平成17年第1回定例会 一般質問

医師教育にグランドデザインを
介護保険制度の運営には改善を

田代ひろし(自民党)
■東京の医療
 
質問1
 多摩メディカル・キャンパス構想は、集積のメリットを生かすという理念を掲げておりますが、現在の整備方針では、単なる別組織の集合でしかありません。
 一例を挙げますと、患者さんがCT検査の際、長期間待たされるという事例が、我が国の医療現場で問題になっておりますが、その例に漏れず、府中病院でも一カ月待ちが当たり前になっております。
 ところが、同じ敷地内の神経病院では長くて一日待ちであり、さらに、開設以来一度も使用されていないオペ室や入院施設があるという多摩がん検査センターは、これは隣接している公社施設ですけれども、ここのCTは、特定時間以外は待たずに使える状態であるのに、別組織であるという理由で、手続が煩雑で時間がかかり、府中病院外来中では診療の妨げになるため、ほとんど利用されておりません。
 連携、協力というかけ声だけでは解決できません。将来、高度医療機器の共同利用ができるような計画性を持ち、意思疎通の実効が上がる配置方法とネットワークをつくる真摯な取り組みを図るべきですが、それには、十分な予算づけと、広範囲な専門家によるボランタリーなサポート、それを確実に受けとめる行政の姿勢が必要であります。知事のご所見を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 多摩メディカル・キャンパスの整備についてでありますが、このキャンパスには、病院、福祉施設、学校など、複数の局が所管するさまざまな施設が集積しております。
 ただ、その集積があだになって、患者さんをいたずらに待たせるというようなことはやはりいけないと思いますね。きのうの森田議員の質問にもありましたけれども、例えばGISのような情報管理システムというんでしょうか、ああいうものを適用して、集積というものをやはり機能的にさばいていく努力が必要じゃないかと思います。
 整備に当たっては、各施設間のネットワークを構築するなど、相互に連携、協力を図り、キャンパス全体として施設の一体的な運用を目指していきたいと思っております。
 将来の医療ニーズを見据えて、これらの施設の有する人材、情報、技術などを最大限効果的に活用することにより、多摩地域はもとより、都全域を視野に入れた、総合的で質の高い医療サービスを提供していきたいと思っております。
 

 
質問2
 平成十六年度から始まった医師の臨床研修制度の義務化により、研修医が自由な意思で研修病院を選択する、いわゆるマッチングシステムに移行し、長年続いてきた大学病院医局制度の一部崩壊が始まりました。
 地方の公立、民間病院では、人材が手薄となった大学病院医局による派遣医師の引き上げが顕著となり、診療に支障を来すなど、また、麻酔科医が人材派遣会社からの派遣で賄われるといった大学病院の実態があるなど、アンバランスな医師不足が深刻な社会問題となっております。
 若手医師がみずからの研さんをする医療機関を選択する際、金銭や処遇は問題ではなく、どれだけ充実した臨床経験を積めるかにかかっております。
 都立病院の臨床研修医の申込倍率は、十七年度採用者で十二倍を超えたと聞いております。しかし、大学病院における既成の研修システムの問題点が明らかになる中、目新しい都立病院に一時的に希望が集中したのでなければよいと心配しております。
 残念ながら、これまでの都立病院や公社病院は、名目のみの医療教育システムであり、人材育成が行われておりませんでした。とはいっても、大学病院や他県の公立病院も同様であり、最近の医療事故多発の原因となっております。
 これは、我が国が、どのような医療提供体制を構築していこうとしているのか、医師の教育のグランドデザインがないまま進められているのが大きな理由です。
 そこで、都立病院や公社病院にしっかりと予算づけをし、インセンティブを高める制度をつくり直せば、充実した研修システムができ上がり、その結果、病院の質の向上が図れ、将来、羽田の再拡張や横田基地の利用が活性化したときなど、アジア諸国からの患者さんの来日が飛躍的にふえ、アジア版ユーロの必要性も論じられ始めたこの地域での、医療を通じた国際貢献として認められ、さらに、東洋の医療シンクタンクとしての実績をつくり、現在、我が国を素通りして米国に向かっている医学部留学生や研究者の流れを変えることができ、あわせて観光産業など新たな活性化が得られるはずです。
 そのためには、まず、都の千二百人を超える行政マンとして働いている医師を中心に、テーマ別に研究会を立ち上げ、現場の改革案とモチベーションを高める具体的な方策をまとめ、さらに、在京にとらわれず、大学医学部のスタッフとの交流を盛んにし、東京都のみならず、アジアにおける臨床医療教育の一大拠点として、都立、公社病院を発展させていくことが、結果、東京都の民間病院や一般開業医のための公平な東京方式EBM、根拠に基づく医療の実現を進め、世界に冠たる国民皆保険制度を継続するため、適正な医療費の設定と二十四時間の医療提供システム構築の基礎となる、広範囲な真の病診連携の実現となります。
 国がグランドデザインをうまくつくれないのであれば、戦後の医療制度疲労が顕著になってきた今こそ、医療行政維新に向けて、その実行能力と施設を持つ東京都が率先してつくっていくべきではないでしょうか。東京都がつくれば、地方にも波及し、その積み上げが日本のグランドデザインとなっていきます。リーダーとして、アジア地域の医療、福祉向上に取り組もうとの気概を持って事に当たられてはいかがでしょうか。知事のご所見を伺います。
 
