根本的かつ発展的に都区共同で検討し、その結論に従い整理するという合意がなされ、この合意に沿って、今後、都区共同の協議機関が立ち上げられることになります。主要五課題の調整率での解決を求めてきた私たちには、多少の不満も残りますが、都区制度の抜本的な見直しに向けて議論のテーブルがつくられることになったのは、評価をしたいと思います。
 しかし、この間の都区協議における都の姿勢には、一言申さなければなりません。
 先月、横山副知事への申し入れの際にも述べましたが、都は、国に対しては、地方自治体がみずからの責任と権限により行財政運営が可能となる基盤を確立すべきであると、権限や財源の移譲を強く国に求めているにもかかわらず、都区協議においては、調整三税は都税であり、交付金は都が区に交付するものであるから都が算定するのだという立場に終始しています。国には分権を求めながら、区には権限や財源の移譲を拒むかのような姿勢を見せるのは、ダブルスタンダードであるといわざるを得ません。
 今後、都区のあり方を検討するに際しては、基礎的自治体としての特別区の自立、自治権拡充に十二分に配慮する立場で臨むべきだと考えますが、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼総務局長
 今後の都区協議についてでございますが、都は、これまでも都区財政調整を初め、さまざまな課題につきまして、特別区と対等、協力の関係に立ち、真摯に協議を進めてまいりました。これから都区共同で開始する今後の都区のあり方の検討は、事務配分、再編を含む区域のあり方、税財政制度など特別区の区域における将来の自治について、次の制度改革までも視野に入れた大きな議論になると考えております。
 今後の検討に当たりましては、住民に身近な行政を担う基礎的自治体の役割を十分尊重するとともに、特別区の区域における大都市としての一体性確保の視点を持つことが重要でございます。大切なことは、広域自治体である都と基礎的自治体である特別区が連携協力して、東京の発展と都民、区民の生活の向上を図ることであり、こうした考え方に立ち、今後特別区と議論に臨んでまいります。
 

 
質問3
 さて、まさに本日、第二十八次地方制度調査会が道州制のあり方に関する答申を提出することになっています。この道州制に対してどのように取り組むのかも、東京の将来ビジョンにとって重要な課題であります。
 私たちは、これまでにも再三、道州制の導入に向けた取り組みを求めてきましたが、石原知事は、今月十七日の定例記者会見で、東京を核にした新しい一つの自治体をつくるべきだと述べるとともに、地方制度調査会の諸井会長に八都県市の取り組みを伝え、こういうものを参考にしてほしいと要請したことを明らかにしました。これは、道州制に移行する場合の東京の扱いについて、東京を周辺の県と統合させる案と、特例として東京だけ独立させる案の二つのパターンが併記されていることに対して述べられたものです。
 石原知事のこの発言については、首都圏や関東といった、より広域的な行政単位に再編することが望ましいとの考え方を示したものだと受けとめられていますが、石原知事の真意はどこにあるのでしようか、所見を伺います。
 
答弁3
 ▼知事
 道州制についてでありますが、現行の都道府県の制度は、直面する行政課題に十分対応できない状況にあります。都は、これまで首都圏における広域的課題を解決するため、八都県市の連携を通じて着実に実績を積み重ねてまいりました。道州制の検討に当たっては、こうした現実の課題と現場の実態を踏まえた検討が必要だと思います。
 諸井会長にも申しましたが、我々が現在行って非常に効果を上げている、八都県市によるこの首都圏の広域行政というものを大いに参考にしていただきたい。あくまでも都市や県の機能論というものを踏まえて道州制を考えていただきたいということを申しました。その小さな一つの証左としても、あの県境を挟んで密接しております東京の町田市という大きな町、それから相模原市という発展中の町、この町が実は合併したいという機運もあるようでありますけれども、これは県境が挟んであるので非常に困難なことでありますが、こういう要望が限られた地域でも非常に強くあるということも、一つの大きなサジェスチョンになるんじゃないかと思います。
 しかし、地方制度調査会では、道州間の規模の均衡をもとにして区割りを示すなど、表層的な議論に終始しているといわざるを得ません。道州制の意義は、真の分権改革に向けて国の形を抜本的に変えることでありまして、そのためには、まず国と地方の役割分担を徹底して議論すべきであると思っております。都としても、今後とも広域行政のあり方について議論を進め、東京発の自治論を国などに対して強く発信していく考えであります。
 

 
質問4
 市場化テストについて伺います。
 市場化テストについては、一般的には官業の民間開放と受けとめられているようですが、市場化テストは必ずしも官から民へ、あるいは小さな政府、小さな自治体を目指すものではありません。むしろ市場化テストは、効率的な政府、そして強い自治体を目指すものであるはずです。
 官の事務事業を民間に開放するだけであれば、民民の競争入札で受注者、受託者を決めればよいのであって、これをあえて官民競争入札とするのは、その過程を通じて、官の側の意識改革を図り、効率的な政府、強い自治体の形成に役立てていくためであります。
 また、ある事業を市場化テストの対象とするならば、官と民との競争条件を同一とするため、官の情報を適宜適切に公開していかなければなりません。そのことは同時に、官の説明責任をよりよく果たすことにもつながります。
 そこで伺いますが、都は、この市場化テストの意義をどのようにお考えか、所見を伺います。
 
答弁4
 ▼総務局長
 市場化テストの意義についてでございますが、昨年十一月に策定しました行財政改革の新たな指針では、公共サービスの提供について、サービス向上と経費削減を一層進めるため、市場化テストを導入することといたしました。市場化テストは、官民競争入札を実施することで、価格と質の面でよりすぐれた主体が落札し、当該サービスを提供していく制度であり、行政分野に競争原理を導入するものでございます。民間企業に新たな参入機会を与えるとともに、あわせて都が引き続き業務を継続する場合にあっても、コストや仕事の進め方を見直すことで行政の体質改善の契機になるものと考えております。
 今後、都における新たな経営改革手法として活用してまいります。
 

 
質問5
 この市場化テストの成功事例としてしばしば取り上げられる、人口約八十万人のアメリカ・インディアナポリス市では、一九九二年からの八年間で七十にも及ぶ公営事業で市場化テストによる改革がなされました。その結果、累計約五百億円の財政負担が軽減されるとともに、公営事業のサービス水準は大幅に改善をし、周辺自治体からも受注を獲得するセクションもあらわれたといわれています。
 例えば、下水道料金徴収システムの例を見ますと、市当局が、民間会社ではありますが独占的に水道事業を行っている水道会社に下水道料金の料金徴収業務の委託を打診したところ、当初、水道会社が要求した事務手数料は、当時の市の徴収コストに対しわずか五%低いだけのものでした。そこで、市の当局が複数の会社による競争入札の導入を検討したところ、水道会社は、従来に比べ三〇%のコスト引き下げを約束したということです。市場化テストの実施に当たっては、これらの事例も当然参考にされることと思います。
 また、さきの指針では、職業訓練分野を例示し、来年度中に東京版市場化テストのモデル事業を選定し、早期に実施するとしていますが、都で市場化テストを実施する場合に最も適した事業は、公営企業局の行っている事業なのではないでしょうか。
 こうした先行事例、モデル事業選定と市場化テストの実施についてはどのようにお考えか、所見を伺います。
 
答弁5
 ▼総務局長
 都における市場化テストの実施についてでございます。
 市場化テストは、海外において公共施設の管理運営、廃棄物収集など、さまざまな分野で実施されております。いずれも官民競争により経費削減やサービスの向上に資するものとして導入がされております。
 都におきましては、民間事業者が存在しているにもかかわらす、法令などにより民間開放が困難とされていたもののうち、官民の競い合いが可能であると判断した職業訓練分野などについてモデル事業を選定し、実施することといたしました。また、モデル事業と並行して、十八年度中に官民の競い合いが可能な事業を全庁的に洗い出し、速やかな制度導入を図ってまいります。
 
