平成17年第4回定例会 一般質問

障害者の就労の場を拡大すべき
建築物の耐震問題の緊急対策を

吉倉 正美(公明党)
■障害者の雇用と就労
 
 初めに、ユニバーサル社会の形成を目指す観点から、障害者の雇用と就労について伺います。
 東京は、今、グローバリゼーションや情報技術革命などが進展する中で、激化する都市間競争に挑み、日本経済を力強く牽引する国際都市としての発展を目指しております。今後、二〇一六年の東京オリンピック開催に照準を定め、少子高齢社会に対応する福祉先進都市東京を実現し、広く世界に都市再生のモデルを提示すべきであります。
 福祉先進都市としての東京の大きな課題は、障害者の自立と社会参画の推進であり、そのためには、雇用の拡大、つまり一般就労の拡大が欠かせません。働く意欲のある障害者が就労のチャンスを得て、積極的な社会参加を実現できる社会システムを今こそ東京に構築していくべきであります。
 

  
質問1
 しかしながら、都の障害者雇用率は一・三五%と、法定雇用率の一・八%に遠く及ばない状況であり、企業の取り組みも、社会全体から見ればまだ一部にとどまっております。したがって、都は、みずから先頭に立って企業の積極的な取り組みを促し、障害者の一般就労の場を都内全域に拡大していくべきと考えます。所見を伺います。
 
答弁1
 ▼産業労働局長
 障害者の一般就労の場の拡大についてでございますが、障害者の自立と社会参加を実現する上で、障害者が働くことを通じて能力を最大限発揮できるような環境の整備を進めることが重要でございます。
 都は、これまで、障害者雇用の促進のため、第三セクター方式による障害者雇用モデル企業の育成や職業訓練などを実施してまいりましたが、民間企業の多くは障害者の法定雇用率を達成しておらず、一般就労の場の確保に向けた改善が必要でございます。
 今後は、他の企業のモデルとなるような障害者雇用の取り組みを行う企業の支援や、その成果の普及など、障害者の一般就労の場を拡大する新たな方策を検討してまいります。
 

 
質問2
 都はこれまで、軽度の知的障害者の職業教育を三校の養護学校で行う計画を進めておりますが、職業教育の次に取り組むべきことは、障害者の働く場を提供することであります。例えば、都営地下鉄駅構内に設置されるパンの売店やコーヒーショップなどでも、一定の条件のもとで障害者団体の出店が可能となるよう検討すべきと考えます。所見を伺います。
 
答弁2
 ▼交通局長
 都営地下鉄駅構内への出店に当たりましては、現在、原則として、公募によりまして広く事業者から提案を募り、収益性や駅の立地等を総合的に判断して選定しているところでございます。しかし一方で、ご提案のように、地下鉄駅構内などにおきまして、障害者の働く場を提供することも公営交通の役割として必要であると考えております。
 今後、局の関連事業としての採算性などにも十分考慮しながら、障害者団体が出店する場合、どのような条件設定が必要かなどにつきまして検討してまいります。
 
▲ページのトップへ
■児童虐待防止対策
   
質問1
 児童虐待を根絶し、未来からの使者である子どもたちのために夢と希望を与える健全な環境を整えることは、社会の重大な責務であります。児童虐待防止法の三本柱は発見、保護、統合といわれますが、とりわけ早期の発見が重要であります。公明党は、この法の理念に基づき、これまで、学校での身体測定や健康診断などでの虐待の発見、また家庭訪問による早期発見など、いわゆる学校力の活用を提案してきました。
 今後は、こうした従来の施策に加え、活用できるすべての社会システムを駆使して、虐待の根絶を目指す防止対策を強化すべきであります。知事の所見を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 児童虐待防止対策についてでありますが、子どもは、親や地域の人々の愛情に包まれて健やかに育つことが本来の姿であります。その子どもの心に深い傷を残し、かけがえのない生命を奪うことにもつながる児童虐待は、決して許されるものではございません。都は、これまでも、児童相談所における専門職員の充実を図るなど、児童虐待の早期発見、早期対応に努めてまいりました。
 今後とも、子どもを最優先に考え、あくまでも子どもを最優先に考え、関係機関相互の連携が十分に機能する総合的、専門的な体制整備を進めていくつもりでございます。
 

