平成18年第1回定例会 代表質問

新しい時代を開く都政の展開
オリンピック招致には志が大切

野村 有信(自民党)
 
 平成十八年第一回東京都議会定例会に当たり、東京都議会自由民主党を代表して質問をいたします。
 我が国の再生と発展に向けた小泉内閣の懸命な構造改革推進等の効果もあって、我が国経済は順調に回復し、新たな成長路線を歩まんとしております。
 今、何よりも重要なことは、景気回復の実感を都内産業の大多数を占める中小企業に及ぼし、都内経済、そして我が国経済を本格的な回復軌道に乗せていくことであります。そのためには、これまで東京に蓄積された技術や情報などの資源を最大限活用し、中小企業を初めとするさまざまな地域振興策に積極的に取り組む必要があります。
 また、幹線道路の整備、羽田空港の再拡張などのインフラ整備を初め、住宅などの耐震性の向上は、首都東京の国際競争力を高めるとともに、都民の利便性、安全性の向上に不可欠の施策であり、着実に進めなければなりません。
 こうした中で、オリンピックの東京招致は、東京の存在感を世界に示す絶好の機会であるとともに、都市インフラの問題解決を促進するよい機会でもあります。
 さらに、急速な少子化の進行に対する地域での子育て支援や仕事と家庭生活との両立など、次世代育成支援の促進は非常に重要な課題であり、都としても重点的に対策を講じていかなければなりません。
 しかしながら、こうしたさまざまな課題への対応を迫られる一方、昨年末には、法人事業税ばかりか、法人住民税の分割基準を見直す国の動きも明らかになるなど、財源問題に関連して非常に厳しい状況に直面しました。我々都議会自民党は、都選出の国会議員とも力を合わせ、強力な反対活動を行い、法人住民税の分割基準導入の見送りと、恒久的な減税の補てん措置である地方特例交付金には三カ年の経過措置を設けさせるなど、都にとって貴重な財源を確保してきたことは、特筆すべきことであります。
 我が党は、石原知事との緊密な連携のもとに、東京をねらい撃ちするこうした国の動きに対しては、今後とも反対の姿勢を貫いてまいります。
 さて、昨年、我が党は、立党五十年を機に、初めて正式に条文化した新憲法草案を発表しました。占領下という特殊な状況の中で制定された基本的法規を、国内外の情勢が大きく変化している中で、半世紀以上もそのままにしている国など一体どこにあるのでしょうか。同様に、教育基本法についても、日本人に生まれたことに誇りを持ち、国際感覚豊かな高い志を持った日本人をはぐくむ教育を目指し、改正を進めてまいります。
 今後とも、皆様に信頼される都議会自由民主党として、新しい時代づくりに邁進することをお約束し、質問に入ります。
 
■都政運営
 
質問1
 まず最初に、都政運営について伺います。
 これまで東京都は、石原知事の力強いリーダーシップのもと、日本の心臓部、頭脳部であるとの自負を持って、国に先駆け数多くの政策実現に取り組んできました。日本における東京都の存在は極めて大きく、人口や予算はいうに及ばず、経済だけをとってみてもカナダ一国に匹敵する規模を誇っています。こうした、東京都が地方自治体ではありながらも、ディーゼル車排出ガス規制など、国の政策が不十分な分野で独自の政策を展開したり、先駆的な取り組みを進めて国に影響を与えていくことの重要性はますます高まっていくものと考えています。
 また、外交のように国の専管事項であるとされる分野においても、知事は、都市同士が交流することも立派な外交であるとの考え方に立ち、アジア大都市ネットワーク21を形成して、アジアの大都市と共同事業を進めております。さらには、横田基地の軍民共用化について、東京を初めとする首都圏の航空需要を賄うことなどを目的として、知事は、日米両政府に対して積極的な働きかけを行ってきました。こうした動きは、自治体の枠をはるかに超えて、国の外交のあり方に問題提起し、日米両政府にも多大な影響を及ぼしていることは確かであると思います。
 こうした石原知事の発想や行動力のもと、東京都は引き続き国を牽引する大きな力となって、日本の発展に寄与していくことこそ重要であると思います。国の施策にさらに先駆け、東京の力を十分に引き出し、我が国の進むべき道筋をも示していく独自性を持った都政を引き続き展開していく姿勢が今なお求められていると思いますが、改めて知事のご所見を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 都政運営の基本姿勢についてでありますが、一国を代表する大都市の盛衰がそのままその国の力を表象しているのが国際社会の現実であると思います。しかし、こうした文明工学的な見識を国の政治家も官僚も余り持ち合わせておらずに、彼らは、この国の将来に対して、大都市に関して責任のある行動をとり得ないでいるのが残念でございます。
 私は、この七年間、東京が沈めば日本も沈むという危機意識を持って、独自の治安、青少年対策や福祉、教育改革を初め、首都圏に不可欠な骨格的な道路ネットワークの整備や先駆的な環境政策、さらには産業、観光振興など、さまざまな手だてを講じてきたつもりでございます。しかし、日本再生への道のりはいまだ道半ばといわざるを得ません。
 これからも、日本の頭脳、心臓部である東京の持つ大きな可能性を解き放ち、東京から日本を変えるための努力を積み重ねていかなければならないと思っております。ご指摘のように、この志を胸に、首都東京のかじ取りを引き続き担っていきたいと思っております。
 
▲ページのトップへ
■オリンピック
 
質問1
 本定例会の初日に、東京都議会オリンピック招致議員連盟が発足いたしました。我が党の呼びかけに多くの議員から賛同が得られ、石原知事にも出席いただいて設立総会を開催したことで、都のオリンピック招致は新たな段階を迎えることになります。今後は、招致議連を中心とした私ども都議会と執行機関との強い連携により、文字どおり車の両輪となって、オリンピック招致の機運を盛り上げようではありませんか。
 二十世紀は戦争の世紀ともいわれ、さきの大戦を初め、国際紛争が絶えませんでした。また、経済の発展を優先する余り、環境の保全は二の次となってしまった世紀でもありました。その反省の上に立ち、今世紀のオリンピックは、世界平和を希求し、環境との共生を図っていくための象徴として開催されるべきでありましょう。
 先日、オリンピックの意義や基本的なあり方を検討してきた東京オリンピック基本構想懇談会が報告書を発表しました。そこには、日本人の持つ無類のホスピタリティー、卓抜した技術力や人材を活用し、志の高い日本を世界に示すという基本コンセプトが述べられています。知事はこれまで、オリンピックを機に、成熟都市東京の存在感を世界に示すと述べておりますが、まさにオリンピック招致には、まず志が何よりも大切であります。
 そこで、改めて、なぜ東京でオリンピックを開催するのか、知事の基本的な考え方を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 オリンピックの基本的考え方についてでありますが、総じて今日の日本人は、卓越した技術力や感性を持ちながら、みずからの可能性、ポテンシャルをどうも過小評価し、殊さらに萎縮してしまっております。というか、みずからが何であるかを正確にとらえ切れてないうらみがございます。
 先日、科学未来館の館長をしておられる、前の宇宙飛行士の毛利さんとあるところで対談いたしましたが、そのときに毛利さんが、自分が乗っていたアメリカの宇宙船の頭脳部、心臓部というのは、一応機械は外側にアメリカ製と表示があるけれども、ほとんど大事な部分は日本製だということをいっておりました。私も改めて強い印象を受けましたし、また、火星に着陸しようとしているアメリカの宇宙船の、これは無人でありますけれども、その着陸のとき、火星は非常に希薄ですが大気があるので、何ていうんでしょうか、パラシュートのような、周りを物で包んだ形で軟着をするそうですけれども、その特異な繊維なども全部日本製だということで、そういうことを余りに日本人は知らな過ぎるという気が改めていたしました。
 今なすべきは、こうした可能性を持って、国家として、また民族としての向かうべき真の方向というものを改めて見定めて、自己を取り戻し、みずから立つ国として再生した日本を子孫に残すことであると思います。
 オリンピックを契機とする東京の積極的な取り組みが、二十一世紀の新しい都市モデルを提示し、世界の大都市問題の解決に大いに貢献するとともに、日本のための大きな礎を築いていけるものと確信しております。この国において、国家を牽引し、日本の存在を象徴する都市は、東京こそが第一であると信じております。
 

 
質問2
 知事は、事あるごとに、最近のオリンピックにおいては会場をコンパクトに配置するのが重要と述べています。東京でオリンピックを開催する場合には、これまで以上にコンパクトにできると自信を示されていますが、競技会場などのオリンピックに関連する施設について、基本的な考え方を伺います。
 
答弁2
 ▼知事本局長
 オリンピックに関連する施設についてのご質問でございますが、競技会場や選手村、プレスセンターなどの主要関係施設について、現在、候補地を挙げて検討を進めておりますが、幸い東京には、集中集積に伴い蓄積された既存施設や、都市の再生により生み出された用地がございます。
 これらの豊富なストックを最大限活用することにより、都心部を中心に、半径十キロメートルの円内に全体の八割以上の会場を配置し、世界最高レベルのコンパクトな会場配置を実現してまいります。コンパクトな配置は、近年のIOCの選考の大きな要素となっており、このような方針に基づく配置計画は、高い評価を得るものと確信しております。
 

 
質問3
 オリンピックや国体などのスポーツのビッグイベントでは、東京都出身選手の活躍は非常に重要であります。とりわけ、オリンピックに先立つ東京国体は、ぜひとも成功させなければなりません。この大会で東京都選手が大いに活躍し、都民の期待にこたえることこそが、大会成功のかぎであるといっても過言ではありません。そのためには、これまで以上に有望選手の発掘、育成等に積極的に取り組むなど、競技力の向上に努めることが必要であります。
 現在の競技力向上の取り組みと課題について、所見を伺います。
 
答弁3
 ▼教育長
 競技力向上の取り組みと課題についてであります。
 スポーツ競技力の向上を図りまして、その成果を国民体育大会などで発揮しますことは、競技者の自己達成及び自己実現につながるとともに、都民に夢や希望を与え、コミュニティの形成や郷土愛の醸成に寄与するなど、スポーツの振興に欠かせないものと認識しております。
 このため都は、東京都体育協会と連携し、国民体育大会におきます競技成績の向上を図ることを目的としまして、国体出場の候補選手や監督などを対象としました強化練習や強化合宿を行うなど、競技力向上事業を毎年実施し、成果を上げてきております。
 しかし、成年の部に比べまして、主に高校生が出場します少年の部におきまして予選を通過できない競技が多くあるなど、ジュニア選手の育成、強化が課題となっております。
 

