平成17年第1回定例会 代表質問

青少年対策は過保護になるな
地球温暖化に高レベルの対策を

名取 憲彦(民主党)
■平成17年度予算案
 
質問1
 私は、都議会民主党を代表して、都政の重要課題について知事並びに関係局長にお伺いします。
 まず、平成十七年度東京都予算案について伺います。
 平成十七年度東京都予算案は、一般会計で前年度比二・六%増の五兆八千五百四十億円、一般歳出で前年度比一・一%減の四兆一千七百五十九億円となっています。都税収入を八・四%、三千三百二億円増の四兆二千五百八億円と見込んでいますが、これは十六年度当初比であり、十六年度最終補正後の比較では、一・一%、四百六十四億円の増しか見込んでいません。乱高下を繰り返す都税収入の特徴と景気の先行き不透明感から、手がたく見込んだといえます。
 一方、歳出においては、重点事業に予算を配分するとともに、昨年度に引き続き九十二億円を計上した羽田空港再拡張事業、二十六億円を計上し、十七年度より着手するとした中央環状品川線など、従来ならば国と東京都の負担問題で先送りされかねない問題に東京都が率先して予算を計上して、ずうたいが大きくてなかなか動き出せない国や公団を牽引する役割も果たしています。
 不安定な都税収入、国の負担を自治体に押しつけるだけのいわゆる三位一体改革のもとで、財政構造改革を進めつつ、都民の負託に積極的にこたえるという困難な課題をこなして十七年度予算を編成された知事の評価をお伺いいたします。
 
答弁1
 ▼知事
 十七年度予算の評価についてでありますが、十七年度予算は、三位一体改革の動きなど、さまざまな課題がありました。一般歳出の伸びをマイナスに抑え、緊縮型とする中で、治安の回復や都市の再生、福祉・医療の充実など、都政が直面する緊急課題には積極的に取り組んだつもりでございます。特に、投資的経費を八・九%増と大幅に伸ばすなど、めり張りのきいた内容となっていると思います。
 また、税収の増加に助けられたとはいえ、これまでの財政再建の成果が着実に実り、七年ぶりに臨時的な財源対策を講じることなく均衡予算を編成することができました。加えて、起債依存度を低く抑えつつ、基金残高の確保や隠れ借金の圧縮などにも積極的に取り組んでおります。
 このように、今回の予算では、都政の将来を展望し、都民のために必要な施策をしっかりと講じながら、同時に、都財政の再建と体力回復を思い切って進めておりまして、都民の皆様にも必ず納得いただける予算に仕上がったと思っております。
 

 
質問2
 十六年度最終補正、十七年度予算を通じて、財政調整基金の積立額の確保と、いわゆる隠れ借金の圧縮に努められたわけですが、市街地再開発事業や臨海地域開発事業における欠損については、個々の事業展開を超えて、東京の再生、経済の活性化がこれらの負担を軽減させる決め手となるものであります。
 しかし、巷間、二〇〇七年問題といわれるように、団塊の世代の大量退職が始まり、東京都の予測では、本年、二〇〇五年をピークに、生産年齢人口が減少に転じることになります。その一方で、高齢人口は、二〇〇五年の二百二十六万人から二〇二〇年の三百二万人へと大幅に増加することになります。財務当局も、老人医療費等高齢者三事業について、今後五年で四百十三億円、十年で九百八十七億円の負担増が見込まれるとしています。社会資本ストックの更新には、新規建設以上の経費がかかることになります。
 経済の活性化に向けたプラスのための努力に、生産年齢人口減というマイナスの影響と、社会保障費や社会資本更新経費の負担増という重荷が加わり、ますます困難な都政運営を求められることになります。こうした状況を踏まえ、都財政の将来展望についてどのようにお考えか、お伺いします。
 
答弁2
 ▼財務局長
 都財政を取り巻く今後の状況について見ますと、十八年度以降、税収を左右する景気の動向が不透明なことに加えまして、法人事業税の分割基準見直しによる約六百億円の減収、国民健康保険など三位一体改革の影響による財政負担増が憂慮されるところでございます。また、九千二百億円に及ぶ隠れ借金への対応や職員の大量退職に伴う退職手当の増大など、負担増加要因がございます。
 さらに、中長期的に見ても、今後、社会保障関係需要の増大と同時に、行政サービスの財源を負担する世代が減少する、二重に厳しい時代が到来するとともに、老朽化した社会資本ストックの更新も行っていかなければならない状況が見込まれるところでございます。
 このため、今後の財政運営につきましては、財政健全化が着実に進んでいるものの、決して楽観視することはできず、どのような社会経済状況下においても安定した行政サービスが提供できる財政基盤の確立を目指して、引き続き財政構造改革に積極的に取り組んでいくことが不可欠と、このように考えております。
 
■行財政改革
 
質問1
 現在、平成十二年二月の都区制度改革の都区合意に際して確認された五項目について、都区間の協議が進められています。これらの五項目のうち、大都市事務の役割分担を踏まえた財源配分のあり方は、都区の見解に隔たりが大きく、合意するには相当な困難が予想されています。
 平成十二年十二月の都政改革ビジョン【1】において、広域的自治体と基礎的自治体の役割分担を整理し、今後の大都市行政のあり方についても検討するとした課題が、今改めて問われているのです。
 民主党は、道州制のもとでの大都市行政を展望しながら、特別区間の財政力格差の是正を図りつつ、将来的には行政の広域化に対応し、財政面からも自立するため、特別区を再編し、市として自立する自治制度改革を進めるとしていますが、この課題については、今後半年程度で結論を出すのは難しいと思われます。
 しかし、少なくとも、今回の都区間の協議が、財源配分のあり方にとどまることなく、今後の大都市行政のあり方についての検討につながるものとすることが、今回の協議をむだにしない道でもあります。
 五項目の確認事項についての協議、とりわけ大都市事務の役割分担を踏まえた財源配分のあり方についての協議に臨む東京都の基本的姿勢について伺います。
 
