平成16年度公営企業会計決算特別委員会 総括質疑

大西由紀子(ネット)
■わかりやすい決算書
 
 ▼大西委員
 公営企業局に共通課題としてわかりすい決算報告という課題があります。地方公営企業の経理は、発生主義に基づく企業会計方式で、現金収入のみに着目するのではなく、すべての債権債務の発生及びあらゆる資産の増減を総合的、一覧的に把握する必要があるとされています。
 そこで、決算では、単に予算の執行実績を示すというよりも、事業年度の経営成績、事業年度における財政状況を示して経営状況を明らかにするものだと考えます。しかし、公営企業の決算報告は、一般都民にはわかりにくいものとなっております。議員にとってもわかりにくいものでもあります。
 昨年もこの問題について水道局に質問し、一層わかりやすい説明を行うよう努めるとの答弁をいただいております。この一年でどのような改善がなされたのか、各局へ伺いたいのですが、時間的にも制限がありますので、代表して水道局からお答えいただきたいと思います。
 
 ▼水道局長
 現行の決算書は、法令で定められた様式に従って作成しているもので、文章や数字が多いことから、都民の皆様にはわかりにくいというご意見もあることは承知しております。
 こうしたことから、「水道ニュース」やホームページなどで決算状況を公表する際には、データをグラフ化するなどの工夫をいたしまして、わかりやすい表現に努めているところでございます。
 また、本年三月には、水道事業ガイドラインに基づきまして、管路の耐震化率、職員一人当たり給水収益など、水道事業全般にわたる百三十七項目の業務指標につきまして四年間の実績を公表して、事業の状況を明らかにしてきたところでございます。
 今後とも、都民の皆様に対して、より一層わかりやすい説明を行うよう努めてまいります。
 

 
 ▼大西委員
 新しい試みとして、水道事業ガイドラインに基づく業務指標についての取り組み等も水道局ではあったわけですが、それは、各局それぞれこの取り組みがあるのではないかと期待しておきたいと思っております。
 さて、都市整備局所管では、北新宿地区、環状第二号線新橋・虎ノ門地区、そして大橋地区の三地区の都市再開発事業が公営企業会計として扱われています。昭和五十五年から二十五年間にわたり、亀戸・大島・小松川の都施行の市街地再開発事業は特別会計で処理されていましたが、長期にわたる開発のため、事業の進捗状況の把握や判断が難しく、行政の泣きどころというんでしょうか、担当の職員もかわりますし、また、それをチェックする議員もかわる中、だれも責任をとる者もなく、多額の負債が生じてしまう、そういう反省があったということから、平成十四年度から年度ごとにチェックできるようにと公営企業会計に移行されていますが、特別会計から公営企業会計になったメリット、どのような点があったのか伺いたいと思います。
 
 ▼都市整備局長
 特別会計から公営企業会計に移行いたしましたメリットは、第一に、貸借対照表などの作成によりまして、再開発事業が保有いたします資産や負債、また収入や支出などの財務内容が明らかとなり、収支がより一層明確化されたことでございます。
 さらに、これらの会計情報を事業に反映させることによりまして、採算性を一層重視した運営が可能となったことが挙げられます。
 

 
 ▼大西委員
 先日の決算の分科会で、私は、三地区のそれぞれの進捗状況と工事が予定どおり進んでいるのか、確認の意味で質問を行いました。新しい公営企業会計となった中でやったわけですけれども、なかなかわかりにくいなということを実感しました。
 三地区とも予定どおり順調と答弁をいただいたわけなんですね。事業会計決算説明書、そして決算概要を見ても、本当に答弁どおり順調なのかというようなことはなかなか把握しにくいということがあったんですが、そういう意味では、答弁の、すべて順調ですということを信じるしかないわけなんですけれども、それでは余りにもあなた任せになってしまいますし、決算委員会で審議する意義がありません。
 そこで、今後は、やはり全体の計画というものを達成するために一年ごとの具体的な目標を設定し、その達成度を評価すべきそういう仕組みというものが必要になってくるんじゃないかなと思っているんですが、その辺はいかがでしょうか。
 
