災害弱者避難体制の構築必要だ 児童虐待への対応強化を図れ |
酒井 大史(民主党) |
■災害弱者対策 |
ことしは、新潟県における地震のみならず、水害等多くの自然災害が発生した年でもありました。このような災害が発生したとき、健常者であっても、避難所への避難路の確保や避難所での生活は大変なことであると思います。現に、被災地では要介護申請が急増しているという報道もあり、避難所での生活の厳しさを改めて認識させられました。まして、体に障害を持った方々においては、災害時における避難所での生活、避難路の確保、また災害情報の提供等、不安な点が多くあるのではないかと思います。
災害時における対応については、市区町村が基本的に権限と責任を有していることとは思いますが、都内全域における災害弱者への対策を構築していくため、都の見解を伺います。
質問1
初めに、ハンディキャップを持った方々が、外出時、例えば公共交通機関や地下街、各種施設等を利用しているときに災害が発生した場合、混乱した状況の中で、避難誘導に関して適切に情報提供を行うことが求められます。視覚障害者へは音声で、聴覚障害者へは文字で情報が提供されることが求められますし、また、視覚障害者や身体障害者の方々については安全な場所への誘導体制の構築も必要と考えられます。これら対策の必要性について、施設管理者への協力依頼等も含め、都の見解を伺います。
答弁1
▼福祉保健局長
外出時の障害者への情報提供などについてでありますが、外出時に災害に遭った障害者には、周囲の人による援助に加え、利用者などの安全確保に責任がある施設管理者による適切な情報提供や避難誘導が必要であります。
東京都福祉のまちづくり条例に基づく施設整備マニュアルにおいては、公共交通事業者などは、災害時の非常時に備えて、文字情報を伝えることができる案内装置や、フラッシュや音声により緊急事態の発生を知らせる誘導灯などを設置することが望ましいとしております。
都としては、今後とも、公共交通事業者などの施設管理者に対し、避難誘導機器の整備や情報提供などの適切な実施について働きかけてまいります。
質問2
次に、自宅内において災害が発生した場合における身体、視覚、聴覚障害者や要介護高齢者の安否確認、避難所への誘導体制の構築や、これらの方々の避難先となる二次避難所指定への市区町村の取り組みについて、都はどのようなグランドデザインを持って対応しているのでしょうか。
身体に障害を持った方や、また要介護高齢者は、ベットやトイレの問題など、一般の避難所での生活が難しいことは容易に想定されますし、自閉症の方などは、多くの人が集まる避難所でともに過ごすことが困難であることも予想されます。これらの方々に対応する二次避難所の指定や、また知的障害者などを対象とする避難所の整備についても、都内すべての市区町村で対応できている状況にはなく、その存在や、また誘導体制の周知も十分とはいえません。都としての見解を求めます。
答弁2
▼福祉保健局長
災害発生時の区市町村の取り組みについてでありますが、東京都地域防災計画では、災害時に、区市町村が障害者や高齢者などの安否確認や避難誘導などを行うほか、自宅や避難所での生活が困難な障害者などに対して社会福祉施設などを二次避難所として活用することとしております。
都は、区市町村が、障害者などの安否確認のため、日ごろから所在地を把握しておくことや、二次避難所の指定など総合的な防災対策に取り組むよう働きかけてまいりました。
今後とも、区市町村に対し、障害者などの防災対策の強化を働きかけていくとともに、都としても、災害時における障害者などへの対応について、関係団体などを通じて周知を図ってまいります。
質問3
最後に、災害に遭われた方に対する心のケアについて伺います。
今回の新潟県中越地震で被災された方の中には、不安や緊張、不眠、疲労による体調不良を訴える方や、フラッシュバック、急性ストレス障害(ASD)、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の前兆を示す方もおられます。
災害によって強いストレスが加わるとさまざまな心の問題が引き起こされる可能性があり、また、一般の大人にとっても耐えがたい経験であることを考慮すると、災害弱者、特に子どもに対する対応には一層の専門的配慮が必要になります。
