質問1
三位一体改革について伺います。
地方分権が声高に叫ばれてから既に相当な年月が経過いたしました。ちなみに、都議会自由民主党の控室の入り口のところには、地方分権確立推進本部という看板がかかっておりますが、この看板は、今、議長になっておられます内田茂先生がまだ若くて理想に燃えているときに、仲間として、つけたものでありますから、大分前のことでございますが、相当の年月が経過しているわけでございます。
平成十二年に地方分権一括法が制定され、国と地方は、対等、協力の関係へと大きく転換したわけでございますが、肝心の国と地方の税財政制度については、抜本的な見直しは全く一向に進んでおりません。こうした事態を打開するために、国庫補助負担金改革、税源移譲、地方交付税の見直しをセットで行う、いわゆる三位一体改革が国において進められ、その理念は実に美しいといえます。大体、この三位一体改革という言葉自体が本当はおかしいのでございますが、とりあえず申し上げておきます。
しかし、その現実はというと、地方分権改革の理念からは余りにもかけ離れたものとしかいいようがありません。国は、昨年六月に定めた、いわゆる骨太の方針二〇〇四において、小泉首相の政治判断により、三兆円規模の税源移譲を行う旨明記し、あわせて、税源移譲の前提となる国庫補助負担金改革の具体案の作成を地方に依頼いたしました。
これを受け取った地方の側は、地方分権をとにもかくにも進めようという強い思いから、改革案の取りまとめに懸命に努力したわけであります。実際、全国知事会においては、昨年八月、石原知事を初め全国の知事が新潟に集結しまして、実に二日間にわたり深夜にまで及ぶ真摯な議論を展開しました。その結果、地方の案が取りまとめられ、国に対して改革を直談判した姿は、同じ地方の自立を目指してきた者といたしまして、胸に迫るものがありました。
こうして地方が投げ返したボールを受け取って、秋からは、国による議論がスタートしたわけでありますが、国の各省は、省益を優先する余り、地方の提出した補助負担金の削減案に一斉に反発するなど、国の議論は当初から混乱をきわめたものとなりました。この間、国と地方の協議の場も、約四カ月の間に計八回開かれましたが、開催を重ねるほど、国の後ろ向きの改革姿勢が鮮明となるばかりでありました。
結局、最後は閣僚による政治決着に持ち込まれ、昨年十一月、政府・与党合意による、いわゆる三位一体改革の全体像が取りまとめられましたが、その結果は、三兆円の国庫補助負担金の削減だけが優先されたため、大いに不満の残る内容となりましたことは、皆様方ご承知のとおりであります。
このような性急かつ一方的な決定が行われたのは、もちろん国の各省による消極的な姿勢によるところが大きいわけでありますが、果たして地方の側にも問題がなかったでしょうか。分権改革の議論が、いつの間にか財源獲得の手段と化してしまい、こうした弱みにつけ込まれ、国に丸め込まれてしまったのではないかと思われます。
まず、三位一体改革の全体像で示された内容で、どのような点が問題か、また、今後どう対応していくのか、知事の所見をまず伺います。
答弁1 ▼知事
大変力強いご質問と、ご建言をいただきまして、ありがとうございました。
いわゆる国の三位一体改革についてでありますが、何回も繰り返して申しましたけれども、今回の改革の全体像なるものは、ただ国の支出を地方につけかえただけでありまして、何ら分権に結びつかない結果となりました。国の権限を温存する交付金化に至っては、改革の本旨に逆行するものといわざるを得ません。
いわゆる三位一体の三要因であります、その一つである交付税制度などというものは、百二十兆の赤字を来しているのに、これについて全く国と地方との間の議論もございませんでしたし、税財源の配分にしても、いきなり三兆円というえさを総務省が投げ込めば、みんな金魚みたいにそれに飛びついて、千載一遇、千載一遇といって、結局本論が全くないままに終わったのが、前回の知事の総会の実態だと私は思います。
やめた人のことをいいたくありませんが、梶原君は親しい仲ですけれども、二人で思い切って話をしましたら、君、本気で六十点というのかといったら、いや、限りなくゼロに近い六十というの、こんなものはやっぱり語るに落ちる話でありまして、ともかく、あそこで東京は東京なりの主張をすべき問題がたくさんありましたが、何か東京ひとり勝ち論が横行しているんで、できるだけ私は言葉を慎みましたけれども、しかし、他県、他の特別区も含めて、特別市ですか、政令指定都市ですか、それにためになる建言もしたんだけど、全くそれが議論の対象にもならない形でありました。