答弁1
 ▼総務局長
 都区制度改革におけます五項目の課題についてでございますが、現在、都区協議会のもとで、都が大都市行政としてどのような事務を行うべきかにつきまして、都区双方が考え方を出し合い、議論を進めている段階でございます。
 都といたしましては、区部が、大阪や横浜を上回る規模の大都市であり、都が一体的に行うべき事務は広範囲に及ぶと考えております。
 重要なことは、東京の活力と魅力を高めていくため、都と区が適切に役割分担し、大都市機能の維持強化を図っていくことでございまして、東京にふさわしい自治のあり方まで含めて、幅広く議論していくことだと思います。
 今後の議論におきましては、東京の将来を見据え、都区がともに協力して東京の発展に取り組むことができるよう、十七年度の合意形成に向けて精力的に協議を進めてまいります。
 

 
質問2
 次に、指定管理者制度の導入について伺います。
 平成十五年六月の地方自治法改正によって、公の施設の管理を民間事業者もできるようにする指定管理者制度が創設されました。これにより、新規施設については設置当初から、既存の管理委託施設については平成十八年九月までに指定管理者制度に移行しなければならないこととなりました。
 東京都では、既に新規二施設について指定管理者制度が採用され、本定例会には、既存の管理委託施設について指定管理者制度を導入するための条例改正案が提案されることになっています。
 この指定管理者制度の導入により、現在管理委託を行っている外郭団体等が民間と競争することとなり、競争原理を通じた財政支出の削減、民間のノウハウの活用によるサービスの向上、民間と同じ土俵で競争することによる既存の外郭団体の改革推進が期待されるわけですが、知事はこの指定管理者制度の導入についてどのようにお考えか、伺います。
 
答弁2
 ▼知事
 指定管理者制度の導入についてでありますが、公の施設の管理を民間にも開放する指定管理者制度は、規制改革の一環であるとともに、これまでほぼ独占的に管理を受託してきた監理団体について、民間との競争を通じて経営改革を求めるものでもあります。
 今後、それぞれの施設の性格や目的に応じて適切に制度を導入することによりまして、サービスの向上と経費の削減を確実に図り、施設の効率的運営を実現していくつもりでございます。
 都は、あちこちにいろいろな施設を持っていますが、中には本当に、私も知事に就任して、行ってみて、びっくりするような立派なものもございますけど、もう一つ、やっぱりそういうものの運営、経営というものに知恵が足りないような節もございますので、こういったものを利用して、都民の、実は潜在している大きなニーズにこたえていきたいと思っております。
 
■多摩・島しょ振興
 
質問1
 まず、三宅島の安全と村民の生活再建について伺います。
 二月一日に三宅村長が避難指示を解除し、村民は待ちに待った故郷三宅島に帰ることができるようになりました。四年五カ月ぶりに島で生活ができるようになったことに対し、ほっとするとともに、やっと復興の第一歩を踏み出したものと感じております。
 帰島は無事に進んでいると伺っていますが、三宅島では依然として火山ガスの放出が続いておりますし、四年を超える避難生活をしてきたことから、避難前の生活に戻ることは容易でないと考えます。
 そこで問題になってくるのが、避難指示が解除された後の三宅の安全と帰島した村民の生活再建です。
 三宅村が策定した火山ガスに対する安全条例では、規制区域の設定や二酸化硫黄の濃度に応じた注意報や警報の発令、それに応じた村民みずからの安全確保のための行動が規定されています。しかし、こうした村の対応だけでは、必ずしも十分とはいえないことも考えられます。三宅島の火山ガスから安全を確保するため、都としてもどう支援していくのか、お伺いします。
 
答弁1
 ▼総務局長
 三宅島の火山ガス対策についてでございますが、火山ガスの放出が続く中で村民が生活を送るには、みずからがガスの危険性について正しく理解し、適切に対応するとともに、行政による安全確保対策が重要だと考えております。
 安全確保対策につきましては、これまで、国、都、三宅村が共同で検討してまいりました。この検討結果を踏まえまして、村は、安全確保のための条例を制定いたしますとともに、帰島に合わせ、村民相互の協力体制の構築や、職員の巡回による要援護者に対する安全対策活動などを実施することにしております。
 今後とも、都は、専門的、技術的な協力を初め、状況に応じ必要な支援を実施してまいります。
 

 
質問2
 帰島後の村民生活については、村民の皆さんが早期に自立し安定した生活を送れることが重要ですが、発災前に島の主要な産業でありました観光業や農業などは、復興までにかなりの時間がかかります。それまでの間は、砂防ダム工事や降灰除去等の公共事業を村民の雇用の場に活用するなど、村民の方に就労の場を確保するような自立支援策が必要と考えます。
 既に帰島が始まっている中で、村民の方が現在どのような事業に雇用されているのか、また、今後どのような形で村民の雇用を進めていくのか、お伺いします。
 
答弁2
 ▼総務局長
 三宅村民の雇用についてでございますが、村民の生活再建に当たりましては、村民がみずから就労し、自立していくことが重要でございます。都といたしましては、これまでも、砂防ダム建設や道路整備などの災害復旧事業に村民を雇用するよう努めてまいりました。
 村民の本格的な帰島に当たりまして、今後の島内復興や産業振興に伴う工事などに村民が就労の場を確保できるよう、村と連携しながら積極的に取り組んでまいります。
 

 
質問3
 次に、多摩の振興について伺います。
 多摩地域は、多数の大学や試験研究機関が立地し、先端技術産業が集積するとともに、豊かな自然や豊富なゆとり空間など、さまざまなポテンシャルを有しております。これらを生かしながら、市町村はもとより、企業やNPOなど多様な主体が参加して、多摩の地域発展に取り組んでいるところです。
 こうした中で、都は、多摩リーディングプロジェクトを発表し、南北道路の整備や森林再生事業など、都が重点的に取り組む二十の多摩重点推進事業を明らかにしました。いずれも多摩の振興に資する重要な事業であると理解しますが、一方で、今回の選定から漏れた事業にも、多摩ニュータウンの活性化やIT環境整備など、多摩の都市づくりに大切な役割を有する事業もあるのではないかと考えます。
 今回の二十の事業を選定した考え方と、今回選定されなかった事業の取り組みについて伺います。
 
