減災・復興一体の震災対策を 業者の要望に応える制度融資に |
松村 友昭(日本共産党) |
■震災対策 |
初めに、新潟県中越大震災の被災者の方々に心からお見舞い申し上げます。
日本共産党は、被災直後から現地に救援センターを開設し、被災者の声や要望を伺い、国、自治体に届け、でき得る限りの支援を求めてきました。また、全国各地で被災者支援を呼びかけ、ボランティアの派遣や寄せられた救援募金や物資を現地にお届けしてきました。引き続き、被災者の支援に全力を尽くす決意です。
質問1
今回の中越大震災は、改めて直下型地震の破壊力の大きさを示すものとなりました。一方、首都東京もいつ地震が来てもおかしくないといわれており、先日、国の中央防災会議が発表した都心東部及び西部直下を震源とする地震の想定によれば、区部中心部の震度は、これまで東京都が予想してきた想定震度をはるかに上回るものとなっています。予想される地震による被害は、東京都が立てた従来の被害想定では到底間尺に合わないことを示しているのです。
専門家は、被害の規模は、直接的被害にとどまらず、多大な間接被害を引き起こすなど、東海地震とは比べ物にならないといい、東京直下型地震は文字どおり政治経済の中枢を襲うスーパー都市災害になりかねないこと、被害も直接被害五十兆円、間接被害五十兆円、合わせて百兆円という、国家予算をはるかに上回るものとなることを指摘しています。
知事、これまでの想定を覆すような大地震の危険が迫っていると考えるのが妥当であると考えますが、このことについてどう認識しているのか、また、どう備えていくのか、見解を伺います。
答弁1
▼知事
大地震への備えについてでありますが、東京ではかねがね、大地震は必ずやってくるものと覚悟して、平時から対策を講じることを行ってきました。
ただ、この地震がどういう強さで、またいつ、どこを震源地としてやってくるかということは、これは予測もさらに難しいところでございまして、それによって被害なりまた混乱の状況は違ってくると思います。
いずれにしろ、このため、東京都では災害に強い都市構造とするため、都市の再生を推進しておりますが、一方、みずからの命はみずからが守るという自助、自分たちのまちは自分たちで守るという共助があって、初めて公助が生きてくるという原理に基づき、訓練や啓発を通じ、災害に強い地域社会づくりを促進しております。
今後とも、首都東京の一層の安全性を目指し、災害の備えに万全を期すつもりでございます。
質問2
また、東京都が策定する被害想定は、これらの新たな知見や提言を踏まえたものとすることが必要であると考えますが、見解を伺います。
答弁2
▼総務局長
被害想定についてでございますが、都は昭和五十三年、六十年、平成三年に、海溝型地震の被害想定を公表しております。平成九年には、中央防災会議の南関東における直下地震の切迫性の指摘及び阪神・淡路大震災の教訓を踏まえまして、直下型地震の被害想定を作成いたしました。
今後、今年度中に発表が予定されております国の首都直下地震対策専門調査会の被害想定も踏まえ、見直しについて検討してまいります。
質問3
中越大震災から学ぶべき教訓の一つは、地域住民による日常的な災害予防と復興対策の取り組みの重要性です。この問題では、十年前に発生した阪神・淡路大震災で、神戸市真野地区の住民が日常的に地域ぐるみで防災に取り組むことで被害を最小限に食いとめ、その後の復興も比較的順調に進んだことは注目に値します。
また、私の住む練馬区でも、住民主導の震災対策の取り組みが始められています。取り組みを始めたのは貫井地区という約八千九百世帯が住む木造密集地域の一つです。ここでは、昨年七月から四カ月間かけて、復興模擬訓練が地域の町会、自治会、学校関係者、区、そして都の防災機関や都立大学も参加して行われました。訓練の目的は、参加者がグループに分かれて、自分たちのまちを、自分たちの目で見て、自分で点検することで課題を把握でき、さらにそれを持ち寄ることによって、自分たちの手でまちづくり計画を検討する仕組みをつくることです。
訓練後、参加者からは、地震による被害の危険性について認識できた、まちの復興、個々の生活再建のイメージを共有できた、被災後も地区にとどまることの重要性を確認したという感想が寄せられています。
そこで、何より日常的に地震の被害から人命と財産を守るための減災と震災後の復興を一体に組み込んだ取り組みを住民、地域ぐるみで進めることが必要と考えますが、知事の見解を伺います。
答弁3
▼総務局長
減災対策と震災復興の地域での取り組みについてでございますが、都は、震災復興マニュアルを策定いたしますとともに、町会、自治会等が行います事前の復興準備活動を支援することによりまして、地域の復興を担っていく復興市民組織を育成しております。この市民組織は、災害に強いまちづくりを進めることも視野に入れておりまして、今後とも区市町村と連携し、その育成に努めてまいります。
質問4