 
質問4
 さきの第六十回岡山国体において、東京都選手団は総合第二位という好成績をおさめましたが、少年の部の成績はいま一歩と伺っております。七年後の東京国体の成功を見据えれば、各地域においても、小学生段階から若い世代の選手を発掘し、その育成に全力を注ぐべきではないでしょうか。
 ちなみに、トリノオリンピックにおきましては、荒川静香選手は五歳からスケートの練習を始めたと聞いております。将来につながるジュニア期からの選手育成や強化の方策について、所見を伺います。
 
答弁4
 ▼教育長
 ジュニア期からの選手育成や強化の方策についてであります。
 お話のように、東京都の選手がオリンピックや国体等で一層活躍するようにするためには、ジュニア期からの選手育成や競技力の強化が必要であると認識しております。
 このため、平成十八年度より、小学生から高校生に至る若い世代を対象としましたスポーツ教室や大会を開催するなど、各種の強化事業を区市町村や各地区の体育協会及び競技団体と連携して実施し、ジュニア期の競技人口のすそ野を広げ、各種の大会で活躍できる有望な選手を発掘し、育成、強化してまいります。
 

 
質問5
 いうまでもないことですが、オリンピックはまさに国家的プロジェクトであり、その準備には万全を期すことが必要であります。十八年度予算では、こうした基盤整備に備えて基金を創設し、一千億円が計上されております。
 オリンピック招致に向け、今回、基金を新たに創設するねらいについて、知事に伺います。
 
答弁5
 ▼知事
 オリンピックのための基金についてでありますが、東京にオリンピックを招致するためには、国内各都市はもちろん、世界主要都市との熾烈な競争を勝ち抜いていかなければなりません。そのためには、東京ならではの理念やアイデアを打ち出していくことに加え、開催都市としてのインフラなどの整備が不可欠であります。国家的イベントであり、そこでは国や民間に対して負担や努力、協力を求めてまいりますが、都としても相応の負担が必要となります。
 今回の基金設置のねらいは、まず第一に、オリンピックに関連した基盤整備などの財政需要に早い段階から備えを講じ、負担の平準化を図ることであります。同時に、こうした積極的かつ現実的な行動により、オリンピック招致に向けた都としての強い意思表示を内外に表明することであります。
 後で述べますが、財政再建にもめどがついてまいりました。こうした東京ならではの財政力のこれが一つの証左であると思います。また、先般、トリノのオリンピックに横山副知事が参りまして、その折、何人かのIOCの委員と歓談いたしましたが、彼らの関心は、東京が既に年間一千億の積立金を始めたということに非常に強い関心を持っていたと聞いております。
 

 
 オリンピックは、開催する都市にとって、中長期にわたるビッグプロジェクトです。そこで、我が党は、オリンピックを開催する平成二十八年を見据え、都が東京都の将来の姿を明確に示し、都市基盤の整備、都民生活の向上に着実に取り組んでいくべきと考えます。オリンピックを契機に、都が長期的な視点に立って、東京のあるべき姿、ビジョンを定めることを要望して、次の質問に移ります。
 
▲ページのトップへ
■行財政問題
 
質問1
 行財政問題に関連して伺います。
 まず、平成十八年度予算案と都財政について伺います。
 十八年度予算は、日本経済の好転による税収増を有効に活用しながら、これまでの我が党の政策や主張を十分に踏まえ、治安対策、都市再生、福祉、保健、医療の充実など緊急課題への的確な対応を図っています。さらには、オリンピック招致など、東京の将来も見据えた取り組みが盛り込まれており、久方ぶりに明るさの見える内容となっています。
 都市基盤の拡充に充てるための投資的経費は、前年度予算に引き続き二年連続の増加となり、これは平成四年度以来、実に十四年ぶりのことです。中でも都の単独事業は、一三%増と二けたの大きな伸びとなっております。東京再生に向け、こうした積極果敢な取り組みが、日本全体の復活を力強く牽引していく原動力となるものと確信します。
 知事は、就任以来一貫して財政再建に全力を挙げて取り組まれてきましたが、十八年度予算は、二次にわたる財政再建推進プランを締めくくる節目の予算となります。我が党も、職員定数の削減や施策の見直しなど、知事の姿勢を全面的に支持し、関係者とともに最大限の協力をしてきたところです。
 知事は、今回の予算を、財政再建に一つの区切りをつけた予算であると述べられたように、我が党も、都民が明るい東京の将来に向かって前進していくことのできる予算と高く評価しております。
 そこで、石原知事二期目の締めくくりとなる十八年度予算に対する基本的な考え方を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 十八年度予算についてでありますが、十八年度は、第二次財政再建推進プランの最終年度として、財政の健全性の回復に全力を注ぎ、その上で今後の新たな都政の発展を目指すことを基本に予算編成を行いました。
 予算の第一の柱は、財政再建を徹底し、強固で弾力的な財政基盤を構築することであります。隠れ借金をピーク時の半分近くにまで圧縮するとともに、基金については大きく積み増しをしております。
 第二の柱は、都民の負託に積極的にこたえていくことであります。治安対策など直面する課題はもちろんのこと、オリンピックなど将来に対する布石もしっかりと打ったつもりであります。
 今回の予算により、就任以来の懸案でありました財政再建は一つの区切りがついたと考えておりまして、都政にとって大きな節目となる予算に仕上げることができたと思っております。
 

 
質問2
 十八年度予算では、企業業績の順調な回復を反映し、特に法人二税については、十七年度当初予算を一一%も上回る大幅な増加が見込まれています。また、地道な歳入確保努力の積み重ねにより、都税の徴収率は年々向上していると聞いております。今後とも安定的な財政運営を図っていくためには、歳入確保に向けた取り組みを継続するとともに、税収動向を適切に見きわめていくことが重要なかぎを握っています。
 そこで、十八年度における都税収入はどのように見込んだのか、また、今後の都税収入の先行きをどのように見通しているのか、伺います。
 
答弁2
 ▼主税局長
 我が国経済は、設備投資の活発化など、民間需要中心の着実な回復基調を続けておりまして、最近の政府経済報告も、景気は本格的な回復基調にあるとしております。
 こうした経済状況を踏まえるとともに、法人事業税の分割基準の見直しによる初年度の影響額一千三百億円の減収等を織り込みまして、十八年度の都税総額を四兆五千二十八億円と見込んだところでございます。
 都税収入の先行きについてでございますけれども、上場企業の十八年三月期決算の経常利益が三期連続で最高益を更新すると見込まれているなど、企業収益は引き続き好調に推移するものと予測されておりますけれども、原油価格や世界経済の動向など予断を許さない状況もございまして、今後の景気動向を注視しつつ、都税収入の動向を慎重に見きわめてまいります。
 

 
質問3
 昨年末には、四兆円を超える国庫補助負担金の廃止、縮減や、三兆円の税源移譲などを内容とする三位一体改革がようやく一応の決着を見ました。しかしながら、その大半が義務教育国庫負担金など国庫負担率の引き下げによるものであり、地方の自由度を高めるという本来の趣旨からはほど遠い内容となっています。まことに残念なことであり、我が党としても、今後、真の地方分権確立に向けた改革が促進されるよう、国に対して強く求めていく覚悟であります。
 また、根拠のない東京富裕論に基づき、東京から財源を奪い取ろうとする国の動きは、再三申し上げているとおり、我が党としても到底容認できるものではありません。しかしながら、国においてこうした動きが再びあらわれないとも限らない状況であることは確かであります。
 そこで、三位一体改革など一連の税財政制度の見直しが都財政にどのような影響を与えたのか、伺います。
 
答弁3
 ▼財務局長
 三位一体改革及び税制改正の影響についてでございます。
 ご質問にもありましたように、根拠のないまま東京から財源を奪い取ろうとするこの間の一連の見直しにより、都の財源は平年度ベースで一千四百億円ものマイナスになると見込まれております。今後の財政運営に大きな影響が生じると懸念されます。
 しかも、これにとどまらず、法人住民税の分割基準見直しなど、東京の財源をねらおうとする動きがいまだに残ってございます。このような動きに対しまして、引き続き都議会の皆様のお力添えをいただきながら、その阻止に向け、国に対し強く働きかけてまいります。
 

 
質問4
 行財政改革の具体策について伺います。
 財政再建に一区切りがつき、財政面での危機感が薄れると、ともすれば、改革の手綱も緩みがちになるのが世の常です。しかし、行財政改革の取り組みは、一日たりといえどもとめることはできません。
 都では、昨年十一月の行財政改革の新たな指針に基づく行財政改革実行プログラムの策定を決め、既に作業に着手しておりますが、今後、都の行財政改革をどのような考えに立って進めていこうとしているのか、所見を伺います。
 
答弁4
 ▼総務局長
 行財政改革についてでございますが、社会構造の変化に的確に対応し、活力ある東京を創造するために、不断の行財政改革に取り組む必要がございます。
 今後、行財政改革の新たな指針に基づきまして、多様な主体がかかわる新たな公を築く、スリムで仕事ができる効率的な都庁を実現する、都民の安全・安心を確保するために行政によるチェック機能を充実するとの観点に立って行財政改革を推進してまいります。
 七月には、三カ年の具体的な取り組みを明らかにする行財政改革実行プログラムを策定し、二十一世紀にふさわしい新たな行財政システムの構築に向けて、着実に改革を実施してまいります。
 

 
質問5
 都区財政調整の問題について伺います。
 平成十二年に積み残された五項目の課題については、一月に都が示した最終提案を区が受け入れないという事態となっておりましたが、ようやく合意のめどが立ち、せんだっての都区協議会において、十八年度協議がまとまりました。
 我が党は、五項目の課題のうち、都区の役割分担を踏まえた財源配分の問題は今後の大きな議論の中で整理すべきであり、具体的課題である清掃関連経費、小中学校改築経費、都市計画交付金については十八年度予算に間に合うように結論を得るべきと申し上げてきました。今回の合意は我が党の主張に沿ったものと考えますが、このように取りまとめることとなった基本的な考え方を改めて伺います。
 