答弁3
 ▼総務局長
 多摩リーディングプロジェクトについてでございますが、今回策定いたしましたプロジェクトでは、多摩地域を総合的にとらえ、多摩振興を効果的に推進するために、都みずからが重点的に取り組む二十の事業を明らかにいたしました。
 この多摩重点推進事業は、広域的に大きな効果や複数の事業分野への波及効果、また、多摩固有の資源を生かし、はぐくむ効果が期待される事業を中心に選定したものでございます。
 今回選定した事業以外にも、福祉や治安対策など、暮らしに直結した事業で重要なものがございます。これらにつきましても着実に取り組んでまいります。
 
■次世代育成
 
質問1
 人口減少時代の到来に対する危機感から、少子化対策の機運がにわかに高まっています。次世代育成支援には、少子化対策、子育て支援、健全育成、教育、労働、治安など多様な施策を実施し、子どもを持ちたい人が安心して産み、健やかに育てることができる社会づくりが必要です。
 少子化は先進国の一般的な傾向であることに加え、ニューエコノミーの時代に入り、収入の伸びが鈍化し、将来の雇用や生計の見通しが立ちにくい若年者が増加していることが拍車をかけていると指摘されています。
 東京都では、子どもたちが健やかに生まれ育つことを目指し、次世代育成支援対策推進法に基づく次世代育成支援東京都行動計画の策定作業を進めていますが、特に留意すべき視点として、家庭が抱える問題を包括的、一体的にとらえるとともに、福祉、保健医療、教育、警察等が連携協力し、一体的に支援していく体制を整えていきますと掲げておられます。まさにこの点が大きな課題であり、私たち民主党も、似たような施策の重複や連携不足による非効率を解決するために、子どもに対する支援策という視点で、多くの分野に点在する施策を包括し、責任ある支援推進体制を構築すべきと考えます。
 次世代育成に取り組まれる知事の所見を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 次世代育成への取り組みについてでありますが、次代を担う子どもたちが、個性を生かし、創造力を培いながら、健全に成長できる環境を整備することは、親はもとより社会全体の責任だと思います。
 都はこれまで、国に先駆けて認証保育所の創設や小児救急医療体制の整備を初めとする福祉・医療改革や教育改革など、子どものためのさまざまな施策を推進してきたと思います。あわせて、子どもたちが将来に希望を持てるよう、環境の危機、雇用や治安の問題などを克服し、東京が都市としての活力を取り戻すための取り組みを強化しております。
 今後とも、次世代の健全な育成を支援するために、組織を超え、横断的、複合的、総合的に取り組んでいくつもりでございます。
 

 
質問2
 東京都は、福祉改革の一環として、平成十三年度から独自の認証保育所制度をスタートさせました。認証保育所は、利用者アンケートでも、開所時間や立地のよさ、保育士の対応や雰囲気のよさなどに満足度が高くなっています。
 一方、不満が多い点として、保育料の高さが挙げられています。私たちも、認可保育所の保育料保護者負担が一万九千円から三万円程度が主流であるのに対して、東京都独自の制度である認証保育所の保護者負担はおおむね五万円から六万五千円程度と、著しい格差があると認識しています。
 東京都は、認可保育所制度の改革とともに、認証保育所制度の認知を国に求めてきましたが、この実現までの間、二倍強となる格差を放置すべきではありません。私たちは、認証保育所を利用する保護者の負担を軽減する補助制度を実施すべきと考えます。
 そこで、認可保育所と認証保育所の保護者負担の著しい格差についてどのような認識をお持ちか、また、認証保育所の保護者負担軽減についてどのようにお考えか、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼福祉保健局長
 認可及び認証保育所の保護者負担についてでありますが、認可保育所の保育料は、八万円を上限とする国の徴収基準をもとに、区市町村が設定しております。認証保育所の保育料も同様に国基準の範囲内で設定する仕組みとなっていますが、区市町村が独自の判断で認可保育所の保育料を国基準より低く設定しているため、保育料に差が生じているのは事実であります。
 ただ、サービス内容を見ると、すべて十三時間開所を実施している認証保育所に比べ、認可保育所は、これに相当する二時間以上の延長保育を実施しているところは少ない状況にございます。このため、保育時間の延長を希望する場合、認可保育所の場合はいわゆる二重保育を余儀なくされることになり、保育料の総額は十万円以上になると聞いております。
 こうした点を踏まえれば、現在の認証保育所の保育料は妥当なものであると認識しております。
 

 
質問3
 こうした格差是正措置を当面の措置として行っていくと同時に、将来的には、すべての子どものいる家庭が必要に応じて使えるサービスの提供を実現していかなければなりません。
 東京都は、認証保育所における直接契約制度の導入などの、保育における新しい試みを実現してきました。しかし、重厚な認可保育所制度は依然変わらず、保育市場全体に、保護者の選択を可能とする、柔軟で多様なサービス提供への取り組みが波及しているとはいいがたい状況です。
 そこで、東京都独自の取り組みをさらに進めて、今こそバウチャー制度を導入すべきと提案したいと思います。制度のメリットとして、利用者の選択が市場に作用し、需給のミスマッチが解消されるとともに、サービスの多様化が進むことなどがあります。また、東京都は、既に平成十二年の福祉改革推進プランにおいて、平成十四年の導入を目指すとしていました。
 私は、関係者の皆さんの熱意ある取り組みで高い成果を上げている福祉改革により、バウチャー導入の機は熟していると考えます。東京都の目指す、すべての子育て家庭を対象とした保育サービスの実現へ、改革の総仕上げとしてバウチャー制度を導入すべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁3
 ▼福祉保健局長
 保育サービスにおけるバウチャー制度についてでありますが、バウチャー制度とは、施設への補助ではなく個人に対する補助であり、例えば、サービスを利用する際の引きかえ券を直接配布する方法など、利用者みずからが必要なサービスを選択し、利用できるようにする仕組みであります。
 保育サービスにおける外国での導入例を見ると、利用者の満足度を高め、事業者の競い合いを通じてサービス向上が図られることが効果として挙げられていますが、その実現のためには、現在の施設に対する補助の見直し、児童手当制度との調整、低所得者に配慮した利用方式など、いまだ多くの検討すべき課題があると認識しております。
 
