坂本たけし(自民党) |
■臨海副都心開発と臨海三セク |
▼坂本委員
それでは、都議会自民党を代表いたしまして、最初の総括質疑をさせていただきます。
東京都は、現在、第二次財政再建推進プランの最終年度であります平成十八年度予算の編成を進めていますが、昨年度の予算では、当面の目標であります財政不足の解消を実現するなど一定の成果を上げつつあります。しかし、巨額な借金を背負う国家財政や不安定な税収状況などに左右される脆弱な財政構造であり、自助努力をさらに推進し、施策基盤を盤石なものにしていく必要があります。特に公営企業は予算規模におきましても二兆円を超え、公営企業の経営革新なくしては都財政の再建は実現しないといっても過言ではございません。民間企業では、あすへの存続をかけて必死にリストラや事業の再構築に努めています。公営企業におきましても、安全・安心はもちろん、民間企業にまさるとも劣らない経済性を最大限に発揮して、都民に信頼されるサービスを提供していく必要があります。
▼坂本委員
そのような観点から、最初に臨海副都心開発についてお伺いします。
分科会の際にも活発な議論がありましたが、臨海副都心開発も平成元年に工事着手してからことしで十七年、まちが活動を始めてから十年、途中、バブル経済の崩壊など社会経済状況が大きく変化する中で、よくここまでまちづくりを進めてきたものだと思います。
さて、臨海副都心開発は、全体で三期にわたる段階的なまちづくりであり、今審議中の平成十六年度決算、そして平成十七年度は臨海副都心開発二期目の最終段階に当たります。
そこで、臨海副都心の現在までの開発の状況について伺います。
▼港湾局長
臨海副都心開発の状況でございますが、現在、共同溝、上下水道、区画道路などの地域内都市基盤はほぼ完成いたしまして、フジテレビ、サントリー、パナソニックなど日本を代表する企業が進出してきており、有明北地区を除けば約八割の土地が有効に活用されております。また、「ゆりかもめ」は今年度末に豊洲まで延伸し、環状二号線や晴海通り延伸部の一部も今年度末には開通予定でございまして、交通利便性は格段に向上してまいります。
今日、年間四千万人を超える人々が訪れるまちに成長した臨海副都心は、今年度、まち開き十周年を迎えまして、進出事業者たちの種々のイベントが企画され、さらににぎわいを見せております。今後も社会経済状況に的確に対応しながら、着実に臨海副都心の開発を進めてまいります。
▼坂本委員
今答弁にあったとおり、地区内都市基盤はほぼ終了しているところです。この点につきまして、広域交通基盤も含めて臨海副都心開発の全体事業費及び平成十六年度末現在の執行状況についてお伺いします。
▼港湾局長
臨海副都心開発における全体事業費でございますけれども、二兆三千六百億円、そのうち一兆八千六百億円、約八割弱が執行済みでございまして、残事業としては五千億円でございます。具体的には、共同溝、公園、道路などの地域内都市基盤につきましては、計画額九千六百億円のうち八千八百億円、約九割を既に執行しておりまして、残りは青海地区の北側と今年十月に埋立竣工した有明北地区の開発に合わせて上下水道や区画道路などを整備いたす予定でございます。
また、広域交通基盤整備につきましては、計画額一兆四千億円のうち九千八百億円、約七割を既に執行しておりまして、残りは環状二号線の豊洲から新橋までの区間、豊洲と有明北地区を結ぶ補助三一五線などを整備する予定となっております。今後引き続き事業費の圧縮に努めつつ、着実に整備を進めてまいります。
▼坂本委員
なるほど、基盤整備自体は順調に進んでいることが確認できました。
ところで、現在、臨海副都心は、台場が概成しまして、青海地区と有明南地区の開発が進んでいるところでありまして、残るは今答弁にありました有明北地区であります。有明北地区は、埋立部を含めて百四十一ヘクタールありまして、臨海副都心全体の開発面積四百四十二ヘクタールのほぼ三分の一に及び、臨海副都心の中でも重要な意味を持つ地区であります。その埋め立てにつきましては、先月六日に竣工したと聞いております。いよいよ有明北地区の開発に着手するとなれば、臨海副都心開発にも一層の弾みがつくと思います。
近年、臨海地域でマンションの建設が盛んに進められておりますが、有明北地区は、やはりこの地区ならではの開発を進めるべきだと考えますけれども、見解を伺いたいと思います。
▼港湾局長
