石森たかゆき(自民党) |
■病院事業 |
▼石森委員
それでは、自民党二人目となりまして、坂本委員に続きまして、私からは、病院事業、水道及び下水道事業についてお尋ねをしたいと思います。
まず、病院会計における収支状況並びに都立病院改革についてお伺いいたします。
都立病院は、今後ともその基本的役割である行政的医療を都民に適切に提供し続けていくためには、自立した経営主体として強固な財政基盤を築く必要があります。しかし、近年二回、平成十四年と平成十六年における診療報酬改定が連続してマイナスとなったばかりか、先ごろ発表された厚生労働省による医療制度構造改革試案や、経済財政諮問会議における民間議員による医療給付の大幅削減案の提出など、病院経営をめぐる情勢は厳しさを増すばかりであります。
来年に予定されている診療報酬改定はもとよりとして、今後も診療報酬の伸びがほとんど期待できない、そういう病院の経営主体には厳しい状況がしばらく続くものと予想されます。
そうした中で、多額の事業費を必要とする都立病院の再編整備や、患者さんによりよい医療を提供していく取り組みが困難な環境に置かれていることは、だれの目から見ても明らかであります。
このように、いわば病院運営にとって冬の時代を迎えているからこそ、都は都立病院改革マスタープランを策定し、局相当の組織である病院経営本部を設置して、都立病院改革を着実に推進していく体制を整えたものであると理解しております。
今回の平成十六年度決算は、この病院経営本部が発足してから三回目の決算となりますが、この三回の決算はいずれも経常収支が赤字となっております。しかしながら、みずからの収入によってどの程度事業費を賄っているかを示す指標である自己収支比率を見てみると、この三年間いずれも七〇%を超えて安定しており、平成十五年度では七一・一%と今までで最高となっております。
また、一般会計からの繰入金も、病院経営本部発足以前の平成十三年度決算と比較して、約六十四億円以上の削減を行うなど、一定の成果を上げておりますが、一方では、今回の平成十六年度決算を経常収支で見てみると、約三十一億円の赤字となっており、前年度決算の約十三億円から十八億円も赤字額が増加している状況にあります。経常収支は特殊な要因を除いた通常の企業活動における収支であることから、収支均衡、さらには黒字となる状態が望ましいことはいうまでもありません。
そこで、お尋ねいたしますが、平成十六年度決算における経常収支が、平成十五年度決算と比較して、悪化した原因についてどのように分析しているのか、まず、お聞かせいただきたいと思います。
▼病院経営本部長
十五年度対比の十六年度決算の悪化の原因でございますが、減価償却費は減少したものの、職員の給与削減措置が平成十五年度に終了したことなどに伴い、まず、給与費が約十五億円増加した一方で、診療報酬マイナス改定などにより、入院・外来収益が約九億円減少した結果、経常収支として約十八億円の悪化となったものでございます。
▼石森委員
経常収支悪化の理由としては、東京都全体の給与制度や日本全国共通の診療報酬制度など、みずから決定することができない外的な要因が大きいところでもございます。確かに地方公共団体である都が経営する病院でありますから、給与制度上の制約を受けて、それが収支に影響を与えるということについては一定の理解ができます。しかし、外的要因があることを理由に、ただ手をこまねいていて、収支が悪化していくのを座視していることは決して許されることではありません。都立病院も企業である以上、業務のむだを減らすことで経費を削減するとともに、収益の増加を図る経営改善を不断に行っていかなければならないと思います。
そこで、お伺いいたしますけれども、平成十六年度に都立病院で取り組んだ経営努力についてはどのようなものがあるのか、お示しをいただきたいと思います。
▼病院経営本部長
新たに多角的な視点で目標を設定し、管理する手法でございますバランススコアカードを導入しまして、経営管理機能を強化するとともに、職員一人一人の意識改革を図ったところでございます。
また、民間医療機関との医療連携を推進しまして、新規患者の確保を図るとともに、人材育成の強化にも努めました。
こうした経営改革の取り組みによりまして、前年度に比較して病床利用率の向上などの形で、具体的に実を結んできていると考えております。
▼石森委員
都立病院も、一企業として経営改善に努めるということはよくわかりました。引き続きご努力をお願いしたいと思います。