 
質問2
 ところで、児童虐待防止法は、早期発見における医師の役割を重視しております。しかし、さきに発表された厚生労働省の調査では、残念な結果が出ております。それによると、病院の勤務医や開業医の半数以上が児童虐待の通告に抵抗を感じており、その理由として、虐待の判断に自信が持てない、家族とのトラブルを避けたいなどを挙げております。こうした医師の消極的な姿勢があるにしても、やはり病院が児童診療の場で虐待のわずかなサインをキャッチし、関係機関に速やかに通告することが極めて重要であります。
 そこで、医師個人に虐待の判断をゆだねるのではなく、病院全体として児童虐待の早期発見に取り組んでいくことが必要であります。そのためには、診療科を横断した医師間の連携や医療ソーシャルワーカーとの連携など、組織的な取り組みが不可欠であります。都では、既に小児病院においてこうした取り組みに着手しておりますが、すべての都立病院においても組織的な虐待の早期発見に向けた体制を整備すべきであります。所見を伺います。
 
答弁2
 ▼病院経営本部長
 児童虐待の早期発見に向けた都立病院の体制整備についてお答えいたします。
 現在、都立の小児病院におきましては、医師、看護師、医療ソーシャルワーカーなどで構成する専門の組織を設置いたしまして、虐待が疑われる症例について検討を行うなど、その早期発見に努めております。
 その他の都立病院におきましても、個別のケースごとに、各診療科や医療ソーシャルワーカーなどが連携し、対応しているところでございますが、今後は、ご提案を踏まえまして、院内に検討会を設置するなど、体制整備に取り組んでまいります。
 
▲ページのトップへ
■AEDの学校への導入
   
 次に、自動体外式除細動器、AEDの導入について伺います。
 人は、呼吸が停止した場合、二分以内に救命処置を施せば九〇%の確率で命が助かるといわれており、逆に処置がおくれれば、一分経過するごとに一〇%から二〇%ずつ救命率は低くなると指摘されております。この救命処置の唯一の方法が、除細動、すなわち電気ショックを心臓に与えて正常な状態に戻すことであります。昨年七月、厚生労働省は、これまで医療従事者しか使用できなかったAEDを、一般の人でも一定の条件のもとで使用できるよう法制度を改めました。そこで、伺います。
 

 
質問1
 教育庁は、体育活動中に心臓疾患が原因で死亡した都立高校生は過去五年間で五名おり、また、心臓に何らかの障害を抱えている都立学校の児童生徒は千三百七十七名に上ると報告しております。こうした現状にもかかわらず、現在、都立学校にはAEDが一基も設置されておりません。一刻も早く、都民の安全、安心、健康を守る立場から、AEDを都立の全学校に設置すべきであります。所見を伺います。
 
答弁1
 ▼教育長
 都立学校へのAEDの導入についてでございますが、都教育委員会では、今後、公共施設等にAEDが急速に普及することを踏まえまして、今年度から、教職員を対象としたAEDの実技講習会を開始したところであります。
 また、生命を尊重し、救命救急活動を行える人材育成のため、各学校におきまして、生徒を対象に、関係機関との連携を図りながら、救命実技講習会などを推進してまいります。
 さらに、都立学校へのAEDの配備につきましても、試験的な導入を含めまして、早急に検討してまいります。
 
▲ページのトップへ
■天井崩落防止(耐震)対策
   
 次に、体育館、屋内プール、劇場などの大規模空間を持つ建築物の耐震対策について伺います。
 ことし八月に発生した宮城県沖地震では、仙台市内のスポーツ施設で天井崩落事故が発生し、多数の負傷者が出ました。また、一昨年九月に発生した十勝沖地震では、空港ターミナルビルの天井が崩落する被害が起きております。
 

