野田 和男(自民党) |
■知事の基本姿勢 |
平成十七年第二回東京都議会定例会に当たり、東京都議会自由民主党を代表して質問いたします。
まず、社会福祉総合学院をめぐる問題について申し上げます。
百条委員会では、学院の運営に関して、さまざまな角度から徹底的に調査を行いました。その結果、何ら違法、不法などという問題はないとの結論を得るに至ったのであります。また、一部の特別職が、何の問題もない事柄を、大問題であるかのようにいい立てて疑惑を捏造し、あろうことか、執行機関をチェックすべき議会をも利用するという、都政史上かつてない恥ずべき行為が明らかになったのであります。
さらに許しがたいことは、百条委員会という真相究明の場で、真実をゆがめ、事実を隠そうとするさまざまな動きがあったことです。
会派として百条委員会の設置に賛成した民主党は、政策責任者である富田議員が再三にわたり出頭を拒否するなど、真実の解明どころか、疑惑隠しに奔走する始末です。心ある民主党の議員の中からは、こうした対応を潔しとせず、富田議員の出頭を求める声が上がったことは周知のことと思います。
結局、この問題は、都有財産について、個々の政策目的に応じて賃借などの方法を工夫し、いかに利活用の改善を図るかということに尽きるのでございます。
さて、もはや都政には一刻の停滞も許されません。さきの百条委員会における内田議長の発言にもあったように、災い転じて福となす、このことが大切です。都政に大きな混乱と停滞を招いた責任、真実を隠ぺいしようとした責任、都民を不安に陥れた責任を厳しく問わなければなりません。
このたび、知事自身をもって特別職の刷新を英断したことは、高く評価するものです。 我が党は、石原知事を支える与党として、あえてこのことをまず申し上げ、質問に入ります。
さて、本定例会は、我々第十六期都議会議員にとって最後の定例会でありますが、この四年間、日本と東京は大きな変革を迫られました。
近年、我が国は、米国型国際化、いわゆるグローバルスタンダードが急速に進展する中、バブル経済崩壊の後遺症を脱し切れないまま、低迷を続けておりました。こうした状況は、都民一人一人に将来への強い不安を感じさせたばかりか、我が国の輝きを失わせ、日本が、東京が、閉塞感に覆われてしまったのであります。
こうした中、我が都議会自由民主党は、石原知事とともに聖域なき構造改革を果敢に遂行し、数多くの成果を上げてきたと自負しております。
まず、都民生活にとって最大の懸念材料である治安について、石原知事は、竹花副知事を迎え入れ、総合的な治安対策に取り組まれました。我が党としても、治安対策本部を設置し、緊急都民決起大会を開催するなど、多くの地域の団体の協力を得る努力を重ねてまいりました。
我々と知事の取り組みにより、警察官の大幅増員や、新たな警察署の新設、青少年健全育成条例の改正など、次々と実現し、かつて世界で最も安全・安心な東京の復活に向けて、確かな動きを感じさせます。
また、全国で最も厳しいディーゼル車排ガス規制を行い、東京の提案が首都圏自治体を動かし、都民のご理解、関係事業者の献身的なご協力を得て、見事に大きな成果を上げております。このことは、三千三百万人首都圏がスクラムを組むことの重要性や有効性を示しております。
また、少子化の進行という、社会の活力低下はおろか、国家の存亡さえ危惧される事態に直面しておりますが、今年度から、我が党のかねてからの主張を取り入れ、都独自の次世代育成に向けた総合支援がスタートいたしました。
同時に、時代の変化に合わせ、福祉施策を利用者本位、都民本位に抜本的に改めてまいりました。
さらに、都市再生を進め、幹線道路や連続立体交差などのインフラ整備をするとともに、必死に頑張る中小企業や商店街のために、石原知事とともに我が党があらゆる手だてを尽くしてきたのであります。
こうした都独自の先進的な施策を支えるため、我々は、都財政の立て直しにも取り組んでまいりました。財政再建団体転落の危機にあった都財政ですが、職員定数の一万人削減、都議会を含めた給与カットの断行、外郭団体の統廃合など、施策の見直しを徹底して行ってまいりました。
我々と石原知事とが進めてきた改革は、自信と輝きを失いかけた日本をよみがえらせ、その牽引車である東京を再生させつつあります。この成果を発展させ、子孫のために豊かで美しい世界に誇れるまち東京を残していくために何をすべきかが、今問われております。
こうした立場で、現下の都政について質問してまいります。
質問1
初めに、知事の基本姿勢について伺います。
石原知事は、グローバルスタンダードについて、単にアメリカのための価値体系、規範、基準でしかない、アメリカに迎合することで国際性を増したなどという錯覚に陥っていると指摘し、みずからの国家観、歴史観に基づき、従来の都政の守備範囲を超えて、米軍基地問題や沖ノ鳥島をめぐる国土問題も都政改革の中に位置づけ、積極果敢に取り組んでいるわけであります。
一方、国の構造改革を見ると、地方分権を含め、明確な国家観に基づく国家戦略として改革がなされているのか、現時点において甚だ疑問なのであります。
規制改革の目的は、豊かで魅力ある社会の実現であり、社会経済状況の変化に即して柔軟かつ弾力的に行われるべきであり、この点、認証保育所の創設など一連の石原知事による福祉改革は、現在の社会経済状況を勘案して、区市とも協力して実現してきた先駆的な取り組みであったわけであります。金融ビックバン改革や郵政民営化は、方向性としてすべて否定するものではないものの、余りに拙速で、単にアメリカの要請にこたえることが主目的であるとさえ思えるのであります。
そこで、日ごろからグローバルスタンダードのまやかしを指摘する知事の、昨今の国政におけるこれらの動向について所見を伺います。
答弁1
▼知事
昨今の国政の動向についてでございますが、今日本は大きな大きな転換期に差しかかっておりまして、国の統治システム全体の改革を迫られていると思いますが、どうも国のこれから進むべき的確な方向を、国政はまだ定かに定めることができていないというもどかしさを感じざるを得ません。
ともかくも、一つの決定に時間がかかり過ぎている感じがいたします。これも官僚が決めたルーチンにがんじがらめになっておりまして、まことにやっていることに、時間的にも、労力的にむだが多いような気がしてなりません。
この間も総理とお話ししましたときに、総理が、何で所信表明を衆参両方でやらなくちゃいけない、天皇陛下だって開場式に参議院に来られるだけで、どうして一カ所で済まないんだといったら、大変物議を醸したそうでありますが、これもまことに総理の慨嘆が当たっているんじゃないかと私は思います。
いずれにしろ、私たちにとっても大事な案件であります地方分権改革も名ばかりでありまして、国庫補助、負担金削減の数字合わせに終始しておりまして、各省の縦割りの構造から一向に抜け出せておりません。
肝心の国と地方の役割分担についての議論はもう最初から置き去りにされたままでありまして、郵政民営化を見ましても、改革の本質は、郵便貯金や簡易保険などの資金の流れを変え、我が国の金融の構造を変えることにあったはずでありますが、郵政事業の改革に矮小化されている感が否めません。
また、ご指摘のグローバルスタンダードでありますけれども、これもご指摘のとおりです。ただのアメリカのスタンダードにすぎませんし、これに対して日本が戦略的にはっきり対応する、批判をするということもなく、右往左往して、個別の事象に振り回されているのが現況であります。
私、最近知りましたが、アメリカから、このところ毎年、年次の、年度年度の改革要望書なるものが来ているそうでありまして、私、それいわれて一べつしましたら驚きましたが、とにかくこの法律をああ直せ、こう直せ、一々差し出がましく、全部それがアメリカの、要するに利益につながるみたいなことを、私も議員時代にこれ反発したことがありますけれども、以来、いつの間にかこれが慣例化したようであります。これも本当に情けないというか、口惜しい話であります。
ともかく、民間の血のにじむような努力によりまして、日本経済はバブル崩壊の低迷をようやく乗り越えようとしておりますが、この国の政治は、長期的な視点から、国全体の利益を実現するという本来の責任を一向に果たそうとしていない、して得ないという感じがいたします。国際関係にももろもろの問題が生じておりますけど、それ一つ眺めても、寒心にたえないというか、暗たんとした気持ちを抱かざるを得ないというのが国民の共通した印象ではないでしょうか。
質問2
次に、都政を通じた知事の国家戦略の一つ、横田基地の軍民共用化について伺います。
横田基地を含めた米軍再編については、二月に日米安全保障協議委員会、いわゆる2プラス2の開催により、個別基地の具体的な協議が行われる段階に入ったとのことであります。三月には、在日米軍再編について、外務大臣と防衛庁長官が米軍基地のある都道府県の知事と意見交換をする初めての会合が開かれたと聞いています。
横田基地の軍民共用化については、知事が、国や米政府に精力的に働きかけた結果、いよいよ現実なものとして結実しつつあるようであります。そこで、軍民共用化について、現在、国や米国との交渉状況はどのようになっているのか、知事に伺います。
