福祉削減での都民の痛み考えよ
都市再生の大型投資は見直しを |
渡辺 康信(日本共産党) |
■小泉政権の国政運営 |
質問1
私は、日本共産党都議団を代表して質問します。
今、小泉政権により、国民に総額七兆円に及ぶ大増税、負担増が押しつけられようとしております。これに対し、新聞各紙も負担増路線が確定とか、老いも若きも負担増と厳しい論調で報じています。今議会において、都政の課題を論じ、予算のあり方を考えるときに、この問題を避けて通ることはできません。
主なものだけでも、所得税、住民税を減額している定率減税の縮小、廃止が勤労者世帯を直撃します。消費税の免税点の引き下げで中小業者に大きな負担増が襲いかかります。青年には、年収わずか百万円台のフリーターに対する課税の強化、国立大の学費の値上げ、働く世代には国民年金、厚生年金の保険料値上げ、高齢者には老年者控除の廃止、公的年金控除の縮小など年金課税の強化、さらには生活保護の老齢加算の削減、特別養護老人ホーム利用者からの家賃徴収、介護保険料値上げなど、まさにあらゆる世代から搾れるだけ搾り取るというものであります。
この四年間連続して家計の所得は数兆円規模で減り続けているときに、こんな大増税、負担増路線に踏み出すことは、戦後前例のないことであります。七兆円の負担増は、橋本内閣の大失政の二の舞というだけでは済みません。国民生活と日本経済にはかり知れない打撃となることは明らかではありませんか。国民、都民の怒りが日に日に広がっております。政府が、この大増税、負担増を都民に押しつけることは許されません。知事、そう思いませんか。
私は、知事が政府に対して、この大増税、負担増計画を撤回するよう強く要求すべきだと考えますが、見解を伺います。
答弁1
▼知事
小泉政権の国政運営についてでありますが、小泉政権には、構造改革を標榜しながら、どうも問題を先送りし、十分な成果を上げていないなど、心もとないところがあるのは確かであります。こうした事柄については、私は総理に対しても直接何度も申し込んできました。
しかし、撤回を要求すべきだとおっしゃっている七兆円負担増なるものは、何を根拠としているか定かでありませんな。本来、この問題は、我が国の行財政制度全体のあり方を見直す一環として考えるべきであります。都合のいい数字を寄せ集めて、殊さら不安感をあおるのはいかがなものかと思います。
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■福祉 |
質問1
小泉政権が、都民生活に一層の痛みを押しつけようとしているときに、石原知事が編成した来年度予算案には、この国の悪政から都民を守るという立場がないのは驚くべきことです。福祉予算は、三位一体改革に伴う国民健康保険に対する国庫負担が都に押しつけられた予算増を除けば、実質マイナスです。医療、教育、住宅、中小企業、環境など、都民生活にかかわる予算は軒並み減らされました。その一方で、巨大ビルと大型道路の都市再生の予算は大幅に増額されています。今年度と来年度で六千億円もの増収が見込まれるのに、福祉や都民の暮らしのためにはほとんど回されていないことに対して、おかしいじゃないかという声が多くの都民から上がっているのは当然であります。
中でも福祉関係費は、これまでに、決算で見ると八百五十六億円も削減されてきました。高齢者の人口がふえているのに福祉関係費がこれほど減らされたのは、本当に異常なことであります。
これに対し、知事は、歴代知事と比べると福祉予算の構成比は自分のときが最も高いといいわけしました。とんでもないごまかしです。歴代知事が福祉予算をどれだけふやしたのか。美濃部都政は、福祉の構成比を三・二%から六・五%へと倍加させ、予算額を十二倍にふやしました。鈴木知事は、構成比を〇・四%伸ばし、予算額で二・四倍にふやしました。青島都政は、構成比を二%ふやし、予算額では一・二倍にふやしたのであります。
これに対し、石原知事はどうでしょうか。青島知事のとき八・五%だった福祉費の構成比を二〇〇三年度決算では七・九六%へと後退させ、額も一割も減らしたではありませんか。
福祉削減の中身もひどいものです。医療費助成や福祉手当など、都民の命綱をばっさり削り、シルバーパスは全面有料化で、以前は七十歳以上の高齢者の七割以上が利用していましたが、今では五割程度まで落ち込みました。
マル福は来年度六十八歳と六十九歳だけの制度となり、二〇〇七年六月末で廃止です。
東京都患者調査の結果によれば、六十五歳から六十九歳の高齢者十万人に対する医療機関の診療を受けた人数は、マル福廃止前の七九%まで落ち込んでいます。他の年齢層や全国平均の同じ年齢の状況と比べても、受診抑制がはっきりと現れています。
寝たきり高齢者の老人福祉手当が廃止され、必要なサービスが受けられない、入院費用が払えないなどの事態が広がっています。
このほか、特別養護老人ホームや私立保育園の運営費補助、区市町村の国民健康保険などへの補助を大きく減らし、保健所、都立病院、福祉施設などの廃止や民営化を次々と進めています。福祉の改革だといいますが、福祉改悪ではありませんか。
知事は、福祉削減による都民の痛みを考えたことがあるんでしょうか。国の悪政が都民生活を直撃している今こそ、東京都の予算のあり方を都民の立場で検証し、福祉予算を大幅にふやすなど、都民の暮らしへの応援を拡充すべきです。知事、お答えください。
答弁1
▼知事
福祉施策についてでありますが、お話を聞いていささか驚きました。かつて福祉施策の実績は実額の増減で評価すべきと主張された方々が、予算額が増加すると今度は実質減だと主張される。いずれにしても、都が果たすべき役割は、福祉サービスの基盤整備等、都における福祉水準全体の向上を図ることであります。多様化する都民の福祉ニーズにこたえるため、都は、長期的、歴史的視野に立って、見直すべき事業は見直し、必要な施策には財源を集中投入して福祉改革を推進してまいります。
都独自の認証保育所制度の創設や、認知症高齢者や知的障害者のグループホームの増設などの施策を展開し、着実に成果を上げていると思います。
ちなみに、十三年度、十七年度の施策数を比べますと、十三年度は四十二、十七年度は二百五十二。三年間で二百五十二カ所、この認証保育制度を推進してきました。
また、認知症高齢グループホームは、十一年度に四十四でありました。現在、二千八十五、五年間で四十七倍になっております。知的障害者グループホームは、十一年度は七百六十二、十六年二月現在では千六百四十五、五年間で二・二倍になっております。
次いで、都民福祉の拡張についての繰り返しの主張でありますが、都はこれまで、狭義の福祉だけではなく、治安対策、中小企業支援、インフラ整備など、これも立派な福祉であります。都民福祉の充実を目指して、さまざまな施策を複合的に展開してきております。
中でも、共産党がいう福祉については、一連の福祉改革を通じて施策の見直しに取り組み、いわゆるばらまき的な現金給付や入所施設中心の画一的なサービスから、利用者本位の福祉へと転換を図ってきたところであります。