答弁5
 ▼総務局長
 五項目の課題の都区合意についてでございます。
 都区間において重要なことは、都と特別区が連携協力して、東京の発展と都民、区民の生活の向上を図ることと認識をしております。
 今回の合意は、こうした見地から、第一に、中長期的視点に立ち、今後の都区のあり方の検討を共同で開始することとし、都区間の役割分担を踏まえた財源配分の課題につきましては、この大きな議論の場で協議を行う。第二に、当面の対応が求められておりました清掃関連経費、小中学校改築経費、都市計画交付金の具体的な課題につきましては、今年度の協議をもって終了する。さらに、三位一体改革への対応については、今年度の協議と切り離し、その影響の全体を見きわめて、来年度合意できるよう努力するという基本的な考え方のもとに取りまとめを行いました。
 

 
質問6
 今回の合意には、都区共同で今後の都区のあり方を根本的に検討することが含まれています。今後の都区のあり方は最も基本的かつ重要な課題であり、この検討を始めることは、東京の将来の自治にとって大きな前進であると考えます。
 この検討を今後どのように進めていくのか、都の考えを伺います。
 
答弁6
 ▼総務局長
 今後の都区のあり方の検討についてでございます。道州制の議論が進められるなど、地方自治制度全体に大きな改革が求められている中で、都と特別区のあり方を根本から検討することは、ご指摘のとおり、大変重要でございます。今回の合意により、これは都区の共通認識となりました。できるだけ早い時期に都区共同の検討組織を設置し、都区の事務配分、再編を含めた特別区の区域のあり方、税財政制度などについて検討を開始したいと考えております。
 

 
質問7
 今回の合意は、都区双方の努力のたまものとは思いますが、今までの議論では都区の意見が大きく対立しており、協議がまとまったとはいえ、都区間であつれきも生じたのではないかと感じています。ぜひとも、揺るぎない信頼関係のもとで、今後も都区の連携を図り、大都市東京の発展にともに邁進してもらいたいと考えます。
 最後に、今回の都区の合意と今後の都区の関係について、知事の所見を伺います。
 
答弁7
 ▼知事
 特別区との関係についてでありますが、何よりも大切なことは、都と区が協力して、日本の首都であり、頭脳部、心臓部である東京をさらに発展させることであります。都民、区民の生活の向上を図ることであります。
 今回、特別区とは、財政調整の問題にとどまらず、今後の都区のあり方について都区共同で検討することを合意いたしました。これは、地方自治制度全般にわたって改革の議論が進められている今日、東京の将来にとって大きな意義があるものと考えております。
 国の動きを見ますと、相変わらず東京ひとり勝ち論といった根拠のない空論がまかり通っておりまして、都と区から税源を吸い上げようとしているのが実態であります。こうした動きにも都区が協力し対応を図る必要がございます。今後とも、都区ともに議論すべきは議論し、協力すべきは協力し合って、ともに力を尽くしていきたいと思っております。
 

 
質問8
 監査委員のあり方についてですが、知事は以前から、監査機能の充実強化を図るべきとの認識をお持ちのことと承知しております。
 さきの第二十八次地方制度調査会の地方の自主性・自律性の拡大及び地方議会のあり方に関する答申では、監査機能の充実強化を図る観点から、識見を有する者から選任する監査委員については、地方公共団体の実情に応じて条例でその数を増加することができる旨の提言を行っております。この提言を受けて、総務省では、地方自治法改正の準備に入っていると聞いています。
 我が党もこの提言を評価するものであります。法改正が実現した際には、東京都として、専門的な分野において識見を有する方々を委員として加えるよう積極的に取り組んでいただきたいと考えますが、知事の所見を伺います。
 
答弁8
 ▼知事
 監査機能の充実強化についてでありますが、アメリカのエンロン社を初め、我が国の社会保険庁、あるいは最近のライブドアの例など、国内外、官民を問わず、不正な会計行為は後を絶ちません。
 かねてより、監査機能の充実、そのための専門家の活用を強く訴えてきましたが、現に外部監査も大きな成果を上げておりまして、今回の地方制度調査会の提言の趣旨は、私がこれまでいってきたことと全く同じでありまして、都では四月から複式簿記・発生主義会計を導入いたしますが、監査においても、コストやストックの情報を有効に使いこなす専門性がさらに必要であると思っております。法改正を踏まえて、都としても監査機能の充実強化に取り組むつもりでございます。
 

 
質問9
 監査委員の補助となる事務局の専門性の強化にも取り組むべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁9
 ▼監査事務局長
 監査委員の事務局の専門性強化についてでありますが、近年、監査においては、法令等に適合しているかという合規性だけでなく、経済性、効率性を重視しておりまして、監査スタッフの専門性が強く求められております。
 そのため、会計監査の専門職を設置したほか、経営分析などの専門研修を実施しております。
 四月からは複式簿記・発生主義会計の導入に合わせて、すべてのスタッフが新たな会計方式に基づく監査を行えるよう、組織体制を整備いたします。
 また、昨年度からの試みとして、会計の専門家と一緒に監査の基礎となる調査を行っておりまして、知識、ノウハウの習得に効果を上げております。現在、事務局では、公認会計士の任期つき採用についても検討しておりまして、これらを複合的に実施することによって専門性を一層強化してまいります。
 

 
質問10
 道州制について伺います。
 本日、国の地方制度調査会が道州制に関する答申を行うと聞いております。地方分権を推進するなどの観点から道州制の導入が必要であるとされていますが、現在の地方自治制度では、都道府県域を越えた広域的な行政課題を解決できないという大きな問題があります。
 十六年九月に我が党が中心となって取りまとめた行財政改革基本問題特別委員会報告においては、深刻化する広域的行政課題に対する解決の方策として、八都県市の取り組みを高く評価する一方で、広域連合の問題点を挙げて、現行制度では限界があることも指摘しているところです。
 したがって、道州制に関しては、分権型社会の実現と広域的課題の解決という両面から、首都圏における導入の実効性の十分な検討が必要であること、また、いまだ醸成していない住民意識の面から見て時期尚早の議論であるとしたところですが、今後いや応なく道州制の議論が、国、地方を巻き込んで活発化するものと考えられます。
 答申の全容を把握できない現時点では、詳細な評価は難しいところでありますが、単なる国の出先機関からの権限移譲や、地域間の均衡の視点からの区域設定にとどまるのであれば、道州制の議論も、真の地方分権につながらないとの危惧の念を抱くものであります。
 こうした国等の動きを踏まえて、道州制をめぐる議論について、知事の所見を伺います。
 
答弁10
 ▼知事
 道州制についてでありますが、現行の都道府県の制度は、日本が時間的、空間的に狭くなった今日において、直面する行政課題に十分に対応できない状況にございます。
 都はこれまで、首都圏において顕在化する広域的な課題を解決するため、八都県市の連携を通じて着実に実績を積み重ねてまいりました。道州制の検討に当たっては、こうした現実の行政課題と現場の実態を踏まえた、地に足の着いた検討が不可欠であると思います。先般、意見を求めてまいりました諸井君にも、そう首都圏の代表として、代表して伝えました。
 お話しの地方制度調査会は、道州間の規模均衡を第一に、地図の上での区割りに興ずるばかりで、表層的な議論に終始しているといわざるを得ません。このままでは、首都機能移転と同様、道州制が実質を欠いた空虚な国家目標になりかねないと思っております。
 そもそも道州制の意義は、真の分権改革に向けて、その形を抜本的に変えることにあるはずであります。これまでの改革のてんまつを見ますと、省益を墨守する国の各省庁の抵抗によって、地方分権一括法は骨抜きにされ、三位一体改革も数字合わせに終わってしまいました。この反省に立てば、まず国と地方の役割分担を徹底して議論すべきであると思います。都としては、今後とも、真の分権改革につながる広域行政のあり方についても議論を進め、東京発の自治論を国などに対して強く発信していく考えでございます。
 
▲ページのトップへ
■震災対策
 
質問1
 まず、被害想定についてですが、首都圏における直下地震の発生が切迫しているといわれている中で、首都直下地震は、東海地震のように予知の体制が確立されていません。このため、自治体や防災機関などが地震対策を具体化するためには、基礎データとして被害想定を示すことは重要なことであります。
 都は、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、平成九年に直下地震の被害想定を作成し、これまで、区市町村などと連携して、木造住宅密集地域の解消や防災市民組織の育成など、震災対策に力を入れてきました。しかし、今回の想定でも、三十一万棟の焼失を含め、四十四万棟が全壊し、四千七百人が死亡、二百八十七万人が避難者となるなど、依然として大きな被害が示されております。
 そこで、知事に、この被害想定に対する所見と今後の震災対策への活用について伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 首都直下型地震の被害想定についてでありますが、国が発表した直下地震の被害想定はいかにも粗削りでありまして、都や区市町村の震災対策には活用できないと私は思います。
 このため、今回の想定では、発生頻度が高く、被害の大小がより明確になるマグニチュード六・九も加え、実態に即したデータを用い、区市町村別に被害を想定いたしました。これにより、優先順位をつけた震災対策の推進や、駅前滞留者対策など都市型災害への対応、地域住民、企業と連携した地域防災力の向上に大いに活用できると思っております。
 来年度には、この想定をもとに地域防災計画を抜本的に見直すなど、さらに震災対策を強化し、全力を挙げて都民の安全を守っていくつもりでございます。
 

 
質問2
 木造住宅の耐震化についてですが、昭和五十六年以前の木造住宅に大きな被害が発生していることから、古い木造住宅の耐震化は喫緊の課題となっています。昨年十一月には耐震改修促進法が改正され、一般の住宅についても、地域によっては耐震化の努力義務を課すことができるようになりました。
 都は、これまで、木造住宅の耐震診断などについて都民への普及啓発活動を行ってきておりますが、木造住宅の耐震化は十分に進んでいないのが現状です。都では、木造住宅の耐震化を平成十八年度の重点事業に位置づけ、今回の予算案に助成制度の創設を盛り込みましたが、この助成制度の内容について伺います。
 