▲ページのトップへ
■耐震改修
 
質問1
 木密・マンション耐震改修について伺います。
 都は、来年度から、地震災害時に木造住宅が多数倒壊し、道路閉塞により避難、救急活動等に支障を来すおそれがある地域については、避難の安全を確保するなど公共性が高いと判断し、耐震診断、耐震改修助成を行い、耐震化の促進を図ることとしました。
 都議会民主党が東京マニフェストで掲げた主張が実現した形で、一歩前進ではありますが、地域を限定し、さらには、道路閉塞を起こす可能性が高い木造住宅だけを対象としているため、対象地域の旧耐震基準の木造住宅約十一万戸のうち約二・二万戸しか対象になりません。旧耐震基準の木造住宅は都内全体で七十二万戸あり、そのわずか三%にしかならないわけです。
 私たちの試算では、これら七十二万戸すべてを無償で耐震診断を行って、さらに平均百六十二万円の耐震改修工事費に十五年間の無利子貸付を行っても、四千三百億円の公費負担が必要ということになります。四千三百億円の公費負担というと莫大に聞こえますけれども、都が現在行っている新築住宅への固定資産税、都市計画税の減免措置の影響は単年度で約二百二十億円であり、これを仮に十五年間続けていけば、影響額は三千三百億円になります。先ほどの四千三百億円と遜色ない数字になるわけであります。
 新築住宅に対するこのような減免制度との対比で見るならば、首都直下地震があすにも起きるかもしれない今、旧耐震基準の木造住宅の耐震診断、耐震改修について、対象の拡大など、もう一歩踏み込んだ対策が必要と考えますが、所見を伺います。
 
答弁1
 ▼都市整備局長
 まず、木造住宅の耐震診断・改修助成についてでございますが、住宅の耐震性の向上は、自助、共助、公助の原則を踏まえ、所有者によって行われることが基本でございます。しかしながら、建物の倒壊による道路閉塞を防止するなど、公共性が高い地域につきましては、より一層の耐震化の促進を図る必要があるため、耐震診断・改修に関する助成制度を創設することといたしました。
 今後は、区と協力して耐震診断・改修の実施を住民に働きかけ、制度の定着を図っていくことが重要であると考えます。こうしたことにより震災時の住宅の倒壊を防止するとともに、避難、救助活動等が速やかに行われるなど、地域の安全性が向上するものと考えております。
 

 
質問2
 倒壊した場合の道路閉塞等の危険性をいうなら、木造住宅以上に危険なのが、旧耐震基準のマンションではないでしょうか。
 都は、旧耐震基準で建てられた分譲マンションについて、十八年度から三年間で約五千五百棟、二十二万戸を対象として耐震診断補助の実施を決めました。都議会民主党が来年度予算要望の筆頭に挙げた項目であり、それが実現したことは評価をします。しかし、補助されるのが耐震診断だけで、耐震改修が対象となっていないのは残念です。マンションの耐震改修には、都独自の制度としては一%の利子補給しかありません。
 木造住宅の耐震性がとかく注目をされていますが、旧耐震基準で建てられた都内の鉄骨鉄筋コンクリートの住宅は九十二万戸に上り、都内の鉄骨鉄筋コンクリートの住宅全体の三六%を占めています。これらのうち、規模の大きいマンションが大地震で倒壊することは、木造密集地域と同じぐらい、いやそれ以上に大きな被害をもたらすことになるはずです。放置しておくわけにはいきません。
 旧耐震基準のマンションについても、耐震診断だけでなく、診断後の耐震改修等への支援が必要と考えますが、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼都市整備局長
 分譲マンションの耐震診断後の支援についてでございますが、改修や建てかえの検討が必要となった場合、管理組合には、資金の確保を初め改善手法の選択や合意形成など、さまざまな課題が発生いたします。都は、これまでもマンションの耐震改修などを行う管理組合に対して利子補給の支援を行うとともに、建てかえ改修アドバイザー制度などにより相談や情報提供を行ってまいりました。今回創設いたします耐震診断の助成制度の実施に当たりましては、これらの事業との一体的な運用を行うなど、十分な連携を図り、マンションの耐震化の促進に努めてまいります。
 
▲ページのトップへ
■違法建築物
 
質問1
 違法建築物問題についてです。
 姉歯建築士によるマンション、ホテルの構造計算書の偽造が発覚してから、早くも三カ月以上が経過しました。当面の対応策が一応は整えられつつある状況ですが、姉歯元建築士がかかわった物件や木村建設などの関係物件の調査はまだ終了しておらず、いわゆる姉歯物件以外でも偽装の疑いが出てきているなど、事件は今なお拡大しています。
 そうした中、被害者への対応、制度上の欠陥を放置してきた国への対応など、都が取り組むべき課題は山積をしています。現在、マンション建てかえに向けての協議が進められていますが、示されているプランでは部屋の面積が二割狭くなる、さらに二千万円の追加負担が必要など、建てかえの合意形成が可能であるとはとても考えられません。
 引き続き、都としても支援を継続する必要があると考えますが、マンション住民への支援に関する都のこれまでの対応と今後の方針について、知事の所見を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 居住者支援に関するこれまでの対応と今後の方針についてでありますが、今回の事件は、国の建築確認の制度や仕組みそのものに起因して発生したもので、国の責任は重大だと思います。しかし、こういう地震国でありまして、世界最大のファイアリングの上にある地勢的な条件からいっても、いつ地震が来てもおかしくない。そういう中で、人の命がてんびんにかかっているわけでありますから、都民住宅のあっせんを緊急に行うとともに、昨年十二月には移転費や家賃の補助などの支援策を発表し、現在では居住者の移転も進んでおります。
 そもそも今回の事件については、本来特別法を制定して対応すべきという考えには変わりありませんが、国において省令改正などがなされたことから、都としては建物の解体と建てかえの実施に向け、速やかに居住者の支援を進めてまいります。
 しかし、これは何も建築業務に限っても、マンション、アパートだけではなしに、調べましたが、幾つか自治事務に要するに突然転嫁されて、しかもその責任の所在が非常にわからない。同時に、自治事務としてそれを背負わされた自治体に決して専門性の高い有識者がいるわけでもないというような事態があちこちにございまして、私は、やはり今度のケースなども、国が資格づけした専門家の人間としての性善説というものを過剰に信じたためにこういう事件が起こったと思いますが、それが崩壊した現在、やはりそういう本質的な現況に応じて特別措置法というものが早急につくられることが必要だと思っております。
 

 
質問2
 国に対しては、建築基準法における制度上の欠陥があったことは明白であり、その責任を追及する必要があります。この件については、都議会も昨年の第四回定例会で全会一致で意見書を提出し、石原知事も記者会見で一貫して主張しています。
 現在、建築基準法の改正が検討されていますが、社会資本整備審議会の中間報告案について、都は関係自治体と共同で、特定行政庁と指定確認検査機関の役割と責任を明確にすべきという意見書を国に提出しています。
 今後、国に対してどのような対応あるいは働きかけを行っていくのか、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼都市整備局長
 建築確認制度改正の国への働きかけについてでございますが、これまで都は、国が設置した社会資本整備審議会の基本制度部会のメンバーの一員として、建築行政の現場に携わる立場から、確認検査制度全般にわたる徹底的な検証と見直しを国に強く要請してまいりました。その結果、信頼性の高い構造計算プログラムの開発、建築士制度の見直し、行政処分の一層の厳格化や罰則の強化など、都の主張が中間報告に盛り込まれたと考えております。
 しかしながら、特定行政庁が指定確認検査機関の審査に関与できないにもかかわらず、当該機関が行った確認について法的責任を問われかねないという不合理な仕組みについては何ら触れられておらず、根本的な問題は解決されておりません。このため、都が率先して埼玉県、千葉県、神奈川県、横浜市に呼びかけ、五都県市の知事及び市長の連名で建築基準法の見直しの要求書を国に提出いたしました。
 今後とも建築行政への都民の信頼を回復するため、都の要求が実現するよう国に強く働きかけてまいります。
 
