平成17年第1回定例会 一般質問

渋谷の更なる治安対策強化を
住民の安らぎを守るのは行政だ

大津 浩子(民主党)
■防犯・防災モデル都市を目指して
 
質問1
 まず初めに、防犯・防災モデル都市東京を目指しまして、治安対策、防災対策について質問をいたします。
 本会議初日に、警視総監から、おととしを治安回復元年と位置づけ、本年末までの三年間で治安水準を十年前に戻すとする治安状況の報告がありました。強盗、侵入窃盗、ひったくり、性犯罪の四つの重点犯罪は、一年で一八%減少し、検挙率も一一ポイントプラスの六四%という上昇は、評価されるべき成果だと思います。
 さて、渋谷区では、センター街を中心としまして、少年の犯罪、非行並びに外国人らによる薬物犯罪などが多発しており、昨年も一般質問で渋谷地区の治安状況の悪化を取り上げました。その後、昨年三月末には、渋谷センター街を中心とした街頭防犯カメラが運用され、映った窃盗犯が即座に逮捕されました。本年は集大成の年として、さらに対策を強化されることを期待しています。
 渋谷地区における少年犯罪、少年非行並びに外国人らによる薬物犯罪等の実態と今後の対策について、一年の成果を含め、昨年もご答弁をいただきました警視総監からお願いをいたします。
 取り組みに敬意を表するとともに、防犯モデル都市の実現に向け、今後も警視庁の総力を結集した治安対策の推進を要請いたしておきます。
 
答弁1
 ▼警視総監
 渋谷における一年間の治安対策の成果と今後の方策についてでありますが、渋谷では、かねてから、センター街を中心に、青少年を取り巻く環境が悪化し、少年少女がクラブと称する深夜ホールやカラオケボックスなどに出入りする、あるいは深夜までたむろし、徘回するといった状況に加えまして、不良イラン人等による薬物の密売が行われていたところであります。
 このために警視庁では、昨年の三月からセンター街等で街頭防犯カメラの運用を開始するとともに、風営法や、昨年改正されました青少年健全育成条例に基づきまして、クラブやカラオケボックス、あるいは漫画喫茶等への立ち入りを頻繁に行いました。また、同時に、少年たちに対する補導活動や不良イラン人等の取り締まりを集中的に推進してまいりました。
 その結果、街頭防犯カメラ設置後の去年の四月から十二月末までの九カ月間、路上犯罪は、おととしの同じ期間に比べまして二割減少いたしましたほか、昨年一年間で非行少年等千四百人を検挙、補導し、また、覚せい剤、大麻事犯等で不良イラン人等二百四十人を検挙いたしました。
 こうした取り組みによりまして、現在では、クラブ等へ出入りいたしましたり、あるいは深夜徘回したりなどする少年は激減しておりますほか、不良イラン人等による薬物密売につきましても、以前のような目立ったものは少なくなっているところでありますが、少年が深夜までたむろするといった状況は、依然散見されるところであります。また、薬物の密売も、携帯電話を利用するなど手口が大変巧妙化しておりますので、引き続き、渋谷における治安対策は強力に推進をしてまいります。
 

 
質問2
 次に、都市の外国人犯罪や脱法ドラッグ犯罪への対策としまして、密輸、密入国を水際で阻止すること、まずは入り口で阻止する、もとから断つことが重要です。港湾保安の水際対策の強化について伺います。
 今日の東京港は、世界じゅうから多数の船舶が寄港し、首都圏四千万人の消費生活と産業活動に欠かせない生命線の役割を果たす一方、人々の生活を脅かす密輸、密入国が発生しております。昨年七月、東京港では、東京税関の大型エックス線によるコンテナ検査で、大麻樹脂約六十五キログラム、末端価格約五億円相当を押収したことは記憶に新しいところです。
 港湾の保安対策は、昨年七月、改正SOLAS条約の発効により、新たな転換点を迎えています。立ち入り制限区域にフェンスゲートが新たに設置され、出入管理の強化が図られています。今後も水際の危機管理に取り組んでいただきたく、保安対策の取り組みについて所見を伺います。
 
答弁2
 ▼港湾局長
 港湾における保安対策の取り組み強化についてでございますが、平成十五年二月には大井コンテナふ頭で密入国者十一人が検挙される事件もありまして、都は、昨年四月、港湾管理条例を改正し、都民生活の安全を脅かすおそれのある船舶の入港を規制することといたしました。
 また、昨年七月の改正SOLAS条約発効に対応し、ふ頭にフェンスや監視カメラを整備してきておりますが、四月には専任監視員を配置して、二十四時間の監視体制を構築いたします。
 平成十五年の事件以降、東京港での密入国事案は生じておりませんが、本年一月には四日市港と横浜港で密入国事件が連続して発生しており、東京港といたしましても、住民生活の安全を守るため、水際の保安対策を一層強化してまいります。
 