東京はいい分がいっぱいありまして、田中角栄がつくったあの石油揮発油税にしたって、東京が日本で最大の売り上げをしているのに、もともとそれはもう高速道路の建築という目的税でありましたが、その分割なるものは非常にでたらめで、東京は売り上げには協力しているけれども、もらうべきものをもらっていないという、そういう非常に矛盾した実態があちこちにありますが、ここでそれをくどくど申しませんけれども、いずれにしろ、最初からやはり国は何までするか、ならば地方がどこまで受け持つかという、そういうきちっとした両手をついた仕切りというものをせずに、いきなり立ち上がって、何か知らぬけど、金の話に終始したという感じで、これからは、あるべき、全国知事会も含めまして、国と地方自治体の話し合いというものは、やはり最高責任者の総理が出てきて、自分の、日本の歴史の中での地方分権という必然性、蓋然性というものを要するに披瀝し、それに知事たちがこたえていくという形でなければ、書生論のようですけど、本当の改革にはつながらないと思っております。
そういうことで、都は、これからも機に応じて東京の主張をしていくつもりでございます。
質問2
国の全体像では、義務教育や生活保護などが国庫負担金の削減対象とされ、また、これまで全く議論の対象にすらなっていなかった国民健康保険への都道府県負担の導入が唐突にも盛り込まれてまいりました。余りにも唐突過ぎます。しかも、しかもです、国民健康保険制度を今後どうするのかという将来像が全く不明瞭なまま、財政負担の問題だけを切り離して地方への負担転嫁を行うことは、全く不合理であるといわざるを得ません。
義務教育は、憲法で保障され、本来、国が責任を果たすべきものだと考えられます。しかし、国庫負担金を廃止対象とすることについては、都を含めた複数の自治体は反対しましたが、結局は国の全体像に盛り込まれてしまいました。
今回の三位一体改革の全体像において、義務教育費国庫負担金の取り扱いはどうなっているのか、また、義務教育費国庫負担金の削減の東京都への影響額はどのくらいかを伺います。
そもそも義務教育費国庫負担金は、教職員の人件費の半分を国が負担する制度であります。義務教育の水準を維持するには、まず教職員の確保がきちっと行われるべきであることから、国庫負担制度は、義務教育水準を実質的に担保する重要なものであるといえます。過去には、この制度を一時的に廃止しましたが、教育水準の地域格差が生じたことから、その後復活したという事実もあると聞いております。
今回の改革の問題は、税源移譲の獲得を急ぐ余り、義務教育のあるべき姿という根本の議論がないままに、負担金の削減だけが先行したことです。
知事は常々、公教育の根幹である義務教育の水準確保は国の責任であり、教育に関する根本議論が行われないまま義務教育費国庫負担金だけを廃止、一般財源化することに反対されておりますが、私も全く同感であり、我が国の将来を左右する義務教育のあり方についてきちんと議論することこそ先決であり、それが行われずに、ただ財源確保のために国庫負担金を廃止することに断固反対します。
答弁2 ▼知事本局長
いわゆる三位一体改革における義務教育費国庫負担金についてでございますが、昨年十一月の国の改革の全体像では、平成十八年度までの二年間で、暫定措置として八千五百億円程度削減するといたしております。その一方、同じ全体像において、中央教育審議会で教育内容、国と地方の役割、費用負担のあり方などを検討し、この秋までに結論を得るとしております。
矛盾した話でありまして、本来国が財政責任を負うべき義務教育の負担金を、本質的な議論もないまま削減対象としながら、一方で中央教育審議会において幅広く検討するとしているわけであります。
また、削減による来年度の都への影響額についてのお尋ねでありますが、全体予定額四千二百五十億円のうち三百三億円と想定をいたしております。これにつきましては、特例交付金により同額の財源措置が行われる予定であります。