今回、都は、いち早く精神科医や看護師を現地に派遣し、被災者の心のケアを行ったと伺いましたが、東京においては災害時における心のケア対策はどうなっているのか、また、今回、現地で実際に心のケアに当たった経験を今後どのように生かしていくのか、見解を伺います。
答弁3
▼福祉保健局長
災害時における心のケア対策についてでありますが、都においては、災害時の医療救護マニュアルを策定し、その中で、精神科医師などによる巡回相談や、精神保健福祉センターにおける二十四時間体制の相談業務を実施することとしております。
今回、心のケア医療救護チームを新潟県に派遣し、避難所における診察や家庭訪問などを通じて、災害ストレスによる病状悪化の防止、子どもの心のケアを担う教師や救護に当たる職員へのサポートなど、心のケアの重要性を改めて認識いたしました。
今後、この経験を災害対策研修などを通じまして関係機関の職員に伝え、災害時の心のケア対策に生かしてまいります。
|
■児童虐待への総合的な取組 |
我が会派の代表質問にもありましたように、最近、子どもにより親が殺される、あるいは暴行を受けるといった事件が多く報道されています。代表質問の中ではドメスチックバイオレンスについての質問も行われましたが、家庭内で起こる暴力に児童虐待の問題もあります。
児童虐待の問題については、今月に入っても、都内において二歳の幼児がおじさんによる暴行で命を落とすなど、ここ数年、児童、幼児虐待に関する報道を目にしない月はないくらいの頻度で起こっています。東京都の資料においても、児童相談所で受理している児童虐待の相談件数は、十年前に比べおよそ十一・四倍、平成十五年度において二千四百八十一件という数が示されています。
この世に生まれ出た貴重な命を一人でも多く救うために、我々の社会はさまざまな対応を講じていかなければならないことはいうまでもありません。この十月一日に改正児童虐待の防止等に関する法律が施行されたこともあり、児童虐待への早期対応のみならず、児童虐待の早期発見に向けての対策という観点から質問をさせていただきます。
質問1
まず初めに、知事の所信表明の中で述べられていました、児童相談所の機能を充実するとともに、児童相談センターの専門機能を充実した、子ども家庭総合センター(仮称)の設置に関してお伺いをいたします。
東京都の資料にある児童相談所への通報件数の増加といったものは、ある意味で児童虐待への関心が高まり、従来、通報をためらっていたような方や、また事案においても通報されるようになったという、潜在的な児童虐待が表に出てきたという見方もできますが、それとあわせて、児童虐待の件数自体もふえているのではないでしょうか。
全国各地で発生している児童虐待への対応の中には、児童相談所の対応のかいなく、また、不十分な対応により貴重な命が親や親近者によって奪われる事案が少なくありません。
児童虐待への対応の強化を図るため児童相談所の機能を充実する必要がありますが、これまでの取り組みと、今後設置をされる子ども家庭総合センターの内容について伺います。
答弁1
▼福祉保健局長
児童相談所の機能の充実についてでありますが、都は、児童相談所の体制について、これまでも児童福祉司の増員や児童虐待などの困難ケースに的確かつ効果的に取り組むためのチーム制の導入など、その強化に努めてまいりました。
さらに、平成十五年度からは、すべての児童相談所に虐待対策班を設置し、児童虐待に迅速かつ機動的に対応しております。
今後、福祉、保健、医療、教育などの専門相談機関がチームを組んで、子どもと家庭に対する総合的かつ効果的な支援などの機能を持つ、仮称子ども家庭総合センターの設置に向け、準備を進めてまいります。
質問2
今回の児童虐待防止法改正は、これまで、虐待を受けた児童を発見した者に速やかな通告を義務づけていたものを、児童虐待を受けたと思われる児童へと範囲を広げることにより、早期発見、通告を促すものとなっています。
これを受け、通告義務者である学校における早期発見、通告について教育委員会はどのように取り組んでいくのか、基本的な考えをお伺いいたします。
答弁2
▼教育長
学校における児童虐待の早期発見、通告についてでございますが、児童虐待は児童の人権を著しく侵害し、心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えますので、学校におきましても早期発見、通告を適切に行うことが重要でございます。