お話しのように、有明北地区の埋め立ては十月六日に竣工をいたしました。有明北地区は、臨海副都心の中で都心に一番近い立地条件にございまして、身近な水辺空間や旧防波堤などの緑に恵まれているなど、他の地区に類を見ない環境でございます。そのために、埋立工事におきましては、ハゼやカニなどの水生生物がすみやすいカニ護岸や潮入りの整備など環境対策に最大の配慮をしてまいりました。
また、今後、環状二号線、晴海通り延伸部などの整備を進めることによりまして、都心への近接性が飛躍的に向上することから、こうした特性を生かして、中層住宅などを含む都市型住宅と業務・商業などの多様な都市機能がバランスよく配置された、他の大都市開発とは一線を画するような魅力的な市街地形成を図ってまいります。
▼坂本委員
ぜひとも、ただマンションが林立するだけの味気ない居住地域でなく、有明北地区の特性を生かしたまちづくりをぜひ進めていただきたいと思います。
次に、臨海三セクについて伺います。
先ほども触れましたけれども、まちづくり推進計画では、平成七年度までを第一期、十七年度までを第二期、二十七年度までを第三期として段階的なまちづくりを図っております。臨海三セクは、第一期、第二期におきまして共同溝などのインフラ整備を担い、台場、有明地区における業・商機能の受け皿となりますなど、まちづくりに大きな貢献をしてきました。第三期では青海地区のまちづくりを積極的に進め、臨海副都心のまちの概成を目指すことになりますが、臨海三セクをどのように活用していくのか、所見を伺います。
▼港湾局長
台場地区が概成いたしましたとはいえ、埋め立ての竣工を見た有明地区や青海地区の開発は、まさにこれからでございまして、平成二十七年度まで十年間をかけて取り組んでいくものでございます。
まちづくりに当たりましては、まちの成長に適合して交通やエネルギーなどのインフラが安定的かつ効率的に提供されること、また、開発コンセプトに沿った統一性のとれた町並みを形成することが重要でございます。このような観点から、安定的なインフラ管理を行うとともに、まちづくりの先導的、モデル的役割を果たすためには、臨海三セクは依然として極めて重要であると認識しております。今後も都が責任を持って開発を進めるため、臨海三セクを適切に活用してまいりたいと思います。
▼坂本委員
臨海開発に必要な三セクでありまして、これからも十分に活用していくためには、なお一層の経営改善が必要であります。これまで経営安定化策につきましては一定の成果を上げてまいりましたが、経済・金融状況や減損会計適用を初めとする会計制度の改正など経営環境の変化を的確にとらえつつ、経営改善に努めるべきであります。
そこで、今後、三セクの経営改善にどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
▼港湾局長
臨海三セクの開発において果たす役割は非常に大きく、その経営改善が重要な課題であるということは、ご指摘のとおりでございます。臨海三セクの経営が厳しい原因の一つは、開発途上におけるインフラ管理、集積の進んでいない段階でのビル事業を経営するなど、民間の経済合理性だけでは対応できない役割を担ってきたことによります。また、バブル経済の崩壊など景気低迷が長期化することによりまして経営環境が厳しさを増す中で、開発を支援してきた経過がございます。
このような状況に対しまして、都は、平成十年、三セクの経営安定化策を策定いたしまして、都や金融機関の支援のもと、徹底した内部努力に努め、六年連続の営業黒字を確保してきたところでございます。今後も臨海副都心開発の推進という観点から臨海三セクの経営をとらえまして、戦略的、重点的な営業によるテナントの誘致や経費削減などを行い、経営改善に全力で取り組んでまいります。
▼坂本委員
臨海副都心開発を進めるという大きな視点で、引き続き三セクの経営改善には心して取り組んでいただきたいと思います。
さて、臨海副都心開発をめぐっていろいろな角度から質問してまいりましたが、臨海副都心開発は、これまで都税収入を初めさまざまな面で都政全体へ大きく貢献してきたビッグプロジェクトであります。したがいまして、いよいよ仕上げ段階の時期にあります今後十年間の第三期に向けては、これまで同様、あるいは、これまでに増して都庁が一丸となりまして、この開発を進めていくべきだと認識しております。
最後に、臨海副都心の開発にかける意気込みについてお尋ねします。
▼港湾局長
