平成17年第1回定例会 一般質問

核燃料輸送に地震への備えを
都民の視点からの局間連携を

福士敬子(無(自治市民))
■災害対策
 
 中越、スマトラ沖、イラン地震と世界各地で立て続けに地震が発生し、東京でも直下地震が起きるといわれる中で、政府の中央防災会議の専門委員会では、首都直下地震の被害想定を出しました。
 国家予算をはるかに上回る直接間接の経済被害額百十二兆円という予測も、損害想定をしにくい物価の変動その他を加えると、さらに膨らむとのことです。また、死者の想定数一万三千人も、病院機能の低下による死者などは含まれていないそうです。
 

 
質問1
 これらのほかに、核燃料輸送ほか危険物輸送の被害は想定されていません。しかし、原発を持たない東京でも、核燃料輸送時に、隊列をなした大量の核物質を抱えることになります。
 核燃料の輸送回数は年間で百回以上、単純平均で三日に一回程度、都内の道路を通過しますが、これは陸揚げされたものを発電所に運ぶ数だけです。再処理されたものなどが行き交う場合は、全くわかりません。したがって、現実には、さらに多くの核物質が日常的に都内の道路を走っていることになります。陸揚げは、最近では青海ふ頭も使われ、大江戸温泉でにぎわう近くを核が通り、レインボーブリッジを渡って横須賀へ行くのを確認しております。
 このような核燃料輸送時に直下地震が起き、核物質が漏れ出た場合、地震による被害のみならず、孫子の代まで被害が及ぶ可能性があります。また、被害対策も、単なる火災とはまるで異なる対応が求められます。
 初動対応で被害を抑えるよう、核輸送の実態を関係局はつかんでおいていただくよう、一昨年、私は質問をいたしました。その折のご答弁では、輸送情報は、テロなどに対する安全確保の観点から慎重に取り扱うとしつつも、庁内各局と十分連携をとり、非常時の対応に万全を期すとのことでした。
 しかし、現実には、真っ先に現場に行く各区の消防署などには、相変わらず何も知らされていないようです。JCO事故の際には、消防隊員が放射能漏れを知らず、被曝しました。どのような連携体制となっているのか、伺います。
 
答弁1
 ▼総務局長
 庁内連絡体制でございますけれども、核燃料の輸送中に万が一事故が発生いたしました場合には、国が速やかに対策会議を開催して必要な措置を実施し、都は、国や区市町村と相互に連携して、住民の避難誘導などの安全確保対策を講じます。
 都では、昨年NBC災害対処マニュアルを作成いたしまして、核物質によります災害が発生した場合の通報連絡体制の整備、現地におきます連絡調整所の設置など、各局及び警察、消防、自衛隊を初めといたしました各機関との一層の連携強化に努めております。
 今後とも、国や関係機関と十分に連携し、核物質による災害への対応に万全を期してまいります。
 

 
質問2
 また、核燃料に限らず、日常的に実にさまざまな危険物が都内を通過しています。危険物輸送に関する国連勧告では、危険物の表示に関し国際的ルールを示しています。四けたの数字により、危険物の化学物質や発火点がわかるように分類されているものです。
 日本では、海上及び航空はそのルールに従っていますが、なぜか陸上輸送だけは取り入れておりません。そのため、かつて事故のとき、運転者が重体で危険物の中身が不明という例がありました。本来であれば、内容を示すカードを携帯しているはずですが、その運転者は何種類ものカードを持っており、当日運んでいたものを確認するのに手間取ったというものです。
ことしから、IAEA輸送規則の改正により、輸送従事者への教育訓練が法令上の義務となりました。しかし、施行前のことですが、核燃料輸送車の助手席で、搭乗者が足を窓に乗せているのを見た方もいます。なれというのは怖いものです。都内を通過中の車の事故は、都の関係者及び都民生活に大きな影響を与えます。
 核燃料の場合は、一車両ということはほとんどなく、四台で一隊列とし、前後に伴走車がつき、通常、数隊列で走ります。さまざまな性質の異なる核物質の種類をだれも示せないということはないと思いますが、災害時などで高速道路が破壊されるやもしれません。そのような場合、放水していいもの、悪いものなど、核を含む危険物の内容がわかる表示があれば、警察、消防ともに対応しやすいと思われます。
 核燃料を含む危険物の陸上輸送についても国連の勧告を取り入れるよう、都民の命を預かる都として、早急に国を動かす力を発揮し、申し入れていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。
 