さて、横田基地がある多摩地域は、首都圏における交通の要衝であり、先端技術産業や大学、研究機関の集積、豊かな自然の魅力ある資源が数多く存在する、今後も大きな発展の可能性を秘めた地域であります。
本年一月、都は多摩リーディングプロジェクトを策定いたしましたが、産業の活性化、雇用の促進など、多摩振興の引き金として、横田飛行場の民間航空利用の早期実現に取り組むものとしています。横田基地の軍民共用化が実現すれば、多摩地域を初め、首都圏西部地域の航空需要にこたえるとともに、首都圏の空港容量の不足を補うものとして期待されます。
地元の理解と協力を得るためにも、道路や鉄道の基盤整備を含め、地元に経済効果をもたらす施策を実施すべきであります。地元の経済発展につながるような形で軍民共用化を進めていくべきと考えますが、知事の所見を伺います。
答弁2
▼知事
横田基地の軍民共用化についてでありますが、これ軍民共用化については、これまで日米両政府に早期実現を強く働きかけてまいりましたが、ようやく具体化に向けて動き出そうとしております。
私も、これ議員時代から手がけてきたことでありますが、知事に就任して積極的に動きましたけれども、それにしてもあっという間に時間がたちました。やっと端緒についたというのは早いような遅いような話でありますが、ともかく、この問題の合議機関がやっと小泉内閣になって官房の中に設けられまして、そのときの司会といいましょうか、チェアマンを務めていた副官房長官の谷内君が、そのころから非常によく頑張ってくれました。今度次官になりまして、非常にはっきりした姿勢を打ち出してくれまして、どうも外務省そのものは今まで非常に好ましくないとしておったようでありますが、はっきりと東京都はこれからの日米交渉の合議機関に加わりました。
これは当然のことですけれども、ある意味では画期的なことだと思いますし、これは次官の努力もあって、むしろ、何で現場を持っている東京都がこの合議機関に出てこないんだというのがアメリカ側の不満であったんですが、これは通りました。陰でいろいろこちらも工作しましたが、やっと東京もテーブルに着きまして、何といっても現場というものを持っている、その現場の実情を踏まえて、今後とも地元の理解と協力を得ながら、国と力を合わせ、軍民共用化の早期実現を目指してまいります。
次いで、軍民共用化による経済発展についてでありますけれども、軍民共用化といっても、向こうの軍事当事者が、東京のために働いております高瀬参与にも思わずもらしたようでありますけれども、このままでいくとほとんど全面返還になるんですが、アメリカはなかなかそこのところはずるくて、将来、このアジアにおける軍事的な緊張は一体どういうふうに展開するか。万々々々々が一に備えて、この横田という日本で一番長い滑走路を持っている飛行場を、一応基地としてヘッジしておくというのが向こうの本音でしょう。
ですから、これから空軍の情報関係の航空自衛隊があそこに共存しましても、そこに機材が急にふえるということは決してございません。まあその方がむしろ現地にとっても有効な点もございますので、いずれにしろ、軍民共用化としてあの飛行場が活用される。それは人や物の流れを活発にし、産業の活性化や雇用の促進にもつながると思いますし、大きな経済効果が見込まれると思っております。
一月に策定しました多摩リーディングプロジェクトにおいても、軍民共用化を多摩及び首都圏の大きな発展の引き金になるものと位置づけて、これを視野に入れた施策展開を図ることにいたしております。
ご指摘のとおり、道路や鉄道などの交通網の改善や騒音対策などの課題に取り組むことが必要と考えております。こうした課題に対して、国が責任を持って対応するように積極的に求め続けてまいります。
都としても、あくまでも現場を踏まえた建設的な案を打ち出して、国と連携して実現に取り組んでまいります。
なお、この経済効果云々については、一橋大学の杉山武彦学長が、こういう交通に関係する経済効果の専門家だそうでありまして、彼に委員長を務めていただく委員会が発足しまして、この発足もアメリカが非常に歓迎しておりまして、ぜひその意見を聞かしてほしいという姿勢でおりますので、必ずこのプロジェクトの実現に役に立つ委員会になると思っております。
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■行財政問題 |
質問1
これまで我が党は、石原知事とともに、都財政の危機を肌身に感じながら、財政再建に取り組んでまいりました。その結果、平成十七年度予算は、石原都政にとって初めて臨時的な財源対策を行わずに収支を均衡させることができたのであります。これは、財政再建の長い道のりにおける一里塚をようやく通過することができたといえます。
しかし、先行き不透明な三位一体改革、いまだ解消されない巨額の隠れ借金、原油高を初めとする世界経済の動向など、まだまだ乗り越えなければならない峠道が続いております。今後は、未来に向かってしっかりとみずからの歩みを進めることができるよう、体力を十分回復させなければなりません。
十七年度予算で達成した収支均衡という一里塚から後戻りすることは、もはや許されません。これまでの成果を生かし、再建の歩みを確実なものにするため、なお一層財政構造改革に邁進し、健全な自治体運営のあるべき姿を都みずから示していくべきであります。折しも来年度は第二次財政再建推進プランの最終年度ですが、このプランの総仕上げに向けた知事の決意を伺います。
答弁1
▼知事
第二次財政再建推進プランについてでありますが、財政再建の目的は、中長期的に見て、都税の収入の大幅な伸びが見込めない中にあっても、東京の新しい発展につながる施策の展開を可能とする強固で弾力的な財政体質を構築することにございます。
これまで、都議会のご協力を得ながら、全庁一丸となって財政再建に取り組んできた結果、放漫財政を続ける国とは全く異なりまして、着実に成果を上げてきたと思います。十七年度予算では、税収の増加もありまして、就任以来の懸案でありました財源不足を解消することができましたが、あくまでもこれは一つの通過点にすぎません。
十八年度には、現在のプランの最終年度でありまして、まずは、プランの目標である収支の均衡した予算を目指すことはもちろんのこと、隠れ借金の圧縮など、より一層の財政構造改革に取り組み、都民の負託に積極的にこたえていく必要があると考えております。
質問2
都はこれまでも、職員定数の削減を初めとした行政改革に全力を上げて取り組んできたことは評価しますが、都民に多様なサービスを効率的に提供し、将来にわたって東京の持続的発展を可能とするためには、さらなる行政改革の推進が避けて通れません。
国においても、小さくて効率的な政府の実現に向け、PFIの積極的導入や、官民が対等の立場で競争する市場化テストなどが本格化してきております。都においても、民間への徹底したアウトソーシングや、指定管理者制度を活用した監理団体への競争原理の導入は、極めて重要な課題であります。
都は、新たな発想により、簡素で効率的な行政体制を構築していくことが重要であると考えますが、今後の行政改革に向けた取り組みについて伺います。
答弁2
▼総務局長
今後の行政改革に向けました取り組みについてでございますが、都は、これまでも職員定数の削減や執行体制の整備などに積極的に取り組んでまいりました。社会経済状況の変化の中で、今日、官と民の役割分担もまた見直しが求められております。民間が行えることは民間にゆだね、真に行政が行うべきことは何かという視点からサービスのあり方を徹底して見直し、行政の効率化を図っていく必要がございます。
都は、今後、このような考えに基づきまして、行政サービスそのものや水準のあり方などを再点検いたしますとともに、さまざまな手法を活用して行政改革をさらに進め、都民サービスの一層の向上に努めてまいります。
今後、人口減少社会を迎えるなど、都を取り巻く社会経済状況は、なお一層厳しさを増すものと考えられます。石原都政は、時代の変化を的確にとらえ、新たな先進的施策を展開してきましたが、今後もこうした取り組みをさらに発展させると同時に、行財政運営を改革していかなければなりません。そのために、将来の都政が進むべき方向を定めた羅針盤ともなるべきマスタープランの策定に早期に着手されることを、改めて強く要望しておきます。
質問3
次に、都区制度改革について伺います。
十二年の都区制度改革において積み残された五項目の課題については、現在、都区間で協議が進められています。第一回定例会の我が党の質問でも申し上げたように、都区の主張が平行線で、進展が見られない状況にあります。
このため、我が党は、二十三区の区議会の自民党議員とともに、特別区の区長会、特別区の区議会議長会の協賛のもと、先月五月九日に都区制度改革促進決起大会を開催し、解決に向けて取り組みを始めているところであります。
また、さきの定例会において、知事は、大事なことは東京をどうするかであり、そのために、基礎的自治体である区が何をすべきか、大都市行政、府県行政を担う都が何をすべきかを都区で議論することが必要と発言されました。