都は、東京都震災復興マニュアルを策定し、その充実と施策の具体化を進めていますが、中でも住民主体による住区単位の復興計画の策定、策定された計画に基づく応急住宅の確保や用地の借り上げのための助成などの都の支援の仕組みづくり、さらには住宅再建支援の創設などが急がれていますが、どうか。
答弁4
▼総務局長
震災復興マニュアルの充実等についてでございますが、マニュアルでは、地域住民が主体となり、行政やNPOなどの支援を得て、地域復興計画を作成するためのプロセスと具体的な施策を提示しております。
住宅復興につきましては、オープンスペースや民有地の確保による応急仮設住宅の建設、マンションの再建に対するアドバイザーの派遣などの支援策を講ずることにしております。
また、国に対しましては、住宅再建支援に係る共済制度の創設について、平成十三年度から提案、要求しております。今後とも、マニュアルの充実を図ってまいります。
質問5
また、おくれている木造住宅密集地域は、住民参加での修復計画を踏まえ、公共住宅や公開空地の確保など、思い切った予算を投入し、集中的に進めることなしに、大きく改善に踏み出すことは困難です。国にも強く働きかけ、都市の再生の課題の中心課題として位置づけるよう求めるものですが、どうか。
答弁5
▼都市整備局長
木造住宅密集地域への取り組みについてでございますが、都は木密地域の整備を防災都市づくり推進計画に位置づけ、積極的に取り組んできており、平成十七年度の重点事業にも選定してきたところでございます。また、国においても既に都市再生プロジェクトに位置づけられております。
今後とも、地元区と連携し、新たな防火規制の導入や道路、公園などの基盤整備とあわせた周辺整備を推進し、木密地域の防災性の向上に努めてまいります。
質問6
中越大震災でも、学校の体育館など学校施設が避難所として利用されました。都によれば、災害時には避難生活はこれらの学校施設などの避難所が充てられるとのことです。だとしたら、災害時の避難所となる公立小中高の学校施設の耐震補強は何より優先されてしかるべき施設ではありませんか。都として緊急整備に補助を行うよう強く求めるものです。
答弁6
▼教育長
学校施設の耐震対策についてのお尋ねでございますが、都立学校につきましては、耐震診断調査の結果、補強が必要な学校につきまして、平成十五年度に耐震補強計画を策定し、改築や大規模改修とあわせて実施する学校を除きまして、盲・ろう・養護学校については平成十六年度までに、高等学校については平成十八年度までに完了するよう、着実に実施をしているところでございます。
また、公立の小中学校におきましては、設置者でございます区市町村が国の助成制度を活用して対応しているところでございまして、都として独自の補助を行うことは困難でございますが、学校の耐震対策が一層促進されるよう、引き続き国に対して助成制度の拡充を働きかけてまいります。
質問7
木造住宅の耐震補強や防火対策への助成制度の創設も急がれますが、どうか。それぞれ答弁を求めます。
答弁7
▼都市整備局長
木造住宅の耐震補強や防火対策への助成についてでございますが、震災対策の基本は自助、共助、公助の原則により進めるべきものと考えております。
都といたしましては、災害に強い都市を目指し、これまでも木密地域の整備、改善等に取り組むとともに、住宅の耐震改修についても、耐震診断講習会の開催や簡易な自己診断方法の周知を行うなど、その普及啓発に取り組んでまいりました。
また、防火対策については、防災都市づくり促進事業などを活用し、建物の不燃化を進めるとともに、都独自の新たな防火規制の適用により、耐火性能の高い建築物への建てかえを誘導しております。
今後とも、区市町村と連携し、木造住宅の安全性向上に努めてまいります。
質問8
大震災の際に、負傷者などの被害が広がるのを減少させる上で、家具類の転倒防止策は極めて有効であることは、宮城県北部地震や十勝沖地震の被害で明らかになっています。静岡県島田市では家具転倒防止事業を実施し、とりわけ六十五歳以上世帯と障害者世帯に金具などの無料取りつけを行って、大変喜ばれています。東京消防庁は宮城地震の経験を踏まえ、家具協会と金具協会との協議を始めたと伺っていますが、家具類の転倒防止について、低価格の器具の普及、アドバイザーの派遣、自治体の助成策への支援などを求めるものです。
答弁8
▼総務局長
本年第一回定例会におきまして、他会派から要請がありましたが、都は都民に対し、適切な金具や取りつけ方法などの情報を提供していくことにしており、このため、さきに東京消防庁に設置されました家具の転倒・落下防止対策推進委員会におきまして、器具の性能評価の方法などを検討しております。
質問9
超高層ビル群、地下鉄を初めとした深い地下構造、都内を縦横に走る高速道路や新幹線など、大都市特有の建造物の集中などに伴う防災対策は、東京にとっての緊急課題です。そこで、震度七規模の最大級の地震に備えるために、首都高速道路や地下鉄、また数多くの橋梁の再点検と万全の耐震補強を直ちに実施すべきと考えますが、どうか。