■青少年の健全育成
 
質問1
 性の低年齢化や薬物乱用、そしてフリーターやニートの増加など、青少年の深刻な状況については、私たちも全く同じ認識です。環境の悪化に対抗する措置が必要なことも十分理解していますが、青少年健全育成条例の改正案には幾つかの疑問があります。
 改正案を見ていますと、無菌状態で子どもを育てよ、悪環境から隔離せよが基本の姿勢なのか、家庭に対して、青少年に対して、いささか過保護、過干渉ではないかとの印象を持ちます。あれはだめ、これはだめでは、よき社会人は育たないのです。
 今回の処方せんで病状がよくなるとしても、将来的に社会の病巣を拡大させることにはならないでしょうか。無菌状態で育った子どもが大人になったとき、本当に危険なことや取り返しのつかないことがわからずに、自分や他人を傷つける結果に結びついていくのではないでしょうか。
 青少年の健全育成に取り組む知事の所見を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 青少年健全育成に関する基本的な考え方でありますが、これは、いささか今のご質問に私は異論がございまして、条例を改正することで、東京にいる若者たちを無菌状態にして、抵抗力をなくするおそれがあるといわれますが、しかし、今、東京の、例えば盛り場一つ見て、その実態を見ますと、彼らはまさにばい菌の巣窟にいるという感を私は否めません。そういうところから若者たちを救出するというか、守るということは、私はやっぱり行政の責任だと思いますし、行政だけではなしに、彼らに次代を託す、私たち大人の責任だと思います。
 それから、淫行禁止条例ですか、東京都はそれを整備しておりませんけれども、これがないために、例えば、神奈川県や埼玉県でこんなことをするととっ捕まるが、東京に行ったらできるぞというけしからぬ大人がたくさんおりまして、現にそういう人たちが、まさに未成年を対象とした、恋愛感情を伴わない、しかも対価というものを保証したり、それはお金であったり、ある場合には甘言を弄して、おまえをモデルにするとか、女優にするとか、そういう甘言で子どもたちを誘って、まさに未成年と大人が要するに性的関係を結ぶ。これは、私はやっぱり許されるべきことではないと思いますし、こういったものの整備も必要じゃないかと思っております。
 それから、有害情報、こういったものにも抵抗力をつけろということですが、それはそうでしょう。しかし、この日本ほど、例えばお読みになったことがあるかどうか、中学生の女の子向けの数十万出している雑誌がございますが、それはファッションとか、要するにそういう若い女の子向けの情報は整備しておりますよ。しかし、その中で、とにかく、あなたにこれこれの性的な体験があるかないかという巧みなアンケートで、読む子どもたちが、私もおくれてなるかというような、そういう衝動を誘発するみたいな、そういう書物がはんらんしているというのは、これは日本だけじゃないでしょうか。
 しかも、その編集長が、この間、ある座談会に出ていましたけれども、ニーズがあるから、それにこたえるのはおれたちの義務だ。チンピラ上がりみたいな編集長がたんかを切っていましたけれども、私は、本当に見て腹が立ちましたが、やっぱり物には限度というものがあると思いまして、今、ご指摘の、こういうことを構えることで、子どもたちを過保護にして抵抗力をなくするというのは、他の先進国ではいい得ることでしょうけど、特にこの東京、しかも、他県に比べてそういう法的な整備がない、特に淫行禁止条例などはないわけですから、そういった整備というものは、風俗の紊乱がここまで来ますと、やはり都の責任で、皆様の理解を得ながら、行き過ぎは困りますけれども、整備をしないと、まさに先ほどのご質問の、次の世代の育成というものの責任を果たしたことにならないと、私は思います。
 

 
質問2
 子どもを無菌状態で育てようという姿勢が顕著にあらわれた点として、インターネットの有害情報への対応をフィルタリングサービスによって進めることが挙げられます。 フィルタリングソフトは、幼い子どもたちには有効だと思いますが、解除操作が可能な青少年には効果が少なく、こうしたソフトへの過大な期待は、むしろ危険ではないでしょうか。
 小学校や中学校、高等学校やその保護者に対して普及に血道を上げるよりは、有害情報に惑わされない健全な精神を育て、インターネット情報の功罪について理解する教育を全都的に、かつ強力に進めることこそが、不可逆的に進む情報化と社会の変化に対抗し、青少年を危険から守る処方せんであると考えます。
 東京都は、インターネットの有害情報に対する青少年の情報判断能力の育成にどのように取り組んでいこうとしているのか、見解を伺います。
 
答弁2
 ▼生活文化局長
 インターネットの有害情報への対応についてでありますが、青少年がインターネットを適正に利用するには、フィルタリング利用の拡大が必要であるため、すべての事業者に自主的な取り組みを徹底するよう働きかけを行ってまいります。
 また、来年度、保護者向けに啓発用ガイドブックを作成し、家庭における取り組みを促す予定でございます。
 さらに、NPO、事業者等の協力を得ながら、小学校と連携し、保護者や生徒等を対象に啓発セミナーを実施し、早い時期からインターネットの適正な利用ができる能力の育成を図ってまいります。
 

 
質問3
 青少年の性に関する規定は、一部のマスコミでセックス禁止条例といわれましたが、性の低年齢化、性的被害で保護された青少年も増加するなど、問題は深刻です。
 東京都は、他の道府県が軒並み淫行処罰規定を設けてきた中、導入を見送って独自の対応をとってきました。今回、東京都は他の道府県と同様に、淫行処罰規定を設けるとのご提案です。そこで、これまでの方針を転換して導入する際に、既に運用している道府県での成果をどのように認識されているのか、また、青少年自身の判断能力を育てるなど独自の対応をとってきたことで、かえって東京都の状況が深刻化したとお考えなのか、お伺いいたします。
 また、改正案では、青少年とみだらな性行為をした大人を処罰するとしていますが、青少年の交際相手の年齢や交際期間などから外形上判断することは難しいなど、規制の対象となる範囲が明確でないとの指摘もされています。この点についても、ご所見を伺います。
 