 
質問3
 次に、学校の防犯対策についてもお伺いをいたします。
 せんだって、寝屋川市立中央小学校の事件が発生しました。平成九年の神戸連続児童殺傷事件以来、ほとぼりが冷めたころに繰り返して起きていますが、もう二度と発生することのないように、学校の防犯対策を向上させたいものです。東京都教育委員会としては、どのように対応し、今後取り組んでいかれるか。また、都立盲・ろう・養護学校についてはどのような防犯対策を施していくのか、所見をお伺いいたします。
 
答弁3
 ▼教育長
 学校の防犯対策についてのお尋ねでございますが、学校は本来、児童生徒が安心して学ぶ場所でございまして、生命が脅かされるようなことは絶対にあってはならないことから、学校における防犯対策に万全を期すことは極めて重要なことでございます。
 今回の寝屋川市立中央小学校の事件を受けまして、都教育委員会としましては、区市教育委員会の生活指導担当者連絡会を緊急に開催しまして、改めて各学校の安全管理の総点検の徹底を図りますとともに、平成十三年度にすべての公立小中学校及び都立盲・ろう・養護学校等に設置をしました緊急通報体制、学校一一○番を活用した防犯訓練の実施などに取り組むよう指導してまいりました。
 今後とも、学校の安全管理についてのチェックリストを掲載したリーフレットを新たに作成しますとともに、平成十七年度からは、すべての小中学校及び盲・ろう・養護学校を対象に防犯教室指導者講習会を実施するなど、学校の防犯対策の一層の向上に取り組んでまいります。
 

 
質問4
 さて、昨年は、集中豪雨、台風、地震、津波、大規模災害が続発をいたしました。もし、日本の人口の四分の一が暮らす首都東京で直下地震や大規模災害が起きたら、一体どうなるのでしょうか。
 二月二十五日、政府の中央防災会議・首都直下地震対策専門調査会が、マグニチュード七・三の首都直下地震による被害想定の最終報告を取りまとめました。予想経済損失は百十二兆円。これは、阪神・淡路大震災の十倍、国家予算の一・四倍もの被害です。しかも、大震災の発生確率は、十年以内は三〇%、三十年以内だと七〇%、ほとんどの確率で来るということで発表されています。中越地震における余震と雨のように、要素が上乗せとなれば、被害も予想以上になります。
 首都には、まだまだ密集木造住宅地、江東デルタ地帯や臨海部の軟弱地盤、山間部の土砂崩れなど、危険地域が存在します。地震の際、密集市街地では、幅五・五メートル未満の細い道路に倒壊家屋や瓦れきが倒れ込み、救急車や消防車が通れなくなる細街路閉塞が発生すると指摘されています。
 そこで、一人でも多くの都民の命を救っていただけるには、防災体制の強化と、建物の耐震化や不燃化等の減災対策が最も効果的と考えますが、密集市街地における減災対策、防災対策を伺います。
 また、細街路閉塞になると、せっかくの小型ポンプ車や消防バイクなどの装備も入れなくなる可能性もあり、都民は不安でいっぱいであります。首都東京における震災時の消防活動について、改めてお伺いをいたします。
 災害は、いつ起こるとも限りません。万が一の場合には、安全な避難、火災を出さないなど、地域住民の取り組みが重要と考え、地域の防災力向上について伺います。
 
答弁4
 ▼都市整備局長
 災害に強いまちにしていくための対策についてでございますが、震災時の被害を軽減し、都民の生命、財産を守るためには、日常から防災都市づくりに取り組むことが重要であります。
 このため、都は、震災時の被害拡大を防ぐため、三つの基本方針に基づいた取り組みを行っております。具体的には、第一に、災害に強い都市構造を確保するための延焼遮断帯の形成や避難場所の確保、第二に、地域の防災性の向上を図るための建物の不燃化や公共空間の確保、第三に、個々の建築物の耐震性、耐火性の向上を図ることでございます。
 今後とも、関係区と連携を図りながら、防災都市づくりの推進計画に定めた十一の重点整備地域で集中的に事業を実施し、災害に強いまちづくりに向けて積極的に取り組んでまいります。
 
