資産共用し省エネ経費節減図れ 事前の耐震施策を早急に講ぜよ |
森田 安孝(公明党) |
■省エネ・経費節減 |
質問1
地球温暖化防止のための国際条約、京都議定書が二月十六日に発効しました。この国際公約を実現するために、都の役割も大変大きいものがあります。
このような中で、都は、省エネルギーと光熱水費の削減を目的としたESCO事業を事業化したことは、時宜に合った施策であると評価します。
まず、先行的に都立広尾病院でESCO事業を行うと聞いています。都が事前に実施した都立広尾病院の省エネ診断によりますと、一年間の電気、水道などの光熱水費が、現状、年間三億三千九百万円のところ、年間六千六百万円以上の削減、省エネ率二五・四%以上という大変に大きな効果が期待されるという結果が出ました。事業が具体的になるのは十八年度のことですが、省エネの面からも経費の削減という面からも、大きな成果が期待されています。
そこで、伺います。
第一に、ESCO事業の事業化は、エネルギー削減効果の高い施設を選定し、試行を行っていますが、幾つの施設で、どのような試算結果が出たのか、伺います。
第二に、すべての都施設で、二十四時間稼働している広尾病院のような二五%もの劇的な削減効果が出るとは思いませんが、都立広尾病院だけではなく、ESCO事業を早急に他の施設にも広げるべきです。今後の計画をお示しください。
第三に、都立広尾病院だけで六千六百万円の削減効果が期待できることは、都施設全体で取り組めば、財政再建の面からも大変に大きな成果が期待できます。外郭団体も含めた全施設のESCO事業推進のため、知事主導で全庁的なプロジェクトチームを発足すべきです。見解を伺います。
答弁1 ▼財務局長
ESCO事業の事業化に向けた試算についてでございますが、ESCO事業は、ESCO事業者の提案により施設の光熱水費とエネルギーの削減を保証するものであり、コストの縮減のほか、環境面からも有効な施策でございます。
このため、都においては、平成十五年度に、各局が所管するエネルギー消費量の大きな施設のうち、都立病院など削減効果が高いと見込まれる十五の施設について事業化に向けた試算を行ったところでございます。
その結果、この十五施設に対し、ESCO事業により約三十四億円の設備投資を行った場合、全体で光熱水費を十年間で約七十億円削減できるとともに、CO2を平均で一〇・六%程度削減できることが明らかになったところでございます。
次に、都におけるESCO事業の今後の計画についてでございますが、ただいま申し上げました十五の施設のうち、既に実施している都立病院以外の施設については、省エネルギー効果や設備機器の更新時期、施設の運営計画などを総合的に勘案し、優先順位をつけながら計画的に実施していくこととしております。
また、それ以外の大規模な施設についても、現在、導入可能性の調査を行っておりまして、今後、調査結果を十分見きわめながら対象施設を選定していく予定でございます。
最後に、全庁的なプロジェクトチームの設置についてでございますが、ご指摘のとおり、ESCO事業を推進していくためには、施設ごとに費用対効果を検証しつつ、全庁的に取り組むことが重要でございます。
都では現在、コストの縮減をさまざまな角度から推進していくため、東京都公共施設等コスト管理委員会を設置しておりまして、その中で、省エネルギー施策の一環としてESCO事業を計画的に推進していくこととしております。
ご提案のESCO事業推進のためのプロジェクトチームの設置につきましては、当委員会の中で体制を強化し、対応してまいります。
質問2
省エネ、経費節減のもう一つの視点は、共通に使用できる資産については、できる限り共通で使用するということです。今定例会の包括外部監査人説明にも、資産活用について都全体として取り組むべきだ、企業局や事業団の所有だからという説明は、都民の目からすると役所の中だけの議論のように見えると厳しく指摘しています。私も全くそのとおりだと思います。ところが、都庁のように大きく、しかも縦割りの組織になると、横の連携がとりにくく、同じような資産を、それぞれの局でたくさんの経費をかけて開発、運用しているケースが多く見られます。
その一つがGIS、いわゆる地理情報システムです。このシステムの基本は、東京都の地図情報です。それに、地図上に施設や都市計画、道路、水道、下水、防災などの情報を記入する、行政を運営していくためには必要不可欠なシステムです。このシステムを開発、運用、維持していくためには多くの費用がかかります。東京のまちは刻々変化していきますから、データの更新だけでも大変な費用がかかります。