臨海副都心の開発は、全体事業費が二兆三千六百億円というビッグプロジェクトでございまして、既に八割方の整備が終了しております。この臨海副都心の開発による効果は、開発が終了する平成二十七年度までに、生産誘発効果として約十四兆八千億円、雇用創出効果は約六十五万人、都税の増収効果は約八千億円、国税を含めた増収効果は開発の総事業費を上回ります約二兆九千億円と見込んでおります。
開発の途中でバブル経済の崩壊など非常に苦しい場面も続きましたが、先ほど来ご答弁させていただいておりますように、臨海副都心も確実にその姿を変えてきておりまして、ここのところ具体的な引き合いもふえるなど、社会経済状況の好況感も実感しているところでございます。
臨海副都心は、すぐれたポテンシャルを背景に東京の新しいまちとして確固とした地位を築いておりまして、未来に引き継ぐべき都民の貴重な財産としての発展を続けております。この開発が世界都市東京のさらなる発展に資するよう、引き続き関係局とも手を携え、全力で取り組んでまいります。
|
■中央卸売市場会計 |
▼坂本委員
平成十六年度中央卸売市場会計決算書を見ますと、市場の取扱数量は水産物、青果物等すべての部類で前年を下回っております。長期的に見ましても、水産物、青果物におきましては、この十年間、長期低落傾向が続いていると聞いております。このため都は、安全・安心で効率的な流通システムを構築するための商物一致規制の緩和や低コスト流通の実現などにより市場取引を活性化するため、国の卸売市場法改正を踏まえ、中央卸売市場条例の改正をしたと聞いております。
この条例改正の柱の一つとして、市場の仲卸業者に対する財務基準の設定があります。これは仲卸業者の経営の健全化に向けた自己管理の目安として財務基準を設定したものだと理解をしております。また、経営不振に陥った仲卸業者に対するてこ入れとしまして、東京都が経営指導に乗り出したということで新聞報道もございました。
そこで、仲卸業者の経営状況について、何点かお尋ねいたします。
まず、仲卸業者の経営が悪化しているということでありますが、仲卸業者の経営悪化が進んだ場合、どのような影響を市場取引に与えるのか、お尋ねいたします。
▼中央卸売市場長
仲卸業者の経営が悪化しますと、仕入れの低下につながり、小売店などの求める豊富な品ぞろえに十分な対応ができなくなることが、まず挙げられます。また、卸売業者の立場からは、販売量が減少し、出荷者などから出荷先の選別や出荷の抑制を受けるなど十分な集荷が困難となるとともに、市場の取扱数量の減少が健全な価格形成機能に影響を及ぼす可能性が生じます。さらに、仲卸業者の財務基盤の弱体化は、市場取引において重要な代金決済機能を損なうなどの影響があります。
▼坂本委員
今の答弁で、仲卸業者の経営悪化による市場取引に与える影響の大きさがよくわかりました。仲卸業者の経営の健全化が重要であることを痛感しますが、現実には多くの仲卸業者の方が経営不振に陥っていると聞いております。仲卸業者の経営実態はどうなのか、お尋ねいたします。
▼中央卸売市場長
仲卸業者の経営状況でありますが、経営指導の対象の中心となっています水産物部を見てみますと、売上高三億円未満の業者が全体の五八%を占め、三億円以上十億円未満が三一%、十億円以上が一一%であります。売上高三億円未満の業者の約六七%は従業員五人以下のいわゆる零細業者であり、大半が赤字経営となっております。
こうした零細な仲卸業者の多くは資金力、信用力など財務基盤が脆弱であり、価格競争力や企画力にも乏しく、IT化への対応や新規顧客開拓への取り組みなどもおくれておりまして、大変厳しい経営状況にございます。
▼坂本委員
仲卸業者の厳しい経営状況を打破していくためには、仲卸業者みずからが努力をして活力のある経営を行っていくことが基本でありますが、開設者であります都の支援も必要であります。都は、仲卸業者の経営基盤の強化に向けてどのように取り組んでいるのか、お伺いします。
▼中央卸売市場長
仲卸業者の経営基盤の強化を図るためには、仲卸業者みずからが創意工夫して売り上げを伸ばすことができる環境を整備することとあわせまして、経営改善に向けた支援をしていくことが必要であると考えております。そのため中央卸売市場では、本年三月に中央卸売市場条例の改正を行い、仲卸業者が生産者や食品製造業者などと直接契約する新たな取引の拡大、業務の多角化などが可能となるよう取引規制を緩和するとともに、健全経営の指標となる財務基準を示したところであります。