答弁2
 ▼知事
 医師の人材育成等についてでありますが、医療の質を一層向上させていくためにも、何よりもお医者さんの育成が重要だと思いますが、お医者さん個々の質もさることながら、どうも概観しますと、お医者さんの数がいかにも足りないような気がいたします。これは県によって違うのかもしれませんけれども、首都圏においてはそれはいえると思いまして、私の息子の一人のお嫁さんも勤務医ですけれども、これは本当に見ていて気の毒なぐらい苛酷で、出産の後の休暇も最低限しかとれないという実情ですが、国は、現場を重視した新たな臨床研修制度を開始しましたが、これを指導できる病院の体制は不十分のまま運用されているのが実情でございます。
 都立病院や保健医療公社の病院は、地域の基幹的な病院として、特色のある医療機能を生かした臨床研修を実施しております。
 今後とも、魅力のある臨床研修を実施し、三百六十五日二十四時間の安心の医療の提供と、患者中心の医療の実現を目指して、次代を担う質の高いお医者さんの育成に努めていきたいと思っております。
 

 
質問3
 昨今、SARSや鳥インフルエンザなど、新興感染症に対する危機管理の必要性が叫ばれ、こうした感染症を初めとする緊急を要する事態は、一たん発生すると、罹患者がいる地域を中心に周辺地域に拡大し、地域住民に大きな不安を与えていくものです。したがって、できるだけ地域内で迅速かつ大規模に検査、診断、治療を行っていくことが望ましいと思います。
 万が一、こうした事態が発生した場合は、パニック状態にある膨大な来院者に対して、開業医の対応には限度があり、地域の中核病院である公社病院や都立病院で、一般外来の時間を臨時的に変更し、緊急の事態に対応する医療に特化させ、場合によっては、いわゆる野戦病院化して、緊急医療の最前線として、地域の中核病院の役割を果たしていくべきと考えますが、法令化や条例化を踏まえての都のご意見を伺いたいと思います。
 
答弁3
 ▼福祉保健局長
 緊急を要する事態への都の対応についてでありますが、ご指摘のとおり、新興感染症を初めとする緊急を要する事態が発生した場合には、迅速かつ的確に必要な医療を確保することが何よりも重要であります。
 万が一、こうした事態が発生した場合に、地域の中核病院である都立病院や公社病院が、一般外来の時間を臨時的に変更するなど、直ちに緊急時の医療体制に特化できるよう、常日ごろから準備しておくべきであるというご指摘は、貴重なご意見でございます。
 都立病院や公社病院は、これまでも、感染症指定病床の確保やSARS診療協力医療機関への参画など、万一の場合に備えた患者の受け入れ態勢を整備してまいりました。
 現在、東京都新興感染症対策会議において、大規模発生時を想定した新興感染症対策の行動計画について検討しておりまして、今後、その検討結果を踏まえ、都民の安全と安心の確保に努めてまいります。
 
■介護保険
 
質問1
 介護保険では、ケアマネジャー、利用者、家族、ヘルパー、主治医などの関係者が連携し、利用者の状況や援助目標を共有化するサービス担当者会議の開催がほとんどなされていないという実態があります。
 ケアマネジャーにとって、医師は忙しく、一方、主治医意見書を書いた医師は、その後ケアマネジャーから連絡がないということに不満を持っているなど、両者に高い壁があり、改善が必要です。
 東京都の調査によれば、ケアマネジャーの三六・二%が、ケアプラン作成に当たり、所属する事業所から経営的な配慮を求められていることが明らかになっています。本来、利用者に最もふさわしい事業者を公正に選ばなくてはならないのに、自社の事業所を優先していることがうかがわれます。
 ヘルパーをお手伝いさんがわりに使ってしまっている利用者、本来本人ができる家事を提供することによって、かえって本人の心身の機能を低下させていたり、ホームヘルプサービスで実際に提供しているサービスは家事援助なのに、すべて単価の高い身体介護で請求するなど、悪質な事例も後を絶ちません。都の考えを伺います。
 