次に、病院会計の全体収支に目を向けますと、平成十六年度決算は約二億円の黒字となっておりまして、累積欠損金も前年度より減少して約三十七億円となりました。しかし、これは母子保健院の跡地などを売却したことによる特別利益が三十三億円以上もあったもので、いわば臨時的な収入による黒字であります。
既に述べたとおり、医療費をめぐる環境は極めて厳しいものがありまして、今後このような臨時的収入が期待できないとすると、欠損金がさらにふえていく可能性もあります。欠損金の増加は、いずれは資金の不足につながっていき、日常の企業活動はもとより、都立病院改革マスタープランで計画している再編整備計画、とりわけ平成二十一年度に向けて現在、事業を進めてきている多摩メディカル・キャンパスも、整備に支障の出てくることを危惧せざるを得ません。
多摩地域は、区部と比較して小児医療を初めとするさまざまな医療機能が不足しております。多摩広域基幹病院と小児総合医療センターの早期開設は、多摩地域に暮らす多くの都民の希望でもあります。
都立病院改革はまだ始まったばかりで、これからの再編整備事業だけでも、この多摩メディカル・キャンパスのほか、がん・感染症医療センター、精神医療センターなど大規模なプロジェクトが続いており、大きな資金的負担を必要といたします。必要な資金を確保するためには、今後も今まで以上にあらゆる手段を尽くして経営改善に努めていかなければならないと思いますが、どうしても不採算とならざるを得ない部分については、一般会計に対して応分の負担を求めていくことも当然考えていかなければならないと思います。
以上述べてきたように、現在の病院事業はあたかも構造的な赤字体質に陥っているかのように見えます。都民の生命と健康を守るため貴重な財産である都立病院が、こうした状況にあることを憂慮せざるを得ません。今後、再編整備の進捗に伴って、いわゆる行政的医療のウエートが増すことは確実であり、東京都としての責任を持った財政運営はますます重要になってきます。多摩メディカル・キャンパスを初めとする都立病院の整備を確実に行っていくために、一刻も早く健全な財政基盤を確立することを強く望みます。
最後に、以上の論点を踏まえて、都立病院改革実現に向けた病院経営本部としての基本的姿勢をお伺いしたいと思います。
▼病院経営本部長
今後も都立病院改革マスタープランに基づきまして、何よりも一層の経営改善努力を行うほか、一般会計繰入金などにつきましても、ルールに基づいて適切な財源確保を図ってまいります。
こうして、病院会計の財政基盤を強化しつつ、都立病院の再編整備を着実に進め、あわせて患者サービスの充実を図ることによりまして、都民に対して総体としての医療サービスの向上につなげることが、私どもの基本的な立場だと考えております。
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■水道事業 |
▼石森委員
次に、水道局関係について伺います。
近年、ボトルウオーターの消費や家庭用浄水器の設置などが急速に拡大しており、都民が蛇口から直接水を飲む光景は減ってきていると聞いております。こうした都民の水離れはまさに憂うべき事態でありまして、私の子ども時代には蛇口から直接水を飲む光景はごく自然のものでありました。ところが、最近では学校へ通う際にも、一部の保護者や子どもたちがペットボトルの持参を希望しているというような話も耳にいたします。
水道局が一昨年実施したお客様満足度調査におきましても、水道水に不安を抱く使用者が五割を超えているとの驚くべき結果が示されておりました。こうした結果などから、水道局では昨年六月から、安全でおいしい水プロジェクトをスタートさせております。これは水道水に対する都民の信頼を取り戻すため、水道から蛇口に至るまでの総合的な施策を計画的に推進していくものであります。
既にプロジェクトの開始後一年余りが経過し、さまざまな取り組みが実施されていることと思いますが、この一年余りの間に実施した主な取り組みについて、まず、お伺いいたします。
▼水道局長
水道局におきましては、これまでも安全でおいしい水を供給するために、さまざまな施策を進めてきておりまして、おいしさにつきましては以前より改善してきていると認識をしております。しかしながら、お客様満足度調査の結果などを見ましても、都民の水道水に対する信頼は十分とはいえない状況にございます。こうしたことから、昨年度、安全でおいしい水プロジェクトを立ち上げたところでございます。
