▼議長(内田茂君)
次に、東京都議会海外調査団について申し上げます。
本議会において、去る十一月十三日から二十二日まで、ニューヨーク、シアトル及びロサンゼルスへ、去る十月十五日から二十三日まで、ベルリン、ストックホルム及びパリへ、それぞれ海外調査団を派遣いたしました。
海外調査団を代表いたしまして、それぞれ報告のため発言の申し出がありますので、これを許します。
九十三番山本賢太郎君。
〔九十三番山本賢太郎君登壇〕
▼九十三番(山本賢太郎君)
長時間お疲れのところ、大変恐縮でございますが、しばし私の報告を聞いていただきたいと思います。
ただいま議長さんからご報告がありましたように、平成十六年度東京都議会海外調査の報告をさせていただきます。
去る十一月十三日から二十二日までの十日間、アメリカ合衆国のニューヨーク、シアトル、そしてロサンゼルスを訪問し、調査を行いました。
調査団員は、野島善司君、臼井孝君、山田忠昭君、鈴木あきまさ君、そして私、山本賢太郎の五名でございます。
今回の調査に当たりましては、昨日来大いに議論のあります東京都の安全対策、特に治安対策や地震対策を中心にテーマを絞りましていたしましたが、海外調査という貴重な機会を有効に活用すべく、ホームレス対策等福祉施策、環境施策あるいは産業施策等についても調査をいたしてまいりました。
よくいう、百聞は一見にしかず、我々はいろいろなものを見、知り、そして思いを抱いてまいりました。以下、調査の概要についてご報告申し上げます。
私たちは、ニューヨークのケネディ空港に着きました。その途端に、アメリカは戦時中にあるということを思い知らされました。外国人に対する厳しい安全対策に遭いました。靴を脱ぎ、上着を脱ぎ、指紋をとられ、瞳孔まで見られました。アメリカ全土は、今、学校、市役所、福祉施設までがボディーチェックが行われております。
考えてみますと、三年前、ニューヨーカーたちが最も誇りにしていた世界貿易センターが一瞬にして廃墟と化し、その広大な跡地に私どもは立ってみて、その思いを深くいたしました。
ニューヨークで、危機管理、治安対策を中心に調査を行いました。ニューヨークでは、夜の地下鉄には乗らない方がいいといわれるように、いまだ治安が余りよくなっていない中で、ニューヨーク市警当局者によると、約二万五千人ほどの若年の非行者がまだいるということであります。
非行に走る原因は何かというと、それは貧困である、貧しいからだということです。警察当局が今最も力を注いでいるのは、犯罪の取り締まりという対症療法ではなくして、根本的な治療として犯罪の予防だというんです。このため警察は、地域との連携体制の構築を重視しており、市民ボランティアとの協働による犯罪予防活動、市民の通報システムの構築、学校での警察活動の紹介等に取り組んでいるということでした。
また、特に力を入れている対象としては、青少年、外国から来た移民、さらに生活困窮者、そして地域コミュニティの育成の四つでございました。
私ども、今東京都が懸命にやっている犯罪予防策と相通ずるものがあること、そして幼年期にしっかりと善悪の区別を教育することがいかに大事かということを痛感してまいりました。
続いて、ニューヨークの市の危機管理室、通称OEMを訪問いたしました。これは、ジュリアーノ市長が危機管理局として立ち上げたものでありますが、二〇〇一年九月十一日のあのテロを契機として、州の知事を本部長として恒久的に設置されたものであります。
ここは、あらゆる分野の専門家が集められており、緊急事態発生時の対策マネジメントを行い、また州政府及び連邦政府との連携をつかさどる組織でもありました。
危機とは、ここでは建物の崩壊、ガス爆発、建築現場における事故等であり、さまざまな事故に対応しており、一日当たり約四十件に及ぶとのことであります。
さらに、常に想定しておくべきこととして、ハリケーン等の自然災害、猛暑等の異常気象、生物化学兵器対策、核爆発対策等を挙げておりました。
次の訪問先であるシアトルでは、危機管理やリサイクルへの取り組みを調査したほか、産業の現状視察としてボーイング社を訪問いたしました。
