新たな結核の脅威から都民守れ
若者へのエイズ予防啓発進めよ |
いのつめ まさみ(民主党) |
■結核対策 |
私は、政治の基本は、命と暮らしを守ることと考えています。
知事は、所信表明の中でアスベストの健康被害に触れ、ディーゼル車排出ガス規制と同様、国の対応のおくれが被害の拡大を招いていることを指摘せざるを得ません、国に猛省を促し抜本的な対策を求めてまいりますと、心強い発言をされており、都民の健康を大切にされている知事の姿勢に安心の色を濃くいたしました。
しかし、二十一世紀は感染症の世紀といわれています。感染症の中でも、特に気になる三つの感染症についてお伺いいたします。
初めに、結核対策についてお尋ねいたします。
去る九月二十四日から結核予防週間が始まりました。財団法人結核予防会の広報活動が行われており、交通機関などでポスターを見かける機会があると思われます。
また、ことし四月一日、およそ五十年ぶりに大改正された結核予防法が施行されました。乳幼児へのツベルクリン反応検査は廃止、BCG接種を生後六カ月までに行うこととし、定期結核健診の対象も変更され、日本の結核対策は新しい時代に移りました。
しかし、依然として、結核は日本で主要な感染症です。全国の死亡者は、昨年は二千人を超えました。患者の高齢化、都市部への集中、重症発病の増加など、結核の抱える問題は多様化しています。
結核の状況は一概にとらえにくいので、それだけに、私たちが知らない間に、身近なところまで結核が忍び寄っていることも多いのです。
そして、現在の高齢者は若いころに結核流行時を経験していて、既に結核に感染している人が多く、体力、抵抗力が低下したときに、眠っていた結核菌が目を覚まし、発病しやすくなります。反対に、若い世代の多くは未感染のため、結核菌を吸い込むと感染しやすく、比較的早い時期に発病する危険があります。さらに、HIV感染者やエイズ感染者が結核菌に感染すると命取りになります。結核とエイズの合併は、今後新たな問題となる危険をはらんでいます。
質問1
大都市の病として、新たなどうもうさでよみがえりつつある結核の脅威から都民を守る必要があります。結核対策を進める上での知事の所見をお伺いします。
答弁1 ▼知事
結核対策についてでありますが、かつては結核は国民病、亡国病ともいわれて、我が国の死亡原因の一位を占めた業病でありました。私は、子どものころ逗子に過ごしましたが、逗子は、例の新派大狂言、浪子と武男、「不如帰」の舞台でありまして、そういういい伝えで親から、かつての時代にいかに結核がいろんな悲劇を生んだかと聞かされましたが、その後、国家的な取り組みの中で患者の大幅な減少が見られまして、一時は根絶が期待されました。
都においては、近年、患者の発生は横ばい状態にありまして、若者の集団感染や住所不定者、外国人の発病が顕著なことなど、都市型の新たな様相を呈しております。
ちなみに、調査によりますと、都の結核感染の特徴的な年代では、二十代から五十代までの新登録患者の数は、平成十五年には二千百六十一人、そのうちの一割が、ご指摘にもありましたけれども、二百五人が住所不定、いわゆるホームレスの方々ということになっております。ニューヨークでは、一九八〇年代の後半に、一たん封じ込められたはずの結核が急速に蔓延した事実もありまして、東京でこれを繰り返してはならないと思っております。
結核などの感染症の克服は、本来国の責務でありますけれども、都も、都民の安全・安心を守るため、今後とも大都市の実情を踏まえまして、効果的な結核対策を推進していき、国にも具体的な進言をしていきたいと思っております。
質問2
私の地元の新宿区では、路上生活者の結核感染が重要な政策課題となっております。結核の治療期間は半年から一年程度と、長期にわたっての服薬が中心です。この長期間の着実な服薬支援策が必要です。
新宿区では、平成十二年六月から、一人一人の患者のニーズに合わせた個々の方法での服薬支援、いわゆるDOTSを取り入れています。そして、平成十四年は三十七人の路上生活者に二千百三十四回の面会をし、完全に治療をしています。
在宅介護高齢者にも、訪問看護師が服薬確認を担当し、家族の不安や問題点解消など、一貫した対応と連携が図られています。
世界保健機関、WHOも提唱するDOTS戦略を都ではどのように進めていくおつもりか、お聞かせください。
答弁2 ▼福祉保健局長
都の結核対策におけるDOTS戦略についてでございますが、結核対策を進める上で、患者さんの治療中断を防ぐため、保健師が自宅を訪問し、服薬を確認するなどを通じまして支援を図る方法は、極めて有効なものでございます。
