平成17年第1回定例会 一般質問

多摩の魅力生かした将来展望を
震災時の水道の信頼性確保せよ

串田 克巳(自民党)
■多摩振興策
 
質問1
 去る一月、都は、多摩リーディングプロジェクトを策定しましたが、多摩振興については、長い間、三多摩格差の解消を目指し、振興策が展開されてきました。
 区部のベッドタウンとしての役割を担った多摩地域は、急速な人口増加に比べて都市基盤等の整備が追いつかず、区部との格差問題が提起され、昭和五十年に、義務教育施設、道路、下水道など、三多摩格差八課題を設定しました。以降、多摩都民が区部と同等の生活上の便益が享受できるよう、都と市町村が協力して格差是正に取り組んできた結果、この八課題については、道路の平均幅員にはまだ差があるものの、随分と改善されてきています。
 しかし、そもそも区部との格差を解消していくこと自体は必要なことですが、格差のみを追っていくのでは、多摩の将来を展望することは難しいものがあります。私が住む八王子市は、先端技術産業が集積する中、市を挙げてベンチャー企業への支援に取り組んでいます。他方、八王子市の周辺部は山に囲まれ、自然豊かな環境を有し、仕事も住まいもという都民には喜ばれる都市であります。
 こうした産業集積などの固有資源を生かした都市づくりを進めていくことこそが大切であると考えます。多摩で生活する四百万人都民がいつまでも多摩に住み続けたいと思うよう、夢があふれる多摩の施策を、都は広域的自治体の立場から、市町村は基礎的自治体の立場から展開していく必要があります。
 今後は、格差是正のみにとらわれることなく、多摩の固有資源を生かして魅力ある都市づくりを推進すべきと考えますが、知事の所見をお伺いします。
 
答弁1
 ▼知事
 多摩振興についてでありますが、東京の三分の一の人口を擁する多摩地域は、最先端技術が集積し、製造品の出荷額では区部を上回るとともに、非常に豊かな自然環境に恵まれておりまして、都心へのアクセスのよさも加わってまいりまして、首都圏を牽引する大きな可能性を秘めた地域だと思っております。
 区部との格差是正論は前からありましたが、もうそれを既に脱却して、多摩のポテンシャルを十分に開花させていくために、多摩リーディングプロジェクトを策定いたしました。多摩発展の大きな引き金ともなる横田基地の軍民共用化に積極的に取り組むとともに、先端技術に豊かな自然を最大限活用した、首都圏の中核をなす多摩の実現に力を尽くしていきたいと思っております。
 ついでにこれはお願いですけれども、私、環境庁におりますときに、たしか高尾山を起点とした自然遊歩東海道というのを奈良までつくったんですけれども、余り使われないんです。これは、要するに尾根伝いに行ってなかなかの道なんですけれども、日が暮れて宿泊するところがないものだから、一々山からおりなければならない。あれはやっぱり二つか三つ目の宿場と神奈川県のどこかと提携して、簡易な宿泊所などをつくって、二、三日の行程で山を楽しむようなことをしますと、私は、八王子は有力な観光の出発点になると思いますので、ひとつぜひご一考いただきたいと思います。
 

 
質問2
 多摩在住の都民が高速道路を利用して都内に行く場合、中央自動車道と首都高速道路の料金をそれぞれ払っております。
 この件に関し、私の地元八王子市議会では、昨年六月に、中央道の料金撤廃に関する意見書を国に提出し、本年二月には、中央自動車道高井戸─八王子間の料金撤廃を求める八王子市議会の会を設立したところであり、民営化のタイミングをとらえ、活発に活動をしております。また、多摩の多くの議会においても、中央道の料金問題に関し、同様の意見書が次々と採決されております。この件は多摩都民の悲願であり、我が党も過去幾度となく要請をしております。
 そこで、中央道の無料化に至る道筋の一つとして、料金体系の見直しを国へ働きかけていく必要があると考えますが、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼都市整備局長
 中央道の高井戸から八王子間の料金体系の見直しについてでございますが、中央道の料金体系は、利用距離に応じた料金徴収を原則としておりますが、高井戸から八王子間につきましては、料金所の渋滞を避けるため、均一料金制度となっております。
 このような中、民営化に向けたコスト削減等の成果を幅広く利用者に還元するものとして、ETCを活用した割引制度を導入し、本年一月には、最大五割引きするなど料金体系の見直しが行われております。
 都といたしましては、今後とも、高速道路の料金体系について、利用者等の視点に立った適切な見直しが行われるよう、引き続き国に働きかけてまいります。
 

