防災計画の抜本的見直しは急務
子どもと学校の安全確保を |
河野百合恵(日本共産党) |
■震災対策 |
阪神・淡路大震災から十年、昨年からことしにかけては、新潟県中越地震、インドネシア・スマトラ沖の巨大地震、イラン地震などが連続して発生し、巨大地震の被害の恐ろしさを目の当たりにさせられるとともに、改めて減災の立場からの対策が待ったなしの課題となっていることを実感させられました。
私は、いつ起きてもおかしくないといわれる首都直下型地震及び東海沖地震、東南海沖地震から都民の生命と財産を守る立場から質問を行います。
質問1
まず、最近のこれらの巨大地震から何を学ぶのかという問題です。
十年前の阪神・淡路大震災は、それまでの予想を大きく上回る力、すなわち地球の重力の二倍の二千ガルの力が加わり、それまでの建築基準を満たしていたビルや建築物が大きな被害を受けました。
ところが、今回の中越地震は、気象庁の観測でも二千五百十五ガル、場所によっては阪神・淡路大震災を大きく上回る五千ガルの重力が加わったといわれています。これは宇宙ロケットが発射されるときの重力に匹敵する破壊力を持ったものです。このため、阪神・淡路大震災の後、耐震補強を行った上越新幹線や関越道の橋脚が破壊されるなど、予想をはるかに超えた被害がもたらされました。専門家は、現在の安全基準では被害を防ぐことができない地震だと指摘しています。
そこで、阪神・淡路大震災をはるかに上回る重力がかかった中越地震の教訓に学び、東京における大規模地震の被害想定と防災計画、建築物の安全基準などを抜本的に見直すことが必要と考えますが、今後の震災対策について知事の答弁を求めます。
答弁1 ▼知事
震災対策についてでありますが、日本は世界最大の火山脈の上にある世界有数の地震国でありまして、東京においても大地震が発生する可能性が極めて高く、自助、共助、公助に基づく備えを講じていくことが重要であると思っております。
都は、全庁的な体制を強化するために、これまでも都以外の力を仰ぎ、総力を挙げて実践的な訓練を積み重ね、防災力を高めてまいりました。
その一つの例が、私、就任以来始めました陸海空三軍を使っての防災対策ですけれども、共産党から終始反対でしたな。あなた方、選挙の前に、ことしも九月一日にやりますけど、それに賛成するか反対するか、はっきりいいなさい、はっきり。(発言する者多し)聞いてないんじゃないんだよ。大事なことだから、あなた方の意見を聞きたいんです。ことしも反対なんですか。(発言する者あり)それはしてないよ。都民の前であなたがはっきり答えなさい、それを。
また、八都県市が連携し……(発言する者多し)具合の悪いことをいわれて、きゃあきゃあきゃあきゃあ泣くなよ、本当に、もう。また、八都県市が連携し、首都圏の震災対策を強化してまいりました。現に、首都を構成する四県によって、首都圏FEMAもつくってまいりました。
国の被害想定が出されたことも踏まえ、あるいは、本当にいつ起こるかわからない、ことし起こるかもしれない大震災に備えて、ことしも九月一日に大演習を展開いたしますが、共産党は賛成するのかしないのか──国の被害想定が出されたことも踏まえまして、平成十七年度には、都内被害想定や地域防災計画の見直しに着手をいたします。
どうかひとつ、三軍挙げての協力に皆様の協力を、共産党の協力も熱願するわけであります。
質問2
昨年末、中央防災会議が首都直下型地震の被害想定を発表しましたが、地震の規模は、例えば東京湾北部地震の場合、マグニチュード七・三という大きなものと予測されています。その被害想定は、死者数が建物の倒壊による死亡のみしか想定していないなど、不十分な部分もあります。しかし、想定した規模の地震が発生すれば、我が党が指摘してきたように、政治経済の中枢を直撃するスーパー都市災害となることは避けられません。このことを直視するならば、東京都の被害想定は大幅に修正をしなければなりません。被害想定を全面的なものにするとともに、減災対策を急ぐ必要があります。
例えば、都は、首都高速道路の橋脚の耐震補強は一〇〇%完了したといっていますが、それは橋脚の上部だけであり、地中部分の耐震補強を行う必要があります。
また、先送りされている老朽化した都道の橋梁のかけかえなどが急がれていると思いますが、これらの交通インフラの緊急調査を行い、必要となった耐震補強施設の改修のための予算を確保することを提案するものですが、答弁を求めます。
答弁2 ▼建設局長
橋梁の点検と耐震補強についてでありますが、都と首都高速道路公団は、阪神・淡路大震災級の地震に対する総点検を既に実施しており、必要な耐震対策を進めております。この耐震対策の有効性は、新潟県中越地震においての類似した橋梁の被災状況からも確認されております。