都では、このDOTSの考え方を取り入れ、平成九年度から山谷地域において、また、平成十六年度からは都の保健所で、患者さんや地域の実情に応じた、きめ細かな服薬支援を行っております。今後は、住所不定者など治療中断を起こしやすい方々に対する服薬支援を効果的に行うため、特別区との連携を強化し、広域的なDOTS戦略を推進してまいります。
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■エイズ対策 |
八〇年代に初めて聞くエイズという病名に、日本じゅうがパニックになったのを覚えています。我が民主党の菅直人衆議院議員が厚生大臣であった一九九六年、薬害エイズの資料が旧厚生省から出され、薬害エイズ訴訟原告団に国が謝罪し、和解しました。
その後、病状を進行させない治療薬の開発により、不治の病ではなくなってきたことと並行し、エイズという病気が人々の話題から遠ざかってしまいました。
しかし、国の内外に目を向けますと、アフリカには感染率が三八%を超える国もあり、ジンバブエでは感染率は二五%で、このままでは国が滅びるほどの感染率に驚かされ、支援の必要性を改めて感じました。
日本は、昨年、HIV感染者、エイズ患者報告数が初めて千人を超え、過去最高と報告されました。のど元過ぎれば熱さを忘れやすい日本人のよくも悪くもある体質が、エイズへの危機感を失わせています。今こそエイズ対策が重要なときと考えております。
質問1
そこで、東京都の現状、特に若い世代の状況についてお伺いします。
答弁1 ▼福祉保健局長
東京都のエイズの現状についてですが、平成十六年の都におけるHIV感染者・エイズ患者の報告数は過去最高の四百十一件で、全国の三分の一となっております。発生動向調査を開始した昭和五十九年以来、報告数は増加傾向にあり、昨年は十年前の三・三倍に達しております。なお、年代別に見ると、十代から三十代までの若い世代が全体の三分の二を占めております。
質問2
これからの社会を支え、未来の若者の命を大切にしていくために、主に若い世代に対する普及啓発が重要と考えています。
東京都エイズ予防月間を中心に、歌舞伎町商店街振興組合が主催し、ストリートミュージシャンに代表されるアマチュア音楽家の参加によるイベントが開催される予定です。これは、音楽を通じて、若者同士でエイズ予防などを伝えるもので、若者の感性を生かした普及啓発と考えています。
都は、こうした若者向けの普及啓発をどのように進めていくおつもりか、お伺いいたします。
答弁2 ▼福祉保健局長
若い世代に対する普及啓発についてでございますが、エイズの知識や教育技法の研修を受けた大学生などが、同世代の仲間に対してエイズ予防や命の大切さを伝え、ともに考えるピア・エデュケーション事業を実施しており、また、東京都エイズ予防月間を中心に、若者向けのイベントやマスメディアを活用した普及啓発も行っております。今後とも、区市町村やNPOなどと連携し、地域における効果的な啓発活動を推進してまいります。
質問3
新宿駅南口に設置されている東京都南新宿検査室、相談室は、平日夜間、土曜、日曜でも匿名で検査が受けられるよう配慮されており、検査受診者が増加していると聞いております。検査結果で、もし感染していた場合の告知に対して、若年者ほど感染を受けとめることは困難であると思います。自暴自棄に陥らないよう、感染イコール死ではなく、早期治療に当たれば克服も可能であるということを理解してもらうケアが必要です。
そこで、感染していることを告知する際の配慮や、感染者の心理的なケアについて、具体的な取り組みをお伺いします。
答弁3 ▼福祉保健局長
HIV感染者への告知に際しての配慮や、心理的ケアについてでございますが、都では、医師や医療従事者に対し講習会を実施し、告知やカウンセリングの知識、技法の向上に努めております。また、感染者には、保健師や臨床心理士などのエイズ専門相談員を派遣し、心理面や生活面でのさまざまな相談に応じております。感染者は、長期にわたる治療が必要であり、今後とも地域の医療機関との連携を深め、療養生活への支援の充実に努めてまいります。
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■C型肝炎 |
最後に、国民の二百万人が感染しているといわれるC型肝炎についてお尋ねします。
