公会計制度に減価償却費導入を
木密地域耐震改善の早期推進を |
中嶋 義雄(公明党) |
■三位一体改革 |
質問1
都議会公明党を代表いたしまして、知事並びに関係局長に質問をいたしたいと思います。
最初に、国と地方の税財政を見直す三位一体改革について伺いたいと思います。
政府と地方六団体は、このほど補助金削減と税源移譲について正式に合意いたしましたが、内容は依然として問題があります。
まず、地方の側が強く反発していた生活保護費削減を見送ったのは極めて当然であります。生活保護は、国が憲法で定めた国民の生存権を保障するための制度であり、国の責任で堅持すべきであります。ところが、今回、この生活保護費削減を見送ったことの代替措置として、児童扶養手当と児童手当の削減を打ち出してまいりました。
児童扶養手当は、国の負担割合を現在の四分の三から三分の一に引き下げ、児童手当も三分の二から三分の一に引き下げられます。したがって、新たな財源移譲がなければ、一方的に地方の負担増を強いるものとなり、地方分権を推進する改革の趣旨に逆行いたします。少子化対策は、国の責任として取り組んでいくべき最も重要な政策テーマであります。児童扶養手当と児童手当については、必要な財源を間違いなく確保し、事業の推進を図るべきであります。所見を伺います。
答弁1
▼福祉保健局長
児童手当及び児童扶養手当についてでございますが、これらの手当は、次代の社会を担う子どもの健全な育成や資質の向上を図るとともに、母子家庭などの生活を支える上で大切な役割を果たしております。少子化が急速に進行する中、子育て家庭に対するこうした経済的支援は、国の主要な政策課題の一つとして、制度設計はもとより、その財源確保については国が責任を持って行うべきものでございます。
今後、必要な財源について確保するよう国に対して強く要望するとともに、都としても確実な事業実施に努めてまいります。
質問2
また、国土交通省の公営住宅家賃補助金が約六百二十億円削減されます。東京都など多くの公営住宅を抱えている自治体には影響が懸念されます。補助金が削減され、一般財源化されることによる家賃の上昇、また、家賃減免策や修繕、建てかえへの影響など、都の住宅政策を後退させてはなりません。今後とも財源確保に努め、都の住宅政策を拡充すべきであります。所見を伺います。
答弁2
▼都市整備局長
住宅政策についてでございますが、三位一体改革の中で、公営住宅家賃対策補助金が削減され、税源移譲とする方向で政府・与党が合意いたしました。詳細につきましてはまだ不明確なところがございますが、住宅は都民生活の重要な基盤であると認識しており、都営住宅入居者が安心して居住できるよう、引き続き必要な施策を講じてまいります。
今後とも、公的住宅を初め住宅セーフティーネット機能の充実に努めるなど、住宅政策の積極的な展開を図ってまいります。
今後も、いわゆる三位一体改革の議論が続きます。真の地方分権の達成、あるいは大都市行政の充実、都市再生のさらなる推進につながる議論となるよう、知事初め都当局の一層の努力を求め、次の質問に移りたいと思います。
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■新たな公会計制度の活用 |
質問1
続いて、いよいよ平成十八年度から実施される公会計制度改革について、とりわけ発生主義会計の適用による行財政改革について、提案を行いたいと思います。
公会計に発生主義の考え方を適用することにより、新たに生じる概念が減価償却であります。行政であれ、企業であれ、一たん取得した有形固定資産は、時の経過や施設の利用によって必ず減価してまいります。したがって、その有形固定資産の将来の更新をにらんで、各年度に必要な経費を配分していかなければなりません。これが減価償却費であります。こうして一般の企業では、支出を伴わない経費として減価償却費相当分を内部に留保することができ、その資金を資産の維持更新に活用することが可能であります。
ところが、行政の場合は、利益を生むことを第一義としないため、減価償却を実施しても、維持更新のための資金を内部に留保することができません。行政は、民間の企業以上に、都庁舎を初めとする教育、福祉、医療等のさまざまな施設を保有しており、都民へのサービスを考えた場合、施設の適切な維持管理や更新は不可欠であります。しかし、現状では、その財源は特に手当てされておりません。
一時的に多額の財源を捻出することが難しい昨今の財政事情を考えた場合、これでは教育、福祉、医療等のさまざまな施設の更新が困難になります。都民サービスを後退させないためにも、発生主義会計の活用策の一つとして、減価償却費相当分を各年度に積み立てる新たな仕組みを構築すべきであります。知事の所見を伺いたいと思います。
答弁1
▼知事
新たな公会計制度の活用についてでありますが、大概、日本のどの家庭にも家計簿があると思います。一種のバランスシートでありますけれども、国にこれがない、いかなる地方自治体にもこれがないというのは本当におかしな話でありまして、そういう意味でも複式簿記の導入というものを試みました。私は、経営感覚という民間企業では至極当然の意識というものを都庁に根づかせて、職員の一人一人が時間も含めてコスト意識というものを持ち、また金利感覚を持って行政運営を行うために公会計制度の改革を進めてまいりました。
今後増大が見込まれる維持更新費用の財源確保のために、この改革の中でも明らかになる減価償却費という新たな情報を活用して、あらかじめ基金に財源を留保しておくことは大切な視点であると思っております。
新たな公会計制度を導入する中で、その利点を実際に活用して初めて仏に魂が入るものでありまして、ご指摘の点も踏まえて、今後、活用策を十分に検討していきたいと思っております。
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■東京都独自の減税政策 |
質問1
次に、東京都独自の減税政策について伺います。
東京都は、現在、新築住宅の取得を税制面から支援するため、平成十二年一月二日から平成十八年一月一日までの間に新築された二十三区内の住宅について、固定資産税及び都市計画税を三年度間減免いたしております。平成十七年度においても、減免対象件数は約二十八万件、減免額は二百三十億円を見込んでおります。これまでも、住宅建設の景気に与える影響等を考慮して、一年ごとに延長をしてまいりました。
そのような中、たび重なる地震の被害とマンションなどの耐震構造設計偽装事件により、今日ほど都民の住宅耐震化への関心が高まっているときはありません。当然、新築住宅の耐震構造が強固になればなるほど、実は固定資産税や都市計画税の評価額も上昇することになり、都民への負担が増大いたします。
都の財政状況、国の税制改正の動向、経済効果だけでなく、今、最も注目されている住宅の耐震化の観点からも、十八年度も引き続き、新築住宅の取得に際しての固定資産税及び都市計画税の減免を継続すべきであります。都の見解を伺いたいと思います。
答弁1
▼主税局長
新築住宅に係る減免は、景気対策及び良質な住宅ストック形成に資することを目的といたしまして、平成十二年度に三年度間の時限措置として創設したものでございます。この措置の継続につきましては、適用期限到来後におきまして景気に与える影響等を考慮いたしまして、一年ごとに減免措置を延長しているものでございます。
なお、新築住宅への建てかえにつきましては、耐震化にも寄与するものと考えております。
来年度の取り扱いにつきましては、その経済効果、景気動向、都の財政状況等を勘案いたしまして、今後、積極的に検討してまいります。
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■耐震構造設計偽装問題 |
続いて、既に繰り返し出ておりますが、耐震構造設計偽装問題について伺います。
今回の事件は、まず第一義的に、設計事務所を初めとする施主、施工者など関係者の倫理観の致命的な欠如が原因であります。現在進められている国、自治体の調査の徹底はもとより、司法当局の厳正な捜査、責任の追及が不可欠であります。さらに、被害者の救済策の確立を急ぎ、それとともに強力で効果的な再発防止策を早急に構築する必要があります。そうした観点から、以下、質問したいと思います。