都では、既に防災上優先度の高い一次緊急交通路百六十五橋すべての対策を完了し、二次緊急交通路につきましては、百十七橋のうち二十九橋を今年度末に完了いたします。
また、首都高速道路公団では、必要な橋梁の耐震補強を完了しており、現在、落橋防止対策を実施しております。
今後とも、工期短縮とコスト縮減を図り、着実に橋梁の耐震対策を推進してまいります。
質問3
中越地震では、液状化によって上越新幹線や関越道の橋脚が破損し、下水道のマンホールが至るところで浮き上がるなどの被害が発生しました。
私も昨年十一月に、救援ボランティアとして新潟県長岡市に行きましたが、そこで見たものは、液状化によって道の両側が大きく陥没したり、マンホールが一メートル近くも浮き上がるなどのすさまじい被害でした。
私が住んでいる江戸川区では、小岩や篠崎、葛西南部地域などが液状化しやすい地域とされています。そこで、江戸川区などの危険地域について、液状化ハザードマップを作成し、交通機関や下水道などのライフラインの安全確保のための計画を策定することが欠かせないと考えます。関係局長の答弁を求めます。
答弁3 ▼都市整備局長
地下鉄の液状化対策についてでございますが、地下鉄構造物につきましては、構造物の上にある土砂により浮き上がりが抑制されることから、一般的に液状化の影響を受けにくいとされております。
一方、地下鉄構造物が地下部から地上部に移行する区間などにつきましては、液状化による浮き上がりのおそれがあることから、周辺地盤を改良するなどの対策を鉄道事業者が実施してきております。
都営及び東京メトロの地下鉄につきましては、既に液状化対策を完了しており、安全性は確保されております。したがいまして、新たな計画を策定する予定はございません。
▼下水道局長
下水道施設の液状化対策についてでありますが、下水道管の埋め戻しに強度や密度などを高めた改良土を使用するほか、避難所の排水を受け入れる下水道管については、マンホールと管との接続部を柔軟な構造に取りかえるなど、計画的に対策を進めているところでございます。
質問4
首都直下型地震だけでなく、東海沖、東南海沖地震も東京に甚大な被害をもたらすことが予想されています。とりわけ離れた地域での地震は、長周期の震動として伝わることから、超高層ビルや長大橋梁、石油タンク、原子力発電所などに、これまで予想してこなかった被害を与える危険が指摘されています。ある専門家は、今、建設されている超高層ビルは制震構造となっているので長周期波動に対応しているが、この西新宿などの以前に建てられた超高層ビルは長周期波震動に対応しておらず、また、免震構造のビルは、これまでの常識を覆して大きな被害を受ける可能性が高いことを警告しています。
長周期波震動について、超高層ビルや原子力発電所など、安全神話にしがみつくのではなく、今日の研究成果を踏まえ、必要な対策を早急に講じるよう国に求めるとともに、都として対策室を設け、専門家を交えて対応を図ることが必要です。見解を求めます。
答弁4 ▼都市整備局長
長周期地震動に対する超高層ビルなどの対策についてでございますが、超高層建築物は、構造安全性について国土交通大臣の認定が必要であり、一般の建築物を上回る構造上の高い安全基準が適用されております。新たな問題である長周期地震動につきましては、現在、土木学会及び建築学会が合同で検討を進めております。都といたしましては、これまでの安全対策に加え、この検討結果を初め、国の動向を注目しつつ、適切に対処してまいります。
質問5
倒壊被害を防ぐ上で、木造個人住宅の耐震補強が極めて重要です。昨年十二月、読売新聞が行った全国世論調査では、大地震が起きたときに最も心配されることとして、家屋の倒壊を挙げた人が六八%、自宅がかなりの被害を受けると思うと答えた人は三四%、三人に一人という結果が示されました。
阪神・淡路大震災では、多くの木造住宅が倒壊、その倒壊した住宅から発生した火災が被害を拡大しました。このような住宅の倒壊、焼失によって失われる財産は、はかり知れないものがあります。それだけに、倒壊を防ぐための耐震補強のもたらす経済効果は大きなものがあります。
一橋大学のある先生は、阪神・淡路大震災の際の被災住宅への公費の投入は、被災住宅の解体費、仮設住宅や復興住宅の建設費などで一戸当たり総額三千七百万近くかかり、全体では、仮設住宅に千四百億円、復興住宅に四千六百億円という公費投入を迫られたと述べています。
しかし、あらかじめ耐震補強を済ませておけば、家屋の倒壊は免れ、巨額の公費を投入しなくてもよくなります。全国では、静岡、宮城、高知など七県、都内では中野区や墨田区、葛飾区などが、予算化を含め、独自に耐震補強工事の助成に踏み出しています。
