▼大河原委員
平成十五年の第四回定例会で、八ッ場ダムの基本計画の変更として、事業費が当初の二千百十億円から一挙に四千六百億円と二・二倍になる改定同意案件が都議会に上程されました。他県に先駆けてのことでございました。そして都議会では、反対意見や継続審議を求める声がありながら、結果的には可決をしてしまっております。私は、これにもちろん反対をしておりますが、大変に残念に思っております。
計画の進行が余りにも時間がかかっているために、社会状況、経済状況が本当に大きく変化してしまっております。その点でも、知事も右肩上がりの経済成長あるいは社会の成長というのは終わったんだというふうに常々おっしゃっておりますけれども、そういった意味では、この計画を改めて私たち大勢の目でチェックをしなければならないと考えます。
改定された八ッ場ダムの事業費四千六百億円に対して、東京都の負担をお聞きしますと、これまでもお聞きしておりまして、これは、建設の利水、治水の事業費、それから水源地域対策特別措置法、いわゆる水特法による事業費、また利根川・荒川水源地域対策基金事業、この三事業を東京都が直接負担している額として七百七十三億円という、これは資料要求をさせていただきましたので、60号の資料要求の紙をいただいているわけなんですが、この数字が出てくるんですね。
ところが、こうした事業というのは、国からの補助金も入り、また、東京都はこの事業をしていくために起債を起こしているわけです。長期間にわたる起債になりますので、元金、利子--利息というのは元金の恐らく半分ぐらいにはなるということで、この審議をする中で、東京都の直接負担が七百億円ちょっとだということではなくて、利息も含めた額をしっかりと考えていくべきだということで、私は、八ッ場ダムには東京都は一千二百億円以上の負担をするということを特に明らかにしてほしいと思っております。
東京都が一千二百億以上かかる、関連の都県、それから国費を合わせまして、この八ッ場ダムには八千八百億円ぐらいお金がかかるわけなんです。そういった認識はなかなか審議の中では、起債はその後の事情によりますから、今確定的にはお話しできませんというような形で、いつもその部分には触れない議論になっているんじゃないでしょうか。
事業費がこれ以上膨らむことは、どの自治体でも望んでいないわけなんです。それで、コストが膨張する要因というのがこれ以上ないんだろうかと、しっかりと見ていかなければなりません。しかし、残念ながら、基本的な情報というのが都議会の議論の場にも提出されてこなかったんじゃないか。私は、そういったものが足りてなかったというふうに思わざるを得ません。
例えば、現在、東京電力が八ッ場ダムの予定地の上流から発電用の取水をしています。発電用の水は、バイパスの水路を通ってダムの予定地を外れて、発電をした後には前橋付近で利根川の本流に戻されているというふうに聞きました。改定の事業費の中には、この東京電力の発電用送水路の補強費というのが計上されています。造成地の中に管が通っていて、造成工事をするときに管を補強するという意味でついているわけなんですね。
ところが、八ッ場ダムが建設される吾妻川に、つまり東京電力が水力発電用の水利権を持っているということで、八ッ場ダムをつくって開発しようとする水量というのは、この東京電力が持っている水利権の譲渡、つまり発電用の水利権を少し、あるいはどのぐらいの量になるかわかりませんが、東電が手放すということが前提になっているということなんだと思うんです。その点を確認させていただき、東電が譲渡を予定している水量と、それに伴う事業費の増加の有無、これについてお答えください。
▼都市整備局長
国交省からは、これまで発電に使用されてきました水量の一部を水源開発などに利用することに伴い、生じる減電補償を東京電力に対して行うと聞いています。
また、量的には、八ッ場ダムの水源開発量に影響を及ぼさない範囲まで制限を加えることとしており、総事業費四千六百億円に減電補償額が含まれていることから、今後事業費が増額することはないと聞いております。
▼大河原委員
いろいろ伺うと、やはり国交省から聞いたと、聞いているという形ですべてのお答えが戻ってくるんですが、このダムの開発水量に影響を及ぼさない範囲まで制限するというのは、要するに東電さんがその発電用の水利権、発電用に回している水を減らすということが保障されないといけないわけですよね。
開発水量にかかわる問題としては、これはもうダムをつくるかつくらないかというよりは、つくれるかつくらないか、開発水量が確保できるかできないかの話なんじゃないんでしょうか。
私は、ちょっとこの話を聞いて驚きました。それで、今の減電補償費という、大変難しいいい方なんですが、譲渡に伴って発電量が減少するから、それを補うために東電に補償費を出すということですよね。