答弁2
 ▼都市整備局長
 木造住宅の耐震化助成の内容についてでございますが、住宅の耐震性の向上は、自助、共助、公助の原則を踏まえ、所有者によって行われることが基本でございます。
 しかしながら、建物の倒壊による道路閉塞を防止するなど公共性が高い地域につきましては、より一層の耐震化の促進を図る必要があるため、耐震診断・改修に関する助成制度を創設することといたしました。
 具体的には、木造住宅密集地域のうち、特に危険度が高い整備地域を対象に、国の補助制度等を活用して助成事業を行う区に対し助成を実施するものでございます。こうしたことによりまして、震災時の住宅の倒壊を防止するとともに、避難、救助活動等が速やかに行われるなど、地域の安全性が向上するものと考えます。
 

 
質問3
 住宅の耐震化を促進するために、耐震改修工法などを公募し、興味を引くような提案も幾つかあったと聞きますが、これらを都民に広く普及していくべきと考えます。知事の所見を伺います。
 
答弁3
 ▼知事
 木造住宅の耐震改修工法などの都民への普及についてでありますが、住宅の耐震化は、あくまでも自助、共助、公助の原則に基づいて進めるべきだと思っております。住宅の耐震改修は重要でありますが、自己負担の問題でもありまして、まだまだ十分に進んでいないのが残念でございます。
 このため、安価で信頼できる耐震改修工法や装置を公募したところ、百件を超える応募がございました。この中から、経済性にすぐれた耐震シェルターや、窓をふさがずに金属製の枠で補強する工法など三十一件を選定いたしました。中には、わざわざ家を建てて、その中にシェルターをつくり、その家を崩してそれだけが確固として残るという実証もしたケースもございます。こうした工法などを広く都民に情報提供することは極めて大切であり、今後積極的に周知してまいります。
 先ほど申しました、寝室だけをとにかく守る経済性にすぐれたシェルターは、四畳半程度で三十万円という、かなりコストの安い、非常に有効な方法だと思われます。
 

 
質問4
 一方、マンションについても、昭和五十六年以前に建設されたものは問題です。マンションは多数の区分所有者の合意形成が必要なことから、被災した場合、マンションの再建は困難となることも多く、阪神・淡路大震災で被害を受けたマンションの中には、今もって再建のめどさえ立たないものもあると聞いております。
 昨年発覚したマンション構造計算書偽装事件以降、都民のマンションの耐震性能への関心が高まっていますが、費用が高額なこともあり、耐震診断や改修は遅々として進んでいないと聞いています。
 今後、マンションの耐震化促進に向け、どのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 
答弁4
 ▼都市整備局長
 分譲マンションの耐震化促進についてでございますが、マンションは概して建物が大きく、被災時に周辺に与える影響も大きいことから、耐震性の確保が重要でございます。
 構造計算書偽造の発覚以降、マンションの耐震性に対する住民の関心の高まりなどから、区市での診断助成の利用申し込みが増加しております。
 都は、こうした機運をとらえ、来年度から三カ年の緊急事業として、新耐震基準導入以前のマンションを対象に耐震診断の助成事業を創設することといたしました。
 耐震診断の実施につきましては、多数の区分所有者による合意形成が困難であるなどの課題もございますが、今後、区市町村、関係業界団体やNPO等との連携を強化し、これまで実施してまいりました改修工事への助成事業とあわせて、マンション耐震化の事業に努めてまいります。
 
▲ページのトップへ
■環境
 
質問1
 先日発表されました持続可能な東京の実現をめざす新戦略プログラムなど、環境に関連して伺います。
 近年、巨大台風や記録的な大雪や寒波など、世界的にも異常気象が顕著になったり、工場周辺の健康被害に端を発したアスベスト問題など、さまざまな環境問題が生じてきています。これらの問題に取り組むため、総合的な戦略プログラムを取りまとめたことは大変意義があります。しかし、これらの事業が実効性のあるものになるのかどうかは知事の決意にかかっています。
 知事は、今後、環境施策にどのような姿勢で臨むのか伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 今後の環境施策の展開についてでありますが、都はこれまで、都民、事業者の幅広い理解と協力を得てディーゼル車排出ガス規制を実施し、大気汚染の大幅な改善も実現いたしました。また、地球温暖化対策などにおいて先駆的な取り組みを全国に波及させるなど、我が国の環境行政を先導してきたと思います。
 しかし、東京の環境は、異常気象の頻発など温暖化の影響が顕在化するとともに、緑の減少に歯どめがかからないなど、依然として重い課題に直面しております。環境の危機に挑む志を持つ人の輪を広げ、人間が人間として生き続けることのできる社会、安心して住み続けることの可能な都市を東京から実現していくため、先駆的な環境施策を一層果敢に展開していくつもりでございます。
 

 
質問2
 新戦略プログラムでは、緑地の回復や保全の施策を重要課題の一つに挙げています。緑地の保全や創出は、健全な東京の生態系を維持していくことや、ヒートアイランド対策としても必要不可欠なものです。さらに、都民に憩いの場を提供したり、景観を潤いのあるものにするなど、緑はさまざまな効用をもたらしてくれます。しかしながら、東京の緑は依然として減少を続けております。
 このような現状を踏まえると、今後、戦略的に新たな緑の施策を展開していくべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼環境局長
 今後の新たな緑施策の展開についてでございます。
 東京を自然と共生し持続可能な都市としていくためには、東京の緑の減少を食いとめ、緑をよみがえらせることが早急な課題であると認識しております。
 そのため、緑を創出する新たな仕組みづくりや、自然と触れ合うことを通して都民に自然の保全への参加を促す自然の力・東京事業など、さまざまな施策を行ってまいります。
 また、長期的な緑施策の再構築に向け、緑に関する白書を作成し、緑の減少の要因や課題を明らかにしてまいります。
 さらに、平成十八年度に設置を予定しております環境経済施策調査会においても、緑が減少する要因の一つとなっている相続税の問題など、緑施策の幅広い検討を行うとともに、関係局と連携した緑づくりの戦略的な展開を図ってまいります。
 

 
質問3
 都市の成熟化とともに、都市の機能性に加え、都市空間の美しさが求められる時代になりつつあります。都が行ってきたこれまでの景観のための施策には、規制の根拠となる法律がなかったため、有効な強制力を行使できないという限界がありました。こうした中で、昨年、景観法が全面施行となり、先月には、東京都景観審議会から、東京における今後の景観施策のあり方についての答申が出されました。
 そこで、都は今後、審議会の答申の提言を踏まえ、どのように対応していくか、見解を伺います。
 
答弁3
 ▼都市整備局長
 景観審議会の答申を踏まえた対応についてでございますが、答申では、長期的な都市づくりの目標や社会経済情勢の変化を踏まえ、今後の施策の方向として、美しさと風格を備えた都市空間の形成、歴史文化の継承と観光資源としての活用、景観の骨格となる緑や水辺の保全、再生、そして公共事業等と連携した地域の景観づくりを提言しております。
 今後、都は、提言の具体化を図るため、景観法に基づく届け出勧告制度の活用に加え、都市計画や建築行政と連携し、実効性のある施策の構築に取り組んでまいります。
 また、眺望の保全など、複数の区市町村に及ぶ施策における都の調整機能を担保し、広域自治体としての取り組みを強化してまいります。
 

 
質問4
 都市再生を促進する上で、良好な景観形成と都市づくりの推進が両立するような配慮が欠かせないと考えますが、今後の都市づくりにおける景観形成について、都の見解を伺います。
 
答弁4
 ▼都市整備局長
 都市づくりにおける景観形成についてでございますが、国際競争力を備えた魅力とにぎわいのある国際都市東京を実現するためには、都市づくりを推進する中で、都市活力の維持を図るとともに、良好な景観を形成していくことが重要であると認識しております。
 このため、大規模な開発や公共事業を実施する機会などをとらえて、例えば、歴史的な景観資源を生かした都心部の機能更新、河川や運河沿いにおける緑化や公開空地の整備、さらには道路空間と沿道の土地利用が調和した町並みの形成など、景観の視点を重視した都市づくりを進めてまいります。
 こうした取り組みを、区市町村との連携はもとより、都民、事業者の協力のもとに積み重ねて、美しく風格のある東京を実現してまいります。
 

 
質問5
 花粉症対策について伺います。
 ことしの花粉予想では、幸いにも花粉の飛散は少ないとのことですが、首都圏では約四人に一人が苦しんでおり、抜本的な対応が喫緊の課題となっています。都は、知事の英断により、国や他県に先駆けて、重点事業として総合的花粉症対策に踏み出しましたが、我が党は、それに敬意を表するものであります。
 確実に花粉を減らすために、杉林の本格的な伐採と、花粉の少ない杉への植えかえを進めるとのことですが、そのためには、切り出された木材の長期にわたる利用拡大が欠かせません。こうした取り組みは、広く都民や企業等の理解と協力を得て進めることが必要で、我が党の呼びかけにより、近々、議員連盟を立ち上げる予定であります。
 知事みずから陣頭指揮をとって、都民運動として展開していただきたいと思いますが、知事の所見を伺います。
 
答弁5
 ▼知事
 花粉の少ない森づくり運動についてでありますが、今日の花粉症問題の深刻化は、戦後国が行った大規模な拡大造林政策の失敗により、長年にわたり森林が放置されてきた結果であります。今手をつけなければ、人々の苦しみは永久に続くことになると思います。
 東京には関東近県から花粉が飛散してまいりますが、多摩地域の森林も、国産材の需要低迷によって伐採が進まず、花粉発生源の一つとなっております。花粉を削減するために、杉の本格的な伐採が必要であります。まず、一千二百万都民を擁する東京からスギ花粉発生源対策に踏み出し、花粉の少ない森づくり、色彩豊かな多摩本来の森づくりを進めていきたいと思っております。
 私も先頭に立ちまして、こうした森づくり運動を開始し、多摩の森林や木材の活用に対する都民や企業などの理解と協力を得るとともに、速やかに八都県市にも拡大していきたいと思っております。
 
▲ページのトップへ
■道路ネットワーク
 
質問1
 まちづくりに関連して伺います。
 まず、道路ネットワークの整備についてですが、首都圏三環状道路や都内の骨格幹線道路を初めとする道路ネットワークの整備は、首都圏の広域連携を実現し、日本経済の中枢である首都圏の活性化に大きく寄与しております。都は、区部の環状道路や多摩南北道路の整備を初め、橋梁、新交通、ボトルネック踏切を抜本的に解消する連続立体交差事業などを推進しており、その成果も、都内各所で徐々に目に見える形となってきております。
 そこでまず、これまで都が渋滞解消に向けて取り組んできた成果が実を結ぶ具体的な箇所としてどのようなものがあるのか伺います。
 