答弁3
 ▼生活文化局長
 青少年健全育成条例の淫行処罰規定についてでございますが、今回の条例改正は、青少年問題協議会の提言を踏まえまして、性的被害に遭いやすい青少年を保護するため、児童買春法及び現行条例などの規制の対象とならない、大人の青少年に対するみだらな性行為等を規制するものでございます。
 同様の規定を持つ他県では、ここ三年間の検挙件数は年間約千七百件でありまして、青少年保護のため条例が活用されております。都においては、この規定がないため摘発できない事例がございます。
 規制対象となる範囲は、青少年に対する反倫理的な性行為等でありまして、各県で発生した事件の判例が積み重ねられており、最高裁判例では、婚約中の青少年またはこれに準じる真摯な交際関係にある青少年との間の性行為等は含まれないとするなどの明確な解釈が示されております。
 また、各判決においては、交際経過に照らし、青少年を誘惑し、困惑させるなど、青少年の心身の未成熟に乗じた不当な手段を講じたかなど、個々の事情を踏まえた客観的な判断がされております。
 

 
質問4
 次に、脱法ドラッグ条例についてです。
 法律で禁止されている薬物と同じような成分で、多幸感や快感を高めるなどの作用がありながら、わずかに成分の構造が異なるために規制の対象外となる脱法ドラッグが問題となっています。
脱法ドラッグは、含まれている成分が同じでも、さまざまな製品名で販売されており、意図的にラベルを張りかえて法規制を逃れるなどの事例もあり、それぞれの製品を検査してからでないと取り締まりができず、非常に手間がかかるとも聞いております。
 さらに、脱法ドラッグは、販売形態を見ても、全国レベルでのインターネット販売など、自治体間のエリアを超えた問題となっており、当然ながら国のレベルの規制が必要です。このように、脱法ドラッグ対策には困難な課題も多いと思いますが、東京都は、条例制定により実効性のある対策をとるためどのように取り組むのか、所見を伺います。
 
答弁4
 ▼福祉保健局長
 脱法ドラッグ対策についてでありますが、この問題は、本来国が法令により対処すべきことでありますが、大都市東京では、脱法ドラッグの乱用は既に看過できない状況となっています。そのため、都は今回、都民の健康と安全を守るため、独自の条例を制定することといたしました。
 条例では、有害な薬物成分を規制の対象とし、その製造、販売などの禁止や立入調査、罰則などの規定を設け、脱法ドラッグの迅速かつ効果的な取り締まりを行うこととしております。
 また、関係機関とも連携し、青少年への正しい知識の普及啓発に努めるなど、都内における薬物乱用の根絶に向けて全力で取り組んでまいります。
 
■障害者施策
 
質問1
 国は二月十日、障害者自立支援法案を国会に上程しました。障害種別ごとに提供されている福祉サービスを共通とする仕組みの創設や、自立した生活ができるよう適切な支援をするなどの内容です。
 財政面では、決められた予算内でしか使うことのできない仕組みから、国や都道府県が責任を持つ安定した仕組みにするかわりに、サービス利用量に応じて、原則一割の負担が導入されることとなります。
 しかし、この法案に対しては、その理念や目的を評価する声がある一方、サービスの量に応じた負担を導入することに対しての不安の声が上がっています。
 障害者の実態は、基礎年金のみを収入とする方が多く、経済的自立が難しい、地域生活基盤の整備はまだ途についたばかりで、地域生活移行はこれからという時期です。こうした現実を踏まえた自立支援の具体化がなければ、負担のみを求めることになります。この法律により何を実現していくかという課題も多いと思いますが、東京都はどのように評価しているか、伺います。
 
答弁1
 ▼福祉保健局長
 障害者自立支援法案の評価についてでありますが、この法案は、身体障害、知的障害、精神障害に共通なサービス提供の仕組みの創設、就労支援の強化、公平な利用者負担の導入などにより、障害者の自立を支援するとともに、制度運営の安定化を図るものであり、障害者施策を一元化する方向性は評価できるものです。
 ただし、法案では、低所得者への配慮など、制度の詳細な内容が規定されておらず、障害者本人やその家族、地方自治体等に与える具体的な影響は明らかでございません。
 都は今後とも、国に対し、障害者の自立支援に資する制度となるよう、障害者などの意見を聞くとともに、都や区市町村とも十分意見交換を行うよう要請してまいります。
 

 
質問2
 障害者が地域生活をする上で、まずグループホームなどの生活基盤を整備することが必要です。そして、障害者が地域社会の一員として暮らしていけることが必要であり、障害のある人もない人も、ともに暮らすノーマライゼーションを推進していく上では、社会の障害への理解を進めることが必要です。しかし、グループホームや養護学校の建設に反対する請願などが議会に出されるなど、偏見や差別の問題はあります。
 また、障害者は、車いすや、つえを使っている人ばかりではありません。心臓など体の内部や免疫に障害がある内部障害や、知的発達障害、精神障害など、外見からはわかりにくい障害もあります。こうしたさまざまな障害を持った方が、尊厳を保ち、安心して地域での生活を送れるようにするためには、生活の場などの整備に加え、障害者の権利をしっかりと擁護する取り組みが求められています。本来は国として取り組むべき課題ですが、東京都としても具体的な差別を禁止する条例を定める必要があると思います。
 障害者差別禁止条例の制定など、障害者に対する偏見や差別のない社会に向けた取り組みについて、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼福祉保健局長
 障害者に対する偏見や差別のない社会に向けた取り組みについてでありますが、昨年六月に障害者基本法が改正され、障害者に対する差別のない社会の実現に向けた国民の努力義務が明確に規定されました。
 障害者への差別をなくしていくためには、何よりも障害に対する都民の理解を深めるとともに、すべての個人が尊厳を持って生きる社会を実現していくことが重要であります。
 このため、都は今後ともあらゆる機会をとらえて、障害のある方とない方との触れ合いの機会を広げていくとともに、グループホームの整備や就労支援の強化など、障害者の自立を支援する具体的施策を着実に積み重ねてまいります。
 