そうすると、既に、今後どれだけ、この減電補償費は支払われるのかというのが今の時点で決まっていますか。既に交渉は終わっているんでしょうか。
▼都市整備局長
交渉中でございます。
▼大河原委員
私、皆さんにもうちょっと驚いてほしいんです。開発水量は--今、私が伺ったのは、東電さんが持っているのは毎秒三十トンと聞きました。八ッ場ダムで開発水量というのは、たしか約十五トン、毎秒ぐらいでしたよね。
開発水量、八ッ場ダムが動き出すためには、この東電が水量を減らす、発電を少なくするということで、今この環境のことを考えると、水力発電、もっとやっていてほしいなというふうに思う市民もたくさんいるわけなんです。
この減電補償は、今交渉中ということなので、額が決められないわけですよね。四千六百億円の中に入ってはいるとおっしゃるけれども、額は決まっていない。減電補償費というのは、今工事しておりますから、その工事のために水路をとめているということで、既に支払われているものもあるんですね。
そのことから考えると、この減電補償費というのは、ダムの完成前に支払い終わるものですか。それとも、ダムが完成した後でも、つまり東電さんが本来だったらば発電していたであろう、それを放棄あるいは譲渡してもらうわけですから、もっと払い続けるものなんじゃないんでしょうか。その点はいかがでしょう。
▼都市整備局長
国交省の方からの情報によれば、代替地が確定して、その位置の変更、面積の増加により、発電用導水管の補強対策の必要箇所が一カ所から十カ所に増加しておりますけれども、これによりまして電柱や送電線、温泉、発電補償費の特殊補償が三十七億円から二百十七億円に増加しております。
▼大河原委員
増額の中で、東電に支払われるものがふえていた、三十七億円から百二十何億円。私は、それは補強費、水路の補強のためのお金だというふうに思うんです。これから減電補償費というのは、私は発生してくるお金というふうに思っています。
それで、ちょっと時間がなくなってきておりますけれども、次に、私はこの減電補償費の問題、開発水量の問題も、議会にはきちんと伝えられていなかったんじゃないか。
あと、もう一点は、予定地の地質の問題です。
ダムの本体工事には、もちろんまだ入っていないんですけれども、もともとの計画では、ダムの本体を建設する予定地というのは、今の位置よりも下流にあった。八ッ場ダムの工事事務所のホームページにこう書いてあるんですね。ダムサイトは当初、地形、地質上、最も有利な位置に計画していましたがと書いてあるんです。
つまり、現在の位置はベストの位置ではないということがはっきり公表されています。現在の位置に関しては、ダムサイトには不向きであるという国会答弁まであるんです。
ダムの位置についての国会答弁、かいつまんで申し上げますと、文化庁が吾妻渓谷を守るためにこの位置を調査しております。
それで、その地点、今皆さんに資料をお配りさせていただきます。三枚つづりになっておりまして、一番上にこの図が出てます。大変ぼんやりしておりますが、申しわけありません。(資料を示す)この波形が、これが地表面とお考えいただいて、これが満水にしたときの水の位置です。そして、ダム底はこのコンクリートの位置の、その上より一つ線が上になります。この赤い部分は何かといいますと、この地点は非常に熱水変質を受けている部分が多いということで、こういう大変地質がもろいということも、この答弁の中でいわれているんです。
これは、川原湯温泉に続く、いわゆる熱変質した地質がずっと続いているんだということが国会答弁で明らかになっています。そしてまた、河床を横断する三メートルの幅の岩の断層があることとか、それから節理が多い、大変周辺がですね。
資料につけました、例えばこういう、ちょっと見にくいですが、割れ目、亀裂、こういったものが、このダムサイトの左岸にあるというようなことまでいわれています。
それから、もう一つ、ここの川の河床部分、底の部分。ここは、大変水を通しやすい地質になっているということがいわれていました。
それで、これは文化庁の方がその当時、ここはそういう意味ではふさわしくないといった後に、河川課の、河川課長さんも、今の答弁のとおりの地質であるということをいっていらっしゃるんです。
今回、事業費の改定に当たっては、国はダム本体周辺の地質調査を行ったというふうに聞いているんですが、一体どんなことがわかったんでしょうか。今申し上げた国会答弁を覆す結果があったのかどうか。この疑問を払拭して都議会に先日の事業費の増額の同意を求められたというふうに思いますが、見解を伺います。
それから、皆さんにお配りした資料は、今回国土交通省に開示を求めて開示されたものでございます。出どころはきちんとしております。
▼都市整備局長
先ほどいろいろ資料を見せていただきましたけれども、その件については国交省が認めておりまして、そういうことですね。
