平成17年第4回定例会 一般質問

多摩幹線道路の重点的な整備を
都市農業に踏み込んだ諸施策を

山田 忠昭(自民党)
■都財政の現状と課題
   
 都と議会が一丸となって懸命に取り組んできた財政再建は、都民の理解を得て、着実に成果を上げてきております。
 また、そうした都の取り組みを後押しするかのように、日本経済は原油高など先行き不透明な要因を抱えながらも、堅調に推移しており、今年度の実質経済成長率が政府見通しを上回る見込みである中、上半期の都税収入も、法人二税の順調な伸びが大きく影響し、前年度同期より約二千億円の増加となっています。こうした状況は、体力回復が喫緊の課題である都財政にとって喜ばしいことではありますが、しかし、将来の日本、そしてこれから東京が直面するだろう社会状況を考えると、決して油断はできません。
 先月、財務局長の諮問機関である、最近の都財政に関する研究会が「人口減少社会における都財政運営のあり方」という報告書を発表し、今後二十年間の財政収支の見通しを初めて明らかにいたしました。
 いうまでもなく、今後の日本は、少子化によって総人口が減少する中で高齢化が急激に進展するという、これまで経験したことのない大きな社会変化を迎えます。こうした社会構造の大幅な変化が、経済活動の停滞や国際競争力の低下など、社会全体に大きなマイナスの影響を与えることが懸念されているときに、このような報告、提言がなされたとき、まことに時宜を得たものであると評価いたしたいと思います。
 そして、この中では、財政構造改革への取り組みを怠った場合には、人口減少に伴って、都税収入が落ち込み、歳出構造の見直しも進まないため、年間で一兆円もの財源不足になるという非常にショッキングな試算が提示されております。
 私は、この報告を遠い先の話として軽んじてはならないと思います。都財政のかじ取りを一歩誤れば、十年後、二十年後にいかに莫大なツケを払うことになるかを十二分に認識しなければならないと思います。
 我々は、こうした有識者の声に率直に耳を傾け、景気が回復基調にある今こそ、これからのあるべき財政運営の姿について真剣に考えていく必要があると思います。そうしなければ取り返しのつかない事態を招き、子どもたち、孫たちの世代に、その世代には負い切れない負担を先送りする結果となってしまいます。
 

 
質問1
 そこで伺いますが、予想される大きな社会構造の変化に対応するためには、今後どのような財政運営を行っていくべきであるのか、知事の所見をお伺いいたします。
 
答弁1
 ▼知事
 今後の財政運営についてでありますが、ご指摘のとおり、我が国は今、社会構造の大きな変化に直面しております。少子高齢社会というかつて経験したことのない状況を迎える中で、これからは、これまで以上に施策を峻別していくことが必要だと思います。あれもこれもではなくて、複合的な視点で将来を見通す確かな目を持って、めり張りをつけて、必要な施策を選択していかなければならないと思います。
 今後とも、財政構造改革を不断に継続するとともに、東京の発展のために、不可欠な施策というものを選択し、重点的に財源を投入し、東京の活力を高めていくことが重要と考えております。
 
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■学校における部活動
 
 子どもたちが、部活動を通して、将来に夢と希望を持ってスポーツ・文化活動にチャレンジすることは、保護者や都民の願いであると同時に、それらに対して真剣に取り組む子どもたちの姿は、私たちに勇気と感動をもたらします。また、部活動は、子どもたちのよさや可能性を十分に伸ばすとともに、友人との人間関係をはぐくむなど、多くの教育的な効果をもたらすといわれております。中学校や高校を選ぶ段階においても、学校を選ぶ重要な要因の一つに部活動があると聞いております。
 このように、子どもや保護者にとっては極めて期待の大きい部活動でありますが、部活動については、顧問の指導力を確保することや、教員の異動や少子化、学校の小規模化などにより、入部したい部活動がないなど、さまざまな問題があると聞いております。
 このような中で、本年十月、都教育委員会は、部活動を学校における重要な教育活動として振興するという内容の部活動基本問題検討委員会報告書を出していますが、その報告書の内容を実現していくために、今後、都教育委員会はさまざまな取り組みをしていく必要があると考えます。
 

 
質問1
 そこでお尋ねいたしますが、今回の報告書を受け、今後、都教育委員会ではどのような取り組みを推進し、部活動を振興していくのか、また、部活動指導者の確保や部活動を指導する顧問の勤務の扱いなどについてどのように取り組んでいくのか、さらに、少子化、学校の小規模化などにより、部員が不足して部活動が成立しない、入部したい部活動がないなどの課題についてはどのように認識しているのか、見解を伺います。
 