十七年度予算においても、こうした取り組みを積極的に推進しており、こうした姿勢を、既に多くの都民から十分なご理解をいただいていると思っております。
質問2
特に、今、緊急の課題になっているのが高齢者福祉の充実です。石原知事は、年金が充実した、高齢者は豊かになったといって、経済給付的事業の切り下げをしてきました。当時でも事実とは違っていましたが、その後、医療費の負担はふえ、年金は減り、高齢者の生活は豊かになるどころか、苦しくなるばかりです。
都内高齢者の老齢基礎年金受給額の平均額はわずか五万三千円で、九九年度の全国六位から、二〇〇三年度には十八位まで落ち込んでいます。年金が中心の高齢者世帯の家計は赤字で、預貯金の取り崩しがふえています。それに加えて、今後、小泉内閣による年金課税強化による高齢者の負担は雪だるま式に膨らんでいくのであります。
ことし一、二月の年金から所得税が増税され、一年間に受け取る年金の額が何万円も減る高齢者が多数生まれており、大きな不安と怒りの声が上がっています。これはまだとば口にすぎません。次は住民税が増税され、住民税をもとに計算される国民健康保険料や介護保険料などが連動して値上げになります。
私は、足立区に住む八十四歳のひとり暮らしの女性から話を聞いてまいりました。
この方は年金収入が二百二十六万ですが、区役所の試算によれば、所得税も住民税も非課税だったのが、ことしから所得税が年額四万九千円、住民税が来年から三万八千円取られることになります。これに加えて、国保料と介護保険料が合わせて年間六万五千円から何と二十四万四千円に、三・七倍化。その上、シルバーパスが千円から二万五百十円にはね上がります。全部合わせると、一年間に二十八万円を超える負担増になるのであります。
どうして年寄りに今になって税金をかけるのか、政治は私たちの暮らしを苦しめるためにあるのでしょうかと、怒りをあらわにしていました。
所得税や住民税非課税が課税となり、負担増に苦しむ高齢者は、我が党の試算では東京でおよそ二十万人、そのほか何らかの負担増の影響を受ける人を入れると、数十万に及ぶといわれます。
年金に対する所得税、住民税の増税と、それに連動したシルバーパス、国民健康保険料、介護保険料などの負担増の影響を受ける人数や影響額について、都として明らかにしていただきたい。答弁を求めます。
答弁2
▼主税局長
年金課税見直しによる影響額についてでございますが、所得税の影響額は全国で約二千四百億円、影響を受ける人数は約五百万人とされております。
また、個人都民税の影響額は、課税資料や厚生年金にかかわる統計資料等に基づき試算しますと約百億円、影響を受ける人数は約七十万人であり、このうち新たに納税義務が発生する人に係る影響額は約二十億円、影響を受ける人数は約二十万人でございます。
▼福祉保健局長
年金に関する税制改正の影響についてでありますが、お尋ねのシルバーパス事業などでは、利用者本人への市町村民税課税の有無などにより取り扱いを区分していることから、今回の年金に関する税制改正が実施された場合には、一部の高齢者への影響があるものと認識しています。
具体的に影響を受ける高齢者数については、市町村民税の課税対象となる所得が、公的年金収入のほか、配当や不動産所得など多種類である場合もあり、正確に把握することは困難でありますが、国民生活基礎調査による高齢者の所得分布や国勢調査などをもとに推計いたしますと、シルバーパス事業では、現在の千円パス利用者のうち約七万七千人が影響を受けると予想されます。
なお、介護保険料につきましては、平成十八年度に予定されている制度改革に伴い、保険料額の改定や負担軽減のための所得段階区分の見直しが予定されていること、また国民健康保険料については、今後、区市町村の判断で料率を決定することから、これらの具体的な影響額等を算定することは現時点では困難であります。
質問3
高齢者の平均所得は、他の世代と比べて遜色ない、高齢者は豊かだという知事のいい分は間違っています。ごく一部の高額所得者が平均を引き上げており、年間所得二百五十万円以下の世帯が全体の六割に及びます。だからこそ、高齢者福祉では所得の低い人の負担は軽くする、いわゆる応能負担といわれる社会保障の大原則が、特別の重要性を持っているのであります。
中でも東京の高齢者は、家賃を初め世界一物価が高い東京で、年金の額は全国一律の低い水準という厳しい条件に置かれています。ところが、石原都政の福祉施策は、事実をねじ曲げ、応能負担という原則を次々に崩しています。月額わずか三万円、四万円という国民年金の高齢者から厚生年金の世帯まで、支援を切り下げ、負担を強化する方向を続けてきました。こんなむごいことはありません。
知事、今までになかった負担増が次々押し寄せるという新しい事態が生まれているのです。これまでのやり方を見直し、高齢者への新たな経済的支援を都として確立していくことが強く求められていると考えるものですが、見解を伺います。
答弁3
▼知事
高齢者への経済的支援についてでありますが、現在、我が国は、世界的に見ても、豊かで平等な社会を実現し、高い生活水準を維持しております。ちなみに、高齢者といいますか、平均寿命は世界一になりましたし、これは、基本的に国民が自助、自立を前提として努力を積み重ねてきた結果であると思います。同時に、さまざまな社会的リスクに対応するための国民皆保険、皆年金や生活保護制度などの社会保障制度が有効に機能してきたためともいえます。
しかしながら、人口減少社会の到来を目前にして今必要なのは、新たな経済的支援を実施することではなくて、こうした社会保障制度全体を将来の世代に信頼されるものへと改革、改新していくことだと思っております。
質問4
具体的提案の第一は、年金への課税強化により、シルバーパスや国民健康保険料などの負担がふえないようにすることであります。
住民税課税か、非課税かで天と地の違いになるような所得基準の見直しを初め、シルバーパスや都営住宅家賃などの都民の負担軽減を図るための具体策を講じる必要があると考えますが、お答えを願います。
答弁4
▼福祉保健局長
シルバーパスの所得基準の見直しなどについてでありますが、今回の税制改正案が実施された場合、市町村民税非課税で千円のシルバーパスを利用している方の一部に影響が出ると予想しております。
しかしながら、現在、まだその改正案が国会で審議中であること、市町村民税は前年の所得をもとにしているため、シルバーパスが影響を受けるのは平成十八年度になることから、今後、税制改正の動向などを踏まえ慎重に対処してまいります。
▼都市整備局長
年金税制の見直しにより都営住宅家賃が上昇する場合の負担軽減についてでございますが、このたびの公的年金や老年者の控除にかかわる税制改正は、世代間及び高齢者間の負担の公平を確保するため実施されたものであり、これに伴う法令の改正により、都営住宅の家賃算定方法が変更されたところであります。