▲ページのトップへ
■環境政策
 
質問1
 環境政策について伺います。
 地球温暖化の影響はとどまることを知らず、巨大なハリケーンや熱波など異常気象が世界各地で猛威を振るっています。日本においても、集中的な豪雨や積雪などが各地を襲い、今や、観測史上初めてという言葉さえ聞きなれたものとなってしまいました。
 このような中、都が発表した持続可能な東京の実現をめざす新戦略プログラムでは、これまでの施策のさらなる強化とともに、環境配慮が内在化された社会システムの構築に向けて多くの提案をしています。
 私たち都議会民主党も、かねてから、都市づくりや産業、教育、税制など、あらゆる分野で環境配慮を内部化、内在化していくべきだと主張してきましたが、新戦略プログラムにおいても、例えば、都市づくりにおける環境ルールの配慮化について検討する環境都市づくり調査会の設置や、税財政手法の活用などを検討する環境経済施策調査会の設置などが示されています。
 私は、こうした調査会での検討を進め、東京の活力を維持していくためにも、環境への配慮を積極的に経済や都市づくりのシステムの中に取り入れていく必要があると考えますが、石原知事の見解を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 経済活動や都市づくりに当たっての環境への配慮についてでありますが、効率性優先の経済成長と資源の多量消費社会システムを続けてきたことによりまして、人類は地球規模での環境の危機に直面していると思います。文明の便益を享受してきた東京においても、温暖化や緑の減少など、環境の危機によって都市としての存立の基盤が脅かされかねない事態を招いております。従来の価値観を転換し、環境への配慮の視点に立った経済政策や都市づくりを進めていくことによりまして、都民が人間として心地よく住み続けることのできる東京を実現していきたいものだと思っております。
 

 
質問2
 環境経済施策調査会では、緑関連税制の改正を検討するとしています。都はこれまでも国に対して、樹林地などにかかわる相続税の納税猶予制度の創設や屋上緑化など緑化施設に対する固定資産税の非課税化などを要望してきたところです。
 特に、樹林地については、保全地域内の土地売却のうち、相続を理由にしたものが、件数で六五・八%、面積にして七四・三%に上っており、相続税を納めるために都心の貴重な緑が失われていく現状が見てとれます。今日までに残された貴重な緑を将来に向けて残していくためには、少なくとも生産緑地並みの取り扱いが求められます。
 環境経済施策調査会においてどのような課題を検討し、どのように施策展開を行おうとしているのか、伺います。
 
答弁2
 ▼環境局長
 環境経済施策の検討についてでございます。
 持続可能な東京の実現のためには、金融や税財政手法を活用した環境施策を構築し、展開していくことが必要であります。このため、平成十八年度に設置を予定している環境経済施策調査会では、緑が減少する要因の一つとなっている相続税の問題や、グリーン購入等の環境に配慮した契約手法の活用など、幅広い検討を行ってまいります。これらの検討結果を踏まえ、国への提案要求の実施、企業、NPOなどとの連携強化などにより、新たな施策の実現を図ってまいります。
 

 
質問3
 環境配慮が内在化された社会システムは、行政の取り組みだけでなく、企業やNPOなど民間団体による自主的な取り組みとの連携、協働なくしては実現することはできません。
 このような認識のもと、都は、昨年一月に連携プロジェクトとして、金融や物流、キッズISO、再生可能エネルギーの導入やコンビニ等の省エネなど、多様なプロジェクトを打ち上げました。私たち都議会民主党も、これらのプロジェクトに対してさまざまな提案を行ってきたところであり、今後、より一層の取り組みの充実を求めるものです。
 これまでのプロジェクトの主な成果及び今後の取り組みについて見解を伺います。
 
答弁3
 ▼環境局長
 環境施策に関する民間団体などとの連携プロジェクトについてでございます。
 都はこれまで、交通量の削減を目指した都内百貨店での納品共同化の取り組み、気象キャスターが地球温暖化問題を教える出前授業の実施、気候変動をテーマにした写真展などのイベント開催など、さまざまな連携プロジェクトを展開してまいりました。
 今後、再生可能エネルギーの導入拡大や、緑の保全と再生などの課題も含め、多くの企業、NPOなどの参加を得て、連携プロジェクトの一層の拡大を図ってまいります。
 

 
質問4
 企業やNPOなどの環境配慮行動を積極的に促していく上で、経済活動の血液ともいえる金融が果たすべき役割は重要です。地球温暖化などによる異常気象の発生は、金融機関においても投資に伴う重大なリスクとして認識されつつあり、このため金融機関には、環境配慮という視点が大きく浸透しつつあります。
 このような中、都は環境金融プロジェクトを新たに開始し、金融機関に対して環境に配慮した企業の取り組みを支援する金融商品の開発を求めるなどしています。既に一定の成果を上げつつあるようですが、経済全体における金融が果たす役割からすれば、これを大きく育てていくことが必要です。
 私は、他の自治体との連携を図ることや、金融機関の環境配慮行動をさらに促す仕組みづくりの検討などを通じて、環境金融プロジェクトの取り組みをさらに拡大すべきであると考えますが、所見を伺います。
 
答弁4
 ▼環境局長
 環境金融プロジェクトについてでございます。
 これまで、都の呼びかけにこたえ、地球温暖化対策に積極的な企業への優遇金利の適用など、さまざまな環境金融商品の開発が進んでまいりました。本年二月には、こうした動きに呼応して、先進的な金融機関の取り組みや国際的な動きを紹介するシンポジウムを開催したところでございます。
 昨年末、全国の道府県、政令市を対象として都が実施した調査では、約八割の自治体が金融機関と連携した環境施策の展開に何らかの関心を示しております。今後、これらの自治体に呼びかけるなど、環境金融プロジェクトの拡大を図ってまいります。
 
▲ページのトップへ
■廃棄物対策
 
質問1
 廃棄物対策について伺います。
 今月九日、東京都廃棄物審議会は、廃棄物処理計画の改定について中間のまとめを発表しました。中間のまとめでは、来年度からスタートする新たな東京都廃棄物処理計画でも、循環型社会への変革という基本理念を引き続き掲げ、リデュース――発生抑制、リユース――再使用、そしてリサイクルという、いわゆる三つのRを推進していくべきであるとしています。
 また、計画の目標値として、ごみの最終処分量を平成二十二年度には平成十二年度の半分とするとしていますが、私は、単に最終処分量を減らせばよしとするのではなく、循環型社会の基本原則を踏まえながら、先ほど申し上げた三つのRを推進していくことが重要ではないかと考えます。
 都は、循環型社会への変革に向けてどのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 
答弁1
 ▼環境局長
 循環型社会への変革に向けた取り組みについてでございます。
 持続可能な社会を実現していくためには、都が、都民、NPO、事業者など、さまざまな主体と連携して廃棄物の発生抑制、リサイクルと適正処理に先導的に取り組み、全国に発信していくことが重要と考えております。このため、今回の東京都廃棄物審議会からのご提言などを踏まえ、廃棄物の発生抑制、リサイクルの促進、有害廃棄物などの環境リスクの軽減、廃棄物処理・リサイクルビジネスの健全な発展の三つを柱に据え、循環型社会への変革を積極的に推進してまいります。
 

 
質問2
 廃棄物の中でも、プラスチック廃棄物については、一般廃棄物も産業廃棄物もともに埋立処分される率が高くなっています。
 私たち都議会民主党が、平成十六年十二月の代表質問でも、一般廃棄物の廃プラについて焼却処分を進める、いわゆるサーマルリサイクルの導入を求め、今回の中間のまとめでも、サーマルリサイクルを進めていくべきだとしています。
 多摩地域では、既に廃プラのサーマルリサイクルを行っている自治体があります。また二十三区においても、昨年十月の特別区長会の決定を受け、平成二十年度には廃プラのサーマルリサイクルを本格実施する計画を発表しております。
 プラスチックは化石燃料の塊です。それをそのまま埋立処分することは、環境面から見ても、資源の有効利用の観点からも望ましくありません。サーマルリサイクルに関しては不安を感じる都民がいるものと思われますが、私は、都として正しい情報を提供し、都民の不安の解消に取り組むなど、サーマルリサイクルの積極的推進をしていくべきと考えますが、見解を伺います。
 
答弁2
 ▼環境局長
 プラスチック廃棄物のサーマルリサイクルについてでございます。
 サーマルリサイクルの導入に当たっては、都民の信頼にこたえるため、環境保全対策などに関するコミュニケーションが不可欠であります。このため、都は、廃棄物処理施設を持つ区市町村に対し、環境負荷の低減の取り組みなどをまとめた環境報告書を作成し、都民に向けて情報をわかりやすく発信するよう働きかけているところでございます。
 今後とも、区市町村との連携を密にして、サーマルリサイクルの有効性や処理施設の安全性に関する正確な情報の提供などに努め、サーマルリサイクルの推進を支援してまいります。
 