都教育委員会としましては、人権教育に関する研究協議会や教員研修等におきまして児童虐待防止に関する内容を取り上げますとともに、本年六月に、全公立学校に対して都教育委員会が作成しました児童虐待を早期に発見するためのチェックリストを配布しまして、その趣旨の徹底を図ったところでございます。
今後、これらの施策を充実させますとともに、教員のための手引書でございます「人権教育プログラム」に、児童虐待防止法の改正の趣旨に基づいた学校の役割や義務を明示し、各学校を指導してまいります。
質問3
学校等において教師が児童虐待を早期に発見をしていくためには、教師が児童の様子に注意を払っていくことが大前提でありますが、それとあわせて、虐待を受けている児童が教師にその虐待の事実を訴えられる環境を構築していくことも必要であると考えます。一般的に、虐待を受けている子どもは、親から虐待を受けていることを他の人に話したがらない、自分が親から虐待を受けていること、また愛されていないのではないかということを認めたくない、また、ネグレクトの場合など、虐待を受けていることを認識していない場合があるといわれています。このような子どもたちへの虐待を早期に発見するためには、子どもたち自身に虐待とはどういうことなのかを教えていくことも大切なことであると思います。
京都市教育委員会では、市内四つの小学校をモデル校として、児童に虐待についての授業を行っています。このとき大切なことは、子どもにしつけと虐待の違いをしっかりと教え、考えさせることです。このことにより、児童たちが同じクラスの友人の変調に関心を持ったり、児童自身、みずから虐待を受けていることや、また兄弟の状況を教師に話すようになったり、また教師自身も、教えることを通じて児童の様子の変化により注意を払うようになったとのことです。
東京都の資料でも、虐待を受けた児童の年齢分布で二歳から八歳までの割合が全体の六〇%弱を占めていると指摘しています。この統計は、八歳を一つのピークとしているという見方と、高学年になると児童虐待が潜在化してしまっているのではないかという二つの見方ができます。
いずれにしても、市区町村教育委員会にも働きかけ、小学校低学年のうちに虐待についての授業を行うことが児童虐待の早期発見につながると思いますが、教育長の見解をお伺いいたします。
答弁3
▼教育長
児童虐待についての教育を行うことについてでございますが、児童虐待の未然防止や早期発見のために、学校におきまして児童生徒一人一人の状況を日常的に把握することが大切でございます。
現在、都教育委員会としましては、各学校がチェックリストに基づき、児童生徒の出席状況、授業での様子、健康状況、家庭での状況などを把握しまして、児童虐待の早期発見に努めるよう指導しているところでございます。
お話の、児童生徒に対する指導につきましては、いろいろ課題がございますが、特に親子の信頼関係を損なわないように配慮する必要がありますので、今後、都教育委員会が実施をしております人権尊重教育推進校や教育相談研修会等におきまして、児童生徒一人一人に応じた指導のあり方について検証しまして、その教育的効果を踏まえまして改善に努めてまいります。
質問4
児童虐待に関する最後の質問となりますが、虐待を受けた子どもたちについては、心と体の傷を一日も早く回復させていくことが何よりも大切です。このためには、虐待を受けた子どもたちに対する社会的な支援策、とりわけ養育家庭制度、いわゆる里親制度などの家庭的な養護施策の充実強化が必要であると考えます。
先日、石原都知事は、報道番組で養育家庭制度に関して見解を述べられていましたが、家庭の温かさを子どもたちに感じさせていくためにも養育家庭制度の活用が不可欠であると考えますが、都としての取り組みをお伺いいたします。
答弁4
▼福祉保健局長
養育家庭制度についてでありますが、虐待などにより社会的養護が必要な子どもたちは、できるだけ家庭的な環境のもとで育てられることが望ましく、養育家庭をふやしていくことは大変重要なことと認識しております。
このため、都はこれまで、養育家庭の養育体験発表会の実施や、交通機関でのポスターの掲示、都の広報紙の活用などにより、制度の普及、啓発に努めてまいりました。
今後、これらに加え、新たに都民向け啓発用ビデオを作成するなど、積極的に普及啓発活動に取り組み、養育家庭の着実な増加を図ってまいります。
|
■犯罪被害者支援 |
質問1
この問題については過去何回も質問し、石原都知事からもご答弁をいただいておりますが、去る十二月一日、参議院本会議にて犯罪被害者等基本法が賛成多数にて可決成立しました。