答弁1
 ▼福祉保健局長
 介護報酬の不正請求などについてでありますが、お話しのような事例は、介護保険制度の健全かつ円滑な運営を脅かすものと考えます。
 このため、都は、高齢者を対象とした介護保険活用読本を作成し、利用者に対し、サービスの適切な利用を啓発するとともに、事業者に対しては、新規指定時の悉皆研修や集団指導などを通じ、関係法令の周知徹底を図っております。
 また、区市町村とも連携して、効率的かつ重点的な事業者指導を行っており、悪質な事業者に対しては、今後とも、指定を取り消すなど、厳正に対処してまいります。
 

 
質問2
 東京都は、緊急三カ年計画として、社会福祉法人のみならず、民間企業へも区を通じて間接補助を行い、グループホームの整備に乗り出していることは高く評価します。
 夫婦二人で暮らしていても、どちらかが認知症になったケースは、お互いの生活を分けざるを得ませんが、ともに暮らしてきた二人が全く離れ離れになるのではなく、近くにグループホームがあれば、日中は行き来しながら生活することができます。今後ますますふえるであろう認知症高齢者対策の切り札として、グループホームに期待します。
 しかし、現在の制度では、グループホームは二ユニットまでしか認められておりませんが、今後の需要増大を考えますと、二ユニットにこだわる理由がわかりません。家庭的な環境が確保されることを条件に、もっと自由に認めるべきであり、国を動かすための取り組みを伺います。
 
答弁2
 ▼福祉保健局長
 認知症高齢者グループホームのユニット制限についてでありますが、東京は地価が高く土地の高度利用化が進んでいることから、ご指摘のとおり、ユニット数の全国一律の制限は、認知症高齢者グループホームの設置促進だけではなく、事業者の新規参入も妨げていると考えます。
 このため、都はこれまで、ユニット数の規制について、東京の地域特性を踏まえて緩和するよう、再三国に提案してまいりました。今後とも、国に対し強く働きかけ、整備の促進を図ってまいります。
 

 
質問3
 今回の制度改革の中で、区市町村に対する交付金制度が導入されることとされています。この交付金制度では、日常生活圏域ごとの整備計画の策定を前提としており、区市町村から提出された計画を国が評価し、評価順位の高い計画から順に予算の範囲内で交付する仕組みとなっております。
 全国から提出された整備計画が多数に上った場合、交付の対象が調整されることもあります。また、従来、九人一ユニットの場合、国庫補助基準では、設置主体が社会福祉法人の場合三千六十万円、医療法人の場合二千万円であったものが、交付金制度では一律一千五百万円に減額されることになります。
 このように、交付金制度になると、現行の補助水準が低下することになり、せっかくの増加軌道に乗った整備状況にブレーキがかかってしまいます。現在の補助水準が低下しないよう、引き続き認知症高齢者グループホームの設置促進に取り組むべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁3
 ▼福祉保健局長
 認知症高齢者グループホームの整備についてでございますが、補助金の交付金化に伴い、補助基準額の大幅な減額など、お話しのように、国の姿勢は大きく後退しておりす。
 しかし、都は、国の動きに左右されることなく、これまでの補助水準を維持するとともに、平成十七年度からは新たに、土地所有者等が建物を新築し、グループホーム事業者に賃貸する場合も補助対象に加えることといたしました。
 引き続き、さまざまな工夫を凝らし、グループホームの設置促進に積極的に取り組んでまいります。
 

 
質問4
 新たな施設をつくるという発想から、現在使用されていない住宅を改修することで施設整備を図るという転換が必要でありまして、そのためには、都は、不動産業界との話し合いを積極的に進めるとともに、社宅などの有効活用を企業に働きかけていくことが重要ですが、ご所見を伺います。
 また、建築基準法や建築安全条例の用途の取り扱いや消防法などとの整合性を図り、関係省庁で調整し、規制を緩和していくことを国に働きかけていくべきです。
 グループホームは、建築基準法上は寄宿舎としての取り扱いを受け、厳しい制約があるため、古い家を改造して使う場合、断念せざるを得なかった例もありました。
 具体的には、建築用途が住宅となっている既存家屋をグループホームに使用するためには、寄宿舎に用途変更する必要があります。それには、天井裏に至るまで防火仕様に改修する必要があり、工期が長くなり、その間収入が入ってこないなど、資金的に大きな負担がかかることになります。
 これらのことが整理され、家屋改造での整備が可能となれば、コンビニの数ほどグループホームができることも夢ではなさそうです。
 
