委員長口頭報告

平成17年第二回定例会会議録(6月7日)から
 
 ▼議長
 追加日程第五、社会福祉法人東京都社会福祉事業団が運営する東京都社会福祉総合学院に関する調査を議題といたします。
 本件に関する委員会の報告書は、お手元に配布いたしてあります。
 朗読は省略いたします。
 
 ▼議長
 本件に関し、社会福祉法人東京都社会福祉事業団による東京都社会福祉総合学院の運営等に関する調査特別委員長より報告を求めます。
 調査特別委員長山崎孝明君。
   〔百十五番山崎孝明君登壇〕
 
 ▼百十五番(山崎孝明君)
 社会福祉法人東京都社会福祉事業団による東京都社会福祉総合学院の運営等に関する調査特別委員会における調査の結果について、委員会を代表いたしましてその概要をご報告申し上げます。
 本委員会は、三月十四日の予算特別委員会において、民主党の中村議員の社会福祉事業団に関する質問に対し、予算を提案している側である濱渦副知事から、都の補助金が不当、不法であるかのごとき答弁を発端にし、社会福祉総合学院の運営等を調査することを目的に、平成十七年三月十六日に地方自治法第百条に基づき設置されたものであります。都議会で百条委員会が設置されたのは実に三十五年ぶりであります。
 本委員会は、三月十六日の第一回委員会以降、六月六日の報告取りまとめに至るまで計十三回開催いたしました。この間、延べ十三人に対する証人尋問、百五十七点に上る記録請求、理事会、委員会合計時間五十九時間五十一分をかけ精力的に調査を行い、さまざまな事実を明らかにいたしました。
 調査項目は、調査の力点から見て大きく二つに分けられます。
 四月二十五日の第八回までは、社会福祉総合学院に関する法的問題について徹底的に調査し、問題なしとの結論を得た上で、第九回以降は、なぜ学院の運営が問題とされたか、その背景の解明に全力を尽くしました。以下では、その調査結果についてご報告申し上げます。
 第一に、社会福祉総合学院に関する法的問題についてであります。
 まず、知事の記者会見及び一部報道によって問題と指摘された事項を重点的に調査しました。
 その一つは、学院の昼間の空き教室を借りて敬心学園が経営している臨床福祉専門学校の設立経緯における違法性の有無であります。
 二月二十五日の知事記者会見で、学校が三カ月程度でできるわけがない、特例中の特例と記載された文書、念書が出ており、大変な問題、けが人が出るなど衝撃的な発言がありました。
 しかし、本委員会の調査によって、学校設立申請から二カ月で認可した例があること、特例中の特例とは、校地を自己所有以外でも認める認可取扱内規の適用を表現したものであること、念書は、敬心学園から事業団に提出されたもので、五年間の契約期間の更新を無条件に保証するものではないことを確認したものであることなどについて明らかとなり、専門学校の設置認可については違法性がないことが明白になりました。
 次に、一部報道が指摘している契約関係及び補助金についてであります。
 一部報道では、社会福祉事業団に都が無償で貸し付けた土地と、都の補助金で建設した社会福祉総合学院の建物が、特定の学校法人に転貸され、学校法人が学院施設の九割を使用するという不適正な実態があると指摘していました。この点に関しても、多くの証人尋問や記録の分析により事実解明を行いました。
 その結果、都有地の転貸の事実はないことが明らかになりました。建物については、社会福祉事業団と敬心学園との間で、平成十四年四月に定期建物賃貸借契約が締結されましたが、この契約は、学院事業の運営委託とあわせて、空き教室の利用を図るための建物一括貸付契約であり、さきに述べたような指摘は当たりません。
 調査の過程で、定期建物賃貸借契約ではなく更新権が担保されているのではないかとの証言もありましたが、記録請求により公正証書、合意確認書の存在が明らかになったことで、借地借家法第三十八条の定期建物賃貸借契約であることが確認されました。都と社会福祉事業団が平成十一年三月に結んだ三十年間の土地等無償貸付契約についても、公有財産管理運用委員会への付議など、手続上の問題について関係局間において認識の相違はあるものの、違法性はないことは明らかであります。
 なお、都の補助金については、違法性がないことを予算特別委員会で大塚副知事が答弁するとともに、本委員会の証人尋問においても財務局長も証言したところであります。
 以上のことから、学院の運営に関して法的な問題がないことが明瞭になりました。
 第二に、疑惑捏造の背景の解明についてであります。
