平成16年度各会計決算特別委員会 総括質疑

山口文江(ネット)
■都有地の活用
  
 ▼山口(文)委員
 東京都は、厳しい財政状態を打破するために、第二次財政再建推進プラン及び第二次都庁改革アクションプランを策定し、複数年度にわたり財政再建を図る計画を進めてきました。その中で、歳入確保の方策の一つとして未利用地の有効活用、売却が示されました。平成十六年度の都有地の売却実績は教育庁を初めとして六十六件、総額百八十六億九千二百万円となっています。その中に都立高校の跡地などの売却も含まれています。
 そこで、まとまった面積があり、地域にかかわりの深い都立学校の跡地などの活用の検討はどのような手順で行われているのか、伺います。
 
 ▼財務局長
 所管局で不用となりました財産は、財務局がまず各局に、他の目的で活用していくかどうかの照会を行いまして、各局の活用予定がなければ、地元区市町村への取得照会を行います。そして、区市町村においても取得意向がない場合には、区市町村以外の第三者に対して売却等の処分を行うこととしております。
 

 
 ▼山口(文)委員
 手順の二つ目として、地元自治体に取得意向の確認をするに当たっては、当該自治体はもとより、市境など広範囲にまたがる自治体を含め、対等かつ丁寧な協議の場を持つことが必要だと思いますが、都の見解を伺います。
 
 ▼財務局長
 先ほども活用の手順について申し上げたところでございますけれども、市境を超えた広域な土地につきましても、それぞれの地元自治体へ取得意向を確認して、適切に現在も対応しておるところでございます。
 今後とも、都有地の利活用につきましては、都民ニーズを踏まえ、効果的、効率的な財産活用の視点から取り組んでまいりたいと考えております。
 

 
 ▼山口(文)委員
 当該自治体だけではなく隣接する自治体に影響が及ぶ場合が多くあることから、隣接する自治体を含めた協議を丁寧に行っていただきたいことと、区市にとって都はまだまだ敷居が高く、対等に物がいえないという実態を耳にしています。今後は、丁寧な協議の場をきちんと設定することを要望しておきます。
 平成十三年に都立大跡地が売却され、大手ディベロッパーによって十九階建てのマンションが建設されるに至りました。その開発に際しては、当時の都市・環境委員会に対し、都と世田谷区が検討して、基本的な考え方に沿った指導をしてほしいとの請願と、周辺に合わせた用途地域に変更してほしいという陳情があり、生活者ネットとしては趣旨に沿った採択がなされることを要望しました。その後、紛争調整も行われましたが、残念ながら、今なお住民による訴訟が続いていると聞きます。
 一方、都立大跡地と同じ世田谷区にあった、旧明正高校の跡地については、平成十六年度の売却前に世田谷区が、都市整備方針の考え方を基本に都市計画決定した防災街区整備地区計画において広域避難場所地区に位置づけ、建築物等の用途制限を課したという例もあると聞いています。
 学校跡地が売却された後の環境が激変することを地域が心配することは当然です。都有地の売却に当たっては、都の役割として従来の環境を維持できるような条件や制限を付すことができないことは至極残念なことです。自治体、地域の状況にも配慮し、住民の合意が図れるよう地域の考え方を尊重し、問題を発生させない進行を心していただきたいと思います。
 一方で、一定程度まとまった用地は地域のまちづくりの問題解決に有用なものもあり、こうした用地については都が率先してまちづくりにも生かしていくことも必要ではないかと考えますが、見解を伺います。
 
 ▼都市整備局長
 お答えいたします。
 都では、多様な行政課題に対応しつつ、地域の活力や魅力を高めるため、みずから積極的にかかわりながら都有地を活用したまちづくりを推進してございます。
 例えば、南青山一丁目地区では、都心居住の推進、少子高齢化対策など、また東村山市本町地区では、良質で低廉な戸建て住宅の供給などを目的とし、まちづくりプロジェクトを実施しております。
 今後とも、関係局や地元区市とも連携し、必要に応じて地区計画等の活用も図りながら、このような取り組みを推進してまいります。
 

 
 ▼山口(文)委員
 十四年度に策定された都立高校改革第二次実施計画が進むにつれ、今後も高校跡地の売却が数多く出てくることが予想されます。売却により公共用地から民間に土地が移り、当然、土地利用の転換ということが想定されるわけですから、地域のまちづくりとの調整を図っていくことが大変重要であると考えます。売却できればよいということではなく、防災の拠点づくり、緑のまちづくり、ノーマライゼーションのまちづくりなどを進めるために、地元住民はもとより、区市や関係局が連携し、都有地を有効に活用していただくことを強く要望します。
 