法令では、老年者控除の廃止により都営住宅家賃が引き上げとなる場合、激変緩和のため、三年間の経過措置が設けられております。
質問5
シルバーパスは、東京都が全面有料化を行ったのに対し、政令市のほとんどが所得制限なしで、八自治体が全面無料を継続しています。有料化を導入したところでも、例えば、神戸市は、本人所得三百七十八万円未満の人は無料です。東京都のように、住民税を課税されたら、千円から一気に二万五百十円になるところなどありません。
厚生省が資料として全国に配った研究論文の中でも、自治体が実施している敬老乗車証は、高齢者の閉じこもり予防に大きな貢献をしている、バスに乗っていると最高のバランストレーニングになる、楽しい、したがって、公共交通料金の助成事業は、介護予防の十分な効果が期待されるものとして高く評価されているのであります。
シルバーパスは無料に戻すことが必要ですが、せめて当面、所得に応じて三千円や五千円、一万円のパスをつくり、負担軽減を図ることや、半年ずつ年二回の分割払いを認めることは都民の切実な要求です。利用したいが二万円では手が出ないという声が多数上がっており、改善を求めるものです。見解を伺います。
答弁5
▼福祉保健局長
所得などに応じたシルバーパスについてでありますが、本制度は、若年世代との間に負担の不公平があるなどの課題があったことから、平成十二年度に見直しを行ったものであります。現在、多くの高齢者がパスの発行を受け、社会参加と生きがいの活動に活用されており、現行の仕組みは、パス本来の目的に十分沿っているものと考えます。
質問6
高齢者の医療費の負担が重くなる中で、経済的負担による受診抑制が深刻な問題になっています。医者に行くのを我慢しているなどの声は、本当に切実なものです。高齢社会に対応するためには、病気の早期発見、早期治療を推進すること、重症化する前に医療を受けやすい条件をつくることが極めて重要です。そのために、介護予防や健康づくりなどの対策強化とともに、医療費の負担軽減がどうしても必要であります。
京都府は、六十五歳から所得の低い高齢者に対する医療費助成を実施していますが、事業の休廃止をした場合の影響評価を行った結果、所得の少ない高齢者にとって、医療費にかかる経済的負担から受診抑制につながりかねず、高齢者の健康の保持増進に支障を来すことが考えられるとして、存続を決めております。自治体として当然のことではないでしょうか。
都独自のマル福は、これ以上の縮小、廃止をやめ、六十七歳から六十九歳までの現行制度を当面維持するとともに、六十五歳からの制度に戻す方向で再検討することを求めるものです。お答えを願います。
答弁6
▼福祉保健局長
老人医療費助成制度についてでありますが、老人医療費助成制度など一連の経済給付的事業の見直しは、制度間の整合性や世代間の負担の公平性などの観点に立って、利用者本位の新しい福祉の実現を目指す福祉改革の一環として実施したものであります。したがって、本制度を現状で凍結する考えも再検討する考えもございません。
質問7
第三に、介護の負担軽減です。
老人福祉手当の廃止をめぐり、都議会でも、経済給付は介護の社会化に逆行するなどの意見がありました。しかし、昨年、内閣府経済社会総合研究所の研究員が、介護保険導入後、介護の社会化がなぜ進まないかという分析結果を発表し、一割の自己負担がサービスへの需要を減少させ、結果として家族に介護を強いていることを明らかにしました。そして、長時間介護を強いられている世帯に対しては、自己負担を軽減する措置が必要だと提言しています。このような現実があるからこそ、群馬、富山、山梨、兵庫、愛媛の五県を初め、千葉市、さいたま市、このほか全国の少なくとも百を超える市町村が独自の介護手当を実施しているのであります。
介護度の重い高齢者や家族の負担を少しでも軽減するため、都独自の新しい介護手当の創設に踏み出すことを提案するものであります。答弁を求めます。
答弁7
▼福祉保健局長
介護手当についてでありますが、従来家族が担っていた高齢者の介護を社会全体で支え合う仕組みとして創設された介護保険制度では、介護が必要な人には、その必要度に応じて、一定の利用者負担のもと、サービスを直接給付する仕組みとなっております。また、低所得者の利用者負担が過重とならないよう、世帯当たりの負担上限額を定めた高額介護サービス費の仕組みが設定されております。
これらのことから、新たな経済給付的手当を創設する考えはございません。
質問8
介護保険の利用料について、国は、介護保険制度以前からヘルパー派遣を利用していた低所得者の利用料を六%に軽減する特別対策をこの三月限りで廃止する方針です。都内の多くの区市町村は、この国の制度を活用して対象者を広げたり、負担を軽減しており、国が廃止すると大きな影響を受けます。都も国に追随して廃止することにしておりますが、四億六千万円の予算でできるのですから、国のいかんにかかわらず、都独自に存続すべきであります。
答弁8
▼福祉保健局長
介護保険制度における国の特別対策についてでありますが、この特別対策は、介護保険制度の導入以前から訪問介護サービスを利用していた低所得者の負担の激変緩和を目的に、平成十二年からの五年間の時限措置として実施されてきたものであり、本年度末で廃止となるものであります。よって、東京都独自に存続する考えはございません。
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■中小企業対策 |
質問1
石原都政のもとで大きく後退させられたのは福祉だけではありません。知事が施政方針演説で日本の産業を支える重要な役割を担っていると述べられた中小企業への支援の取り組みも後退させられてまいりました。
中小企業対策予算は、ピーク時には四千億円以上あったのに、来年度はその半分に落とされ、この六年間だけでも千二百億円も後退させられました。このため、都内の事業所当たりの予算は、この六年間に四位も順位を下げ、全国で下から八番目の三十七位というありさまです。石原都政の産業政策は、大企業や一部の優良企業が栄えればよいというものに等しく、中小業者には制度融資の後退、試験研究機関の廃止、商工業施策の縮小、商店街総合支援事業の見送りなど、さらなる痛みを押しつけるものとなっております。
石原都政のこのような姿勢は、全国の自治体が厳しい財政状況でも商工予算を守り、それなりに拡充しようとしているのとは大違いです。
我が党は、全国のこの分野での予算と施策を調査しました。他の自治体が中小企業対策を押しなべてよくやっているということではありませんし、よくやっているところでも問題がないわけではありません。しかし、他県と比べるだけでも、東京都の中小企業対策がいかに軽視されているか、歴然としています。
そういう意味で、地域経済が大きく落ち込んできた大阪府と比べるとどうでしょうか。大阪府は、二〇〇〇年に大阪産業再生プログラムを策定しましたが、この中で、大阪の産業の中心であるものづくりの復活を位置づけ、商工予算を倍加させるなど、力を注いでいます。大阪府の来年度の商工予算は四千五十五億円、二千百億円台の東京都のほぼ二倍に当たり、一般会計に占める割合も、大阪府の一二・八%に対し、東京都はわずか三・七%にすぎません。