 
質問3
 一方、多摩地域は、先端技術産業等の集積、利用可能な大規模空間、恵まれた自然、豊かな人材など、都心部と異なる特色を持っています。多摩地域の持つこうしたさまざまな特色を生かしながら、首都圏の中核をなす多摩を実現していくためには、他県との連携も含めた、広域的な都市間連携を強化していくことが必要です。
 首都圏の広域的な道路である圏央道は、現在、埼玉県側より日の出インターまで開通しておりますが、今月下旬にはあきる野インターまで開通する予定であり、さらに十七年度中には中央道とつながると聞いております。このように圏央道の整備が進むことで、多摩を中心とした首都圏の人と物の交流が一層活発になると見込まれることから、これを支える道路を充実していくことが不可欠ではないかと考えます。
 そこで、多摩地域の道路ネットワークの現状に対する都の認識についてお伺いいたします。
 都では、都市計画道路の整備を計画的に進めるため、多摩地域における都市計画道路の整備方針を策定中であり、その中で優先整備路線の選定を行っていくと聞いておりますが、この内容についてお伺いします。
 
答弁3
 ▼都市整備局長
 多摩の道路ネットワークの現状認識についてでございますが、多摩地域は、圏央道の整備が着実に進展している一方で、都市計画道路の整備率がいまだ五割程度であることなどから、道路ネットワークの形成が不十分であると認識いたしております。このため交通渋滞が慢性化し、移動に多大な時間と労力を要するなど、市民生活や経済活動にも多大な支障が生じております。
 こうした問題を解決し、多摩を魅力と活力あふれる圏域とするため、調布保谷線を初めとする南北道路などの整備を促進し、道路ネットワークの早期形成に努めてまいります。
 最後に、多摩地域での優先整備路線の選定についてでございますが、選定に際しましては、まず、道路の基本的な機能である交通の円滑化、防災性の向上、さらには地域環境の保全という視点を基本といたします。
 これに加え、横田基地の軍民共用化を視野に入れるとともに、多摩の地域特性を踏まえた視点についても重視してまいります。具体的には、埼玉や神奈川との連絡強化や、緑に彩られた沿道の街並み景観の創出などでございます。
 今後とも、関係市町と連携し、多摩地域の発展に資する道路整備を推進してまいります。
 

 
質問4
 八王子市は、四季の変化に富んだ高尾、陣馬の山並みや、清らかな源流を集めて流れる浅川などの自然に恵まれた、先人の築き上げてきた歴史、文化の色濃く残るまちであり、これらの市民共有の財産を生かした新たな時代のまちづくりを進めるため、八王子市では、「人とひと・人と自然が共生し、だれもが活き活き生きるまち」を基本理念とする八王子ゆめおりプランを策定しました。都としても、地域の取り組みに対して支援をお願いしたいと思います。
 特に、生まれ変わる高尾山をできるだけ多くの方に見ていただくことは、観光産業の振興につながるばかりではなく、市民の郷土を愛する気持ちを高める上でも重要と考えております。
 このように、多摩地域には多くの観光資源がありますが、都としてどのような観光振興施策を展開しようと考えているのか、所見をお伺いします。
 
答弁4
 ▼産業労働局長
 多摩地域には、季節ごとに豊かな自然の魅力や歴史的な見どころ、特色のある地場産業等、多彩な観光資源がございます。こうした中で、多摩の各市町村が観光プランを策定して、地域の特性を生かした観光資源の発掘、情報発信、観光客の受け入れ体制の整備を図ることは重要でございます。
 現在都は、市町村の観光マップの作成や観光案内標識の整備などに対する助成のほか、ウェブサイト「東京の観光」によるPRなどにより、それぞれの地域の取り組みを積極的に支援しております。
 さらに、十七年度は、それらを組み合わせ、広域的な連携を図ることにより周遊性をより高め、観光地としての一層の魅力向上に努めてまいります。
 

 
質問5
 高尾山のふもとにあった旧東京都高尾自然科学博物館の跡地が、平成十七年の四月に八王子市に移管されます。移管に当たっては、旧博物館の博物館機能の継承が盛り込まれ、旧博物館で収蔵していた資料を活用し、自然への理解を進めることは、自然との共生を推進していく上でも意義のあることで、また、エコツーリズムの理念にもつながる新たな観光の拠点をつくる意味でも重要と考えます。
 自然に触れ、理解することは、八王子市民のみならず、広く都民にとっても重要であり、自然学習などの視点から、都としても積極的に協力すべきと考えますが、教育長の見解を伺います。
 
