平成16年度各会計決算特別委員会 総括質疑

松村友昭(日本共産党)
■福祉費の決算額
   
 ▼松村委員
 二〇〇四年度、平成十六年度は、長期にわたる景気低迷に加え、小泉政権の年金、医療の改悪、所得税増税など七兆円を超す国民負担が押しつけられるもとで、都民の暮らしと営業を守る予算が求められていました。ところが石原都政の予算は、第二次財政再建推進プラン、第二次都庁改革アクションプランの二つのプランの具体化を進め、民間社会福祉施設サービス推進費補助を初め福祉や教育などの都民施策一千二百億円もの削減を行い、さらに村山大和保健所など五カ所の都保健所の廃止や新宿労政事務所などの都立施設も廃止する予算でした。その一方、住宅局の廃止を初め、公共事業の分野で歩道整備や公園、中小河川などの生活密着型の事業が後退させられました。また、都市再生の名で丸の内再整備、豊洲、晴海などの臨海副都心の再開発が優先され、幹線道路予算は前年度よりさらにふやし九百四十二億円に達するなど、投資的経費は引き続き一兆円規模で高どまりしている逆立ちぶりが目立った予算でした。
 さらに、最終補正予算で二千八百三十八億円の税収増が見込まれることが明らかになりましたが、この逆立ちを正すどころか、都民施策には使わず大型開発予算をさらに積み増しすることまでやりました。
 そこで、決算において、その執行がどうなって何が明らかになったかを、各分科会質疑を踏まえて総括的に伺います。
 

 
 ▼松村委員
 そこで、まず都民福祉についてです。
 平成十六年度は福祉改革ステップ2の最終年度でしたが、石原都政のもとで、福祉改革と称して福祉切り捨てが進められ、この間、廃止された都立施設、事業所は四十三カ所、民間移譲四カ所、さらに、マル福やシルバーパスなどの九項目の経済的給付事業は平成十一年度対比で三百十九億円の減となっていることが分科会質疑で明らかになりました。
 この結果、平成十六年度決算では、一般会計に占める福祉費は十一年度の八・四%から七・九%へと、石原都政のもとでも最悪のところまで落ち込みました。
 改めて伺いますが、高齢福祉費、子ども家庭福祉費、心身障害者福祉費、施設整備費の決算額の推移が分科会資料として出されていますが、この資料によると、平成十六年度決算額はそれぞれ十二年度対比でどうなっているでしょうか、お答えください。
 
 ▼福祉保健局長
 福祉費の決算額についてのお尋ねでございますが、平成十六年度決算を十二年度決算額と比べた場合、高齢福祉費では約百三億円の減、子ども家庭福祉費では約百八十二億円の減、心身障害者福祉費では約六十八億円の減、施設整備費では約百三十二億円の減でございます。
 なお、福祉費について、例えば子ども家庭福祉費では、平成十二年度から十六年度までの間に児童扶養手当や公立保育所運営費の区市町村移管などがございまして、さまざまな制度改正が行われているところでございます。予算額や決算額を比較するための前提となる条件は大きく変化していることを申し添えさせていただきます。
 

