平成17年第1回定例会 一般質問

地球温暖化阻止は都民の総意で
治安の問題は青少年対策を基に

鳩山太郎(無(友愛))
■地方財政運営
 
 私は、東京都議会議員最年少の三十歳という立場から、党派の枠にこだわらず、すべての若い世代の立場を代表するつもりで、当選以来この二年間取り組んでまいりました。そうした現場の視点から、平成十七年度予算、環境問題、治安、教育問題について一般質問をさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
 

 

 先日、総務省から発表されました平成十六年十月一日現在の推計人口では、この一年間の総人口の増加は六万五千人で、増加数、増加率とも戦後最低となり、特に男性は初めて減少に転じるというものでした。また、国立社会保障・人口問題研究所の将来人口推計では、急速に進む少子化の影響により、我が国の総人口は平成十八年をピークに減少過程に入ると予測されています。
 さらに、同研究所の推計は、高齢化の進行と相まって、日本の労働力人口は縮小を続け、今世紀半ばには五〇%台前半にまで落ち込むとしており、次世代の若者一人一人の果たすべき役割や負担は、今後ますます重くなってまいります。
 東京が今後も活力を持ち続け、発展を続けていくためには、次世代の若者たちが夢や希望を持てる、魅力ある都市づくりが急務であり、持続可能な財政体質をつくり、中長期的な視点で将来を見据えて、都政運営を行っていかなければなりません。
 基礎的自治体である特別区や市も、行財政改革を推進し、新たな社会構造の変化、将来の人口構成や行政需要などについて対応すべく、文京区ではNPM予算編成システムを導入し、みずから大胆な組織改革、管理職のマネジメント、経営能力の向上など職員の意識改革に全力で取り組んでおり、さらに十九年度に訪れる団塊の世代の大量退職に伴う退職金の増大にも適切に対応する準備を進めています。
 そこで、平成十七年度予算案について見ますと、都税収入が前年度比八・四%増となる中、政策的経費である一般歳出は一・一%減と、総額の抑制に努め、平成十年度以来七年ぶりに臨時的な財源対策なしに財源の確保がされました。これは、石原知事が就任以来取り組んでこられた財政構造改革による大きな成果があらわれており、東京の将来を見据えた施策に積極的に対応するとともに、引き続き手を緩めることなく財政再建に取り組み、さらに都税の増収を活用して、財政調整基金への積み立てや隠れ借金の圧縮に取り組むなど、将来への備えにも配慮されています。
 都債の発行についても、引き続き抑制をしており、国が歳入の四割以上を国債に依存しているのに対し、都の起債依存度はわずか六%にすぎません。こうした知事の将来を見通した財政運営の姿勢は、まさに次世代の期待にこたえたものと評価させていただきます。
 

 
質問1
 国の三位一体改革の影響、都区改革制度で残した主要五課題など、乗り越えなければならない課題も山積しておりますが、知事のこれまでの財政構造改革は、今後の地方財政運営における工夫や示唆に富んでおり、全国の自治体の手本となるものと認識しています。
 そこで、地方財政のこれからの進むべき道についてどうお考えか、地方全体を牽引する首都東京の知事の立場から、ご所見をお聞かせいただきたいと思います。
 
答弁1
 ▼知事
 今後の地方財政の進むべき道についてでありますが、それは各地方自治体によって、いろいろ条件も違うと思います。ゆえに、一概にはいえないところもございますが、いずれにしろ、太政官制度以来続いている中央集権という現代性を欠いた政治のスキームに影響を非常にこうむっているわけでありまして、国は、戦後一貫して、みずから配分権を持つ地方交付税や国庫補助金などの財源を通して地方の税財政運営を支配してきました。
 一方で、現在の国家財政は、国税の収入の十二倍にも達している借金を抱えて、まさに破綻寸前であると思います。
 こうした中、今日の地方団体の姿を見ますと、平成十二年度から地方分権一括法がスタートはしましたが、税財源の移譲にはほとんど手をつけられていないこともありまして、相変わらず国の政策に振り回され、国への依存体質から脱却できないまま、みずからの改革努力も不十分な自治体もあるように思えます。
 例を挙げて申しわけありませんが、このごろ新聞でしきりにいわれている大阪市などは、その一つの例なんじゃないんでしょうか。
 都は、不交付団体ということもありまして、これまで、将来を見据えて、みずからの意思と努力で、懸命に財政構造の改革に取り組んできましたが、他の地方も、まずは、みずから血を流す覚悟をいとわずに行財政改革に積極的に取り組むことが不可欠であると。また、それが県民に対する責任の履行の大きな眼目だと思います。
 いわゆる国の三位一体改革に対しても、真の地方の自主自立に向けた制度の確立を目指して、基本論から始めて、地方全体が一丸となって国に対していくべきだと思っております。
 
