▼議長(内田茂君)
続きまして、三十番柿沢未途君。
〔三十番柿沢未途君登壇〕
▼三十番(柿沢未途君)
続きまして、海外調査団の報告をさせていただきます。
都議会民主党の土屋たかゆき、相川博、そして私、柿沢未途の三名は、去る十月十五日から二十三日までの九日間、ベルリン、ストックホルム、パリの三都市において調査を実施してまいりました。
以下、調査の内容についてご報告いたします。
まず最初の訪問地ベルリンでは、建物における外断熱工法について調査をいたしました。
外断熱工法とは、建物の体の外側に断熱材を張りつける工法です。建物の体が断熱材ですっぽりと覆われた形になりますので、蓄熱性にすぐれ、冷暖房効率が上がることで省エネルギーにつながるといわれています。
また、建物の体が断熱材で覆われていることで、外気温の変化や雨風による建物体の劣化、老朽化を防ぐことができ、建物の寿命を飛躍的に伸ばすことができるとされています。
ドイツでは、一九七〇年代のオイルショック以来、建物における省エネルギーが重要視されるようになりました。建築申請に当たって、断熱材の使い方、熱還流率、そして建物内部を二十度以上に保つためにどれだけのエネルギーが必要かなどを記載した書面を必ず提出することになっているほどです。
私たちの現地調査では、旧東ベルリンのパンコウ地区、ヘラースドルフ地区において、集合住宅の外断熱化の工事現場を見て回りました。
旧東ドイツの統治下にあった東ベルリンの住宅は、その多くが無断熱のプレハブ工法で建てられており、建築から三十年余りが経過した今、その多くが激しく老朽化し、建てかえを余儀なくされています。無断熱のプレハブ工法は、建築時は安上がりだったかもしれませんけれども、結果として建物の寿命が短くなり、ライフサイクルコストとしては高くつくことになっているのです。
これは、日本の集合住宅でも全く同じことがいえます。日本では、建物体の内側に断熱材を張りつける内断熱工法が一般的で、工費こそ安上がりなものの、建物の体が直接雨風にさらされるため、それだけ劣化が早く進みます。
日本の団地やマンションを見てください。わずか三十年で建て直しを迫られているではありませんか。築百年以上の建物がざらなヨーロッパのまちとは、対照的といえるでしょう。日本でも、外断熱工法への転換が必要であると感じました。
続くスウェーデン、ストックホルムでは、新しい市街地として建設されているハンマビー臨海都市を視察いたしました。もともとは、ごみの埋め立てでできた工場地帯でしたが、二〇〇四年のオリンピック誘致を目指したストックホルムの、環境に優しいオリンピックの理念を具現化するエコロジー都市として建設が進められました。
ハンマビー臨海都市では、循環型社会が現実に形成されていました。まちから出されるごみのうち、燃えるごみは廃棄物発電所に送られ、発電と地域冷暖房の燃料として使われます。また、生ごみと下水からはバイオガスが取り出されて、各家庭の台所に供給されています。
このハンマビー臨海都市では、年間エネルギー使用量、水道使用量、ごみの排出量を半減しようという目標が立てられており、環境先進国スウェーデンの意気込みを強く感じさせるものでした。
最後の訪問地パリでは、上下水道事業を行う民間会社べオリア社を訪ねました。フランスでは、水道事業の八〇%以上が民間会社に委託されており、最大手であるベオリア社は、そのノウハウを生かして、世界六十五カ国、人口にして一億一千万人に水を供給しています。こうした民間会社を活用することでの運営効率化のメリットなどについて有益な知見を得ることができました。
さらに、パリでは、少子化対策についてのヒアリングも行い、フランスにおける手厚い家族手当の効果について調査いたしました。フランスでは、二番目の子には月約一万五千円、三番目の子どもからは約一万九千円の家族手当が、子どもが二十歳になるまで支給されています。その効果もあってか、九四年には一・六五であった出生率が二〇〇三年には一・九一まで回復しています。
昨日の本会議で石原知事がサジェスティブと話されたように、出生率が一・二九まで低下するという深刻な状況になっていながら、いまだ決定打といえる効果的な施策が見出せない日本にあっても、こうしたフランスの事例は参考になるものと感じました。
以上、概略の報告とさせていただきます。
なお、今回の調査の詳細につきましては、後日、海外調査報告書として取りまとめ、配布させていただきます。
ご清聴まことにありがとうございました。
▼議長(内田茂君)
以上をもって東京都議会海外調査団の報告は終わりました。
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