都は、三宅島村民の救済のために住宅再建の補助を実施しました。ですから、個人の資産だから補助はできないという理由は、もう通りません。家屋の倒壊による莫大な経済的損失を考えるならば、予防にお金を使う方が理屈に合っているのではありませんか。全国の先進の取り組みに学び、都として補助を実施すべきです。答弁を求めます。
答弁5 ▼都市整備局長
木造住宅の耐震補強への助成についてでございますが、震災対策は、自助、共助、公助の原則により進めるべきものと考えております。都といたしましては、災害に強い都市を目指し、これまでも、木造住宅密集地域などの整備、改善を進めるとともに、住宅の耐震改修につきましても、耐震フォーラムの開催や簡易な自己診断方法の周知を行うなど、普及啓発に取り組んでまいりました。
今後とも、区市町村と連携し、木造住宅の安全性の向上に努めてまいります。
質問6
学校の耐震化は一刻の放置も許されない問題です。都内の公立学校の耐震診断の比率が約七四%、改修された学校は五五%にとどまっています。江戸川区の場合、十六校が耐震補強未実施で残されています。
公立学校は、子どもたちの学習と生活の場であるだけでなく、非常時の避難生活場所とされており、その改修は待ったなしです。ところが、財政難が続く区市町村では、予算が確保できず、小中学校の耐震補強や老朽化した校舎の建てかえ、改修は思うように進んでいないのが現実です。
今後、急激にふえる建てかえ需要を都区間の財政調整で適正に評価するとともに、時限的に補助を行うこと、少なくとも耐震補強についての区市町村の超過負担分だけでも、当面、支援することを求めるものです。
答弁6 ▼教育長
公立小中学校の耐震補強や老朽校舎の改築等への区市町村に対する支援についてでございますが、公立小中学校の耐震補強や老朽校舎の改築等につきましては、設置者である区市町村が国の助成制度を活用して対応しているところでございまして、都として独自の補助を行うことは困難ですが、小中学校の耐震対策が一層促進されるよう、引き続き国に対して助成制度の拡充を強く働きかけてまいります。
質問7
災害時における消防の役割は大きなものがあります。中越地震で東京のハイパーレスキュー隊が懸命の活動で幼い子どもの命を救い、一躍脚光を浴びました。現在、都には、ハイパーレスキュー隊は二隊しかなく、来年度さらに一隊の増設が予算化されていますが、大規模地震を考えると、まだまだ足りません。
また、老朽化した消防署の建てかえや出張所、消防団本部などの施設の改修も立ちおくれたままです。応急の対策の強化として、中越地震でも活躍したハイパーレスキュー隊を各方面ごとに配置するとともに、都は、老朽化した消防施設の建てかえや大規模改修などについて、先送りせず、事態を直視し、早急に建てかえ、改修のための財政措置を行うことを求めるものですが、それぞれ見解を求めます。
答弁7 ▼消防総監
消防救助機動部隊の配置についてでありますが、東京消防庁では、阪神・淡路大震災の教訓などを踏まえまして、消防救助機動部隊、通称ハイパーレスキュー隊を現在までに三部隊整備してまいりました。
今後、救助活動体制を一層強化するため、ハイパーレスキュー隊や各種装備資機材の充実強化に努めてまいります。
質問8
この問題の最後に、家具の転倒、落下被害について伺います。
家具転倒・落下防止対策委員会での検討はどのように進められているのでしょうか。当面、都としてキャンペーンの実施、低価格の器具の普及、アドバイザーや高齢世帯のための援助者の派遣、区市町村の助成などに取り組むことを求めるものです。お答えください。
答弁8 ▼消防総監
家具類の転倒、落下防止についてでありますが、東京消防庁では、先般、学識経験者と家具の業界団体等から成る、家具類の転倒・落下防止対策推進委員会を設置し、転倒防止器具の有効性や性能評価の方法を初め、効果的な取りつけ方法の周知、関係業界等と連携した普及方策などを検討しているところであります。
今後、本委員会の検討結果を踏まえまして、都の関係部局、区市町村と連携し、キャンペーンの実施など、効果的な家具の転倒、落下防止対策の推進に努めてまいります。
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■子どもたちの安全 |
質問1
二月十四日に起きた大阪・寝屋川市での、十七歳の卒業生が母校を訪れ、教職員を殺傷するという事件は、改めて今日の社会と教育の抱えている矛盾の深刻さを突きつけるもので、都民に深い衝撃を与えました。同様の事件は、四年前にも大阪の池田小学校で発生し、その後、各学校での監視カメラの設置や防犯用具の配置などの対策が講じられてきましたが、今回の事件は、学校の安全の確保が引き続き緊急の課題となっているとともに、より根本的には、今日の子どもに大きな影響を及ぼしている競争教育の問題や大人社会のゆがみ、暴力的、退廃的な情報のはんらんなどの社会的問題の解決が避けて通れないことを示しています。
