村上英子(自民党)
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■少子・高齢化対策 |
▼村上委員
まず、小児救急について伺います。
子どもは、夜間に急に発熱したり腹痛を起こしたりすることが多いものです。たとえそれが軽症であっても、親としては当然心配ですし、急に重症化する可能性もあります。家庭や地域に育児の経験者が少なくなり、子育てのアドバイスをしてくれる人が周りにいない状況の中で、こうした親の不安に対応する仕組みづくりが求められています。
しかし、その一方で、子ども数の減少に伴う小児科医師の減少や、身近な地域で子どもを診てきた医師の高齢化など、小児救急医療の不足が問題となっております。
私は、分科会において、安心・安全な出産の確保という視点から、周産期医療体制について質問を行ってまいりました。出産後においても、子どもの健康を守るため、現在の限られた医療資源を効果的、効率的に活用し、急病時に症状に応じた適切な医療を受けられる体制を整備することが必要と考えます。
そこで、都の小児の救急医療体制確保の基本的な考え方についてお伺いいたします。
▼福祉保健局長
小児救急医療体制の確保につきましては、急病の子どもが地域で症状に応じた適切な医療を受けることができますように、入院を必要としない軽症患者に対応する初期救急は区市町村、入院を必要とする中等症や重症の患者に対応する二次救急は東京都という役割分担のもとに、体系的な整備を進めております。
あわせて、育児経験の少ない親がふえていることなどから、インターネットで子どもの病気の基礎知識、病気やけがの対処の仕方につきまして、東京都こども医療ガイドなどを通じて情報提供を行い、保護者の不安解消に努めているところでございます。
▼村上委員
小児救急に関して総合的に取り組まれていることはわかりました。しかしながら、現在の小児救急医療体制が必ずしも充足されているとは考えられません。私のところには、例えば、お子さんが骨折していたにもかかわらず診療してもらえなかった、症状が重いのに軽症の方の診療が終わるまで待たされたなど、親御さんからさまざまな声が届いております。ぐあいの悪いお子さんを抱え、重い病気なのではないかとの不安から、入院ができるような二次救急医療機関に駆け込んでしまう気持ちは理解できるところです。しかし、二次救急医療機関に症状の軽い患者さんが集中してしまい、本当に診療が必要な患者さんが、結果として長く待たされるようなことになっているのではないでしょうか。
二次救急医療機関が、入院が必要な患者さんを治療するという本来の役割を果たし、体系的に整備した小児の救急医療体制を有効に機能させるためには、夜間に、身近な地域で、ちょっと体調を崩した子どもを診てくれる急患センターなどの初期救急が必要だと思います。すべての区市町村で、三百六十五日、夜間の初期救急の体制が整備されるよう、都も支援していくことが重要であると考えます。
小児初期救急医療事業の取り組みの実績と今後の都の方針についてお伺いをいたします。
▼福祉保健局長
小児の初期救急医療体制の整備に当たりましては、身近な地域において、都民にわかりやすく、利用しやすい仕組みとすることが大切でございます。このため、都は、平成十四年度から、区市町村が夜間急患センターなどの決まった施設で行う小児の初期救急体制の整備を支援いたしまして、十六年度からは、複数の区市町村が共同で実施する場合も補助対象に加えたところでございます。
現在、二十三の区市で事業が実施されておりますが、今後すべての区市町村において、地域の実情に応じた小児初期救急医療体制の整備が進められますよう、積極的に取り組んでまいります。
▼村上委員
次に、高齢者対策についてお伺いをいたします。
現在、都民のおよそ五人に一人が高齢者ですが、十年後の二〇一五年には団塊の世代が六十五歳以上となり、都民の四人に一人が高齢者になると予測されています。現在、都内には六十五歳以上の高齢者の方がおよそ二百二十万人いらっしゃいますが、そのうちの一六%、およそ三十六万人が要介護認定を受けています。また、要介護高齢者の六割を超える方が何らかの認知症の症状を有しているというデータも示されております。