この基本法の成立に対しては、平成十六年第三回定例都議会にて意見書を可決し、都議会としてもその制定を求めた直後の成立であり、いよいよ我が国においても犯罪被害者の権利を尊重していくスタートラインに立ったことをまずは歓迎したいと思います。
しかし、この基本法を読んでみますと、犯罪や犯罪被害者の定義がいま一つあいまいであり、その認定機関についても明確ではありません。また、被害者の知る権利の保護については明文化されず、具体的な施策についても、すべて基本計画に棚上げされた印象があります。
さらに、東京都を初めとする地方公共団体が注目すべき点として、基本的施策として掲げられている条文のすべての主語が「国及び地方公共団体は」とされていることです。被害者の立場からすると、国と地方公共団体が連携して支援を行ってくれるのであれば願ってもないことであると思います。しかし、見方を変えると、国の責任があいまいになり、地方公共団体の負担のみが過大になることも容易に想定できます。
以上のような問題点はあるものの、基本法が成立し、公布してから半年以内に施行される状況の中で、東京都を初めとした地方公共団体は早急に準備を進めていかなければなりません。
そこで、昨年の第四回定例都議会における私の一般質問に対して、「犯罪被害者に対する支援は、経済的給付を初め、本来は国が対応すべき問題ではありますが、都としても、ご提案の条例も含めて、国や区市、民間団体などとも相談、協力しまして、そういうものを考慮し、考え、支援活動を推進していきたいと思っております。」とご答弁をいただき、ちなみに、この知事のお言葉には、当日傍聴席にいた犯罪被害者の遺族の方も勇気づけられたと申しておりました。犯罪被害者支援に従来から深い理解を持っていただいている石原都知事におかれては、今回の基本法成立に対し、どのような感想をお持ちなのか、また、基本法が成立をされたことを受け、東京都としての犯罪被害者支援条例等の制定や都としての体制整備に対する見解を改めてお伺いし、質問を終わります。
答弁1
▼知事
先ほど制定されました犯罪被害者等の基本法でありますが、私も専門家でありませんし、それほど精読しているわけじゃないんですが、論評にも出ていましたけれども、つまり同じケースに関して加害者の刑が重くなった、重くするということだけで問題の解決にならぬのじゃないかという論もありまして、私も同感でありまして、もうちょっとやはり被害者というものの立場に立って、例えば、事件が要するに勃発したその瞬間から、加害者と被害者をどう分けて扱うか。有名な、用賀の、東名の出口のところで、常習の過載のダンプカーの、しかも飲酒の運転手が、親子四人ほとんど殺した。お子さんは二人死にましたけれども、両親は重傷で助かったので、それで奥さんは今でも神経症で悩まれていますが、あのときだって、加害者の犯人は警察が慌ててタクシーかパトカーで運ぶけれども──パトカーで運んだんですか、だけれども被害者は、死亡者が出ているのに、とにかくタクシーを呼んでどこかへ回したという、そういう扱いというものに、何というんでしょうか、事件というものの構造に対する人間的な視線が欠けていると私はかねがね思っています。
繰り返しになりますけれども、この民間における被害者の会の会長は、奥さん自身が自分の身がわりに殺された有名な弁護士の岡本勲君で、私の親友でございますけれども、彼もやはり、自分がこういう事件に巻き添えにされて家内が殺されなかったら、今ごろやはり弁護士として加害者の弁護をしていただろうと苦笑いをしていましたけれども。
そういう点では、私は、物足りないというんでしょうか、もうちょっと違う視点での法律の構成というのが必要だったんじゃないかという気がいたします。ただ、私は専門家ではございません。それ以上のことを具体的にどうしろという意見を持っておりませんが、いずれにしろ、これは一つの進歩、一歩の進歩でありまして、遅きに失したとはいえ、議員立法によってこれが成立したことは歴史的にも意義があるものと思います。
これまで、警視庁を中心に各局が連携して相談、保護などさまざまな支援にも取り組んでもきましたが、今後とも、国や区市、民間団体などと一層連携、協力して、痛ましい犯罪に遭遇して被害をこうむった方々の肉体的にも精神的にも立ち直りというものを、都としても支援していかせていただきたいと思っております。
|