中でも解決が急がれているのが、多くの子どもたちが巻き込まれている小学校から大学までの競争教育です。それは、小さいときから差別と選別の教育に追われ、友達を競争相手としか見られなくなったり、詰め込み授業に追いつけずに落ちこぼれたり、強度のストレスに多くの子どもたちがさらされていることの問題です。国連でさえ過度な競争と指摘している競争教育を見直すべきときが来ていると思いますが、知事の見解を伺います。
答弁1
▼教育長
教育における競争についてでございますが、昨年四月に、これからの都の教育の指針として策定した東京都教育ビジョンにおきましても、子どもたちが切磋琢磨することや競い合うことまでも過剰に避ける傾向が見られた結果、個性や能力を十分に伸ばすことができなかった面があると指摘しておりますが、学校におきましては、行き過ぎた平等主義や画一主義を改め、子どもたちが適度な競争の中で互いに競い合い、高め合う教育を行う必要があると考えております。
質問2
強度のストレスにさらされている子どもたちの心のケアが急がれています。そこで、学校でのスクールカウンセラーや養護教員の増配置、地域に孤立して置かれている子どもたちのケアのシステムなど急がれていると思いますが、答弁を求めます。
学校の防犯体制については、池田小事件以後、文部科学省が危機管理マニュアルを策定するなど、その対策が叫ばれてきたにもかかわらず、残念ながらおくれています。都内の小学校では、マニュアルで定められている整備状況は、入り口のインターホンが五九%、教室から職員室への非常通報ベルが二三%という水準です。
今、区市町村は、厳しい財政状況のもとで学校安全対策の緊急対応に迫られています。そこで、インターホンや非常ベル、防犯用具など緊急に整備できるように支援することが、これらの整備を大きく促進することにつながると思いますが、いかがでしょうか。お答えください。
答弁2
▼教育長
子どもたちのケアについてでございますが、都教育委員会では、スクールカウンセラーを、国の計画を二年前倒ししまして、平成十五年度よりすべての公立中学校に配置しますとともに、高等学校においても現在四十校に配置をし、児童生徒の相談活動の充実を図っておりますし、養護教諭につきましても、国の教職員定数改善計画を踏まえまして、配置をしているところでございます。
今後とも、各学校において、スクールカウンセラーや養護教諭が児童生徒の心身の健全育成に積極的にかかわっていけるよう、区市町村教育委員会とも連携して支援してまいります。
質問3
マンパワーの配置も重要です。各学校に防犯用の監視カメラが設置されているとはいえ、人手がなく、実際に役立っていないことは、横浜市の小学校長会が行った調査で、一日平均十五・七分しかチェックできていないことでも明らかです。
子どもたちを大切にする教育や校内安全確保の上からも、先生の増配置が求められているのに、都は積極的に対応しようとしてきませんでした。
また、最近は、習熟度別学習やチームティーチングの導入で職員室はいつも空っぽという学校も少なくありません。専門に警備に当たる警備員や用務員、学童擁護員なども、行政改革の名のもとに定員削減の対象とされ、ほとんどの学校からいなくなってしまいました。
このような学校の実態を無視した安易な人員削減は、学校の安全を損ないかねません。都として、まず先生の増配置をすること、学校警備員などマンパワーの配置への支援など、できる限りの手だてを尽くすべきではありませんか。
見解を求めまして、質問を終わります。
答弁3
▼教育長
公立小中学校の安全対策のための区市町村への支援についてでございますが、学校の安全を確保しますことは、設置者である区市町村の重要な責務でございまして、各区市町村におきましては、今回の寝屋川市立中央小学校の事件を受けまして、警備員の配置や防犯設備の配備など、それぞれの実態に応じ、さまざまな安全対策に努めているところでございます。
都教育委員会としましては、今回の事件を受けまして、緊急に区市教育委員会の担当者連絡会を開催し、学校の安全管理の総点検を行うよう指導したところでございます。
また、学校安全管理につきまして、リーフレットの作成や、小中学校を対象とした防犯指導者講習会の実施などを進めておりますが、今後とも区市町村教育委員会と連携をしまして、学校の安全確保に努めてまいります。
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