▲ページのトップへ
■新銀行東京
 
質問1
 新銀行東京について伺います。
 中小企業への貸し渋りが横行する中、石原知事の肝いりによってスタートした新銀行東京は、既に開業から十一カ月、本格開業から半年が経過をしました。
 石原知事も、年末十二月二十二日の定例会見において、思ったようにうまくはいっていないとして、決して今の段階で満足はしていないと述べられました。その後、一月三十一日に発表された平成十七年十二月末の実績でも、融資保証残高は八百八十九億円と、今年度の計画二千五百八十億円の三四%にとどまっています。しかも、二千五百八十億円という計画の数字は、昨年八月に大手銀行が中小企業向けの融資を拡大し始めたなどとして下方修正した目標なのです。その三四%しか達成できていないという実情があるわけです。
 金融検査マニュアルの改訂に伴う大手銀行の中小向けの融資の拡大は、議会でもさんざん議論をされましたし、都としてもこうした事態は想定外ではなかったはずです。一方で、都は、ポートフォリオは順調で、資金繰りに苦しむ多くの中小企業への資金供給が着実になされるなど前向きな評価をしていますが、現状を冷静に見詰める必要があるのではないでしょうか。
 新銀行東京は開業してまだ間もないところではありますが、現時点における石原知事の評価について伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 新銀行東京の評価についてでありますが、決して逃げ口上で申すわけではありませんけれども、とにかくこの七月につまり本格開業したわけでありまして、最初この設立を思い立ったころと違って、金融の市場の状況もかなり変わってまいりました。そういうことで、思惑どおりの実績を上げるに至っておりませんけれども、しかし私はやはり、今後どういう形で金融事情がまた変転するかもわかりませんが、これはやはり東京においてたくさんありながら、しかも有能な技術を有しながら優遇されなかった中小企業が、また再び冷遇される時期が来ないとも限らない。そういうことのためにも、非常に限られた目的というものをまず第一義にかざして発足した銀行の存在は、将来も必ず必要だと思いますし、そういう点で知恵を出し合って、この銀行を盛り立てていきたいと思っております。
 既存金融機関が不良債権の処理に追われて、貸し渋り、貸しはがしが横行する中で、苦境に立たされている中小企業の資金需要にこたえるため新銀行東京を設立したわけでありますが、ポートフォリオ型融資を定着させるなど、中小企業の融資のあり方を少しは変えてきたと思います。
 一方で、その後、メガバンクなどの既存の金融機関が、これはあくまで国民の税金の真水を投入されることで財務内容を改善したことになって、今度は手のひらを返すように中小企業融資に積極的に取り組み始めたことになったわけです。これは歓迎すべきことでありますけれども、さらに金融機関相互の競争が激化したわけであります。
 新銀行東京は、開業当初からこうした厳しい環境にさらされたわけでありますが、今後とも中小企業のニーズにかなった新商品の開発やサービスを積極的に開発するなど、中小企業のために存在感のある銀行として発展していくことを期待しておりますし、また、その努力をいたします。
 

 
質問2
 新銀行東京は、一千億円もの都民の税金を投入して設立されました。このことを踏まえるならば、技術力や将来性にすぐれた中小企業を総合的に支援するという本来の目的を追求し、出資に見合うだけの成果が得られなければなりません。新銀行東京の資本調達については、都の一千億円に加えて、企業などから当初五百億円、将来は一千億円を集めるとしていましたが、企業の反応は決して芳しくはないようです。
 新銀行東京の資本調達について、現在まで何社、何億円の参加があるのか、また、今後の見通しについて見解を伺います。
 
答弁2
 ▼産業労働局長
 新銀行東京の資本調達についてでございます。
 新銀行東京では、業務開始後、業容の拡大にも留意しながら増資を行ってきておりまして、現在、普通株式による民間からの出資は三十七社、百八十七億円となっております。また、中期経営目標に基づきまして、平成十九年度に一三%を超える高い自己資本比率を目指すこととしており、今後とも経営の安全性・安定性を確保するため、市場の活用も含め、適切な資金調達を進めていくと聞いております。
 

 
質問3
 新銀行東京は、低コスト体質を追求するために、ATMやコールセンター、インターネットなどを最大限活用していくとしていました。中でもATMは重要なキャッシュポイントと位置づけられ、自行ATM二百台が、一日の利用が百二十件以上見込まれる都営交通の駅などを中心に設置される予定です。
 しかし、ATMの利用は極めて少ないのが実情のようです。私も大江戸線で都議会まで通っていますが、ATMが使われているのを見たことがないと思ったので、ちょっと調べてみました。新宿三丁目駅において、お昼と夕方に二時間ずつ、計四時間調査をしてみましたが、新銀行のATMを利用したのは、お昼に一人、夕方に八人の計九人でした。同じ駅にある新生銀行のATMは六十四人の利用がありましたから、新銀行のATMがいかに利用されていないかがわかる数字だと思います。
 さらに、新銀行のATMを利用した九人にインタビューをしてみたところ、都市銀行のカードを使いたかったのだが使えなかったという人が六人、残り三人は郵貯のカードを使ったということで、新銀行のATMとしては全く意味をなしていないように思われます。
 新銀行のATMは、都営地下鉄のほとんどの駅で見ることができます。その設置やシステム構築には多大なコストがかかっていると思いますが、どれだけの投資をし、どれだけの利用があるのか、現状を伺います。
 
答弁3
 ▼産業労働局長
 新銀行東京のATM設置コスト等についてでございます。
 金融機関におきましては、ATMに係る設置費用や利用状況等は、他の金融機関との競争条件にかかわる事項であり、一般的には公開されておりません。新銀行東京におきましても、同様の理由で公にしていないと聞いております。
 

 
質問4
 新銀行のATMがこれだけ利用されていないのは、そもそも新銀行東京が全銀協、全国銀行協会への入会を認められておらず、そのために、全国の金融機関の大部分のATMを利用して現金の引き出し、残高照会などができるBANCSネットワークに接続できていないことが挙げられます。この問題も、既に新銀行設立前から都議会でさんざん指摘をされており、会社に申し伝えるというだけでは解決できません。
 新銀行東京が、都市銀行などとのネットワークに参加していくために、都としてどのように取り組んでいくのか、見解を伺います。
 
答弁4
 ▼産業労働局長
 新銀行東京の都市銀行などのネットワークへの参加の取り組みについてでございます。
 新銀行東京では、セブン銀行や郵便局、JRビューアルッテのATMとの接続に加え、本年一月から全国二百九十二の信用金庫のうち二百六の信用金庫と提携してネットワーク接続を行い、ATMの相互利用が可能となっております。今後も、顧客の利便性のさらなる向上のため、引き続き都市銀行を初めとする他の金融機関との提携を進めていくこととしていると聞いております。
 