質問1
十一月二十一日、国土交通省は、震度五の地震によって倒壊のおそれがあるマンションやホテルが多数存在すると発表いたしました。これを受けて都議会公明党は直ちにプロジェクトチームを発足させ、二十四日には墨田区の該当マンションの緊急視察を行いました。その結果、まずはマンションの居住者の安全を守るために都民住宅等の提供を行うべきであると石原知事に申し入れを行い、翌二十五日、都が最大五百戸の都民住宅等のあっせんを行うと表明したことは、迅速な対応として高く評価したいと思います。
昨日、政府は、構造計算書偽装問題について公的支援策を取りまとめました。さまざまな評価と判断は確かにございます。しかし、都は、この公的支援策を踏まえながら各区市と緊密に連携をとり、居住者の安全と居住の安定の確保に、まずは万全の対策を講ずるべきであります。知事の所見を伺います。
答弁1
▼知事
構造計算書偽造問題にかかわる居住者支援についてでありますが、繰り返して申しましたけれども、今回の問題の背景は、国が指定した民間確認検査機関の審査に自治体が実質的には関与できない仕組みとなっていることでありまして、国による確認検査機関への指導監督はいかにも不十分であったこと、こうした中で当然起こった事件ともいえるようですが、国の責任は極めて重大であると思います。
偽造の当事者や瑕疵担保責任を有する売り主は当然でありまして、元請の設計事務所や国の指定確認検査機関など、関係者の責任追及も必要だと思っております。
しかしながら、繰り返して申しましたが、都としては、何よりも都民の生命の安全を確保する必要から、緊急措置として都民住宅などの活用を決定し、また固定資産税及び都市計画税の減免も決定いたしました。
事件発生以来、国交省といろいろ接触がございましたが、都から国に対して、とにかく一刻も早く支援の統一的な見解を示すように求めてまいりました。それが昨日ああいう形で出てまいりましたが、基本的には都は非常に不満でありますけれども、しかし、先ほど申しました、地震があす来るかもしれないという実態の中で、都民の安全というものの確保のために、国の支援方策を踏まえながら、区市とも連携を図り、居住者の速やかな退去と円滑な生活再建に向け、必要な対策を講じていくつもりでございます。
質問2
被害者の支援に当たっては、きめの細かな配慮が必要であります。多額のローンを抱えた人などに対しては、国と協議して家賃負担の減免策を実施すべきであります。
さらに、障害者や高齢者を有する家庭に対しては、福祉保健サービスと連携した支援策が必要であり、転居に伴う転校や保育園、幼稚園の再入所等に対しても、弾力的な支援策を区市と連携して実施すべきであります。都の見解を伺います。
答弁2
▼教育長
耐震構造設計の偽造問題に伴います子どもの転校等についてでございます。
都教育委員会は、耐震構造設計偽造にかかわります建物に入居している幼児、児童生徒の転居に伴う転校等につきましては、弾力的かつ速やかに取り扱うよう、区市町村教育委員会に働きかけてまいります。
▼福祉保健局長
構造計算書偽造による転居者への対応についてですが、高齢者や障害者の中には、生活の場を移すことにより、ホームヘルプサービスやデイサービスなどについて、事業者やサービスを利用する場を変更せざるを得ない状況が生じることは認識しております。また、子どもを抱える家庭では、保育所の再入所が必要なケースも想定されております。こうした場合にあっても、転居を余儀なくされる方々の日常生活に支障が生じることのないよう、関係区市町村に要請してまいります。
▼都市整備局長
構造計算書偽造問題にかかわるマンション居住者に対する経済的支援措置についてでございますが、今回の事態は、制度の構造、運用に根幹的な問題があって生じたものでありまして、都は国に対し、国みずからの責任を明らかにするとともに、国が統一的支援のあり方を示すことが国の責任であるとして、強くこれを求めてまいりました。昨日、国は、住民の安全確保や生活の安定を図るため、転居費用や転居先家賃の助成など、居住者に対する公的支援策を発表いたしました。
公的支援を行うに当たりましては、国に設置されました構造計算書偽造問題対策連絡協議会において、転居費用や家賃の助成について関係自治体間での統一的な取り扱いを検討することとされており、都といたしましては、その中で国や区市と十分協議し、適切に対応してまいります。
質問3
次に、こうした居住者の安全対策や事実確認のために、都が構造計算偽装問題対策本部を設置し、取り組みを開始していることは、当然のこととはいえ評価いたします。しかし、真相究明や再発防止策の検討を進めるためには、弁護士や建築士などの専門家を加えた第三者機関が必要であります。
建築の専門家によると、建築確認の審査機関に構造設計がわかる専門家が極めて少なく、時には全くいない場合もあると指摘しておりました。また、構造設計は意匠設計士の下請にすぎず、立場が弱くなることもたびたびあるとも指摘をしておりました。さらに、設計士そのものが施主や施工者に対して下位に当たり、一つの仕事に一年以上拘束されながら、収入が四百万とか五百万のレベルにとどまることが少なくなく、このままでは設計士のモラルの低下から、いずれこのような事件が発生するのではないかと危惧していたともいっておりました。
今回の事件の原因は、一部の悪質な建築業者の慣行や体質にまでさかのぼるかもしれず、専門家を含めた検討が不可欠であります。所見を伺います。
答弁3
▼都市整備局長
偽造問題に対する第三者的な調査機関の設置についてでございますが、今回の偽造問題におきましては、都民の安全確保のため、国や特定行政庁である区市と連携し、機動的な対応を図っていくことが何よりも重要でございます。そのため、都は十一月二十一日、局内に構造計算書偽造問題対策本部を設置し、元請設計事務所への立入検査や都民住宅等への受け入れなどを行ってまいりました。
第三者機関の設置につきましては、国において法改正等を行う際には極めて有効であると考えます。実務を担当しております都におきましては、現場を熟知している建築士の資格を持つ職員や顧問弁護士等を十分活用しながら、構造計算書偽造の真相解明や再発防止策の検討に全力で取り組んでまいります。
質問4
また、建築士の責任を明確にするためには、確認をおろす際、構造の設計技術者の氏名を公表するよう制度を改めるべきであります。あわせて、民間の指定確認検査機関のあり方についても、根源から再検討すべきであります。所見を伺います。
答弁4
▼都市整備局長
構造設計者の氏名公表と民間の確認検査機関のあり方についてでございますが、元請設計者の氏名につきましては、建築計画概要書の閲覧制度や工事現場の表示板により知ることができるようになっております。一方、下請の構造設計者につきましては、閲覧制度等の対象外となっておりますが、構造設計に対する責任の所在を明確にするため、氏名の公表は必要であると考えます。
また、民間の確認検査機関のうち、国が指定した確認検査機関に対しましては、都の指導監督権が及ばないほか、確認検査機関の審査に自治体が関与できない仕組みとなっております。
都といたしましては、構造設計者の氏名公表と指定確認検査機関への監督強化などについて、国の責任において徹底的な制度の検証と見直しを行うよう強く求めてまいります。
質問5
いわゆる経済的規制と安全・安心に関する社会的規制は、その取り扱いは当然異なるべきであります。社会的規制については、例えばヨーロッパの厳格な都市計画などを参考に、今後は改めて考え直すべきであります。
特に安全・安心のまちづくり、防災に関心が高まっている現在、今後の都市計画や都市整備のあり方に対して、たとえ時間がかかっても根源的な検討を行うべきであります。経済的規制は、基本的には緩和の方向にありますが、安心・安全にかかわる社会的規制に対して、改めて都の見解を伺いたいと思います。
答弁5
▼都市整備局長
安全・安心の都市づくりについてでございますが、東京を災害に強いまちにしていくことは、都市づくりの最も基本的な課題でございます。