答弁2
 ▼総務局長
 陸上輸送に関します表示についてでございますが、核燃料など危険物の陸上輸送につきましては、法令に基づき、輸送容器の見やすい箇所に危険物の内容を明記して標識を表示することが義務づけられております。
 また、核燃料の輸送に当たりましては、輸送容器に表示するだけでなく、輸送車両にも放射性物質を示す三つ葉マークが表示されております。
 したがいまして、陸上輸送に関する表示について、国に申し入れることは考えておりません。
 

 
質問3
 続いて、都内の避難場所は、国有地や民有地など都の関与が難しいところも指定しています。私が住む杉並区では、民間の三井上高井戸グラウンドも指定されていますが、現在そこに六階建てのマンションを建て、その中庭を避難場所にするという動きがあります。発端は、企業がグラウンドの維持管理が大変ということのほか、企業論理が働いているようです。
 しかし、六階のマンションが火災やそれに伴う熱風を本当に守れるのか、マンションの切れ目から、また、マンションを越えて火の粉が飛んできても、避難場所としての機能が確保できるのか、周辺の人々からも疑問と反対の声が上がっています。
 このような民有地では、開放された空間を保つために、固定資産税の減免など、避難場所の確保策をまず考えるべきではないのか、伺います。
 
答弁3
 ▼都市整備局長
 固定資産税の減免などによる避難場所の確保策についてでございますが、周辺市街地の大火による輻射熱などに対し安全とされている避難場所は、現在、区部で百七十カ所、総面積で約五千八百ヘクタールを都が指定しております。
 このうち、面積の八割は公園や河川敷などの公共用地でありますが、残る二割の民有地は、土地所有者等の協力を得て、大学用地や寺社境内などを指定しているのが現状でございます。
 したがいまして、民有地における避難場所の指定は、土地所有者の自由な土地活用を拘束するものではなく、お話の税の優遇措置などでは、必ずしも避難場所を確実に担保することにはつながらないと考えます。
 都といたしましては、今後とも、土地所有者の理解と協力を得て、避難場所の確保に努めてまいります。
 

 
質問4
 同様に、杉並区と隣接した警察大学校の跡地も、中野区は開発計画を進めています。杉並区としても、跡地利用計画案に伴う三者合意も無視され、申し入れをしたところです。特に直下地震において都心西部に被害が多いとされている以上、警察大学校跡地は、帰宅困難者が環七沿いに西へ帰る場合の中間地点としても重要な拠点になると思われます。ここは、中野区の中でも数少ない貴重な緑地があり、国有地です。
 昨年三月に都が発表した防災都市づくり推進計画を見ても、各地域で公園不足の記載はあっても、どうするのかという点が不明です。せっかく災害避難場所として指定したものの、指定者の責任はほとんど省みることなく、次々と消えていくのは相手次第というのも、余りにも無責任ではないでしょうか。
 災害避難場所については、指定者の責任として、できる限り公的資産としていくべきだと思いますが、お考えを伺います。
 
答弁4
 ▼都市整備局長
 避難場所を公的資産とすることについてでございますが、これらの民有地を公的資産にするには、多大な資金が必要となり、財政的な面からも現実的ではないと考えております。
 都といたしましては、これまで進めてきたような再開発や区画整理、木密事業、大規模な民間プロジェクトなどを推進する中で、逃げなくても済むような安全な地区を拡大するとともに、避難場所周辺の建物の不燃化などを促進し、安全な都市づくりに努めてまいります。
 