このプロジェクトは、まず、都独自のおいしさに関する水質目標を設定をいたしまして、利根川水系の浄水場への高度浄水処理の導入促進、クリーンアップ貯水槽の推進など、水源から蛇口までの総合的な施策を実施しているところでございます。また、こうした取り組みをお客様にお伝えするため、安全でおいしい水キャンペーンを展開しているところでございます。
▼石森委員
ハード、ソフト両面にわたりまして、さまざまな施策が総合的に実施されておりまして、この問題に対する意気込みが強く感じられるところでございます。
私も以前と比較して、最近、水道の水がおいしくなっていると感じている一人でございますけれども、こうした水道局の取り組みが正当に評価されず、都民は蛇口から出る水を飲まないというのは非常に残念なことであると思います。
そこで、今ご答弁いただいたプロジェクトの個々の取り組みについて、順次お伺いをしたいと思います。
初めに、安全でおいしい水キャンペーンについてはどのような行動を行っているのか、お聞かせをいただきたいと思います。
▼水道局長
安全でおいしい水キャンペーンは、水道局の取り組みや水道水の安全性、おいしさをお客様にわかりやすくお伝えするために実施をしております。具体的には、六月の水道週間や夏休みなどに各種イベントを実施しております。そして、専門のホームページ、ポスター、「水道ニュース」などさまざまな広報媒体を活用したPRも行っております。そして、高度浄水処理水を詰めたペットボトル「東京水」の製造などを行っております。
なお、ペットボトル「東京水」は、これまでイベント会場や浄水場の施設見学会などで無料配布するとともに、都庁内の売店などにおいて販売しており、お客様からは好評をいただいております。
▼石森委員
ペットボトル「東京水」につきましては、私もたびたび飲ませていただいておりますけれども、ミネラルウオーターと比べても何ら遜色なく、水道水が実際おいしくなっていることを改めて認識しているところでもございます。
都民の水道離れも、いわば飲まず嫌いに由来するところが大きいのではないかと思います。多くの都民にこのペットボトルを飲んでもらえれば、水道水に対する評価が着実に上がっていくのではないかと思いますが、地道な活動でありますけれども、こうした取り組みをぜひ続けていくことが大変重要な部分だと思います。
ところで、都民にできるだけおいしい水を供給するために、おいしさに関する東京都独自の水質目標を設定したというふうなお話を伺っておりますけれども、このおいしさに関する水質目標の概要と十六年度の達成状況についてお伺いをしたいと思います。
▼水道局長
おいしさに関する水質目標でございますが、水道水のにおい、味、外観につきまして、当局が独自に設定したものでございまして、残留塩素、カビ臭原因物質などの七項目について、国の水質基準等よりも厳しい目標を設定したほか、国が基準化をしておりませんカルキ臭の原因となるトリクロラミンという物質がございますが、これについても今年度中に新たな目標値を設定することとしております。
水質目標を設定している項目のうち、カビ臭原因物質などの四項目につきましては、平成十六年度で既に一〇〇%目標を達成しております。残留塩素濃度の一日の平均値が目標を達成した測定地点の割合についても、平成十五年度の一一%から平成十六年度には三六・六%に向上しております。
今後とも高度浄水処理の導入促進などによりまして、すべての項目において目標を達成することを目指してまいります。
▼石森委員
国の基準よりもさらに厳しい都の独自の指標を設定しておりまして、達成に努めているということは評価をするところでございます。
そして、おいしい水を供給するためのハード面での最大の取り組みというのは、高度浄水施設の整備であると思います。水道局では活性炭とオゾンによる高度浄水処理を行うことによりまして、水質向上に効果を上げているとお聞きしております。既に幾つかの浄水場でこの高度浄水処理が行われているそうでありますが、現在までの整備状況と今後の予定についてお尋ねをいたします。
▼水道局長
水道局では、より安全でおいしい水の供給に向けまして、おおむね十年以内に利根川水系の全浄水場におきまして、取水量の全量を高度浄水処理できるよう施設の整備を進めているところでございます。これまでに金町浄水場、三郷浄水場及び朝霞浄水場に高度浄水処理を導入をしております。
また、現在、三園浄水場、東村山浄水場におきましても、高度浄水施設の建設を進めておりまして、今後も計画の達成に向けて着実に整備を進めてまいります。
▼石森委員
利根川水系の全浄水場で高度浄水処理を行うため、計画的に事業を進めているようですので、引き続き着実に推進をしていただきたいと思います。