 ▼消防総監
 震災時の消防活動についてでありますが、東京消防庁では、都内に震度五強以上の地震が発生した場合、全消防職員及び全消防団員を招集いたしまして、消防活動体制を強化いたしますとともに、道路警戒用重機などを有するハイパーレスキュー隊を初め、ヘリコプター、消防艇、ポンプ車、救助車、救急車、可搬ポンプに加えまして、非常用ポンプ車や非常用救急車などを投入し、総力を挙げて消火、救助、救急活動を実施いたします。
 また、必要により緊急消防援助隊を要請いたしまして、全国の消防機関からの応援を受けることとしております。
 
 ▼総務局長
 地域防災力の向上を図るための対策についての質問にお答え申し上げます。
 震災時には、まず、みずからの命はみずからが守るという自助と、地域住民が相互に連携し、自分たちのまちは自分たちで守る共助の取り組みが不可欠でございます。
 都は、これまで、区市町村と連携し、防災知識の普及啓発や防災訓練の実施を通じまして、地域住民の防災行動力の向上を図ってまいりました。今後も、区市町村が行います防災市民組織の育成を引き続き支援いたしますとともに、住民、企業、ボランティアなどとの連携協力を促進し、地域防災力の向上に努めてまいります。
 
■路上工事に伴う渋滞対策
 
質問1
 さて、季節柄、年度末になりますと、工事渋滞でいらいらする季節でございますので、次に、路上工事に伴う渋滞対策についてお伺いをいたします。
 先ごろ国土交通省では、東京二十三区における路上工事の不人気投票を行い、その中間集計の発表を行いましたが、不満の内容として最も多く、全体の三九%を占めたのが、規制による渋滞という結果が出ています。このことからも、さらに工夫を行って、工事量を少なくする取り組みが必要といえます。
 これまでも、同じ道路や場所を何度も何度も掘り返しているのではないか、むだな公共工事ではないかなどの指摘がなされておりますが、東京都については、厳しい財政状況のもと、地下鉄や都市高速道路の整備を初め、水道、下水道、電気、ガス、通信など、都民生活を支えるインフラ整備を首都東京の再生にとって極めて重要な整備工事、維持管理工事と位置づけ、むだな工事は行われていないとは理解しております。しかし、渋滞による経済損失やいらいらなどの都民感情を考えますと、路上工事に伴う渋滞対策はさらに推進していかなければなりません。
 そこで、初めに、東京都がこれまでに取り組んできた工事渋滞対策とその成果についてお伺いをいたします。
 
答弁1
 ▼建設局長
 路上工事に伴う渋滞対策の取り組みについてでありますが、都は、工事渋滞を緩和し、円滑な交通を確保するため、道路管理者、交通管理者及び占用企業者で構成する東京都道路工事調整協議会で、工事件数の縮減と平準化に取り組んでおります。
 協議会では、これまで、同一箇所で競合する工事の期間や施工方法の調整を図るとともに、年末や年度末工事の抑制を行ってまいりました。その結果、路上工事の件数は、平成五年と比較して半減しており、月別の件数を見ましても、年間を通じて平準化を達成しております。
 

 
質問2
 路上工事は、ライフラインだけでも電気、ガス、水道、下水道、通信線と多岐にわたっています。これらの工事が個々に行われるということになると、調整をしたとしても、工事期間の短縮はなかなか難しいのではないでしょうか。
 ライフラインの新設や、維持管理のための路上工事や、掘り返しをなくすための抜本的対策としては、共同溝などの大規模工事がさらに交通渋滞の要因となるため、現実的には実施しにくいことは理解できますが、都道における共同溝の整備は必ずしも進んでいないのが実情です。
 さきの公営企業委員会で、我が会派の富田政調会長が、水道局の配水管施設整備事業に伴う配水本管新設工事の工事契約案件で質疑を行いましたが、路上工事の調整会議、いわゆる道路管理者が主宰する道路調整会議の結果、水道局工事に関して他企業との共同施工について、わずかながら実施例があるとの答弁でした。このように場所や時期などが一致するところは少ないのが現状で、単独施工となるようです。
 そこで、お伺いいたします。今後、路上工事とこれに伴う交通渋滞について、都、国、警視庁、占用企業者など関係機関が連携して協議をすることが不可欠であると考えます。
ついては、路上工事の調整会議などの場を活用し、渋滞対策のさらなる充実を検討すべきと考えますが、ご見解をお伺いいたします。
 
答弁2
 ▼建設局長
 渋滞対策のさらなる充実についてでありますが、都は、平成十五年度から取り組んでいる路上工事縮減五カ年計画で、工事時間の二割削減を進めております。
 渋滞対策の一層の充実に向けて、協議会などの場を活用し、新たな技術の開発や共同施工などの採用をこれまで以上に関係者に働きかけてまいります。
 また、都民の理解と協力を得るため、道路工事情報のホームページや工事看板の充実により、工事の必要性や交通規制内容等の情報をよりきめ細かく提供してまいります。
 今後とも路上工事に伴う交通規制時間の削減に努め、交通に与える影響を最小限とするよう関係機関と連携して取り組んでまいります。
 