知事、予算の裏づけなしに施策の拡充はありません。全国の中小企業対策費の平均は予算の六・八%ですが、東京都も予算をふやして施策を拡充してほしいという中小業者の声に耳を傾けて、せめて各県並み、今の二倍の水準に引き上げることを求めるものですが、見解を伺います。
答弁1
▼知事
中小企業対策予算についてでありますが、首都東京の再生には、東京の産業力を支える中小企業に対し、社会経済状況やその実態等を踏まえた効果的な施策を推進することが不可欠であります。
来年度予算には、厳しい財政状況の中、中小企業再生支援、ナノテクノロジーによる新技術、新産業の創出など、中小企業を経営、技術の両面から支援するさまざまな新規の施策を盛り込んでおります。加えて、新銀行や債券市場の創設など、民間資金を効果的に活用した支援の仕組みも構築してまいりました。
このように、都はこれまで独自の取り組みを講じてきており、他県と予算の構成比だけでの比較は、社会工学的に、予算という数字を理解する能力を欠いた証左ではないかと思います。
質問2
ものづくり支援でも大きな違いが生まれています。
大阪府は、ものづくり再生のためには試験研究機関の拡充が不可欠として、その拡充に当たり、この四年間に、ものづくり支援拠点としてもともとあった産業技術総合研究所や試験機関などに加え、新たに業者がげた履きで通える地域密着型のものづくり拠点としてワンストップサービスが受けられるクリエイションコア・東大阪や、産学公連携の拠点となる大阪TLO、さらには研究成果活用プラザ大阪、いずみテクノサポートセンターなどを開設して支援に当たっています。試験研究機関は現在全部で九カ所あり、業者に活用されているとのことです。
京都府では、友禅やちりめんなどの伝統織物産業の衰退を防ぐために、伝統工芸、地場産業振興を目的とした県条例の準備を進めております。
また、今、着目すべきことは、これまで仕事が海外に流出していた精密加工部品の製造が国内に戻り出したことです。これは世界的な競争に打ち勝つ上で、高品質の製品を製造できる日本の製造業の高い技術力が改めて必要となってきたことを示すものです。城南地域で話を聞いたところ、中国やインドから仕事が戻ってきた、人材育成や技術革新など支援してほしいというものでした。
東京では、十年間に約二割、一万八千の工場が閉鎖されるなど、急速な空洞化が進んでいます。にもかかわらず、こうした中小企業の要望にこたえず、東京の中小企業の頭脳的役割を果たしてきた商工指導所や、経済事務所を廃止したり、工業集積活性化事業を打ち切りにしてしまうなど、有効な対策がとられず、工場用跡地が次々とマンションに変わっています。
商工指導所の再開を初め、ものづくりのコアとなる大学と連携した研究室や産学公連携、インキュベート、常設展示室などを持った総合的な研究、支援施設を集積地域ごとに開設することを提案するものですが、どうですか。
これ以上のものづくりの衰退に歯どめをかけるために、工場用地の転用を防ぐべぎだと考えます。また、工業集積地域に着目した支援制度を再構築することを求めるものであります。それぞれ答弁を求めます。
答弁2
▼産業労働局長
まず、総合的な研究、支援施設についてでございますけれども、都は、中小企業振興公社、産業技術研究所等において、産学公連携や、インキュベート施設の提供を初め、中小企業の経営、技術に対する支援を行っております。また、城東、城南、多摩の中小企業振興センターにおいて、地域特性に応じた総合的な支援を実施しているところでございます。他の集積地域に新たな施設を開設する考えは持ってございません。
なお、今後、企業ニーズの把握等の調査を行い、さらに専門性の高い産業支援体制を構築してまいります。
次に、工業集積地域への支援についてでございますが、都はこれまで、区市を通じて地域のものづくり企業を支援する工業集積地域活性化支援事業を実施してまいりました。この事業は、対象が工業に限られ、また、ものづくり産業の広域化など産業構造の変化に十分対応していないため、今年度で終了いたします。来年度からは、多様な経営資源を生かし、広域的に連携して事業展開を図る中小企業のグループに対する支援を行い、元気なものづくりの中小企業群を創出してまいります。
▼都市整備局長
工場用地の転用防止についてでございますが、東京のものづくり産業には、世界に誇れる技術力や高度な技能を有する企業が数多く存在しており、こうした産業集積を強化し、東京の活力を高めていくことが重要であると認識いたしております。
これまでも都は、工業等制限法や特別工業地区建築条例の廃止などを通じて、工場の立地規制の緩和を既に行ってきております。
今後とも、工場の集積を図るべき地域におきましては、住宅の立地規制や工場の立地誘導を行う特別用途地区などを積極的に活用することにより、産業力の維持、強化に努めてまいります。
質問3
大型店の無秩序な進出から地域商業を守るという問題はどうでしょうか。既に都内の大型店の売り場面積が、全小売商床面積に占める割合は四五%を超え、地域によっては八割近いところも生まれ、地域商店街の衰退だけでなく、高齢者など都民の生活にも深刻な影響を及ぼす事態が生まれております。都内でもイオンやイトーヨーカ堂など超大型のショッピングセンターの進出計画などがメジロ押しとなっており、地元商店街や住民の反対運動も各地で広がっています。
この点でも、幾つかの県では、大型店の出店を規制するための条例づくりが進められています。中心市街地の空洞化が深刻化している福島県では、一昨年五月に、まちづくり懇談会を立ち上げ、大型店に地域との共生を求める、広域的なまちづくりのあり方に関する提言を発表、行政による大型店の立地の調整の必要を提案しております。県は提言を踏まえ、まちづくりの視点、生活者の視点、県の施策の効果的推進の立場から、大型店の出店について調整を行うよう、条例を年内に議会に提案する方向で準備を進めています。また、兵庫県でも、同様の条例を開会中の県議会に提案しています。
国は、立地法の見直しを進めていますが、商業調整を伴わない規制には限界があります。地域経済と地域コミュニティの破壊をもたらす無秩序な大型店の出店について、自治体の権限で規制できるよう改正することを求めるべきではありませんか。知事の答弁を求めます。
あわせて、小売商業調整法に基づく申請について、中小業者の営業を守る立場から積極的に対応することを求めておくものであります。
答弁3
▼産業労働局長
大型店の出店についてでございますが、大規模小売店舗立地法は、大型店の設置者に対し、周辺地域の生活環境の保持のため、施設の配置及び運営方法に適正な配慮を求めるものでございまして、地域的な需給状況は勘案しない旨を明文で規定しております。
一方、大型店の立地の適否は、都市計画法等のゾーニング手法で対応することとなっております。
