平成17年第1回定例会 一般質問

地球環境保全型の都市再生へ
遺伝子組換え作物の栽培指針は

大西由紀子(ネット)
■地球温暖化対策
 
質問1
 地球温暖化防止に向けて、先進国に二酸化炭素、CO2などの温室効果ガス削減を義務づける京都議定書が二月十六日に発効されました。
 国連の統計では、東京圏は三千四百万人が住む世界一の大都市で、二位のメキシコシティー圏を大きく引き離しています。巨大都市東京の一人当たりのCO2排出量は、公共交通の発達した運輸部門では低く、世界のモデルとなっています。しかし、家庭や企業では排出量が急増しており、この部門でも東京モデルを世界に示すことが東京の課題と考えます。
 その視点で十七年度予算を見ますと、開発に関する予算はほぼ一兆円であるのに対し環境局予算は二百七十億円未満と、四十分の一です。単純に比較することはできないことは承知しておりますが、持続可能な環境優先の都政への転換が迫られていることを考えると、非常にバランスを欠いた予算といわざるを得ません。
 多摩地域に残された湧水や緑地を保全するとともに、新たな緑の創出にも取り組んで、CO2を吸収し、自然エネルギー利用を高め、中水道や光触媒を利用して、ビル壁面を常に湿った状態にし、都市の気温を下げることも進めるべきです。これらの対策はヒートアイランド対策とも通じます。
 さらに、都市再生の規制緩和に当たっては、街区全体でのCO2排出削減を条件とするなど、さまざまな方策を組み合わせ、CO2削減を図ることが必要です。
 知事は、教育、環境重視の都政を目指すと明言されています。現在進めている都市再生においても、京都議定書発効を契機に、地球環境保全型都市再生へ転換し、開発と環境の調和を図るべきと考えますが、知事の見解を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 都市の開発と環境の調和についてでありますが、一年ほど前でしたでしょうか、「ナショナルジオグラフィック」は、中国での大都市周辺の乱開発がいかに環境を破壊しているかという、非常に生々しい、たくさんのそれに対するリポートをしておりました。現に北部の、中国を流れている黄河はほとんど干上がってしまって、河口では水が一滴も流れていないという惨状でありますが、この東京自身も、やはりそういう反省というものをしながら都市の開発に努める必要があると思います。ともかく東京はカナダ一国に匹敵する経済規模を有しておりまして、多量なエネルギーを限られた地域で消費する大都市でありまして、都市活動に伴うエネルギー利用の効率化の視点からも、都は、三環状道路の整備や都心居住の推進などにより、エネルギー効率の高い都市構造への転換を目指してまいりました。
 また、本定例会で提案している環境確保条例の改正による建築物環境計画書制度の強化などによりまして、再生可能エネルギーの活用やCO2排出抑制の取り組みを進めていくつもりでございます。今後とも、持続可能な、人間が持続して安心して住むことの可能な都市を目指して、環境に配慮した都市づくりを推進してまいります。
 

 
質問2
 環境への配慮が企業イメージを高める時代です。温暖化対策計画書作成に当たっては、積極的に取り組んでいる企業を参考にすることは、追随する企業にとって、よい計画書づくりにつながり、さらなる削減への動機づけになります。
 また、大規模事業者の一つとして都庁がプレゼンテーションに参加すれば、民間企業への模範となります。温暖化対策に積極的な企業の取り組みを広く紹介するために、プレゼンテーションを一般公開で行うべきと考えますが、いかがでしょうか。
 
答弁2
 ▼環境局長
 温暖化対策の取り組みの紹介についてでございますが、事業者の温暖化対策を促進していくためには、具体的な省エネ対策や、企業の積極的な取り組みを広く紹介していくことが有効でございます。そこで、都は、事業者が地球温暖化対策計画書を策定する際に、具体的な省エネ対策のメニューを提示するとともに、対策の導入効果を示した事例集を提供していくこととしております。
 さらに、関係事業者団体等と協働いたしまして、先進的取り組みやESCO事業などの効果的手法に関する事例の発表会等を開催いたしまして、その普及に努めてまいります。
 