 
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■高層建築物紛争とまちづくり
 
質問1
 近年、まちづくりを左右するのが増加する高層建築物。特にマンション等の高層建築により、閑静な住宅街の住民との紛争が都内全域で次々と起きています。東京都でできることは、建築紛争予防条例に基づく紛争の調整ですが、毎年申請件数は二十件を超え、うち半数は不調に終わるという状況が続いています。
 トラブルの一連の背景には、建築規制の緩和がありました。この数年、経済を活性化し、都市を活気あるものとするため、都市計画法、建築基準法を初め建築規制の緩和が進められた結果、事業者は、経済性を優先し、容積率を目いっぱいに活用した大規模建設をし、地域社会と摩擦を生むことになりました。規制緩和の最たる法律である都市再生特別措置法に指定されると、既存の規制の枠がきかなくなり、ますます高層化し、周辺とのあつれきも大きくなることが予想をされます。
 都市再生によるまちの活性化やイメージアップ効果が期待される一方で、規制緩和を起因とした建築紛争が数多く発生している状況では、住民同士の融和を阻害し、地域の活力を失わせるほか、一部強引な事業者は企業良識が問われ、企業評価の低下を引き起こすなど、マイナス面も出てきています。五十年後、百年後によかったと思えるまちづくりを長期的に行い、そこに住み、働く方々の安らぎの場を守っていくことも、行政の大切な使命と考えております。
 そこで、お尋ねをいたします。都市再生により地域の活性化が期待される一方、規制緩和による大型建築物の事業者が地域社会との間でもめている状況が発生していることを踏まえ、今後の都市再生はどうあるべきか、都市再生のまたロマンを、石原知事のご見解をお願いいたします。
 
答弁1
 ▼知事
 今後の都市再生についてでありますが、都市再生が目指しているのは、交通インフラの整備や優良な民間プロジェクトの実施などによりまして、大都市東京の魅力と活力を高め、都民生活の質の向上を図ることであります。
 プロジェクトの過程において、ご指摘のような建築紛争が発生する場合も十分考えられる、これはとにかく、これほど狭い地域に密集して、かつ集積して、いろんな物事があるわけでありまして、この東京では避け得ないことだと思いますが、都市再生の意義も踏まえ、現場ごとの実情に応じた調整を重ねることが大切だと思います。
 都としては、今後とも、地域の活性化や魅力の向上につながるよう、都市再生を推進してまいります。
 

 
質問2
 高層建築物をめぐる近隣とのトラブルを未然に防止するためには、十分な話し合いによる解決と、都内の幾つかの自治体ではもう始めましたが、絶対高さ制限の導入や建築紛争予防条例の規定です。住民感情を無視した建設は、その土地にうらみを残し、決していいまちづくりにはなりません。太陽を奪っても、今のままでは何の処罰もされないのです。都内全域の多くの紛争を、もうほうっておくわけにはいかない状況まで来ております。
 渋谷区では、昨年四月に、中高層建築物等に係る紛争の予防と調整に関する条例を改正したほか、小学校のPTA連合会が中心となって、保育園、幼稚園、小学校、中学校に日影を落とす中高層建築物の制限を求める動きが出ております。学校や地域のひなたや生活居住環境を守るために、まずは公共施設である学校から影を落とすなと、PTA連合会が立ち上がったのです。東京都全体に広げていく流れは、見直しに一石を投じることができるかもしれません。
 こうした情勢を踏まえ、東京都におきましても、ぜひ地域の状況を踏まえ、規制策の活用など何らかの対策を講じるべきと考えますが、見解をお伺いいたします。
 
答弁2
 ▼都市整備局長
 学校等の周辺での中高層建築物の規制策についてでございますが、学校周辺などでの建築紛争を防止していくためには、建築紛争予防条例による当事者間の調整だけではなくて、教育面や安全面に配慮したまちづくりが重要でございます。
 こうしたまちづくりに当たりましては、区市町村が主体となって、地域住民の理解と協力を得ながら、建物の高さの限度を定める高度地区や地区計画などの都市計画制度を有効に活用していくことが考えられます。
 都は、よりよい地域づくりという観点から、今後も紛争の未然防止に努めるとともに、区市町村が主体となって進めるまちづくりに対して技術的支援を行ってまいります。

 
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