なお、一言付言いたしますと、お尋ねの法人事業税の分割基準の問題を初め、いわゆる東京問題であるとか、あるいは東京ひとり勝ちであるとか、東京を初めとする大都市圏への集積が日本の発展を支えている現実を無視して、東京と地方を殊さらに対立するかのようにとらえ、東京から税財源を取り上げれば問題が解決するかのような議論が一部で行われておりますが、私ども、こうした議論を決して許してはならないと考えております。
質問3
次に、法人事業税の分割基準について伺います。
法人事業税の分割基準が、平成元年度以来十六年ぶりに見直されます。分割基準は、今回を含め実に六回の見直しがされています。私も、都議会議員として前回の見直しを経験していますが、実に苦々しい思いをしたのを覚えております。これまでもおかしかったものが、今回またまたさらにおかしくなってしまったと強く感じます。
そこで、分割基準とは一体何のための制度なのか、また、本来あるべき法人事業税の分割基準とはどのようなものなのか、改めて所見を伺います。
今回の見直しでは、都は六百億円もの減収になるとのことです。国はもっともらしい理由を並べ立てていますが、私は、今回の見直しは、分割基準制度を悪用し、東京都から財源を奪うものにほかならないと考えます。
今回の見直しで最も不合理な点はどういうところなのでしょうか、所見を伺います。
答弁3 ▼主税局長
分割基準は、複数の都道府県で事業活動を行っている法人の事業税を関係都道府県間で配分するための基準でございます。法人が確定申告等を行う際には、この分割基準を用いて都道府県ごとの事業税を算定し、それぞれの都道府県に申告納付する仕組みとなっております。
また、分割基準は、応益税としての事業税の性格から、企業の都道府県ごとの事業活動規模を的確に反映したものとすべきとされており、都としましては、従業者数が最も簡便かつ適切な指標であると考えております。
次に、国による分割基準見直しについてでありますが、国は、アウトソーシングやIT化の進展等を踏まえ、サービス産業の分割基準について、これまでの従業者数に加え、事務所数を併用することにしております。
しかしながら、都の調査では、本社には支店の二十倍近い従業者数がいるにもかかわらず、いずれも一つの事業所として算定する改正案は、企業の事業活動規模を無視した不合理な措置であると考えております。
また、国は、税源移譲に伴い、都だけを見れば大幅な減収となる見込みであるにもかかわらず、区市町村を含めた東京の地域で約六百億円の増収になるため、地方団体間の財政力格差の是正を図るとしております。
都としては、これは、東京をねらい撃ちした財源調整措置にほかならないと考えております。
質問4
続きまして、都財政の今後の懸念材料について幾つか伺います。
東京都はこれまでも、地方交付税の不交付等を理由とした不合理な財源調整を受けてきました。平成十七年度予算ベースでは、百八十億円もの影響になります。都は、こうした不合理な措置の是正を国に対して何度も強く働きかけてきましたが、国はその是正を実現するどころか、先ほどから申し上げているように、さらに不合理な財政負担を押しつけてきました。
国の役人の発言には、東京問題というのがある、税源移譲すれば東京のひとり勝ちになると、東京バッシングをあおっているものがあります。本来あるべき地方分権という視点が欠如した改革や、不合理な地方税財政制度の見直しが繰り返し繰り返し行われる根底には、東京都は富裕団体であるという誤解があります。あるいは、わざと誤解しているのではないかと思います。
東京は、人口、経済、産業、情報、消費活動が集積する、我が国を代表する大都市圏の中心地であります。あらゆるものが身近にあり、東京に住んでいる一千二百万人以上の都民は、さぞかし豊かな生活を送っていると考えられているのではないでしょうか。
石原知事がいっていた、都道府県別豊かさランキングでは東京都は二十九位であり、平均以下の順位であります。住宅平均面積や混雑時旅行速度など、全国最下位のものもあります。都民が豊かさを実感できるよう、阻害要因を取り除くのが都の責務であります。そのためには、都は、他の地域にはない財政需要にこたえなければなりません。国が都の実態を考慮せず全国一律の基準で算定している地方交付税の不交付団体であるとしても、東京都は決して富裕団体ではございません。