都は、これまで、避難場所の確保や個々の建築物の耐震性及び耐火性の向上に取り組んでまいりましたが、地域全体として見た場合、例えば木造住宅密集地域では、いまだ危険な建物も多く、また、道路等の公共空間が不十分なこともあって、必ずしも安全なまちとなっていないのが実情であります。
このため、今後、延焼遮断帯となる幹線道路と周辺市街地を一体的に整備することや、細分化された敷地を統合しながら共同化を段階的に行う街区再編まちづくり制度、あるいは細街路の整備を促進する地区計画などを積極的に活用してまいります。
こうした都市整備の施策を重層的に講じていくことで、都民の生命、財産を守る安全・安心のまちづくりが実現されると考えます。
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■住宅、建築物の耐震対策 |
質問1
公明党は、さきの第三回定例会において、石原知事に対して、震災対策の最大の眼目は住宅の耐震化である、今こそ住宅の耐震助成制度を設けるべきであると訴えました。これを受け、石原知事は、初めて耐震化助成に取り組むことを明言されました。
また、本年十月には、改正耐震改修促進法が成立し、国は、住宅、建築物の耐震化の目標を九〇%と定め、所有者等が耐震診断や耐震改修を行うための環境整備、負担軽減のための基本方針を定めるとしております。
一方、都道府県に対しては、耐震改修促進計画の策定を義務づけており、いずれ都も促進計画を策定して目標を示し、具体策を実施していく必要があります。都の所見を伺いたいと思います。
答弁1
▼都市整備局長
建築物の耐震対策に関する耐震改修促進計画の策定についてでございますが、地震による建築物の倒壊等の被害から都民の生命を守るためには、建築物の耐震改修を促進することが重要であると認識しております。このため、都は、平成十二年に耐震改修促進実施計画を策定し、耐震化の促進に取り組んでまいりました。
今回の法改正を踏まえ、耐震化の目標や、優先的に指導を行う建築物等を明らかにし、平成十八年度の早期に耐震改修促進計画として策定する予定でございます。今後とも、区市等と連携を図りながら、地震に強いまちづくりを着実に推進してまいります。
質問2
第二に、木造住宅の耐震化のための助成制度についてであります。
大きな地震が発生した場合、木造住宅密集地域では多くの家屋が倒壊し、避難路が遮断され、救急活動等にも多大な支障を来すおそれがあります。そこで、これらの地域については、国の住宅・建築物耐震改修事業補助制度とともに地域住宅交付金制度を活用して、耐震診断、耐震改修事業を早期に推進する必要があります。実施主体である区に対して、都としても助成を行うべきでありますが、都の所見を伺いたいと思います。
また、木密地域における建物の共同化が進展せず、細街路の解消やオープンスペースの確保が困難になっております。この問題の解決策の一つが、いわゆるテラスハウス型の建築物による住宅の共同化であります。これによって敷地の有効利用が促進され、かつ耐火壁を建設することにより耐震性も向上し、延焼防止にも効果を発揮いたします。早急に具体的な推進策を検討すべきであります。見解を伺います。
答弁2
▼都市整備局長
耐震診断、耐震改修の助成についてでございますが、木造住宅密集地域などにおきまして木造住宅の耐震化を進めることは、都市防災を進める上で極めて重要でございます。
このため、都は、建物の倒壊による道路閉塞を防止するなど公共性の高い地域を対象に、国の補助事業や交付金制度を活用して耐震診断や耐震改修に関する助成事業を行う区に対し、新たに助成を行うことを検討しております。
次に、テラスハウス型建築物による共同化の推進についてでございますが、木密地域における建物の共同化は、耐震性の向上や延焼防止に効果があると認識しており、ご指摘のテラスハウス型建築物による共同化も、防災性向上の観点から有効な方策の一つと考えております。一方、建物の共同化には、合意形成の困難性や事業採算性の確保など、多くの課題がございます。
今後は、こうした課題解決に効果的な街区再編まちづくり制度や密集市街地整備法に基づく防災街区整備事業などの多様な手法を活用し、建物の共同化を一層進めて、地域の防災性の向上を図ってまいります。
質問3
第三に、学校や病院、百貨店などの多数の人が利用する建築物については、耐震性の状況を情報開示する仕組みを策定すべきであり、同様に、建築物の売買や賃貸借時に耐震診断の有無等について情報開示する仕組みが必要であります。あわせて見解を伺いたいと思います。
答弁3
▼都市整備局長
建築物の耐震性に関する情報開示についてでございますが、耐震性の情報を提供することは、都民に安心感を与えるとともに、建築物の所有者の耐震化に対する意識を高めるものと考えております。このため、都は、病院や百貨店など多数の人が利用する建築物のうち、一定レベル以上の改修を実施した建築物に対し改修済み証を交付し、建築物への掲示を指導しております。
今後は、これらに加え、都の耐震化の指示に従わない場合には、その内容を公表することも検討してまいります。
また、建築物の売買や賃貸借時の情報開示につきましては、現在、国において、契約に際し宅地建物取引業者が交付する重要事項説明書の中に、耐震診断の有無及び耐震性の状況について記載することを検討しているところでございます。
都といたしましては、国の動向を踏まえ、都民への情報提供について適切に対応してまいります。
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■病院の耐震対策 |
質問1
関連して、特に病院の耐震対策について伺います。
震災など大災害時には、病院における防災マニュアルの策定、災害医療を実施するスペースと機能の確保、さらに医師、看護師、職員の参集体制の整備、水、食料、医薬品などの備蓄、また発災後の時間の経過や被害者の状況に合わせた対応体制の整備などが強く求められています。こうした課題にこたえるために、まずは都は、都内の病院の耐震対応の状況を把握すべきであり、そのための実態調査を実施すべきであります。所見を伺いたいと思います。
答弁1
▼福祉保健局長
都内病院の防災対策についてでございますが、都は、都内すべての病院がみずから防災対策に取り組めるよう、標準的な防災訓練マニュアルや施設設備自己点検チェックリストを配布するほか、防災訓練説明会などを通じまして災害発生時の適切な対応を指導し、防災訓練の実施状況などについて報告を求めてまいりました。
今後、都内病院の災害発生時の対応を一層向上させるためには、各病院のマニュアルの内容などについてより詳細な把握が必要でございますので、東京都医師会の協力を得て調査を実施してまいります。
質問2
少なくとも公立病院と災害拠点病院については、都がマニュアルの内容や訓練の実施について点検し、必要に応じて改善を助言するような仕組みづくりが必要であります。あわせて所見を伺いたいと思います。
答弁2
▼福祉保健局長
災害拠点病院などの防災対策についてでございますが、都はこれまで、災害発生時の医療体制の中核を担う災害拠点病院を指定し、自家発電装置や受水槽、耐震補強などの施設整備補助を行ってまいりました。また、防災訓練の実施状況や備蓄資器材の点検結果等について報告を求め、防災対策の確認も行ってまいりました。
今後、公立病院や災害拠点病院に関しましては、先ほど申し上げた調査を通じてマニュアルの内容や訓練の状況を点検した上で、毎年開催しております災害拠点病院連絡会を初め、さまざまな機会を通じて改善点についての助言を行うなど、各病院が一層実効性ある対策を確立できるよう、指導を徹底してまいり、
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■水害対策 |
質問1
本年九月四日、都内全域で約六千棟にも及ぶ集中豪雨による被害が出ました。広範囲にわたった浸水被害に対して、公明党は、再発防止対策を強く求めてきたところであります。今回の水害では、河川から離れた箇所での浸水被害が発生いたしました。これは、河川からの溢水による水害だけでなく、雨水を河川や下水道が吸収し切れないために発生する浸水被害、いわゆる内水被害が発生したことを意味しております。