例えばGISを利用したシステムの平成十六年度の運営経費は、東京消防庁も含め、十七システムで三十八億四千八百万円の経費がかかっています。例えば、水道局の水道マッピングシステムに七億円、下水道局の下水道台帳情報システムに二億五千万円、総務局の災害情報システムに七千万円などが主なものです。そして現状は、それぞれ個別に維持、更新に毎年同様の費用をかけています。これを都庁共通の統合型データベースにして各局、各部署が活用すれば大変大きな経費削減になります。
GISの専門家は、三点にわたって提案をしています。その第一は、都に現有するGIS地図資産としては、主なものは都市整備局、水道局、下水道局のものです。これら既存の資産を活用することで、共通地図の早期整備が低コストで可能です。二番目に、この共通地図を全庁GISとして構築し、各部局の業務データを組み合わせてGISの活用を図ります。第三に、以上の形で利用を続ける中で、データ項目の追加や整理を行い、総務省モデルの内容に段階的に近づけていくという提案です。まさに資源活用に対する具体的、建設的な提案だと思います。
そこで伺います。
第一に、この提案に対して所見を伺います。また、都は、統合型GISの構築に向け検討していると聞いていますが、なかなか取り組みは進んでいません。その理由をお聞かせください。
第二に、統合型への移行は、総論としてはよいのだが、各局の思惑があり、なかなか進まないとも仄聞しています。包括外部監査人報告でも、局を超えて都全体の財産の有効活用を提案しています。都民サービスも向上し、経費節減もできる統合型GISを早急に実現すべきです。所見を伺います。
答弁2 ▼総務局長
都が保有いたします地図情報の活用についてでございますが、地理情報システム、いわゆるGISの統合は、資産の有効活用やシステム経費の削減などの点においての有効性は認識しております。
統合に向けた取り組みについてでございますが、都市計画地理情報は、既に都市整備局を含む四局において共同利用を行い、また、広域防災電子地図も、既存のデータや市販のデータを活用いたしまして、八都県市が共同で作成し共有化するなど、資産の有効活用やシステムの経費削減に努めております。
しかし、GISの統合には一時的に多額の経費を必要とすることや、セキュリティー、技術面、運用面など解決すべき課題も多く、引き続き調査検討を行ってまいります。
次に、統合型GISの実現についてでございますが、システム構築に当たりましては、安定稼働の確保やセキュリティー、費用対効果等に留意しながら、再構築の時期をとらえ、必要性に応じて段階的に統合していくことが望ましいと考えております。
今後は、最新の技術動向を踏まえまして、地図情報の共有化やシステムの共同利用を順次拡大しながら、東京都全体で地図情報の有効活用に努めてまいります。
質問3
第三に、このGISのように、複数の局がかかわる、仕事がなかなか進まない事例が都の中にはまだ存在しています。こうした縦割りの悪弊を排除するためは、一層、行政改革を進めていく必要があると考えますが、知事の所見を伺います。
答弁3 ▼知事
縦割りを排除する行政改革の推進についてでありますが、私は今でも鮮明に覚えていますけれども、就任しましてすぐ、都庁担当の東京問題の専門家の東京新聞の論説委員もしていました塚田さんというベテランの記者と会食しまして、そのときに、石原さん、基本的なことを確かめたいけども、あなたは東京都でどういう行政をするのか、今のライン化のままでいいのか、それともそれをまたぐんですかといわれまして、当然のことでありますけど、私も国の政治で体験してきましたから、ライン化はやっぱりよくないと。つまり、非常に硬直した行政になるので、そんなことは毛頭考えていませんし、やっぱりそれを超える行政のシステムをつくっていきたいと申しました。そういうことで仕事を進めていくことも指示をしてきました。都庁全体が改革の目標と危機意識を共有し、行政の効率化を図っていくことが重要であると思っております。
今後とも、都民からの負託にこたえ、都民サービスの充実と東京の再生という目的を達成するために、とにかくラインを超えて、局をまたいで、徹底した都庁改革に取り組んでいきたいと思っております。
