乳がん検診等の体制を整備せよ
食品の安全確保対策を推進せよ |
くまき 美奈子(民主党) |
■がん対策 |
質問1
民主党のくまき美奈子でございます。定例会で初めて質問に立たせていただきますので、よろしくお願いいたします。
初めに、がん撲滅への取り組みについて伺います。
ことし十月、乳がん月間のピンクリボン運動で、東京都でも乳がんの早期発見、診断、治療を呼びかけて、都庁がピンク色にライトアップされ、都営交通では記念乗車カードが発売されました。日本人女性の乳がん罹患率は二十二人に一人ともいわれ、私の周りにも乳がんにかかり、治療で大変な経験をされた方がいます。このピンクリボン運動がきちんと根づくことを願います。
都の乳がんの状況について調べたところ、死亡率は全国一高い状況にあります。さらに、乳がん検診受診率は他府県に比べ低く、早期発見、早期治療に結びつかず、死亡率は増加の一途であり、乳がん対策は都の緊急の課題であるといえます。早急に乳がん検診の受診率を向上させるとともに、検診の質の管理など体制を整備していく必要があります。
乳がん検診の受診率を向上させるためには、都民に対する普及啓発の強化とあわせ、検診の実施体制の拡充として、マンモグラフィーの整備や一定の能力を有する読影医師、撮影技師の確保など体制整備が必要であると考えますが、この体制整備について今後どのように展開していくのか、所見を伺います。
答弁1
▼福祉保健局長
乳がん検診の実施体制整備についてでございますが、都では、昨年度から、区市町村の検診に従事するマンモグラフィー読影医師、撮影技師の養成研修を実施しており、また今年度からは、検診を実施する医療機関等に対し、マンモグラフィー機器の整備費を補助し、検診体制の拡充を図っております。
今後とも区市町村や関係機関と十分な調整を行いながら、施策の推進を図ってまいります。
質問2
国の指針では、乳がんの検診対象者が四十歳以上とされていることから、区市町村で実施されている検診も、ほとんどが四十歳以上を対象にしています。ところが、三十歳代について見ると、乳がんの罹患率が二十歳代の十四倍と爆発的に増加しています。この世代は子育ての時期でもあり、家庭の中で重要な役割を担い、家庭や社会を支える世代です。あるいはこれから結婚、出産を迎える世代でもあり、この世代の人たちを乳がんから守るためにも、四十歳以下への有効な検査方法の検証など取り組みが必要であると考えます。
そこで、四十歳以下に対する乳がん対策として、都での今後の取り組みと事業転開について伺います。
答弁2
▼福祉保健局長
乳がん対策に関する都の取り組みについてでございますが、乳がん検診の対象は、罹患率の状況やマンモグラフィーの有効性などから、国の指針において四十歳以上とされております。
一方、乳がんに関する正しい知識を持つことは、年齢にかかわらず重要であるため、都はこれまでも広く普及啓発に努めてまいりました。今年度は、大学や短期大学等へのリーフレットの配布や、大学の学園祭での講演会を実施するなど、よりきめ細かな取り組みを行っているところでございます。
今後とも、若年世代を含めたすべての女性を対象に、乳がん対策に一層取り組んでまいります。
質問3
さらには、検診の結果、乳がんが発見され、病院で受診した際に、どのような手術や治療の方法があるのかなど、さまざまな悩みが出てくると思われます。患者がみずからの治療方針を判断するためには、主治医から十分な説明を受け、自分も納得して治療を受けるというインフォームド・コンセントが重要になります。
患者にとって、がんはみずからの生死にかかわる問題であり、その医師の診断や提示された治療法を本当に受け入れてよいのかとの迷いは切実であります。このようなことから、治療方針について主治医以外の意見を聞くセカンドオピニオンを求めるニーズが高まっています。
先日報道された新聞記事によると、東京都内のがん専門病院を初め、全国でセカンドオピニオンを実施する医療機関が急増しているとのことですが、料金に関してはかなりの差があるようです。平成十三年に設置した都の医療のより良い関係を考える会では、セカンドオピニオンについて検討し、主治医が患者に十分な説明を行い、それでも治療方針等の判断を迷っている場合には他の医師を紹介するということが原則であり、医師との信頼関係を強固なものとしつつ、患者の自己決定権を支えるものと定義づけています。
患者が自分で納得できる治療が得られるよう、セカンドオピニオンを都内で定着させ、さらに普及させる必要があると考え、セカンドオピニオンの普及に関する都の取り組みについて伺います。
答弁3
▼福祉保健局長
セカンドオピニオンの普及についてでございますが、患者さんが自分自身の治療方針を決定するため、主治医以外の専門家の意見を求めるセカンドオピニオンが普及することは、患者中心の医療を実現する上で望ましいことと考えております。このため、都では、特定機能病院の協議会におきまして検討を行うとともに、各病院に働きかけ、現在、九病院でセカンドオピニオン外来が実施されております。
しかしながら、現時点では法制度上の位置づけが明確でないため、具体的な実施方法や患者さんの費用負担などが病院によってさまざまな実態がございます。こうしたことから、都は、セカンドオピニオンの仕組みの確立や診療報酬の見直しについて、国に対し提案要求を行っているところでございます。