▲ページのトップへ
■雇用対策
 
質問1
  雇用対策について伺います。
 石原知事は、一月十八日の定例会見の中で、ニートについて、親が甘やかしてサボっているのがほとんどだ、そんな者はけ飛ばして家から出して働かせたらいい、ニートなんてふざけたやつがほとんどだと放言をしています。
 そういう人も中にはいるかもしれません。しかし、ニートには、意欲がないわけではなく、漠然とした意欲を持ちつつも一歩踏み出せない人たちも多いのです。バブル崩壊後の不況の中で、就職の面接で何回も落ちたり、希望した職業につけないことによってうまくいかない自分を過度に責め、その結果、ニートになってしまう人もいます。そして、その後も、働かなくてはならないと考えながらも、それができない自分を責め続けているのです。
 小中学生の職業観を育成することはもちろんのこと、既にニートになってしまった人たちに対しても、身近にいる親や地域の人たちと連携しながら、彼らが社会とつながりを持ち、また自信を深め、そして社会に貢献できる一員となるよう社会全体で解決していくことが求められていると考えますが、ニートに対する認識とその対策の基本的方向性について、石原知事の見解を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 ニートに対する認識とその対策の基本的方向についてでありますが、次代を担うべき若者が学校にも通わず働いてもいないということは、本人はもちろん、社会全体にとって大きな損失になっております。しかし、こんなことは発展途上国にあり得るんでしょうか。そういう点では、非常に豊穣な日本という国家社会の中での、私はやはり甘えの一つの露呈がこういう形で出ているんじゃないかと思うんです。落ち込んでいる、落ち込んでいるといわれますけれども、落ち込む暇もない、余裕もない人たちがたくさんほかの国にはいるわけでありまして、これはやはり落ち込む、落ち込むといったって、それは個人の精神状況の問題でしょう。それで周りに保護者もいて、それが学校にも通わず働きもせず、とにかくのうのうとして暮らして生きていけるということは、ありがたいといえばありがたいことですが、しかし、同時に、私はばかばかしいことだと思います。
 これは、このごろやはり求人倍率が好転してきまして、日本全体が手不足になっているんですよ。働こうと思ったら職場は縦横にありますよ。じゃ、何で働かないんですか。これは、周りからやはりその手だてを講じる必要があるかもしらぬけれども、やはりこれは当人の自覚、それから保護者の自覚だと思いますね。都としても、子どもたちの社会性や職業観の育成に取り組んでまいりますし、また、若者の就業や自立に関して、都としてもさまざまな支援を行っていきますが、これはやはり何といっても当人の自覚、それから、その保護者のやはり自覚の問題ではないかと私は思います。
 

 
質問2
 また、こうした若者は、求職活動に希望を持てず、働くきっかけを失っており、一人一人の状況に応じたきめ細やかな支援が必要です。都は、しごとセンターヤングコーナーにおいて若年者に対する就業支援を行っていますが、地域では、NPOなどの民間団体が、若者と同じ目線に立って、時間をかけてじっくりと若年者の就労に取り組んでいます。
 例えば立川市では、ニートを支援しているNPO「育て上げ」ネットと立川市高松町商店街が協力して、ニートの自信を取り戻すために、ボランティア活動を通じて、商店街から頻繁に感謝の言葉を受けることで、落ち込んでいるニートが社会とのきずなを実感し、自信を深め、やがては職場への復帰を果たしていくという活動を行っております。
 都は、このような活動を行うNPO等の民間団体の活動を支援し、また連携をし、官民の力を合わせて若者を支援していくべきと考えますが、見解を伺います。
 
答弁2
 ▼産業労働局長
 NPO等の民間団体を活用した若年者就業支援についてでございます。
 若年者の就業支援におきましては、独自の取り組みにより成果を上げている民間団体との連携が効果的であると認識しております。十八年度には、若年者が主体となって支援活動を行っているNPO等から提案を募集し、効果的な事業に対して補助を行う、若者による若者就業支援プロジェクトを実施いたします。こうした事業等を通じまして、関係者の力を合わせて若年者の就業を推進してまいります。
 

 
質問3
 若年者の就業を促進するためには、職業能力の向上も効果的です。昨年十二月の雇用・就業対策審議会の答申で示された施策として、今定例会には、都立技術専門校の授業料の一部有料化が提案されていますが、それよりも、同じ答申で打ち出された、子育て後の再就職支援や団塊の世代の人材活用制度の構築などについて、より積極的な事業展開が求められていると思います。
 特に、公共職業訓練は、雇用対策におけるセーフティーネットとしての機能が重要であるとの認識のもと、若年者にかかわる具体的な施策を提案しており、私も、フリーターなどの若年者を支援するための職業訓練の役割は重要であると考えます。セーフティーネットとしての若年者向け訓練の充実について見解を伺います。
 
答弁3
 ▼産業労働局長
 セーフティーネットとしての若年者向け訓練の充実についてでございます。
 就業困難な若年者の早期就職を支援するためには、若年者の特性を踏まえた方式による職業訓練の導入が効果的であります。このため、就業経験が乏しい若年者を対象に、施設内訓練と企業内実施を組み合わせたデュアル訓練を昨年から開始したところであります。
 今後は、常用雇用を目指すフリーターを支援するため、カリキュラムの選択を可能とした単位制の夜間パソコン訓練を開始するなど、若年者訓練の充実を図ってまいります。
 

 
質問4
 いわゆる非正規労働者の問題について伺います。
 現在、パート、アルバイト、派遣労働、業務請負といったいわゆる非正規労働者、非典型労働者ともいいますが、これは全雇用者の約三分の一を占めるまでになっています。しかし、こうした非正規労働者の多くが、雇用が不安定、長期的な生活設計ができないなど、雇用環境面での不安を抱えています。
 労働相談情報センターには、パート、派遣、契約社員などからの相談も多いと聞いていますが、その中には、正社員と同じ仕事をしているのに待遇に大きな開きがあるとか、また、要件を満たしていても社会保険や雇用保険の適用がなされないなど、法令遵守がなされていない企業も見られるようです。
 いうまでもないことですが、正社員であろうが非正規労働者であろうが、同一労働同一賃金同一待遇が本来の原則であるはずです。今後、労働力不足が進む中で、非正規労働者にとっても働きやすい環境を整備し、労働力人口全体として就業率を高めることが必要であり、まずもって、雇用者である企業に法令を遵守させるとともに、各企業において非正規労働者の処遇改善を図ることが重要であると考えますが、雇用環境の整備に向けた都の取り組みについて見解を伺います。
 
答弁4
 ▼産業労働局長
 いわゆる非正規労働者の雇用環境の整備についてでございます。
 都は、これまでも、労働セミナー、普及啓発資料の作成など、さまざまな機会をとらえ、事業主に対して、労働関係法令の遵守はもとより、労働条件の改善向上を働きかけてまいりました。
 今後は、こうした取り組みに加えまして、中小企業に専門家を派遣して、雇用管理についてきめ細かな支援を行うなど、非正規労働者の処遇改善を図ってまいります。
 

 
質問5
 企業における取り組みを促進させるためには、企業に対するインセンティブの付与が不可欠であると考えますが、見解を伺います。
 
答弁5
 ▼産業労働局長
 企業に対するインセンティブの付与についてでございます。
 非正規労働者の処遇を改善するためには、就業規則の整備など、企業の主体的な取り組みを促すことが重要であります。このため、正規労働者と均衡のとれた人事給与制度の導入や、能力開発の機会付与など、一定水準以上の処遇の改善に取り組む中小企業につきましては、都の制度融資のチャレンジ支援で最も低利な金利が利用できることとするほか、モデル企業として広く紹介するなど、非正規労働者の処遇改善に向けた企業の取り組みを促進してまいります。
 
▲ページのトップへ
■臨海地域
 
質問1
 臨海地域のまちづくりについて伺います。
 都は、平成十三年二月に、臨海地域のまちづくりに関して、東京ベイエリア21を策定しています。しかし、その後、臨海地域を取り巻く状況は大きく変わり、平成十四年三月の都市再生特別措置法の制定を初め、最近では、二〇一六年の東京オリンピック招致と相まって、築地市場跡地や晴海ふ頭、あるいは有明地域での土地活用がマスコミをにぎわしています。また、総合物流ビジョンに基づく基盤整備や水辺空間を活用した観光まちづくり、あるいは都市開発での環境配慮への要請は当時よりさらに高まっています。
 現在進められている臨海地域での開発は、どこを見ても同じような姿をしており、地域の個性や機能に応じた特色のあるものになってはおりません。そもそも五年前に策定されたベイエリア21が総花的ともいわれ、三会計統合の方便であったともいわれています。
 私は、物流や環境など今日的な課題を踏まえて、改めて臨海地域の戦略的なビジョンを示すべきと考えますが、見解を伺います。
 
答弁1
 ▼都市整備局長
 臨海地域の戦略的なビジョンについてでございますが、平成十三年に策定いたしました東京ベイエリア21は、おおむね二十年から二十五年後を目標年次として、東京臨海地域の役割や目指すべき方向性を示したものでございます。都は、有明地区における広域防災拠点、晴海地区における親水護岸の整備と一体となったまちづくり、豊洲地区でのドック跡を生かした商業施設の整備など、本指針に基づいたまちづくりを進めております。今後とも社会状況の変化を踏まえながら適切に対応してまいります。
 