 学院の運営に何ら法的な問題がないことが明確になったことを受け、以後の調査では、問題がないものを問題にした濱渦副知事の動機や、疑惑捏造の過程といった背景の解明に重点を移しました。
 今回の件を問題化した濱渦副知事の動機は、本委員会の調査によっても十分判明したとはいえませんが、輪郭が明らかになりつつあります。濱渦副知事は、三月十四日の予算特別委員会で、都民の財産でありますから、正当な形に戻さないといけない、本来の形に戻すのが一番かと思っておりますと答弁しています。
 この本来の形に戻すということが何を意味するのか、本委員会の調査によって、濱渦副知事と櫻井出納長が中心となって進めている都有財産利活用の中で、社会福祉保健医療研修センターを社会福祉総合学院に移転し、同研修センター跡地を売却する構想があったことが明らかになりました。この構想の実現のためには、学院の施設を敬心学園に一括して貸し付けている定期建物賃貸借契約を解消することが絶対的な条件となり、まさにこのことが、本来の形に戻すという濱渦副知事の答弁の真意ではないか、そのようにも考えられるのであります。
 また、五月十二日に提出された都職員の陳述書によって、民主党の富田議員が濱渦副知事から、知事記者会見で話があったけが人は二人の政治家の名前であることが具体的に明らかにされましたが、本委員会の調査では、お二人が今回の件とかかわりがあったという根拠は示されておりません。全く根も葉もないことでありますが、濱渦副知事が殊さら疑惑を捏造しようとする動機として、二人の政治家の追い落としがあったことがうかがわれるのであります。
 研修センター跡地の売却と政治家の追い落としのために、濱渦副知事、櫻井出納長が、議会、マスコミ、さらには知事まで利用してきた実態も明らかになったのです。
 次に、濱渦副知事が民主党に質問をさせた経緯についてであります。
 五月十二日、内田議長の証言と都職員の陳述書によって、濱渦副知事と民主党との間の予算特別委員会の質疑に関する事前調整の状況が明るみに出ました。濱渦副知事が民主党に対して質問を執拗に働きかけ、これを拒み切れなかった民主党の困惑が明らかになったのであります。三月二十九日の濱渦副知事の民主党への働きかけは行っていないとの証言は、明らかに偽証であります。
 また、二月二十五日の知事記者会見の前日、都道府県会館で櫻井出納長が知事に対して学院の運営について説明を行ったことが、出納長本人の証言により明らかになりました。説明資料を記録請求しましたが、この資料を用いて説明しただけでは、記者会見における知事の発言にはつながらず、ましてや、けが人の氏名などどこにも記載されておりません。何らかの意図を持った恣意的な説明が知事に対して行われたことは、疑いがないのであります。
 このように、疑惑捏造の背景についても一定程度解明されましたが、これ以上の追及は困難であり、百条委員会としての限界でもあります。疑惑捏造の真の動機など背景の解明を尽くすためには、もはや司直の手にゆだねるしかない、本委員会としてはそのように判断するものであります。
 第三に、出頭拒否及び偽証に対する告発及び問責決議についてであります。
 真相解明の場である本委員会において、真実をゆがめ、事実を隠ぺいしようとする許しがたい行為がありました。
 その一つが、民主党の富田議員の出頭拒否です。
 三月十四日の予算特別委員会における質疑の経緯を解明するためには、民主党の政策責任者である富田議員の証人尋問が不可欠と判断し、再三にわたり出頭を求めました。しかしながら、富田議員は、三度にわたる出頭要請をいずれも正当な理由なく拒否し、真実の証言を拒んだのであります。この行為に対し、五月十六日、告発に該当するものと判断し、賛成多数で本会議においてその議決を求めることを決定しました。
 なお、富田議員の喚問については、議員の政治活動の自由を保障すべきとの観点から、証人喚問に反対する少数意見があったことを申し添えます。
 次に、濱渦副知事の偽証です。
 さきに述べましたとおり、三月二十九日の民主党との事前調整に関する濱渦副知事の証言は、内田議長と都職員の陳述書によって偽証であることが明らかになったため、五月三十一日、告発に該当するものと判断し、本会議においてその議決を求めることを賛成多数で決定いたしました。
 さらに、櫻井出納長の本委員会の真相解明に対する不誠実な行為、対応であります。
 櫻井出納長は、二月二十五日の知事記者会見の前日に知事に誤った情報を与え、疑惑を捏造し、再三再四にわたり求めた記録を、記憶にないとして提出をかたくなに拒んで審議を妨害し、執行機関側が設置した学院に関する調査改善委員会において、本委員会対策として証言の事前調整を画策しました。