 
質問1
 こうした事故を受けて、国土交通省は先月、大規模空間を持つ建築物の天井の崩落対策の調査結果を発表し、問題のある施設が、公共施設を含め全国で約五千施設あると報告し、東京でも三百二十カ所と指摘しております。マンションなどの強度が偽装されていた問題で建物の安全性が問われている今こそ、都内のスポーツ施設や劇場、ホールなど、不特定多数の人々が利用する施設の安全対策が強く求められます。都民の不安にこたえるために緊急に対策を講ずるべきであります。所見を伺います。
 
答弁1
 ▼都市整備局長
 大規模空間を持つ建築物の天井落下防止対策についてでございますが、震災時における大規模空間を持つ建築物の天井落下を防止することは、人命を守る上で重要でございます。
 都は、平成十七年八月の仙台市スポーツ施設における天井落下事故を踏まえ、調査を実施したところ、都内で三百二十棟の建築物について対策が必要であることが判明いたしました。
 このため、都及び区市は、所有者等に対して是正指導を行い、十一月末には、五十三棟が振れどめの設置などの落下防止対策に取り組んでおります。まだ対策がなされていないものにつきましては、区市と連携し、早急な是正に向け、所有者等を強く指導してまいります。
 

 
質問2
 都内には、五百平米以上の大規模空間を持つ都立施設が数多く存在します。これらについては真っ先に調査し、必要なものは改修などの安全対策を講ずるべきであります。見解を伺います。
 
答弁2
 ▼財務局長
 大規模空間を持つ都立施設の天井落下防止対策についてでございますが、仙台市のスポパーク松森における天井落下事故を受け、都立施設の管理者に対し、振れどめ、天井と壁との間隔、天井の段差などの状況につきまして技術的な点検基準を示し、大規模空間を持つ建築物の緊急調査を実施いたしました。
 今後、専門的な判断が求められる建築物につきましては、さらに詳細調査を実施した上で、必要に応じて安全対策を講じてまいります。
 

 
質問3
 次に、こうした大規模空間を持つつり天井型の建物の安全性については、いわゆる指導指針、ガイドラインしかありません。これでは、地震による崩落を回避するためには十分ではありません。都は、指導指針の見直しや条例化を図り、実効性あるものに改めるべきであります。見解を伺います。
 
答弁3
 ▼都市整備局長
 つり天井に関する技術指針の条例化についてでございますが、大規模空間を持つ建築物の天井落下を防止するため、都は、国土交通省の技術指針をもとに、建築主に対し、落下防止対策の実施を求めております。
 大規模空間を持つ建築物の天井落下防止対策は、人命にかかわる全国的な課題であり、今後の是正状況を踏まえ、より実効性のある方策を講じるよう、国に対し強く要請してまいります。
 
▲ページのトップへ
■地下鉄13号線
   
 次に、地下鉄十三号線に関連する課題について伺います。
 東京メトロが建設する地下鉄十三号線は、池袋、新宿、渋谷の各駅で多くの鉄道路線を連結することにより、鉄道のネットワークを充実させ、利用者の利便性を高めるものであります。新宿、豊島、渋谷各区の住民からも、副都心への重要な足となるだけでなく、沿線の発展、まちの活性化に大きく寄与するものとして、大きな期待を寄せられております。
 

 
質問1
 そこで、十九年度開通時に新設される各駅の自転車駐輪場対策について伺います。
 都心の共通課題として各区が頭を痛めているのが放置自転車対策であります。豊島区では、独自に放置自転車等対策推進税を創設し、鉄道事業者に対して、放置自転車対策費の一部負担を求める一方、駐輪場を整備する場合には税の減免制度を適用しています。
 十三号線駅周辺の自転車駐輪場の整備、放置自転車対策について、都は、指導性を持って、東京メトロと新宿、豊島、渋谷の各区との協議を進めるべきと考えます。見解を伺います。
 