答弁1
 ▼教育長
 学校教育に関します三点の質問にお答え申し上げます。
 まず、部活動振興のための取り組みについてでございますが、部活動は生徒の個性や豊かな人間関係をはぐくむ上で、極めて重要な教育活動でございます。
 都教育委員会はこれまでも総合体育大会や総合文化祭の開催、運動部活動推進重点校の指定、外部指導員の学校への派遣など、部活動の振興に努めてまいりました。
 今後は、こうした取り組みに加えまして、学校や地域の関係者等を委員とした課外活動振興協議会を平成十八年度に設置し、魅力ある部活動づくりに向けた意識調査や実態調査を行いまして、生徒のニーズや時代の変化に応じた新たな部活動のあり方等を総合的に検討してまいります。
 次に、部活動指導員についてでありますが、指導者の確保や、顧問教諭にかかわる勤務条件の検討は、部活動の振興を図る上で重要な課題であります。このため、資格を有するスポーツ指導者を登録したスポーツリーダーバンクを一層充実するとともに、学校外の人材への顧問委嘱などについて検討し、指導者の確保に努めてまいります。
 また、週休日等における勤務の扱いなど、顧問教諭の勤務条件につきましては、今後、学校、区市町村教育委員会及び教育庁関係者から成る専門委員会を設置して検討してまいります。
 次に、学校の小規模化などによります課題についてでございますが、少子化や小規模化によりまして、部活動には、部員数の不足や、あるいは入部したい部活動がないことなど、生徒の期待にこたえられていないという現状があることについては十分承知しております。
 これらの課題に対しましては、複数校によります合同部活動の実施によって、部員数の不足を補ったり、顧問教諭が複数の部活動を担当することによりまして、部活動の数の減少を防いだりするなど、さまざまな工夫をしてきております。
 ただ、学校だけで問題を解決することには限界があります。今後とも、部員数の少ない学校が合同部活動の形で大会に参加できるよう、関係団体に働きかけたり、部活動と地域のスポーツ・文化クラブとの連携を一層深めるよう、区市町村と意見交換するなどして、少子化や学校の小規模化などによって生ずる部活動の課題の解決を図ってまいります。
 
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■多摩振興
   
質問1
 初めに、多摩地域の幹線道路の整備について伺います。
 私は、この十一月、まさに計画を具体化する段階の区部と多摩の境界付近を通過する東京外かく環状道路について、ヘリコプターにより上空からつぶさに視察いたしました。ここで、供用している埼玉区間や、用地買収を既に八五%終えた千葉区間と連結して、環状道路の機能を発揮する東京区間の整備の必要性を改めて実感したところであります。
 首都圏の交通圏の交通問題を抜本的に解決するには、いわゆる首都圏三環状道路の整備が不可欠であり、外かく環状道路の関越から東名間の早期事業化を強く要望するところであります。そして、この外かく環状道路の整備効果を生かすためには、外かく環状道路のみならず、これと有機的にネットワークを形成する骨格となる幹線道路の整備が重要であります。
 私の地元であります西東京市では、現在、南北方向では調布保谷線の整備が進められ、また、東西方向では放射七号線と接続する西東京三・三・一四号線が一部着手されるなど、着実に前進されつつありますが、まだまだ不十分な状態にあるといえます。加えて、隣の埼玉県と接する部分では、埼玉県内の計画と相まって、初めてネットワークとして機能するものもあります。
 都では、多摩地域における都市計画道路を計画的に整備すべく第三次事業化計画を柱とする整備方針を策定中であり、この八月末には中間のまとめが公表されております。
 そこで、まず、整備方針の策定に向けて、どのような点に重点的に取り組んでいくのか、伺います。
 また、最終の取りまとめに向け、作業を進めていくと思いますけれども、現在の状況と今後の進め方について伺います。
 
答弁1
 ▼都市整備局長
 多摩地域における都市計画道路の整備に関する二点のご質問にお答えいたします。
 都市計画道路の整備方針の取り組みについてでございますが、多摩地域は、首都圏の発展を牽引する大きな潜在力を秘めているとともに、自然に恵まれた良好な居住環境を備えた地域でございます。こうした多摩の地域特性を踏まえ、整備方針では、交通の円滑化や防災性の向上などに加え、新たに都県境を越えた広域的な道路ネットワークの拡充、幹線道路の沿道を含めた広がりと厚みを持った緑を創出する環境軸の構築などの実現に向けて、重点的に取り組んでまいります。
 次に、整備方針の策定についてでございますが、都と関係市町は、本年八月末に基本的な考え方などを中間のまとめとして公表いたしました。
 現在、中間のまとめに寄せられました都民などの意見を参考にしながら、平成十八年度から十年間で優先的に整備すべき路線を選定するための評価項目などについて検証を行っております。
 今後、その評価項目に基づき、具体的な路線を選定し、年度内に整備方針案を公表した上で、横田基地の軍民共用化も視野に入れながら、最終的な取りまとめを行ってまいります。

 

 
質問2
 次に、市町村に対する財政支援について伺います。
 これまで申し上げたとおり、多摩地域の都市基盤整備を進めていく上で、幹線道路の整備については、国や都が積極的に事業を進めていくべきでありますが、一方、生活道路の整備などの面では、市町村のより積極的な取り組みが不可欠です。都内の市町村は、極めて厳しい財政状況の中、創意工夫を凝らしながら、地域特性を生かしたまちづくりに取り組んでおります。
 我が党はかねてから、多摩・島しょ地域の振興を図っていくためには、市町村の行財政の基盤を強固なものにする必要があり、市町村に対する都の支援を一層強化していくべきと主張してまいりました。こうした中、都は、市町村に対する包括的な財源補完制度として重要な役割を担ってきた市町村振興交付金、調整交付金の統合を検討しているとのことであります。この件に関しては、東京都市長会や町村会も賛同していると聞いております。
 そこで改めて、両交付金を統合し、新しい交付金を創設するねらいについて、都の考え方を伺います。
 