 
質問5
 次に、災害時のペット対応ですが、災害発生後の避難場所では、被災者の心の安らぎも含め、ペットの避難場所の確保など多様な課題がクローズアップされています。
 ペットはもはや家族の一員であり、安らぎ、いやし、コミュニケーションの機会の増加など、ペットとの触れ合いの重要性はますます高まっています。
 とりわけ犬は、近年、年間約二万頭ずつ登録数がふえ、今や都内で三十七万頭が家族とともに暮らしています。
 都立公園での犬の散歩において、犬を飼っている方いない方、双方からのマナーやモラル向上の機会をつくってほしいとの意見により、現在、二つの公園でドッグランが開設されています。さらに、今後、他の公園でも開設計画があると聞いています。
そこで、災害時のペットの避難場所としてドッグランの広場を活用できれば、被災者の心の安らぎと健康面に有効と思います。このことは、昨年三月質問したときに、意見として申し述べました。
 地方と異なり、都会のペットの災害対策は野放しにできない状況になっています。ペットの種類もさまざまです。災害対策の一環として、ドッグランの各施設の活用を工夫してはどうかと思います。お考えを伺います。
 また、都立公園でのドッグランは、都民のボランティアの理解と協力により運営されています。さらに、しつけ教室やマナー教室を運営しているNPOなどの団体が活動し、効果が出てきていると聞いています。これらの団体に、各施設でのペットの管理運営などの対策をお願いできるのではないかと思います。いかがでしょうか。
 
答弁5
 ▼建設局長
 災害時のドッグラン施設の活用についてでありますが、都は平成十五年に修正した地域防災計画で、災害時における動物の保護について、区市町村や東京都獣医師会など、関係団体との協力体制を確立することとしております。
 ご指摘のドッグラン施設の活用につきましては、災害発生時にペットの避難場所を管理する区市町村と、今後調整を図ってまいります。
 次に、災害発生後のペットの管理についてでございますが、ペットの避難場所の設置や管理については、区市町村が中心となり、行っていくものでございます。
 ドッグランにおいて活動しているボランティアなどが区市町村と連携をとり、その実績を生かして、災害時に活動できれば意義あることと考えております。
 
■中央環状品川線の整備
 
質問1
 二〇〇五年度の予算案は、思いがけない増収があり、補正も含め、二〇〇四年度当初比で約六千億円税収増になりました。知事は追い風参考記録といわれましたが、むしろ棚からぼたもち予算の感があります。したがって、新年度も緊縮予算の方向は是とします。しかし、緊縮体制にありながら、首都高速道路の中央環状品川線の建設費約四千億円のうちの二千億円を、今後、都が担うとされています。
 現在、低所得の高齢者や障害者など、社会保障として行政が担うべき分野まで、自立、自己負担をいや応なく押しつけている現状があります。そのような中で、首都高速道路公団の仕事まで、二千億円もかけてなぜ都が肩がわりするのか、その目的をお聞かせください。
 また、将来的には、日本全体のみならず、主要先進国も含め緩やかな人口減となっていく中で、この事業の経済効果をどのようにとらえているのか、将来的見通しも含めてお伺いいたします。
 
答弁1

 都が中央環状品川線の整備を行う目的についてでございますが、品川線は首都圏の人や物の流れを円滑にし、都市再生を図る上で重要な路線であり、その整備効果は極めて高く、一日も早い整備が必要でございます。
 公団民営化後の新会社が事業に着手するのは、早くとも平成十八年度以降であり、これを待っていたのでは都市再生におくれが生じ、経済活動や都民生活に重大な損失を及ぼすものと考えます。
 こうしたことから、都は、品川線を有料道路事業に先駆け、街路事業で整備することとし、その早期完成を目指します。
 最後に、品川線の経済効果についてでございますが、品川線の完成により、首都高速道路ネットワークが形成され、走行時間の短縮や走行経費の節減など、直接的な経済便益だけでなく、環境への負荷を低減する効果も期待されております。
 今後、人口は緩やかに減少するものの、首都圏の都市活動は依然として旺盛であることなどから、自動車交通量は増加傾向にあると予測されております。これらのことから、品川線の経済効果の推計は、適切であると考えております。
 