答弁1
 ▼建設局長
 渋滞解消に向け取り組んできた成果についてでありますが、都はこれまで、区部の環状道路や多摩南北方向の幹線道路の整備、連続立体交差事業などに重点的に取り組んでまいりました。
 その結果、区部では、本年五月に、環状第八号線の最後の未開通区間である練馬区南田中地区及び板橋区北町・若木地区を交通開放いたします。これにより、羽田空港から北区岩淵町までの四十四キロ全線が、都市計画決定以来六十年の年月を経て開通することとなります。
 多摩地域では、四月に、多摩川原橋の完成により調布保谷線の調布―稲城区間二・七キロが四車線で開通いたします。
 また、東急目黒線では、平成十五年の不動前駅付近の立体化に続き、この七月には、残る洗足駅までの地下化切りかえによりまして、ボトルネック踏切など十六カ所が解消いたします。
 

 
質問2
 その成果により、それぞれの箇所でどのような効果が期待されるのか、伺います。
 
答弁2
 ▼建設局長
 道路整備による効果についてでありますが、例えば環状第八号線の全線開通は、都心に流入する通過交通を分散し、区部の交通渋滞の緩和に大きく貢献いたします。
 現在、杉並区四面道交差点から北区岩淵町までは、笹目通り経由で混雑時に約一時間ほど要しますが、本線の開通によりまして大幅に短縮され、所要時間は半分程度になると予測しております。
 また、調布保谷線の甲州街道から川崎街道までの区間は、踏切すいすい事業、多摩川原橋拡幅事業、南武線連立事業など、渋滞解消に向け、総合的に事業を実施しております。これらの事業に着手する前に比べ、混雑時の所要時間は二十七分から十五分程度に短縮すると予測しております。
 今後とも、地元の理解と協力を得ながら、渋滞解消に向け、効果の高い道路整備を集中的に進めてまいります。
 

 
質問3
 前回の東京オリンピックでは、首都高速一号線や環状七号線西側、青山通りなど、今の東京を構成する骨格道路の建設が急ピッチで進められ、その後の高度経済成長をしっかりと支えてきました。今回のオリンピック招致を契機に、これまで以上に都市基盤整備を加速すべきであり、中でも、とりわけ重要な道路整備を今後どのように進めていくのか、知事の所見を伺います。
 
答弁3
 ▼知事
 東京の今後の道路整備についてでありますが、東京の慢性的な交通渋滞は、大きな経済損失や環境負荷の増大を招くなど、都市の存立にとって致命的な問題であります。オリンピック招致に向けても、円滑な道路交通の確保は必須の課題であります。渋滞解消に向け、特に効果の高い首都圏三環状道路や都内の骨格幹線道路、連続立体交差など、十年後のオリンピックを目指して集中的に整備を進めるつもりでございます。
 また、成熟した都市を世界にアピールするためには、広く快適な歩行空間の整備や電線類を地中化するなど、景観にもすぐれた道路空間の形成を図りたいと思います。
 次の世代へと受け継がれる都市基盤の礎を築く首都東京の道路整備は待ったなしでありまして、まさにこの十年間が正念場であると思っております。さらなる道路財源の確保を図りながら、これまで以上に積極的に取り組みたいと思っております。
 
▲ページのトップへ
■臨海副都心開発
 
質問1
 臨海副都心開発は、平成元年に着手してから、ことしで十八年目に入りました。これまで、地域内の都市基盤施設はほぼ整備が終了し、台場地区がおおむね完成し、青海地区や有明南地区の開発促進で既存の土地の約七割が処分されるなど、まちづくりは大きく進んできております。広域交通基盤についても、来月末に「ゆりかもめ」が豊洲に延伸するなど、交通利便性も飛躍的に向上し、今後の開発が大いに期待されます。また、地価が下げどまり、一部では上昇傾向にあるなど、臨海副都心開発にも明るい兆しが見えてきました。
 今年度は、開発計画全体における二期目の最終年度であり、平成二十七年のまちづくり完成に向けて、来年度からはいよいよ総仕上げの十年である三期目に入ります。
 そこで、臨海副都心開発における節目の年に当たり、今後の開発に向けた知事の意気込みを伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 臨海副都心部開発の取り組みについてでありますが、臨海副都心は、バブル崩壊の試練を受けながらも、今や都心とのアクセスも充実し、首都東京の活力を担う大きな可能性を有するまちに成長いたしました。今後十年間は、いよいよ青海地区の北側や有明北地区も含めた開発の総仕上げの時期に入ります。社会経済状況も好転しておりますが、手綱を緩めることなく、土地売却方法に新しい手法を取り入れるなど、財政基盤を一層強化することで今後の開発を確かなものとしていくつもりであります。臨海副都心は必ずや都民、国民の貴重な財産になるものと確信しております。
 

 
質問2
 まちづくりを進めるための財政基盤も、確固たるものでなければなりません。開発に要した経費を賄うために発行した都債約五千二百億円の償還が平成十八年度から始まるとのことであり、開発を支える財政面では、まさにこれからが正念場といえます。
 そこで、財政基盤をより強化するために、今後どのような取り組みを行うのか、それにより、臨海副都心開発の財政運営がどのような見通しになるのか、伺います。
 
答弁2
 ▼港湾局長
 まず、財政基盤を一層強化するため、主に次の三点に取り組んでまいります。
 第一に、金利負担を軽減させるため、大量の都債残高を早期に圧縮してまいります。具体的には、昨年度末時点で積み上げることができました内部留保資金千四百五十億円の約二分の一を元金の返済に活用し、二百十億円の金利圧縮を行います。
 第二に、土地処分をさらに促進し、収入の確保を図るため、景気の上昇傾向を踏まえた価格競争の導入や、進出意欲のある企業のニーズに応じた処分地の区画の弾力化など、土地処分の方策を大幅に変革してまいります。
 第三に、道路等の基盤整備費のさらなる圧縮などを推進し、約四百億円の収支改善を図るなど、開発を進めるための資金収支をより強固なものにしてまいります。
 こうした取り組みにより、今後の五年間で都債五千二百億円全体の七割を償還し、まちが概成する平成二十七年度を待つことなく、平成二十六年度にはこれを完済することを目指してまいります。
 
▲ページのトップへ
■多摩振興
 
質問1
 多摩振興の基本施策である多摩リーディングプロジェクトが策定されて一年が経過しました。このリーディングプロジェクトは、都が重点的に取り組む事業を明確にした非常に具体的かつ実効性がある施策であり、四百万多摩都民に大きな期待を持って受けとめられております。
 そこでまず、多摩リーディングプロジェクトについて、十七年度の成果はどのようなものであったか、また、二年目となる十八年度はどのような姿勢で取り組むのか、その基本的な考え方について伺います。
 
答弁1
 ▼総務局長
 平成十七年度は、都市計画道路整備方針案の取りまとめや、首都大学東京に産学公連携センターを開設するなど、二十の多摩重点推進事業について、市町村と十分連携しながら、全局一丸となって着実に目標を達成いたしました。
 十八年度は二年目を迎え、都市機能を拡充する観点などから、多摩南北道路五路線の整備や下水道整備事業などを中心に、確実な予算化を図りました。事業総額では七百十一億円となり、十七年度に比べ三三%の大きな伸びとなっております。
 今後とも、都議会のご支援を得ながら、圏央道整備など国への事業促進の働きかけや、市町村事業への支援とあわせ、大きな発展可能性を持つ多摩地域の一層の振興を図ってまいります。
 

 
質問2
 奥多摩町などは山間部にあるため、用地確保が困難な上、財政負担が大きいことなどから、下水道の整備は大きくおくれ、普及率は極めて低い状況にあります。このため、我が党は、檜原村や奥多摩町などについても、下水道による整備が望ましい地域においては、都が主体となって進めてきた流域下水道を活用することにより普及を促進するよう、強く要請してきました。
 そこで、これらの地域の普及促進に向けた流域下水道の取り組み状況について伺います。
 
答弁2
 ▼下水道局長
 多摩地域における下水道普及促進に向けた流域下水道の取り組みについてでございますが、都はこれまで、関連公共下水道の整備に合わせ、着実に流域下水道事業を進めてきており、平成十七年度末の下水道普及率は九六%に達する見込みでございます。
 お尋ねの檜原村につきましては、この三月に下水の受け入れに必要なあきる野幹線が完成し、平成十八年度から村民待望の下水道が使用できる状況になります。
 また、奥多摩町及び青梅市の御岳地区などにつきましては、平成二十一年度の供用開始に向け、平成十八年度から多摩川上流幹線の延伸に着手いたします。
 今後とも、多摩地域の良好な水環境の創出に向け、市町村と連携して普及促進に取り組み、普及一〇〇%の早期達成を目指すとともに、高度処理の推進や合流式下水道の改善に努めてまいります。
 

 
質問3
 市町村に対する財政支援の充実についてですが、これまで都は、市町村に対する都独自の財政支援制度として、市町村振興交付金、調整交付金を活用することで、多摩・島しょ地域の発展に重要な役割を果たしてきました。しかし、近年、市町村の財政状況がますます厳しさを増していることから、我が党は、市町村の行財政基盤をより強固なものとするため、これらの交付金制度を一層充実させるべきと主張してまいりました。
 こうした中、都は、財政支援をさらに充実強化するため、両交付金を統合して市町村総合交付金を創設し、また、その予算額についても、我が党の強い要望にこたえ、従前の振興、調整交付金の予算額を大幅に上回る三百十億円を計上しています。
 知事は、市町村総合交付金をどのように多摩・島しょ地域の振興に生かしていく考えなのか、所見を伺います。
 
答弁3
 ▼知事
 市町村への財政支援についてでありますが、多摩・島しょ地域の魅力を高めていくには、厳しい財政状況にある市町村の行財政基盤の強化が不可欠でありまして、市町村みずからの努力とともに、適切な財政支援が必要と考えております。
 そのため、地域の発展に向け、市町村が行う事業を積極的に支援するとともに、行政改革の取り組みを促すことを目的として市町村総合交付金を創設し、財政支援の充実を図ります。これにより、市町村の自助努力と創意工夫が十分に発揮されることを通じて、大きな可能性を持つ多摩地域と、豊かな自然に恵まれた島しょ地域の一層の振興を図っていきたいと思っております。
 