今後、都職員と公認会計士が一体となって経営診断と財務改善に関する指導を行うとともに、仲卸業者の統合や連携の推進を含め、さまざまな経営基盤の強化に向けた支援を行ってまいります。
▼坂本委員
次に、中央卸売市場におきます環境対策につきまして伺います。
生鮮食料品の卸売市場への集荷や市場外への搬出には多数の貨物自動車が用いられております。また、市場内ではターレットと呼ばれます構内運搬車やフォークリフトといった多数の小型特殊自動車が所狭しと動いております。このように市場活動は自動車の存在抜きに語ることはできません。その反面、卸売市場におきましては、これらの車から排出されますガスは、市場内のみならず市場周辺の大気環境にも大きな影響を及ぼしております。特に、市場内で使用されております小型特殊自動車は自動車排出ガス規制の枠外に置かれているなど、国の対策も立ちおくれていると聞いております。都では、大気環境の改善を図るため、これまでの補助事業を活用して小型特殊自動車の電動化を進めてまいりました。
そこで、中央卸売市場におきます小型特殊自動車の排出ガス対策について何点かお尋ねいたします。
中央卸売市場としましては、小型特殊自動車の環境対策としましてどのような取り組みを行ってきたのか。その結果、現在の電動化率はどのような状況なのか、お尋ねいたします。
▼中央卸売市場長
中央卸売市場では、昨年十月から市場内の低温卸売場などをクリーンゾーンとして指定し、その中での電動車以外の使用を禁止いたしました。また、本年五月には、市場内で使用する自動車を登録制にし、車両の新規更新に当たって登録が認められるのは、ターレット式構内運搬自動車は電動車のみ、フォークリフトは電動または低排出ガス車とする新たな規制措置を講じたところであります。このうちフォークリフトについては、都独自の排出ガス基準に基づく車両認定制度を定め、本年八月から低排出ガス車の導入を開始したところであります。
これらの取り組みの結果、本年九月末現在の電動化率は、年度当初から約半年で四・五%向上し、三七・四%となっております。
▼坂本委員
新たな規制措置の導入によりまして電動化率は高まっているようでありますが、市場関係者から聞くところによりますと、電動車にも全く問題がないとはいえないようでございます。長時間の充電が必要で、その間の事業活動が制約されてしまい、また、高出力の維持が求められるフォークリフトにつきましては、バッテリーの消耗が早いなど使い勝手の点で市場関係者から敬遠されているという話も聞いております。
このような事業者の声を受けて、先ほどの答弁にありましたように、本年八月には全国で初めて独自の排出ガス基準に基づくフォークリフトの車両認定制度を設けたと聞いておりますが、これはどのような制度なんでしょうか。また、この制度によります導入実績と今後の見込みについても、あわせてお伺いいたします。
▼中央卸売市場長
中央卸売市場が導入したフォークリフトの車両認定制度は、電動車以外の低公害化を図る手段として、三元触媒装置とエンジンの電子制御化などによって、一酸化炭素、炭化水素及び窒素酸化物の排出量を、通常の車両と比較してそれぞれ七〇%以上低減させる対策を講じた車両を低排出ガス車と認定するものであります。
これまでの導入実績は二十五台でありますが、今後の見通しといたしましては、メーカーの供給体制が本格的に整うことと、市場内で使用されているフォークリフトの平均使用期間は五年程度であることなどから、平成二十二年ごろにはすべてのフォークリフトの電動化または低公害化が図れるものと考えております。
▼坂本委員
最後に、築地市場についてお伺いします。
築地市場は施設が老朽化し、狭隘なことから、充電設備を整備するスペースが少ないなどの問題もありまして、いまだに多数の車両が電動化されずに残っております。都としましても、電動化の導入とあわせまして充電設備の整備を計画していると思いますが、一方で、築地市場は、約七年後に当たる平成二十四年度には豊洲新市場への移転を控えております。新市場では新たな輸送形態を検討されていると聞いておりますが、築地市場におきましても、場内物流の効率化を念頭に置いた場内搬送車両の合理的な事業展開を、今から検討していく必要があるのではないかと私は思います。
そこで、築地市場では、移転までの間、小型特殊自動車の排出ガス対策についてどのような方針で臨んでいくのか、お伺いします。
▼中央卸売市場長