こんなに多くの国民が感染し、苦しい治療に耐えています。肝臓がんで一年に亡くなる三万四千人の八〇%はC型肝炎感染者です。感染ルートは、手術時、出産時の止血、血友病患者に使用された血液製剤フィブリノゲンなど、多くは薬害であり、個人の飲酒などの生活習慣病が原因ではないと、まず申し上げます。
平成十三年十月に、衛生局、東京都新たな感染症対策委員会が、東京都におけるウイルス肝炎対策報告書の中で、今後の東京都の総合的ウイルス肝炎対策として、一、普及啓発活動、二、肝炎ウイルス検査、三、医療体制、四、調査研究の四項目を挙げています。
平成十四年十月、東京都はこの報告書を受け、C型肝炎を特殊疾病・難病指定から外し、医療費助成制度対象外としました。当時、医療費助成制度改正の根拠は、一、B型、C型肝炎はウイルスが原因と解明、診断や治療方法も進歩し、難病の定義に当てはまらない、二、感染に気づいていない人が多い現状に、難病対策では対応できない問題があるというものでした。
この改正に伴い、ほとんどの市区町村で心身障害者福祉手当の対象疾病の一部改正を行いました。その上、改正と同時に減額補正予算を組み、心身障害者福祉手当を削減した市区町村がありました。今でも私は、百歩譲って、難病指定を外したことはいたし方ない、やむを得ないとしても、せめて予算化した十四年度中は心身障害者福祉手当を支給してほしかったと思っています。
そしてこのとき、東京都は、罹患率がウイルス性肝炎より低い原発性硬化性胆管炎、肝内結石症、自己免疫性肝炎を新たに難病指定しました。C型肝炎が完治できるようになったからではなく、潜在的な感染者が発病する時期に差しかかり、患者数の増加を懸念して難病指定を外したとのうがった見方をするのは、私だけでしょうか。
また、改正後は、精密検診、入院医療費助成制度が創設され、住民税非課税者に対してはそれまでと同様に医療費助成が行われ、四十歳以上の節目年齢者への検査実施等の新しい施策がとられるようになり、三年が経過いたしました。
質問1
東京都は、平成十四年十月からウイルス肝炎総合対策を行っているが、この三年間の成果をどのように考えているのか、所見をお伺いいたします。
答弁1 ▼福祉保健局長
ウイルス肝炎総合対策の成果についてでございますが、都は、都民にウイルス肝炎に関する正しい知識を普及するとともに、検査で陽性になった方への精密検診や、入院医療費助成制度の創設などにより、検査、診断から治療に至る総合的な仕組みを構築してまいりました。これらにより、早期発見、早期治療の取り組みを進めてきたところですが、さらに多くの感染者が治療に結びつくよう、都民や医療従事者に対し、ウイルス肝炎の検診や早期治療の重要性について、一層の普及啓発に努めてまいります。
質問2
この夏、まちを行く若者に入れ墨、いわゆるタトゥーを多く見かけました。ピアス、入れ墨などの施術についても、器具に付着した血液を介して感染が起こる危険があります。医療現場での感染をなくしても、新たな感染源を放置しておいては、手おくれになる危険があります。医療行為に相当する行為を無資格者が行っている場合については、それを排除するとともに、滅菌、消毒、その他の予防法の周知と遵守が重要です。また、外国で施術を受ける例もあるので、ファッション感覚だけでなく、衛生的に安全かどうか、怠った場合の危険性を周知させる必要があります。
海外渡航者や若者たちへのC型肝炎などの感染の危険性について、広く普及啓発をすることが必要と考えますが、都はC型肝炎の普及啓発をどのように考えているか、お伺いします。
答弁2 ▼福祉保健局長
C型肝炎の普及啓発についてでございますが、ウイルス肝炎の基礎知識や予防方法などに関して、講演会の開催や、一般都民向け、検診受診者向けパンフレットの配布を行っており、また、医療行為における感染防止対策を徹底するため、院内感染予防対策マニュアルを作成し、その周知を図っております。
今後、若者や海外渡航者に対しては、滅菌、消毒が不完全なピアスや入れ墨などによるウイルス感染の危険性や、海外での感染予防について、ホームページや海外渡航者向けのガイドブックなどにより注意を促してまいります。
本年八月、厚生労働省のC型肝炎対策等に関する専門家会議からの報告には、四十歳未満の無料検査の実施要望や地域検診の拡充、企業の健康保険組合の取り組みの強化を求めています。加えて、都道府県ごとに肝炎診療協議会を設置し、地域医療機関が連携を図ることも提唱しています。東京都においても、今後の肝炎対策の充実に向けた取り組みを大いに期待するものです。
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