答弁2
 ▼総務局長
 市町村に対する交付金につきましてお答えをいたします。
 ご指摘のとおり、多摩・島しょの市町村は極めて厳しい財政状況にあり、市町村の行財政基盤の強化を図ることが重要でございます。このため、現行の振興交付金、調整交付金を、より一層柔軟で、市町村にとって使い勝手のよい、効果的な財源補完制度とするため、平成十八年度から、両交付金を統合し、市町村総合交付金としてさらに充実をさせていきたいと考えております。
 この総合交付金を活用し、投資的経費、経常経費の区別なく、市町村の行財政を総合的に支援することによりまして、市町村の自主性、自立性のさらなる向上を図るとともに、多摩・島しょ地域の振興を一層促進していきたいと考えております。
 
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■都市農業の振興
 
 先月三十日に発表されました東京の農業に関する都政モニターアンケートによれば、都民の八一%が東京に農業、農地を残したいと思っているとの調査結果が出されておりました。こうした都民の意向からもわかるとおり、都市農業は、地域の消費者に新鮮で安全な農作物を供給しているばかりでなく、都民の安らぎやレクリエーションの場を提供するなど、多くの役割を果たしております。
 しかしながら、昭和四十五年の市街化区域の線引き以降、市街化区域内の農業は、国の支援策がない困難な状況の中で、農業者の自助努力と、東京都や区市の支援により今日まで引き継がれてまいりました。
 東京都では現在、農業振興プランを策定し、都市農業の理念や目標、施策を掲げ、農地の確保や担い手の育成、生産・流通支援など各種事業を展開しております。この農業振興プランの実効性を確保するためには、国より、他県より、一歩も二歩も踏み込んだ施策展開をすべきだと思います。
 

 
質問1
 先日、都議会自民党・都市農政を考える議員連盟は、青壮年農業者との懇談会を開催し、直接意見を伺いました。農業者の方々はそれぞれの地元で、都市で農業を営む難しさを抱えながらも、さまざまな創意工夫を重ね、力強く農業経営に取り組んでおられます。例えば西東京市は、キャベツ等の市場出荷に加え、新たな販路を開拓すべく、都心への産直販売に取り組んだり、ナシやブドウの品質向上のための施設整備に取り組んでいます。また練馬区では、住民の農作業体験ニーズにこたえた体験農園を開設しているほか、八王子市では、牛舎の臭気対策を行いつつ、独自に手づくりヨーグルトを開発して販売するなど、それぞれの地域の特性を生かした取り組みが展開されております。
 都は、こうしたアイデアあふれる農業者の取り組みを参考に、都内各地域の状況に即した課題と目標を明らかにし、きめ細やかな都市農業の振興施策を推進していくべきと思いますが、その考え方を伺います。
 
答弁1
 ▼産業労働局長
 地域の実情に即した農業振興施策についてでございますが、例えば江戸川区や葛飾区では、施設栽培されたコマツナが通年出荷されております。一方、日野市や稲城市では、果樹の里づくりを目指してナシやブドウを農家が直売するなど、地域ごとに特色ある農業が営まれております。また、経営革新の観点から、西東京市では、これまでの特産キャベツの生産を施設栽培によるホウレンソウなどの高収益栽培へと転換しております。
 都は、こうした事例を踏まえまして、消費者ニーズに合った農作物の選定や、より高い収益目標の設定など、各地域の実情に即した農業振興の地域戦略を策定しまして、農業者を支援するきめ細やかな取り組みを展開してまいります。
 

 
質問2
 ところで、農業振興プランでは、地産地消や食の安全・安心の確保に向けた取り組みを推進することになっていますが、昨年来、幾つかの自治体では、遺伝子組みかえ作物の栽培に関して条例や指針などを策定して、無用な混乱を生じないようにしております。
 都でもこのたび遺伝子組みかえ作物の栽培にかかわる対応指針を策定する予定とのことですが、都が進めている安全・安心な農作物の生産施策との関連はどうなっているのか、その基本的な考え方をお伺いし、私の質問を終わります。
 
答弁2
 ▼産業労働局長
 遺伝子組みかえ作物の栽培に係る対応指針の策定についてでございますが、都は従来から、農薬の使用量の低減など農産物の安全・安心の確保に努めてまいりました。このような中、国は、大豆やトウモロコシなど、一定の遺伝子組みかえ作物の栽培を承認いたしました。そこで都は、遺伝子組みかえ作物を都内で栽培する場合に、一般農作物への交雑、混入を防止する観点から、栽培計画書の事前提出を求めるなどを内容とする対応指針を策定中でございます。
 現在、都民の声を取りまとめておりまして、年度内にこの指針を公表する予定でございます。これによりまして、都内地区農産物に対する信頼を引き続き確保できるものと考えております。
 
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