答弁5
 ▼教育長
 旧東京都高尾自然科学博物館の移管後の協力についてでございますが、旧東京都高尾自然科学博物館の移管に当たりましては、博物館機能を継承していくことで八王子市と合意しておりまして、そのため、収蔵していた資料類を一括しまして八王子市に譲渡し、資料の有効活用を図ることとしております。
 都教育委員会としましては、今後、八王子市が高尾の豊かな自然を背景にした、博物館資料等の利活用計画を策定するに当たりまして、技術的な支援や助言等を積極的に行ってまいります。
 

 
 旧博物館の跡地は、高尾山のふもとに立地し、今後の八王子市の施策を推進する上で絶好の拠点となり得る場所でありますが、車での利用に際しては、薬王院の参道からしか入れず、今後の利用計画策定に当たり、跡地と甲州街道を結ぶ専用の進入路が必要であります。
 しかし、現地に高尾新橋という壊れかけた使用不能となった橋が残っていて、八王子市の利用計画策定の阻害要因になっていると聞いております。この橋については、設置当初から権限が明確でなく、河川の占用許可も得られてないということですが、責任の所在が明確でないからと、だれも補修等をせず老朽化し、道路管理者から危険であるとの指摘を受け、施設側の出入り口を封鎖したと聞いています。
 実態として、薬王院の参拝客や、この橋を都も利用していたことは明らかであり、既に使用中止の状態になった以上、都としても現状を適切に把握し、住民の安全確保ができるよう細心の注意を払っていただきたい。また、今後、市が利用計画を策定するに当たり支障のないように、適切な配慮をしていただくことを強く要望しておきます。
 
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■多摩地域の浄化槽整備
 
質問1
 多摩川の河川など公共用水域では、家庭からの生活排水が一部地域で未処理のまま流入しているため、浅川など一部の河川において、BODが環境基準値を依然として上回っています。
 この状況を改善していくための下水道の整備には、完成まで時間がかかり、また、整備計画の対象外の地域もあり、生活排水対策としては、下水道の整備はもちろん、合併処理浄化槽の整備が重要と考えますが、多摩地域における合併処理浄化槽の整備の現状についてお伺いいたします。
 
答弁1
 ▼環境局長
 合併処理浄化槽整備の現状についてでございますが、この浄化槽は、し尿と生活雑排水とをあわせて効果的に処理するものでございまして、河川など公共用水域の水質改善に有効な手段でございます。
 平成十五年度末現在、多摩地域におきましては約一万三千基が整備されており、下水道の整備状況を勘案しつつ、さらにその整備促進を図ることが必要と考えております。
 

 
質問2
 これまで多摩地域の市町村は、住民による合併処理浄化槽の設置を支援し、整備を進めてきました。今後、合併処理浄化槽の整備を効率的に進めていくためには、住民が設置する手法と市町村が設置する手法を適切に活用していくことが必要であり、都もこれを支援すべきと考えるが、見解をお伺いいたします。
 
答弁2
 ▼環境局長
 合併処理浄化槽の今後の整備に当たりましては、住民が設置する方法と市町村みずからが設置する方法とを市町村が実情に応じて選択し、効率的に整備していくことが重要でございます。
 今後とも、市町村の合併処理浄化槽の整備促進に向けて、必要な支援を行ってまいります。
 
■都立三宅高校
 
質問1
 次に、去る二月一日に避難解除を受けて、四年五カ月の避難生活を経て今回帰島された三宅村の皆さんは、これからの島における生活再建に向けて、これまで以上にご苦労されて、心理的、経済的な負担も増大することが予想され、また、二月の帰島を見送り、今後の帰島を目指す島民の方々としても、その準備に多くの負担を強いられるものと推測されます。
 こうした中、東京都教育委員会は、都立三宅高校の四月からの島の校舎での授業再開にあわせて、帰島できない生徒のための分教場を設置することを決め、今後三宅島帰島を円滑に進めていくためには、極めて意味のあることと考えますが、具体的な内容をお伺いいたします。
 村民の皆さんの心理的、経済的負担の軽減を図るため、引き続き平成十七年度については授業料の減免措置を実施すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 
答弁1
 ▼教育長
 都立三宅高校の分教場の具体的な内容についてでございますが、三宅島では今なお火山ガスが放出される状況が続いておりまして、生徒の中には、健康上の理由や家族の健康上の不安などにより、直ちに帰島することが困難な生徒もおります。
 このため、即時帰島が困難な都立三宅高校の生徒の継続的な就学機会を確保するため、これらの生徒が卒業します平成十九年三月三十一日までの二年間、旧都立秋川高校の校舎等を活用して、分教場を設置いたすものでございます。
 また、帰島が困難であり、保護者との同居が難しい状況が生じた場合には、その生徒の生活のために、旧都立秋川高校寄宿舎の一部を宿舎として提供してまいります。
 最後に、三宅高校生徒にかかわる授業料等の減免措置の実施についてでございますが、現在の授業料、入学料等の減免措置につきましては、三宅島帰島の準備が具体化する中で、被災者の心理的、経済的負担の軽減を図ることを目的としまして、生活保護世帯等の経済的理由に基づく通常の減免措置を拡充する形で、平成十六年四月から実施したものでございます。
 お話しのとおり、本格帰島期から生活再建期に当たる平成十七年度につきましては、なお引き続く心理的、経済的負担を軽減する必要がございますことから、減免措置を継続し、村民の皆さんが円滑に帰島し、少しでも早く安定した生活ができるよう支援をしてまいります。
 