今後、要介護高齢者の増加が確実に見込まれる中で、認知症高齢者への対応は最重要課題です。認知症は、何も特別な病気ではなく、高齢になれば、体が衰えるのと同時に、だれもが発症する可能性の高い病気です。しかしながら、現在ではいまだに有効な治療方法も確立されておらず、また、効果的なケアの手法も十分には普及していないのが現状です。
こうした中で、スタッフとともに少人数で共同生活を送ることにより、家庭的な雰囲気の中で必要なケアを受けることができるグループホームは、認知症の高齢者を支える重要なサービスの一つであり、認知症の進行の抑制や症状の緩和にも効果が高いことが実証されてまいりました。自宅では昼と夜が逆転し、問題行動が目立ったおばあちゃんが、グループホームに入居してしばらくすると、すっかり落ちついて、他の入居者と仲よく役割を分担しながら、とても穏やかに共同生活を送るようになったというお話を伺っております。
私は、このような認知症高齢者グループホームを都内にもっともっとふやしていくこと、さらには、地域ごとの高齢者人口も踏まえ、区部と多摩地域との地域的な隔たりがないように整備していくことが必要と考えます。都はこれまでにも、民間企業に対する独自の補助制度の創設など、グループホームの整備を進めてきましたが、この取り組みを一層促進するため、昨年度から認知症高齢者グループホーム緊急整備三カ年事業を開始しています。
そこで、まず、この緊急整備三カ年事業について、都の基本的な考え方と取り組み状況についてお伺いをいたします。
▼福祉保健局長
平成十六年度から実施しております認知症高齢者グループホーム緊急整備三カ年事業は、高齢者が認知症になっても地域で安心して暮らし続けることができますように、地域バランスに配慮しながらグループホームの整備促進を図るものでございます。
こうした趣旨に基づきまして、高齢者人口に対する整備率の低い区市町村につきましては、補助率を引き上げるなどの支援を行うことにより、地域偏在の解消を図るとともに、平成十八年度までに四千人分の整備を目指しているところでございます。
本年十月現在、二千七百二十八人分まで整備が進んできておりまして、今後とも、区市町村と連携しながら、目標達成に向けて取り組んでまいります。
▼村上委員
グループホームの総量をふやしながら、地域による隔たりも緩和していこうという三カ年事業の基本的な考え方は承知しました。引き続き計画の達成に向け、なお一層の努力をお願いしておきます。
さて、先ほどもお話ししたとおり、今後高齢化がさらに進行する中で、認知症高齢者もさらに増加していくことが予想されます。来年度末までの三カ年事業にとどまらず、ふえ続ける認知症高齢者を地域で支えるためのサービス基盤の整備が急務です。認知症になっても高齢者が安心して生活できるよう、グループホームの整備を一層充実する必要があると考えますが、都の見解を伺います。
▼福祉保健局長
お話のとおり、高齢化の進展に伴いまして、都内の認知症高齢者は今後さらに増加していくことが見込まれております。グループホームのさらなる整備促進が非常に重要な課題と考えております。そのため、都は、本年度から、土地所有者等が建物を新築してグループホーム運営事業者に賃貸する場合にその整備費を補助する、オーナー創設型補助を開始いたしました。また、国の施設整備費補助金の交付金化に伴う単価の引き下げに対しまして、従来の補助水準を維持するため、都独自の加算措置を講じているところでもございます。
今後は、本年度から区市町村がグループホームの整備主体に位置づけられたことも踏まえまして、都としての効果的な支援のあり方について検討してまいります。
▼村上委員
これからも創意工夫を凝らしながら整備促進に努めていただきたいと思います。
さて、今般の介護保険法の改正により、「痴呆」という用語が「認知症」に改められるなど、認知症に関する都民の関心は高まりつつありますが、残念ながら、認知症に対する正しい知識や理解が都民の間に十分浸透しているとはまだまだいいがたい状況です。
都は現在、高齢者の自立と尊厳を支える社会の実現に向け、東京都高齢者保健福祉計画を策定中と伺っております。その中で、グループホームを初め、小規模多機能型居宅介護などの認知症ケアのための新たなサービスの基盤整備を進めるなど、認知症高齢者とその家族が、地域の人々の理解と協力を得ながら、住みなれた地域の中で安心して生活できるよう、総合的な認知症対策に取り組まれるよう要望いたします。