■環境問題
 
 私は、平成十六年第二回定例会の一般質問において、環境問題に取り組むに当たっての知事の基本認識について質問させていただきました。知事は、ルーマニアの作家、コンスタンチン・ゲオルグの、たとえ世界の終末があしたであろうとも、わたしはきょうリンゴの木を植えるという言葉を引用され、それぞれの立場でこの危機を食いとめる志を持つことが必要であると答弁されました。私同様、多くの人が感銘を持ってこの後答弁に聞き入ったと思います。
 昨年は、ヒートアイランド現象の影響もあり、都心区の小中学校では、冷房を設置しなければ体温を上回る教室も出てきたほどの猛暑となりました。地球温暖化は、まさに進行していますが、その対策は、この二月十六日に、京都議定書が締結から七年を経て発効し、世界的な取り組みがようやく本格化したところです。
 この間の日本の現実は、温室効果ガスの排出量は減るどころかふえ続け、平成二年比で八%の増加となっており、我が国の削減義務量六%を達成するためには、一四ポイントもの削減が必要となります。さらに、この削減義務量は、あくまで平成二十四年までのものであり、気候変動を長期的に安定させるためには、温室効果ガスの排出量を半減しなければならないという、大変な取り組みを中長期にわたって続けていかなければなりません。
 政府は、削減義務量六%のうち、三・九%を森林吸収により達成するとの計画を立てていますが、林業経営が困難となり、森林管理が十分行われず、このままでは森林吸収による削減は二・六%にとどまるとの試算を農水省は示しています。六%削減の目標を実現するためには、森林吸収に大きく依存するのではなく、国、自治体、事業者、住民それぞれが、みずから責任を持って取り組みを進めることです。
 

 
質問1
 石原知事は、これまでも地球温暖化の問題について、この二十一世紀は地球と人類の存続をかけた百年になると発言されてきました。まさに温室効果ガスは、我々一人一人のエネルギー消費などによって排出し続けられているものであり、その削減は、我々自身の取り組みの総意があって初めてなし遂げられるものです。
 京都議定書の発効を受け、都民に対して、ともに地球温暖化阻止へ取り組むよう、改めて明確なメッセージを発するべきと思いますが、知事の所見をお聞かせください。
 
答弁1
 ▼知事
 地球温暖化対策についてでありますが、今になってみますと、私、十数年前に東京で聞きました、例のブラックホールの発見者であるホーキングが、文明の過剰な進展がもたらした非常に不自然で悪い循環が、この地球を多分滅ぼすだろう、それも、宇宙全体の時間から見ればほとんど瞬時に近い将来のことだろうということをいったのを、強く思い出すわけであります。
 干ばつや豪雨の頻発、あるいはヒマラヤの氷河湖の決壊、島しょ国家の水没の危機などに加えて、食糧や水資源をめぐる国際紛争の発生までもが懸念されておりまして、地球温暖化は人類の生存そのものにかかわる喫緊の課題となってきたと思います。
 先月発効した京都議定書は、地球温暖化を阻止するための初めての国際的枠組みでありますが、グローバルな、非常に広範な気候変動に挑む本当に第一歩にすぎないと思います。温室効果ガスの濃度を安定させ、気候変動による深刻な影響を防止するためには、都民を初めとするすべての主体が、早期かつ永続的に温暖化対策に取り組まなくてはならないと思います。
 都は、今回の条例改正により、エネルギーの需給両面にわたる総合的なCO2削減の取り組みを展開するなど、一応先駆的な対策を着実に推進していくつもりでございます。
 今後とも、都は、都民や企業などと連携して、持続可能な社会の構築に向けた、都独自の取り組みを推進し、その成果を全国に発信していきたいと思っております。
 

 
質問2
 東京の二酸化炭素排出量のうち、家庭部門の排出量は四分の一を占めており、その伸びは平成二年比で二三%にもなっています。単身世帯数の増加、大型電化製品の普及拡大などにより、このままでは、ますます家庭からの温室効果ガスの排出は増加し続けます。
 今回、より実効性のある地球温暖化対策の推進を図るため、都民の健康と安全を確保する環境に関する条例の改正案が提出されていますが、その中で、家庭部門対策としてどのような仕組みを取り入れているのか、伺います。
 
答弁2
 ▼環境局長
 地球温暖化に対する家庭部門対策についてですが、今回の条例改正では、家庭部門対策として、二つの新しい制度を創設することとしております。
 まず、大規模マンションの販売広告に、環境性能の表示を義務づけまして、新築マンションの環境配慮の取り組みを促すことといたしました。
 また、家電販売店に、エアコン等の三品目について、省エネ性能の表示を義務づけ、省エネ家電の普及を図ることといたしました。
 これらにより、家庭部門におけるCO2削減を進めてまいります。
 