■多摩地区の水道事業
 
 先ごろ、国の中央防災会議は、首都直下地震が発生した場合の被害想定を発表いたしました。幾つかのケースが示されていますが、ある程度切迫性が高いとされている東京港北部を震源とするマグニチュード七・三、震度六強の地震が発生した場合、発生一日目の断水人口が総人口の三分の一にも及ぶという、非常にショッキングな内容となっております。
 水道局では、貯水池の堤体強化、送配水管の耐震対策化、ネットワーク化などに取り組んでいることは高く評価しております。
 

 
質問1
 しかしながら、私の地元である八王子市も含め、多摩地区の水道は、その成り立ちにおいて区部水道とは異なる状況にあり、多摩地区では、広域的な施設の連絡が不十分な状況にあります。震災時の水道施設の信頼性を確保するため、バックアップ機能を強化できる管路のネットワーク化の取り組みについてお伺いいたします。
 
答弁1
 ▼水道局長
 水道局では、平成十五年六月に多摩地区水道経営改善基本計画を策定し、広域的な施設整備を推進するなど、バックアップ機能の強化を図っております。これまで南北方向へ枝状に、主要な幹線である送水管の整備を進めてまいりました。
 現在、こうした送水管をネットワーク化するため、多摩南部地域におきまして、平成二十二年度末の完成を目途に、多摩市の聖ヶ丘と昭島市の拝島を東西に結ぶ多摩丘陵幹線を整備しております。本年夏には、このうち、第一次整備区間である聖ヶ丘給水所と八王子市の鑓水小山給水所の間の十三キロメートルが通水できる見通しでございます。
 

 
質問2
 昨年十月の新潟中越地震では、山間部における被害が注目されました。多摩地域も山間部を抱えており、そうした地域への対策としてどのように取り組みを進めているのか、あわせてお伺いいたします。
 
答弁2
 ▼水道局長
 山間部における水道施設の震災対策についてでございます。
 ご指摘のとおり、新潟県中越地震の例を見ましても、山間部での震災時における水の供給は、水道事業者にとって極めて重要な課題の一つであると認識をしております。
 しかしながら、こうした地域では、管路を布設するための道路が限られていることなどから、バックアップ機能を有する管路をネットワーク化することは困難な状況となっております。
 このため、震災などの際、給水の拠点となります配水池の整備を進めるとともに、停電時にも給水を確保できるよう、浄水所等に自家発電設備を順次整備しております。こうした取り組みを着実に推進しまして、山間部における震災時の給水の確保に努めてまいります。
 

 
質問3
 多摩地域の水道は、市町から都への経営統合後、都から市町の水道部局に事務委託するという特異な運営方法を採用してきましたが、各市町から都へ順次事務の移行を行っており、その際、施設の運転、維持管理など業務の引き継ぎに万全を期すことは当然であります。
 そこで、今後の多摩地区の水道の安定給水確保に向けた水道局の取り組みについてお伺いし、私の質問を終わります。
 
答弁3
 ▼水道局長
 災害時を含め、多摩地区の安定給水を確保していくことは、水道事業の基本的な使命であると認識をしております。
 しかし、多摩地区では、これまで市町ごとの施設整備が行われてきましたことから、市町の区域を越えた配水管網が必ずしも十分に整備されていないなど、災害時や施設更新時における給水の安定性に課題を残しております。
 このため、平成十七年度中に主要な配水管の整備計画を策定することとし、鋭意検討を進めるとともに、広域的な施設運用の実施や危機管理の一層の充実を図り、事故時等への備えも強化してまいります。このような施策を総合的に推進していくことにより、多摩地区の給水安定性の一層の向上に全力を尽くしてまいります。
 

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