 
質問4
 横田基地の軍民共用化についてですが、昨年十月、日米安全保障協議委員会が発表した在日米軍再編協議に関する中間報告の中では、横田基地に関して、自衛隊との共同使用とともに、軍民共用化について具体的な条件や態様を検討すること、また、横田空域の削減などを検討することが明記されました。
 十一月末には、多摩の二十六商工会、商工会議所が、横田基地軍民共用化推進協議会を発足させました。また、横田基地周辺の自治体からは、在日米軍再編の動きを踏まえ、横田基地の軍軍共用の容認や軍民共用化の推進といった積極的な発言がなされるようになってきています。
 横田基地については、我が国の安全保障の確保という大命題にも寄与しながら、知事が提唱してきた、平時には軍民共用化により有効活用を図るという、極めて合理的であり、かつ多摩振興の起爆剤ともなる政策の早期実現を図ることが必要であると考えております。
 この三月にも在日米軍再編協議の最終報告が出されるとのことですが、地元の動きなども踏まえ、国に対し、横田基地の軍民共用化について一層明確な方向を出させ、早期実現を確固としたものにしていく必要があると考えますが、知事の見解を伺います。
 
答弁4
 ▼知事
 横田基地の軍民共用化についてでありますが、そもそも横田基地の軍民共用化は、平成十五年五月の小泉・ブッシュ会談において実現可能性を検討することが合意されており、本来、米軍再編とは別のものであります。それにもかかわらず、残念ながら、空のアクセスの文明論的な重要性というものを認識しない外務省の基本的な認識の欠如のおかげで、米軍再編の流れに巻き込まれてしまいまして、要らぬ回り道をさせられております。
 国は、軍民共用化は、横田空域のあり方とともに、在日米軍再編協議の最終的な取りまとめに向けた課題であるとしておりますが、米軍再編の枠組みの中で議論しているのでは時間がかかり過ぎます。ともかく、軍民共用専管の具体的な協議の場を早急に立ち上げ、日米協議を進展させることが必要不可欠であります。地元における機運の盛り上がりも踏まえ、改めて日米両政府に強く働きかけ、軍民共用化の早期実現を目指します。
 現に、今の段階では、交通経済学の泰斗であります杉山学長を委員長にしました杉山委員会において、フィージビリティースタディーがほとんど終わりつつありますが、これにこたえて、アメリカ側もそれに参加してはどうかとこちらから建言しましたが、いや、我々は我々側でカウンターパートとして委員会を構えるということで、この日米両方のスタディーグループによりまして具体案がこれから検討されていきます。
 既にアメリカ側からも、これは軍側の要望でしょうが、ターミナルをどこに設けるかなどという案も出ておりまして、いずれにしろ、早期の実現をあらゆる努力をして図っていきたいと思いますが、さきに、ことしに入りまして、日本航空と全日空の社長を呼びまして懇談しましたが、両者とも、あの地域を分析して、例えば埼玉県や神奈川県の北部あるいは山梨県、長野県の人たちにとっても、横田が非常に便利な飛行場であるという認識を持っておりまして、それを彼らも承知して、航空会社にとっても非常にお客の需要の高い一つのプロジェクトであるという認識を共通して持ってもらいましたので、こういったものも大いに我々の主張の要因としてアメリカ側に伝え、政府に伝えていきたいと思っております。
 
▲ページのトップへ
■産業力の強化
 
質問1
 東京の産業力強化について伺います。
 今日、東京の産業の現状といえば、製造業では世界に誇る高い技術力を持ちながらも、平成二年と平成十五年を比較すると、工場数は六三%、従業員数は五八%、製造品出荷額等は五七%にまで低下しています。また、地域コミュニティの中核的な役割を担っている商店街の衰退、空洞化にも歯どめがかかっておりません。
 我が国が将来にわたって豊かで希望が持てる社会を築いていくためには、産業力の強化が求められ、中でも高いポテンシャルを持つ東京の産業活力をさらに高め、日本経済を牽引していくことが、我が国全体の産業力を強化する条件といっても過言ではありません。東京の産業の足腰を強化し、国際競争力を高め、アジアの市場を視野に入れたインフラ整備に全力で取り組む必要があります。
 また、こうした課題を産業政策の目標として明確に位置づけ、首都東京の都市及び経済を再生していくために、産業政策と都市政策との連携をも踏まえた基本戦略を示し、施策を推進していくことが、ぜひとも必要です。
 今こそ、都は総力を挙げて、ものづくり企業や商店街等に対する支援策、産業を支える人材の育成や確保策など、東京の産業力強化についての基本戦略を新たな総合的ビジョンとして構築すべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 この際、ビジョンの策定にとどまらず、その確実な実現を期すため、産業振興条例の制定についても要望しておきます。
 
答弁1
 ▼知事
 東京の産業力強化についての基本戦略の構築についてでありますが、東京は、ほかにまねのできないすぐれた技術の集積など、高い可能性を持っておりまして、同時に、感度の高い、すぐれた大消費地でもあります。厳しい国際競争や人口減少社会の中でも、独自の発想と技術力によって日本経済を牽引していくことが可能であります。
 都はこれまで、CLO、CBOの発行や、秋葉原ITセンターの設置、アニメ産業の育成など、独自の産業振興策を実施するとともに、都市政策との兼ね合いで工業等の制限法の廃止など国を動かし、東京の産業力強化の基盤を形成してまいりました。
 今後、これを踏まえ、都市政策と連携し、高い技術を持つ企業の立地促進や、高度な技術を継承発展させる人材の育成に取り組んでいくつもりでございます。
 さらに、ハノイなどアジアとの交流や東京を中心とした八都県市との連携によりまして、首都圏全体の産業力を強化する必要がございます。
 このため、都の将来の産業施策の道筋を示す総合的なビジョンの策定に向けて検討を進めております。
 

 
質問2
 中小企業金融について伺います。
 制度融資の前提となる信用補完制度の見直しが国において検討されていると聞いております。その一環として、本年一月には、企業再生への取り組みを後押しするため、過去に信用保証協会の保証つき融資の返済が不能となった経験を持つ中小企業であっても、一定の要件を満たせば、新規保証を受けられることになりました。また、導入が検討されている保証料率の弾力化は、個々の中小企業の経営状況に応じた料率を設定することにより、リスクが高く、これまで保証が困難であった層への保証を可能とする効果があるといわれています。
 しかしながら、一方で、経営状況が厳しい中小企業においては、保証料負担が増加する懸念があるため、その見直しに当たり十分な配慮が求められます。
 そこで、現在の国における信用補完制度見直しの状況と、都としての対応について伺います。
 なお、今回の三位一体改革で、商工会議所等が実施する経営改善普及事業等の国庫補助金が廃止されることとなりましたが、我が党の強い支援要望に対して、必要な措置がなされました。こうした都の対応を大いに評価するものです。
 
答弁2
 ▼産業労働局長
 信用補完制度の見直しについてでございますが、ご指摘のように、本年一月に求償権に係る制度改正が行われ、過去に返済不能となった企業でも、一定の要件のもと、新規保証を受けられることになりました。
 また、この四月には、現在は一律である保証料率が、個々の経営状況に応じて〇・五%から二・二%の九段階に弾力化されると聞いております。これを前提にすれば、経営改善の努力が保証料の引き下げという形で報われる一方、経営状況が厳しい中小企業については、保証料負担が増加する場合がございます。
 このため、都といたしましては、経営基盤が脆弱な中小企業の実態を十分に踏まえ、その負担を緩和するよう、信用保証協会と連携して必要な措置を講じてまいります。
 

 
質問3
 豊洲新市場建設について伺います。
 築地市場の移転について、地元は断固反対を主張されていましたが、このたび、中央区、場外市場団体、築地地区の自治会などで構成される築地市場移転に断固反対する会が方針を転換し、移転後の築地地区のまちづくりに取り組むことを明らかにしました。
 しかし、市場業者の中には、新市場における事業展開に不安を感じるなどから、まだ反対している人たちがおります。こうした市場業者の不安を解消するため、より具体的な対応策を講じ、事業の円滑な推進を図るべきと考えますが、見解を伺います。
 
答弁3
 ▼中央卸売市場長
 豊洲新市場建設についてでありますが、中央区や場外市場団体などで構成する築地市場移転に断固反対する会が反対の旗をおろし、方針を転換したことは、新市場建設を円滑に進める上で大変意義のあることと受けとめております。
 現在でも、移転に対し不安を持ち、反対している市場業者の方々に対しては、経営基盤の強化策を初めさまざまな対策を講じながら、誠意を持って対応してまいります。
 また、市場業者の将来の経費負担を考慮し、新市場の実施計画の内容についても、事業費の縮減を目指し、精査を行ってまいります。
 今後とも、市場関係業者と十分協議を重ね、理解と協力を得られるよう努めてまいります。
 
▲ページのトップへ
■福祉・保健・医療
 
質問1
 福祉、保健、医療に関連して伺います。
 まず、新しいビジョンについてですが、大都市東京にふさわしい福祉、保健、医療サービスの実現を目指すこれまでの福祉改革と医療改革をさらに前進させ、確かな安心を次世代に引き継ぐため、都は、福祉・健康都市東京ビジョンを策定しました。
 少子高齢化、人口減少社会の到来など社会保障制度を取り巻く背景は、今、大きな転換点を迎えております。
 医療制度について見ると、制度運営を支えている現役世代からの保険料収入と高齢者の増加による医療給付費とのバランスが崩れており、制度を維持するためには、不公平感のないよう、できるだけ広い範囲から応分の負担を求めるなど、皆で支えるシステムにする必要があります。現役並みの所得者など、負担のできる高齢者には、やむを得ず相応の負担を求めることも避けられないところです。都においても、こういう状況を踏まえた上で、今、福祉、保健、医療施策の新たな方針を打ち出すことは、まさに時宜を得たものであります。
 そこで、このビジョンが示す理念と意義について、知事の所見を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 福祉・健康都市東京ビジョンについてでありますが、人口減少時代がいよいよ現実のものとなった今、右肩上がりを前提とした我が国の社会システムが早晩破綻を迎えることは明らかであります。にもかかわらず、社会保障を含めた国の構造改革は、目先の課題への対応に終始し、いまだに明確な将来像を国民に示してはおりません。
 こうした中、都として、現在の都民の不安を解消するとともに、確かな安心を次世代に引き継ぐため、先般、福祉・健康都市東京ビジョンを策定し、福祉と保健、医療の両分野を貫く基本姿勢を明らかにいたしました。
 今後は、都民一人一人の自立を促すことを基本に据え、民間、地域、行政それぞれの力を最大限に生かした効率的、効果的な施策展開を目指します。
 このビジョンに基づきまして、これまで都が先導的に取り組んできた福祉改革、医療改革をさらに前進させ、将来世代にわたって信頼できる、揺るぎない安心を実現していきたいと思っております。
 