このことについて、都は、より積極的に、より詳しく説明していく責任があります。例えば、財政当局は、戦後六十年、東京オリンピックから四十年が経過した社会資本ストックの更新に膨大な経費がかかっていくという懸念を訴えています。規模にもよりますが、一つの橋をかけかえるのに約三十億円が必要との試算もあります。今後の更新経費が具体的にどのような状況にあるのか、伺います。
答弁4 ▼財務局長
社会資本ストックの更新経費についてのご質問にお答えいたします。
東京の既存の社会資本は、急激な都市化に対応するため、昭和三十年代後半から四十年代の高度成長期に整備されたものが多くなっております。例えば、都が管理する橋梁は、現在約半数が整備後四十年以上を経過しておりまして、また、都営住宅二十六万戸の約半数についても、昭和四十年代までに建設されたものとなっております。加えて、都庁舎なども、機能の更新などの大規模な修繕の時期をこれから迎えることになるわけでございます。
こうしたことから、今後、既存ストックの老朽化に対する維持管理コストが増加するとともに、多額の更新経費が必要となると見込まれており、このことが都財政にとって大きな負担要因となることが予測されるところでございます。
質問5
都はこれまでも、厳しい財政運営を強いられる中、限られた財源を重点的、効率的に配分し、都民の負託にこたえてきました。平成十七年度予算においても、都市機能の拡充や福祉・医療の充実など、都政が直面する緊急課題に積極的に取り組んでいます。健全な財政運営と都民施策の充実は車の両輪、まさに知事と都議会自民党とが、ともにこれまで追求してきたものであります。
そして、平成十年度以来七年ぶりに、臨時的な財源対策を行うことなく予算を編成し、財政再建と施策の充実との両立という非常に難しい問題に対し、これまでの血のにじむような努力を成果で示しております。
また、東京都は、財政再建と同時に、将来を見据えて、財政の体力回復にも取り組んでいます。機を逸せず、しっかりとした中期的展望に立った財政運営は、その場しのぎの財政運営を繰り返す国とは異なり、非常に評価できるものです。
しかし、都が着実に努力をし続けても、国におけるこれまでの議論や、他の自治体の東京への無理解ぶりを見れば、先ほど申し上げたような国の一方的な負担の押しつけや、都をねらい撃ちにした財源調整などは今後も続くでありましょう。
国に対して、するべき主張をきちんとしながら、さらに歯を食いしばって、国に比べはるかに健全な財政運営を継続していかなければなりませんが、最後に、財政構造改革に取り組む知事の決意を伺い、私の質問を終わります。
答弁5 ▼知事
財政構造改革に取り組む決意についてでございますが、知事に就任した当時、都財政はまさに危機的状況にありましたが、組合職員の協力も得て、財政再建に懸命に取り組んできた結果、放漫財政を続ける国とはいささか異なり、着実に成果も上げてきたと思います。
例えば一般歳出の伸びで見ますと、十四年度以降四年連続のマイナスとしている中で、昭和六十三年度を一〇〇とした指数では、国の一四三と対比して都は九八と、十七年前の水準まで抑制してきております。
しかし、今後は、税収を左右する景気の動向が不透明なことに加え、三位一体改革などの動きで、都財政を圧迫する懸念材料が山積しております。
先ほどご指摘にもありましたが、担当の局長がお答えしますけど、そもそも全く根拠がなしに決められた、二対一という本社と支社の法人事業税の分割基準なるものを、今度は、IT化の時代だから、本社の業務が要するに軽くなったという全く根拠のない、わけのわからない文明論で、またその基準を変えて、東京から収奪する。
これは、本当に無念ながら、抵抗のしようがないですね。一方的に決められて、反論の機会もないままに国が物を決める。私はやっぱり、そういう運営そのものを、私たちは全国知事会で総理を相手に議論すべきときに来ていると思うんですが、総理は、なるたけ自分の出番をつくるなということのようでありまして、これでは議論が議論にならないうらみがございます。
依然として、これを一つの参考にして申しますけれども、国は、東京特有の大都市需要というものを一向に理解せず、相変わらず一方的な負担の押しつけや理不尽な財源調整を繰り返してくるでありましょう。こうしたことから、国に対しては、やはり対峙すべきときは対峙して、引き続き気を引き締めて、東京の将来を見据えた財政構造改革に全力で取り組んでいく決意でございます。
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