もちろん、制度や仕組みを都区で時間をかけて根本から議論することも必要でございます。しかし、五項目の課題には、区が行政運営をしていく上で早急に解決を要する具体的な課題も含まれています。今後、これらの課題の解決に向けてどのように取り組んでいこうとされているのか、改めて知事の所見を伺います。
答弁3
▼知事
都区制度改革でありますが、十二年の改革によりまして、特別区は基礎的自治体に位置づけられ、都は、広域自治体として大都市の一体的行政を行うことが明らかになりました。今後は、日本の首都であり、頭脳部であり、心臓部でもあります東京の将来の発展を見据えて、さらなる改革が必要であると考えております。
そのためには、行政区分のあり方も含め、都と区の仕組みをどのようにしていくか、真摯に議論をしていくことが必要であると思っております。
あわせて、分割してしまいました清掃の経費あるいは小中学校の改築、都市計画の交付金など、具体的な課題について協議を促進し、十七年度中の合意形成に向けて精力的に取り組んでいきたいと思っております。
質問4
次に、税負担の軽減について伺います。
先月二十日に、知事の諮問機関である東京都税制調査会が開かれ、検討課題の一つとして固定資産税制の簡素化が取り上げられました。
我が党は、固定資産税、都市計画税について、従来から、地価が下がっているのに税負担が下がらないなど、現行制度の問題を繰り返し指摘し、制度の抜本的改革を行うべきと主張してまいりました。特に負担が過大になっている二十三区の商業地等について、都独自の軽減措置を講じるよう強く求めてまいりました。
そうした中、知事が、平成十七年度において、新たに条例で商業地等の負担水準の上限を引き下げるとともに、小規模住宅用地や小規模非住宅用地、新築住宅に対する独自の三つの軽減措置を継続されたことは、一つの英断であると考えます。
そこで、これらの措置の意義について、改めて知事の所見を伺います。
また、商業地等の税負担につきましては、多摩地域においても、商店街を中心に引き下げを望む声が強くなっております。ついては、二十三区と同様に、多摩地域におきましても商業地等の負担水準の上限引き下げが行われるべきではないかと考えますが、知事の所見を伺います。
答弁4
▼知事
固定資産税、都市計画税についてでありますが、国は、バブルの生成、崩壊の過程で、固定資産税について十分な対応ができておりませんでした。その結果、現行の制度では、負担の不均衡などさまざまな矛盾が生じておりまして、とりわけ二十三区は全国に比べて過大な負担を強いられております。
このために、都は、課税自主権を行使しまして、小規模非住宅用地などについても軽減措置を講じるとともに、平成十七年度において、新たな条例による商業地域の負担水準の上限引き下げを実施いたしました。これは、都民負担の公平公正を確保し、東京の活力の再生に資する措置であると考えております。
次いで、多摩地域における商業地等の固定資産税などの負担水準の上限引き下げについてでありますが、平成十二年に、都が二十三区で新築住宅の固定資産税などを軽減した際、多摩の市町村に対して同様の軽減措置を働きかけた経過がございます。
しかし、課税権は市町村にあくまでも属しておりますし、また市町村においては、税収減を補てんするために新たな税源が見つからないということなどから反対に遭いまして、実現には至りませんでした。
多摩地域において、商業地等の負担水準の上限引き下げを導入するかどうかについては、課税権を有する市町村があくまでも判断すべき問題であると心得ております。
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■都民の安心・安全対策 |
質問1
都民の体感治安の向上を阻害する主な要因となっている路上強盗、ひったくりなどの街頭犯罪は、検挙人員のうち、約四割が少年であり、オートバイ窃盗に至ってはその九割を少年が占めるなど、少年犯罪はいまだ深刻な状況にあるといえます。
都では、青少年健全育成条例の改正など、さまざまな施策を実施していますが、警視庁として、少年犯罪に対し、現在の取り組み状況と、今後の取り組みの具体策について伺います。
答弁1
▼警視総監
少年犯罪対策についてでありますが、警視庁では、少年犯罪対策は、当面の治安対策としてのみならず、次代を担う少年を健全に育成するという観点からも、極めて重大な課題であると考えておりまして、現在、全庁挙げて推進しております犯罪抑止総合対策、この中でも大きな柱の一つとして、これに強力に取り組んでいるところであります。
具体的には、一昨年来、少年事件を担当する捜査員を大幅に増強してまいりました。また、少年犯罪が多発している地区ごとに、非行集団等検挙解体地区対策本部というものを開設いたしまして、少年犯罪の検挙を強化してきております。昨年中、非行集団等を百六十グループ解体いたしました。ことしも既に三十六グループを解体いたしております。
また、他方で、少年の非行を防止する対策として、少年警察ボランティアや学校関係者等と連携いたしましての街頭補導活動を初めといたしまして、警察OBのスクールサポーターによる少年の非行防止や立ち直りの支援、あるいは少年の非行事案等につきまして、学校側と自主的な相互連絡を行う警察と学校との相互連絡制度、これは都下の全小中高の九五%と既につくっておりますけれども、この連絡制度の構築など、学校、地域と連携しての非行防止対策を推進しているところであります。
その結果、ご指摘がありましたように、少年とのかかわりが深い街頭犯罪につきましては、この四月末現在で、昨年同期に比べまして二二%減少しております。とりわけ、検挙人員のうち、少年が九割を占めておりますオートバイ盗につきましては、三六%減少となるなど成果が出てきております。
今後とも、新たに改正されました青少年健全育成条例を初めとする各種の法令を使いまして、さらに取り締まりを行ってまいりますとともに、少年を非行に走らせないための諸対策を積極的に展開してまいりたいと考えております。
質問2
次に、震災対策について伺います。
南関東では、今後三十年以内にマグニチュード七クラスの大地震が七〇%の確率で発生すると予測されております。国の中央防災会議も、首都直下地震の切迫性を指摘し、地震が発生したときは甚大な被害が生ずるとしています。公共交通機関が麻痺すれば、東京の政治経済活動の回復にも支障が生じ、経済被害は中央防災会議の想定している約百十二兆円を上回ることも考えられます。
災害時の緊急輸送ネットワークに都営地下鉄大江戸線も組み込まれていますが、電車の脱線や火災の発生なども考えられます。そこで、地下鉄を運営する交通局はどのような対策を講じているのか、伺います。
答弁2
▼交通局長
都営地下鉄の震災対策についてお答えいたします。
都営地下鉄は、関東大震災級の地震にも耐えられるように設計しておりますが、平成十三年度までに、阪神・淡路大震災の被災状況を踏まえ、地下駅の耐震補強工事を完了するとともに、百三カ所の曲線部に脱線防止ガードを設置いたしました。
また、消火、排煙設備の拡充や車両の一層の不燃化等の火災対策を推進するとともに、定期的に消火、避難、誘導訓練を関係機関と連携して実施しております。
今後とも、ハード、ソフトの両面から都営地下鉄の安全性向上に取り組んでまいります。
質問3
昨年十月に発生した新潟中越地震では、新幹線が脱線しました。幸いにも、直線で、高架橋から落下しなかったため、人的被害はありませんでした。しかし、東京は、地下鉄を含め、路線が網の目のように整備されており、曲線も多く、線路際には人家が接しています。このような状況で大地震が発生すれば、多くの電車が脱線し、電車同士の衝突や追突、マンションや人家への衝突という大事故につながることも考えられます。
地震時の事故対策のために、鉄道各社とも必要な措置を講じているとは思いますが、今後、都はどのような取り組みを行うのか、伺います。
答弁3
▼総務局長
地震による鉄道事故への対策についてでございますが、地域防災計画におきましては、各鉄道事業者は、地震による事故が発生した場合、被害情報の迅速的確な収集伝達、負傷者の救護に努めますとともに、二次災害の防止に万全を講ずることにしております。また、警察、消防、自衛隊、さらに医療機関においても、相互に連携して迅速な負傷者の救助、救急活動を行うことにしております。
都といたしましては、今月中に都内の鉄道事業者や関係機関を集め、初動措置の再点検強化を求めますとともに、早期に各機関相互の連携マニュアルを整備してまいります。
質問4
次に、都市型水害対策について伺います。
平成五年の台風十一号は、神田川流域に甚大な被害をもたらしましたが、昨年の台風二十二号では、同規模の降雨でも、浸水被害は比較的小規模でした。これは、たび重なる浸水被害に対する都民の切実な声にこたえ、護岸改修や調節池の設置など、我が党が強力に進めてきた治水対策の効果があらわれてきたものと考えております。しかし、近年の都市型集中豪雨の頻発、そして台風の上陸個数の多さを考えると、これから出水期を迎え、中小河川における水害発生の不安を拭い去ることはできません。