 これらの櫻井出納長の行為は、本委員会が目指す真実の究明を妨げる行為として目に余るものがあり、五月三十一日、問責決議に値する行為があったとして、議会運営委員会に検討をゆだねることといたしました。
 なお、百条第一項に基づく記録の提出請求に対し、当然あるべき記録が提出されなかったことはまことに遺憾であり、不誠実きわまりない対応であったと断じざるを得ません。
 こうした経緯を踏まえ、六月二日、第二回定例会において、その責任を厳しく問い、猛省を求めるため、濱渦副知事、櫻井出納長、富田議員に対する問責決議が賛成多数で可決されたところであります。
 以上のとおり、社会福祉総合学院の運営には何ら法的な問題がないことが、徹底した調査の結果、明らかになりました。濱渦副知事を中心に、法的に問題がないものが疑惑の対象とされ、議会や知事まで利用し、あたかも法的に問題があるがごとく捏造された経緯がつまびらかになったのであります。
 さらに、真相の究明の場である本委員会への出頭拒否、証人尋問における偽証の存在も明るみになり、都政の信用も失墜しました。その結果、都政は混乱し、著しい停滞を招いています。さらに、この混乱は庁内のみならず都民にまで影響を及ぼしています。
 しかし、六月六日、知事が濱渦副知事を辞任させて人心を一新するとし、また、五月二十五日に、執行機関側が設置した社会福祉総合学院に関する調査改善委員会が改善方策を示したことにより、今後、都政の停滞と混乱は収拾に向かうものと期待しております。
 この百条委員会が設置されたことは、ある意味で都政にとってまことに不幸な出来事でもありました。しかし、災い転じて福となす、そういう言葉もあります。この百条委員会を契機に、都政が一日も早く正常化してほしい、議会と執行機関の新たな出発点としたい、こう思っております。新しい都政、生まれ変わった都政によって、都民の負託にこたえていかなければならないと考えております。
 これまで本委員会に携わってこられた副委員長、理事及び委員の皆様の熱意とご努力に対し、また、知事を初めとする執行機関及び関係各位のご協力に対し深く感謝申し上げ、本委員会の調査報告とさせていただきます。
 委員長報告は以上でありますが、ここで百条委員長として一言申し上げます。
 委員長としての実感は、このような委員長は二度と引き受けるべきではない、そういうことであります。しかし、引き受けた以上、議会人としての意地、あるいは都政刷新の使命、そういう思いで一生懸命務めてまいりました。
 我々議会は、百条委員会により議会の権能を存分に発揮し、議会の存在を示すことができたことは、都政史上、歴史に残るとは思いますが、その代償ははかり知れぬほど大きなものであったと思います。
 二人の告発の認定、四人の問責決議、そして特別職の辞任、体調を崩した職員、傷ついた方々、ましてや、理事者間同士の相互不信など、そうしたことをいろいろと生み出してしまったのであります。つらいことでもあり、悲しいことでもあります。
 今回の百条委員会を総括するとき、二度とこのような事態を絶対に生み出してはならない。そして、今回の責任は、知事にも、執行機関にも、我々議会にも、都政にかかわるすべての者が負わなければならないと私は痛感いたしております。
 今回のことは、勝者もない、敗者もない。あえていうなら、すべてが敗者であった、こう思います。きょうより我々都政人は、よきチームワークをもって、その責任のもと、一千二百万都民、そして都政進展のために新たな出発を誓うべきであります。
 以上。(拍手)
 
 ▼議長
 以上をもって報告は終わりました。
 
 ▼議長
 本件は、起立により採決いたします。
 本件については、委員会の報告のとおり決定することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
 
 ▼議長
 起立多数と認めます。よって、本件は、委員会の報告のとおり決定いたしました。
 
 ▼議長
 次に、社会福祉法人東京都社会福祉事業団による東京都社会福祉総合学院の運営等に関する調査特別委員会の調査の終了について、起立により採決いたします。
 本件に関する調査は、これをもって終了することに賛成の諸君の起立を求めます。
   〔賛成者起立〕
 
 ▼議長
 起立多数と認めます。よって、本件に関する調査は、これをもって終了することに決定いたしました。
 
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