チルドレンファーストの社会を
都立総合芸術高校に舞踏科を |
松葉 多美子(公明党) |
■文化振興 |
私は、子ども最優先、いわゆるチルドレンファーストの社会を目指す立場から質問させていただきます。
初めに、文化芸術振興策について伺います。
質問1
都は、平成十六年度から子ども向け舞台芸術参加・体験プログラム事業を始めました。これは、次世代を担う子どもたちが芸術と直接触れ合うことによって、文化を創造する心をはぐくむことを目的としています。舞台芸術の鑑賞だけでなく、学校や児童館など、子どもたちの身近な施設に芸術家が出向くアウトリーチも行っています。
先日、私も、江戸東京博物館で行われた狂言の体験プログラムを拝見させていただきました。江戸東京博物館に展示されている芝居小屋中村座の前という江戸情緒あふれた場所に即席の舞台をつくり、狂言師が子どもたちにわかりやすく解説を加えながら狂言を演じていました。その後、子どもたちも直接指導を受けて、謡や立ち居振る舞いなどを体験していました。子どもたちが目を生き生きと輝かせて大きな声で演じている姿は、とても印象的でした。
また、能楽師の大倉正之助先生にもお会いしてまいりました。大倉先生は、子どもたちの真剣さや日々変わっていく姿に、むしろ自分たちの方が感動するんですと語ってくださいました。文化芸術振興のすそ野を広げる大変重要な事業であると実感しました。
石原知事も大変お忙しいとは思いますが、ぜひ一度、子どもたちの様子をごらんいただく機会をつくっていただければと思います。
現在、子ども向け舞台芸術参加・体験プログラム事業は、芸術劇場と江戸東京博物館の二カ所で実施されておりますが、区や市の施設も利用して、都内全域の子どもたちが参加できるよう事業を拡大すべきであると考えます。所見を伺います。
答弁1
▼生活文化局長
子ども向け舞台芸術参加・体験プログラム事業についてでございます。
この事業は、芸術家が学校や児童館などに出向きまして実技指導等を行い、その成果発表や鑑賞を都立文化施設で実施するものでございます。子どもたちが身近な施設で本物の舞台芸術を体験することによりまして、創造の楽しさや喜びを感じ、芸術に対する理解が深まるものと考えております。
都としては、厳しい財政状況ではありますが、創意工夫を凝らし、区市町村の協力を得ながら、多摩地域を含めたできるだけ多くの地域でこの事業を実施してまいります。
あわせて、この事業の予算は、年間三千五百万円しかありません。予算の大幅アップが多くの文化芸術団体等からも求められております。強く要望をしておきます。
質問2
一方、国の事業には、子どもたちがすぐれた舞台芸術を鑑賞する本物の舞台芸術体験事業や学校への芸術家等派遣事業などがあります。ある芸術家の方は、東京の子どもたちにこそ、もっと触れさせたいとおっしゃっていました。しかし、実施回数の制約から、東京ではどうしても子どもたちが参加する機会が少なくなってしまいます。
都は、この事業の回数増加を国に要望するとともに、区市町村と連携し、都内の芸術家が子どもたちと直接触れ合う機会をさらに拡充していくべきだと思います。所見を伺います。
答弁2
▼生活文化局長
芸術家が子どもたちと触れ合う機会の拡充についてでございます。
都内では多くの芸術家が活動しておりまして、区市町村が中心となって、子どもたちが芸術家等と直接触れ合う機会をさらに増していくことが重要と考えております。都としても、区市町村が学校への芸術家等派遣事業などの国の補助制度を活用しまして、これらの取り組みを一層展開できるよう、国に要望してまいります。
さらに、アーティスト支援のホームページでございますアートインデックスを活用しまして、子どもたちのための活動を行っている芸術家等の情報を広く提供するなど、区市町村を支援してまいります。
質問3
先月発刊された石原知事の著書「息子たちと私」には、知事が青年期に出会った画家である美術教師の奥野肇氏から大きな影響を受けたことが書かれてあり、印象深く読ませていただきました。幼少期や青年期にさまざまな芸術家や芸術文化に触れることは、心を豊かにし、人格形成にとても重要です。私は、東京の子どもたちに、ありとあらゆるを機会を利用して、本物の文化芸術に触れさせたいと考えています。そうした機会の拡大について、石原知事の思い、お考えをお聞かせいただきたいと思います。
