(平成16年第一回東京都議会定例会会議録から) ○議長(内田茂君) 次に、東京都議会海外調査団について申し上げます。 本議会において、去る二月三日から十二日まで、ロンドン、ストックホルム、ベルリン及びフランクフルトへ海外調査団を派遣いたしました。 海外調査団を代表いたしまして、報告のため発言の申し出がありますので、これを許します。 百二十三番青木英二君。 〔百二十三番青木英二君登壇〕 ○百二十三番(青木英二君) 都議会民主党の富田俊正、酒井大史、そして私、青木英二の三名は、東京都議会海外調査団として、去る二月三日から十二日まで、ロンドン、ストックホルム、ベルリン、フランクフルトの四都市において調査を実施してまいりました。これは、第十六期都議会における議会運営委員会理事会での決定事項に基づいて行った調査であり、その成果を議会における政策展開に積極的に生かし、東京都及び都議会の活性化、住んでいてよかったと思える東京づくりに努力していきたいと思っております。 最初の調査地ロンドンでは、さきの定例会で酒井大史議員が一般質問で取り上げた犯罪被害者支援を調査いたしてまいりました。被害者にとってかなり充実した支援活動が展開されており、特に裁判所における証人支援については、国に対する法整備の要求とあわせて、現状で行い得る施策の早急な取り組みの必要性を感じたところです。 犯罪被害者支援組織の本部で、東京都として何をすべきか尋ねたところ、犯罪被害者支援担当職員の位置づけの明確化、一般的な犯罪の態様調査、被害者支援意識の高揚、警察等関係機関との調整が必要とのことでした。 また、犯罪被害者情報の連絡が常時警察からなされること、ボランティアスタッフの圧倒的な多さ、また、政治のリーダーシップにより被害者支援が進められ、関係機関相互の連携がとられていることなど、日本との明らかな違いを見ました。 東京都においても、予算措置を講じるとともに、地域での被害者支援活動を、被害者支援都民センターなどと連携しつつ、さらに推し進めていくべきです。 次に、福祉の先進都市ストックホルムでは、まず、社会的援助を必要とする方々に派遣されるアシスタントの位置づけについて、手話通訳に着目して調査をいたしました。 重要な点は、手話通訳者の社会的な位置づけを明確化するとともに、しかるべき収入を保証する必要があるということでした。そのために、スウェーデンのように、公務員として採用する、NPOなど手話通訳派遣団体を補助する、あるいは介護保険同様のシステムを構築するか、介護保険の中に位置づけ、必要なサービスの量などを明確にした制度の中に組み込むことです。これらは、結果として手話の普及、ひいては手話を話せる教員の増加につながると考えます。 これを東京都が独自に推進するには、重い課題です。障害を持つ方々がそれを意識しないで生活できることが当たり前であるとする考えを広く浸透させる取り組みの重要性を改めて実感しました。その上で、手話の必要性を政府が認識し、改めてその位置づけを考えることが必要です。 続いて、富田俊正議員が積極的に取り組んでいるバリアフリーのあり方についても調査をいたしました。 二〇一〇年までの完全バリアフリー化政策は、実現に向けて着実に進んでいると感じました。特に交差点のつくりなど、人と車との関係では、人優先が徹底されていることに意味があります。調査の結果、東京が進めるバリアフリー政策には、誤りはないように思いました。施策が財政負担を理由として遅々として進まないことは大きな問題ですが、このことについては、一昨年、富田議員が提案した広告収入を活用する方法で解決できるのではないでしょうか。 次のベルリンでは、都市の観光のあり方について調査をいたしました。 この課題については、市の観光行政を一手に担うベルリン・ツーリズム・マーケティング社のネルガー社長の言葉に集約されます。それは、東京のイメージをビジネスから脱却させること、さらには、売りたいものと求めるものを一致させる努力が必要であるということです。同社は、当初、宿泊税での運営を予定いたしましたが、税の導入見送りにより、大変苦労したとのことです。東京には既に宿泊税があるわけですから、この収入を活用して、このような会社の運営費に充てるといった英断が必要ではないでしょうか。 また、東京の売り込みについては、国内他都市やアジア諸都市との連携も視野に入れ、観光インフラの整備については、車線ごとに切符を買いかえなければならないような状況を変え、公共交通機関の利便性向上に力を入れるべきです。 ドイツの空港中心地フランクフルトでは、首都の空港のあり方を調査いたしました。 米軍基地であったハーン空港は、低価格を売り物に急成長しており、また、フランクフルト空港は、米軍との共同利用に終わりを告げ、ヨーロッパのハブ空港としての位置づけを確保しようと躍起になっています。これら公の手を離れ自由な発想で営業戦略を展開する姿勢に頼もしさを感じました。 我が国においても、既存の米軍基地の活用が今後の展開上重要であり、また、羽田空港の再拡張など、首都に隣接した空港機能の充実が国際社会を勝ち抜くために不可欠であると、改めて感じたところであります。 最後に、現在、地方議会の海外視察がいろいろと注目されております。今回の海外視察では、移動日や予約を取りにくい休日にも精力的に調査を行い、かなりの強行軍となりました。公費ゆえに当然との考えもあると思いますが、都市の現況などを実際に見聞し、把握することさえなく、ただ訪問先での調査に終始する方法はいかがなものか、海外調査のあり方について考えさせられたものがありました。このことも一言申し添え、以上で私の調査報告とさせていただきます。 ご清聴ありがとうございました。(拍手) ○議長(内田茂君) 以上をもって東京都議会海外調査団の報告は終わりました。 (見出し等は編集部) |
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