 
質問3
 家庭部門以上に二酸化炭素排出量の伸びが大きい部門に、オフィスビルなどの業務部門があります。東京の業務部門の排出量は、平成二年比で三九%もふえています。旺盛な企業活動は、経済の活性化をもたらす一方、地球温暖化を確実に進めています。経済効率性のみが突出すれば、我々人類を含む全地球上の生物が生存し続けられる環境を維持していくことは不可能になります。いかに経済的な利益につながるとはいえ、エネルギー消費が過剰なものや、自然生態系のサイクルを断ち切るような活動は避けていく姿勢が求められ、自然との共生は、企業の社会的な責任でもあると思います。
 若い世代にとってこれからも安心して住み続けられる東京にしていくためには、自動車産業におけるハイブリッドカーの取り組みに代表されるような、二酸化炭素の排出を半減できる産業構造、社会構造を目指すことで、さらには日本経済を押し上げると考えます。
 今回の条例改正における大規模事業所の二酸化炭素削減の具体的な仕組みと効果について、お聞かせください。
 
答弁3
 ▼環境局長
 大規模事業所におけるCO2削減についてでございますが、新たな地球温暖化対策計画書制度は、事業者が計画を策定する際に、削減対策指針に基づき取り組むべき対策メニューを都が示すとともに、計画の中間年及び終了時には、成果を評価公表いたしまして、より高いCO2削減目標の設定と、着実な対策の実施を誘導するものでございます。
 本制度は、温暖化対策に積極的な事業者が社会的にも高く評価されることによりまして、事業者に一層のCO2削減努力を促すものでございます。
 
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■東京都教育ビジョンに基づく取組
 
 先日、知事の施政方針表明の中に、治安の問題を掘り下げていくと青少年の問題に突き当たるというご発言がありました。私も大いに共感するところであります。
 東京都では、緊急治安対策本部を設置するなどの取り組みによって、治安回復の兆しが見え始めているとのことであり、来年度も、警察官や交番相談員の増員、警察署の新設、防犯カメラの増設など、さらなる取り組みの強化を図られる点は、大いに評価されるべきでしょう。
 しかし、その一方、少年による犯罪が気がかりです。少年が母校の小学校の教職員を殺傷する痛ましい事件はまだ記憶に新しいところですが、少年犯罪全般について見ますと、この十年間で、全国の少年刑法犯検挙人数は約一・四倍に、東京については、少年の凶悪犯検挙人数が一・九倍に、不良行為少年の補導人員も一・九倍に、それぞれ増加しています。
 今日の子どもたちについては、規範意識や公共心、学ぶ意欲の低下や忍耐力の不足などが指摘され、将来への夢や希望が描けず、社会への参加意識も希薄な若者が多くなり、フリーターの増加や、さらにはニートといわれる若者も出現して、社会問題になっています。
 しかし、若い人々は社会への関心を失っているのではないことは、ボランティア活動などの地元の活動へ参加してみると、よくわかります。
 子どもたちの規範意識をはぐくみ、社会参加への促進や社会活動の保障など、息の長い取り組みと、彼らを取り巻く環境づくりを私たち大人が責任を持って示すことが大事であり、子育て支援など保護者にも支援し、児童虐待や登校拒否が起こらないようにしなければなりません。
 私は、地域活性化も考えた、未利用地を利用した世代を超えた交流事業を検討していますが、時代に合った迅速な政策展開で局を超えた施策で示すことを強く望みます。
 

 
質問1
 また、都教育委員会では、今後の取り組みの方向を中長期的な視点に立って示す東京都教育ビジョンを昨年策定しております。もとより、教育の根幹は家庭であり、これに加え地域や学校との相互連携が重要になりますが、子どもたちの将来を見据えて策定された東京都教育ビジョンに基づいた十七年度の学校における主な取り組みには、どのようなものがあるのかお伺いいたしまして、私の一般質問を終わらせていただきます。
 
答弁1
 ▼教育長
 東京都教育ビジョンに基づきます取り組みについてのお尋ねでございますが、児童生徒に日本人としての自覚と誇りを持たせ、社会貢献の精神を身につけさせますことは、我が国の伝統・文化の理解を深める教育活動や奉仕体験活動などを推進することが極めて重要でございます。
 このため、都教育委員会としましては、未来を開く体験発表会を開催しまして、児童生徒の奉仕体験や伝統・文化の継承活動などの成果を広く普及しますとともに、トライ&チャレンジふれあい月間や、都立高校ボランティアの日を設定しまして、養護施設への訪問や環境美化、地域清掃などの活動を推進してまいりました。
 今後、都内の公立学校におきまして、日本の伝統・文化理解教育推進校を指定しますとともに、都立高校におきましては、奉仕体験活動の必修化に向けた研究開発を行うなど、人間性豊かな日本人を育成してまいります。
 
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