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■映像文化の振興 |
▼村上委員
先日、東京国際映画祭が渋谷を中心に盛大に行われ、その様子はテレビや新聞などで大きく報じられました。十八回目を迎えた東京国際映画祭は、アジアで最大規模の映画祭であり、東京の秋の一大イベントとして定着しております。ことしは昨年をはるかに上回る六十五の国と地域から五百八十六作品の参加があり、観客数は約二十七万人に及んだと聞いています。私も、開催地である渋谷区民としてその動向に大きな関心を持っており、カンヌやベネチアの映画祭のような世界的な文化イベントに発展することを期待しております。
映画などの映像は、総合芸術として東京の文化を発信する上で極めて効果的なものです。都は、東京国際映画祭を初めとする映像に関する施策をさらに充実すべきと考えますが、まず、これまでの取り組みの状況についてお伺いをいたします。
▼生活文化局長
東京都は、映像文化の発展、国際文化交流の推進などを目的にいたしまして、東京国際映画祭に対して昭和六十年の第一回から支援を行っております。コンペティション部門を共催しまして、グランプリ作品には都知事賞を授与しております。
平成十三年度からは、アニメビジネスの総合見本市である東京国際アニメフェアを実施いたしまして、また、平成十六年度には、アジアの新しい才能の発表、発掘の場として、ショートショートフィルムフェスティバルアジアを新たに開催しております。またさらに、都内におけるロケーション活動を支援するため、平成十三年度から、撮影に関する相談窓口であります東京ロケーションボックスを開設しております。
▼村上委員
映画祭などを通じた発信とあわせ、撮影などの制作の支援も重要です。東京都が石原知事の発案で東京ロケーションボックスを設置し、国内外の映画やテレビドラマなどの撮影を支援していることは非常に意義のあることと考えます。この東京ロケーションボックスの相談実績はどのようになっているのでしょうか、お伺いいたします。
▼生活文化局長
東京ロケーションボックスの平成十六年度の相談件数でございますが、三千八百八十四件でございまして、崔洋一監督、ビートたけし主演の映画「血と骨」では、都有地での撮影の便宜を図るなどの協力を行っております。
相談件数は年々増加しておりまして、開設から十六年度末までの合計は一万二千九百七十三件、撮影許可の件数も七百八十二件となっております。
また、昨年六月には、窓口を第一庁舎の二十六階から都民情報ルームのある三階に移しまして、利便性の向上を図ったところでございます。
▼村上委員
東京を世界にPRするためには、映画を初めとする映像の活用が有効です。「冬のソナタ」などの韓国ドラマが人気となって、日本にいわゆる韓流ブームが起こり、韓国への旅行者が増加したように、映像の持つ影響力ははかり知れないものがあります。東京を撮影した作品が世界的にヒットすることにより、東京の魅力が世界に広まり、さらに海外からの観光客の増加にもつながるといった一石二鳥の効果も期待できます。
東京ロケーションボックスは、海外からの撮影の誘致に力を入れ、その充実を図るべきであると考えますが、いかがでしょうか。
▼生活文化局長
東京ロケーションボックスでございますが、海外からの撮影を誘致するため、国際フィルムコミッショナーズ協会などに加盟しまして、海外でのPRにも努めております。その結果、平成十六年度の海外からの相談件数は、前年度の百十七件から百六十一件にふえまして、今回の東京国際映画祭のクロージング作品となりました日韓合作映画「力道山」などの撮影支援が実現いたしました。
また、昨年度から、映像制作に関するノウハウを持ち、英語での対応が可能な民間事業者に業務の一部を委託いたしまして、体制の強化を図っております。東京の魅力を高め、さらに海外に発信するため、今後も、映画制作への支援を初めとする映像文化の振興に取り組んでまいります。
▼村上委員
