食での観光都市東京を推進せよ
教員の資質向上へ地域等の力を |
中山 信行(公明党) |
■観光振興 |
平成十六年に東京を訪れた外国人旅行客は四百十八万人、その経済効果は五千三百億円に及んでいます。これは、知事を先頭に、東京都観光産業振興プランを掲げ、外国人旅行客を五年間で二百七十七万人から六百万人にふやす取り組みの成果であり、高く評価するものであります。その上で、千客万来の世界都市東京の構築をさらに強力に推進していく立場から質問します。
東京の魅力の一つに、和洋中のバラエティーに富み、洗練された食文化があります。しかも、衛生的で、夜道でも裏道でも安心して歩ける日本の社会においては、豊かな食文化そのものが無尽蔵で飽きのこない観光資源になる可能性があります。わざわざ来日する外国人観光客ほど自分の目や舌や鼻で日本の食を味わってみたいはずです。しかし、現状では、まだまちに外国語の標識が少なく、飲食店のメニューを紹介する外国語の表記もほとんど整備されていません。欧米からの旅行者の九割、アジア系でも半数以上が個人の旅行者です。外国人が一人でも歩きやすい環境を整備していくことが観光産業のさらなる発展を期す上で極めて重要な課題になります。
今回、知事は、所信表明でICタグを使って観光情報を提供するユビキタスシステムの発展に向けて実験を開始する旨の決意を表明されました。この技術が実用化されれば、例えば商店街や観光協会の協力により、広域にわたってICタグを配置し、保証料を取って外国人観光客に携帯端末を貸し出し、その携帯端末から外国語で食べ歩き情報を提供できるようになることも考えられます。外国人観光客の中には、結局、ファーストフード店で食事を済ませて帰国してしまうという例もあります。そのような大変にもったいない現状は、何としても打開しなければなりません。
二〇一六年の東京オリンピックの開催を目指し、東京の豊かな食文化を万人が利用できる観光資源に変えることが必要であります。
質問1
そこで、東京の食文化の観光資源としての可能性について、知事の所見を伺います。
答弁1 ▼知事
食文化の観光資源としての可能性についてでありますが、まさに東京が自慢できるものの一つとして、総体的に世界を眺めて、極めて食べ物がおいしい点があると思います。
ちなみに、訪日外国人旅行者満足度調査報告書なるものがありまして、それを読みますと、訪日前と後では日本の印象の肯定的なイメージがかなり変化ありますが、訪日前のデータでは、食べ物がどうもおいしいらしいというのが第四位でしたけれども、訪日後は、非常においしいというのが、満足度のランキングで第二位にこれが入っているわけであります。
かつてワールドカップが行われましたときにイギリス大使館の高官から聞きましたが、めったに日本に来ることのないような、あるレベルに達しない、しかし熱烈なファンたちが無理して日本にやってきて、ごく場末の貧しい日本宿に旅装を解いて、とにかくそこから出かけて応援に行くと。次の試合まで四日か五日かあるんで、どこか旅行しようということでも、なかなかガイダンスがなかったそうですが、彼らが非常に四日間日本じゅうを歩いてみたいという衝動を起こしたのは、もともとイギリスというのは非常に飯のまずいところですけれども、そういう場末のちっちゃな旅館でも、近くの焼き鳥屋へ行ったりおでん屋へ行ったりすると非常に物がおいしいということでびっくりしまして、こういうバックパッカーが非常に日本の食文化に感動したという挿話が伝わってきました。
いずれにしろ、日本独特の料理の中には、日本人の研ぎ澄まされた感性による独特のデザインがございます。かつてプロバンス地方を世界に紹介して有名になったイギリスのライターが、その後、日本に来まして、プロバンス地方よりもはるかに日本の方が飯がうまい、特に土瓶蒸しは、自分はこれに出会うのが非常に遅くて残念だったということを書いておりましたけれども、いずれにしろ、日本人は非常にティミッドで、おどおどしておりまして、日本の食文化のすばらしさというものを自分からなかなか人に伝えない。日本人同士ではそういう情報は伝わっても、外国人に、自慢も含めて、どうですか、ひとつということをいわずに、すしなどの世界の流行も、これは日本人が広めたんじゃなしに、アメリカ人が勝手に評価して書いて、今じゃハーバード大学にすしバーまでありますが、いずれにしろ、日本ならではの多様な食文化を観光資源として生かすように、今後とも積極的に宣伝していきたいと思っております。