 
質問2
 少子高齢施策の拡充について伺います。
 現在の深刻な少子化の流れを変えるために、地域の子育て環境を整備していくことが喫緊の課題であり、子育て支援の要である区市町村が、地域のニーズに対応した取り組みを進めていくことが重要です。
 都は、十八年度予算案で、区市町村の取り組みをバックアップする仕組みとして、市町村を対象とした交付金制度の創設と区市町村に対する新たな包括補助制度を打ち出しましたが、両制度は、これまでの縦割りの補助制度と違い、区市町村の柔軟な取り組みを促すものとして期待しているところであります。そのためには、来年度の実施段階においても、区市町村が活用しやすい制度としていく必要があります。
 そこで、都は、これらの制度を実効性あるものとするため、今後どのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼福祉保健局長
 新たな子育て支援策についてですが、子どもを健やかに産み育てる環境を整備するためには、それぞれの地域の実情に応じました区市町村の取り組みを幅広く支援していくことが重要でございます。
 子育て推進交付金と子育て支援基盤整備包括補助は、こうした考えに基づき、区市町村が主体的に施策を展開できますよう、ハード、ソフトの両面において柔軟かつ広範に財政支援する仕組みとして創設したものでございます。
 これら新たな制度の実施に当たりましては、区市町村が活用しやすいものとなるよう、交付要件の緩和や手続の簡素化などを工夫するとともに、先駆的な事例の紹介や積極的な取り組みを評価することなどにより、施策の実効性を最大限高めてまいります。
 

 
質問3
 高齢になっても心身ともに健康で、いつまでも元気でいられるための施策がますます重要と考えております。たとえ介護が必要な状態になったり、認知症になったとしても、できる限り地域で自立した生活を継続できるよう、身近な地域に根差した介護基盤の整備や、認知症に対する総合的な支援の仕組みづくりが重要であります。
 こうした観点を踏まえ、今後の高齢者施策を強力に推進すべきですが、具体策を伺います。
 
答弁3
 ▼福祉保健局長
 これからの高齢者施策についてですが、今後、高齢化のさらなる進行によりまして認知症高齢者の増加が見込まれる中、高齢者が自立し、尊厳を持って生活していくためには、健康を維持し、また、認知症になったとしても地域で暮らし続けられる社会の実現が極めて重要でございます。
 このような考え方から、介護予防、健康づくりの推進や地域における安心な生活の確保など、今後取り組むべき課題を盛り込んだ東京都高齢者保健福祉計画を本年度中に策定いたします。
 平成十八年度は、この計画を踏まえまして、介護予防システムの都内全域での展開を開始し、ショートステイなどの地域生活を支えるサービス基盤の充実を図るとともに、グループホームの緊急整備など、認知症高齢者に対する総合的な支援の取り組みを強力に推進してまいります。
 

 
質問4
 障害者の自立支援の推進策について伺います。
 いよいよ四月から、障害者自立支援法が施行されます。我が党は、利用者負担に関する障害者の方々の不安の声を受け、国会審議などを通じて各種の負担軽減策を盛り込むとともに、都に対しても、低所得者に対する独自の負担軽減措置をとるよう要望してまいりました。こうした我が党の要望を踏まえ、都がホームヘルプサービスや精神通院医療などについて独自の軽減策を導入することを評価しているところであります。今後は、同法の理念を実現するために、都としてどのように障害者施策を進めていくのかが、重要な課題となってきます。
 そこで、都としては、障害者自立支援法の理念を踏まえて、今後どのように障害者施策を進めていくのか、所見を伺います。
 
答弁4
 ▼福祉保健局長
 今後の障害者施策の推進についてですが、障害者自立支援法は、障害者がその有する能力や適性に応じ、自立した生活を営むことができるよう支援を行い、障害の程度や障害の種別にかかわらず、安心して暮らすことのできる地域社会の実現を理念としておりますが、この理念は、これまで都が進めてまいりました福祉改革の取り組みや、先般策定いたしました福祉・健康都市東京ビジョンの考え方とも合致するものでございます。
 今後は、地域生活を支えるサービス基盤の重点的整備や障害者の就労促進に一層取り組みますとともに、専門性の高い相談の実施や人材育成を行うなど、区市町村と密接に連携して、だれもがみずからサービスを選択、利用し、地域の中で自立して生活できる社会の実現を目指してまいります。
 

 
質問5
 先般、国は、障害者の自立に向けて、平成二十三年度までに施設入所者を一万人減らし、精神科入院患者を五万人退院させるという数値目標を設定したと聞いております。こうした目標を真に障害者の自立につなげていくためには、それを支える地域におけるサービス基盤の整備が何よりも重要な課題であることは、論をまちません。
 都は、障害者地域生活支援・就労促進三カ年プランを策定しましたが、このプランの基本的な考え方と今後の取り組みについて所見を伺います。
 
答弁5
 ▼福祉保健局長
 障害者地域生活支援・就労促進三カ年プランの考え方と今後の取り組みについてでございます。
 障害者が地域で自立した生活を送るためには、居住の場や日中の活動の場など生活基盤の整備と、経済的自立に向けた就労の支援が特に重要でございます。
 このため、プランでは、平成十八年度から二十年度までの三年間で、精神障害者も含めまして、グループホームや通所施設など三千二百人分のサービス基盤の整備を重点的に進めることといたしました。
 また、障害者の経済的自立を促進するための施策についても初めてプラン化いたしまして、障害者就労支援事業をすべての区市町村で実施することを目指しております。
 今後は、区市町村や運営事業者に対するさまざまな働きかけを行いまして、プランの達成に全力で取り組んでまいります。
 

 
質問6
 都立病院改革ですが、現在、都立病院では、病院再編整備の一環として多摩広域基幹病院及び小児総合医療センターの整備を進めています。
 整備は、都立病院としては初めてPFI手法を導入して取り組む意欲的事業です。我が党は、この事業が全国的に果たす役割の重要性に着目し、PFI手法を選択することの意義や医療環境の変化に対応する仕組み等を確認するとともに、多摩地域の一大プロジェクトとして、事業者の選定に当たっては、その力量を重視するよう要望してきたところであります。
 この一月末には、業務の質と価格を総合的に評価する総合評価一般競争入札により落札事業者を決定したと聞いています。そこで、落札事業者の決定に当たり、都はどのような観点から総合評価を行い、事業者を選定したのか、その選定の方法についてまず伺います。
 
答弁6
 ▼病院経営本部長
 多摩広域基幹病院及び小児総合医療センター整備における事業者選定方法についてでございますが、本事業は、設計、建設から長期間の業務運営に至るまで一貫したサービスの提供を求めることから、中核となる企業の業務実施能力を多面的かつ的確に見きわめる必要がございます。
 このため、外部委員を含めた審査委員会におきまして、入札価格のほか、設計施工能力、薬品、医療機器の調達能力、委託業務の統括能力、そして運営体制の妥当性など各項目について、具体性、継続性、実効性などの観点から総合的に審査したところでございます。
 

 
質問7
 病院の開設に向けた準備を本格化させる重要な時期を迎えることになりますが、PFIで行うメリットを生かしながら、将来にわたって都民の期待にもこたえ得るような高い水準の病院をどのようにして実現していくのか伺います。
 
答弁7
 ▼病院経営本部長

 新しい病院の開設に向けた取り組みについてでございますが、今回の事業者の決定を受けまして、今後は、提案内容に基づいて、医師、看護師を初めとする病院のスタッフが、事業者と率直な意見交換を行いながら、具体的で詳細な協議を進めていくことになります。こうした取り組みを通じて現場の意見を十分反映するとともに、事業者の創意工夫を生かしたサービス水準の高い病院の実現を目指してまいります。
 

 
質問8
 先日、ある医療関係者とお話をする機会がありましたが、産科の医師が危機的に減少しており、医療機関もその確保に大変苦慮しているという厳しい医療環境について、切々と訴えておられました。都としても、こうした現実をしっかりと受けとめ、二病院を一体的に整備するメリットを最大限に生かし、産科機能について効率的な体制づくりを目指すべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁8
 ▼病院経営本部長
 効率的な産科体制についてでございますが、母子医療を取り巻く環境は、地域の産科の医師や医療機関が減少する中で、ハイリスク新生児の医療需要が増加するなど、お話のとおり大変厳しい状況にございます。このため、NICUを整備するとともに、地域の産科医師等の要望も踏まえまして、産科病床を拡充することにしております。
 今後は、隣接して二つの病院を整備するメリットを最大限に生かして、総合診療基盤と一体化した効率的な産科体制の実現を目指してまいります。
 
▲ページのトップへ
■人材の育成
 
質問1
 今後の少子高齢社会を支える人材の育成について伺います。
 我が国の発展を支えてきたものは、産業や福祉の発展であり、そこに従事する人々の努力であります。
 これから、我が国は初めて人口減少社会に突入していきます。今こそ、人は財産であるということを再認識し、子どもの成長過程や社会的な位置づけに応じた育成策を講じ、人という財産の有効活用を図っていくときであります。
 変化の激しい社会においては、基礎的な知識、技能を徹底して身につけるとともに、みずから学び、みずから考えるなどの確かな学力や、他人を思いやる心や感動する心などの豊かな人間性、そしてたくましく生きる健康や体力など、生きる力を育成することが不可欠であります。また、こうした能力の育成や、精神、感性の涵養は、よき社会人としての資質形成の根幹をなすものとして極めて重要であります。
 そこで、都は、児童生徒に確かな学力を定着させ、伸長を図るために、どのような取り組みを進めるのか伺います。
 