都民が実際に治療を受ける場合には、身近な地域で質の高い治療を受けたいと思うものです。がん治療に関し、地域の中で中心的な役割を担う病院として地域がん診療拠点病院が指定されており、そのあり方については、現在国で検討していると聞いています。
そこで、都としても、専門医の育成、検診設備の充実と病院の連携強化、がん治療成績のデータ収集、いわゆるがん登録など、地域がん診療拠点病院の機能の充実について積極的に取り組まれるよう要望いたします。
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■食品の安全 |
質問1
医食同源といわれるように、健康の源である食事の素材として食品が安全であることは、都民生活の基礎となります。そこで、食品の安全確保について伺います。
東京は、いうまでもなく世界有数の大都市としてさまざまな食品が豊富に流通し、全国のグルメにとっても魅力あふれる都市となっています。
しかし、食品の流通がグローバル化し、日本の食糧自給率がカロリーベースで四割となる中で、海外で発生した食品の事件、事故が直ちに都民の食卓へ影響を及ぼす時代となりました。ここ数年でも、輸入農作物の残留農薬問題や、日本では使用を認められていない添加物が使用されていた問題など、輸入食品に関する事件が続々と報道されています。そして、つい最近では、アメリカ・カナダ産牛肉の輸入再開に向け、その是非が大きく取り上げられました。食品の安全というものは、国家的、国際的にも重要な課題です。
こうした中で、首都東京には、今後もさまざまな国や地域から食品が集められ、流通が拡大していくに従って、都民の食に対する不安はますます高まることが予測されます。
都は、こうした大消費地東京における食品の安全確保を図るため、危害の未然防止などを基本理念に掲げた食品安全条例を全国に先駆けて昨年制定していますが、最近の新たな状況を踏まえ、都民の食の安全をどのように確保していくのか、改めて知事のお考えを伺います。
答弁1 ▼知事
食品の安全確保についてでありますが、東京は、日本で最大の消費地かつ物流の拠点でありまして、食の安全の問題が日本じゅうで最も先鋭的にあらわれる地域であります。
食の危機を回避するために、都が率先して食の安全への取り組みを進めることが重要でありまして、昨年三月、食品安全条例を制定いたしました。この条例に基づきまして、輸入食品に対する監視や健康食品による健康被害の未然防止など、重点課題に戦略的に取り組んでおります。
都は、都民の食の安全と安心を将来にわたって確保するため、総合的な取り組みを推進していくつもりでございます。
質問2
また、都は、都民や事業者にとって身近な自治体として、日々の課題へきめ細かく対応し、事業者への指導、支援や、都民への大切な情報提供などを初め、食品の安全確保対策を進めていくことが重要です。
都民生活に直結する具体的な課題の一つに食中毒があります。ここ十年間における食中毒の発生状況を見ると、年間で約百件、約二千人の患者が発生しています。私たちの生活における衛生レベルは高いものであると考えてきましたが、こうした状況を見ると、決して油断できないと感じます。
また、食中毒は主に夏場に発生するものと考えられがちですが、近年は主に冬場に発生するノロウイルス食中毒が増加し、昨年、都内では、この食中毒の件数及び患者数が最も多い状況です。ノロウイルス食中毒は二枚貝によるものがよく知られていますが、最近では、それ以外にもさまざまな原因による事例が見られます。そうした事例の中には、幼児や高齢者など、抵抗力の弱いハイリスクグループが利用する社会福祉施設においても発生しており、大きな問題になっています。
これからノロウイルス食中毒の多発期を迎える中で、都は具体的にどのような防止対策を講じていくのか、お聞かせください。
答弁2
▼福祉保健局長
ノロウイルス食中毒の対策についてでございますが、ノロウイルス食中毒は、調理の過程で汚染された食品により発生することから、食品を提供する事業者の自主的な安全管理が最も重要であり、都は、予防対策の標準マニュアルやリーフレットを作成して、普及啓発を行っております。
特に、乳幼児や高齢者が利用しております社会福祉施設については、大規模な食中毒の発生を未然に防止することが特に大切であるため、昨年度から、衛生講習会の開催や施設への立入指導を積極的に行っているところでございます。
今後とも、各施設への重点的な指導を実施し、予防対策を徹底してまいります。
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■障害者への理解促進 |
障害、障害者という言葉は定着した言葉のようになっていますが、いわば行政用語が一般化したものです。障害という言葉の感じは、「障」も「害」も否定的な意味合いが強く、その言葉自体や漢字表記に差別感を持つ当事者もいます。
先般、私の地元板橋区では、地域保健福祉計画の策定に当たり、障害の「害」の字を平仮名表記に改め、「障」は漢字としました。その理由は、障害者に対する差別や偏見をなくしていこうとする心のバリアフリーを推進するためです。