質問2
第二に、飲食店等の外国人への対応能力であります。
外国人にどのように店をアピールしたらよいかわからない、外国人が来店してきた場合でも、その接遇方法がわからないなど、外国人の受け入れに消極的にならざるを得ない飲食店が数多く存在します。都は、観光協会などと連携し、飲食店の情報提供や外国人の受け入れ体制の充実を支援していくべきと考えますが、都の所見を伺います。
答弁2 ▼産業労働局長
外国人への飲食店の情報提供などについてでございます。
都は、ホテルや飲食関係団体等が実施する外国人向け接遇研修を支援するとともに、応対に関する事例集や、意思表示を容易にする指差しシートを作成、配布し、受け入れ体制の充実を図ってきたところであります。
今後、東京の食文化の情報については、観光協会等の窓口や観光ボランティアの案内と連携を図るとともに、都のホームページにおいて英語や中国語など多言語での効果的な情報提供を推進してまいります。
質問3
第三に、ICタグなどのような先端技術を活用して、食文化などの情報を外国語で発信することについて、都の所見を伺います。
答弁3 ▼産業労働局長
ICタグ等を活用した食文化などの情報の発信についてでございます。
先ほど知事が申し上げましたように、東京の食文化は重要な観光資源であり、その積極的な情報発信が課題となっております。
都は、本年十月から、上野公園においてICタグ等を活用した実証実験を行う予定であり、多言語による道案内、飲食店情報の提供などを行います。
また、ICタグを初めとする先端技術を活用した飲食店の紹介や、日本独特の料理、食文化などの情報発信については、今後の技術の動向などを見定めながら、その可能性についてさらに研究してまいります。
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■教育問題 |
現在はさまざまな教育課題が山積しており、まさに教育者の資質そのものが問われているといえます。子どもたち一人一人に、基礎的な知識理解にとどまらず、思考力や判断力、表現力など、確かな学力を身につけさせるためには、指導する教員の資質の向上が不可欠です。
特に、教育活動の中心である授業において、子どもたちの学習意欲をはぐくむ工夫をどうするか、個々の教員の力量に負うところが大きいといえます。教員の指導力を向上させるためには、日ごろの研修が重要であることはいうまでもありません。また、開かれた学校づくりの中で、授業を保護者や地域住民などに公開し、その評価をもとに改善していくことも重要であります。
国はこれまで、公立学校で行われる教育の質の向上を果たすため、学校評価システムの構築に取り組んできました。しかし、外部評価を担う学校運営協議会等の組織は、年に数回開かれる程度であったり、学校の意向をそのまま肯定するものであったりして、教育の質の向上には余り役に立っていないのが現状です。
この点、足立区の五反野小学校では、全国初の地域運営学校として、保護者、地域、学校、行政の代表から構成される学校理事会を設置しており、理事会が校長に対し学校経営の方針を示し、その取り組みを評価する機能を担っています。保護者や地域の代表は、理事会を通じて子どもたちの学力向上に資する提案や要求を積極的に行って、学校の指導力の補完に努めるほか、個々の授業内容の診断も行い、その結果を教員との意見交換の場で率直に発表し、楽しく、わかる授業に具体的に結びつけています。
質問1
そこで、伺います。第一に、とりわけ地域に密着した学校である小中学校においては、授業を公開し、保護者や地域住民の力を活用して、授業について外部評価を行うシステムを導入することが教員の資質向上につながると考えますが、所見を伺います。
答弁1 ▼教育長
授業におきます外部評価の導入についてでございますけれども、授業を公開し、外部評価を導入するなど、教育活動をさまざまな面から評価し、改善していくことは、教員の資質向上を図る上で極めて有効でございます。