答弁1
 ▼都市整備局長
 地下鉄十三号線整備に伴う駐輪場設置についてでございますが、駐輪場の設置に当たりましては、地元区が設置、管理を行い、都はその支援を行うといった役割分担のもと、区が主体的に取り組むべきものとなっております。これまで、大江戸線、半蔵門線など地下鉄整備に際しましては、こうした役割分担により駐輪場の設置を推進してまいりました。
 都といたしましては、地下鉄十三号線整備に伴う新駅周辺の駐輪場設置につきましても、設置主体である地元区の積極的な取り組みに対し、技術的支援や国費の導入、鉄道事業者との調整など、必要な支援を行ってまいります。
 

 
質問2
 第二に、地下鉄十三号線に関連して、地上部を走る明治通りの整備について伺います。
 現在、道路拡幅工事が行われておりますが、この明治通りは、慢性的な道路交通渋滞と通行困難なほど狭い歩道幅について、地元から改善を要望する声が上がっております。歩道の拡幅を初め、歩道の段差、傾斜、勾配の改善を行い、高齢者、障害者等の安全を確保するバリアフリーの歩行空間とすべきであります。
 さらに、電線類の地中化を行い、景観にも配慮すべきであります。所見を伺います。
 
答弁2
 ▼建設局長
 明治通りの拡幅整備についてでありますが、本路線は、副都心である渋谷、新宿、池袋を結ぶ重要な幹線道路でありまして、現在、新宿区の戸山地区や大久保地区など七カ所、四・三キロで事業中でございます。
 整備に当たりましては、歩道を四・五メートルに拡幅し、電線類の地中化を行うとともに、高木と低木による連続した植栽帯を設け、緑豊かで良好な景観の形成に努めてまいります。
 また、バリアフリー対策といたしましては、歩道の段差解消や視覚障害者誘導用ブロックを適正に配置するなど、だれもが安心して通行できる歩行空間を確保いたします。
 今後とも、地元の理解と協力を得ながら、着実に事業を推進してまいります。
 

 
質問3
 第三に、地下鉄十三号線の開通に伴う地下歩行者道の延伸について伺います。
 十九年度に開通する十三号線新駅とサブナードを接続させ、さらに新宿大ガードから都営大江戸線新宿西口駅までの区間に延伸させることで、広範囲な地下歩行者ネットワークを創出することができます。これにより、新宿駅の東西を結び、駅周辺の回遊性を高め、加えて、歩行者の利便性を向上させるものとして、地元住民から大きく期待をされております。
 新宿駅周辺は都市再生緊急整備地域にも指定されており、新たな歩行者ネットワークを構築する絶好の機会であります。新宿サブナード、すなわち地下歩行者道を十三号線や大江戸線新宿西口駅に接続することについて、都は、積極的に国土交通省や東京メトロ、さらに新宿区、地元周辺事業者との協議を進め、新宿駅周辺の新たな歩行者ネットワークの構築を推進すべきであります。所見を伺います。
 
答弁3
 ▼都市整備局長
 新宿駅周辺の新たな地下歩行者道ネットワークの構築についてでございますが、靖国通り地下歩行者道の地下鉄十三号線や大江戸線への延伸は、歩行者の利便性や回遊性の向上に資するものと認識いたしております。
 大江戸線への地下歩行者道の延伸につきましては、西武新宿線地下駅の整備が具体化していないことや、新宿大ガードとの近接施工となることなど、多くの課題がございます。
 一方、十三号線への地下歩行者道の延伸は、周辺のまちづくりとの整合性を踏まえた上で、整備主体、事業スキームなどを検討することが不可欠でございます。
 都といたしましては、区のまちづくりへの支援や十三号線への延伸の検討会に参画するなど、地元区の取り組みに対し協力してまいります。
 
▲ページのトップへ

戻る
ユーザーレビュー