■JR中央線連続立体交差事業
 
質問1
 多摩地域の中央部を東西に横断するこの事業は、十三・一キロメートル、沿線六市にまたがる事業です。
 事業推進に当たっては、事業主体としての東京都の役割は非常に大きいものがあります。十八カ所の踏切解消ばかりでなく、完成後には、高架によって生まれる空間の利用なども期待されます。工事はまだ緒についたばかりですが、その高架下の利用については、今から協議をしていく必要があります。このことについて都はどのようにかかわっていくのか、伺います。
 
答弁1
 ▼建設局長
 JR中央線の高架下利用についてでございますが、中央線連続立体交差事業は、交通渋滞や地域分断を解消し、多摩地域における南北交通の円滑化や地域の活性化に寄与するなど、極めて効果の高い事業であります。本事業によって新たに生み出される高架下は貴重な都市空間であり、地域のまちづくりと密接に関連しております。このため、高架下利用について協議する場として、昨年六月、都は、沿線六市及び鉄道事業者から成る検討会を設置いたしました。今後、この検討会を通じて、地域のまちづくりや鉄道利用者等の利便性に配慮した利用が図れるよう、沿線六市の意向も踏まえ、鉄道事業者と調整してまいります。
 

 
質問2
 鉄道の立体化によって新たに生み出された高架下の空間は、高架下貸付可能面積の一五%を地方公共団体が公租公課相当額として利用できます。公共的な使い道としては、歩行空間や集会施設、あるいは防災施設などのほか、駐輪場の設置が求められ、地方公共団体は公租公課相当分の中でみずから設置に努めてきました。
 ところが、小田急連続立体交差事業では、鉄道事業者がみずから高架下に駐輪場を設置し、自社の退職者を雇用しながら運営する駐輪場が各駅にできています。駐輪場運営は、用地費や設備費を除けば、利用料によって採算が見込める事業になっています。鉄道事業者は退職者の雇用を創出し、利用者は駅に近くて雨の当たらない場所に自転車をとめることができ、自治体は一五%の範囲内を駐輪場以外のことに使うことができるという、鉄道事業者、利用者、自治体、いずれにとっても優位性のある解決と考えます。現在、都は沿線自治体の意向を取りまとめていますが、高架下利用の検討状況はどのようになっているのでしょうか。
 
答弁2
 ▼建設局長
 高架下利用の検討状況についてでございますが、現在、鉄道事業者において、利用可能な箇所や面積などの基礎調査を進めております。沿線六市におきましても、防災倉庫や市の出張所など、今までの高架下利用例を参考にしながら、設置する施設の検討を始めております。今後、これらの結果を踏まえ、施設の内容、規模、配置などについて、これまで都が蓄積したノウハウを活用し、検討会において具体的な利用計画を策定してまいります。
 

 
 また、中央線沿線は多摩川流域の集水域であり、東京都環境確保条例に基づき雨水涵養を積極的に進めるべき地域として位置づけられています。ヒートアイランド化の進展は多摩地域でも顕著であり、湧水の枯渇傾向と相まって、緑地や水辺の空間による開水面の確保、蒸散機能の維持強化が急務です。中央線高架橋の上に降る年間十七万トンの雨水をそのまま下水として流してしまうのではなく、雨水浸透施設を設置し、防災用水や生活水として使い、できるだけ大地に返して、雨水循環活用を図るよう要望しておきます。
 
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■介護保険制度改革
 
質問1
 膨らむ介護保険会計と、給付を受けることにより介護度の軽減が図られていない現状から、予防重視型システムへ転換する法改正が提案されています。
 東京都は介護保険制度の円滑な実施に向けた提案をまとめました。都は、介護保険導入以降の状況をどのようにとらえ、予防重視型への転換の意義をどのように考えているのか、伺います。
 
答弁1
 ▼福祉保健局長
 介護保険制度の現状認識等についてでありますが、介護保険制度は平成十二年四月の施行以来、おおむね順調に推移しておりますが、その一方で、軽度の要介護者が大幅に増加しており、健康寿命の延伸という視点からも、介護予防の取り組みが重要となっております。
 今回の制度改革における柱は、予防重視型システムへの転換であり、要介護状態になるおそれのある高齢者に効果的な介護予防サービスの創設などの新たな施策が法律案に盛り込まれております。このことから、今回の改革は、高齢者の自立促進に資するとともに、介護保険制度の健全な運営を実現する上からも意義があるものと認識しております。
 