現在、多くの小中学校で授業公開や外部評価を実施しておりますが、評価結果を授業改善に活用するためには、評価の内容、方法について一層改善を図る必要がございます。
このため、都教育委員会では、今年度から、授業改善研究推進校において、保護者や地域住民などによる授業の外部評価について研究開発を進めているところでございます。
今後は、区市町村教育委員会とも連携しまして、研究成果の普及啓発に努め、教員の資質向上を一層推進してまいります。
質問2
第二に、優秀な教員には、給与と権限の両面にわたり待遇を改善するべきであります。
マイナス点だけをあげつらう減点主義では、かえってその意欲をそぐだけの結果になりかねません。国は、中央教育審議会における検討に基づき、来年度から、授業や生徒指導ですぐれた実績を示した教員を表彰する制度を打ち出しました。都は、今こそ、教員の資質向上のために、頑張った教員や優秀な教員には給与などの待遇を向上させるべきであります。所見を伺います。
答弁2 ▼教育長
優秀な教員の処遇の向上についてでございますが、教員の資質向上のためには、努力し、成果を上げた教員を適切に処遇することが重要でございます。
学校におけるさまざまな課題を解決していくには、教育改革を担うかなめであります教員の資質、能力の一層の向上が必要不可欠でございまして、そのためには、年功的、一律的処遇を見直しまして、職責、能力、業績をより適切に反映した給与制度等を構築する必要がございます。
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■中小企業支援 |
景気は踊り場状態を脱したとはいえ、依然として中小企業の倒産件数は高い水準にあります。また、原油、鋼材価格の高騰やアスベスト対応などの試練にあえぎながらも、光明を探し求めようと努力を続ける中小企業に対し、強力な支援策を打ち出すべきであります。
質問1
最初に、新銀行東京についてであります。
厳しい経営環境に置かれている中小企業を支えることを第一の使命として誕生したこの銀行が、その設立趣旨に沿った融資、保証を行っているかどうかをいま一度検証しておく必要があると思います。加えて、都としても常に利用者本位の経営を行うように働きかけていくべきと考えますが、所見を伺います。
また、中小企業の中には、大幅な黒字を望めるビジネスチャンスに恵まれながら、銀行から融資を断られ、窮地に陥っている場合があります。私が実際に相談を受けた例では、不況の中、借財を抱えたハンドバッグ業者が、親会社から仕上げ専門業者への業務展開を求められたケースがありました。大半が中国で製造されるようになって、苦境に追い込まれたのですが、やはり仕上げは日本で行わないと高く売れない。そこで、粗加工は中国、仕上げは日本というすみ分けに変更するため、腕のよい製造業者に白羽の矢が立てられたわけです。親会社は、粗加工された大量の中国製バッグを在庫に抱え、仕上げのみの工程に変更を求めてくる。しかし、大型のプレス機械を廃棄しない限り、新たな作業スペースが生まれない。機械を廃棄するのに二百万円の費用がかかるが、借財を抱えた身では銀行も色よい返事をしてくれず、税の未納もあるため、新銀行東京でも融資の対象にならないというのが現状です。新銀行東京は、こうしたさまざまな声も真摯に受けとめていただくことを強く要望しておきます。
答弁1 ▼産業労働局長
去る七月から本格的に業務が開始され、融資・保証額は、七月末には約二百億円、九月末にはその二倍を大きく上回る見込みで、特にポートフォリオ型融資が順調であると聞いております。
新銀行東京の融資先に対するアンケート調査では、約三割の事業者が他の金融機関からの借り入れが困難であったなどと回答しておりまして、資金繰りに苦しむ多くの中小企業への資金供給が着実になされているものと考えております。
都は、今後とも、新銀行東京が、厳しい経営環境にある中小企業の実情を十分に把握し、設立趣旨に沿って、顧客本位の経営を行うよう、株主として働きかけてまいります。
質問2
第二に、相隣関係のトラブルから立ち退きを迫られている町工場への支援策の実施であります。
