平成17年第3回定例会 一般質問

環状2号線は地下トンネル化を
地震後エレベーター早期復旧を

立石 晴康(自民党)
■観光都市東京
 
質問1
 都庁第一庁舎の正面に、千客万来の大熊手が飾ってあります。文字どおり大勢の観光客が内外から訪れる、魅力ある東京を目指す石原知事の意気込みが感じられます。
 さて、過日、私は、浅草浅草寺の境内で、ICタグを活用した国の実証実験を体験しました。ICタグは、トレーサビリティーや物流などの分野で実用化に向けた取り組みがなされており、最近では福祉分野での実験も行われております。愛知万博の会場で自立移動支援プロジェクトを体験して、この実験は、点字ブロックにICタグを埋め込み、つえに取りつけた読み取り機で信号をやりとりして、目の不自由な方への道案内を行うものです。
 ICタグの大きな可能性は、各方面で利用されます。東京を訪れる観光客にも有効な手段であると改めて実感いたしました。さらに、だれもが持っている携帯端末で利用可能ならば、より普及すると考えます。
 今後、ユビキタス社会の実現に向けた取り組みが着実に行われることと期待しますが、まず、都が実験を開始するに当たっての知事のご所見をお伺いします。
 今回、都は、観光や商業振興の観点から、上野公園での実験や秋葉原での技術展示などを行うとのことですが、どのような内容なのかお伺いをいたします。
 知事は、銀座のような多くの店舗が集積する商業地で、ICタグなどの先端情報技術を活用していくことが有効であると発言されています。銀座は、文字どおり日本を代表する商業地であり、ICタグの実用化に向けた実験を東京都が率先して行うことは、都市のIT化、ユビキタス社会の実現に向け、大きな一歩となるとともに、観光のみならず、各地の商店街をも元気づけることと思います。その意味で、都の実験に期待するとともに、具体的な成果に結びつけていくことが大切であると考えます。
 今回の実験の成果を、今後のユビキタス社会における都市観光東京のまちづくりにどのように生かしていくかの見解をお伺いいたします。
 
答弁1
 ▼知事
 ICタグを活用した実証実験についてでありますが、私、大分以前に、丸の内のあるビルを訪ねていきましたら、街角で、つえをついた、目の不自由な方が立ちどまって、どなたか、どなたかと周りの人に声をかけているんですけれども、だれも立ちどまらない。私は気がつきまして、どこへお行きですかといいましたら、たまたま私が行くビルと同じだったんですね。手を引いて案内しましたが、その人にいわせると、やっぱり丸の内というのはワンブロックの距離が長過ぎて、目の不自由な人の感覚では、普通のまちと違って、何ていうんでしょうね、予測に誤差を来して完全に行方を失ったようでありますけれども、そういう事例もございますし、もしああいう街角にもICタグというものが利用されて、一々案内板を読まなくても番地なりビルの所在がわかるようになれば非常に便利だなと、そのときも思ったものですけれども。
 我が国には、トロンとかICタグなどの非常にすぐれたIT技術が存在しております。トロンは、一回アメリカの手でつぶされましたけれども、トヨタがコンピューターによるエンジンの管理に活用することで、今日の携帯電話の普及に相まって復活いたしましたけれども、こうしたすぐれた技術というものを、これから環境や、観光や商業の振興など、まちの活性化に生かしていくことが重要だと思っております。
 今回の実験のねらいは、まちづくりにおける情報技術の新しい活用方法を提唱することでありまして、この実験を通じて、我が国のすぐれた技術を東京から世界に向けて発信し、国際的な競争力の強化につなげていきたいと思っております。
 
 ▼都市整備局長
 ICタグを活用した実証実験の内容についてでございますが、上野公園では、ICタグなど先端のIT技術を用いて、外国人を含めた来訪者に、目的地までの道案内やモデルルートの紹介、名所の由来、動物に関する情報などを提供いたします。この実験により、まちの中で活用する場合の技術的な検証と利用者のニーズの把握を行ってまいります。また、実験に使用される機器や仕組み、ユビキタス技術などを紹介する展示を秋葉原ダイビルで行うとともに、シンポジウムを開催し、この実験の意義を積極的に発信してまいります。
 次に、実験成果の今後の活用についてでございますが、今回の実験は、いわゆるユビキタス社会の実現に向けた第一歩でございます。このシステムは、観光や商業振興に加え、ユニバーサルデザインや安全・安心のまちづくりなど、さまざまな分野での活用が期待されます。都といたしましては、今回の実験が、技術的仕様の標準化や、利用者にとってよりよいシステムの構築などにつながるよう、専門家や国等の関係者の意見も聞きながら取り組みを進めてまいります。今後、住む人にとっても訪れる人にとっても魅力ある東京のまちづくりにこの実験の成果が幅広く生かされるよう努めてまいります。
 