現在、河川、下水道ともに一時間五〇ミリの降雨に対応すべく整備が進められておりますが、河川の未改修区間に下水道から大量に水が放流されると、たちどころに洪水被害が発生します。したがって、下水道の河川への放流量には一定の制限が加えられています。そのため、既に河川改修が進み流下能力が向上しているにもかかわらず、五〇ミリ改修が完了していないことを理由に、下水道放流が三〇ミリに制限されている場合が存在いたします。これは再検討すべきであります。つまり、改修途中であっても、流下能力が高められた段階で、それに応じた制限の解除を行うなど、きめ細かな調整を進めることで被害の軽減が可能になります。局の見解を伺いたいと思います。
答弁1
▼建設局長
下水道から河川への雨水の放流についてでございますが、河川の整備は、原則として下流から順次進めておりまして、下水道からの放流につきましては、それぞれの河川の整備状況を十分考慮して対応する必要がございます。このため、これまでも、護岸の改修や調節池の設置など、河川整備の進捗に応じ放流量の調整を行ってまいりました。
今後は、さらに、個々の水害の発生状況も踏まえ、河川と下水道とが緊密に連携し、お話しのように、放流量につきましては、よりきめ細かく調整を行い、流域の水害の軽減に努めてまいります。
質問2
河川の整備は、用地買収やさまざまな調整を経て、下流から徐々に進めていく事業であり、莫大な時間と費用がかかることはいうまでもありません。それだけに、着実に治水安全度を向上させるためには、河川整備の中長期的計画を見据えた上で具体的な事業方針を策定し、効率的に事業を進めていくべきであります。あわせて都の見解を伺いたいと思います。
答弁2
▼建設局長
今後の河川整備の進め方についてでございますが、都では、四十六河川、三百二十四キロを対象に、一時間五〇ミリの降雨に対応する河川整備を進めております。中でも、神田川や空堀川など、浸水被害が多く、流域の市街化の進展が著しい十三河川を重点河川と位置づけ、整備しております。
今後、妙正寺川などにおきまして河川激甚災害対策特別緊急事業を着実に進めるとともに、これまでの集中豪雨による浸水被害や整備効果などの検証を行うなど、ご提案の趣旨も踏まえ、五〇ミリ対策をより効果的に進めるための整備方針を検討してまいります。
あわせて、浸水予想区域図の拡充などソフト対策も進め、都民生活の安全確保に積極的に取り組んでまいります。
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■アスベスト対策 |
質問1
有害廃棄物である飛散性アスベストが、依然として他県で処理されている不安定な状況の中で、今回発表されたセメントで固化して都の処分場で受け入れる方針は、技術が未成熟な現在の段階では最善の策といっても過言ではないと思います。
本来なら、アスベストを高温で溶かして無害化することが、埋立地に負荷を与えず、有効利用できる最良、ベストの方法であります。しかし、技術の開発は決して容易ではなく、時間がかかります。有害廃棄物であるPCBにしても、三十年間も保管した後、ようやく最近処理が始まったばかりであります。国や産業界と連携し、一日も早くアスベストの無害化技術の開発を行うべきであります。技術開発の現状と今後の見通しを明示していただきたいと思います。
答弁1
▼環境局長
飛散性アスベスト廃棄物の処理についてのご質問にお答えいたします。
安全で安定的にアスベスト廃棄物を無害化処理していくためには、信頼性の高い技術の開発が必要であります。
現在、他県において、飛散性アスベスト廃棄物を溶融処理している民間の施設がありますが、処理能力や技術的にも課題が多いと聞いております。
こうした中で、民間の研究機関等において、飛散性アスベスト廃棄物の無害化に関する研究開発が進められておりますが、今後、都においても、処理方法などについて調査研究を重ね、国や産業界などと連携して、できるだけ早い時期に無害化処理が実現できるよう努めてまいります。
質問2
また今後、環境局の調査結果のほかでも、改修工事中などにアスベストが発見される可能性が少なくありません。その場合、これに対する除去、処理に関するコストの問題が発生いたします。少なくとも都施行の工事等に関しては、都が責任を持って工期への配慮や費用負担を行うべきであります。都の所見を伺いたいと思います。
答弁2
▼財務局長
工事中のアスベストの処理についてでございますが、改修、解体時のアスベスト除去工事においては、周辺への飛散防止と作業従事者の安全確保が重要であり、その対策に万全を期しているところでございます。
また、工事中に新たにアスベストが確認された場合は、こうした対策に加え、その処理に要する工事費の増額や、必要に応じた工期の変更を行っております。
今後とも、工事に伴うアスベスト処理については適切に対応してまいります。
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■介護保険制度 |
質問1
介護保険制度については、要介護者の増加に対応して、サービスの質の向上や、より安定した制度の維持を図る観点から、必要な改正が本年行われたところであります。しかし、そうした中で、許しがたいのが、一部の悪質な事業者による介護報酬にまつわる不正であります。
今年九月に厚生労働省が発表した調査結果によると、不正が指摘され、業者指定の取り消し等の対象となった事業所は、全国四十一都道府県で三百十三事業所に上っております。東京都においても、介護保険制度がスタートして以来、指定取り消し件数が十五事業所、返還請求総額は一億六千万円に達しております。
改正介護保険法では、これまでの都道府県に加え、新たに区市町村にも、介護給付に関して疑義のある介護サービス事業者等に対し、立入調査権限を付与いたしました。
そこで、第一に、法改正の趣旨を踏まえて、優良な事業者を正当に評価するためにも、早急に区市町村と連携した不正防止策の強化を行うべきであります。まず都の見解を伺います。
答弁1
▼福祉保健局長
介護サービス事業者への指導強化についてでございますが、都はこれまでも区市町村と連携して、事業者への法令遵守の徹底や不正防止対策に努めるとともに、区市町村が行う事業者への指導、調査権限を強化するよう、国に対し提案してまいりました。今回の法改正では、この提案の趣旨に沿いまして、区市町村に立入調査権が付与されたところでございます。
都は、区市町村が効果的に指導、調査をできるよう、不正事例についての情報交換を初め、共通のチェックリストを今年度内に作成するなど、必要な支援を行ってまいりますが、さらに、都と区市町村との合同による指導検査の実施についても検討を進めているところでございます。
今後とも、広く不正防止の徹底に向け、このチェックリストを活用し、区市町村と連携して事業者を強力に指導してまいります。
質問2
第二に、今回の介護保険法の改正の中では、これまで無期限だった介護サービス事業者の指定に有効期間を設け、六年ごとの更新制が導入されました。また、新たに利用者の選択に資する事業者情報を公表する介護サービス情報の公表の仕組みが導入されます。サービスの質の向上を図るのみならず、不正を防止する観点からも、これらの新しい仕組みを効果的に活用すべきであります。都の所見を伺います。
答弁2
▼福祉保健局長
不正防止への新たな仕組みの活用についてでございますが、都は、今回の法改正により導入された事業者指定の更新に当たっては、指導検査結果や苦情等の情報も活用いたしまして、人員、設備などの基準への適合性を厳格に審査いたします。
また、来年度からの実施に向けて準備を進めている介護サービス情報の公表事業は、都内の全介護サービス事業者を対象に、毎年一回、指定調査機関が調査を行い、その結果を公表する点において利用者の選択に資するとともに、事業者の不正を抑止する上でも有効なものと考えております。
今後とも、こうしたさまざまな取り組みを通じまして、実効性のある不正防止対策を推進してまいります。
質問3
第三に、区市町村独自の不正防止対策への支援であります。