都は、水害の解消に向けて、環状七号線地下調節池などの工夫をしておりますが、このような施設も含め、中小河川の現在の整備状況と今後の取り組みについて伺います。
中小河川の整備は着実に進んできていると理解しておりますが、河川と鉄道が交差している区間は、護岸の老朽化など、未整備のままとなっているところも見受けられます。こうした箇所は、関係機関との調整など、整備には時間を要するとのことですが、都の取り組みについて伺います。
答弁4
▼建設局長
中小河川の整備についてでありますが、水害から都民の生命と財産を守るため、緊急性の高い神田川や野川など十五河川で護岸整備を進め、平成十六年度末の整備率は六〇%であります。また、水害の早期軽減を図るため、調節池の整備を進めており、現在、二十四カ所を完成させ、その貯留量は東京ドーム一・五杯分の百八十万立方メートルであります。
こうしたことから、昨年の台風二十二号におきまして、神田川の環七地下調節池が大きな治水効果を発揮したほか、目黒川におきましても、荏原調節池の完成により集中豪雨による浸水被害は激減いたしました。
引き続き、水害のおそれの高い石神井川、空堀川などで護岸や調節池の整備を進めるとともに、現在事業中の環七地下調節池の二期事業におきまして、本年秋には善福寺川からの取水を開始するなど、治水安全度のさらなる向上を目指してまいります。
次に、河川と鉄道との交差部の整備についてでありますが、鉄道橋のかけかえは、河川のネック部の解消を図る上で大変重要でございます。また、輸送の安全を確保しながら限られた空間での施工となるため、高度な技術や綿密な調整を必要といたします。
このため、都は、これまでも神田川のJR中央線の交差部や妙正寺川の合流部など、緊急性の高い箇所から順次整備を行ってまいりました。現在事業中の空堀川では、西武多摩湖線の橋梁区間の整備が平成十八年度に完成し、東村山市や東大和市の水害の軽減に大きく寄与いたします。また、今年度、神田川の高田馬場付近などで、鉄道橋のかけかえ及び護岸の整備に着手いたします。
今後とも、国費などの財源確保に努め、中小河川の整備を着実に進めてまいります。
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■環境行政 |
質問1
石原知事は、環境問題を都政の最重要課題の一つとして、多くの先駆的な施策を推進してきました。とりわけディーゼル車から排出されるPMは、都民の生命と健康を脅かしていることから、知事の強力なリーダーシップのもと、八都県市が連携し、削減に全力を挙げて取り組んできました。その取り組みは、経済環境の極めて厳しい中、多くの事業者の血のにじむような努力と協力によって初めて実現したものであります。
我が党は、規制対応に真摯に努力されている事業者を都が支援するよう強く主張してまいりました。都も、我が党の主張にこたえ、PM減少装置の装着補助や、ディーゼル車買いかえ融資あっせんを大幅に拡充するなど、中小零細な事業者を積極的に支援してきました。また、都の要請にこたえた石油連盟の努力により、国の規制を大幅に前倒して、いわゆる超低硫黄の軽油、ガソリンの全国供給が実現されました。
都の取り組みを契機に、我が国の大気汚染行政は、かつてないほど進展したのであります。これらの成果は、東京から国を動かし、東京から国を変えるという地方主導の先駆的な環境行政のモデルを示したものと考えますが、知事の所見を伺います。
答弁1
▼知事
環境問題の都の取り組みについてでありますが、大気汚染対策や地球温暖化対策などは、本来、これは国が責任を持って取り組むべき課題でありますけれども、どうも国はいささか危機意識に欠けておって、抜本的な対策をいまだに講じようとしてきませんでした。
一方、都は、地方自治体であるがゆえに、国が持ち得ない現場感覚とスピード感覚という強みを持っておりまして、東京都が直面する深刻な環境問題に対しても、この強みを生かして、議会の協力もありまして、ディーゼル車規制を初め、国に先駆けた果断な取り組みを進めてまいりました。
これは、理事者側や議会だけの功績ではなくて、実は、都民、そして関係団体、関係事業者の本当に強い共感、危機意識に支えられたものであると思います。
例えば、石油連盟は、国から何の命令もなく、都のやっていることに大いに共感することで、サルファーフリー、硫黄分をほとんど含まない油の精製、販売というものを始めてくれました。これは本当に都民にとっても涙が出るほどありがたい話でありますし、先般、毎年表彰しております環境問題に関する表彰の中で、この石油連盟に知事賞を贈与させていただきました。
いずれにしろ、国が何で、首都圏で成功してここまで成果を上げているこの施策を国全体に及ぼさないのか、私はいまだに理解ができません。現に、東京に来てひっかかるトラックは全部大阪回っているわけでありますから、こんな不公平な国策というのはないと思います。
質問2
次に、花粉症対策について伺います。
近年、花粉症患者が増加しており、今や国民の六人に一人が患者と推定されるほど国民的な課題となっています。特にことしは、東京では観測史上最大量のスギ花粉の飛散が確認されるなど、大きな社会問題となっております。
我が党は、かねてから花粉症問題の重要性を認識し、平成十三年に石原知事が首都圏再生緊急五カ年十兆円プロジェクトの中で花粉症対策を国に提案された際にも、第三回定例会の代表質問において、花粉症対策の取り組みを一層強化すべきとの主張を行ってきました。
都は、ディーゼル車からの排出ガスと花粉症の関係を明らかにし、ディーゼル車規制によって大気汚染を改善しました。また、荒廃の目立つ人工林を間伐する森林再生事業などを推進してきました。
本来、花粉症問題は、国民的な課題として国が抜本的な対策を講ずるべきですが、国の取り組みは全く不十分なのが実情であります。
花粉症に苦しむ多くの都民を代表して、国に花粉症対策の強化を強く求めていくべきと考えますが、知事の所見を伺います。
答弁2
▼知事
花粉症問題についてでありますけれども、花粉症は、国民の約六人に一人、首都圏においては、四人に一人が患者と推定されておりまして、深刻な健康問題であることはもとより、社会的、経済的影響も甚大なものであります。
花粉症は、大気汚染との複合汚染の所産であることから、八都県市が一体となりまして、ディーゼル車排気ガス規制を実施し、それなりの成果を上げてきましたが、ことしのスギ花粉の飛散量というのは例年の三倍以上、昨年の四十一倍という観測史上最大となっておりまして、その症状も深刻になっております。
花粉症問題が深刻した背景には、皆さんご存じのように、国の林業政策の失敗によって、杉林の管理が放棄され、花粉飛散が量として増大したこと、根本的な予防、治療対策が立ちおくれたことなどがございまして、これはやはり花粉症という国民病に近い疾患の、これに対する国の怠慢にほかならないと思います。
都は、森林整備による発生源対策の推進や、根本的な予防、治療の方法の早期確立など、花粉症対策の強化を八都県市とともに連携して強く国に迫っていくことを先般の八都県市の首長会議でも決めました。しかし、これから行われる都議の選挙で、ひとつこれを大きな争点にしていただきたいと思うわけであります。
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■まちづくり |
質問1
次に、東京の都市再生について伺います。
東京は、いうまでもなく我が国経済の牽引役となる都市であり、国際競争力を備えた経済活力の向上のために、ビジネス拠点としての機能強化を初め、安全・安心で快適な、さらに国際的に見て個性的で魅力あふれる都市に再生していかなければなりません。
このような都市を再生するために、七地域、二千四百ヘクタールに及ぶ都市再生緊急整備地域が指定されてから、間もなく三年経過しようとしています。現在は、東京駅周辺などを初め、秋葉原、新宿、大崎、臨海部などの副都心や新拠点で、民間活力を活用したプロジェクトが次々とダイナミックに動き出しており、東京の都市再生がいろいろな地域で進められていることが実感できる状況になっています。
こうした開発プロジェクトによる都市再生効果について、所見を伺います。
また、都市再生に当たって、経済活力を高めるだけでなく、水や緑を大切にし、特に近年問題になっているヒートアイランド対策など環境に配慮していくことが重要であり、プロジェクトを通じて良好な環境も創出していかなければなりません。
そこで、都市再生の取り組みに当たってどのように環境への配慮がなされているのか、伺います。
答弁1
▼都市整備局長
開発プロジェクトによる都市再生の効果についてでございますが、都心や副都心など多くの地域におきまして優良な民間開発が進展しており、東京の活力や魅力が一層高まっております。