 ▼都市整備局長
 都が再開発事業を施行いたします際には、当然のことながら、地区の全体事業計画を策定いたしまして、その事業計画に基づき毎年度の執行計画を定め、事業を推進しております。
 さらに、公営企業会計の導入によりまして、当該年度の経営成績を損益計算書で示し、当該年度までに各地区に投下された費用の状況を貸借対照表であらわすほか、決算書の事業報告におきましても、当該年度の事業の進捗状況を、用地の買収面積や建築工事の状況等で説明してございます。
 一方、再開発事業では、転出希望者の用地買収に対応するばかりでなく、再開発ビルへ入居を希望する権利者との調整を行いながら、道路、公園などの公共施設やあるいは建物を段階的、複合的、重層的に整備するものでございます。こうした事業の特性から、事業全体の進捗状況を端的にはあらわしにくい状況がございます。
 このため、経年にわたる事業の進捗度をあらわすものといたしまして、例えば生活再建に資する再開発ビルの用地の取得率、建物の出来高や入居状況、さらには公共施設としての道路の整備率といった指標を選択いたしまして、決算書の事業報告に記載することなどにより、都民の一層の理解と協力を得るよう努めてまいります。
 

 
 ▼大西委員
 事業報告に単年度の進捗度というのはわかるんですが、やはり大事なのは、全体目標があって、そしてどこまで来たというものを毎回毎回、一年間の毎年の決算の委員会そのものが認識していることが大事なので、今回経年の進捗度をあらわす適切な指標を記載するなど努力するという答弁がありましたので、ぜひお願いしたいと思っております。
 同じようなことが港湾局の臨海地域開発事業会計についてもいえるんじゃないかと思います。これもまたまた長期にわたる事業です。そして、当初の事業計画と現状にずれはないのか、そして仮に計画と現状にずれがあれば、おくれが生じているのであれば、この決算委員会の場でそのことをまともに認識し、フォローあるいは計画の見直しの検討が必要となってきます。そのためにも、全体の計画を達成するために、一年ごとの具体的な目標を設定し、達成度を確認することが必要と思っているんですが、見解を伺います。
 
 ▼港湾局長
 臨海副都心は、平成九年に策定いたしました臨海副都心まちづくり推進計画に基づき、平成二十七年度のまちの概成に向けて開発を進めてきております。この開発は、まずまちの活動が開始し、台場地区が概成する第一期、それから交通アクセスが充実し、有明南地区が概成し、青海地区の開発が進む第二期、広域幹線道路がほぼ完成する第三期と、おおむね十年スパンで中期的な計画を掲げまして、これを目標として、段階的に進めてきております。
 しかしながら、この事業は、個別の用地等の契約により処分が進むという事業の性格上、毎年の目標を将来まで定めるということは困難でございます。したがいまして、中期的な計画をにらみつつ、各年度ごとに予算を定めた処分目標を決め、この達成を目指して進めております。
 なお、平成十六年度の臨海副都心の土地処分の達成度をあらわす、いわゆる予算に対する収入率は一五八%でございました。
 

 
 ▼大西委員
 臨海会計では毎年の目標を将来まで定めることは困難なので、一年ごとの達成を示していくことは非常に困難であるというような答弁が出たわけですが、最後に十六年度は予算対比で一五八%の処分が行われたということですけれども、十六年度はこれで、毎年毎年その数値が変わっていくかもしれません。
 そしてまた、まちづくりとそれから事業会計というのは別だと考えるんですよね。確かにまちづくりという意味では土地処分が目に見えて動いている。しかし、その前に土地造成をしたものですから、起債をしているわけです。そういうことも含めれば、もっともっと複雑な要素がここにあるわけで、そして償還のことを考えたりすれば、なるほどここまで行っているのかとか、そしてそれを一年一年ごとに落としていく作業、やはりこれは欠かせないと思っておりますが、いかがでしょうか。
 
 ▼港湾局長
 事業の性格上と申しましたのは、いわゆる歳出面、例えば返還する起債の償還あるいは道路整備なりインフラの整備なり、さまざまな歳出面は計画どおりほぼ進んでおります。ただ、申し上げました、歳出に対しまして、土地を売却して、その売却益をこの事業に充当するという事業の性格上、毎年毎年幾ら売却するかということを、ずっと将来まで収入を見きわめるということは、なかなか困難だという意味でございます。
 