不正請求防止対策を効果的に実施するためには、保険者である区市町村の主体的な取り組みが重要です。例えば足立区では、区独自に専門調査員を派遣して、介護サービスを利用している高齢者への訪問調査を行い、事業者の不正請求の発見に大きな効果があらわれたと聞いております。都としても、こうした区市町村の多様な取り組みを積極的に支援すべきと考えますが、所見を伺います。
答弁3
▼福祉保健局長
区市町村の独自の不正防止対策についてでございますが、不正請求などを防止していくためには、都の指導検査の充実とともに、保険者である区市町村が、地域の実情を踏まえ、創意工夫を凝らした多様な取り組みを進めることが重要でございます。
今回の介護保険法の改正により創設される地域支援事業におきましては、区市町村は、介護給付等に要する費用の適正化のための事業を行うことができるものとされました。都としては、法改正の趣旨も踏まえ、お話の専門調査員による実地調査など、不正防止に関する区市町村の主体的な取り組みを積極的に支援してまいります。
質問4
次に、介護保険におけるケアマネジメントについて質問いたします。
明年四月から新たに予防給付制度が実施されることになります。今後は従来にも増して介護サービスの質の向上が求められ、そのためにはケアプランを作成するケアマネジャーの果たす役割が重要になってまいります。しかし、現状では解決すべき課題が少なくありません。
ケアプランの大きな課題の一つが医療との連携であります。都は現在、ケアマネジャーがケアプランの作成について気軽に医師と相談できるよう、区市の医師会の協力を仰ぎ、ケアマネジャーからの電話相談を優先的に受け付けるケアマネタイム制度をモデル事業として実施し、好評を博しております。医師との良好な協力体制を築くことがどれほど困難か、多くのケアマネジャーが同様に口にする悩みであります。そこで都は、ケアマネジャーが適宜適切に医師の見解をケアプランの作成に反映できるよう、都内の全域でこのケアマネタイム事業を実施すべきであります。局の所見を伺いたいと思います。
答弁4
▼福祉保健局長
介護保険のケアマネジメントにおける医療との連携についてでございます。
ケアマネジャーが適切なケアマネジメントを行う上で主治医との連携強化を図ることは大変重要でございまして、このため、都は昨年度、都内の三区市において、医師がケアマネジャーと相談を行う時間帯をケアマネタイムとして設定いたしまして、これを公表する取り組みをモデル実施いたしましたところ、ケアプランの改善が円滑に進むなど、その有効性が実証されたところでございます。
今年度はさらに医師会との調整を進め、十六区市町村で実施予定でございますが、今後、全区市町村に拡大するよう、普及に努めてまいります。
質問5
次に、ケアマネジメントの中立性、公正性を確保することが重要であります。
都の調査によれば、都内の居宅介護支援事業所の実に九四%が介護サービス提供事業者に併設されております。このことが、自社サービスのみでケアプランを立てるサービスの囲い込みや、必要以上のサービスを組み込む利益優先の過剰なケアプランなどの温床になっているとの指摘があります。
そして、その背景には、介護支援事業者の経営体力の脆弱性が存在いたします。厚生労働省の調査でも、介護支援事業者は飛び抜けた赤字を示しております。このような状況下では、ただひたすら数多くのケアプランをこなす以外になく、個々の利用者の状況に応じたケアプランの丁寧な作成も、あるいは利用者を訪問してサービスの利用状況を綿密にモニタリングすることも、法制度上は義務づけられているにもかかわらず、現実には実施することが困難であります。
そこで、明年四月の介護サービス単価の見直しに際しては、ケアマネジャーの中立性、公正性を強化していくため、ケアマネジメント報酬の単価の見直しを強く国に要請すべきであります。局の所見を伺いたいと思います。
答弁5
▼福祉保健局長
ケアマネジメントの公正、中立性の確保についてでございますが、都は先月、国に対し、来年四月の介護報酬等の改定に向けた提案要求を行いました。その中で、公正、中立で質の高い利用者本位のケアマネジメントの実現を図る観点から、適切な報酬水準を確保した上で、ケアマネジャー一人当たりの担当件数を減らすことや、サービス提供事業者から経営的に独立している居宅介護支援事業者を介護報酬上優遇すべきことなどを求めております。
今後、こうした提案内容の実現に向け、強く国へ働きかけてまいります。
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■障害者福祉 |
質問1
さきの特別国会において、障害者の自立した地域生活を支援する障害者自立支援法が可決成立いたしました。この法律は、知的、身体、精神の三障害が縦割り状態にあった障害者福祉を一元化するものであります。
しかし、障害者福祉サービスと自立支援医療に一割の定率負担が導入されることに対し、障害者の一部から不安の声が上がったことは事実であります。障害者は経済的基盤の弱い人が多く、収入が障害基礎年金と、いわゆる福祉的就労の工賃だけという人も少なくありません。また、企業等への一般就労も思うように進んでおりません。
過日、この法律にかかわった厚労省の審議官がこのように話しておりました。この法律が通ったことで、いよいよ本格的に障害者の一般就労に力を入れなくてはなりません。厚生省と労働省が一体となった意味もそこにあります――全くそのとおりであります。事実の上で自立を支援していかなくてはなりません。今後は、一般就労への移行の取り組み等をより一層推進することにより、障害者の経済的基盤の強化と社会参加の道を積極的に切り開いていくことが重要であります。まず都の認識を伺いたいと思います。
答弁1
▼福祉保健局長
障害者の一般就労への移行についてでございますが、障害者自立支援法におきましては、一般就労へ移行することを目的とした事業を創設するなど、働く意欲と能力のある障害者が企業などで働けるよう、支援を強化することとしております。
都はこれまでも、独自に区市町村障害者就労支援事業などを実施し、希望する障害者が一般就労へ移行できるよう積極的に支援してきたところでございますが、今後とも本事業の拡充に努めるとともに、本年度から新たに開始いたしました企業への通所による授産事業などの取り組みを展開いたしまして、障害者がより働きやすい社会の実現を目指してまいります。
質問2
次に、自立支援医療についてであります。現在の精神通院公費医療、更生医療、育成医療は、新たに自立支援医療として自立支援法の中で位置づけられることになりました。家計に与える影響が大きいケースに対しては、所得に応じた負担上限が設定されるものの、原則としてここでも一割の定率負担となります。
都はこれまで、独自に心身障害者医療や、精神障害者医療における低所得者対策などを実施し、更生医療や育成医療についても引き続き一定の配慮が行われることになっています。しかし、精神障害者の通院医療費公費助成については、低所得者対策の対象者が約五万人に上り、今後ともこの制度が維持されるのかどうか、多くの精神障害者が不安を感じております。都は、早急に新たな低所得者対策の具体的方策を明示し、不安解消に努めるべきであります。所見を伺います。
答弁2
▼福祉保健局長
精神障害者の通院医療費公費負担についてでございますが、この制度は、精神障害者が地域で安定した生活を送る上で極めて重要な医療的サポートでございまして、都はこれまでも独自の負担軽減を行ってまいりました。
通院医療費公費負担は、障害者自立支援法では自立支援医療として位置づけられまして、一割の定率負担を原則としつつ、低所得者等に対しては月額負担上限額を設定するなど、一定の配慮がなされております。
都としては、自立支援医療が精神障害者の地域での安定した生活に果たす役割の重要性を考慮いたしまして、住民税非課税世帯に対して負担増加とならないよう、独自の負担軽減策を検討しております。
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■中小企業支援 |
質問1
現在、政府系金融機関の再編が議論されております。公明党からの強い要請もあり、中小零細企業に対する政策金融機能は堅持されることになりましたが、現状では一機関に統合される方向にあるようであります。しかし、統合後の新たな機関は、中小企業のみならず国際金融まで幅広い分野をカバーすることとなり、果たして十全な機能が発揮できるかどうか危惧があります。