これには、言葉だけをかえても、障害者の実態が変わらなければ意味がない。「害」を平仮名にしても、差別や偏見を持つ人の意識は変わらないという意見も確かにあります。また、産経新聞の社説には、国語という意味から、安易な表記の変更は好ましくないとの論調で取り上げられました。
言葉が差別をするのではなく、人が言葉で差別するわけですから、「害」という漢字を用いることの是非自体が大きな問題とはいえないのかもしれません。ほとんどの人が障害者という言葉を知識として知っています。それなのに、自分自身をあらわす言葉に「害」という漢字が用いられる、それに対して違和感を持つという人のことや、日々生きづらいと感じながらも、克服しつつ、社会の中で生活する人の気持ちなど、その多くの人たちは考えたこともないのだと思います。
「害」を平仮名で表記するという小さなアクションが一般紙の社説に取り上げられたこと自体が、決して無意味なことではありません。賛否は別にしても、私は、このことを契機として、私たちの社会の何が、障害のある人に「害」という漢字を使うべきでないと感じさせるに至ったのか、この一字の背後にある事情について考えさせられました。
生きづらいと感じさせているのは、悪意ある偏見や差別だけでなく、多くの人の無理解や無関心が生んでいるバリアなのではないかと私は思います。それを取り除いていくために今何が必要なのか、関心を持って考えなければ何事も始まりません。
質問1
障害のある子どもとない子どもが接点を持たずに育つことによって、障害のことをわからずに大人になってしまうということがあります。この社会はさまざまな人がいて成り立つということを小さいときから体験して成長すれば、互いの違いを認め合いながら生きていくことができるのではないでしょうか。
今後、学校教育の中で、障害のある子どもたちへの理解を深めていくため、どのように取り組みを進めていくのか伺います。
答弁1
▼教育長
障害のある子どもたちへの理解についてでございますが、子どもたちが、障害のあるなしにかかわらず、互いのよさや違いを認め合い、尊重し合う態度を身につけていくことは重要でございます。
現在、盲・ろう・養護学校と小中学校等では、運動会や学習発表会などを通しまして継続的に交流活動を実施しております。
今後は、これらの交流活動に加えまして、子どもたちが一緒に学習する機会をふやすなどして、互いに理解を深める教育を一層推進してまいります。
質問2
また、東京都では、障害があっても、地域で生き生きと暮らすことを支援するため、障害者地域生活支援緊急三カ年プランを実施してきました。地域でグループホームなどの整備が進みました。グループホームはニーズがまだまだあり、引き続き積極的に整備を進めていかなければなりません。しかし、いまだに計画段階で反対運動が起こることもあると聞きます。
なお、自立支援法が成立し、障害者の経済的自立はますます重要になりますが、障害者雇用は進んでいないのが現実です。こうした現状を打開し、私たちの社会を障害のある人もない人もともに暮らせるものとしていかなければなりません。
そのためには、障害に対する理解を促進し、差別、偏見をなくしていく取り組みを進めることにより、さまざまな施策の推進を図るべきと考えますが、見解を伺います。
答弁2
▼福祉保健局長
障害者への理解促進についてでございますが、地域の中で障害者施策を着実に進めていくためには、障害に対する都民や企業の理解が不可欠でございます。このため、都は、グループホームの整備に当たって、事業者に対し、近隣住民への説明会の実施を指導するとともに、障害者の雇用促進につきましては、企業に対し、地域における就労支援ネットワークへの参加を求めているところでございます。
今後とも、さまざまな機会を通じて、障害に対する都民や企業等の理解を深めていくことにより、グループホームの整備や就労支援の強化など、障害者の自立を支援する施策を推進してまいります。
関連して、障害者の福祉的就労について申し述べます。
自立支援法においては、従来の本人所得での負担額から世帯収入での負担額になり、作業所などへ通うことも、サービス利用として一割の負担が発生します。工賃を利用料負担が上回ることもあり、障害者にとっては、働きに行ってお金を払うという状況が生じます。
福祉的就労とは、障害のある人が福祉的な支援のある環境で仕事を行うことによって働くことへの意欲や自信をはぐくむとともに、一般就労に進み、さらに自立した生活ができるように、継続的な支援を行うことです。
ところが、施設に行けば出費がかさむので行きたくとも行けない、行きたくないということになり、働く意欲を育てるどころか、引きこもりがちな生活になってしまいかねません。自立支援法のもと、福祉的就労はこうしたことが危惧されるのです。
先日、私ども都議会民主党の仲間が訪問した障害者施設において、つくった製品の価格や売れ行きに職員の方は頭を悩ませていました。せっかくつくった製品も販売先が限られており、余りお金にならないというのです。
賃金を得ることが第一義ではありませんが、制度の目的自体を損なうようであれば、本末転倒といわざるを得ません。都として、福祉的就労においても障害者の工賃を少しでも上げていくために、経営的な視点からの取り組みを重視し、支援されることを要望して、質問を終わります。
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