答弁4
 ▼福祉保健局長
 既存建物の有効活用についてでありますが、これまで都は、グループホームの設置促進を図るため、社宅などの既存建物の改修による整備に対しても独自の補助を行ってまいりました。
 また、平成十六年四月には、グループホーム設置促進事業本部を局内に立ち上げまして、宅地建物取引業界を初め、農協、金融機関、建設事業者、ハウスメーカーなど、幅広い事業者への個別訪問を実施いたしまして、設置に向けた協力を要請してまいりました。
 現在、土地または建物のあっせんにご協力いただける不動産事業者と運営を予定している事業者とを結びつける仕組みづくりを検討しており、今後とも、ご提案を踏まえ、都内に存在する社会資源を有効に活用できるよう、工夫を重ねながら整備に努めてまいります。
 

 
質問5
 特養ホームからの在宅復帰を視野に入れますと、グループホームは、認知症の人に限らず、虚弱な高齢者にも門戸を広げられるよう、国に制度見直しを働きかけていく必要があります。
 さらには、グループリビングのような、血縁関係のない少人数の高齢者が、相互扶助をベースに、お互いの自由やプライバシーを尊重しながら、家庭的な雰囲気の中で共同生活を行う場をつくる手助けをする仕組みづくりを都として進めていくべきですが、ご所見を伺います。
 
答弁5
 ▼福祉保健局長
 高齢者の新たな住まい方についてでありますが、ご指摘のように、虚弱高齢者のためのグループホームやグループリビングは、少人数の高齢者が家庭的な雰囲気の中で共同生活を行う場でありまして、ひとり暮らしの高齢者がふえている東京におきましては、安心の確保や相互扶助の観点からも、有効な住まい方であると考えております。
 今後、東京の高齢者が地域で安心して暮らし続けていくことができるよう、その方策の一つとして、住まい方の新しいあり方について、その仕組みづくりも含めて検討してまいります。
 

 
 特養ホームにおいては、ことし十月から、光熱水費を含む居住費や食費が介護保険の対象外になり、自己負担は、要介護五、相部屋、食費込みで、標準的な世帯では現在六万円程度のものが九万円に、個室ユニット型だと、十万円前後のものが十三万円前後になると想定され、低所得者層への配慮が必要と考えますので、対応を要望いたします。
 
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■学校施設の開放
 
質問1
 四十歳以上の都民の一五%が糖尿病有所見者で、また、さらに一五%の人が高脂血症といわれ、放置すると、失明や冠動脈疾患、脳梗塞の合併などを誘発いたします。
 健康保険制度を守るためにも、今後の行政の視点として、高齢者を介護保険や医療保険の対象者とするのではなく、健康で主体的に行動する都民をふやしていくこと、すなわち予防医学の運動実施が重要となります。
 その観点から、スポーツ、文化などサークル活動の場として、公的施設の開放が必須であり、当然、従来の発想を変えて、行政は施設を都民に全面開放することを前提とし、一方、利用者は、例えば損害保険に入るなど、自己責任の明確化をもとに施設を使用するといった発想が必要です。
 そこで、住民に身近な施設である学校を、他局の施設に先駆けて積極的に開放すべきと考えますが、教育長の所見を伺い、私の質問を終わります。
 
答弁1
 ▼教育長
 学校施設の開放についてのお尋ねでございますが、現在、都教育委員会では、都民の学習、文化、スポーツ活動を振興し、地域社会に開かれた学校づくりを推進するため、学校教育に支障のない限り、都立学校の施設開放を全校で行っております。
 しかしながら、学校に施設開放の意義が十分に浸透せず、グラウンド、体育館など体育施設については、実際に開放している施設は限られまして、開放日数の少ないケースがございますし、また、音楽室、会議室など学習、文化施設の開放は一部の学校にとどまっているなどの課題がございます。
 教育委員会といたしましては、お話しのように、健康で主体的に行動する都民の増大、こういう観点からも、学校施設を積極的に開放していくことが必要と考えておりますので、ご提案の保険への加入も含めまして、解決すべきさまざまな課題がございますが、多くの都民が利活用できるような施設開放の一層の充実に向け、最大限努力してまいります。
 
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