例えば、首都の顔である東京駅周辺やIT拠点の秋葉原地区では、質の高いオフィスへの機能更新が連続的に進んでおり、我が国の経済を牽引する国際ビジネス拠点の形成が実現しつつございます。また、六本木ヒルズや汐留シオサイトでは、業務、商業、文化などの多様な機能の導入が図られ、東京の新たなにぎわい空間が創出されております。
一方、都市型住宅の供給により、都心三区の夜間人口が最近五年間で約四万人増加するなど、都心居住が大いに進んでございます。
今後とも、我が国の国際競争力を高め、都民が豊かで快適に暮らせる東京を実現していくため、こうした都市再生プロジェクトを積極的に進めてまいります。
次に、都市再生の取り組みにおける環境への配慮についてでございますが、開発プロジェクトの推進に当たりましては、これまでも日比谷公園の十六個分に相当する約二百六十ヘクタールのオープンスペースや緑を確保するとともに、ビルの省エネ化を図るなど、都市環境の向上に努めてまいりました。
最近、都市再生特別地区を指定した大崎駅周辺地域を例にとれば、オープンスペースの整備や屋上緑化、壁面緑化により豊かな緑を取り入れているほか、大崎の森と呼ばれるまとまった緑地を創出しております。さらに、目黒川を軸とした風の道の確保に配慮するなど、ヒートアイランド現象にも対応したまちづくりを進めているところでございます。
今後とも、地域特性を生かし、環境に配慮した都市再生に取り組んでまいります。
質問2
次に、交通渋滞の解消に向けた道路整備の取り組みについて伺います。
都内の慢性的な交通渋滞は、都民の日常生活や企業活動に時間的、経済的損失を与えるばかりでなく、排気ガスの増加など環境悪化の原因となっており、その解消は待ったなしの課題であります。そのためには、三環状道路の整備にあわせ、骨格幹線道路ネットワークの整備や連続立体交差事業の推進が不可欠であります。
これまでも我が党は、道路整備に必要な財源の確保とともに、繰り返し事業の推進を要望してまいりました。特に昨年は、三位一体改革の議論の俎上にのった道路特定財源の地方譲与税化に反対し、特定財源として堅持すべく、国に対する意見書を採択するなど、都議会として積極的に活動してまいりました。
そこで、この四年間の渋滞解消に向けた道路整備の成果について伺います。
また、これらの成果により、都民が実感できる事業効果としてどのようなものがあったのか、伺います。
活力ある東京の再生に向けて、引き続き道路整備を積極的に推進すべきと考えますが、今後の取り組みについて伺います。
答弁2
▼建設局長
この四年間の道路整備の成果についてでありますが、圏央道など三環状道路の整備促進を図るとともに、区部環状、多摩南北、圏央道アクセス道路などの整備を進め、都市計画道路など約二百カ所、六十キロが完成いたしました。主な箇所としては、環状第八号線の練馬春日町トンネル、放射第一六号線の清砂大橋、府中所沢鎌倉街道線の府中区間や綾部原トンネル、新滝山街道の戸吹トンネルなどが開通いたしました。また、交差点すいすいプランでは、北府中駅交差点など四十カ所の整備が進んでおります。
さらに連続立体交差事業では、小田急線世田谷代田駅から喜多見駅間が高架化されるとともに、新たに代々木上原駅から梅ヶ丘駅間や京王線調布駅付近の事業に着手いたしました。
次に、これらの事業効果についてでありますが、清砂大橋の開通によりまして、上流にかかる葛西橋の交通量が約三割減少し、橋詰めの交差点では、最大渋滞長が二百五十メートルから四十メートルに減少いたしました。また、綾部原トンネルの開通では、前後の交差点区間で、所要時間が十五分から一分へ大幅に短縮されるとともに、交通の分散化により歩行者の安全性が向上いたしました。
小田急線の高架化では、踏切十七カ所を除却し、交通渋滞や踏切事故を解消するとともに、駅前広場が整備され、沿線のまちづくりが大きく進展いたしました。
これら道路整備の進捗によりまして、都内の走行速度が向上し、交通渋滞が緩和されるとともに、沿道環境が改善されるなど、着実に効果を上げております。
最後に、道路整備の推進に向けた今後の取り組みについてでありますが、三環状道路の一つである中央環状品川線は、街路事業を先行させて着手するとともに、環状第八号線の全線開通や新交通「ゆりかもめ」の有明から豊洲間の延伸部の完成は、今年度内に着実に達成いたします。
さらに、中央環状新宿線とあわせた山手通りの拡幅、調布保谷線や府中所沢線などの整備に重点的に取り組み、骨格幹線道路ネットワークの早期完成を目指してまいります。
また、JR中央線や京浜急行線など連続立体交差事業、都市交通の円滑化に資する新交通日暮里舎人線や地下鉄十三号線の整備を引き続き進めてまいります。
今後とも財源確保に努め、地元の理解と協力を得ながら、交通渋滞の解消に向け積極的に取り組んでまいります。
質問3
次に、鉄道運行の安全対策について伺います。
去る四月二十五日、兵庫県尼崎市で発生したJR福知山線の列車脱線事故は、百七名の方がお亡くなりになられるという大惨事となりました。また、東京においても、三月十五日に、東武伊勢崎線竹ノ塚駅付近の踏切で四名の方が死傷するという痛ましい事故が発生したことも忘れてはなりません。お亡くなりになられた方々のご冥福をお祈りするとともに、ご遺族の方々に心からお悔やみ申し上げたいと思います。また、負傷された方々の一日も早いご回復をお祈りいたします。
いずれの事故も、原因を究明し、安全確保のために対策を講じることが急務であります。竹ノ塚駅付近の踏切事故については、先日、歩行者や自転車の安全を確保する緊急対策が関係者間で合意され、新たな跨線橋を含めたすべての対策を年度内に供用開始すべく、整備が進められております。
都のリーダーシップにより短期間で対策が決定したことは評価しますが、区民の望むのは一日も早い鉄道高架化であります。四月七日に、足立区長、議長、地元の代表の方々が国土交通大臣へ高架化の早期実現を要望した折、根本的な解決は連続立体交差事業の実施である旨の大臣発言があったとのことです。当然都も同じ考えだと思います。
連続立体交差事業を実施するには、都の強力な支援が欠かせません。今後、踏切問題の抜本的な解決に向け、どのように進めていくのか、見解を伺います。
答弁3
▼都市整備局長
竹ノ塚駅付近における踏切問題への取り組みについてでございますが、都は、事故後直ちに、足立区、東武鉄道とともに竹ノ塚踏切対策会議を立ち上げ、本年四月二十二日に、踏切直近における歩道橋設置などの緊急踏切対策を取りまとめ、公表いたしました。これら対策につきましては、関係機関と連携し、本年度中に完成させる予定でございます。
また、都内の踏切対策推進のため、都は、事故後改めて補助金確保や採択要件緩和などを国に要望いたしました。
今後の竹ノ塚駅付近における踏切の中長期対策につきましては、区が設置いたします検討会メンバーを助役、部長級にするとともに、新たに国の委員も加え再編成し、今月中にも新メンバーによる検討会を開催する予定でございます。
都といたしましても、引き続きこの検討会に積極的に参画し、連続立体交差事業も含めた道路と鉄道の立体化のあり方や課題について、技術面、財政面、制度面などさまざまな面から総合的に検討してまいります。
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■地域の活性化 |
質問1
次に、商店街振興について伺います。
東京の魅力は、商店街という活気あふれた空間が東京じゅうにモザイクのように広がっていることであります。住みたいまち、訪れたいまちと呼ばれる地域に必ず元気な商店街があり、住民や来訪者の心を引きつけるさまざまな取り組みが行われ、地域全体の魅力、活力を高めております。
我が党は、東京に元気な商店街が数多く生まれるよう、全力で応援してきました。新・元気を出せ商店街事業を中心とする商店街振興策は、今年度から、地域連携型モデル商店街事業や商店街グランプリなど新たな制度が加わり、予算規模も拡大するなど、一層充実強化されたところであります。
そこで、こうした新規施策も含め、商店街振興施策を展開していくに当たって、都の姿勢を改めて伺います。
答弁1
▼産業労働局長
商店街振興施策についてでございますが、商店街が地域において重要な役割を果たしていくためには、消費者ニーズの変化に的確に対応する経営力を高め、明確な戦略とそれを実行する組織体制を整えることが必要でございます。また、地域の課題に住民とともに取り組むコミュニティ機能を強化していくことも大切でございます。
都は、これらの課題解決に向けた商店街の取り組みを、新・元気を出せ商店街事業等を活用して幅広く支援するとともに、地域連携型モデル商店街事業などの新規施策を効果的に実施して、地域特性を生かしたまちづくり活動などの意欲的な取り組みがさらに促進されるよう、力を注いでまいります。
質問2
次に、金融施策について伺います。
金融機関の不良債権処理にもめどがつき、企業の資金繰りは改善傾向にあるとはいうものの、都の調査では、いまだ三分の一以上の中小企業は資金繰りが苦しいなど、中小企業は依然として厳しい経営環境にあります。中小企業は東京の産業を支える重要な役割を担っているばかりか、我が国経済の活力源であります。