 
質問2
 次に、水辺の魅力向上についてお伺いいたします。
 かつて、東京の川沿いは舟運が活発で、人々の生活に密着したにぎわいのある空間として、世界でも有数の水の都の一つでした。今でも当時の雰囲気を残す多くの名所旧跡、また食文化などが継承されており、観光資源として大きなポテンシャルを持っています。
 隅田川ではスーパー堤防やテラスの整備が進み、聖路加ガーデン前のテラスなどでは食事を楽しむ風景が見られます。また、浅草では、本年八月から親水テラスでライトアップやオープンカフェが開催され、新たな観光スポットとして注目を集めています。都民のみならず、内外の観光客も楽しめる河川空間を創造していくべきと考えます。
 そこで、隅田川、神田川、日本橋川など、河川における水辺空間の魅力向上についてお伺いいたします。
 来月一日には、荒川ロックゲートが開通し、扇橋閘門を経由して隅田川と荒川との間で船の行き来ができるようになります。その主な航路となる小名木川は、かつて行徳で生産された塩を江戸に運ぶ塩の道でした。今回の開通により船の往来がふえることが予想されます。江東内部河川では、川に親しむ人々の安全を図り、塩の道の再生を目指して、かつてのにぎわいを取り戻す施策を進めていくべきと考えますが、所見をお伺いします。
 
答弁2
 ▼建設局長
 水辺空間の魅力向上についてでありますが、これまでも都は、隅田川などにおきまして、良好な水辺空間の形成を目指し、スーパー堤防や親水テラスなど、治水と親水に配慮した河川整備を進めてまいりました。今後はさらに、川沿いの豊富な観光資源を生かした河川の利用を促進してまいります。具体的には、携帯電話を活用した観光情報の提供を進めるとともに、川を周遊する催しを誘導するために、防災船着き場の平常時の利用を図ってまいります。また、オープンカフェなど憩いの場が多くの地区で展開されるような仕組みづくりも進めてまいります。引き続き、地元との連携を図り、東京の歴史と文化が感じられる、魅力あふれる水辺の創出に努めてまいります。
 次に、江東内部河川でのにぎわいの創出についてでありますが、この地区では、水辺を利用する人々の安全を図りながら、下町特有の歴史や自然景観を生かしたにぎわいを創出することが重要でございます。このため、船舶の通航ルールを来月一日から施行するとともに、旧中川では、岸辺の自然を生かした散策路の整備や、ボート遊びなどが楽しめる環境づくりを進めてまいります。また、小名木川では、江戸情緒を醸し出す護岸の修景や扇橋閘門の活用などにより、かつての塩の道にかわる魅力ある水辺空間を創造してまいります。今後とも、地域の特色を生かしながら、多くの人が親しみ憩える水辺の実現に取り組んでまいります。
 

 
質問3
 さて次に、浜離宮庭園のアクセスとして、汐留シオサイト方面、銀座方面からのアプローチに汐先橋交差点があります。この交差点は、首都高速都心環状線の橋脚があることから、右左折車線が分離されるなど、複雑な形となっています。このため、浜離宮庭園を訪れる観光客や歩行者が交差点の海岸通りを横断するにも、車道を何回かに分けて横断しなければならないなど、利用しにくい交差点であります。
 そこで、歩行者がより安全で利用しやすい交差点に改良すべきと考えますが、所見をお伺いします。
 
答弁3
 ▼建設局長
 汐先橋交差点の改良についてでありますが、浜離宮恩賜庭園へのアクセスにつきましては、利用者も増大しており、その改善は重要であると考えております。汐先橋交差点につきましては、お話のとおり、首都高の汐留出入り口が近接し、交通量も多いため、さまざまな制約がありますが、その改良案につきまして、現在、関係機関と連携して調査検討を進めており、年内に取りまとめる予定でございます。今後とも、歩行者が安全で利用しやすい交差点の改良に努めてまいります。
 