築地市場では、全市場の四割を占める約二千七百台の小型特殊自動車が使用されております。豊洲新市場では、自動搬送システムなどの導入を検討しておりまして、場内の物流形態もシステム化され、場内搬送車両の使用台数も減少することが見込まれます。そのため、築地市場については、移転を視野に入れ、電動化を計画的に進めることとしておりまして、充電設備についても必要な範囲で整備していくこととしております。
また、フォークリフトについては、充電設備が不要な低排出ガス車を主体に導入を図っていく考えであります。
これらの取り組みを通じまして、移転時までには必要な小型特殊自動車の電動化及び低公害化への転換が図れるよう努めてまいります。
▼坂本委員
築地市場に代表されます水産市場におきましては、電動化がなかなか進まないと指摘されてきました。条例改正によります規制の効果や低排出ガス車の導入によります選択肢の拡大によりまして、今年度に入って電動化率の向上に弾みがつきまして、環境対策への機運が高まりつつあります。
都は、市場の開設者として、業界の協力を得ながら市場の環境対策への取り組みを積極的に進め、消費者が安心できる卸売市場となりますように今後とも努力してもらいたいと思います。
|
■交通局経営計画チャレンジ二〇〇四 |
▼坂本委員
次に、交通局の決算についてお伺いします。
交通局では、都営地下鉄や都バスなどの局事業の運営を効率的、効果的に進めていくため、その羅針盤として東京都交通局経営計画チャレンジ二〇〇四を策定し、現在これに沿って、局が抱える重要な課題に取り組んでいるわけであります。このチャレンジ二〇〇四の内容を見ますと、大きく財政収支計画、効率化計画及び事業計画の三つの柱で構成され、計画期間は平成十八年度までの三カ年となっておりまして、平成十六年度はこの計画初年度に当たっております。
そこで、今回審議している十六年度決算と、このチャレンジ二〇〇四で挙げている課題の目標達成との関係などを中心に、時間の関係もありますので、地下鉄事業に絞りまして、何点かお聞きしたいと思います。
交通局では、戦後の東京の発展に合わせ、昭和三十五年に開業した浅草線以来、積極的に建設を進めてきました。その結果、東京の地下鉄は、東京メトロと合わせると現在では網の目のように張りめぐらされ、世界的に見ても最も整備された鉄道路線となっております。その一方で、膨大な建設費が重くのしかかり、常に苦しい経営状況が続いてきたわけでありますが、大江戸線で新線建設の時代もほぼ終了し、経営的には将来に向かって苦しいながらも何とか安定軌道に乗せる時期を迎えたといえると思います。その意味で、今後は都営地下鉄の将来の見通しを明確に持ちながら、思い切った経営体質の改善を進める必要があると思い、経営計画を確実に実施し、前進させることが最大のポイントとなると考えます。
そこで、まず、地下鉄の財政収支状況についてですが、チャレンジ二〇〇四に掲げてある収支計画によりますと、平成十八年度までの目標は、経常収支の改善を図るとし、事業別収支計画には、営業収支、経常収支、繰越損益などの赤字幅を年次計画に従って圧縮していくものとしております。
そこで伺いますが、平成十六年度決算との比較では、このチャレンジ二〇〇四の目標がそれぞれクリアされているかどうか、まずお示しいただきたい。また、十六年度決算から見て、地下鉄の財政状況はどのように受けとめているのか、お伺いいたします。
▼交通局長
チャレンジ二〇〇四の計画目標に掲げた数値と平成十六年度決算での数値とを比較しますと、営業収支では、計画が三十億円の赤字に対しまして決算では五十九億円の黒字を確保しております。また、経常収支ベースでは、計画が二百三十億円の赤字に対し、決算では百八億円の赤字となっております。さらに、繰越損益についても、計画が四千九百十三億円の赤字に対し決算は四千七百三十三億円の赤字となり、いずれの数値でも計画目標よりも改善を図っているところでございます。
しかしながら、地下鉄の財政状況は膨大な繰越損失を抱えており、また、約三十七億円の資金不足が生じているなど、民間企業であるならば経営が危ぶまれるような大変厳しい状況にある、このように認識しております。
▼坂本委員
まだまだ極めて深刻な状況にあるわけでありますが、チャレンジ二〇〇四との関係では、数値的には目標を達成し、収支改善に向けて前進していることがわかりました。