 
質問2
 軽度の介護度の高齢者にとって、制度の変更は大きな関心事です。新予防給付の対象者の選定は、新たに高齢者の生活機能を評価する調査項目を加え、主治医意見書もこの点を拡充するということですが、その人の家族構成や住宅事情などの生活環境についてどのようなアセスが行われるのかが注目されるところです。
 要介護認定を受けた方々を五年間にわたって聞き取り調査してきたNPOの報告では、介護度が横ばいまたは軽減された方々もあり、毎日の暮らしの中で適切な生活支援を受ければ、パワーリハビリでなくても、元気に地域で暮らすことが可能です。新予防給付の対象者に対しては、生活環境面からの評価を行い、必要な生活支援を行うべきではないかと考えますが、見解を伺います。
 
答弁2
 ▼福祉保健局長
 介護予防のための新たな給付についてでありますが、今回の制度改革では、軽度の要介護者に対するサービスを真に自立支援に資するものへと改めていく方針が示されております。こうした改革を実施するためには、個々の利用者のケアプランを策定する際に、本人の希望や家族の状況など、生活環境に関するアセスメントを適切に行い、具体的な目標を設定するとともに、その実現に向けた手段や方法を明確にすることが重要であると認識しております。
 また、新たな予防給付の内容につきましては、軽度の要介護者の生活援助ニーズにも適切に対応したものとすべきであり、国に対してその旨を本年一月に提案しております。

 

 
質問3
 具体的な介護予防や地域の包括的、継続的なマネジメント機能を強化するため、自治体は地域支援事業を創設し、地域包括支援センターを設置することになりますが、事業規模や財源などに格差があり、途方に暮れている自治体もあるやに聞いています。特に介護予防マネジメントを担う人材の養成と確保は、東京都の役割として急務であると考えますが、都はこれにどのようにかかわるのか、伺います。
 
答弁3
 ▼福祉保健局長
 介護予防マネジメントを担う人材についてでありますが、介護予防の取り組みを進めていくためには、介護予防マネジメントを担う人材の養成と確保が何よりも重要な課題であります。そのため、都は、来年度、アセスメントから評価までの一連の介護予防マネジメントを実施できる能力を有する地域の指導者を育成するために、在宅介護支援センターの職員などを対象に実践的研修を実施する予定でございます。
 あわせて、区市町村が実施いたします介護支援専門員などを対象とした育成研修などへも財政支援するなど、介護予防が実践的かつ効果的に実施されるよう、人材の養成に努めてまいります。

 
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■化学物質対策
 
 私たちの生活する周辺には、十万種の化学物質が市場に出回り、毎年千から二千種類が新たに製造されているといわれ、健康や環境への影響が懸念されています。このような中で、EUでは一昨年十月にREACHと呼ばれる化学物質規制案を発表しました。そのポイントは、対象物質を三万、評価を必要とする物質を五千とし、予防原則や代替原則を徹底し、根本的な施策の転換を図っています。
 ところが、日本は、あろうことかアメリカとともにREACHの弱体化に向けて動いているともいわれており、施策の転換に消極的です。
 

 
質問1
 しかし、一方、都は、私たちの提案にこたえ、平成七年にパラ剤を学校環境から追放して以来、環境ホルモン対策や有害化学物質対策基本方針を策定し、さらに、室内環境の配慮指針や、環境確保条例によるPRTRの上乗せ運用、そして子ども基準の設定など、全国的に見ても先駆的施策を展開し、すぐれた政策水準を維持してきたことは高く評価しております。
 また、環境確保条例による化学物質の適正管理制度の導入により、化学物質の使用合理化や有害性の少ない代替物質への転換を促してきた結果、環境に排出される化学物質の全体量は減少してきています。しかし、化学物質の種類は多く、自然界で分解しにくく人体に蓄積しやすいものもあり、こうした化学物質の環境中の残留実態を明らかにしていくことが今後の化学物質による被害を未然に防ぐために必要と考えますが、見解を伺います。
 