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■防災対策 |
質問1
かつて環状七号線以東の神田川、善福寺川流域は都市型水害の多発地帯で、台風が来たり、強い集中豪雨があると、川の水があふれたり、下水が逆流したりして水害が発生し、流域の住民は心配でなりませんでした。出水するとその被害は大変で、床下浸水でも、消毒、乾燥などで、少なくとも一カ月間はその部屋を使用することはできません。ましてや床上浸水や地下室の被害は、その比ではありません。
ところが、平成九年に、環七の地下五十メートルに直径十二・五メートルの環七地下調節池の一期工事が完成しました。集中豪雨で河川の流量が増加すると、一時的にあふれる水をのみ込み、雨がやんだら放流します。
調節池の供用開始以前の平成五年の集中豪雨では、杉並、中野、新宿などで三千世帯を超える都民が洪水で大被害に遭いました。ところが、昨年の二十二号台風は、総雨量も時間当たり雨量も、平成五年の豪雨を超えていたにもかかわらず、下流域の浸水はわずか七世帯でした。このような成果はなかなか報道はされませんが、私は喝采を送りたいと思います。この事業は防災対策の見本ではないかと思います。
現在着工している第二期工事が完成しますと、さらに安全性が増すことは間違いありません。一期、二期工事を合わせて、事業費は約一千億円を費やしましたが、防災対策に大変大きな成果があったと思います。防災対策は、事後ではなく事前に行うべきという見本であります。
そこで伺います。
第一に、環七地下調節池一期工事完成後、台風や集中豪雨で増水した河川の水を取り入れた回数は何回ありますか。そのうち、もし調節池がなければ川の水があふれるおそれがある警戒水位を超えたのは何回ありましたか。
第二に、第二期工事の供用開始と完成の予定はいつごろですか。また、完成後どのような効果が期待できますか。
第三に、環七の上流部分は、いまだ出水危険地帯が存在します。二期工事が完成すると、神田川、善福寺川の上流の整備が可能になります。早急に取り組んでいただきたい。所見を伺います。
答弁1
▼建設局長
神田川環七地下調節池に関する三点の質問にお答えします。
まず地下調節池の取水実績についてでありますが、この調節池は、神田川中流部の水害の軽減に効果的な施設であり、既に貯留量二十四万立方メートルの第一期事業につきましては平成九年四月から供用を開始しております。これまでに豪雨時に洪水を取水した回数は十七回でございます。
また、洪水を監視する水位計の記録によりますと、警戒水位を超えた洪水の回数は十六回であり、そのうち、降雨状況などから推測して、調節池で取水しなければ河川から溢水のおそれがあったと考えられる洪水は七回でございます。
次に、第二期事業の完成時期と効果についてでありますが、第二期事業は平成七年に着工し、十六年十一月にトンネルの掘進が完了いたしました。現在、第一期区間との接続工事を進めており、本年秋には善福寺川からも取水を開始いたします。引き続き、残る排水ポンプなどの施設整備を行い、十九年度の完成を目指してまいります。
この取水により、善福寺川の洪水三十万立方メートルの貯留が可能となり、善福寺川の治水安全度が大幅に向上いたします。
また、第一期及び第二期事業を合わせ、貯留量五十四万立方メートルの調節池が機能することから、神田川中流部の安全性がさらに高まるものと考えております。
最後に、神田川などの今後の整備についてでありますが、神田川及び善福寺川の洪水を調節池に貯留することにより、下流への流量の負担を軽減できることから、調節池上流の改修が可能となります。
神田川につきましては、平成十七年度より、取水施設付近から上流の未整備区間の護岸整備に着手いたします。また、善福寺川につきましても、環七通りの和田堀橋から上流の整備に向け、調査設計を行ってまいります。
今後とも、安全で親しみのある河川の整備を着実に進めてまいります。
質問2
防災対策に関連し、我が党の代表質問でも取り上げました震災対策について伺います。
中越地震で自宅が破壊された方には、三百万円の助成が国、自治体から支給されました。
今後三十年の間に、七割の確率で南関東直下地震が来るといわれています。政府中央防災会議でも、百十二兆円、一万三千人の死者という被害想定を発表しました。特に杉並、中野、世田谷などの木造住宅密集地域は壊滅的な被害が生じると予測されています。