そこで、中小企業の振興を図るため、都はどのような金融施策を展開していくのか、その基本的な取り組み姿勢を伺います。
答弁2
▼産業労働局長
中小企業金融施策についてでございますが、制度融資につきましては、本年度、会計情報の適正化に取り組む中小企業に対するクイック融資や、中小企業の海外展開を支援する制度の創設など、一層の充実を図ったところでございます。また、債券市場の拡充やファンドの創設により、間接金融中心の金融施策から、直接金融にも重点を置いた施策を実施しております。
さらに、新銀行東京は、中小企業への新たな資金供給の担い手として本年四月に開業し、七月には全面的に業務を展開する予定となっております。
今後とも、経済情勢を的確に把握し、中小企業の多様なニーズに合った金融施策を幅広く展開してまいります。
質問3
次に、雇用就業対策について伺います。
雇用に関するワンストップサービスを行う東京しごとセンターは、昨年の七月の開設以降、民間事業者を活用して都独自の事業を展開してきました。平成十七年三月末の時点で既に五万人を超える方が利用しているとのことであり、都民の期待の大きさを物語っております。
雇用環境はいまだ厳しく、ニートやフリーターという若者の存在など、新たな問題も発生しています。仕事を求める都民の切実な声にこたえ、就業を支援していくために、しごとセンターの機能を充実し、引き続き積極的な事業の展開により、雇用環境の変化に適切かつ柔軟に対応すべきと考えますが、所見を伺います。
さらに、より多くの都民が身近な地域でしごとセンターのサービスを受けることができるよう、地域拠点を整備していくことを強く要望しておきます。
答弁3
▼産業労働局長
しごとセンター機能の充実についてでございますが、都は、雇用に関する都民の不安を解消するため、しごとセンターを設置し、独自の雇用就業対策に取り組んでまいりました。開設初年度の実績を見ますと、中高年登録者の約五割が就職するなど、着実に成果を上げることができたところでございます。
また、本年度は特に若年者に対する就業支援を強化することとし、五月から街角カウンセリングを池袋、立川で開始するなど、新たな取り組みを行っております。
今後とも、事業の一層の充実を図り、雇用環境の変化に的確に対応してまいります。
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■島しょ振興 |
質問1
次に、三宅島について伺います。
三宅島は、ことしの二月一日、全島避難から四年五カ月ぶりに避難指示が解除され、帰島が実現しました。避難指示解除から四カ月が経過し、帰島は無事故で順調に進んでおり、現在九百世帯、一千六百人を超える島民の皆さんが帰島し、生活の面では、学校や保育園が四月から再開し、旅館、民宿、商店、食堂なども次々と営業を始めました。
今後は、帰島した島民自身の主体的な自助努力を前提に、生活を一日でも早く安定させることが必要です。三宅島を活性化させるとともに、島民が自立して生活できるように、都は引き続き強力に支援していくべきであると考えますが、知事の所見を伺います。
答弁1
▼知事
三宅島についてでありますが、避難指示解除から四カ月、千七百人近い島民が帰島し、火山ガスの噴出が続く中、再建に取り組んでおられます。
都はこれまで、住宅、医療、教育などの生活関連施設や漁業施設などを緊急整備するとともに、都独自の住宅再建支援制度を創設するなど、島民生活を支援してまいりました。
今後も、安全対策を講じつつ、産業復興や雇用確保など、生活再建のための施策を積極的に進め、自立した生活の実現に向けて全力で取り組んでいくつもりでございますが、しかし、この間の連休で観光客が戻ってきて、久しぶりに釣り人が来てたくさん釣れたと。私は、これ非常に単純というか、既存の方法にすがっただけで、このまま放置すると、また魚を取り尽くして余り釣れなくなる。
私は、かねてから、二代の村長さんに、ちょっと思い切ったことを考えたらどうだ、ある提案をいたしましたが、率直にいって、この三宅島というのはなかなか島民の皆さんの意見がまとまりにくい島でありまして、これがどういうふうに議題にいくかというか、村長さん自身も逡巡しているようですけれども、実は、ここでは申しませんが、私が、こういうことをしたら島おこしになるんじゃないでしょうかなと申し上げたことを、全然違う所用で先般東京都を訪れた対馬の町長が同じ発想をぽろっといって、ちょっと遠いんだけれども可能性あるでしょうかと私いわれて、あるよというと向こうに案取られちゃうんで、ううん、対馬はちょっと遠いなという話をしたんですが、やはり行き詰まった、お客を招致したい、ほかの離島はいろんなこと考えているわけですね。
三宅島もやっぱり東京都にぶら下がるだけじゃなくて、あの地の利を生かした独自の案というものを考え、これは私が押しつけるわけじゃありませんが、そういう案もあるなと思ったら、要するに論議にかけて、自分たちで視察する目的地も教えてあげたんですけれども、まあ今帰って早々ですから、その余裕もないかもしれませんが、やはり今までのままではこの島の復興というのは、荒れ果てたその山林眺めますとなかなか難しい。これはとても東京ひとりでは賄い切れるもんじゃありませんし、島民の皆さん方も、観光誘致ということに関してもいろいろ情報があるんですから、発想を新たにして思い切った試みに取り組んでいただきたいなと思っております。
質問2
また、三宅島の生活基盤を安定させるためには、島の基幹産業である農林水産業や観光業の再生、振興を図ることが不可欠であります。
帰島後、農地や農業用水施設等の復旧が始まりました。伊豆地区の畑では、八王子のげんき農場から持ち帰ったアカメイモが元気に育っているとのことです。水産業では阿古漁港の冷蔵施設など復旧され、トコブシ、ハタ類が放流されています。
観光面では、五月一日に観光客の受け入れを再開するに当たって、ホームページで民宿や商店の紹介、ガスマスクの携帯など島内ルールを伝えるパンフレットの配布、新たに雄山の火口を見るヘリコプターツアーにも取り組み、五月の大型連休には約一千七百名の方が来島されました。
今後、三宅島の産業振興についてどのように取り組むのか、所見を伺います。
答弁2
▼産業労働局長
三宅島の産業振興についてでございますが、農業につきましては、六月上旬から、荒廃した農地の改良工事に着手いたします。また、今後、種苗生産施設等の整備を支援してまいります。漁業につきましては、阿古漁港を拠点に操業を開始しておりますが、今後、テングサ倉庫や漁場の復旧を支援してまいります。
一方、野鳥が戻り、魚もふえ始めており、自然は回復しつつございます。観光振興では、釣りやダイビングに加え、火山島の特徴を生かしたツアー等のメニューの整備を図っていくことが、今後重要と考えております。その実現に向けた三宅村の観光振興プラン策定を積極的に支援してまいります。
これらの対策を迅速かつ着実に進め、産業活動の活性化に引き続き取り組んでまいります。
質問3
次に、第一回定例会で我が党の比留間幹事長が取り上げた沖ノ鳥島について伺います。
沖ノ鳥島は、国連海洋法条約上れっきとした島であるにもかかわらず、突然中国が、岩であって、排他的経済水域を有しないという主張をし出しました。我が党は以前から、国は毅然として対応すべきという立場から、知事の言動を支持してまいりました。
知事は、沖ノ鳥島周辺海域が日本固有の経済水域であることを都が率先して実証するとして、国に先駆け漁業開始のための予算を措置し、五月十九日から二十一日に沖ノ鳥島を視察されました。漁業は既に操業を開始、成果が得られる見通しであり、視察時にはシマアジを放流し、各種調査も開始するなど、さまざまな取り組みが動き出していることを心強く感じております。
今回の視察は、今後の多角的な沖ノ鳥島の利活用や資源開発の可能性を探るためにも有意義なものであり、国を動かす力につながっていくものと確信しております。
そこで、知事の今回の沖ノ鳥島視察の感想を伺います。
答弁3
▼知事
沖ノ鳥島視察についてでありますが、我が国の領土である沖ノ鳥島に上陸して、地形や施設、リーフの内外のサンゴ、魚類など、島の状況を確認してまいりました。
現に、小笠原島の漁業協同組合の漁業操業をお願いしておりまして、成果も上がっておりますが、それを視察し、水産資源増殖のために、シマアジという高価な魚の稚魚を十万匹放流もしてまいりました。
いずれにしろ、島の環礁そのものは非常に浅くて、波風が打ち込んで、ある意味では決して豊かな礁湖とはいえませんが、一たん外側に出ますと、一番潮の当たり、風の当たりの影の、魚の、漁のしにくい、漁師はケンミといいますけど、そこでも五十メートルの水深の状況を見ますと、非常に可能性のある豊穣な漁場であるということが確認できました。
今後、海水温度差発電については、施設の可能性も十分実感しましたし、後は国に督促して、せっかく国が、国交省が認可し、かつ開発の予算もつけたこの日本の新しい技術をこれに適用して、深層水をくみ上げ放流することで、漁場として造成していきたいと思っております。