特に中小企業金融は、おのおのの企業の状況に応じて小口の融資を積み上げていく分野であり、きめ細かな対応が不可欠であります。また同時に、経営ノウハウが十分でない中小企業に対して、成長を促していくソフト面での経営支援が重要であります。政府系金融機関の再編問題に対して、こうした点への十分な配慮を強く求めたいと思います。
そこで、中小企業の資金調達のセーフティーネットとして都の制度融資の役割がますます重要になり、制度の充実がより一層強く求められます。まず都の所見を伺います。
答弁1
▼産業労働局長
制度融資についてでございますが、国におきましては、政府系金融機関の大幅な整理統合等を進める方針でありますが、これが中小企業に対する資金供給の縮小や経営支援機能の後退につながらないよう、今後の動きを注視してまいります。
このような状況の中で、中小企業金融を担うもう一つの公的金融システムである都の制度融資につきましては、中小企業を金融面から支えるものとして、その役割は、ご指摘のように、一層重要なものになると考えております。このため、資金調達力が脆弱な中小企業への円滑な資金供給の確保など、制度融資のセーフティーネット機能の一層の充実に努めてまいります。
質問2
一方、国は、現在の信用保証制度について見直しの動きを強めております。具体的には、部分保証等の導入や、保証料率の弾力化などが俎上に上っているそうであります。前者は銀行の貸し渋りにつながらないか心配であり、後者は企業の選別強化とならないか危惧があります。
したがって、都は、こうした見直しに当たって、制度融資による中小企業への資金供給に支障を生じさせないよう、国に強く働きかけるべきであります。また、信用保証制度の改革による貸し渋り等の危惧に対して、都としても適切な対応策を講じるべきであります。所見を伺いたいと思います。
答弁2
▼産業労働局長
信用補完制度の見直しについてでございますが、国において検討されております部分保証等の導入は、金融機関に適切な責任分担を求めるものでありますが、一方で、貸出姿勢の消極化を招くことも懸念されるところでございます。また、保証料率の弾力化により、個々の中小企業の経営状況によって保証料に差異が生じることとなり、企業の経営状況によっては保証料負担が増加する場合も想定されます。このため、制度見直しに当たりましては、経営基盤が脆弱な中小企業に悪影響が生じないよう十分に配慮すべきことを引き続き国に強く求めてまいります。
また、都といたしましても、中小企業の資金調達に支障が生じないよう、信用保証協会とも協力しながら、適切な対応に努めてまいります。
なお、三位一体改革により、商工会議所等が実施する地域活性化事業の重要な財源である小規模企業等活性化補助金が、地方への税源移譲により廃止される方向にあります。しかし、国の動向はどうあれ、都は責任を持ってこれらの団体に対する支援を維持すべきであり、強く要望しておきます。
質問3
さて、中小企業支援と表裏一体をなすのが雇用就業対策であります。とりわけ、若年者雇用の問題は重要であります。ニート、フリーターの問題に対しては、行政はもとより、関係者が連携して取り組むことが重要であります。最近では、NPO法人との連携により就業支援に乗り出している区も存在いたします。
一般に、行政施策の対象としてはとらえにくい若年者に対して、NPOなどの民間団体を通じてのアプローチが効果的であると判断できます。都としても、若年者の就業支援に総力を挙げて取り組むべきであり、特に地域のNPOなどとの連携を、今後は強化すべきであります。都の所見を伺いたいと思います。
答弁3
▼産業労働局長
若年者就業支援におけるNPO等との連携についてでございますが、若年者の就業支援には、都や国、区市町村、NPO等の民間団体など関係者の総力を挙げた取り組みが必要でございます。都におきましては、若年者就業推進を産業力強化会議の課題として位置づけ、今後、各局が連携して取り組むほか、経済団体や教育機関等を交えた協議の場の設置も検討しております。
また、いわゆるニートなど就業経験の少ない若年者には、NPO等が実施する、就労に向けた基礎訓練などが効果を上げておりまして、これらの団体との連携が必要と認識しております。
今後、新たにNPO団体等と幅広く意見交換を進め、事業の具体化に向け検討してまいります。
質問4
また、若年者の支援には、しごとセンターやさまざまな都の資産などを活用した総合的な仕組みが必要であり、そこで着目したいのが都内十六カ所の技術専門校であります。既に学校中退者などが訓練に励んでおりますが、これをさらに進めて、地域における若年者の就業支援の場として活用を検討すべきであります。都の見解を伺います。
答弁4
▼産業労働局長
技術専門校を活用した若年者の就業支援についてでございます。
ご指摘のように、若年者の就業支援のためには、関係者との連携に加え、技術専門校や職業訓練のノウハウなど、都が保有します有形無形の資産の有効活用が不可欠であると考えております。現在、技術専門校におきましては、高校中退者等を対象とした訓練、アルバイトなどで働く若年者向け訓練など、いわゆるフリーター、ニートなどの若年者に効果が期待できる新たな職業訓練の実施を検討しております。
今後は、このような取り組みなどを通じて、NPOやしごとセンターのカウンセリング機能等との連携のもと、地域における若年者就業支援の場として技術専門校の一層の活用を図ってまいります。
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■教育政策 |
質問1
次に、学校における外部講師による専門教育について伺います。
若者を取り巻く新たな課題に学校が適切に対応していくためには、教員の資質や指導力の向上はもとより、専門的な知識や能力を有する外部指導者が必要であります。
先日、ある学校で実施した外部講師による授業の中で、フリーターと正規雇用では生涯賃金は幾ら違うのかという生徒への質問がありました。二百万円、二千万円、二億円という三つの解答の選択肢に対して、多くの生徒が二千万円と答えていましたが、実は正解が二億円という結果を聞いて、大変に生徒は驚いておりました。
また、健康保険料を納めていないと、仮に風邪を引いただけでも負担が一万円に上るという話を聞いて、それほどお金がかかるのでは風邪も引けない、私は決してフリーターにはならないとの感想を漏らした子どももおりました。たった一時間の授業で、見事に仕事や健康保険に対する考え方が変化したのであります。
公明党が提案した社会保険労務士による社会保険制度や年金制度についての授業は、このように着実に成果を上げております。こうした外部講師による授業を積極的に学校教育に取り入れていくことが必要であります。所見を伺います。
答弁1
▼教育長
外部講師の導入についてでありますが、お話の社会保険労務士等、専門的な知識や能力を有する外部の人材を教育活動に生かすことは、教育内容や方法の充実、改善を図る上で極めて有効でございます。
各学校は、それぞれの特色を生かしまして教育課程を編成し、年間の指導計画に基づきまして、必要に応じて専門家や地域の方々など多くの外部の人材を授業に招き、学習効果を上げております。
今後、都教育委員会は、このような取り組みがさらに拡充するように、すぐれた実践事例等につきまして普及啓発を図るとともに、本年八月に設置いたしました、企業や経済団体、NPO団体などから成ります地域教育推進ネットワーク東京都協議会などと連携いたしまして、福祉関係者や伝統文化の継承者等、外部の人材を学校の教育活動に有効に活用していきたいと考えております。
質問2
次に、中学生の職場体験について伺います。
都は現在、都内の公立中学校で年間五日間程度の職場体験を行うわくわくウイーク東京事業を実施しております。参加した生徒は、有意義だった、また参加したいなどの声が数多く上がっております。このわくわくウイーク東京の事業を拡大し、実施校をふやすべきであります。これについても所見を伺いたいと思います。
答弁2
▼教育長