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■障害者の就労支援
  
 ▼山口(文)委員
 都有地の有効活用の一環として、十五年度から知的障害者の地域生活を推進するための施策が進められてきました。また、同年に重点事業として障害者地域生活支援緊急三カ年プランによる知的障害者グループホーム設置が進められてきています。施設から在宅へと福祉の方向のかじが切られ、高齢者や障害者が地域で安心して暮らし続けるための住まい方としてグループホームに大きな期待が寄せられていますが、十五年、十六年度合わせて都有地活用による知的障害者グループホームの実績と全体の整備状況について伺います。
 
 ▼福祉保健局長
 障害者が地域で自立した生活を送るために、グループホームは大変重要な役割を担っております。このため、都は平成十五年度から、区市町村との密接な連携のもと、都有地を社会福祉法人などに低廉な価格で貸し付けるとともに、障害者地域生活支援緊急三カ年プランに基づく特別助成を行い、知的障害者グループホームの整備を重点的に進めてまいりました。平成十六年度までに公募した都有地活用の実績は四件でございます。
 また、知的障害者グループホーム全体では、平成十五年度は二百八十二人、十六年度は二百七十三人分を整備いたしまして、平成十六年度末の定員は約千七百人となっております。
 

 
 ▼山口(文)委員
 今年度が最終年度になるかと思いますが、ぜひ計画を達成していただきたいとともに、今後もこうした施策に力を注いでいただきたいと思います。
 長い間、障害のある人たちが持ち続けてきた、普通の暮らしがしたいという思いが、少しずつではありますが実現し始めています。障害者自立支援法が制定され、自立した普通の暮らしには当然働くということが含まれ、障害者の就労において、福祉的就労から一般就労のための施策が進められています。教育庁に盲・ろう・養護学校卒業生の就職状況を伺ったところ、約六〇%が授産施設や作業所における福祉的就労であり、一般就労については約二〇%、ことしの卒業生は約三〇%までいったということですが、まだまだ現実は厳しい状況だということです。毎年二万五千人から三万人の障害者の新規採用があるにもかかわらず、雇用率は長年、福祉的就労、一般就労合わせても横ばい状態が続いています。一たん就職しても離職や解雇などが多いということだと思いますが、職場に定着するためには、技能や技術を身につけることも重要なことだと考えます。
 そこで、東京障害者職業能力開発校についてですが、卒業生の就職率は非常に高いと聞いています。障害者を対象とした国立、都営の訓練校は都内に一校しかないとのことで、入学を希望しながら合格しなかった人が多くいるのではないかと思いますが、十六年度の状況はどのようになっているのでしょうか。また、そういう人への対応はどのようにされているのか、伺います。
 
 ▼産業労働局長
 東京障害者職業能力開発校は、身体障害者及び知的障害者を対象とする職業訓練を実施しておりまして、平成十六年度の入校選考の状況は、個々の科目によって違いがございますが、全受験者三百五十五名に対しまして合格者が二百八名、不合格者は百四十七名となっております。
 こうした不合格者に対しましては、東京しごと財団内の心身障害者職能開発センターでの職業訓練や、昨年度から五百人規模の定員で開始いたしました障害者委託訓練を紹介しているところでございます。
 この委託訓練では、同センターがコーディネーター役を担い、委託先の開拓を初め、訓練希望者と委託先のマッチングを行うなど、訓練機会の提供に努めているところでございます。
 

 
 ▼山口(文)委員
 では、心身障害者職能開発センターの十六年度の取り組み及び実績について伺います。
 
 ▼産業労働局長
 心身障害者職能開発センターは、東京障害者職業能力開発校との役割分担のもと、重度身体障害者及び軽中度知的障害者を対象としまして、随時の入所及び修了方式により、個々人の能力や特性に応じたきめ細かな職業訓練、職業相談、就職後の追跡指導等を実施しております。
 平成十六年度の実績でありますが、修了者五十五名のうち就職者はその六割の三十三名でございました。
 

 
 ▼山口(文)委員
 職場に定着するためには、職場体験や人的なサポートなど、実地に即した仕組みが欠かせません。職場で障害者をサポートするジョブコーチの役割が重要だと考えますが、国の事業であるジョブコーチ事業の現状が都内で約二十人というのでは、障害のある人のニーズを満たすことはできません。区市の障害者就労支援センターにおいてもジョブコーチを求める声も多く、就労支援コーディネーターができる範囲で対応していると聞いています。能力開発センターが今後、こうした人材養成を行い、ジョブコーチを増員しながらコーディネート機能をさらに高めることが必要と考えますので、要望しておきます。
 また、指導する健常者、指導される障害者という運営形態ではなく、対等な関係で協力して働くという共同事業所、あるいは社会的事業所といわれる新しい運営形態に取り組んでいる人たちもふえてきました。古くからこうした活動を展開してきた滋賀県では、その運動の広がりによって、事業型共同作業所制度をつくり出しています。福祉工場、授産施設、作業所等の見直しが行われると聞いていますが、今後とも積極的に新しい労働形態に取り組んでいただきたいということを申し上げて、質問を終わります。
 
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