答弁3
▼知事
子どもと芸術文化についてでありますが、子どもは、柔軟な感受性、奔放な想像力を有しておりまして、その子どもの想像力を伸ばすには、大人の常識で縛らないことが大切だと思います。
今日では、子どもが生まれる前、お母さんの胎内にいる間でも胎教が可能である。特に音楽、あるいはすばらしい絵を見るというだけでも、その母親の感性の感動が胎内の子どもに伝わって、非常に生まれてくる子どもの感性の育成が可能であると証明されております。まして、生まれてから幼乳児の時代からでも芸術文化に接して自由奔放に表現することは、子どもの情操や情念を啓発することに非常に効果があると思います。
芸術家や芸術文化に触れることで豊かな心を育成することは、その子どもの人生だけではなしに、社会全体にとっても、人間の可能性を広めていく上で非常に大切だと思います。
今おっしゃった大倉正之助さんのプログラムだけではなくて、夏休みには、東京文化会館の音楽監督である大友さんのトークとフルオーケストラの迫力を体験するような場も講じておりますし、また、新設しましたトーキョーワンダーサイトでは、各国から来る、本当に先端を行っているコンテンポラリーなアーティストたちが子どものためのワークショップも開いておりまして、非常に好評を博しておりますが、これからもやっぱり、何といってもいろんな集積、集中のある東京でありますから、我々の後世を託す子どもたちの感性の上での育成のために、そういう努力を多角的に広げていきたいと思っております。
質問4
次に、都立総合芸術高校について伺います。
文化芸術の先進都市東京の構築を進めるに当たり、都が進めている都立総合芸術高校の構想は極めて重要です。
私は、初当選直後に、日本バレエ協会から切実なご要望を受けました。私自身、中学生までバレエを習っていた経験があり、現在は娘をバレエ教室に通わせておりますが、バレエなど身体表現の美は、日本舞踊なども含めて、人の心を打つ表現芸術の原点といえます。
バレエ教室は、現在、全国で一万五千、東京では二千教室あるといわれております。バレエダンサーを目指す若者は続々と続いておりますが、その反面、日本には本格的にバレエを学ぶ国立、公立の学校がありません。諸外国には、それぞれ国立または公立のバレエ学校があり、フランスのパリ・オペラ座附属バレエ学校、イギリスのロイヤルバレエ学校などが有名ですが、それぞれバレエ舞踊の総合教育を行っております。個々のバレエ教室の努力の結果、優秀なバレエ人材が輩出されておりますが、その多くが海外のバレエ学校に流出してしまっている実態を、日本バレエ協会の永江専務理事から伺いました。
文化芸術先進都市を目指す東京こそ、国に先駆けて世界に通用する専門性の高い文化芸術の教育機関を創設すべきです。その意味で、さきに述べた都立総合芸術高校構想に注目したいと思います。私は、そこに、バレエなど舞踊専門の勉強ができる舞踊科あるいは舞台芸術科の設置を提案したいと思います。所見を伺います。
答弁4
▼教育長
都立総合芸術高校、これは仮称でございますけれども、舞踊科の設置についてでございます。
総合芸術高校は、都立高校改革推進計画・新たな実施計画におきまして、都立芸術高校を母体として、既存の音楽科、美術科に、演劇、映像などの新たな芸術分野を加えまして、平成二十二年度の開校を予定しているものでございます。
現在、学科構成などの枠組み、教育課程の基本方針など基本計画につきまして、外部の有識者も委員として入っていただきまして、検討委員会において検討しているところでございます。
ご指摘の舞踊につきましては、芸術分野の重要な位置を占めているというふうに認識しておりまして、クラシックバレエを初め、日本舞踊、モダンダンスなど、総合的に学べる学科についても基本計画の中に取り入れられるよう、検討を進めてまいります。