現在、国においては、いわゆるまちづくり三法の関連施策についての評価、検討が進められているところであり、都としては、その議論を注視してまいりたいと考えております。
質問4
引き続き、業者の要望の高い制度融資の問題ではどうでしょうか。東京では、石原都政のもとで預託原資が大きく削られ、それまではすべての融資が低利の政策金利であったものが、今ではその半分が金融機関指定の高い金利に変えられてしまいました。また、景気が長期にわたって低迷するもとで、多くの業者が融資の残金を返すための借りかえ融資を必要としています。しかし、これにこたえるメニューがないのです。このため、融資実績が伸びるどころか後退し、都政史上初めて融資額が目標額を下回るという事態を迎えたのであります。
これに対して、例えば京都府は、すべての融資を一・五%の超低利のものとすることや、国のセーフティーネットと抱き合わせの借りかえ融資を新規に立ち上げることで、融資目標の二倍もの貸し出しを実現しております。このほかにも、予算をふやして融資を拡充している自治体が生まれています。
東京でも預託原資を積み増しし、すべての融資に預託を行い、低利の政策金利とするなど、業者が使いやすいものと改善することを求めるものです。見解を伺います。
答弁4
▼産業労働局長
制度融資についてでございますが、中小企業金融の円滑化のためには、金利水準だけでなく、迅速な手続や金融機関がスムーズに融資実行できる貸付条件などにも配慮する必要がございます。
こうした考えから、都は、小規模企業向けなど各種の融資で政策金利を設定する一方で、例えば借りかえ融資などは金融機関所定金利とし、円滑な資金供給を促しているところでございます。
平成十七年度に向けては、新たなチャレンジを行う企業を金利面でさらに優遇するとともに、会計情報の適正化に取り組む企業に対するクイック融資などを創設し、制度の充実を図ってまいります。
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■財政運営 |
質問1
知事は、福祉や中小企業対策の切り捨てを、財政が厳しいから、このままでは財政再建団体に転落するなどといって推し進めてまいりました。しかし、本当に東京都には都民のために使うお金がなかったのでしょうか。
この間の都政の予算の使い方を見れば、決してそんなことはありません。福祉や中小企業の予算を削ったお金を都市再生につぎ込んできたことは、この間の決算を見れば明らかです。すなわち石原知事が最初に編成した二〇〇〇年度予算では、福祉関係費の方が土木関係費よりも七百五十三億円も多かったのです。ところが、都市再生が本格化するもとで、二〇〇三年度にはこれが逆転し、土木費が福祉関係費を七百八十五億円も上回りました。ちょうど福祉関係費が減った分、土木費がふえた勘定になるわけです。
なぜこんなことになったのか。この五年間で秋葉原や北新宿、丸の内・大手町などの大規模開発、大型幹線道路、臨海関連道路などの予算には六千億円以上もつぎ込みました。国直轄事業負担金や首都高速道路への貸し付け、羽田空港再拡張など、本来、東京都が負担する必要のない公共事業だけでも、この五年間で四千億円近くもつぎ込まれたのです。こうした都市再生を中心とした投資の全体額は、補正予算も含め毎年一兆円規模に及んでいます。
さらに、臨海副都心開発に対しては、一般会計による以外の会計も総動員して、現金投入や土地の提供など二兆五千億円もつぎ込んできました。
このように、石原都政のもとで都市再生に集中的な投資が行われた結果、都債の残高は一般会計だけでも過去最高の六兆九千億円台を記録し、借金の返済に充てる公債費も今や五千億円規模にも膨れ上がって、福祉を切り縮め、都財政を大きく圧迫するものとなっています。
都税収入が伸びても、そのかなりの部分を借金返済に充てざるを得ないという現状について、知事は、その責任をどう認識しているのでしょうか。
知事は、経常収支比率が高く、財政の弾力性がなくなっているといいますが、その最大の原因が、巨額な投資と、そのツケである公債費にあることは明白です。そのことは口をつぐんだまま、あたかも福祉や教育などの都民施策に原因があるかのようにいうことは間違いです。知事の答弁をそれぞれ求めます。
答弁1
▼知事
公債費の負担についてでありますが、都債の発行に当たっては、これまで財政再建推進プランを進める中で、将来の公債費負担にも十分に考慮しながら、抑制を基調としつつ適切に活用してまいりました。この結果、私が就任して以来、起債依存度は五%から八%程度で推移しており、都道府県の中で最も低い水準を保っております。また、十七年度予算においては、都債残高は前年度に比べて減少しております。
こうしたことから、ご指摘のように、都税収入が伸びても、そのかなりの部分を過去の借金返済に充てざるを得ない状況についての責任というのは全くの見当違いでありまして、また、今日の都債残高や公債費の増加の責任は私にあるなどというのは、全くのいいがかりとしかいいようがないと思います。
経常収支比率についてでありますが、財政硬直化の主要な原因は、税収が低迷する中で、人件費や補助費などが依然として高どまりを続けることにあり、公債費が最大の原因であるという事実はありません。
したがって、ご指摘は全く当を得ておりませんし、また、私は、福祉や教育などの都民施策に硬直化の原因があるんだといった覚えは全くございません。
質問2
今定例会に提案された来年度予算では、この方向に一層の拍車がかけられております。来年度の投資的経費は、幹線道路や再開発に力が注がれた結果、八・九%増と十四年ぶりの大幅増となったのです。投資型経費は、当初予算の段階で既に一兆円に近い規模に達し、福祉や教育、中小企業予算を圧迫するものとなっていることは、見過ごすことはできません。
しかも問題は、これらの支出が今後さらに膨れ上がり、都財政をさらに圧迫するものであることです。例えば、首都高速道路中央環状品川線や羽田空港の再拡張にそれぞれ一千億円もの都民の税金を投入しようとしています。圏央道もこれから自然の宝庫である高尾山のトンネル工事が控えています。一兆五千億円といわれる外かく環状道路も、国直轄事業になれば、三分の一の負担や関連街路として数千億円の支出が求められることが予想されます。区部、多摩地域の都市計画道路などもあわせて、幹線道路建設に今後十兆円をはるかに超える財源が投入されます。臨海開発にも、今後、一兆円以上の都財政投入が予定されています。こうした大型公共事業に、今こそメスを入れることが最も求められているのではないでしょうか。
中でも問題なのは、首都高の中央環状品川線です。この道路は、本来、道路公団が自己資金で賄い、料金で回収すべきものです。現在、実施されている都による無利子貸付も、渋滞解消と銘打っていますが、実際は、料金に転嫁できないために、その肩がわりをしているものです。だからこそ、知事でさえ、かつては問題があることを認めていたではありませんか。それを今回は、民営化されると資金調達が困難、先行きが不透明といって、地方自治体が直轄事業として行うという前例のないことまでやることにしたものです。これほど理屈の通らない話はありません。この知事の決断によって、これからの公共事業は税金で、しかも地方自治体に負わせるという財界の要求がまかり通ることになってしまったのです。これでは幾ら税金があっても足りません。中央環状品川線を初め、このような都市再生のため、何でもありの無謀な財政運営は改めるべきではありませんか。知事の見解を伺います。