次に、収支のうちで収入に大きく影響するのが営業収入でありまして、その前提は何といいましても乗客数がどのくらい見込めるかにかかっているわけであります。決算を見ますと、平成十六年度の乗客数は四線合計で一日当たり二百三万二千人であり、平成十五年度と比較して〇・八%とほぼ横ばいの伸びとなっております。これは浅草線、新宿線の乗客が微減、三田線が微増する一方で、大江戸線が平成十二年度全線開業以来四年を経過して、これまで高い伸び率を示したものが、ほぼ落ち込みを見せてきたことによるのではないかと思われます。
こうした中で、今後の都営地下鉄の経営は、この乗客数の動向に大きく左右されることになるわけでありますが、今年度に入ってからの乗客数の動向と、将来にわたっての見通しをどう見ているのか、お伺いいたします。
▼交通局長
都営地下鉄における今年度四月から九月までの上半期の乗客数は、前年同期に比べまして、大江戸線が四・八%の増となっているのを初め、浅草線、三田線、新宿線とも一%から二%程度増加しておりまして、四線全体では二・四%の増加となっております。
一方、首都圏の大手私鉄の今年度上半期の乗客数は、おおむね一%前後の増加にとどまっていると聞いておりまして、都営地下鉄は大江戸線のネットワーク効果などが寄与しているものと考えております。
また、今後の乗客数の見通しについてでございますが、少子高齢化や低成長経済のもとで、大きな伸びは期待できませんが、都営地下鉄の沿線においては引き続きさまざまな開発が予定されていることなどから、当面は大江戸線を中心に一定の増加が見込まれるものと、このように考えております。
▼坂本委員
大江戸線の好調の中で四線全線でも乗客数が伸びているということで、営業面では都営地下鉄がかなり健闘しており、また、これからも着実に増加が見込めるということがわかりまして、少し安心いたしました。
また財政収支の話に戻りますが、営業収支ベースでは黒字を確保したものの、経常収支ではいまだ赤字が続いており、繰越損失はこのままでは膨大な額のまま必然的に増加し続けることになるわけであります。
そこで、今後、経常収支が赤字から黒字へ転換する時期はどうなのか。また、長期的な収支の見通しをあわせてお聞かせ願いたいと思います。
▼交通局長
地下鉄における経常収支の推移につきましては、試算いたしますと、今後とも当分の間赤字基調が続くものの、支払い利息や減価償却費といった資本費負担が徐々に緩和され、順調にいけば、おおむね五、六年後には黒字に転換できる見込みでございます。
しかしながら、長期的には乗客数の大幅な伸びが見込めない中で、近い将来経常収支が黒字に転換したとしましても、そこから初めて膨大な繰越損失を徐々に解消していくことになるわけでございます。その意味で、地下鉄の収支の根本的な改善にはまだまだ多大な年月を要し、厳しく深刻な状況が続くものと見込まれるところでございます。
▼坂本委員
財務的には経常収支が黒字になってこそ、初めて繰越損失を減少させるスタートラインに立つことができるわけでありまして、しかも、その時点での累積損失は約五千億円と、すぐに解消できない膨大な額となっております。地下鉄は将来的には経営がよくなるのだからといった安易な考え方は捨てて、大変でしょうけれども、歯を食いしばって、できる限り早く黒字転換を図り、また、この繰越損失の解消に向けて一層の経営努力に取り組むことが重要と考えます。そのためにも、経営効率化を図りまして、支出の削減などを積み重ねることが強く求められることになります。こうしたことから、チャレンジ二〇〇四で打ち出している効率化計画の確実な実施が、将来に向かってのステップにつながるものと思います。
そこで、この効率化計画に掲げられておりますものにつきまして、平成十六年度の実施状況はどうなっているのでしょうか、また、計画期間内の今後の取り組みについてどのようにお考えでしょうか、お尋ねいたします。
▼交通局長
チャレンジ二〇〇四における効率化計画の十六年度の実施状況についてでございますが、まず組織の効率化としましては、現場組織の統合を変電区、駅務区で行いまして、スリム化を図ったところでございます。また、外部委託としまして、新たに四駅で駅業務を外注し、委託駅を十九駅に拡大するとともに、電気設備等に関する保守業務の一部についても実施をいたしました。また、こうした効率化対策などを通じまして、平成十七年度期首では常勤職員の定数を百六人削減したところでございます。
今後とも、十八年度までの計画期間中に組織の見直しや外部委託の拡大を行うとともに、人件費の抑制、コスト縮減などにも積極的に取り組みまして、チャレンジ二〇〇四の効率化計画に掲げた目標をぜひとも達成していく考えでございます。