しかしながら、浄水場でどれほど品質のよい水をつくったとしても、それが末端の蛇口まで届かなければ意味がありません。そこで、問題とされているのが、ビルやマンションなどの貯水槽水道の管理の問題であります。貯水槽水道とは、一たん受水タンクに水をためて、使用する水道のことでありますけれども、その貯水槽水道の中でも特に規制の対象となっていない小規模の貯水槽では、管理が適切でないものが多いと聞いております。水道局でもこのことを重視して、安全でおいしい水プロジェクトの一環として、昨年からクリーンアップ貯水槽という取り組みを進めているとのことでございます。
そこで、クリーンアップ貯水槽の実施内容についてお伺いをしたいと思います。
▼水道局長
クリーンアップ貯水槽は、貯水槽水道の適正管理や直結給水の普及拡大を図る目的で行っております。都内に設置されております約二十二万件の貯水槽水道につきまして、平成十六年から五年間で貯水槽本体や設置環境等の管理状況を調査いたしまして、同時に残留塩素濃度の測定等の水質検査も実施する計画であり、九月までに対象件数四万件のうち三万件の調査を終了しております。
点検調査の結果、管理が適正な場合は、調査済み証を発行する一方、管理に不備がある場合は、所有者に対する指導助言を行っております。また、直結給水への切りかえに関する個別具体的なアドバイスも行っているところでございます。
点検調査の結果につきましては、貯水槽水道の所有者のみならず、利用者の方にも情報の提供を行っております。
▼石森委員
都内二十二万件の全貯水槽水道を点検調査し、適正管理の指導をしているというようなことでございまして、ビルやマンション等の所有者の管理意識が向上して、貯水槽水道の使用者の水道に対する不満も解消していくものと思います。しかし、究極的には貯水槽を経由せず、直接給水する方式が望ましいのかと思います。
水道局でも直接給水方式への切りかえを進めているとのことでありますが、残念ながらまだまだ都民の認知度が低いのではないかと思います。また、貯水槽水道が水道利用者の財産であり、直結給水への切りかえ工事費も利用者が負担ということも障害の一つといえます。しかしながら、直結給水化は水道水の安全性やおいしさを向上させるとともに、貯水槽の管理の手間も省けるというメリットもあります。
水道局としても、既にPRなどは行っていると思いますが、今申し上げたようなメリットや切りかえに要するモデル工事費を示すなど、都民にわかりやすい形で積極的にPRをしていく必要があります。この点を強く要望しておきます。
さて、本日は、昨年から実施している安全でおいしい水プロジェクトの取り組み内容について質問をしてまいりました。都民が安心しておいしい水を飲めるよう、今後もこのプロジェクトを強力に推進していただきたいと思います。
そこで、最後に、今後の安全でおいしい水プロジェクト推進に向けた水道局長の決意をお聞かせいただきたいと思います。
▼水道局長
安全でおいしい水を安定的に供給することは、水道事業者の基本的な使命でございます。この使命を果たすため、これまでも安全でおいしい水を都民に供給するためのさまざまな施策を講じてまいりました。しかし、近年、より安全でおいしい水を求める都民の声が高まっている中で、ご指摘のとおり、貯水槽水道の管理の問題など、いまだ課題が残されていることは認識しております。
今後、貯水槽水道の適正管理や直結給水方式の普及拡大に取り組むなど、安全でおいしい水プロジェクトを積極的に推進し、水道水質のさらなる向上を図るとともに、水道局の取り組みや東京の水道水の安全性やおいしさにつきまして、都民の理解を深めていくことにより、一層信頼される水道を目指してまいります。
▼石森委員
ぜひ、よろしくお願いしたいと思います。
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■下水道事業 |
▼石森委員
下水道は安全で快適な生活環境を実現する上で欠かせない社会資本でありまして、下水道局では、お客様、環境、経営の三つの視点に基づいて下水道事業を計画的に推進することとし、経営計画二〇〇四を昨年二月に策定しております。この経営計画では、徹底した経営改善を進めることにより、都民サービスの一層の向上を図りながら、区部の下水道料金や流域下水道の市町村維持管理負担金を現行のまま維持することとしております。