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■女性支援、雇用対策 |
次に、雇用対策について伺います。
私は、労働省職員として雇用対策の現場で働いた経験があり、また二人の子どもを育てている立場から、以下、質問をさせていただきます。
質問1
まず、女性の仕事と子育ての両立支援策について伺います。
先般、育児・介護休業法が改正され、パートタイム労働者や契約社員も、一定の条件のもとに育児休業の対象になり、大きな前進が図られました。しかし、社内制度の整備が十分でなかったり、同僚への遠慮などから、実際には活用しにくいとの声も聞いています。法律の整備とともに、各企業でどのように運用されるかが重要であります。
そこで、都としても、各企業における育児・介護休業制度の運用の実態を調査し、女性が働き続けることができるよう、調査結果を都の施策に反映すべきです。所見を伺います。
答弁1
▼産業労働局長
育児・介護休業制度の実態調査についてでございますが、都では、雇用の分野の男女平等を確保し、女性が能力を発揮して働き続けることができる雇用環境の整備を図っていくため、毎年、男女雇用平等参画状況調査を実施しております。今年度の調査におきましては、育児・介護休業法改正後の社内制度の整備状況と、従業員の育児・介護休業の利用状況など、運用の実態を把握し、企業現場における課題を明らかにする予定でございます。
調査結果につきましては、年度内に取りまとめ、育児・介護休業制度を職場に定着させ、従業員が利用しやすいものとなるよう、普及啓発など両立支援を推進するための今後の都の施策に反映させてまいります。
質問2
次に、女性の再就職支援策についてです。
国立社会保障・人口問題研究所の結婚と出産に関する全国調査によれば、専業主婦や育児中も仕事を継続することよりも、子育て後に再就職というコースを選ぶ女性が多くなっています。一方、女性の雇用の現状を見ると、再就職を望んでも、子育て中という制約から希望の仕事につけないことや、仕事と家庭を両立させることに不安を感じている女性も少なくありません。
そこで、女性の再就職支援に関する都の見解を伺うとともに、第一回定例会で公明党が質問した、しごとセンターにおける両立支援の取り組みについて伺います。
答弁2
▼産業労働局長
出産、育児等のために離職した女性の再就職支援は、女性の就労や能力発揮の機会確保に加え、東京の活力の維持向上という観点からも極めて重要であると認識しております。このため、しごとセンターでは、本年三月、仕事と家庭の両立支援コーナーを設置し、両立支援に関する各種制度の資料や保育施設など子育てに関するさまざまな情報を提供するとともに、女性向け再就職支援セミナーや在宅ワークセミナーを新たに実施しております。
今後、情報の収集、提供を強化し、スキルアップも視野に入れてセミナーの拡充を図るなど、両立支援策の一層の充実に努め、女性の再就職を支援してまいります。
質問3
また、日本労働政策研究・研修機構が行った育児や介護と仕事の両立に関する調査では、再就職のために必要な支援策として、一時保育の充実が上位になっています。就職活動中に子どもを預けられなければ、再就職を目指すこと自体が困難です。
そこで、都民の就職を支援するしごとセンターにおいて、相談時の託児サービスなどの新たなサービスを提供し、子育て中の女性がより利用しやすくなることが必要であると考えますが、所見を伺います。
答弁3
▼産業労働局長
子育て中の女性がしごとセンターを利用しやすくするための取り組みについてでございます。
女性の再就職を支援するためには、子育て中であっても安心して就職に向けた活動が行える環境を整備していくことが必要と認識しております。しごとセンターでは、これまでも、女性が多いセミナーでの託児サービスの実施やベビーベッドを配置したコーナーの設置など、子ども連れでもセンターが利用できるよう、来所者の利便性の向上に努めてきたところでございます。