 
 ▼大西委員
 やれないということではないんじゃないかなと思います。本当に、ここにいる人たちが一年一年、この事業がどこまで達成できているのかということを確認しない限り、この決算委員会の存在意義もないんじゃないかと思っておりますので、そういう意味では、わかりやすい決算書の作成というものにもぜひ手がけていただきたいと思います。
 今出されている資料というものは、確かに法のもとで決められた資料です。しかし、これは私から見れば最低限の資料だと思っております。それ以上の都民への説明というものも必要でありますので、ぜひその点を努力していただくように要望したいと思っております。
 そして、住民に向けて本当に局事業のPRをもっともっと積極的に行うべきだと思いますので、そういう意味では、先ほど申し上げましたように、この決算書の内容、ぜひ、それぞれの局がよりわかりやすい取り組みを再度要望しておきます。
 
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■市場化テスト
 
 ▼大西委員
 内閣府の総合規制改革会議で平成十五年十二月に発表しました規制改革の推進に関する第三次答申で、市場化テストの実施を打ち出しました。これは、今まで国や地方自治体が独占的に手がけてきた事業について、行政と民間企業との間で競争入札を行い、落札した事業主体がその事業を実施するという制度です。
 市場化テストは非常にいろいろ問題もあると思いますが、いろいろな外国での取り組みも本格的に導入されておりますので、規制改革・民間開放推進会議が進める市場化テストについて、交通局としてどのような所見を持っていらっしゃるのか、伺いたいと思います。
 
 ▼交通局長
 今お話のありました市場化テストは、公共サービスの民間開放を推進するための方策の一つでありまして、現在、国において、ハローワーク関連の事業や国民年金保険料の収納事業などのモデル事業を実施するなど、導入に向けた準備が進められているところでございます。
 交通局は事業者として、地下鉄、バスともに、現在、民間とのサービス競争の中で運営してきているところでございまして、この市場化テストの国の動きなどを見守っていきたい、このように考えております。
 

 
 ▼大西委員
 この市場化テストについては、私どもは基本的な議論がまだまだ不足しているとも考えております。社会経済状況がどのように変わろうとも、住民に対して行政の果たすべき役割がなくなることはありませんし、効率化の名のもとに、民にできることはすべて民にという動きには、いささかの危惧も感じております。民にできるといっても、大事なのはどのようにできるかという中身の問題です。これまで官がやってきたことを民がそのまま、しかも低コストでできるというのであればいいんですが、民に移すことによって仕事の質が変わってしまう、あるいは低下してしまうということがないのか、きちんと議論し、検討する必要があるといえます。
 しかし、やはり国も地方も財政状況が大変厳しく、また、本格的な少子高齢社会の到来を目前にした今、大胆な行政改革や徹底的な効率化は避けられません。そうした状況から、今後は、市場化テストのような動きはますます拡大していくと思います。そのような動きの中で、単に公共性が高いとか、広域的に重大な影響があるなどといった抽象的な説明では、民営化を押しとどめることもできないでしょう。
 そこで、都営地下鉄、都営バスが私鉄や民営バスとどう違うか、都営であることの意義を教えていただけますか。
 
 ▼交通局長
 地下鉄、バスなど都営交通は、公営企業として、独立採算制のもとに公共性と経済性の両面を発揮しながら都民の足を確保し、公共の福祉の増進に寄与してきているところでございます。
 お尋ねの民間事業者と比較した都営交通の主な特徴を申し上げますと、まず、低公害でノンステップのバス車両の導入や、駅におけるバリアフリー化の先駆的取り組みなど、環境対策や福祉対策などの諸課題に行政部門と連携を図りながら積極的に取り組んできていること、それからまた、運賃の決定を初め事業全般にわたりまして、都議会や都民の意思を反映する仕組みとなっていること、さらに、都電、都バス、都営地下鉄による都営交通ネットワークを形成するとともに、都バスでは、地域住民のために必要である不採算路線を維持していることなどが挙げられます。
 

 
 ▼大西委員
 市場化テストについては、きょうは交通局にお聞きしたわけですけれども、大切なことは、仮に引き続き官が担うべき仕事であるならば、官が担うことの意義やメリットを住民に具体的に説明していくことが今後必要だと思っております。
 意義の一つとしては、入札など一般競争入札に総合評価方式が導入され、価格万能であった従来の方法が改められ、品質や技術力の重視など多様な視点が取り入れられる時代となったわけです。障害者雇用率の高い企業や中小企業への優遇に加えて、環境や男女共同参画に積極的な事業所、企業、そういうものを優遇し、物品や工事を発注していくことなども、官こそ取り組むべき役割だと思っておりますので、その辺も十分に考えて今後取り組んでいただきたいと思っております。
 
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