それで、また都は、事業改定に際しまして、国に対して設計の内容など、百五十項目に及ぶ質問、資料要求を行いまして、ダムサイトの地質についても技術的対応が可能である、そういったことを確認して、前回の事業費の増額に同意したものであります。
▼大河原委員
今対応が可能だということで、もちろん提出してくださったとおっしゃるんですが、これは国交省が奈良県の吉野川水系の大滝ダム、ここでも実は失敗しているんですよね。地すべりが長くいわれていて、危険性があるんだといわれていて、でも国交省は、白屋地区というところでは、地すべり地区だけれども、地すべり対策法としては鋼管くい工法、それから深礎工法、集水井等が考えられる--八ッ場ダムで大丈夫かと聞いて、大丈夫です、こういう工法がありますといわれたことと同じことをいわれているんだと思うんです。東京都が独自に調査をするといったことがないわけですから、そのことについて、私はなかなか納得はできません。
既に、この大滝ダム、湛水を始めて、途中でもう住宅や畑にひび割れが入って、村が丸ごと移転をする。しかも、今は全員仮設住宅に住んでいらっしゃるんですよ。そういったことは、もうぜひとも二度と起こさないようにしてほしい。
その点では、私はもっと重要な審議を議会の中で十分な資料を使って、そして国交省にもきちんとデータを求めて、東京都なりの判断ができるような体制をとらなきゃいけないというふうに思うんです。
今、今国会で成立を目指す国土総合開発法の改正というのが閣議決定されました。いわゆる全総計画ですね。第四次全総とかいろいろありましたけれども、これは既に開発一途の方法でしたから、この開発中心から、環境とか景観とか、そういった質的な向上を求めて変えるというんですが、私はこの水資源開発基本計画、いわゆるフルプランも、右肩上がりにできた計画で既にもう破綻している、もう役に立たないものになっているというふうに考えます。
二〇〇〇年にフルプラン第四次が切れているんですが、もう五年、フルプランをつくる、つくる、もうすぐ出るといわれながら出されていません。
そういった意味では、私は八ッ場ダムの利水、治水の議論をしてきましたときに、東京都の姿勢とはすれ違いでしたけれども、私はダムをつくるといっても、もうつくれない状況がある。
そして、この二月二十五、二十八日両日、衆議院の予算委員会第八分科会でお二人の委員が八ッ場ダム問題を取り上げました。そして、二十八日には北側大臣が期限内の完成を危ぶむニュアンスとも受け取れるご答弁もあったんです。
これまでどおりのことしかできない、コスト管理は十分にやるとおっしゃっても、そういう問題ではもう既にないというふうに思うんです。これは、政治家である知事の出番で、この右肩上がりの成長を前提とする国策が破綻しているということを考えれば、フルプランも同じです。過大な洪水予測を速やかに修正して、適正な河川整備計画を作成して対応すべきです。
政策転換というのは、役人、官僚にはできません。ですから、知事と大臣と、ぜひ政治力を発揮して、この点に取り組んでいただきたいと思います。ご見解を伺わせてください。
▼知事
この問題は、過去にも何度も私が就任以来、都議会で出てきましたね。
私はそのときに、一つだけ大事な問題が欠落していると思うんですよ。それは、首都圏がこれから機能的にどういうふうに変貌していくかわかりませんが、要するにある時点で将来、この八ッ場ダムに期待されている水需要があるかないかということの信憑性が余り科学的に検証されてませんな。
私は、たびたび申してきましたけれども、水は政治、政の根幹の一つであります。これを治め、大事なことは、こういう文明が進んだ時点で水を安定的に供給するということは、これは国や自治体の非常に大事な責務だと思います。
そういう点で、このプロジェクトも発案され、展開されたんだと思いますけれども、いずれにしろ、東京都は水源の大半を他県に依存して、これまでも水源地の理解と協力を得ながら必要なダムの開発をしてきました。例えば、小河内ダムなども、前に申しましたけれども、つくったときはこんなものが要るのかといわれて、よく読めば、しようがないと読めるんで、しようがないダムだ、ダムだといわれたけれども、できてから数年たって、要するに非常に水需要が緊迫して、それでつくってよかったということになったわけですね。
ですから、要するに世の中がどんどん進んで、集積が進んでいるこの首都圏で、果たして水需要というものの信憑性というのをもう一回きちっと検証していかないと、私はそれが一番欠けていると思います。
ですから、今の時点で、私は備えあれば憂いなしということで、この時点でいろいろ議論を聞いておりますけれども、ご主張のように、東京都がイニシアチブをとって、このフルプランの廃止と過大な基本高水の修正云々を国に進言するつもりはございません。
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