 
 ▼松村委員
 福祉費は決算額も構成比も大きく落ち込んでおり、今答弁があったように、高齢者福祉、子ども家庭、障害者福祉、そして施設整備のいずれの分野も減額となっています。局長からは、答弁を求めてないことまでいろいろ発言がありましたけれども、分科会質疑でもそのような発言がありましたので、私は改めて反論しておきたいというふうに思います。
 これは分科会質疑でもありましたけれども、認知症高齢者や知的障害者のグループホーム、子ども家庭支援センターなどは決算額がふえているというふうにこのときも表明しましたけれども、認知症高齢者グループホームは、十六年度実績で全国平均では高齢者十万人に対して三百二十七人の定員数が整備されているんですね。ところが東京は、わずか八十四人分にすぎません。整備率は全都道府県で最下位です。大きな立ちおくれをしているのが実態です。また、障害者施設緊急整備も計画どおり進んでおりません。障害者の地域自立生活支援センターは、充実すると約束しておきながら、国庫補助の一般財源化に合わせて十六年度に都の運営費補助を打ち切り、六十五カ所の整備目標が、現在三十九カ所にとどまっています。子ども家庭支援センターも同じです。十六年度六十二カ所の目標に対し、到達が五十一カ所です。
 こういう大きなおくれがありながら、今、局長は、国の制度の変更に伴い、児童扶養手当事務の区市移管や、公立保育所の運営費の一般財源化により決算額が大幅に減少したといいましたけれども、減っているのは子ども家庭だけでなく、高齢者も、子ども家庭も、障害者も、施設整備も、今ご答弁いただいたように大幅に、いずれの分野でも減額になっているんです。それでは、そういう国の制度が変更したから前提となる条件が違うなどといいますけれども、ほかの府県では、やはり同じようにどこも減らしているのかということなんでしょうか。
 私、調べてみましたけれども、福祉や民生費の構成比は、この首都圏で、埼玉県が十一年度七・七%から十六年度九・一%にも伸びています。神奈川県も、七・八%から十六年度には九・四%に伸ばしています。構成比では、この埼玉、神奈川に東京都は完全に逆転されています。千葉県、これも五・九%から六・三%へと伸ばしているんです。福祉を守るという自治体としての姿勢が問われていることを私は申し上げたいというふうに思います。
 さて、重要なことは、こうした福祉費の減額、後退が都民生活にどれほど重大な悪影響をもたらしているかということです。経済給付事業の廃止や切り下げで十二年度から十六年度までに二十四万人の高齢者や障害者、母子父子家庭が影響を受け、五年間の影響額、これは総計すれば一千百八十四億五千三万円にも及ぶ負担増となっているのです。
 また、シルバーパス、とりわけ二万五百十円の負担が重く、全面有料化前の十一年度は七十歳以上の高齢者の七割以上がシルバーパスを利用していたのに、十六年度、この決算では五三・八%まで低下しているんです。
 また、十六年度は、私立保育園などに対する民間社会福祉施設サービス推進費の削減、改悪が行われ、大きな問題となりました。ある私立保育園では、十六年度五百万円、さらに今年度一千万円も削減され、ベテラン保育士が三名退職ということになったそうであります。保育の質の確保に大きな支障を招いています。
 こういう都民の痛み、苦しみに思いを寄せて福祉の拡充を進めることを、私は強く求めるものです。
 
▲ページのトップへ
■第二次財政再建推進プラン
   
 ▼松村委員
 このように福祉予算は、当初予算で減らす、補正予算には計上しない、その上、予算執行においてもさまざまな制約を加え、予算を使い残した不用額は平成十六年度も三百四十一億円、三百四十一億三千二百万円となっていることは、都民にとって重大な問題といわなければなりません。
 こうした福祉予算など都民施策の切り捨てのために最大の口実として使われたのが、赤字だ、都税収入の落ち込みで巨額の財源不足が生じるということでした。そして、二次にわたってつくられたのが財政再建推進プランでした。
 そこで、伺います。第二次財政再建推進プランでは、三カ年の期間中、一兆一千三百億円もの巨額の赤字だ、財源不足だとしていましたが、第二次再建推進プラン期間中の都税収入は来年度も本年度並みとすると合計どのぐらいと見込まれますか。ご答弁いただきたいと思います。
 
 ▼財務局長
 第二次財政再建推進プランの平成十六年度の都税収入見込み額は三兆七千九百億円、平成十六年度の都税収入決算額は四兆二千五百二十九億円であります。その差額は四千六百二十九億円であります。今後の税収を見込むことは難しく、現段階でプラン三カ年の増収額を議論することには余り意味があるとは思っておりませんけれども、本決算を前提として機械的に計算するならば、四千六百二十九億円の三倍、一兆三千八百八十七億円となります。
 