中学生の職場体験、お話のわくわくウィーク東京、これは生徒に望ましい社会性や勤労観、職業観を育成しまして、自立や社会参加を促す上で極めて重要な教育活動でございます。
今年度、都内公立中学校三百四校で、地域の商店や工場、福祉施設等を受け入れ先といたしまして、生徒が一日ないし五日間の職場体験に取り組んでおりまして、このうち杉並区、江戸川区、町田市など八十二の学校では、連続五日間の実施をしております。本事業は、生徒に働くことの大切さや厳しさを体験させるとともに、社会の一員としての自覚を促すなど成果を上げております。
今後、都教育委員会は、関係部局と連携の上、体験発表会を開催するなど、広く本事業の普及啓発を図りながら実施校を拡大してまいりまして、平成二十年度までに都内全公立中学校で五日間の職場体験の実施を目指してまいります。
質問3
次に、臨時的任用教員候補のデータベース化について伺います。
公立学校においては、正規の教員が妊娠出産休暇や育児休業を取得する場合などに、その代替として臨時的任用教員が配置されますが、その臨時的任用教員を確保するための事務作業が大変膨大であり、副校長の大きな負担となっております。こうした副校長の負担を少しでも軽減するために、臨時的任用教員の名簿をデータベース化し、副校長が容易に検索できるシステムを開発すべきであります。見解を伺います。
答弁3
▼教育長
臨時的任用教員の採用に当たりましては、都立学校の副校長や区市町村教育委員会の担当者が新宿あるいは立川の庁舎に出向きまして、私ども都教育委員会が保管しております候補者名簿を検索しておりまして、必要な情報を収集するまでに相当長期間を要しているのが実情でございます。お話のように、これら一連の業務は担当者にとって大きな負担となっておりますので、早急に改善すべき課題と認識しております。
このため、都教育委員会といたしましては、候補者名簿をデータベース化いたしまして、都立学校はもとより、区市町村教育委員会においても活用が可能となるよう、インターネットによる検索システムを来年度早期に稼働できるよう取り組んでまいります。
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■都市農業の振興 |
質問1
東京の農地は、都市の潤い、防災性の向上、都民と農の触れ合いなど、都市にとって極めて貴重な空間であります。しかし、その都市の農地は、残念ながら年々大幅に減少いたしております。この十年で約二千ヘクタール、東京ドーム四百五十個分の都内の農地がなくなってしまいました。一方、宅地等に転用できない生産緑地は、最近は減少を示しておりませんが、各自治体による新たな生産緑地の指定はほとんどありません。
農地の急速な減少の原因は二点であります。一点は生産緑地制度の欠陥であり、もう一点は税制度の欠陥であります。
国は、本年九月から農地制度を改正し、生産緑地における定期借地権の設定を可能にしました。つまり、農家自身が市民農園を開設できるよう制度を変更しましたが、もう一方の問題である税制度の改正を伴っておりません。したがって、相続時に農地を他の農業者に貸している場合には、農地としての税の軽減が受けられず、重い税負担が発生します。このため市民農園はふえず、生産緑地の追加指定も滞っているのが実態であります。
そこで、都は、東京の農地の急速な減少に歯どめをかけるため、今後の五年ないし十年ほどの期間を都市農業を沈滞から活性化に方向転換させる強化期間ととらえ、一方で、一千万都市という大消費地を擁する大都市東京の農業の強みを生かし、都市農業が抱える課題を整理して将来展望を示すべきであります。
それと同時に、国に対する要望、提案を強化すべきであります。その第一は、五百平方メートル以上という生産緑地指定にかかわる面積要件の大幅緩和であります。そして第二には、農地内の必要な施設の設置を規制し、農業経営の企業化、法人化を阻む宅地並み課税や相続税などの税制度の改正であります。さらに、生産緑地指定の際の三十年間営農の要件緩和、農地貸与の制度化、営農を断念した場合の過重な課税制度の改正などを改めて国に強く求め、都市農地を守るべきであります。所見を伺います。
答弁1
▼産業労働局長
都の農業振興策及び国への要望等についてでございます。
東京の農業は、宅地化に伴う生産環境の悪化や高い地価など、他の都市とは異なる固有の課題がございます。一方、東京の農業には、大消費地の中で営まれるというメリットがありまして、直売所の設置による地産地消や、減農薬栽培による安全・安心の追求など、独自の事業を実施しております。
今後とも、農業者や農業団体等の意見を踏まえ、振興施策の充実を図るとともに、東京の特性に即した新たな展望を切り開いてまいります。
また、ご指摘のとおり、農地を保全するためには、生産緑地制度や相続税納税猶予制度などにつきまして、都の実情に即した制度となるよう、関係省庁に粘り強く制度の改正を求めてまいります。
質問2
また、農業従事者のすそ野の拡大も不可欠であります。現在、都内十五区市で三十五の農業体験農園が開設されていますが、この体験農場を通じて本格的に農業を目指す人が増加しております。多様な担い手の確保、あるいは育成という観点からも、こうした体験農業を都内全域に拡大すべきであります。
あわせて、都は現在、都民のためのモニター農業研修を八王子の三宅島げんき農場跡地で実施していますが、ここで体験農園の修了者等を受け入れるなど、実践的農業研修の場として位置づけるべきであると考えます。見解を伺います。
答弁2
▼産業労働局長
体験農園の拡大と実践的農業研修についてでございますが、体験農園は、農と触れ合う機会の提供や、新たな担い手の確保、育成の契機となるなど、多様な利点がございます。このため、区市町村や農業団体等と連携し、普及を図ってまいりましたが、今後ともさらなる拡大に努めてまいります。
また、都民のためのモニター農業研修は、農業ボランティアや本格的な就農希望者等を対象に、みずから耕作できる技術を持った人材を育成するため、八王子市の三宅島げんき農場跡地でモデル事業として実施しているところでございます。
今後、この成果を踏まえまして、多様な担い手を確保、育成していくための実践的農業研修の場として位置づけていきたいと考えております。
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■離島振興対策 |
質問1
次に、三宅島の住宅再建について伺います。
三宅島では、本年二月の避難指示が解除されてから、現在までに千二百世帯以上の村民が帰島し、今も火山ガスの排出が続く中、復興に向けて汗を流しています。しかし、子どもたちの学校などの都合によりこれから帰島する人や、また、家屋の改修などが人手不足のために大幅におくれている人も多数存在いたします。三宅島の生活再建は、いよいよこれからであるといっても決して過言ではありません。
住宅の再建を支援するため、時限措置として都が独自に制定した東京都三宅島災害被災者帰島生活再建支援条例の有効期限は来年の三月であります。このままでは、島の復興が完了しないまま支援が終わってしまうのではないかと心配する声が寄せられております。都の条例制定に当たっては、有効期間に関しては見直しを行うとの付帯決議が付されております。さらに、災害援護資金の申請期限も来年三月に迎えます。自民党からも要請が出ておりますが、三宅島の復興を完遂できるよう、住宅再建支援措置の適切な期限の延長が必要であります。所見を伺います。
答弁1
▼福祉保健局長
三宅島の住宅再建に対する支援策についてでございますが、三宅村の発表によれば、避難指示解除以降、千二百四十七世帯の方々が帰島されておりますが、諸事情から帰島されていない方もいまだ多いとのことでございます。また、島内の技術者や資材の不足などから、住宅の改修等が思うように進んでいないという事実もございます。このため、先月末現在で、被災者帰島生活再建支援金の申請実績は、当初想定しておりました千三百世帯の四割に満たないのが現状でございます。
このような状況や都議会における付帯決議なども踏まえまして、条例の有効期限の延長の実施について検討していくとともに、災害援護資金の申請期限の延長についても国と協議してまいります。