地震後に再建のために助成するのではなく、事前に備えを固めて被害を最小にするよう耐震施策をとるべきです。その方が公的な支出も少なく、効果ははるかに大きいのです。
そこで伺います。
緊急車両も入れない木密地域の危険性については、都も、これまでにも何度となく指摘してきました。しかし、いまだ何ら解決の方向性も見えていません。
中央防災会議の伊藤座長も、死者を減らすには火災の初期消火能力を高めることだ、古い木造家屋の建てかえを促進することも重要、自助努力のほかに公的支援も必要と訴えています。
仮に、水害対策と同様、一千億円投入すると、十万世帯の危険住宅に改修費として百万円の助成ができます。一挙に解決の方向へ進展すると思います。このような思い切った対策を早急に講ずるべきです。所見を伺います。
答弁2 ▼都市整備局長
木造住宅密集地域における住宅の耐震改修への助成についてでございますが、震災時に倒壊のおそれのある住宅の耐震化を図ることは、市街地の安全性を高める観点からも重要なことと認識しております。
都としては、災害に強い都市を目指し、これまでも木密地域などの整備、改善を進めるとともに、住宅の耐震改修を促進するため、住宅耐震診断講習会の実施、耐震フォーラムの開催、簡易な自己診断方法の周知を行うなど、普及啓発に取り組んでまいりました。
今後とも、区市町村と連携して木造住宅の耐震化を促し、木密地域の安全性の向上に努めてまいります。
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■文化振興 |
質問1
東京のさらなる発展には、観光産業の振興とともに文化振興が不可欠です。都の行っているヘブンアーチスト事業やストリートペインティングも好評で、さらなる広がりが期待されます。
また、昨年は、我が党の提案により、文化振興の都民の窓口、いわゆるワンストップサービスを設置し、一歩前進したことは評価したいと思います。しかし、東京の文化の広がりはまだまだ十分とはいえません。改めて、東京の文化振興の今後の取り組みについて伺います。
答弁1
▼生活文化局長
今後の文化振興の取り組みについてでありますが、東京都では、都立施設を初めとする公共空間をアーチストの活動や発表の場として開放するなど、都民が文化と触れ合う場を広げてまいりました。
ヘブンアーチスト事業は、年々その規模を拡大し、本年八月には、東京の代表として愛知万博にも参加いたします。
また、現在、駒沢オリンピック公園でストリートペインティングの第二弾を制作中でありまして、さらに代々木公園にも拡大していく予定であります。
今後、東京都の文化施策を語る会において、自由に議論、提言していただき、今後の文化施策のあり方をまとめていくこととしております。
質問2
都民が文化に親しむ機会を広げるために、文化に関するボランティア活動を支援することも大切です。例えば京都市には、河合文化庁長官を初めとする地元の文化人がアドバイザーとなった文化ボランティア制度があります。伝統文化の紹介や文化事業のサポートなど、文化芸術活動全般に及ぶ幅広い活動をしていると聞いています。
東京で、外国人や地方からの観光客などの施設案内や観光案内にとどまらず、広く文化に関するボランティア活動を活発化させることが必要だと考えます。所見を伺います。
答弁2 ▼生活文化局長
文化に関するボランティア活動についてでありますが、ご指摘のように、都民がボランティアとして文化活動に参加し、文化を支えていくことは、大変意義のあることであります。
現在、都立の文化施設では、五百人を超えるボランティアが展示作品を解説したり、子どもたちの作品づくりを手助けするなど、多彩な活動を行っており、利用者からも好評を得ております。
また、文化に関するホームページである「東京アートインデックス」におきまして、民間の文化事業を含めたボランティアの募集情報を提供しております。
今後とも、情報の充実に努めるなど、文化に関心のある都民がさまざまなボランティア活動に参加できるよう、環境整備に努めてまいりたいと考えております。
先日、東京都の文化施策を語る会が発足し、各分野のアーチストや有識者による議論が行われていると聞いています。専門家の意見も参考に、文化がもっと都民に身近なものとなり、文化都市東京がさらに進むことを大いに期待し、質問を終わります。
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