 
 ▼松村委員
 今後の都財政の見込みについては議論することが意味がないなどという局長答弁ですけれども、現にこの第二次財政再建推進プランというのは、十四年度決算が出て、その数字をもとに第二次財政再建推進プランは三カ年計画を見込んでつくられたのではありませんか。ですから、今の時点で既に十六年度決算が出たんです。しかも、これは既に来年度、十八年度予算編成に向けて副知事の依命通達、今までのマイナスシーリングをゼロシーリングにする、十八年度も十七年度予算並みということをほぼ皆さん方は認めているというか、そういうことではないでしょうか。
 そして今、仮にといいましたけれども、それは出ていますから仮にではないんです。既にどのぐらいこの第二次財政再建推進プランとの乖離が生まれているか調べました。こちらです。(パネルを示す)はっきりしております。これがプランよりも膨れ上がった都税収入の既に見込み額で、その合計は期間中のプランよりも一兆三千八百四十五億円、こういう巨額なものになっているではありませんか。分科会質疑のときには盛んに、いや、そういう都の税収は好転しているけれども、経常収支比率がまだ目標の八〇%どころか九二%台だ、また隠れ借金もあるとか、いろんなことをいいました。しかし、私そこで、これも図を見ていただければ、今、一般経常収支比率、何がそれを圧迫しているかといえば、既にこの人件費、扶助費、この扶助費というのはほぼ、対比を見ればほとんど変わらないんです。公債費、これがやはり経常収支比率を悪くしているというか、押し上げている要因であるということがここからもはっきりいたします。
 しかし、この経常収支比率の中の公債費というのが、皆さんどのぐらいか--これは私調べてみましたけれども、二一%と過去最高になっているんですね。これは革新都政とよく比較したり財政で論議しますけれども、これをはるかに--そのときには一六%ぐらいですから、二一%になっている。私は、過去最高の公債費負担になっていると。しかもこれは、過去の借金返しが今そうなっていて、石原都政は余り責任がないなどというのはもはやいえない事態となってきているんです。この公債費を膨らましているのは、石原都政の大型開発などにつぎ込んだ、そういう借金が増し積みされているということも私は指摘しておかなければならないというふうに思います。
 それからもう一つ、その隠れ借金、これについても一言いいますけれども、この隠れ借金もうのみにするわけにはいきません。第一に、市街地再開発事業の欠損金も多摩ニュータウンの欠損金も減債基金積立金の不足も、もとはといえば、都の財政の身の丈を超えた大型開発のツケではありませんか。その清算のツケを都民に押しつけることは私は間違いだと思います。
 それから、他会計からの借り入れについても、埋立会計について、これについていえば、もともとこれは都民の財産なんです。一般会計が大変なときにはこれを使うのは当然のことです。
 実際、他の自治体、例えば私も調べてみましたけれども、神戸市では、ポートアイランドなどの埋め立てで生まれた剰余金を一般会計に毎年納付金として納入しています。したがって、隠れ借金というべき性格のものではありません。しかも、埋立会計に返還しても、既にもう赤字の臨海開発の穴埋めに使われているだけではありませんか。減債基金の積立金が五千百九十九億円も不足しているといいますが、もともと利息が実際の金利より高く設定されているなど、過大なものであります。
 さらに、積み立て不足が重大だというのであれば、都市再生や大型幹線道路に大盤振る舞いするのはやめて償還資金などに優先的に充てるというのは当然ではないんでしょうか。それをせずに隠れ借金だといって都民施策にしわ寄せするのは、私は許されないというふうに思います。
 そこで、今問われていることは、この税収増を都民のためにどう使うかであります。
 
▲ページのトップへ
■シルバーパス
   
 ▼松村委員
 そこで、シルバーパスは、利用者が有料化前の七割から五割台まで後退してしまったことは本当に重大です。元気高齢者を応援する施策がこれでいいのでしょうか。
 しかも、今後、国の税制改正の影響で七万七千人の方が、千円の負担から二万五百十円の大きな負担となってしまい、ますます利用者が激減することは必至であるといわざるを得ないというふうに思います。
 これまで、税制改正に伴うシルバーパスへの影響を認め、慎重に対処してまいりますと答弁していますが、どう対処するのでしょうか。
 
 ▼福祉保健局長
 シルバーパスにつきましてですが、先般の第三回定例会の本会議におきましてご答弁申し上げたとおりでございます。
 税制改正の影響がシルバーパスの利用者負担に生じますのは平成十八年でございますので、税制改正の趣旨なども慎重に踏まえて対処してまいります。
 

 
 ▼松村委員
 慎重に踏まえ、対処していくということですから、早くやはり、十八年度といったら予算、局要求がもう出るんじゃないですか。この場できちっと明らかにしていただきたいと思いますけれども、よろしくお願いします。
 そして、所得に応じた三千円パスや五千円パスを導入することが重要になっています。多くの高齢者のこの切実な要望をどう受けとめていますか。
 
 ▼福祉保健局長
 シルバーパス事業は、若年世代との間に負担の不公平があるなどの課題がありましたことから、平成十二年度に見直しを行ったものでございます。
 現在、多くの高齢者がパスの発行を受けまして社会参加と生きがいの活動に活用されております。パス本来の目的に十分沿っているものと考えております。
 

 
 ▼松村委員
 本当に重い負担で、二万五百十円、これはやはり所得などに応じて負担を軽くするのが本来のシルバーパスという、この精神ではないか、強くこの実現方も要望しておきます。
 
▲ページのトップへ
■学校改修問題
 
 ▼松村委員
 これまで我が党は、学校の耐震補強等、老朽校舎の改修について取り上げ、都として支援を行うことを求めてきました。それは、学校施設の問題は、これからの日本を担う子どもたちに安全で快適な教育環境をどう保障していくのか、こういう重要な問題だからです。さきの第三回定例会では、村松決算委員が取り上げましたが、改めて、なぜ東京都の支援が求められているかを理解していただくために、実態を示す写真を用意しましたので、ちょっと見てください。
 これは、余りにも雨漏りがひどくて、バケツ六つも並べている、こういうある中学校です。こういう状況を、本当に私たちが見なければならないというふうに思います。それから、こちらですね。これを見てください。天井から雨漏りをして、こちら側の、黒板なんです、黒板、余り雨が降ると天井から雨漏りがして黒板が使えない。この黒板にひさしをつけてほしいという、こういう訴えが--本当に笑い事じゃないんです、生徒から寄せられている。村松委員も、現場で本当にこういう大変な実態、これをぜひ写真に撮っていってくれと子どもたちからいわれて撮ったものであります。
 教育長に伺いますが、こうした事態を放置してよいと思いますか。
 