■温暖化対策
 
質問1
 今定例会には、環境確保条例の改正案が提案されています。温暖化対策の実施に当たっては、事業者への一律削減義務を課すという選択肢もありますが、私たちは、事業者のこれまでの取り組みや業務実態などが多様であることなどから、より実効性のある温暖化対策を求めてきました。
 条例案では、事業者が東京都の対策指針に基づいて削減目標を定めることを義務づけており、この指針の内容は極めて重要なものとなります。
 私たちは、昨年六月の代表質問などにおいても、対策指針の内容を、一九九〇年比で六%削減という目標は最低限の原則とし、事業者がより高いレベルでの削減目標を設定できるように求めてきました。
 今回の条例案では、私たちの主張に基づき、それぞれの事業者がより高いレベルでのCO2削減に取り組むものと考えていいのか、見解を伺います。
 
答弁1
 ▼環境局長
 事業者のより高いレベルでのCO2削減の取り組みの確保についてでございますが、今回提案した制度は、事業者の個々の状況を踏まえた、都の指導助言と評価公表によって、より高い削減目標の設定と着実な対策の実施を誘導するものでございます。
 計画策定に当たりましては、削減対策方針に基づき、取り組むべき対策メニューを示しまして、事業者の積極的な取り組みを促してまいります。
 さらに、計画の中間年及び終了時には、CO2削減の取り組みを評価公表することに加えまして、特にすぐれた事業者を表彰するなどにより、より高いレベルでの削減が可能になるものと考えております。
 

 
質問2
 条例案では、昨年五月の環境審議会の答申になかった、エネルギー環境計画書制度の創設が盛り込まれています。この制度は、東京都が作成した指針に基づいて、都内にエネルギーを供給している事業者が、エネルギーをつくるときに出すCO2の量の削減目標や、再生可能エネルギーの導入目標などを計画し、報告するものです。
 電気事業者に対する太陽光や風力といった新エネルギーの導入については、RPS法でもその目標が定められています。しかし、二〇一〇年度で一・三五%というこの目標について、東京都が大幅引き上げを国に対して提案している一方で、この目標ですら大変厳しいという話もあります。
 このような中、東京都は、エネルギー環境計画書制度によってどのように再生可能エネルギーの普及拡大を図っていくのか、見解をお伺いします。
 
答弁2
 ▼環境局長
 エネルギー環境計画書制度についてでございますが、温暖化を防止するためには、省エネに加えまして、CO2を排出しない再生可能エネルギーの普及拡大が重要でございます。
 都では、エネルギーの環境性の向上を図るため、条例改正により、新たにエネルギー環境計画書制度を創設し、電力の供給事業者に対しまして、毎年、再生可能エネルギーの導入計画の作成と実績の報告を求め、その内容を公表することといたしました。
 この制度によって、電力の需要側が環境性のすぐれた電力を選択することが容易になり、再生可能エネルギーの普及拡大につながっていくものと考えております。
 

 
質問3
 条例案では、建築物環境計画書制度の強化として、マンションの環境性能表示を打ち出しています。しかし、対象となる建築物は延べ床面積が一万平米以上であり、マンションでいうと、おおむね百戸以上の大きな集合住宅に限られています。
 昨年五月の環境審議会答申では、対象規模については中長期的な視点から検討していくべきであるとしており、条例案の他の制度では、新たに対象規模未満の事業者による提出も可能としています。また、今通常国会に提出されている省エネ法の改正では、マンションなどの建築物に対する省エネ措置の報告義務化が盛り込まれ、その対象は、延べ床面積二千平米以上となっています。
 私は、民生部門での温暖化対策を推進するためにも、対象建築物の拡大を図り、マンション環境性能表示を進めていくべきと考えますが、見解を伺います。
 
答弁3
 ▼環境局長
 マンション環境性能表示についてでございますが、本制度は、延べ床面積一万平方メートルを超える大規模なマンションの販売広告に、環境性能に関する表示を新たに義務づけるものであり、購入者に環境性能に関する情報を提供することによりまして、新築マンションにおける環境配慮の取り組みを促すものでございます。
 本制度の対象規模に係るご提案につきましては、昨年五月の東京都環境審議会答申におきまして、中長期的な視点で検討すべきものと提言されておりまして、今後、この提言の趣旨を踏まえて検討してまいります。
 

 
質問4
 東京都は、環境確保条例の改正とあわせて、先駆的に温暖化対策に取り組む企業などとの連携プロジェクトを発表しました。その中で、私は、キッズISO一万人参加計画に注目しています。
 キッズISOは子ども向けの環境教育プログラムで、子どもたちが省エネやリサイクルなどに主体的に取り組む活動に対して国際的な認定証を交付し、子どもたちの環境への意識をはぐくむもので、今年度、既に都内の公立十一校で小学校五年生約七百人が参加していますが、東京都は来年度、これを百五十校、一万人の参加にまで拡大するとしています。
 私は、環境教育の推進に当たっては、区市町村を初めNPO、企業などとの連携も図りながら、教育現場への普及拡大に取り組んでいくとともに、このプログラムを、公立だけでなく、私立学校も含めて拡大していくべきと考えます。
 そこで、キッズISOが、地球温暖化対策を推進する上で、また、区市町村や企業との連携を進める上でどのように有効なものなのか、見解を伺います。
 
答弁4
 ▼環境局長
 環境教育プログラム・キッズISOについてでございますが、このプログラムは、子どもたちが学校の授業の中で温暖化問題などを学びまして、家庭において家族と協力して、身近な省エネ等に取り組むものでございます。
 これまでの実施結果によりますと、子どもたちの省エネ等への意識が高まるため、プログラム終了後三カ月たっても約七割の家庭で取り組みが継続されるなど、家庭部門での温暖化対策として有効なものと考えております。
 また、区市町村が参加校の募集を行い、協賛する企業が資金や人材を提供するなど、区市町村、企業などとの連携を進める上でも効果的なプログラムでございます。
 都は、今後、より多くの自治体、企業などに連携を呼びかけまして、一万人参加計画の実現に取り組んでまいります。
 
■運輸、物流政策
 
質問1
 運輸、物流の効率化は、地球温暖化に寄与するだけでなく、日本の国際競争力を向上させる上で欠かせない課題です。昨年四月にIMDが発表した二〇〇四年世界競争力年鑑によれば、日本の国際競争力は二十三位、一九九三年まで一位をキープし続けてきましたが、今では、シンガポール、香港、台湾、マレーシアなどの後塵を拝しています。
 こうした危機感もあって、石原知事は、非効率的な物流分野での構造改革を断行するために、総合物流ビジョンを十七年度中に策定するとしています。
 私は、物流改革に当たっては、陸海空の個々の改革やハード面だけでなく、ソフト面も含めた総合的な取り組みを求めるものですが、現在策定中の総合物流ビジョンの基本的な考え方について、見解を伺います。
 