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■環状2号線築地―晴海間の整備計画
 
 現在、環状二号線築地―晴海間の二・一キロ整備計画が見直されています。現在の都市計画決定どおり、地下トンネル方式で建設すべきと考えます。築地市場移転決定後に、にわかに都は地上化の変更素案を提案しています。変更理由として、都は建設コストの安さをいいます。また、築地市場移転跡地と勝どき・晴海の一体化を挙げています。このことは、名橋日本橋の上部首都高速道路による水辺景観の過ちを再び繰り返し、広大な築地市場跡地を道路でわざわざ細分化することになります。
 近年、土木技術の進歩は目を見張るほどであります。十年前、初めて本格的に道路土木にシールド工法を用いました。アクアライン建設時のシールド工法です。その当時より工事費は今、三割から四割程度のコストが下がっていると専門家はいっております。この路線の虎ノ門―築地間でも完全地下式です。
 次期東京オリンピックを目指す東京都は、都市インフラでも幹線道路建設の選択肢が多様になったことから学ぶべきものであります。現に、東京でも大深度トンネルを利用する外環道計画の例や、中央環状新宿線などの事例があります。また、海外でも、高架道路を撤去して地下化した、ボストンの、ローガン空港から市心に向かう、かつてセントラル・アーテリーと呼ばれたビッグディグや、高架道路を撤去したことで清流が復活したお隣のソウル都心の川、清渓川など、事例は枚挙にいとまありません。
 

 
質問1
 一方、この変更素案では、築地市場から晴海まで地上道路となり、隅田川と朝潮運河の横断は橋梁として計画されています。ウオーターフロント・東京の玄関口である隅田川など、河口の道路計画のあり方について、知事のご所見をお伺いいたします。
 
答弁1
 ▼知事
 ウオーターフロントにおける道路計画のあり方についてでありますが、いずれにしろ、道路というものは、人や物の活発な交流を支えるアクセスでありまして、都市を形づくる非常に大切な要素であると思っております。道路計画は、こうした機能を十分に踏まえるとともに、地域の状況やコストなどを総合的に勘案して定めるべきものと思っております。
 都市の玄関であり顔ともいえるウオーターフロントにおいては、ニューヨークのイーストリバーの例を見るまでもなく、景観形成の視点が重要でありまして、東京の例でいえば、お台場をつなぐあのレインボーブリッジもそうでありますし、また、勝鬨橋は、かつては東洋一のはね橋として日本の技術の粋を集めて建設され、あの地域、下町の風景を彩る名橋ともなりました。
 隅田川の河口における今後の道路整備については、首都東京の新たなシンボルともなり得るような合理的な計画としても推進していきたいと思っております。
 

 
質問2
 今後の計画として、変更素案では、環状三号線(清澄通り)と交差することになり、交通渋滞を誘発させることになります。一日の交通量が、環状二号線では六万台。環状三号線との交差により、約十万台の交通量が見込まれると予想されています。それだけの車が交通信号により停止から発進まで排出するガスの量は、想像するに余りあります。これらの交差点は、大気汚染の要因をつくるもとになります。特に環境、水辺景観からも、環状二号線は地下化してつくるべきです。
 また、コスト面についていろいろ検討を重ね、極力廉価で建設する方法も残されていると思います。まちづくりは、今後の百年を見据えて考えるべきです。所見を伺います。
 
答弁2
 ▼都市整備局長
 環状第二号線の整備についてでございますが、環二は、臨海部の生命線となる道路であり、早期整備が必要でございます。従来、築地市場を現在地で再整備する計画であったため、環二は、地下を通過する計画としておりました。しかし、市場の移転に伴い、地上化が可能となり、課題であった勝どき地区へのアクセス問題が解消するとともに、市場跡地の有効利用にも資することとなります。今後、さまざまな工夫を加えながら、ご指摘のように百年先を見据えた道路として早期に整備してまいります。
 