 
質問2
 臨海地域、とりわけ臨海副都心開発は、都が主体的に取り組んできたことでもあり、私たち議会としても、引き続きそのあり方をチェックする必要があります。
 臨海副都心開発は、四つの段階的な開発を行うことになっており、平成十八年度から二十七年度は第三期と位置づけられております。石原知事も、施政方針で、平成二十七年のまちづくりの完成を目指していくと述べられましたが、私は、このような開発の節目において、改めて財政見通しを明らかにすべきと考えます。
 平成九年三月に策定された臨海副都心まちづくり推進計画でも、おおむね五年ごとに開発の内容を見直すとともに財政見通しを作成するとしており、これらについては、当然、新たなものが策定されると思います。臨海副都心開発の今後の財政見通しについては、さきの包括外部監査報告でも決算書の内容がわかりにくいと指摘されており、私は、臨海副都心開発の新たな節目を迎えるに当たり、都民にもわかりやすい形で新たな財政見通しを早急に明らかにすべきと考えますが、見解を伺います。
 また、東京テレポートセンターを初めとする臨海三セクについては、都議会民主党は、昨年の第三回定例会においても主張しましたが、法的整理、民間事業者への売却を含めた抜本的見直しをこの場で改めて求めておきます。
 
答弁2
 ▼港湾局長
 臨海副都心開発の新たな財政見通しについてでございますが、昨年十月、有明北地区の埋め立てが竣工し、臨海副都心も総計画面積である四百四十二ヘクタールになりました。
 来年度は、総仕上げの十年の初年度に当たることから、この節目の時期に、開発を着実に進めるため、財政基盤強化に向けたさらなる取り組みを行うことにいたしました。
 具体的には、主に次の三点に取り組んでまいります。第一に、内部留保資金を活用し、都債残高の早期圧縮を図り、二百十億円の金利負担の軽減を図ります。第二に、価格競争の導入、処分地の区画の弾力化など、土地処分方策の大幅な変革に取り組んでまいります。第三に、道路等の基盤整備費のさらなる圧縮を進め、約四百億円の収支改善を図ってまいります。
 これにより、今後の五年間で都債残高の七割が償還できるなど、財政に一定の見通しがつくものと考えており、こうした取り組みについて、都民に対してもわかりやすい形で明らかにしてまいります。
 

 
質問3
 新木場地域のまちづくりについて伺います。
 新木場は臨海副都心の東に位置し、貯木場など二つの大きな内水面を囲んでいることから、水辺に親しめるまちづくりを進める上で格好のロケーションとなっています。また、JR京葉線や有楽町線、臨海高速鉄道など交通の利便性もよく、開発のポテンシャルが高い地域です。さらに、二〇一〇年度に完成が見込まれる東京港臨海道路によって交通量の増大が見込まれ、同時に、国道三五七号線との交差部分の立体化など、道路交通を初めとするまちの姿が大きく変容しようとしています。
 都はこれまでも、有明北地区や豊洲一―三丁目地区など、大規模な土地利用転換が見込まれる地域においてまちづくり方針を策定してきたところですが、私は、このような土地利用の転換が見込まれる新木場地域においても、良好なまちづくりを誘導する観点から、都として積極的にまちづくり方針を策定すべきと考えます。新木場のまちづくり方針の策定について、都の見解を伺います。
 
答弁3
 ▼港湾局長
 新木場地域のまちづくりについてのお尋ねでございますが、本地域は、平成十一年に策定した地区計画において、都心への近接性や臨海部の立地特性を生かし、木材関連を初めとする生産・流通機能と商業・業務機能などが共存できる複合地域の形成を目指すこととしております。このため、これまで用途地域や臨港地区を変更することにより、目指すべき土地利用を誘導する条件整備を行ってきたところでございます。
 今後のまちづくりにつきましては、地元の開発動向を勘案しながら、区とも連携して対応を検討してまいります。
 
▲ページのトップへ
■築地市場移転
 
質問1
 築地市場の移転について伺います。
 二月十七日、築地市場移転に断固反対する会の総会が開かれ、会の名称を新しい築地をつくる会に変更するとともに、今後は、市場跡地の利用などについて都と協議していくことを決めました。今後、跡地利用の計画で中央区と都の協議が進んでいくことと思われますが、既に一昨年十二月には、中央区から鮮魚マーケットの設置などを記載した築地市場地区の活気とにぎわいビジョンが公表されています。二〇一二年の豊洲新市場への移転に伴い、仮に鮮魚マーケットなどが整備されることになっても、二〇一六年の東京オリンピックにかかわる石原知事の発言などもあり、跡地利用がいつになるのか、関係者の不安はぬぐえません。
 今後は、築地地域のまちづくりは、都がイニシアチブを持って進めることになると思われますが、地元区の意見なども十分考慮していく必要があると思います。特に中央区が計画している鮮魚マーケットについては、市場のこれまでの鮮魚の取り扱いのノウハウを生かした支援が可能なのではないでしょうか。見解を伺います。
 
答弁1
 ▼中央卸売市場長
 築地市場の跡地を利用したビジョンについてでありますが、平成十六年に中央区が公表した築地市場地区の活気とにぎわいビジョンの中には、ご指摘の鮮魚マーケットの構想が示されておりますが、その具体的な内容については、今後検討していくと聞いております。
 鮮魚マーケットの構想については、築地市場移転後の道路などの基盤整備や跡地利用方策などとの整合性を踏まえるとともに、卸売市場のノウハウが生かせるものに関しては協力していくなど、適切に対応をしてまいります。
 

 
質問2
 二〇一二年の豊洲新市場の移転が一層現実的なものとなる中、長年築地市場で営業してきた市場業者にとって、ただでさえ厳しい経営状況のもとで、移転に伴う経済的、また精神的な負担ははかり知れないものがあります。卸や仲卸などの業界団体は、みんなで一緒に豊洲に行けるかどうかを非常に心配しています。豊洲新市場への移転が零細市場業者の大量廃業の引き金を引くようでは、移転計画への理解も得られません。豊洲新市場への移転に伴う市場業者へのさまざまな負担に対して、都としても積極的な支援を講じていくべきだと考えますが、見解を伺います。
 
答弁2
 ▼中央卸売市場長
 築地市場の移転に伴う市場業者への支援についてであります。
 長年築地市場で営業している市場業者の方々が、豊洲新市場で事業を安定した経営のもとで発展的に展開していくためには、経営基盤の強化が重要でございます。このため、財務体質の強化とともに、収益力の向上が図れる事業などに早期に取り組んでいくことが必要であります。
 都としても、これまで公認会計士による特別指導や消費者ニーズにこたえる新たな取り組みへの支援など、さまざまな経営基盤強化のための対策を講じてまいりました。
 今後とも、新市場への移転に向けた市場業者の自主的な経営努力に対して、きめ細かな支援をしてまいります。
 
▲ページのトップへ
■福祉・健康都市東京ビジョン
 
質問1
 福祉・健康都市東京ビジョンについて伺います。
 今月六日、都は、今後の福祉施策及び保健医療施策を展開する上での基本指針として、福祉・健康都市東京ビジョンを発表しました。ビジョンにおいては、都はみずからの役割をニーズとサービスの調和を図っていくシステム全体の調整者とし、区市町村の主体的な施策展開を支援していくこととしています。このことは、分権の観点からも評価できます。
 高齢化・人口減少社会の時代に入り、行政がすべてをする建前は成り立たない、この厳しい現実を直視した的確な施策を構築していかなければなりません。そのためには、真に必要なサービスは何か、どのように提供するかを地域主体でつくり上げていかなければなりません。そこで、地域を主体とした施策展開という観点から、分野ごとの取り組みについて伺います。
 人口減少社会に入ったと報じられ、次世代育成支援の重要性が一層注目をされています。中でも待機児童は大きな問題です。東京の待機児童数は、十七年十月現在で約一万人ですが、役所が決めた基準に当てはまらない潜在的な待機児童数ははかり知れません。また、保育所ニーズを持つ人たち以外にも、子育ての悩みを抱えている若い母親がたくさんいるなど、ほとんどの子育て家庭が何らかのニーズを抱えているといっていいでしょう。同じ都民でありながら、何のサービスも受けられず孤軍奮闘中の親が圧倒的に多いのに、そこには手を差し伸べていない、これが現実です。この現状こそ変えていかなければなりません。
 家族形態や就業形態により必要なサービスはさまざまであり、また、区市町村によっても特徴があって、必要な施策は必ずしも同じではありません。ですから、都が一律に事業を決めて行うよりも、住民に近い区市町村が施策を構築することが必要なのです。現にサービスを利用している人だけでなく、いまだ顕在化していないニーズを持つ人々も含めて、さまざまな声を聞きながら合理的な施策のあり方を検討し、つくり上げていかなければなりません。
 私たちは、今回の子育て関係の交付金制度、包括補助制度は、こうした地域主体の流れをつくるものと考えます。この新たな制度により、今後、区市町村がどのような施策展開を行っていくことを期待しているのか、伺います。
 