▼坂本委員
かなり努力していることは認めますが、交通事業は民間の事業者などとはっきりと比較されまして、また、民間の血のにじむような努力等を考えますと、まだまだ甘いのではないかと感じます。ぜひ人件費を中心に大胆な支出削減や収入の確保など、計画を前倒ししてでも進めていくような意気込みで取り組んでほしいと思っております。
次に、チャレンジ二〇〇四の三本柱の一つであります事業計画についてお尋ねいたします。
都営地下鉄は、幾ら経営状況が厳しくても、安全性の向上、利便性の向上、快適性の向上など各種のサービスも鉄道事業者としての当然の責務があります。しかしながら、今回の平成十六年度決算を見ますと、資本的支出のうち建設改良費の執行率が八七・九%と低く、その中でも地下鉄建設費を除いた一般改良費は、その予算額が約二百十七億円に対して決算額は約百四十九億円、執行率六八・四%と極めて低い執行となっております。この一般改良費は、バリアフリーや火災対策など直接お客様のための事業が盛り込まれた経費でありますが、安全性や快適性などサービス向上の取り組みに影響しているのではないかと心配されるところであります。
そこで伺いますが、平成十六年度決算の一般改良費の執行率が低い理由はどうしてか。また、チャレンジ二〇〇四の事業計画に盛り込まれた施策の初年度の達成状況はどうなっているのでしょうか、お伺いいたします。
▼交通局長
ただいまご指摘のありました一般改良費の執行率が低かった理由としましては、信号保安装置の更新に際しまして国の認可がおくれたため平成十七年度に繰り越したことや、コスト縮減及び落札差金などにより不用額が生じたためでございまして、チャレンジ二〇〇四に掲げた計画事業にはそれほど影響はないというふうに考えております。
チャレンジの計画事業については、平成十六年度、積極的に推進しておりまして、例えば、地下鉄のエレベーターによる一ルート確保や車両更新など明確な数値目標を設定した六事業については、ほぼ計画どおり達成しております。そのほか、転落防止のための車両連結部のほろ設置や乗りかえ案内板の設置を行うなど、計画の初年度として着実に前進していると考えております。
▼坂本委員
これまでチャレンジ二〇〇四の三本柱の内容に沿って質問をしてまいりましたが、計画の初年度としまして、ほぼ計画を達成し、経営改善に向けて着実に前進していることがわかりました。
一方、このチャレンジ二〇〇四は、十七年度は既に執行中でありまして、最終年度であります十八年度は予算要求の段階に入っているわけであります。その意味では、トータルとして十八年度までの目標達成を考慮しなければならない時期に入ってきているわけであります。また、十九年度以降の新たな計画を作成する場合には、それにつながることも十分念頭に入れる必要があります。
最後になりますが、地下鉄事業の経営改善に向けて、新しい計画の策定も視野に入れながら、チャレンジ二〇〇四の確実な実施に向けて決意を伺いたいと思います。
▼交通局長
都営地下鉄が事業者間競争が激化するなど厳しい環境の中で今後とも発展していくためには、経営基盤の強化とお客様サービスの充実を目指した経営改善が急務でございまして、特に、先ほども申し上げましたように、経常損益の赤字が続き膨大な累積欠損金を抱える財務体質の改善を図ることが極めて重要である、このように考えております。また、利用者のニーズや社会的要請にこたえて、安全対策や福祉、環境対策などの課題にも適切に対応していかなければならないと思っております。
そのためには、今お話しのとおり、まずはチャレンジ二〇〇四に掲げた財政収支の改善、効率化、事業化に向けた取り組みを、それぞれ定めた具体的な目標に沿って十八年度までに確実に達成することが不可欠でございまして、これからも局を挙げて全力で取り組む決意でおります。
一方で、十九年度から始まる新しい計画策定の段階も迫っておりますが、この間の社会経済状況の変化や現計画の実施状況などを十分踏まえながら、次へのステップアップにつながるような形で並行して準備を進めていく考えでございます。
▼坂本委員
大変力強い決意を伺い、大変安心いたしました。ぜひとも都民の足であります地下鉄が健全な経営を維持しつつ、より一層便利で信頼される交通機関として役割を果たすことを期待いたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
|