答弁2
▼知事
都市再生のための財政運営についてでありますが、これまで再三答弁しているにもかかわらず、いまだにご理解がいただけぬのでありますけれども、都が進める都市再生は、首都東京の国際競争力を高めて東京の活力を維持し、あわせて都民生活、都民福祉の質を向上させる上で不可欠の取り組みであります。
それがとんでもないというのは、あなた方は、やはり大都会というものを、文明的な工学の力学というものを知らないので、そういうことを全く理解しないから、だんだんやせてきたわけですな、共産党も。
中でも空港、鉄道、道路などの都市の根幹となる施設の建設は、立ちおくれた社会資本を整備し、活力ある東京を次世代に引き継ぐ重要な事業であります。
今後とも、財政構造改革を進める一方で、限りある財源を重点的、効率的に配分しながら、将来を見据えた都市再生に引き続き積極的に取り組むつもりでございまして、無謀な財政運営という指摘は全く当たりません。
質問3
臨海副都心開発の抜本的見直しも急務です。臨海開発は、計画から既に二十年以上が経過し、当初の予定では、二十一世紀当初、すなわち今日では都市の整備が終わり、未来都市が完成しているはずだったのであります。しかし、バブル型の開発計画が破綻し、あれだけ都財政をつぎ込んだのに、一兆円を超える借金と売れない土地が残されています。臨海副都心開発事業会計が借り入れ、返済しなければならない借金は、今後、残された土地のすべてが売れたとしても、完済することは困難です。数年後から始まるその借金返済で資金ショートし、それこそ知事のいう隠れ借金を膨らませていくことが現実の問題となっているのです。
抜本見直しのチャンスがあったにもかかわらず、石原知事がこれをしなかったことが今日の事態を迎えている重大な原因の一つになっています。これこそ過去の知事に責任を押しつけることのできない石原知事固有の責任であります。
知事、臨海副都心開発が都財政を大きく圧迫している事実をどう認識しているんですか。直ちに臨海副都心開発の抜本的見直しに着手すべきです。知事の見解を伺います。
答弁3
▼港湾局長
臨海副都心開発の抜本的見直しについてでございますが、臨海副都心は、国際的な人、文化、情報の交流が行われるにぎわいのある空間として、また時代をリードする特色ある空間として、職・住・学・遊の機能が複合した魅力あるまちづくりを目的に、これまで十七年にわたり開発を進めてまいりました。
その結果、都市基盤の整備は約八割が終了し、土地も約八割が有効に活用されております。また、年間四千万人を超える来訪者があるなど、都民の方々の認知度も高まり、まちとして着実に成熟してきていると認識しております。
今後とも、東京の活力を支え、新たな東京を創造する有力な拠点として積極的に開発を進めてまいります。
質問4
臨海関連の第三セクターの破綻処理も避けて通れない問題です。東京都がこれまで三百億円以上の財政支援を行ってきたにもかかわらず、昨年の決算では、臨海関連三セク五社は軒並み赤字で、その累積損失は合計で千三百億円を超えるという異常事態です。にもかかわらず、知事は、破綻処理をただ先送りし、事態を一層深刻化させているのです。このまま放置すれば、さらなる都財政投入は避けられません。
こうした事態を踏まえ、臨海三セク都民オンブズマンは、去る二月に、臨海幹線第三セクター破綻処理の提言を行い、税金投入などの支援を打ち切ること、出資金や貸付金などを全額回収することを前提に完全民営化すること、それができない場合は、法的整理を行うことを求めています。
知事、この道理ある提言を真摯に受けとめ、臨海ビル三セクについては先送りせず、直ちに破綻処理に踏み出すべきではありませんか。知事の見解を伺います。
答弁4
▼港湾局長
臨海副都心開発関連第三セクターは、臨海部のインフラ整備、管理とともに、商業、業務の多様な集積の拠点として重要な役割を果たしております。また、第三セクター各社を取り巻く経営環境は厳しいものの、都や金融機関の支援、会社の内部努力により一定の成果を上げてきております。
このような第三セクターの役割や経営状況を考えますと、引き続き経営改善の着実な実施を図っていくべきであると認識しております。
質問5
このように、福祉や教育の予算を削って、都市再生の大型公共事業につぎ込むという都財政運営は、全国の自治体の動向と比べても極めて異常なものです。我が党は、全国の予算編成方針を取り寄せて確かめてみましたが、ほとんどの道府県が投資的経費の抑制を掲げ、うち三十道府県が投資的経費のマイナスシーリングをかけているのです。そして、注目すべきことは、こうして確保した財源を、不十分ではありますが、中小企業や少子高齢化対策の財源として活用する考え方を示していることであります。実際に提案された各道府県の来年度予算案では、昨年の水害や地震被害などに対する臨時的な予算が増加しているところもありますが、全体の基調は公共事業の抑制であり、ひとり大幅に投資的経費を膨らませている東京の異常さが浮き彫りとなっているのであります。
改めて、東京都が住民の福祉の増進という地方自治体の本来の姿に立ち返ることを求めるものであります。
今、都財政を立て直し、都民の暮らしを守るためにも、そして、環境と共生し、地震に強い都市づくりを進めるためにも、都市の再生という問題を新たな視点から見直すことが求められています。既に我が党が繰り返し指摘してきたように、ヒートアイランド現象や大気汚染の激化など、今でも大問題が発生しています。それに加え、近い将来、急激な人口減少時代を迎えます。ある試算では、二〇五〇年には、日本の人口は今日の三分の二の八千五百万人に減少するということが予測されており、東京都も同じ傾向にあります。したがって、都市の再生もこれに対応した方向に転換することを求められることは当然です。
ところが、東京都が都市再生路線を打ち出した東京構想二〇〇〇は、東京の人口や経済が伸びていくピークを想定して都市づくりを進めるものとなっています。その後に訪れる人口減少社会を無視して超高層ビルや大型幹線道路を建設しても、将来、だれがそれを利用するのかという問題には口をつぐんでいます。
ある経済学者は、この問題について、人口の減少、高齢化とその結果としての日本経済の縮小は避けられないと指摘した上で、都市の収支は今後確実に、かつ大幅に悪化せざるを得ない。そして、収支の悪化は大都市ほど著しい、都市の収支の悪化は、財政収支の悪化となってあらわれ、行き着く先は都市の老朽化であり、スラム化であるとまで警告を発しているのであります。