答弁1
 ▼福祉保健局長
 新たな子育て支援策についてでございます。
 地域の子育て環境を整備するためには、区市町村がそれぞれの地域の実情に応じまして主体的な取り組みを行っていくことが重要と考えております。
 しかしながら、現行の子育て支援に関する都の補助制度は、大半が認可保育所を対象としていることや、その使途や補助条件が細かく限定されていることから、区市町村に裁量の余地が少なく、また創意工夫を促す仕組みになっていない面がございます。
 新たな制度では、子育て支援の主体である区市町村が地域のニーズを敏感にとらえ、柔軟な対応を行うことが可能となり、すべての子育て家庭を対象とした効果的、効率的な施策展開につながるものと考えております。
 

 
質問2
 高齢者施策にかかわる地域密着型サービスについて伺います。
 昨年六月に介護保険法が改正され、四月から本格的に施行されます。改正では、地域サービス基盤の充実を図るため、新たに地域密着型サービスが創設をされました。要介護高齢者の地域の生活を二十四時間体制で支えるという観点から、小規模多機能型居宅介護や地域夜間訪問介護などのサービスが介護保険の対象となりました。こうした地域密着型サービスでは、事業者指定などの権限が都道府県から区市町村に移譲されるなど、区市町村の役割が強化されたことから、地域における利用者の状況を踏まえたサービスの実現が期待をされています。
 今後一層の高齢化の進展が見込まれる中、区市町村は地域特性を踏まえてサービス基盤の整備を進めることが必要になってきます。しかし、地価が高い東京では、全国一律の介護保険制度の枠組みでは、新たなサービス基盤の整備は困難です。高齢者の地域生活を支える地域密着型サービスを軌道に乗せるには、都の支援も必要だと思います。都としても、区市町村を積極的に支援をし、地域で必要なサービスを利用できるよう基盤の整備を促進すべきと考えますが、見解を伺います。
 
答弁2
 ▼福祉保健局長
 介護サービス基盤の整備についてですが、高齢者の地域での生活を支えていくためには、通所サービスを中心に、利用者の希望による泊まりや自宅への訪問の機能を有する新たな小規模多機能型サービス拠点など、地域に密着したサービス基盤の整備を促進することが重要です。
 このため、都は、来年度、地域密着型サービス等重点整備事業を創設いたしまして、区市町村に対して、国の交付金に加え、大都市特性を踏まえた独自の補助を行うとともに、不足するショートステイの整備促進を図るため、小規模な特別養護老人ホームに併設する場合についても補助対象といたします。これらにより、地域の実情に応じた介護サービス基盤の一層の整備促進に取り組んでまいります。
 

 
質問3
 障害者施策に係る地域生活の推進について伺います。
 昨年十月、障害者自立支援法が成立し、ことし四月から一部施行されますが、地域生活基盤の整備はまだ途についたばかりですし、特に、一・四〇%と東京が全国四十五位である障害者の実雇用率は放置できない問題です。
 都は、一月に障害者地域生活支援・就労促進三カ年プランを発表し、障害者の地域での自立生活を支援する姿勢を示しました。これに基づき、今後、グループホームなど地域居住の場の整備に取り組んでいくとしていますが、障害者が住まいから出かけて、さまざまな活動をするための場を整備することも重要です。
 そうした場の整備には、親の会など、何の制度もなかった時代から、地域の人々がみずから運営してきた作業所を初めとした地域の力を活用しながら促進していくことが重要です。身体、知的、精神の種別にかかわらず、障害を持つ方々が地域の一員として暮らし、活動することができるよう、新たな三カ年プランにおいて、今後都がどのように取り組んでいくのか伺います。
 
答弁3
 ▼福祉保健局長
 障害者地域生活支援・就労促進三カ年プランによる今後の取り組みについてですが、障害者が地域で自立した生活を送るためには、グループホームなどの居住の場とともに、日中の活動の場の充実や就労支援を促進することが重要であり、プランでは、平成十八年度から二十年度までの三年間で、通所施設などの日中の活動の場、千六百人分を含めた地域生活を支えるサービス基盤を整備するとともに、地域で障害者の福祉的就労を支えている小規模作業所等の経営安定化を図るための法内施設への移行など、障害者の就労支援にも取り組むこととしております。
 今後、区市町村や運営事業者に対するさまざまな働きかけを行いまして、プランの達成に全力で取り組み、障害者の福祉の増進に努めてまいります。
 

 
質問4
 ビジョンでは、各分野の施策展開とあわせて、民間にできることは民間にゆだねるとの基本的考え方のもと、都立施設改革をさらに加速していく方針を盛り込んでいます。限られた資源を有効活用し、福祉・保健サービスをより効率的、効果的に提供していくためには、これまでの行政中心のサービス提供の手法を改め、民間の力を活用するとの方針は利にかなっています。しかしながら、無条件に民間にゆだねることになれば、行き過ぎた競争によるサービスの悪化や、あってはならないことですが、不正行為の危険性も出てくるわけです。
 今後、都は、レフェリー役として事業者に対する指導監視体制の強化を進めるとうたっておりますが、この部分をおろそかにしては、真の意味での都民の安心は築けません。福祉、保健、医療の分野において民間の力を今以上に活用するためには、指導監督などのサービスの適正化や不正防止に強力に取り組むことが不可欠と考えますが、所見を伺います。
 
答弁4
 ▼福祉保健局長
 サービスの適正化や不正の防止についてでございますが、福祉、保健、医療分野におきまして、民間によるサービス提供が増加する中、都民の安心を確保するためには、法令等を遵守した適正なサービス提供が行われることが不可欠でございます。
 今後、事業者を指導監督するレフェリー役としての都の役割はますます重要になっていくと認識しており、サービス提供者へのルールの徹底を図っていくこととしております。
 このため、サービス評価結果を活用した指導検査の重点化、区市町村と連携した不正防止対策の実施、検査結果の公表など、事業者に対する指導監視を強化することとしたところでございます。
 これらの取り組みにより、行政としての責任を果たすとともに、民間、地域の力を最大限に活用し、東京における福祉、保健、医療サービスの一層の充実を図ってまいります。
 
▲ページのトップへ
■文化政策
 
質問1
 文化施策について伺います。
 都は、今月十六日に東京都文化振興指針の素案を発表しました。素案では、世界が文化的魅力を感じる都市、都民が文化的豊かさを誇れる都市、文化創造の基盤が充実する都市の三つの基本目標を掲げています。
 ところで、石原知事は、行政が感覚をいじくることはできっこない、行政の責任は、芸術家の創造の場や発信のチャンスを広げていくことであるとたびたび述べています。これは一つの明確なコンセプトであり、既にワンダーウォールなどで実現をされています。都は、さらに各国の若手芸術家に交流の場を提供する、仮称アートヴィレッジIN東京の整備を明らかにしているところであります。しかし、都は、都立の美術館、博物館六館を擁し、年間五百万人がそれを利用しています。その役割には、若手の活躍の場というだけでは語り切れない部分も相当あると思います。文化振興指針の策定に先立ち、東京の芸術文化振興における都の役割について、改めて石原知事の基本的考え方を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 芸術文化振興における都の役割についてでありますけれども、都の役割は、新しい創造的な文化を生み出し、発信するための環境を整備し、都の魅力と都市のイメージを高めることであります。都民が東京の文化に触れ、誇りにできるよう、区市町村や民間とも連携し、江戸開府以来四百年の歴史と文化を次代に継承し、発展させていくことも重要であります。
 同時に、新しい芸術の可能性というものを、要するに大きく開花させる手だても必要だと思います。
 そういう点で、先ほど申しましたが、不思議なことに今までこの大東京に存在しなかったアートカウンシルを設置しまして、いわばアート行政の発信塔として動いてもらい、今後とも東京の豊富な文化資源や人材を生かし、東京ならではの先進的な文化政策を展開していきたいと思っております。
 