防音、防振、防臭などの必要から、費用をかけて設備や社屋を改善し、都内での営業を継続しようとする中小企業に対し、都はさらに積極的な支援策を講じるべきであります。特に準工業地域においては、不況や後継者不足から廃業する工場の跡地にマンション群が進出し、その苦情や環境の変化によって、次々と周辺の工場が移転を余儀なくされてしまうのが実情です。
もとより相隣関係のトラブルは当事者間で解決するのが原則です。しかし、結果的に都内からどんどん町工場が移転してしまっては、都がどんなにものづくりを支援するといってみても、絵そらごとになってしまいます。やむなく都外へ移転する工場をこれ以上ふやさないためにも、より充実した金融支援策の構築が必要です。都の所見を伺います。
答弁2 ▼産業労働局長
防音対策等に係る金融支援についてでございます。
中小企業が近隣対策として行う防音、防振、防臭工事等は、設備資金として制度融資の対象となりまして、政策的に金利を低く抑えた優遇金利の融資メニューなどが利用できるところでございます。
今後とも、都内で営業を継続しようとする中小企業を支援するため、制度融資の活用を促すとともに、一層利用しやすい制度とするよう、その充実に努めてまいります。
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■竹ノ塚駅付近の踏切対策 |
質問1
最後に、地元竹ノ塚駅付近の鉄道連続立体交差化事業についてお尋ねします。
四人の死傷者が出る不幸な事故の発生を受け、あかずの踏切を解消する検討がようやく本格化してまいりました。特に今回は、北側国土交通大臣の英断により、検討の場に最初から国が加わるという画期的な体制でスタートしており、現在、歩行者や自転車の安全通行をエレベーターやスロープで確保する横断橋の工事が進められています。
そこで、第一に、鉄道事業者による対応を含めた緊急対策の現在の進捗状況を伺います。
答弁1
▼都市整備局長
竹ノ塚駅付近の踏切における緊急対策の進捗状況についてでございますが、都は、本年三月に発生した踏切事故を受け、直ちに足立区、東武鉄道とともに竹ノ塚踏切対策会議を立ち上げ、歩行者や自転車への緊急対策を実施することといたしました。
これら対策のうち、踏切道の拡幅や竹ノ塚駅のエレベーター設置につきましては、既に完了いたしております。
また、東武鉄道では、人的要因による事故の再発防止を図るため、明日二十九日には二カ所の手動式踏切の自動化を完了いたします。
現在工事中の歩道橋につきましても、引き続き関係機関と連携しながら、今年度内に完成するよう進めてまいります。
質問2
第二に、都は今後、国と鉄道事業者が参加した検討会において、地元住民の期待にこたえた事業計画が立案されるよう、積極的なイニシアチブを発揮されるべきであります。地元住民の願いは、二度と事故を起こさないこと、そして、鉄道を高架化し、総合的にまちづくりを行うことです。
しかし、住民には今、二つの心配があると思います。一つは、低地にある車両の車庫への勾配が、鉄道を高架化させる上で障害になるという不安です。もう一つは、その車庫の敷地が、東武鉄道ではなく、不動産事業部門が弱い東京メトロの所有であり、車庫の移転や立体化を含めた総合的なまちづくりの可能性を弱めてしまうという不安です。
連続立体交差化事業においては、少なくても、その構造形式の決定と費用の負担は都が主体的に責務を担うべきであります。したがって、国と地元、そして鉄道事業者の間を調整し、この問題をしかるべき方向へと導く都の役割はまことに大であると考えます。車庫の課題も含め、踏切問題の抜本的な解決に向けた今後の都の取り組みを伺います。
答弁2
▼都市整備局長
踏切問題の抜本的な解決に向けた都の取り組みについてでございますが、竹ノ塚駅付近における道路と鉄道の立体化や沿線のまちづくりにつきましては、足立区が設置する検討会において中長期的な視点から検討を進めております。
鉄道を立体化する案につきましては、まちづくりの推進や車庫の取り扱い、複々線に加え、引き上げ線もあることなどから、さまざまな課題がございます。
都といたしましては、今後とも、この検討会の中で、鉄道事業者などの関係機関と連携しながら、ご指摘の周辺状況や技術的課題も含め、道路と鉄道の立体化について総合的に検討を進めてまいります。
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