東京に必要な都市の再生とは、いたずらに超高層ビルを建て、高速道路を張りめぐらせて、環境や暮らし、都財政への負の遺産を拡大することではありません。環境との共生、地震に負けない都市構造、さらには、人口減少という将来を見据えた視点で適正な規模の都市計画の方向に改めることが必要であります。知事の見解を求めます。
答弁5
▼知事
都市計画の方向についてでありますけれども、人口減少社会が今後到来するにせよ、国際的な都市間の競争の時代にあって今求められているのは、首都東京の活力であり、国際競争力の向上であります。道路や空港など絶対的に不足する交通インフラの整備や、優良な民間プロジェクトによる都市の機能更新などの取り組みは、そのために進めているものでありまして、こうした取り組みの推進こそが首都東京を再生させるものであり、将来の世代に対する我々の責任だと思っております。
質問6
そして、成長神話に基づく公共事業は、人口減少や環境を見据えて見直し、浪費を改めるべきです。公共事業については、むしろその軸足を老朽化した橋や学校施設などの改修、木造密集地域の改善や、木造個人住宅の耐震化、さらには、都市公園など緑の回復、生活道路の緊急整備など、今あるストックを大切にし、その維持更新に努めることではありませんか。見解を求めます。
答弁6
▼財務局長
公共事業のあり方についてでございますが、都はこれまで、厳しい財政状況の中で、鉄道、道路など都市の根幹となる社会資本整備や公園など、都民生活に密接した生活関連の基盤整備を着実に進めてまいりましたが、その整備はまだまだ不十分な状況となっております。
また、東京の既存の社会資本は、その多くが高度成長期に整備されたため老朽化が進んでおりまして、今後更新期を迎えることから、適切に維持更新することが不可欠となってきております。このため、公共事業につきましては、財政状況についても十分勘案しながら、今後、新たな投資と維持更新をバランスよく行っていく必要がございますし、そのことが東京の将来の発展、活性化につながるものと、このように考えております。
質問7
真に都市の再生というのであれば、そこに住み、働いている都民が主人公であるべきです。経済の活性化だけでなく、老いも若きもだれもが安心して健康で文化的な生活を送るにふさわしい都市をつくり上げることではないでしょうか。知事の見解を伺います。
答弁7
▼知事
都市再生についてでありますけれども、東京は日本の頭脳、心臓でありまして、東京が沈めば日本は沈むという現実を皆さんがご存じいただいているかどうかわかりませんが、今求められることは、大都市東京の魅力と活力を高め、都民生活の質の向上を図ることであり、そのため、我々は都市再生に取り組んでまいりました。
東京が豊かであるとか、ひとり勝ちといいますけれども、しかし、市民生活の豊かさの指標というのはいろいろありまして、例えば居住空間の相対的な比率であるとか、その他この他、渋滞もそうでありますけれども、東京は決して豊かな都市とはいい切れない。
そのために私たちは努力しているわけでありまして、例えば皆さんが批判している三環状道路の整備は、首都圏の慢性的渋滞を解消し、交通ネットワークの効率化をもたらすことで日本経済全体の発展につながる経済活動の活性化は、新たな富を生み出し、その貴重な富の中から、福祉や医療などの都民サービスに投入される税金が賄われる。
そもそも都市再生と福祉や中小企業対策とを対立させるとらえ方自体が間違いだと私は思いますね。都市再生の本質を理解することなく、つまり都市工学というものの本質をとらえることなく空疎な批判を、また、いたずらに数字を籠絡して繰り返すことは、やめられた方がお互いのためではないかと思います。
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■三十人学級 |
質問1
最後に、都民の切実な要望である三十人学級についてです。
今年度少人数学級を実施していない五都県のうち、佐賀県、石川県が昨年、岐阜県が二月の予算内示で来年度実施を表明したため、未実施は香川県と東京都だけとなりました。しかもつい先日、香川の教育をよくする会が少人数学級の実施を求める七万八千人の署名を集めて、三十人学級実現を要請したのに対して、今後の方向を改めて検討する姿勢を示したと伝えられております。
また、二月二十三日、中山文部科学大臣は、衆議院で、我が党の石井郁子議員の質問に、集団的な行動を学ぶにはある程度の数は必要ではないかという認識だったが、少しでも少人数、クラスの人数を減らす方向にいかないといけないと思っていると、文部大臣として初めて少人数学級の必要性を認める注目すべき答弁を行いました。
知事、いよいよ三十人学級の実施はもちろん、少人数指導との比較検証さえ拒否し続けているのは、文字どおり東京都だけになろうとしているのであります。
昨年の第四回定例会で、横山教育長は、三十人学級にした場合、十五人と十六人の小規模な学級が増加することで、学級内の人間関係が固定したり子ども同士の切磋琢磨する機会が不足するとして、生活集団としては望ましくないと答えています。
ところが今、急速に少人数学級が全国に広がる中で、どこでも、教育長の答弁とは全くあべこべに、すばらしい変化が日々新たに起きています。
我が党は、すべての道府県にアンケート調査を実施し、四十二道府県から回答を得ました。
その結果、少人数学級実施の効果を問う質問には、未実施で調査検討中の数県を除き、すべての回答の中で、学習面はもちろん生活面でも大きな前進が見られたことが書かれています。
例えば生活面での変化として、生活や学習のしつけが身につく、授業中席を離れたり教室から出なくなった、朝礼や当番など集団生活への適応が早くなった、学校が楽しいという子どもがふえたなど、大いに歓迎されており、保護者にも、すべての学年でやってほしいなどと、期待が広がっている様子が手に取るようにわかります。
全国に先駆けて三十人学級に取り組んでいる山形県では、不登校児童が二割以上減ったこと、一人の児童の欠席日数が年平均四日から三日以下に減ったことなどを明確な成果として報告されているのです。
東京でも、校長を含めた多くの教員関係者は、少人数学級の子どもは、何よりも担任教員が、集団生活でも個別指導でも子ども一人一人の個性に応じた指導が充実でき、むしろ切磋琢磨が保障されるようになると述べています。小一プロブレムなど、これまでにないさまざまな問題を抱えた子どもたちを見れば、当然の指摘ではないでしょうか。
子どもの社会性を養うとか切磋琢磨が必要などの集団生活の指導が、少人数学級の中でこそ充実できるという報告が全国から続々と寄せられているのです。全国での少人数学級の実践、経験の成果を大いに学び、分析して取り入れるべきではありませんか。お答えください。
答弁1
▼教育長
全国での少人数学級の成果を分析し、取り入れるべきとの指摘についてお答え申し上げます。