また、超高層ビルや地下街などについても、点検と必要な対策を講じることも必要ですが、どうか。
答弁9
▼都市整備局長
首都高速道路及び地下鉄の耐震補強についてでございますが、いずれも阪神・淡路大震災後に定められた基準に基づき、耐震補強を実施してございます。首都高速道路では、既に橋脚の補強は完了しております。さらに、橋げたの落下に対する安全性向上を図るため、落橋防止対策を順次実施してきており、来年度完了する予定でございます。また、都営及び東京メトロの地下鉄につきましても、既に補強を完了しております。
今後とも、適切な耐震対策を行うよう、事業者に求めてまいります。
超高層建築物や地下街の地震対策についてでございますが、超高層建築物は、構造上の安全性につきまして国土交通大臣の認定が必要であり、一般の建築物を上回る高い安全基準が適用されております。新たな問題である長周期地震動への対応につきましては、現在土木学会及び日本建築学会が合同で検討を進めております。
都といたしましては、今後、この検討結果を初め国の動向にも注目しつつ、適切に対処してまいります。
また、地下構造物に与える地震動の影響は、地上部分に比べて低減されますが、地下街につきましては、建築基準法及び建築安全条例に基づき、構造面はもとより、火災の拡大防止や避難上の安全確保を図っております。
今後とも、建築物等の一層の安全対策に努めてまいります。
▼建設局長
橋梁の点検と耐震補強についてでございますが、震災時における都民の安全な避難や迅速な救援活動を行うためには、橋梁の耐震性の向上が極めて重要でございます。
都は、既に阪神・淡路大震災後に定められた基準に基づき総点検を実施しており、五百五十八橋について対策が必要であると判定いたしました。このうち、防災上優先度の高い第一次緊急交通路の百六十五橋すべてと、第二次緊急交通路の二十二橋の対策を平成十五年度末までに完了いたしました。今年度は十四橋で耐震対策を実施中であり、そのうち六橋が完了する予定でございます。
今後とも、工期短縮とコスト縮減を図り、着実に耐震対策を推進してまいります。
|
■中小企業対策の制度融資 |
制度融資は、銀行から借りられなかったり、株式市場や債券市場には縁のない町工場や地域商店、地場産業、不況業種の代表といわれる建設業などの小零細業者にとってはかけがえのない命綱です。
ところが、その東京都の制度融資について、このところ、保証が受けられない、前より借りづらくなったなどの相談が多く寄せられるようになっています。実際に貸付額も、かつては三兆円近くにまでなっていたものが年々後退し、昨年の融資額が最高時の半分にまで後退させられ、しかも融資目標額を一千五百億円も下回りました。
融資の活用が減っている原因の一つは、制度融資の仕組みが業者の要望と実態に合ったものになっていないことです。また、保証協会による保証渋りや銀行の貸し渋りも原因していると考えられます。
質問1
まず、実態に合った融資の実行ということでは、京都府に学ぶ必要があります。京都府はこの四年、制度融資の貸付額を約八倍、貸付件数を約四倍に伸ばしています。貸付実績が後退している東京都とは大変違います。このうち、貸し付けを大きく伸ばしたのは既往債務の借りかえのためのあんしん借換融資で、これだけで本年度実績は十月末で貸し付けは一万六千件、三千百億円に上ります。東京都の借りかえ融資がわずか三百五十九件、五十三億円にとどまっているのとは対照的です。
では、一体何がこんな違いをもたらしているんでしょうか。一つは、京都府が預託原資を積み増しし、国のセーフティーネットをうまく活用するなど、積極的な姿勢をとっていることですが、もう一つは融資の条件の違いです。それは都と違い、借りかえ融資の対象を、運転資金と制度融資に加え、設備資金の返済金を認めていること、そして、何より保証協会の保証つきの民間融資の既往債務についても貸付対象としていることです。さらに加えていえば、新規資金や無担保無保証人融資枠が認められ、融資限度額も東京より高く設定され、金利も一・五%の超低利で利用できることです。
そこで、都の借りかえ融資を保証つき融資についても借りかえできるようにすること、国のセーフティーネットを活用し、リスクを分散させること、融資限度額の引き上げと低利の政策金利の導入、新規融資も認めることなど、せめて京都並みの借りかえ融資に踏み出すべきだと思いますが、答弁を求めます。
答弁1
▼産業労働局長
借りかえ融資についてでございますが、借りかえ制度は、中小企業の返済負担を軽減することが目的であり、利用しやすい制度とする必要がございます。都の借りかえ融資は、セーフティーネット保証の対象者のみならず、都と区市町の制度融資の利用者すべてを対象とし、金融機関との調整が円滑に進むよう約定金利で実施しているところでございます。