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■地震対策
 
 近ごろ、規模の大きい地震が頻発しています。こうした中、東京直下型地震が起きる確率は、三十年以内に七割、十年以内に三割と、中央防災会議により発表されています。この東京の防災、減災対策について再検討する必要があると思います。そこで、何点かお伺いします。
 

 
質問1
 超高層ビルの地震時におけるエレベーター早期復旧のため、エレベーター保守会社だけに頼るのではなく、建物管理者などによる復旧作業が有効になるよう考えるべきです。都の所見を伺います。
 
答弁1
 ▼都市整備局長
 地震後のエレベーターの復旧についてでございますが、超高層ビルの利用者にとってエレベーターは不可欠な施設であり、地震時に停止したエレベーターを早期に復旧することが必要であります。都は、既に、エレベーター業界に対し、緊急システムの改善や復旧体制の整備について対策を講じるよう働きかけております。ご指摘のような保守管理者以外の建物管理者などによるエレベーターの復旧については、今後、国等と連携しながら検討してまいります。
 

 
質問2
 過日、中央区の超高層マンションでの震災訓練に参加して、水、食料等の備蓄が必要であることを痛切に感じました。そのため、高層マンションの建設には、自助において備蓄すべきだと考えますが、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼総務局長
 中高層マンションの備蓄対策についてお答えをいたします。
 大規模な地震では、エレベーターの停止や断水などの発生によりまして、マンションでの生活が困難となる事態が想定されます。このため、マンションの管理組合や住民が、みずからの備えとして水や食料等を備蓄するというご提案は、大変有効な対策であると考えております。こうした働きかけは、身近な区市町村が主体となって行うものと考えますが、都といたしましても、中高層マンションの被害想定を行いまして、その対策を地域防災計画に盛り込むなど、市町村を支援してまいります。
 

 
質問3
 次に、震災時の備蓄用品の再点検についてでありますが、中央防災会議の発表によると、大震災時の死者は一万一千人を超えると予想されています。速やかな復興を成し遂げるためにも必要なのは、死亡者のご遺体をどう保存するのか、どう取り扱うのかということではないかと思います。阪神・淡路大震災の教訓からもこのことを強く感じました。ご遺体は時間が経過すると腐敗も進行し、疫病の源となります。また、個人のプライバシー、尊厳を保つためにも、遺体保存袋、ボディーバッグのことも急ぐべきであります。この点、今どのようになっているか、所見をお伺いいたします。
 
答弁3
 ▼福祉保健局長
 災害時における遺体の保存、取り扱いについてでございますが、東京都地域防災計画において、遺体収容所の設置・運営及び遺体の保存に必要な機材等の確保は区市町村の役割とされておりますが、都は、被災区市町村から協力要請があった場合には必要な支援措置を講ずることとしており、例えば、ひつぎなどの葬祭用品や遺体保存用ドライアイスの供給に関する協定を、現在関係業界と締結しておるところでございます。
 今後、都は、地域防災計画を見直す中で、適切な遺体保存方法についても検討してまいります。
 

 
質問4
 阪神・淡路では、死亡者の八割以上が家屋や家具の倒壊による圧死といわれています。そこで、いわゆる昭和五十六年以前の旧耐震設計の建築物のリフォームや、木造建築物の耐震補強は特に大切です。
 近年、悪質リフォーム業者による被害が後を絶たない現況から、地域の工務店のノウハウを活用した耐震リフォームが急がれます。そのために、都民が安心してリフォームや建てかえを行えるよう、地域に密着した、顔の見える中小工務店を生かす情報提供の仕組みを整えることが重要であると考えますが、所見を伺って、質問を終わります。
 
答弁4
 ▼都市整備局長
 都民への中小工務店の情報提供についてでございますが、都民が安心してリフォーム等を行う上で、地域に密着した中小工務店に期待される役割は大きいと考えております。これまで、都は、中小工務店等で構成される東京都地域住宅生産者協議会と連携し、講習会による技術力の向上やリフォーム相談窓口の開設などに取り組んでまいりました。しかし、中小工務店の技術力や事業活動などは、必ずしも都民に十分周知されていない状況にございます。今後、都は、関係団体と連携し、実務経験や技能士などの資格を持つ地域の中小工務店の情報を都民に身近なところで提供するなど、都民が安心してリフォームなどを行うことのできる仕組みづくりに取り組んでまいります。
 
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