リサイクル調査で訪問したのは、ラバンコリサイクル社といい、全米で最初に組織的リサイクルに取り組んだシアトル最大のリサイクル会社であります。
市民は、ごみを生ごみと資源ごみとの二区分に分けて出し、この会社においてごみの分別を最終的にかなり細かいレベルまで行い、分別されたものはそれぞれ再資源として資源化されて売り出されます。規模が大きく、かつ近代化された工場でしたが、分別の最終的段階は、依然として人の手によっており、労働集約型となっておりました。
この地では、かつて市民はごみを細かく分けて出していたんですが、現在では収集の利便性やスピードの関係から、二区分にしたということであります。
このような仕組み、そして工場を、では東京ではどうだろうかと、同じように運営できるかといえば、私どもは甚だ疑問であると思ってまいりました。
産業視察として訪問したボーイング社は、従業員約十六万四千人を抱える航空機産業における大企業であります。
私どもは、会社概要と企業戦略等の説明を受けた後、二〇〇八年に、今から四年後に世界を羽ばたく最新鋭機ボーイング7E7生産ラインを実際に視察いたしました。その巨大さに圧倒されましたが、考えてみますと、航空機産業はさまざまな技術が結集したものであります。このような基幹となる産業は、国内産業への波及効果は絶大であります。また、航空機産業は、宇宙開発にもつながる多くの可能性を秘めた分野でもあります。
ボーイング社で日本企業が分担し、生産している部分が何と三五%を占めるという、この現実は、かつて日本が航空機生産分野で世界に誇れる技術を持っていたこととを思いあわせると、その主導権が今外国にありますが、今後、知事のいうように、努力によってぜひ復権したいものと思ってまいりました。
最後の訪問地であるロサンゼルスでは、防災対策を中心に調査をいたしてまいりました。ロサンゼルスは、サンフランシスコと同様に、サンアンドリュース断層の上にありまして、地震の頻繁発生地帯に位置しております。ですから、市民も、我々は断層の上に住んでいるということをよく承知しているようであります。それゆえに、地震に関する研究、そしてその対策が活発に行われております。
そこで、私どもは、まずカリフォルニア工科大学の地震研究所、ラボといいますが、ここを訪れました。これは事実上、南カリフォルニアだけではなく、世界じゅうに地震情報を発信する機関としての役目を担っております。
この地も、いずれ大地震に見舞われることは必至であり、震度七・九の地震が発生した場合、人的被害は死者一万五千人、経済的損失は一兆三百億ドルに及ぶと試算されているようであります。我が東京も、同じく地震発生の危険性は増加しております。他人事ではないと思ってまいりました。
そこで、我々が最も関心のある地震の予知について、予知は果たして可能かという我々のしつこい質問に対して、考慮すべき変数が多過ぎて、現在のレベルでは、日、時まではとても特定できない。しかしながら、一週間、二週間という程度であれば予測は可能であるという回答が出ました。
続いて、市民生活に密着したレベルでの防災対策を視察すべく、ロサンゼルスの消防署を訪問いたしました。
そこでは、厳しい状況下のレスキュー隊が作業しておりました。その作業に備えて、日々消防士がトレーニングを行っておりました。例えば、レスキュー作業に当たり、消防士が体につける装備は、何と皆様、合計五十キログラムであります。私どもも五十キロならばと挑戦いたしてみましたが、これは装備して我々がレスキュー活動などできる代物ではありませんでした。
災害発生時の対応につきましては、消防署間の連携体制、そして地域コミュニティとの協働を重視しているとのことでありました。
以上、もっともっとありますが、概略を報告させていただきまして、他の事項につきましては、後日書類をもって配布させていただきたいと思います。
お疲れのところ、ご清聴ありがとうございました。
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