東京都教育委員会としましては、これまでも、学級編制等に関して国や他の道府県の情報収集を行いました。他の道府県での少人数学級の取り組みは承知しておりますが、少人数学級の教育効果に関しまして、平成十六年に公表されました国立教育政策研究所の調査で、現行規模学級、少人数学級及び少人数指導を比較してみまして、学力の形成においては少人数指導が有効であるという結果が明らかになったところでございます。
学校におきます学級といいますのは、学習集団としての機能と生活集団としての機能をあわせ持つものでございますが、社会性を培う生活集団としての教育効果を考えた場合、教師と児童生徒との関係、無論これも大事ではございますが、それだけではなくて、児童生徒同士が相互に触れ合い、多様な人間関係を通して成長するという面も重視すべきでございます。
また、これは、ある民間の教育者から伺った話でございますが、学級には当然、インフォーマルなグループが形成されますけれども、あるグループにいられなくなった子どもが出た場合に、先生が他のグループへ入れるような努力をしますが、それが三つですとどうしても入りにくい。これが五つのグループがありますと容易に入れることができる。こういう実証的なあれもあるそうでございます。そうした観点から考えた場合には、やはり学級には一定の規模が必要であると考えております。
ただ一方、その学習集団として、これは学力向上の問題につながりますが、学習集団としましては、教科等の特性に応じた多様な集団を編成できるよう、習熟の程度等に応じた少人数指導の充実を図っているところでございまして、今後とも、学級編制基準につきましては、義務標準法に基づきつつ、基礎学力の向上に配慮したきめ細やかな指導を行っていくため、少人数指導の充実に努めてまいります。
質問2
百二十万人を超える都議会請願に込められた都民の世論を初め、まさに都民的な要求となっているのです。そして、どの県でも最後は知事の決断で、三十人学級は実現の道が切り開かれております。
知事、ぜひ圧倒的多数の声である三十人学級実現に向けて取り組みを開始すべきではありませんか。答弁を求め、再質問を留保し、質問を終わります。
答弁2
▼知事
三十人学級についてでありますけれども、これは都民の切実な要求といわれましたが、私はそう思いませんな。これは、共産党のごくごく限られた支持者の意見であって、これまでも答弁しているとおり、学級編制基準をどう定めるかは教育行政の根幹にかかわることであり、法的にも所管する教育委員会がその専門的な立場から判断すべきものであります。
教育委員会が、児童生徒が集団生活の中で社会性を養うという観点から、生活集団としての学級について一定規模が必要であるとする点については全く同感でありまして、学級編制基準を四十人とする教育委員会の判断は、ごくごく妥当であると考えております。
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■再質問 |
質問1
臨海副都心開発の現状に対する認識と見直し、臨海三セクの破綻処理に関する質問は、知事の見解を聞いたものでありまして、知事は逃げないで素直に答えていただきたい。これが第一点ですね。
二つ目は、福祉切り下げによる都民の痛みを考えたことがあるかということを、私は聞いているんです。それに全く答えておりません。七兆円の根拠は不明といいましたが、国会で決まっているものと、今議論しているものがあるではありませんか。そういうものが通れば、これは大変なことになるんです。七兆円になるんです。それも知らないんですか。大変な大増税、負担増税が押し寄せてくるんです。そのときに、知事は、都民の痛みに思いを寄せたことがないのですかと、こういうことを聞いたわけであります。答えてください。
知事は、東京が沈めば日本が沈むということをいいましたが、思い上がりも甚だしいと私は思っています。東京が栄えても、地方が同じように栄えるわけではない。これは今日の事態を見れば、明らかなんです。今年度の税収も、大企業が大もうけした東京は大幅に税収が伸びたけれども、地方は沈んだままではありませんか。知事は、経済活動の活性化は新たな富を生み出す、こういうこともいいましたけれども、その恩恵を受けているのは一部の大企業だけであって、地方や、あるいは中小企業、都民には回っていないのが現実ではありませんか。
そのことを再質問として、三点お答えいただきたいと思います。
答弁1
▼知事
まず臨海については、これは、あのバブルのころ、とにかく日本じゅうが浮かれて、とんでもないプロジェクトを展開してきた。あのお台場の開発も騒動の一つでありまして、そしてまた、建てなくていいものを建てて、通産省などに踊らされて、さしたる目測もなしに投資した結果が今焦げついて、大きな隠れ借金になっているわけでありますけれども、しかし、見直しは見直しでしてきたんですよ。ですから、私たちがやっているお台場の再建といいましょうか、これはもう少し時間をいただきたいし、また、時代が変われば、新しい施設も出てくるかも知れませんけれども、それはそれなりに関係当局も一生懸命知恵を尽くしてやっているんで、あなた方にがたがたいわれる筋じゃない。
それから、東京が沈めば日本が沈む、まさにそうじゃないですか。東京は心臓部であり、頭脳部であると私は思いますよ。それが機能しなくなったら、私は別に手足をないがしろにしているわけではありませんけどね、しかし、やっぱり心臓、頭脳というものが麻痺してしまったら、体全体が麻痺して動かなくなる。それはまあ、いろいろな都道府県があって、全国知事会でもいろんな話題がいろんな形で出ました。しかし、五十万を切る人口しか持たない、さしたる産業もない、そういった地方自治体というのが一つの県としてあること、そのものがやっぱり私は無理だと思うし、日本全体にとっても重荷になっているんだから。だから、そういったものの整理も含めて地方分権といい出したわけでしょう。
それからもう一つ、私は、別に高齢者に対して不親切のつもりもない。しかし、やっぱり都全体を考えれば、あなた方が熱烈に支持してきたばらまきの、要するに福祉というのはもう時代おくれで、だれも相手にしない。
▼福祉保健局長
国民生活基礎調査によりますと、昭和六十一年から平成十三年までの十五年間で、所得五十万円未満で貯蓄のない高齢者世帯の割合は約三分の一に減少しており、所得も資産もなく公的な扶助を必要とする高齢者はごくわずかというふうに認識をしております。
また、平成十二年度の東京都社会福祉基礎調査、高齢者の生活実態によりますと、年収五十万未満の高齢者は九・四%、そのうち九割は子どもさんとの同居や夫婦で生活をしているという状況にございます。年収五十万円未満のひとり暮らし高齢者は、全世帯の○・五%おりますが、その四割以上は子どもが近くに暮らしており、三割以上は生活保護を受給している状況にございます。
このことからも、真に生活に困窮している高齢者はごくわずかであり、その方々に対してはセーフティーネットが十分機能しているというふうに思っております。
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