映画を中心とする映像文化は、文化振興の面だけでなく、観光振興や産業振興という面からも大変魅力的な分野といえます。シティーセールスとあわせて海外でのPRを行うなど、観光施策との連携をさらに強め、世界を視野に入れた施策の充実に努めていただくよう要望いたします。
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■東京教師養成塾と東京未来塾 |
▼村上委員
次に、教育問題についてお伺いいたします。
国づくりは人づくりからといわれるように、優秀な人材を育成するための教育改革の推進と充実は、我が国の発展にとって不可欠のものです。昨年四月に都教育委員会が策定した東京都教育ビジョンでは、教育が戦後の我が国の飛躍的な発展を支える大きな原動力となってきたと述べております。また、二十一世紀の東京、ひいては日本の創造的発展を支える人間の育成の視点に立って、これからの教育のあり方を明らかにしていくことも示されています。
学校教育の充実には、直接の担い手である教員の資質向上に負うところが極めて大きいと考えます。変化の激しいこれからの時代にあって、子どもたちの生きる力を育成するためには、魅力あるすぐれた教員を確保することが重要です。また、我が国が今後とも創造的な発展を続けるためには、日本の将来を託すことができる改革型リーダーとしての資質を持つ人材を育成することも大切です。
そこで、都教育委員会が昨年度から新たに取り組まれた事業の中から、特に人材育成の観点で進められた東京教師養成塾と東京未来塾の事業について質問いたします。
まず、東京教師養成塾について伺います。
東京教師養成塾は、これまで大学などがその役割を担ってきた教員養成について、都教育委員会が、教員を養成している大学や区市町村教育委員会と連携し、高い志と実践的な指導力を持った教員を養成するため実施している、全国に先駆けた事業と聞いております。現在は、昨年入塾した第一期生が三月に養成塾を修了し、四月から各学校で教壇に立ち、教員として教育実践に取り組んでいるわけです。
そこで、教師養成塾の取り組みとその評価についてどのように認識しているのか、また、その結果を踏まえ、今後どのように取り組んでいくのかについてお伺いをいたします。
▼教育長
東京教師養成塾では、一年間にわたります特別教育実習や体験活動等の講座を通しまして、児童理解を深め、実践的な指導力や柔軟な対応力を身につけさせるとともに、教員としての高い志を持った人材の育成に努めてまいりました。
この四月から教壇に立っております第一期生につきましては、年間を見通した取り組みができること、児童の実態に応じた適切な対応ができることなど、学校から肯定的な評価を得ているところでございます。
今後とも講座内容等の一層の充実を図るとともに、大学、区市町村教育委員会及び教育実習校との連携を深めることによりまして、質の高い教員の育成を目指してまいります。さらに、教員を志望する大学生等に講座の一部を公開いたしまして、養成塾生とともに学ぶ場を設けるなど、高い志を持った、より多くの教員を養成する機会を提供してまいります。
▼村上委員
次に、東京未来塾についてお伺いをいたします。
東京未来塾は、都教育委員会が首都大学東京及び都内の高等学校と連携し、高校生を対象として、日本の将来を担う改革型リーダーとしての資質を持つ人材の育成を目指す、全国に先駆けた新たな取り組みと伺っております。先ほどの教師養成塾と同様に、昨年度の第一期生五十名が、昨年四月からことしの三月にかけてさまざまな講座や活動に取り組んできたことと思います。
そこで、東京未来塾の成果をどのように認識しているのか、また、今後どのように進めていくのかについてお伺いをし、私の質問を終わります。
▼教育長
東京未来塾では、課題解決学習や体験学習等の講座を通しまして、課題解決能力や幅広い教養、社会貢献の志などを持った人材の育成に努めてまいりました。現在、第一期生が首都大学東京等に進学いたしまして、東京未来塾で学んだことをもとに、専門的な課題に意欲的に取り組んでおります。
都教育委員会は、今後とも講座内容の一層の充実を図るとともに、首都大学東京や高等学校等との連携を強め、二十一世紀の東京の創造的発展を担い得る若い人材の育成に努めてまいります。
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