 
質問2
 二十一世紀はアジアの時代といわれますが、アートの世界でもアジアの台頭が著しくなっています。特に東アジアの各国では、上海、韓国・光州のビエンナーレ、釜山の映画祭などを行っており、経済だけでなく、文化でも世界の注目を集めております。私がかかわってきたショートショート・フィルムフェスティバル・アジアも、アジアに焦点を絞った短編映画祭として、都の支援もいただき、四百作品以上の応募があるなど、ショートフィルムの世界的な見本市に成長しつつあります。さらに、日本の若手監督の作品を紹介するジャパンショートショート部門を設け、次世代のクリエーターを紹介をしています。
 アートヴィレッジ事業も、アジアから世界への文化発信の場として位置づけ、アジアのアーチストを積極的に受け入れるべきだと考えますが、見解を伺います。
 
答弁2
 ▼生活文化局長
 アートビレッジ事業についてでございますが、アジアの国々はそれぞれ映像や美術などの振興に力を入れておりまして、独自の文化に根差したアジアの芸術文化は世界から注目されております。
 また、日本、中国、韓国の合作映画が話題となるなど、アジアの国々相互の文化面での交流も盛んになっております。
 東京都は、これまでもトーキョーワンダーサイトの事業として、タイや韓国のアーチストを招くなど、アジアの新進アーチストとの交流を行ってまいりました。
 新たに整備するアートヴィレッジIN東京では、韓国のアーチスト支援施設などとも連携し、アジアの、さらには世界の若いアーチストとの交流と発信の場としてまいります。
 

 
質問3
 私は、東京が、まずはアジアアートシーンのハブとしての地位を確立していけるよう、今後の施策展開に期待をしています。ところが、都の文化振興予算は総額でも八十二億円余りと、余り多くはないのが実情です。アジアはもとより世界を引きつける文化都市を標榜するには、余りに寂しいのではないかと思います。
 また、青山に整備する新たな拠点は滞在・交流施設ということですが、既存の宿泊施設の改修ですからスペースにも限りがあり、大きな作品の制作などは難しいのではないでしょうか。また、パフォーマンスや音楽などジャンルを融合した活動がふえており、こうした活動が可能な場も必要です。限られた文化振興の予算の中では、なかなか難しい面もあるかもしれませんが、青山以外の場所でも多様な分野の制作、交流の場を整備すべきと考えますが、見解を伺います。
 
答弁3
 ▼生活文化局長
 多様な分野の制作・交流の場についてでございます。
 アートヴィレッジIN東京事業では、旧国連大学高等研究所を活用いたしました美術を中心とする滞在・交流拠点のほか、平成十九年度以降、都の遊休施設を活用いたしまして、ダンスや演劇などを含む制作・交流拠点を整備する予定でございます。
 この制作・交流拠点では、アジアなどの海外も視野に入れまして、多様なジャンルの制作・交流、スタッフなどの文化を支える人材の育成にも取り組んでまいります。
 
▲ページのトップへ
■治安対策
 
質問1
 都内の盛り場対策についてお伺いします。
 本定例会開会日に、警視総監から都内の治安状況報告がありました。それによりますと、警視庁が総力を挙げて取り組んだ犯罪抑止総合対策では、強盗、侵入窃盗、ひったくり、性犯罪の四つの重点犯罪で、その発生件数を平成四年の水準に戻すという目標が達成されています。しかしながら、最近では、他県において子どもが犯罪に巻き込まれ、痛ましい被害を受けるというような事件も起きています。
 都内でも、一歩間違えれば誘拐に発展するような子どもに対する声かけ事案が発生しているほか、振り込め詐欺や貸します詐欺など新手の犯罪が発生するなど、まだまだ都民の体感治安がよくなったと実感するには至っていないのではないかと思います。また、一部の盛り場では悪質な客引きは減少したものの、はでな看板を掲げた風俗案内所なるものが目立っており、これも今回条例で規制対象となるようですけれども、安心して夜の東京を楽しめるとはいいがたいのが実情です。
 そうした中、警視庁では、日本を代表する盛り場である新宿歌舞伎町、池袋、六本木の三地区に新たに渋谷地区を加え、四地区特別対策として環境浄化を進めているということです。そうした対策について、新たに渋谷を対策地区に加えた経緯と四地区の環境浄化の基本的な取り組みについて、警視総監に伺います。
 
答弁1
 ▼警視総監
 盛り場対策についてお答えいたします。
 初めに、新たに渋谷を対策地区に加えた経緯についてでありますけれども、警視庁では、これまで新宿歌舞伎町、池袋及び六本木の三地区における盛り場環境の浄化を、三地区特別対策として推進してまいりました。渋谷地区については、これらに準ずる形で少年対策を中心とした諸対策を推進してきたところでありますが、先般、渋谷地区が政府において繁華街の再生に取り組むモデル地区に指定されたことや、性風俗関連特殊営業が増加傾向にあることなどから、対策地区に加えることとしたものであります。
 次に、この四地区の環境浄化の基本的な取り組みについてでありますけれども、一つが悪質な客引きや違法風俗店等の迷惑違法行為に対する防圧検挙、また一つが暴力団、国際犯罪組織の資金源の取り締まり、そして青少年の健全育成を阻害する有害環境の浄化を取り組みの重点といたしております。このため、本部捜査員を投入した一斉摘発や周辺警察署との共同捜査、あるいは入国管理局等との合同摘発などを集中的かつ波状的に推進することとしております。
 また、東京都を初め、関係機関、団体及び地元商店街等との連携を図りながら、町ぐるみの環境浄化活動や効果的な違法駐車対策の推進など、より安全で安心なまちづくりにも積極的に参画しているところであります。
 

 
質問2
 これら四地区の繁華街に対して局所的に集中取り締まりを行った結果、例えば歌舞伎町はよくなったかもしれませんが、逆に御茶ノ水や立川などと思いがけないところに風俗営業店が進出し、悪質な客引きが見られるようになっています。四地区以外に風俗営業店などが拡散する、いわゆるドーナツ化現象が生じているのです。
 そこで警視総監に伺います。これからの繁華街対策に向けた決意と、このようなドーナツ化現象、つまり四地区以外への犯罪の拡散に対して、今後どのように取り締まり、あるいは対策を講じていくのか伺います。
 
答弁2
 ▼警視総監
 繁華街対策へ向けた決意と、四地区以外における盛り場対策についてお答えします。
 四地区のみに取り締まりを集中させることにより、他の地域の盛り場環境が悪化するようなことがあってはならないことは、議員ご指摘のとおりであります。警視庁では、平成十四年に盛り場総合対策推進本部を設置しまして、四地区以外の盛り場についても環境を浄化するための諸対策を総合的に推進しております。
 具体的には、それぞれの盛り場の規模、犯罪発生実態などを勘案して集中取り締まりを行い、違法風俗店や客引きなどを鋭意検挙するとともに、地元商店街等との連携を図りながら、合同パトロールなどの浄化活動を推進しているところであります。
 また、本年四月一日から施行される改正ぼったくり防止条例では、四地区に限らず、違法性風俗店が多い区域を指定して、ビルオーナー等に対する規制を行うことといたしております。
 さらに、今回議案として提出されております風俗案内所を規制する条例案では、都内全域をその対象といたしております。
 警視庁といたしましては、引き続き、さまざまな施策や取り締まりを総合的に推進いたしまして、都内全域の盛り場環境の浄化に一層努めてまいる所存であります。
 

 
 以上で、都議会民主党の代表質問を終わります。ありがとうございました。
 
▲ページのトップへ

戻る