答弁1
 ▼教育長
 確かな学力とは、知識の量だけではなく、みずから学ぶ意欲や思考力、判断力、表現力などの資質や能力までを含めたものでございます。
 都教育委員会ではこれまでも、児童生徒の学力向上を図るための調査を実施いたしまして、その結果に基づく授業改善を通して、各教科の基礎的、基本的な内容の定着を図ってきたところでございます。
 また、生涯を通じて活用できる確かな学力を身につけさせるためには、基礎的、基本的な内容に加えまして、教科で学んだ知識や技能等を効果的に活用して問題解決に当たる総合的な力の育成が必要であります。
 このため、今後は、現行調査に加えまして、児童生徒の問題解決能力を把握する調査を実施しまして、その結果を踏まえ、指導方法の工夫、改善を行いまして、確かな学力の一層の定着と伸長を図ってまいります。
 

 
質問2
 子どもたちの生活を見ると、一部に睡眠時間の減少や食生活の乱れなど、基本的な生活習慣が十分身についていない状況がうかがえます。次代を担う子どもたちを育成する観点から、基本的生活習慣の確立を目指して、都民全体に強く働きかける取り組みを展開するとともに、子どもの状況を把握している学校から家庭へのより一層の働きかけも必要になると考えます。
 そこで、子どもたちの生活習慣の確立に向け、どう取り組むのか、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼教育長
 基本的な生活習慣を身につけさせるためには、家庭の役割が極めて重要であると認識しております。都教育委員会では、家庭における教育力が問われている現状を踏まえまして、区市町村教育委員会と連携し、これまでも家庭訪問や保護者会などを通しまして、睡眠時間などの生活リズムや食生活の向上について、家庭との連携に取り組んでまいりました。
 平成十八年度は、PTAや学校関係者、NPO団体、企業などによります協議会を設置しまして、学校、地域、社会が連携して実施いたします子どもの生活習慣改善プロジェクトによります、家庭を初め都民全体に子どもの生活習慣の大切さを働きかける運動を展開してまいります。
 また、あいさつができる、時間が守れるなど、学校における子どもの行動の記録を学校と家庭が双方で活用できるよう工夫するなど、きめ細かく対応していくとともに、学校保健委員会の活性化を図りまして、学校医と保護者などが連携し、子どもの健康づくりを推進することや、学校におきます食育のあり方を明確にするため、公立学校における食育に関する検討会を早急に設置するなど、子どもの生活習慣の確立に向けた取り組みを充実してまいります。
 

 
質問3
 我が国が経済大国として成長してきた要因に、勤勉で優秀な労働力が存在していたことは、だれもが認めるものです。若年人口の減少と戦後の高度成長を支えてきた団塊の世代の大量退職を背景として、深刻な人材不足と熟練技能の断絶が懸念されています。
 こうした中、東京の産業を活性化するためには、若者を初めとする多くの都民が職場で能力を発揮する機会を拡大するとともに、一人一人の職業能力を高め、生産性の向上と熟練技能の継承を図る対策が不可欠です。
 ところが、労働力の確保や技能後継者育成の必要を強く認識しているものの、実際には困難な中小企業が多くあることも事実です。東京の産業を活性化させるためには、高付加価値製品を初めとするものづくりや、高い要求水準にこたえるサービスの提供を図ることが必要です。そのため都は、技術、技能、ノウハウや管理能力を身につけた現場を支える人材を育成する仕組みをつくるべきです。
 そこで、東京の産業を支える人材育成に向けた今後の対応について伺います。
 
答弁3
 ▼産業労働局長
 都はこれまで、技術専門校における公共職業訓練や学校における産業教育などを中心に取り組んでまいりました。しかし、人口減少社会の到来と団塊の世代の大量退職が現実となる中、産業の担い手となる人材の確保、育成と技術、技能の継承が重要な課題になっていると認識しております。
 今後、技術専門校におきましては、若年技能者を育成する名工塾の拡充や実技を重視した在職者訓練に重点的に取り組むなど、地域の企業における人材育成を積極的に支援するとともに、事業主団体、民間の専門学校、各種学校や、四月に開学する産業技術大学院大学なども加えた関係機関によるネットワークを構築し、企業ニーズを踏まえた基盤分野から高度専門分野まで幅広い人材の確保、育成と技術、技能の継承の取り組みを推進してまいります。
 

 
質問4
 近年、高度で専門的知識、技術を持った人材育成が急務となっており、大学における人材育成の期待は非常に大きくなっています。昨年四月開学した首都大学東京や、本年四月に開学を予定している産業技術大学院大学では、東京の産業の活性化や東京の将来を担い支える人材育成の観点から、教育研究への取り組みを進めることとしています。
 首都大学東京では、学生に対し、就業意識を高めるための、いわゆるキャリア形成支援の取り組みを始めていると聞いていますが、この取り組みを、次代を担う若者の働く意欲や能力を引き出す就業支援にも生かすべきと考えます。
 そこで、両大学では、東京の産業を担う人材育成や若者の就業支援にどのように取り組んでいくのか伺います。
 
答弁4
 ▼総務局長
 首都大学東京では、大都市の課題に立脚した教育研究を行い、広く国内外の実社会で活躍し、リーダーシップを発揮できる人材の育成を目指しております。
 本年四月には、デザイン分野で活躍する人材育成のための新コースを開設し、東京の多様な産業を支える人材の育成を進めております。
 さらに、学生に対するキャリア形成支援をより充実させ、若者の自己開発力を育成するプログラムを開発し、大学を初め都の関係機関で広く活用してまいります。
 また、同じく四月に開学を予定しております産業技術大学院大学では、産業界からの要請を踏まえ、実践的教育手法の導入により、IT分野の高度専門技術者の育成を目指してまいります。
 今後とも、首都大学東京及び産業技術大学院大学では、東京の産業を担う人材の育成や若者の就業支援に積極的に取り組んでまいります。
 

 
質問5
 これからの東京が活力ある世界都市として評価されるためには、文化の果たす役割が重要です。若い才能ある芸術家が東京から育ち、世界に発信していくことが、東京という都市の魅力を高めることにつながります。
 石原知事は、就任以来、文化人ならではのユニークな発想で、文化のフロンティアともいうべき新しい施策を展開してきました。公園や地下鉄などの公共空間をアーチストに開放するヘブンアーチスト事業や、若手芸術家の発表、交流のための拠点の整備など、これらは文化を創造する側への支援であり、まさに人材育成の視点からの取り組みといえます。
 今後は、さらに、海外をも視野に入れ、国内外の才能ある若いアーチストの交流の中から世界に羽ばたく人材を育成することが求められています。
 今回、知事は、文化振興に関する新たな指針を策定することを表明されましたが、ぜひこの指針には人材育成の視点を盛り込むべきであります。
 そこで、今後とも芸術文化の創造を担う人材を育成するため、さらなる施策の充実を図るべきと考えますが、知事の所見を伺います。
 
答弁5
 ▼知事
 芸術文化における人材育成についてでありますが、東京には、文化芸術にかかわるさまざまな人材や文化資源が集積しておりまして、新たな創造的な文化を生み出す可能性を非常に豊富に持っております。しかるに、これは、世界の大都市の中で非常に希有なることでありますが、東京にはいまだにこういった、東京全体の芸術の可能性というものをどうまとめ、掘り出し、どう打ち出していくかという基本的な構想を打ち出すアートカウンシルなるものがございません。
 そういうことで、先般、東京都の文化施策を語る会を構築しまして、有識者に、未来社会への投資として人材育成を重視すべきですという提言もございました。それに沿って新しい文化政策を展開していきたいと思っておりますが、これまでも、トーキョーワンダーウォールやワンダーサイトなどの取り組みから、才能のある若い作家がもう既に育っております。
 今回新たに、青山の旧国連大学の施設を活用しまして、国際都市東京の特徴を生かしたアーティスト・イン・レジデンス事業として実施いたします。
 世界じゅうの新進気鋭の芸術家と東京の若い芸術家がかんかんがくがく切磋琢磨し合う中から、東京からもすばらしい、さらにすばらしい芸術が生まれ、世界に発信していくことを期待しております。
 新たに策定する指針の中でも、若手芸術家などの育成支援を重要な柱として位置づけていくつもりでございます。
 

 
 さて、ことしはノーベル物理学賞を受賞した湯川、朝永両博士の生誕百年に当たり、記念事業が東京や京都で実施されると聞き及んでおります。思えば、私が小学生のころ、湯川博士が日本人として最初のノーベル賞受賞者として大きく報道され、当時、占領下の中で呻吟していた日本人を大いに勇気づけたものでございました。
 ノーベル賞に象徴される卓越した才能は、広いすそ野を持った国民の学力や知識の積み重ねの上に形成されるものといっても過言ではありません。もともと自然資源の乏しい我が国では、人材こそ資源です。科学技術立国を目指していく根幹となるのも人材であります。この広く厚みを持った人材の育成の成果が、我が国のものづくりを初めとする産業経済の担い手となって、世界第二位の経済大国を支えてきました。
 少子高齢社会の到来とともに、これからの社会の担い手一人一人に、専門教育はもとよりのこと、勤勉や公に尽くすという美徳をしっかりと教えていく必要があります。我が党は、石原知事と手を携えて、人材育成のための教育の振興に向け、しっかりと取り組んでいくことを申し上げたいと存じます。
 なお、二月二十二日には、東京オリンピック招致のための東京オリンピック招致議員連盟を設立、発足させていただきました。自民党四十九名、公明党二十三名、民主党さん五名、共産党さんゼロ、このような状況でございますが、ぜひ、議員連盟の活動が国内外に向けて東京オリンピックを招致することにつながるわけでございますので、今定例会において、議員連盟の有志の皆さんから東京オリンピック招致決議案が提出されます。まだ議員連盟に参加されていない会派の皆さん、どうか招致決議までには会派内の意思を統一され、あるいは議員一人の意思においてご決定をいただくよう、切に私からもお呼びかけを申し上げる次第でございます。
 ちなみに、昭和三十九年の東京オリンピックのときには、既に全会派が全会一致で都議会において東京オリンピック招致決議をしております。戦後の厳しい時代にもかかわらず、多くの都議会の先輩がこのようなすばらしい決議をしたこの歴史を、後世の都議会議員の私どもが高く尊重し、先輩の教訓を見習うべきであると強く主張申し上げまして、私の代表質問を終わらせていただきます。
 どうか皆さん、よろしくお願い申し上げます。
 
▲ページのトップへ

戻る