私は、二兆七千億円に及ぶ巨額の企業債残高を抱え、厳しい財政状況にあるにもかかわらず、下水道局が都民に新たな負担を求めることなく、さらなる企業努力により事業を推進していることを評価するとともに、その進捗状況についても注目をしておりました。
こうしたことから、経営計画に掲げた主要施策について何点か伺いたいと思います。
まず、近年、多発する浸水被害に直面してますます重要性が増している浸水対策について伺います。
東京では昨年十月、台風二十二号、二十三号が相次いで東京を直撃し、多くの浸水被害が発生いたしました。さらに、本年では九月四日に記録的な集中豪雨により、二十三区西部の中野区、杉並区を中心に浸水被害が五千棟を超える大水害に見舞われました。
下水道局では、このような浸水被害を軽減するため、これまで一時間五〇ミリの降雨に対応できるような幹線やポンプ所などの基幹施設の整備を行う雨水対策事業を計画的に進めてきておりますけれども、この事業は、施設が完成すれば確実な効果が得られるものの、施設規模が大きい幹線やポンプ所などの事業効果が発揮されるまでには長い年月と多大な費用が必要であります。
そこで、これまでに一時間五〇ミリの降雨に対応するために整備した基幹施設などの進捗状況についてお伺いをいたします。
▼下水道局長
幹線やポンプ所などの基幹施設の整備は、下水道事業におきます雨水対策の基本となるものでございます。平成十六年度には、神田川流域の和田弥生幹線関連施設の整備を鋭意推進したほか、北区の神谷ポンプ所を新たに完成させるなど、浸水被害の軽減に努めてまいりました。
しかしながら、先生ご指摘のとおり、このような基幹施設の整備には多大な費用と長い期間を要するため、一時間に五〇ミリの降雨に対応する整備が完了した面積の割合は、平成十六年度末で五七%となっておりまして、毎年一%程度の増加にとどまっております。
▼石森委員
基幹施設などの整備の進捗率が毎年約一%程度の増加にとどまっているということでございますけれども、基幹施設の整備は雨水対策の根幹をなすことから、早期の完成が望まれるところでありまして、今後、雨水対策の予算を増額することにより、整備のスピードを上げていただきたいと思います。
次に、近年、多発する浸水被害に対し、下水道局では対策を工夫して、都民が実感できる効果の早期発現という観点から、雨水整備クイックプランを平成十一年度に策定し、十六年度には新・雨水整備クイックプランとして改定、充実を図っております。既に完了している地区もあると思いますが、これらの地区では雨水貯留管などが整備されたことにより、昨年十月の連続した台風や、ことし九月四日の集中豪雨などでも、浸水被害が軽減されているのではないかと思います。
そこで、クイックプランの進捗状況と、その効果としてはどのようなものがあったのか、お伺いをいたします。
▼下水道局長
平成十七年十月末現在で、新・雨水整備クイックプランで完成しております事業につきましては、比較的広い範囲を対象に貯留管の整備などの対策を講じます重点地区三十地区のうち、例えば大田区上池台地区など五地区が完了しております。雨水ますの増設などを行う小規模な対応箇所六十七カ所のうち、三十四カ所が完了しております。
このほかに、従前のクイックプランで進めておりました中で、重点地区で新宿区中落合地区など十二地区、小規模対応箇所で八十一カ所が既に完了しております。
これらの対策の完了により、従来は一時間五〇ミリ程度の降雨で浸水被害が発生しておりました、例えば世田谷区桜丘地区や荒川区西尾久地区では、ことしの九月四日の集中豪雨におきましても、床上・床下浸水が発生しなかったという報告を受けております。浸水被害の軽減効果が図れているものと考えております。
▼石森委員
ご答弁にあったように、クイックプランによる効果は大変大きいものがあるわけですし、早期完成を待ち望んでいる都民も数多いところでありますから、今後も浸水被害を最小限に食いとめるためにも、プランを着実に進めていただきたいと思います。
次に、下水道管渠の再構築について伺います。
東京都区部の下水道は明治時代に着工された神田下水に始まり、既に百二十年以上の歴史があると聞いております。今日では区部の下水道管の延長は約一万五千キロメートルを超えるに至っており、そのうちの約二千キロメートルが法定耐用年数である五十年を経過しております。さらに、今後十年もすると、高度経済成長期以降に集中的に整備したものが耐用年数を迎え、老朽化した下水道管が急増するとのことであります。老朽化した下水道管の更新を怠れば、道路の陥没などを引き起し、大変な事故にもつながりかねません。