答弁1
 ▼都市整備局長
 総合物流ビジョンの基本的な考え方についてでございますが、近年、国際競争が激化する中で、CO2削減による環境への対応が求められるなど、物流を取り巻く状況は急激に変化しており、コスト削減やサービスの向上など、物流の効率化が喫緊の課題となっております。しかしながら、これまでの陸海空における個別の物流対策では限界があり、加えて、品目ごとの物の流れの把握が不十分であることから、総合的な対策が求められております。
 総合物流ビジョンの策定に当たりましては、物の流れを一体的、総合的に把握した上で、渋滞解消や輸送ルートの改善によるコストの削減、物流施設の高度化によるサービスの向上など、ハード、ソフト両面からの総合的な対策を構築いたしまして、国際競争力の強化や環境、暮らしの向上を図ってまいります。
 

 
質問2
 次に、港湾物流について伺います。
 東京港は首都圏における外貿貨物の六割を扱っており、外貿コンテナ貨物の取扱量が七年連続日本一という港です。しかし、この東京港にも、急伸著しいアジア巨大港湾の脅威が迫っているのです。
 例えば、昨年、日本国内で韓国政府が誘致セミナーを開催し、ある日本の商社が釜山港への進出を決めました。こうした事態が続けば、首都圏の物流センターは東京港ではなく、他国の港に取ってかわられることにもなりかねません。
 これまで東京港は横浜港をライバル視し、必ずしも十分に連携してきませんでした。しかし、国際物流が大きく変革する中で、今や、東京港だ、横浜港だといっている時代は過ぎ去り、日本の二大港湾である両港が力を合わせていくことが不可欠となっています。
 先ごろ、東京港は、横浜港と一体となって、国のスーパー中枢港湾の指定を受けましたが、私は、港湾の管理運営を一体的に行う京浜ポートオーソリティーともいうべき新たな運営主体を自治体主導で創設するなど、国際競争力の強化を検討していくべきと考えます。そのために、新たな港湾運営のあり方を目指し、東京港、横浜港の連携を積極的に進めるべきと考えますが、見解を伺います。
 
答弁2
 ▼港湾局長
 新たな港湾運営に向けた横浜港との連携でございます。
 国際物流が大きく変化する中で、我が国港湾運営のあり方も転換期を迎えておりまして、ご指摘のように、港湾間の自主的な連携を進めて競争力を強化し、世界の主要港に伍していくことが今日重要な課題になっております。
 このため、昨年、横浜港、川崎港とともに立ち上げました京浜三港広域連携協議会を推進母体として、コンテナ輸送効率化や施設使用手続の共通化など、京浜三港における連携施策の積極的な展開を図っているところでございます。今後、情報化やアクセス向上などの共通課題の解決に向け、京浜三港の連携を一層充実強化し、国際競争力の向上に取り組んでまいります。
 

 
質問3
 また、港湾物流改革に関しては、既に、港湾労使の英断により、元日を除く三百六十四日二十四時間フルオープン化が実現していますが、例えば昨年、青海と品川の公共コンテナふ頭でスタートした全国初の毎日曜日ゲートオープンについては、内陸部の受け入れ側の体制が整っていないこともあって、必ずしも十分な取扱実績が上がっていないとも聞いています。
 港湾物流改革の実績を上げるためには、港湾エリアだけの対応では限界があり、港湾貨物の発生地であり、目的地である内陸部との連携を深めていくことが必要であるのではないでしょうか。
 私は、港湾エリアと内陸部の荷主などの連携を深め、特に、荷主等への周知や体制変革を促すことで、港湾物流のさらなる効率化に取り組んでいくべきと考えますが、見解を伺います。
 
答弁3
 ▼港湾局長
 荷主等との連携による港湾物流の効率化についてでございます。
 東京港で取り組んでおります港湾物流改革の実効性を高めていくためには、港湾関係事業者のみならず、内陸部の荷主等との連携推進が強く求められております。
 このため、東京港の利用促進を荷主の方々等に働きかける東京港のつどいの定期開催に加え、現在、主要荷主等に対し、東京港改革の取り組みの周知を兼ねて、広く港湾物流に関する意向調査を実施しているところでございます。
 今後、この調査結果等を踏まえ、関係局ともタイアップいたしまして、首都圏の荷主企業のトップ層も対象としたポートパートナーシップ作戦を展開しまして、日曜利用促進の働きかけなどを行うなど荷主との連携強化に取り組んでまいります。
 

 
質問4
 次に、羽田空港の再拡張、国際化について伺います。
 かねてより、台頭著しいアジア諸国の国際競争力に伍していくため、一日も早い羽田空港の再拡張、国際化が強く求められてきましたが、国では、財源問題から、これまでなかなか事業化ができませんでした。これに対して東京都が、この事業に一千億円を無利子で貸し付け、協力するとしたことにより、平成十六年度から事業がスタートしております。私たちも、羽田空港の再拡張、国際化は推進の立場であり、都の判断を高く評価するものであります。
 再拡張事業の大きな柱である新滑走路の整備については、平成二十一年末の供用開始に向け、既に昨年七月、国において入札手続が開始され、この三月下旬には契約が締結されることになっているなど、事業が具体的に進展しつつあると聞いております。
 今後も、引き続きこの国家的大プロジェクトを着実に推進させることは極めて重要と考えますが、知事のご所見をお伺いします。
 