それから、先ほど、国の意識の問題でありまして、私、この間、久しぶりに日本に来まして、非常に親しい、来るたびに会っていますが、ボルトンという、今度国連大使になるんでしょう、彼が私の事務所に来ましたときに、地図を示したら、彼は軍人でありませんから、初めて気がついて、ああなるほどといっておりましたが、この沖ノ鳥島というのは、アメリカが西太平洋に構える沖縄に次いだ大戦略基地のグアム島から、沖縄に向けて直線距離の真ん中にあるんです。
これは、航空母艦や潜水艦の航路にとって、通過せざるを得ない大事な大事な水域であります。現に、中国は、潜水艦の数をやたらにふやしております。ソビエトからの購入も含めて年に十隻ずつふやしておりますと、五年たちますと、彼らの総数は百三十隻になり、アメリカの潜水艦の数はわずか二十五隻。そのうちミサイル発射できる潜水艦は七隻しかない。これは潜水艦の数だけで対応できるものじゃありませんが、もしアメリカの原子力空母が出動して日本の水域に向かう途中、非常に数の多いディーゼル型の潜水艦だろうと、これにピラニアのごとく取り囲まれて魚雷発射されたら、これは防ぎようがありません。これは専門家の意見。もしそれで五千四百人を搭載しているアメリカの航空母艦がそこで沈没すると、これはアメリカの世論というのは非常に刺激されて大きく変わりますな。
やっぱり、そういう可能性というものを想定しているがゆえに、中国は、これからの西太平洋の、要するに海における覇権というものの推進のために、この水域に非常に関心を持って、これは資源の調査じゃないんです。現に私たちが引き上げると、すぐまた向こうの海洋調査船がうろうろしていますけれども、これはあくまでも潜水艦の戦略の水路の確認調査でありまして、それ以外の何ものでもないと私は思います。まず間違いないと思います。
こういったことを私たちはやっぱり意識して、この島を単に経済活動をもって排他性経済水域として実効支配するだけでなくて、プラスアルファ大きな大きな意味があるということも、都民――まず都民の財産でありますから、あそこは。国民全体もこの島に関して持っていただきたいと、思いは切であります。
質問4
次に、試験研究機関の見直しによる島しょ振興への効果について伺います。
島しょ地域の農林水産業は、輸送手段を主として船舶に頼り、毎年のように台風等に見舞われる厳しい環境に置かれております。国の内外の他の産地と競合していくためには、常に技術革新が求められており、試験研究は島の産業振興にとって重要な意義を持つとともに、島民の大きな期待が寄せられています。
都の試験研究機関は、平成十六年度の見直しにより、島しょ地域では、水産試験場と各島しょの園芸技術センター、農業改良普及センターが統合され、東京都島しょ農林水産総合センターが設置されました。
そこで、今回の見直しが島しょ地域の振興のためにどのような効果が期待できるのか、所見を伺います。
答弁4
▼産業労働局長
試験研究機関の見直しによります島しょ振興への効果についてでございますが、島しょ地域における試験研究機関の見直しは、農林水産各分野の調査研究と普及指導の部門を統合し、島しょ農林水産業を一体的に振興するために行ったものでございます。
現在、島ごとの特性を生かした島しょ地域全体の振興計画を策定中でございます。この中で、地域特産のアシタバ等の農産物や水産物の加工品開発、観光業と連携した販路開拓など、農林水産各分野の横断的な取り組みを進めてまいります。
今後とも、島の資源を最大限に活用し、島の基幹産業である農林水産業の振興を図り、地域の活性化に努めてまいります。
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■福祉保健施策 |
質問1
我が党は、活力ある東京の実現、さらにそれを持続させていくための土台づくりが重要と考えています。福祉はその土台の一つでありますが、都では、石原知事のリーダーシップのもと、利用者本位の福祉の実現に向けた福祉改革の積極的な取り組みを行っております。子ども、高齢者、障害者施策の各分野で福祉改革に向けて植えてきた苗も、順調に育っております。
そうした中、現在国会で障害者自立支援法案が審議されております。この法案は、身体、知的、精神に分かれている三障害の福祉サービスを一元化することや、利用者の増加に対応できるよう、安定的かつ効率的な制度にしていくことにより、障害者の自立した生活を支援することを目的としています。
都ではこれまでも、障害者が自立して生活できる社会の実現を目指し、サービス基盤の整備などさまざまな取り組みを先駆的に進めてきており、この法案の理念は、都の方向性と一致するものとして評価するものであります。
地域の実情に応じたサービス基盤の充実のためには、財政支援を初めとした国の責任は非常に重大であります。しかしながら、国は、三位一体改革の中で突如として国民健康保険への都道府県負担導入を決めるなど、その責任を自覚しないばかりか、地方に負担を押しつけようとしております。
そうした中、都は現在、整備費の国庫補助協議を行っていますが、国は、予算枠が十分確保されていないことを理由として、採択件数をかなり絞っていると聞いています。
この国庫補助協議に至るまでには、施設の関係者の綿密な準備、障害者の家族、地元住民、区市町村関係者の真摯な取り組みなど、数限りない努力が積み重ねられています。それが国の財源不足を理由に一切無にされようとしていることは、非常にゆゆしき問題です。国がその責任を果たすよう、さらに強く働きかけるとともに、仮に不採択となった案件が生じた場合は、地域のサービス基盤の整備に強力に取り組んできた都としても方策を講ずるべきと考えますが、所見を伺います。
また、この法案は、福祉サービス等の費用を皆で負担し、支え合う仕組みとするために、利用したサービスの量に応じた負担を障害者に求めています。この定率負担の導入には、障害者や障害者団体から不安の声が上がっています。利用料については、特に影響が大きい所得の少ない障害者に十分配慮をし、きめ細かな負担軽減措置を講ずる必要があると考えます。
そこで、今回の定率負担の導入について、都の基本的な考えを伺います。
答弁1
▼福祉保健局長
障害者施設の整備についてでありますが、お話のように、国からは、財源不足を理由に、かつてないほど厳しい採択の見通しが伝えられております。今年度は、重点事業として取り組んできた障害者地域生活支援緊急三カ年プランの最終年度に当たり、例年にも増して多くの計画の補助申請をしておりますが、国の採択の状況によりましては、三カ年プランの達成に大きな影響を及ぼし、長期にわたって準備を進めてきた事業者や区市町村の努力が徒労になりかねません。
都としては、採択数を一件でもふやすよう国に粘り強く要請するとともに、仮に不採択となった場合には、三カ年プラン対象事業について、都として必要な支援策を検討してまいります。
次に、障害者のサービス利用に伴う負担についてでありますが、定率負担の導入は、今後、障害のあるだれもがサービスを広く利用できるようにするために必要であり、また、利用にかかわる負担の公平化を図り、制度を安定的なものとするためにも、一定の合理性を有していると考えます。
しかし、一方で低所得の障害者のサービス利用を抑制することのないよう、負担能力を適切に反映した配慮が不可欠と認識しております。
このため、今回の制度改正が真に障害者の自立を支援するものとなるよう、先日、実効性ある就労支援策の構築などとあわせて、利用者負担についてきめ細かな軽減措置を行うよう、国に対し緊急提案をいたしました。
質問2
次に、次世代育成支援について伺います。
都では先般、次世代育成支援対策推進法に基づく行動計画を策定しましたが、我が党は、子どもの健全育成のためには、子どもと子育て家庭全体を視野に入れた総合的な取り組みこそが重要であると考えております。国の社会保障の在り方に関する懇談会においても、高齢者給付に比べて児童家庭給付の比重が低い現状を見直す方向で検討されると聞いております。
そうした中、都は、子育て家庭を多面的に支援するため、我が党の主張を受けて、次世代育成緊急対策総合補助制度を設けました。この制度を区市町村が活用しやすいものとして、地域における子育て基盤の整備を早期に進めていくことが重要であり、予算計上した二十億円の全額執行が強く望まれます。
そこで、都は、この次世代育成緊急対策総合補助制度をどのように位置づけて執行しようとしているのか、伺います。
答弁2
▼福祉保健局長
次世代育成支援についてでありますが、子どもが健やかに生まれ、育成される環境を整備することは、親はもとより社会全体の責任であります。その中で、子育て家庭の経済的基盤の確立や基礎的インフラの水準確保は国の責務であり、各自治体は、地域の実情を踏まえた身近なサービス基盤を整備する役割を担うものと認識しております。
このような考えに基づき、都は、本年四月に次世代育成支援東京都行動計画を策定し、認証保育所など、これまでの先駆的取り組みをさらに前進させることとしております。行動計画の初年度に当たる今年度は、地域の総力を挙げた取り組みを喚起することが重要であり、次世代育成緊急対策総合補助制度は、そのための極めて有効な手段と考えております。