下水道局では、こうした下水道管渠の老朽化対策などを行う再構築を重要な事業の一つとして位置づけ、実施してきておりますが、この再構築事業の進捗状況についてお示しをいただきたいと思います。
▼下水道局長
下水道施設が早くから整備されました千代田区、中央区、港区の都心三区を中心としまして、約一万六千三百ヘクタールを下水道管渠の再構築エリアと定めまして、平成七年度から再構築事業を本格的に実施しております。具体的には、管渠の健全度調査を行いまして、老朽度や破損状況などを把握しまして、早期に対策が必要な地区を選定し、その上で管渠の更生や布設がえを行っております。
さらには、平成十二年度にはクイックプランを策定いたしまして、道路陥没が特に多発している地区における対策を重点化いたしております。あわせまして、枝線管渠の耐震化なども実施しております。
事業の進捗状況でございますが、経営計画の初年度に当たる平成十六年度には二百五十二ヘクタールで再構築を実施しまして、計画区域全体に対して累計で約一〇%の千五百八十三ヘクタールが完了しております。
▼石森委員
再構築事業は平成七年度から本格的に実施してきたというようなご答弁がございまして、事業実施からは既に十年が経過しております。
そこで、再構築事業を実施したことによってどのような効果があったのか、お伺いをしたいと思います。
▼下水道局長
再構築事業の実施による主な効果でございますけれども、下水道施設を健全な状態で機能させるということは当然でございますが、管渠の損傷により発生いたします道路陥没の減少、あるいは能力不足の解消、枝線管渠の耐震性向上などでございます。
例えば、道路陥没について例を挙げますと、発生原因の多くを占めておりました各家庭からの取りつけ管などの対策を重点的に行いまして、再構築エリアの道路陥没件数が、平成十二年度八百五十件に対しまして、平成十六年度には三〇%減の約六百件となり、高い事業効果が上がっております。
▼石森委員
この再構築事業につきましては、道路陥没件数の減少など安全で安心な都市活動を維持していくために、非常に重要なものでありまして、これからも着実に取り組んでいただきたいと思います。
また、老朽化した施設といえば、私が住む多摩地域の流域下水道も例外ではありません。多摩地域の下水道は流域下水道方式により昭和四十年代から整備が進められ、区部の下水道と比べれば歴史は浅いものの、南多摩水再生センターなどは昭和四十六年の稼働以来、三十年以上の年月が経過しておりまして、水再生センターの機能を健全に維持していく上でさまざまな課題を抱えていると聞いております。
そこで、流域下水道の水再生センターの施設の現状と、その対応策についてお伺いをいたします。
▼下水道局長
多摩地域の流域下水道の水再生センターの施設の現状と対応でございますが、昭和四十年代から五十年代に整備いたしました南多摩、北多摩一号、多摩川上流及び清瀬の各水再生センターでは、設備の四割程度が既に耐用年数を超えておりまして、維持管理コストの増加要因の一つとなっております。
このため、各センターの運転状況を踏まえ、維持管理コストの縮減に努めるとともに、設備機器を計画的に更新いたしております。平成十六年度には、経営計画に沿いまして、南多摩水再生センターの焼却炉や、多摩川上流水再生センターの電気設備などの更新を完了したところでございます。
▼石森委員
設備機器の更新事業を計画的に進めているとのことでございましたけれども、設備機器の更新は単に経済性だけではなくて、環境にも十分配慮して進めていくべきだと思います。
そこで、施設の更新に当たり、どのような取り組みを進めているのか、お伺いをしたいと思います。
▼下水道局長
施設の更新に当たりましては、あわせて環境対策も進めております。具体的には、南多摩や多摩川上流水再生センターにおきましては、温室効果ガスの大幅な削減が可能な高温焼却炉の整備を進めております。
また、水処理施設の更新時期を迎えております水再生センターでは、設備更新に合わせまして、窒素や燐を大幅に削減することが可能な高度処理施設を導入し、処理水質の一層の向上を図っております。今後も効率性を確保しつつ、環境に配慮した事業運営に努めてまいります。
▼石森委員
ぜひ今後も事業執行の手を休めることなく、十八年度までの計画である経営計画に基づきまして、浸水対策や施設の再構築、多摩地域の下水道整備などの主要施策の着実な推進を、これまでどおり図っていただきますよう要望いたしまして、私の質問を終わります。
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