答弁1
 ▼環境局長
 化学物質の環境中の残留実態調査についてでございますが、化学物質による環境汚染を防止する観点から、これまでも、農薬類や船底などの塗料に使われております有機スズ化合物など、残留性の高い化学物質の環境調査を実施してきているところでございます。平成十六年度からは、防水スプレーなどに使用され、将来の健康影響が懸念されます有機弗素化合物について調査に着手いたしました。今後も、都民にとってリスクが高いと考えられる物質について順次調査を進めていきます。
 

 
質問2
 さきのような国際動向を踏まえ、都としては環境確保条例の改定も視野に入れた検討が必要です。先駆的な化学物質対策への転換を進めるためにも、市民や事業者の参加を含む総合的な検討の場を設定すべきと考えますが、見解を伺います。
 
答弁2
 ▼環境局長
 総合的な検討の場の設定についてでございますが、化学物質を適正に利用し、健康影響を未然に防止するためには、事業者や消費者が、化学物質に関する正確な知識に基づいて、その過剰な使用を避けることなどが必要でございます。このため、都は、子どもガイドラインの策定など、化学物質の適正な使用を促す取り組みを進めてきました。事業者、都民、研究者など、さまざまな立場の方々が化学物質に関する知識を共有する機会を持つことは重要でございまして、今後、その手法について検討してまいります。
 
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■遺伝子組換え作物
 
 遺伝子組みかえ作物について、食べる側の不安や疑念は根強いものがあります。しかし、現在、この問題は遺伝子組みかえ作物による周辺環境への汚染の問題、すなわち生産する側の問題として提起されています。生産者が精魂込めてつくった作物が、花粉を通じて交雑することによって、生産者の努力が全く無になるおそれです。
 昨年の五月、西東京市で、遺伝子組みかえジャガイモ栽培実験計画の説明会には、多くの都民や生産者から疑問や不安の声が上がり、試験栽培が見送られました。東京では都市化が進み、農地が限られたものになったとはいえ、身近なところで生産する農産物への消費者の信頼性は高いものがあります。生産者を守り、育てることに対し、都は積極的であるべきです。
 

 
質問1
 昨年実験栽培を断念した東大農場が、ことしの五月に実験栽培を行う可能性もあることから、現在、都も都内での遺伝子組みかえ作物の栽培に係る指導指針の作成に向け検討を開始しているということを評価しているんですが、指針策定の目途について伺います。
 
答弁1
 ▼産業労働局長
 栽培に係る指導指針の策定についてでございますが、ことし一月に、農業者、消費者及び学識経験者の外部委員で構成いたします遺伝子組みかえ作物の栽培に関する検討委員会を設置いたしました。この検討委員会では、国の制度の問題点を明らかにし、事前の情報提供や近隣住民等への説明を求めることなど、都の指導指針のあり方などについて、今年度中を目途に報告をいただくこととしております。今後、これを踏まえ、速やかに指導指針の策定を行ってまいります。

 

 
質問2
 欧州では、有機農業が盛んな地域で遺伝子組みかえ作物禁止区域、いわゆるGMフリーゾーンの設置運動が盛んになっています。ギリシャでは五十四の地方政府のすべてが、また、イタリアでも全土の八割でフリーゾーン宣言するなど、地方政府を中心に広がっています。日本でも、滋賀県の農業者が、自分の農地でGMOの栽培をしないということを宣言するなど、取り組みが始まりつつありますが、GM菜種が輸送中にこぼれ落ち、道路わきなどで生育していることが環境省や農水省の調査で明らかになっており、交雑が心配されています。安心・安全の農産物を都民に供給する取り組みを進めてきた東京都として、東京の農業の今後のあり方を見据え、GMフリーゾーンについて、農家の意向も含め、改めて取り組む必要があると考えます。見解を伺い、質問を終わります。
 
答弁2
 ▼産業労働局長
 遺伝子組みかえ作物の栽培を拒否する地域、いわゆるGMフリーゾーンについてでございますが、昨年十二月に都が行った都内農業者へのアンケート調査の中間集計では、半数以上が遺伝子組みかえ作物を栽培したくないとしておりますが、一方で、消費者に安全性が納得されていることなどの条件つきであれば、遺伝子組みかえ作物を栽培したいという農業者も少なからず存在しております。こうした点をも踏まえ、現在検討委員会でGMフリーゾーンへの対応のあり方について検討をしていただいているところでございます。
 
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