今後、新たにカウンセリング等での来所者に対しましても託児サービスの検討を行い、しごとセンターを子育て中の女性がより一層利用しやすい施設にしてまいります。
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■アスベスト専門外来 |
質問1
次に、都立病院におけるアスベスト専門外来について伺います。
公明党は、去る七月、アスベスト対策に関する緊急要請を行い、その中で、都立病院における診断、治療体制の整備を求めました。また、十月の厚生委員会において、私は、都立病院にアスベスト専門外来の設置を強く求めたところであります。その結果、この十一月一日から、都立広尾病院にアスベスト専門外来が設置されました。
既に診療開始から一カ月がたちますが、広尾病院におけるアスベスト専門外来の状況を明らかにしていただきたいと思います。
また、今後、受診状況を見きわめながら、必要に応じてアスベスト専門外来を拡充することを要望いたします。
答弁1
▼病院経営本部長
広尾病院におけるアスベスト専門外来についてお答えいたします。アスベスト専門外来につきましては、毎週一回、呼吸器の専門医師が診察し、アスベスト関連疾患の可能性について判定しております。開設後一カ月の受診者は、延べ二十九名、一日平均六名程度でございます。そのうちの約五割がアスベスト関連業務に従事した経験がある患者さんでございます。
今後とも、都民のアスベストによる呼吸器疾患に対する不安が解消されるよう、実際の受診状況等を踏まえながら、適切に対応してまいります。
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■水害対策 |
質問1
本年九月四日、私の住む杉並区で一時間一一二ミリ、総雨量二六三ミリという記録的な集中豪雨があり、善福寺川や妙正寺川を中心に大規模な浸水被害がありました。私もすぐに現場に直行し、腰まで水につかりながら救援活動をさせていただき、もう二度とこのような被害は起こしたくないと心の底から実感いたしました。
第三回定例会で知事は、公明党の質問に対し、被害の大きかった妙正寺川、善福寺川の未整備区間の早期整備を指示したと答弁され、さらに十一月十八日には河川激甚災害対策特別緊急事業の指定を受け、ことしから善福寺川及び妙正寺川の緊急整備に着手できることになりました。まず、その事業の内容について伺います。
答弁1
▼建設局長
河川激甚災害対策特別緊急事業についてでございますが、この事業は、甚大な被害があった河川について、再び災害が起こらないよう、五カ年で緊急に河川整備を行い、治水安全度を向上させるものでございます。
妙正寺川では、環七下流の約三・九キロの事業区間で、護岸の整備や河床掘削、環七地下調節池への取水施設の整備を行います。
また、善福寺川では、環七上流の約二キロの事業区間で、洪水流を阻害する橋梁のかけかえや護岸整備を実施するほか、和田堀公園内にあります調節池の貯留能力の増大を図ってまいります。現在、工事着手の準備を進めておりまして、地元区や関係住民の理解と協力を得ながら、全力で取り組んでまいります。
質問2
今回の被害区域は極めて広範囲に及びました。河川激甚災害対策特別緊急事業、いわゆる激特事業の対象より上流域の地域についても早期に対策を講じるべきと考えます。都の所見を伺い、私の質問を終わります。
答弁2
▼建設局長
激特事業区間より上流域の対策についてでございますが、浸水被害の発生状況から、当然のことながら上流域の対策も必要であると考えております。
今回の激特事業によりまして、事業区間の治水安全度が短期間に向上するとともに、その上流域の早期整備が可能となります。このため、妙正寺川の環七地下調整池上流や善福寺川の和田堀公園から上流につきましても、激特事業の進捗状況を踏まえ、着実に整備を進めてまいります。
さらに、こうしたハード対策に加え、関係区と連携し、ハザードマップの見直しなど、ソフト対策もあわせて進め、流域の水害軽減を図ってまいります。
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