こうした制度創設の趣旨を十分に踏まえ、区市町村との連携を緊密に図りながら、親が病気のときなどに利用できるショートステイの充実や青少年の居場所づくりなど、地域の子育て環境の整備に向けて、本制度を最大限活用してまいります。
質問3
次に、高齢者の健康づくりについて伺います。
いわゆる超高齢社会の到来に備えて、だれもが安心して暮らせる長寿福祉社会の実現が緊急の課題となっています。社会保障の構造を改革する施策の展開が強く求められていますが、その根幹ともなる元気な長寿をいかに実現するかが極めて重要であります。
各区市町村を初め自主グループが独自に取り組むなど、自分の健康は自分で守り、つくるという自己管理の考え方は普及されつつあるものの、社会全体で支援するという考え方はまだ十分に浸透していません。地域の自治体や関係団体等が効果的な健康づくり、介護予防を実施できるよう、健康づくり支援体制の輪を広げていくためには、関係者間の情報共有化や連携体制を整備していくことが肝要であります。
高齢者の健康づくりに向け、今後都として施策展開をどのように進めていくのか、伺います。
答弁3
▼福祉保健局長
高齢者の健康づくりについてでありますが、高齢者ができる限り自立した生活を送るためには、健康を維持するとともに、介護度の悪化を防ぐことが何よりも重要であり、都は、これまでも生活習慣病予防や寝たきり予防などに積極的に取り組んでまいりました。
今年度におきましては、区市町村における介護予防の普及を図るため、国に先駆けて基本健康診査と介護予防健診「おたっしゃ21」を一体的に実施する新たな取り組みに着手するとともに、企業、NPOなどの団体の連携による東京都健康づくり応援団を創設し、都民の健康づくりを社会全体で支援する仕組みを構築いたします。
今後とも、保健所などでの取り組みも通じて、生涯にわたる健康づくり施策を積極的に展開してまいります。
質問4
次に、ホームレス対策についてであります。
目に見える形でブルーテントを減らしていこうとするホームレス地域生活移行支援事業は、昨年の六月に新宿区内の二つの公園で事業着手してからちょうど一年となります。この事業の取り組みにより、隅田川沿いにはまだ多くのブルーテントが残るものの、公園部分ではホームレスが減少し、この四月には盛大に桜まつりが催されたところです。
四月には代々木公園でも取り組みが始まり、次は上野公園です。早期に事業着手してほしいと強く願うものでありますが、この代々木公園の進捗状況と上野公園の事業実施の見通しについて伺います。
答弁4
▼福祉保健局長
ホームレス地域生活移行支援事業についてでありますが、既に事業着手した新宿区内の二公園では、対象者の約八〇%が事業を利用するとともに、実施中の隅田公園を合わせますと、現時点までに約六百人が借り上げ住居へと移り、就職活動などを行っており、地域での自立に向けた取り組みが着実に進んでおります。
代々木公園の取り組み状況でありますが、四月下旬、現地説明会を開催し、今後、健康診断などを行った上で、借り上げ住居への入居を実施していく予定であります。
また、上野公園につきましては、七月の事業着手に向けまして、現在、地元区と最終的な細部の協議や、事業の担い手となる団体の選定作業などを行っている段階にございます。
今後とも、特別区と協力し、この事業に積極的に取り組んでまいります。
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■日本の伝統・文化の学習 |
質問1
次に、教育問題について伺います。
教育は国家百年の大計といわれるように、今、世界各国で、国家戦略として教育改革を進めています。共通していることは、児童生徒の学力向上と健全育成、教員の資質の向上などを目標に掲げているところであります。
我が国では、社会全体に自信の喪失や閉塞感が広がり、子どもたちの規範意識や道徳心、自律心の低下や学ぶ意欲の低下、さらには家庭や地域の教育力の低下など、教育をめぐる多くの課題が指摘されています。
これからの教育は、二十一世紀の国家、社会に主体的に参画し、日本の伝統・文化を基盤として国際社会に生きる日本人を育成するものでなければなりません。
都教育委員会では、昨年の四月に東京都教育ビジョンを策定し、国を先導する形でさまざまな教育改革に取り組んでおります。特に日本の伝統・文化の尊重、郷土や国を愛する心、国際社会の一員としての意識の涵養は、教育基本法改正における議論の柱となることが予想されております。今年度から、重点事業として、日本の豊かな伝統や文化を学ぶ教育に取り組んでいることは時宜を得たものであります。
そこで、学校教育において日本の伝統・文化について学ぶことの意義やねらいについて伺います。
答弁1
▼教育長
日本の伝統・文化について、学ぶことの意義やねらいについてでございますが、国際化が進展するこれからの社会におきまして、さまざまな分野で日本人として国際社会に貢献をし、世界の人々から信頼され尊敬される人間を育成していくことが重要でございます。
そのため、都教育委員会としましては、学校教育の各段階において、日本の伝統・文化について学ぶ機会の充実を図りまして、国や郷土に対する理解や愛着を深めますとともに、世界の多様な文化や伝統を尊重する態度や資質を身につけさせることを目的とした教育を推進してまいります。
こうしたことが児童生徒に先人の培ってきた日本の伝統・文化の価値を正しく理解させ、日本人としての自覚や誇りをはぐくみ、あわせて世界で主体的に活躍する国際性豊かな人間を育成することになると考えております。
質問2
また、伝統・文化の学習を学校の教育活動に明確に位置づけ、計画的かつ継続的に取り組んでいくことが必要と考えます。都教委が進める日本の伝統・文化を学ぶ教育の推進のため、具体的な方策と期待される成果について伺います。
答弁2
▼教育長
具体的な方策と期待される成果についてでございますが、日本の伝統や文化を理解させる教育は、これまでも、各教科等において行われてまいりましたが、必ずしも系統的、計画的に実施されてきたとはいえないため、児童生徒に日本の伝統や文化に対する理解が十分定着していない状況も見られます。
こうした状況を踏まえまして、都教育委員会としましては、日本の伝統や文化を理解させる教育の内容や方法を体系化をしまして、全公立学校で推進することといたしました。
現在、小中学校や都立高校など六十校におきまして、地域に伝わる太鼓やおはやしなどの郷土芸能や、茶道、華道などの伝統文化の学習につきまして研究開発を行っておりますし、今後は、有識者等による推進会議を設置をしまして、日本の伝統・文化理解教育の基本的なあり方を検討してまいりますとともに、都立高校におきましては、新たな科目で、教科科目でございます日本の伝統・文化の平成十九年度からの新設に向けまして、カリキュラムの開発などの準備を進めてまいります。
これらの成果を踏まえまして、各学校が日本の伝統・文化理解教育を計画的、継続的に推進することによりまして、日本人としての自覚と誇りを持った児童生徒の育成が図られるものと考えております。
質問は以上でありますが、最後に一言申し上げます。
さて、我々四年の任期もあとわずかとなっております。これまでの四年間を振り返ってみれば、日々東京の直面する課題に一つ一つ真っ正面から取り組んでまいりました。都民の皆さんの声を受けとめ、それぞれの地域の実情をつぶさにつかみ、これを最大のよりどころとして、政策提言、議会活動を行ってまいりました。
都民の真の代表として、知事を頂点とする執行機関側と協力し、知恵を出し合い、熱い思いをぶつけ合って、時には激しく議論しながら、切磋琢磨してまいりました。
一方で、我々は、都民の目線から知事、執行機関側をチェックし、都の施策や事業が本当に都民のために役に立っているのかを精査してまいりました。
我々と知事と執行機関との間に健全で建設的な協力関係がなくては、都政は前に進むことができません。こうしたことを常に念頭に置き、真摯に都議会議員として都政に取り組んできたことが、石原知事とともに、都政の聖域のない改革を実現させたのであります。
そして、冒頭述べたように、石原知事と我々が進めてきた東京と日本の再生のための改革を、希望の時代に向けた新たな飛躍につなげていくことが必要となっております。
そこで、我々は、都議会議員選挙に当たり、これまでの改革の成果をベースとして、今後の東京の未来を切り開くための政策提言として、東京グリーンプログラム二十一を策定いたしました。我が都議会自由民主党は、引き続き「ときめく東京、新しい日本」を目指し、再生から躍動へをキーワードに、さらに挑戦を続けてまいります。
都民生活の安心と安全の確保を初めとする都政の重要課題の解決のため、各地元で都民一人一人の声に耳を傾け、政権与党として国にいうべきことはいい、首都圏での広域的連帯を広げながら、決して困難にひるむことなく突き進んでいくことをお誓い申し上げまして、私の代表質問を終わります。
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