さらに、新規融資と既存の複数借り入れの一本化も可能とするなど、さまざまなケースに広範に対応できる制度としております。
質問2
創業や起業を応援する融資では、大阪府のスタートアップ資金は、府が認める業者向け講習会を受講、終了することを条件に、自己資金の五倍の融資をするもので、京都府でも府指定の起業家育成セミナーの受講などを条件にする融資があり、いずれも金利は一・五%の低利に設定されています。創業、起業支援融資については、都の講座や商人塾など、受講を条件に無担保無保証人、低利、少額の自己資金など借りやすい融資をつくること、政策メニューとリンクした融資も必要と考えますが、どうか。
答弁2
▼産業労働局長
政策メニューとリンクした融資等についてでございますが、制度融資では、講習会等の受講を条件とすることなく、無担保無保証による融資を優遇金利によって行っているところでございます。
また、新・元気を出せ商店街事業、伝統工芸品産業振興事業等の助成事業を融資の対象とするなど、既に各種事業との連携を図っているところでございます。
質問3
保証渋り、貸し渋りも制度融資の利用を妨げる要因となっています。業者団体から聞いた範囲でも、十件申請しても認められるのは二件ぐらい、三百万円申し込んでも実際に借りられるのは百万円など、保証協会が保証を渋っていることが指摘されています。また銀行も、信用保証協会の保証がついていても融資を実行しない例も後を絶ちません。保証渋り、貸し渋りなどあってはなりません。直ちに是正するよう強く求めるものですが、どうですか。
答弁3
▼産業労働局長
保証渋り、貸し渋りについてでございますが、都はこれまでも保証協会に対し適切な審査を要請するとともに、金融機関に制度融資の活用について協力を求めてまいっております。こうした中、保証協会の保証承諾率は、件数ベースで平成十三年度には八四・二%であったものが、十六年度は十月末で九〇・三%と年々向上しております。
また、金融庁の貸し渋り・貸しはがしホットラインの受け付け件数も、平成十四年十月の設置から半年間で六百二十八件であったものが、十五年度の同時期は二百七十三件へと激減するなど、状況は改善してきております。
質問4
都が制度融資を後退させようとしていることは重大です。石原知事は財政再建推進プランで、中小企業の資金調達の方法を制度融資などの間接金融から株式や債券市場などの直接金融にシフトすることを打ち出しました。その後、都はこの立場から制度融資の預託原資を減らし、この五年間だけでも九百四十億円も削減してしまいました。預託原資の縮減は、協調する金融機関の意欲をそぐだけではなく、融資の利息が次々と低利の政策金利から金融機関の定める割高な所定金利をもたらすものとなっています。東京の経済を縁の下で支える中小企業のためにも、預託原資を増額し、低い金利の政策金利を中心とすることや使いやすいメニューの拡充など、業者が利用しやすい制度に改善、拡充することを求めるものです。答弁を求めます。
答弁4
▼産業労働局長
利用しやすい制度融資への改善、拡充についてでございますが、平成十六年度の制度融資は、融資期間に応じた金利体系を採用し、短期資金についてはより低利とするなどの改善を図ったところでございます。
さらに、この十一月からは、売上減少企業を対象とした要件緩和などを内容とする特別対策を実施しておりまして、制度の一層の充実を、今後とも図ってまいります。
|
■DPF虚偽データ問題 |
質問1
三井物産が開発、販売したDPFの虚偽データの問題について伺います。
この問題は、到底都の基準を満たすことのできない装置の販売を可能にするために、虚偽のデータを使用したものであり、その責任は極めて重大です。同時に、厳密な検査が必要であるにもかかわらず、環境科学研究所や第三者による評価を行わず、業者が行った検査結果をうのみにするなど極めてずさんな対応に終始した東京都の責任も厳しく問われるものです。
そこで、都は、身内の調査にとどめることなく、第三者機関を設置し、徹底糾明を行い、三井物産と東京都の責任を明らかにすること、その内容を都民と都議会に報告すること、被害を受けた中小企業の救済に全力を尽くすことを求めるものです。知事の答弁を求めます。
また、都議会として百条委員会の設置、三井物産社長を初め、この問題にかかわった関係者の参考人招致など、真相究明と責任追及を行うことを提案し、質問を終わります。
答弁1
▼知事
三井物産の問題でありますけれども、今調査中でありますが、どういう立場のどれだけの調査能力の人間が赴いたのか、まだ定かでございませんが、これから、環境に限らず、食品などについても、こういった極めて専門性を要する、技術というものに精通した調査というものが必要な事態が出てくると思いますので、これを機に反省を強くしまして、そういう技術性を伴った、専門性を伴った調査員の養成というものに心がけていきたいと思っております。
|