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■盲ろう養護学校の生活訓練の充実
 
質問1
 昨年十一月に出された東京都特別支援教育推進計画の中で、現在十一舎ある寄宿舎を五舎に再編整備することが打ち出されました。
 現在の寄宿舎は通学困難者の対策となっているため、通学バスがふえ、対象者が減っているのは事実です。しかし、寄宿舎に入った子どもたちは、親元を離れ、同じ仲間たちと生活することで自立につながったというお話を多々聞き及んでいます。
 障害児の保護者たちが心配される中に、親なき後ということがあります。現在、福祉保健局ではグループホームなどの施設づくりを進めておられますが、建物があっても、そこに入り、自立して暮らせるかということが重要なかぎを握ります。
 私も、昨年九月の文教委員会の中で、福祉保健局との連携を提案し、予算のマイナスシーリングが続く今だからこそ、グループホームや自立したアパート暮らしにつながるような施策として、福祉保健局とともに寄宿舎の存在価値を考え直すよう申し上げてまいりましたが、否定されています。
 現在、寄宿舎の統廃合と並行して、学校内の生活訓練施設が整備されています。しかし、こちらは短期訓練で、真の意味での生活自立にどこまで結びつくのか、疑問に思います。新たに似たような制度をつくり、施設建設や改修をすることがスクラップ・アンド・ビルドとはいえません。
 また、災害時における体育館などでの避難生活は、障害者の場合、一層の苦痛と思われます。寄宿舎が健在なら、災害時の避難場所としても最適だと思われます。
 今ある施設を最大限活用する方法を、局間連携で進めるべきだと思います。単に統廃合だけが行政改革とはいえず、今後は、寄宿舎の弾力的な活用も含め、生きた生活訓練の充実を図る必要があると考えますが、いかがでしょうか。
 
答弁1
 ▼教育長
 盲・ろう・養護学校における生活訓練の充実についてのお尋ねでございますが、障害のある児童生徒に対する基本的な生活習慣や集団適応能力の伸長は、盲・ろう・養護学校における重要な指導内容でございますので、これまでもすべての盲・ろう・養護学校におきまして個別指導計画を作成し、生活指導や宿泊行事を通して、身辺処理や好ましい人間関係の構築ができる能力の向上を図っております。
 今後ともこうした指導を充実しますとともに、寄宿舎が設置されている学校以外の児童生徒であっても、長期休業期間中に施設利用ができるようにするなど、寄宿舎の活用方法についても検討を行っているところでございます。
 
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■各局連携のための意識改革
 
質問1
 最後に、災害対策としては、防災プロジェクトとしての局間連携のほか、避難場所確保その他、都民の視点からの局間連携が重要です。また、寄宿舎の件に限らず、一定目的でつくられている施設や制度が疲労すると、すぐに廃止の方向でしかとらえられていないのが現状です。
 ちょっと話が飛んで恐縮ですが、昨年、私が質問した都立公園などの福祉目的利用についてもいえることですが、同じ団体内で、障害者は無料、認知症の方は付き添いの方も含め有料という矛盾に目を向け、都民の利便性を向上させることを優先課題とすべきと思います。
 行政改革といえば、指定管理者制度や民間への外部委託に限らず、事業により、わずかな金額でも局間の連携さえあれば、矛盾も、納税者である都民の不満も解消することができるものは多々見受けられます。目的枠をもう少し広げることで問題がなければ、局間の連携で生きる施策はさまざま考えられます。
 知事を初めいろいろな方々が、局の壁を打破し局間連携をといわれ、また先般の監査報告でも、各局の連携についてご注意がありました。局間連携には、やわらかな発想と、局自身、連携の必要性をキャッチするアンテナが求められます。これを進めるためには、知事の強いリーダーシップにより、まず各局の意識を真に変えることが重要だと考えます。
 最後に知事のお考えを伺います。
 今回は再質問の時間がございません。各局の真摯なご答弁を期待いたします。よろしくお願いいたします。
 
答弁1
 ▼知事
 局間連携を進めるための意識改革についてでありますが、これはもう至極当然のことでございます。行政が扱うすべての物事は複合的、重層的でありまして、硬直したライン、ラインで事が処せるものでは決してございません。
 ゆえに、知事本部というのがありましたが、これを本局にしまして、内閣における官房というような形で機能させておりますが、まだまだ及ばぬところがございます。私の知らないうちに随分いろいろなことが行われることがございまして、都政が直面している課題を解決するには、局の壁を超えて横断的、総合的に取り組まなければならないとも自戒しております。
 そのためにも、各部局が全庁的な視点に立ち、相互に連携を図るという意識を持って行政の効率化を進めることが重要であると思います。
 都民の負託にこたえるため、今後とも都庁の改革に懸命に取り組んでいくつもりでございます。
 
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