 ▼教育長
 お話の区市町村立小中学校の耐震補強あるいは改築等につきましては、設置者であります区市町村が、学校施設の老朽化の状況に応じまして国の助成制度を活用して対応しているところでありまして、都として独自の補助を行うことは困難であります。
 都教育委員会としては、区市町村が公立小中学校の改築、改修が促進できる財源を確保できますよう引き続き国に対して要望してまいります。
 

 
 ▼松村委員
 我が党はもちろん市町村議会で繰り返し取り上げ、改善を求めてきています。しかし、現実には、多摩の市町村の場合、税収が二十三区と比べて三分の二の水準であることなどから、改善は遅々として進んでいないのが現状です。
 そこで、総務局長にも伺いますが、十六年度の東京都に対する重点要望で多摩市長会はどのような要望を出していますか。そして、これにこたえることが必要だというふうに思いますが、どうでしょうか。
 
 ▼総務局長
 東京都の予算編成に対します平成十六年度の市町村要望におきましては、公立小中学校の改築事業に対する国庫補助の充実に加え、都独自の補助制度の創設が要望されております。
 公立小中学校の施設整備は、設置者である市町村の責任において行われるものでございまして、その所要経費につきましては、国の補助制度や地方債制度、また地方交付税において措置されております。市町村におきましては、施設の老朽化の状況等に応じまして国の補助金等を活用していると承知しております。
 総務局では、これらの義務教育施設を含めまして、道路や公園など施設整備全般にわたる市町村の要望につきまして、厳しい都財政の状況や各市町村の実情を踏まえ、適切に対応しているところでございます。
 

 
 ▼松村委員
 国の補助を受けてやっているということは、市町村が実施するという実情は私も重々承知しているんです。しかし問題は、国の二分の一補助では市町村の厳しい財政状況では何ともしがたいから、繰り返しこういう要望を出しているんです。市町村負担分に地方交付税が充当されているといっても、改善が進まないのは、一つは、不交付団体といっても決して裕福ではないわけですね。同時に、交付を受けているといっても超過負担や利払いなど重い負担になっている。こういう実態をきちっとつかまなければなりません。
 ですから、なぜ東京都が支援しなければならないのか。私は、東京の子どもにも行き届いた教育環境で勉強できるようにすることが広域行政としての当然の仕事だというふうに思いますし、シビルミニマム実現の一つであると考えます。
 それから、多摩地域は首都である東京のベッドタウンとして四百万人近い都民が住み、さまざまな行政需要を抱えているんです。人口急増期にも、ふえました。地方と比べて学校数も生徒数も全然違うんです。比較にはなりません。全国の一律補助では間に合わないわけであります。二十三区が都区財調で需要算定の合意の方向と聞いています。当然なことだと思いますけれども、多摩の市町村は、先ほどもいいましたけれども特別区と比べても厳しい財政状況に置かれているんです。そういうことから、都が学校改修、耐震補強の支援に踏み出すことを重ねて要望するものです。
 
▲ページのトップへ
■特別区消防団分団本部の整備
 
 ▼松村委員
 最後に、震災対策はもとより、頻発する都市災害などで消防団が果たす役割は一層重要性を増し、消防団の強化が求められております。そこで、消防団分団本部の整備の進捗状況はどうなっているのかを伺います。
 また、あわせて、もっと早期に整備が完了できる計画を私は持つべきだというふうに思いますけれども、この二点についてあわせてお答えいただきたいと思います。
 
 ▼消防総監
 特別区消防団の分団本部数は四百三十九であります。このうち、分団本部の機能を有する施設につきましては、平成十六年度末現在、二百四十七棟であります。また、平成十七年度は、単独で整備するもの十九棟、職員待機宿舎等との合築により整備するもの二棟、計二十一棟を整備いたします。
 分団本部施設の中には老朽化しているものや狭隘となっているものもあるため、その整備は重要な課題であると認識しております。このため、引き続き、構造、老朽度、狭隘度等を勘案いたしまして、順次計画的に整備してまいります。
 

 
 ▼松村委員
 都民生活の実態は厳しく、本当にみんな困っています。このときに都財政は好転しています。むだな大型開発に使うのではなく、都民要望にこたえる予算の使い方に改めるべきです。今こそ都民生活を守るという自治体本来の立場に立ち返ることを強く求め、質問を終わります。
 
▲ページのトップへ

戻る