質問2
次に、小笠原空港対策について伺います。
国土交通省と東京都は、東京と父島を十六時間で結ぶ高速航路として期待された超高速船テクノスーパーライナーへの支援を断念しました。TSL就航を待ち望んでいた小笠原村民ばかりでなく、多くの都民を失望させる結果となり、まことに残念であります。小笠原では、TSL就航により観光客がふえると期待し、借金までして民宿等を整備した村民もおり、融資の焦げつき等が心配されております。こうした事態が生じることのないよう、都は村と連携して的確に対応すべきであります。所見を伺います。
また、公明党は、かねてから小笠原に空港を整備するよう主張してまいりましたが、TSL就航を断念せざるを得なくなった今日、都は早急に小笠原に空港を整備すべきであります。これは知事の所見を改めて伺いたいと思います。
答弁2
▼知事
小笠原への空港整備についてでありますけれども、小笠原諸島は本土から非常に離れた離島でありまして、島民の生活の安定と観光振興を図る上で、交通アクセスの改善が大きな課題であります。今までも、緊急事態には自衛隊に協力してもらって急患を運んだりしておりましたが、いずれにしろ、観光のためにも、TSLが断念せざるを得ない状況になりました中で、新しい空港というものを積極的に考える時期に来たと思っております。
私自身も、代議士時代、小笠原は選挙区でございましたので、何度も行きましていろいろなところを調べ、また友人の小型飛行機で、八丈で給油した後、小笠原と往復の飛行も二度ほどしたことがございますが、その代案としてTSLに期待してまいりましたけれども、これが挫折ということになりました。今後は航空路の開設ということで、これは自然環境との調和など解決すべき課題は多うございますが、小笠原の振興を図る上で重要な一つのかぎだと思っております。
今後その実現に向け、所要の調査を行うなど、国と協力しながら検討を進めてまいりたいと思います。何といっても最大の問題は、環境省がどういう時点でこれを是とするかという、これが一つの大きなかぎになると思います。
▼総務局長
小笠原村では、TSLの就航を見込みまして宿泊施設等の整備が進められてきました。
お話しの融資に関しましては、村が村民に対する利子補給等を実施しておりまして、これまでに二十件の申請があったと承知をしております。
村民への影響につきましては、現在、村を通じまして実情の把握に努めており、都といたしましては、村と連携しながら、必要な対応策について具体的な検討を始めております。
また、整備されました宿泊施設、飲食店等が有効に活用されるよう、村及び関係機関と連携しつつ、観光客の増加に向けた振興策に取り組んでまいります。
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■東京オリンピック |
質問1
公明党は、東京における二度目のオリンピック開催は、都市の再生、安全・安心のまちづくり、千客万来の観光都市東京などを実現する絶好のチャンスであると考え、賛成を表明しております。また、それに先立つ二〇〇七年には東京マラソン、二〇一三年には多摩国体が開催されるなど、大規模スポーツイベントが相次いで予定されております。
一九六四年の東京オリンピックの際にも、都民の機運の盛り上げの一環として、第三回アジア競技大会を開催し、オリンピックに向けて、徐々に都民の熱意と一体感を高めていったことはよく知られております。東京オリンピック招致を実現させるためにも、多摩国体や東京マラソンを通じて都民の機運を盛り上げていくことが重要であります。所見を伺います。
答弁1
▼知事
オリンピック招致に向けた都民の機運の盛り上げについてでありますが、オリンピックの招致を成功させるには、都民、国民の幅の広い共感や賛同も得、息の長い招致活動を重ねることが必要だと思います。中には、少数の方々は、オリンピックは要らないという人もいるかもしれません。私は、やはりこれは、国民のほとんどの方々がこの日本に必要なイベントであると理解してくださると思っております。
東京国体や東京マラソンはその一つのプレイベントとして、スポーツの感動を改めて人々に与えるだけでなく、それによってオリンピックを支える一つの大きなモメントになると思います。大会にかかわる選手、ボランティア、都民などの交流、観光客の増加など、スポーツイベントの広範な魅力を都民が実感する機会となり、これがまたオリンピックに対する機運の盛り上がりにつながるものと思います。これらの大会をスポーツイベントとして成功に導いて、オリンピックの実現に向けた着実な踏み台として大いに機運を盛り上げていきたいと思っております。
質問2
また、東京オリンピックの開催に当たり、成田、羽田空港とともに、首都圏の空港機能を補完し、国内外から民間飛行機を受け入れるため、横田飛行場についても早期の軍民共用化が必要であります。あわせて所見を伺います。
答弁2
▼知事
横田基地の軍民共用化でありますが、オリンピックのような国内外の大勢の人々の交流が行われるイベントには、人の移動を支える交通インフラの条件整備が必要不可欠であります。
首都圏の航空需要は逼迫しておりまして、既に国内線もまたパンクをしてしまいました。何とか羽田の沖合展開も端緒につきましたが、しかし、それでもなお航空需要にとてもこたえることはできません。その点で、日本で一番長い、しかもほとんど使われていない滑走路を持つ横田の共用化は、オリンピックを待つことなく、今すぐにも実現しなくてはならない喫緊の国家的課題であると思います。にもかかわらず、米軍再編の動きに巻き込まれ、要らぬ回り道をさせられたことは、ちょっと国の認識不足によるものといわざるを得ません。
しかし、先月渡米した折、国防総省のトランスフォーメーションの最高責任者のローレスと会いまして、長いこと話しましたが、米国もこの共用化については具体的な協議に応じる意向があるということを確認しましたし、日本の政府よりもむしろ米国の当事者の方が、今依頼しております一橋の学長の杉山さん、これは交通経済の専門家ですけれども、杉山委員会の答申を非常に注目して見守って、待ってくれておりますので、近々出るその答申を踏まえて、具体的にまず一体何便を飛ばすか、それによってどれだけの経済効果があるかということを国の内外に明示して、このプロジェクトを着実に展開していきたいと思っております。
一刻も早く横田飛行場の民間航空利用を可能としまして、オリンピック開催時に十分活用できるようにするためにも、早急に具体的な協議を進め、軍民共用化の早期実現を達成するよう、改めて日米両政府に強く求めてまいります。
質問3
費用などの面でオリンピックに慎重な意見もありますが、オリンピックへの投資にはすそ野の広い経済効果が見込めます。また今後、東京は徐々に都市施設の更新時期を迎えます。したがって、投資は不可避であります。
かつて知事は、東京には都市計画がないと嘆かれましたが、そうであるならば、オリンピックを契機に、改めて明確な意思と目的を持って東京の都市計画を策定し、世界をリードする首都東京の近未来像を知事として提示すべきであります。
安全・安心、快適、健康などのテーマは当然として、次代を開き、世界的モデルとなる成熟都市東京の展望を示していただきたいと思います。広大な海域、多摩の自然、集積した機能と文化、東京には素材は事欠きません。オリンピックと東京の都市構想について、さらにはその経済効果について知事の所見を伺い、代表質問を終わります。
答弁3
▼知事
オリンピックと東京の都市構想、経済効果についてでありますが、オリンピックを契機に、都市インフラの整備はもとより、自然環境の保全、都市景観の回復、治安の確保、観光や文化施策などを推進することは、二十一世紀にふさわしい大都市東京の創造に大きく寄与するものになると思っております。また、これらの施策を展開することによりまして、投資や消費の拡大、雇用の創出といった広範な経済への波及効果も期待できると思います。
こうした都市の姿を一変させるオリンピックの力を、大都市東京の新たな発展のためにも大いに活用していきたいと思っております。
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