答弁4
 ▼知事
 羽田空港再拡張事業の着実な推進についてでありますが、時間的、空間的に世界が狭くなりまして、人間とか情報の往来というものが飛行機で簡単にできるような時代になった。しかも、日本は依然として世界第二の経済大国でありまして、隣の中国は何か成り上がって、偉そうなことをいってますけれども、世界全体のGDPの中で占めている量というのは、日本の四分の一でしかない。しかも、あの国は、非常に周りの国にいろいろな形で迷惑をかけてますけれども、その問題は別にして、いずれにしろ、経済的に拡張、発展するのは結構なことでしょう。ただ、公害の問題などで、私たちは非常に被害をこれからもこうむりますし、既にこうむってますが、いずれにしろ、とにかく世界が狭くなったときに、日本のような経済大国に簡単に人が来れない。ビジネスを構えても来にくい。特に、私は九・一一のときに、たまたま向こうにおりまして、ハドソン研究所の招待で行ったんですが、私の親友のトム・ドナヒューという、向こうの、日本でいうと商工会議所の会頭がディナーをしてくれまして、何十人かの、あの東部の代表的な経営者と歓談しましたが、彼らが一番横田の問題について理解があった。
 それは、つまり、ビッグビジネスを構えて、急な用事ができて、日本に飛んでいこうと思うと、とにかく重役を連れて、飛行機の中で会議をしながら行こうと思っても、二カ月前に通告しないと、日本にはプライベートジェットを飛ばせない、会社のジェットを。こんな不便なことはない、ぜひ横田をあけろ、おれたちは大賛成だということでしたが、反面、今度は逆に、アメリカの航空機はファーストクラスには盗聴施設がありまして、外国のビッグビジネスマンが乗って、そこで数人のグループが飛行機の中で密談、戦略を、ビジネスの交渉の戦略の討議をすると、全部それは盗聴されているという、これは多分、あり得ることでしょう。エシュロンなどという装置が三沢にもあって、アングロサクソン以外の情報というのは全部、とにかくアメリカは盗聴して、しかも、ネゴシエーションが進んで、土壇場でアメリカがちょっといい条件で割り込んできて、ビジネスをとられるという、そういう時代ですから、私はやっぱり、話が右往左往するようですけれども、とにかくたくさん飛行機が頻繁に日本へ来ること、そのキャパシティーを構えることが必要だと思います。私が、政調会長時代の亀井君にいって、かなり基本的な線を乱暴に決めましたが、それから、決まった後、時間がかかり過ぎて、やっと事が運ぶようになりました。
 いずれにしろ、ご指摘のように、さまざまな英知を結集して、この大きなプロジェクトを責任を持って推し進めるよう、国に強く求めていくとともに、都としても引き続き関係自治体と協力して取り組んでまいりたいと思っております。
 

 
質問5
 再拡張、国際化が図られた羽田空港は、国内航空ネットワークの拠点としてますますその重要性が高まるとともに、アジア圏を視野に入れた国際空港として生まれ変わることになります。この事業に伴い、羽田空港に隣接する多摩川沿いに、約五十三ヘクタールの跡地が生まれます。この跡地の活用方策は、PFI方式で整備が予定されている新設ターミナル等の内容によって大きく変わると思いますが、これをどのように活用していくかは、将来の羽田空港のありようにも大きくかかわるものといえます。
 跡地利用に関する都としての取り組み姿勢について、知事の所見を伺います。
 
答弁5
 ▼知事
 羽田空港の跡地利用に関する都の取り組みについてでありますが、跡地は、国際線ターミナルなど、国際化の拠点施設に隣接する重要な空間でありまして、空港機能をサポートするとともに、空港の持つ可能性を活用した利用計画を立てることが重要だと思います。
 このため、都としては、現在、国が検討中の国際線地区のありようも見きわめながら、地元自治体とも調整し、跡地利用に主体的に取り組むつもりでございますが、これはやはり、今、次のプロジェクトとして、川崎の工業地帯が非常に過疎になってきて、膨大な空き地ができている。これをどう活用するかというのは、川崎なり神奈川県の大きな問題で、横浜市長の中田君なども、羽田を軸にして、ほとんど東京のダウンタウンと等距離にある横浜市に外国人の客を誘致するために、このプロジェクトに賛成して、無利子貸付を、東京ほどの額じゃございませんけども、横浜も提供しておりますが、そういう点で、決して東京だけの問題じゃなしに、首都圏というものを構成する川崎市なり、横浜市なり、あるいは神奈川県と諮りながら、充実した跡地の利用というものを、いろいろお知恵もかりながら、考えていきたいと思っております。
 

 
質問6
 昨年十一月、首都高速道路中央環状品川線が都市計画決定されました。これを受け、平成十七年度予算案には整備費用が計上され、平成二十五年度を目標とした中央環状線の全線開通に向け前進したことは、私たちも評価するものであります。品川線の整備により、都心の交通渋滞の大幅な緩和など、高速道路網のみならず、一般街路への波及効果が期待されます。
 しかし、品川線の整備は現段階で総事業費が約四千億円とも試算され、都も負担する巨大プロジェクトであり、本事業への都民の理解と協力を得るためには、整備効果の事前検証はもとより、開通後もきちんと検証し、都民に対し説明していく必要があると考えますが、所見を伺います。
 また、本事業は、その大きさゆえに、ややもすれば、事業費の大幅な増加など、都民にとってはさらなる負担となることも考えられますが、過去の大規模プロジェクトの例を引くまでもなく、事業費が当初の試算から膨れ上がることがあってはなりません。事業の抑制に努めるべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁6
 ▼都市整備局長
 中央環状品川線の整備効果の検証と都民への説明についてでございますが、品川線の完成により、首都高速道路のネットワークが形成され、走行時間の短縮や走行経費の節減など、直接的な経済便益だけでなく、環境への負荷を低減する効果も期待されております。
 開通後にこれらの整備効果を把握し、検証することは重要と考えており、これまでも王子線などで実施してきております。具体的には、開通後の旅行速度や利用台数などから整備効果を検証し、この内容を広く都民に周知することで、道路整備に対する理解と協力を求めてまいります。
 
 ▼建設局長
 社会資本整備を進める上で、最小の費用で最大の効果を発現させるため建設コストの縮減を図るなど、事業費の抑制は重要な課題でございます。そのため、品川線の事業では、品質や安全の確保を図りながら、計画段階、契約段階、工事実施段階において、事業費の抑制に向け、街路事業と有料道路事業の総合的な管理を実施してまいります。
 今後、都と首都公団がこれまで培ってきた技術や経験を最大限に活用し、地元の理解と協力を得ながら、効率的な事業の推進に努めてまいります。
 

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