平成16年第4回定例会 一般質問

隅田川活用で観光資源の創造を
旅行者回遊のためのICタグを

中村 明彦(民主党)
■観光産業の振興
 
 先日、天皇家の長女紀宮様のご婚約が内定されました。お相手の方は、秋篠宮様の大学時代の同級生で、都庁職員の黒田慶樹さんということで、驚きとともに、国民として最大のお喜びを申し上げる次第でございます。
 ご婚約発表の時期につきましては、台風の被害に遭われた方や、新潟県中越地震で被害に遭われた方々が苦しんでいる中に、慶事を発表するには忍びないと、天皇皇后両陛下の国民を思う温かいお気持ちの中で延期され、十二月の十八日に婚約内定の発表をされることといたしました。
 このことは、皇室が常に国民のことを思い、国民とともにあられるということを強く印象づけられた次第であります。
 紀宮さまも、皇室のこの温かいお気持ちをいつまでもお持ちになられ、温かいご家庭をつくられますことを、心よりご祈念申し上げさせていただきます。
 さて、それでは質問に移らせていただきます。
 

 
質問1
 石原知事は平成十三年十一月に、観光を産業としてとらえ、国に先んじて東京都観光産業振興プランを策定しました。以来三年が過ぎました。振興プランでは、平成十四年から五年間で観光客を倍増する計画でしたが、実際には外国人観光客が予定通り増加していないように思われます。
 今後、さらなるシティーセールスの展開と、受け入れ体制の充実が望まれますが、中でも、私は、新たな観光資源の創出に向けて、隅田川の水辺空間の活用についてお尋ねしたいと思います。
 隅田川は、江戸時代、浅草川と呼ばれており、浅草寺本堂の観音様が出現した駒形あたりから宮戸川と呼ばれ、ここから下流が大川となり、両国橋から霊岸島あたりまでの川の西側を大川端といっておりまして、江戸時代の人々のレクリエーションのエリアでありました。土手の散策、川面の涼風を楽しむ船遊びや川開きとして有名な花火の打ち上げも、庶民の楽しみの場所でありました。
 また一方では、舟運の水路としても多く利用され、荒川と利根川との往来により、物流の一大ネットワークが構成されておりました。江戸の町が栄えたのも、こうした隅田川を初めとする水路の活用、水辺ラインの利用があったからだといえるのではないでしょうか。
 現在でも、浅草は、隅田川沿いに位置する都内有数の観光地の一つであります。その隅田川では、親水テラスの整備など、都民が水辺に親しむことができる取り組みが、徐々ではありますが進んでおります。
 しかし、隅田川に浮かぶ船上から見上げるまちの光景は、川に背を向けて林立するビル群、人を拒絶するかのごとくのかみそり堤防など、景観という点では著しく魅力を欠くものになっております。また、旅行者に対する案内表示の不足など、陸上から水辺へのアクセスという点での配慮が必ずしも十分でないことから、水辺を訪れる人の流れも余り目にすることができない状況であります。
 一方、海外の例をみると、パリのセーヌ川では、バトームッシュという食事も楽しめる観光船が、ノートルダム寺院を初めとする歴史的建造物の近くを遊覧することで、多くの観光客を集めております。また、中国の上海では、黄浦江沿いのバンドと呼ばれる地区において、水と緑と建物が見事にマッチして、多くの観光客や地元の人たちに楽しまれているのであります。
 数え上げればまだまだ切りがないほど、数多くの例が存在し、都市づくりの中心にも位置づけられ、人々から親しまれる存在であるばかりでなく、河川が都市そのもののイメージを高め、海外から多くの旅行者を誘致する上での重要な観光資源となっております。
 東京都においても、隅田川という歴史的にも都民から親しまれてきた貴重な財産を、観光資源として積極的に活用していくことで、浅草だけにとどまらず、臨海副都心観光まちづくりとの連携、また、羽田空港の拡張に伴い、将来的に羽田空港の客が水路を利用して観光をしながら、都心部へ移動させる方法も考え、国内外から多くの旅行者を誘致することにつながっていくものと考えられます。
 このたび、東京都では、十七年度重点事業として、東京の水辺空間の魅力向上に関する全体構想を策定することになっておりますが、隅田川などの水辺空間を活用した魅力ある観光資源の創造に向けて、石原知事のご所見をお伺いいたします。
 
答弁1
 ▼知事
 東京の水辺空間を活用した魅力のある観光資源の創造についてでありますが、思い返してみますと、二昔前、私などが若かったころですね、隅田川大川端を素材にした流行歌が随分ありました。明治一代女であるとか何であるとか。それから、その後も、やはりあそこで早慶戦とか東商戦という有名なボートのレガッタが行われたりしましたが、いつの間にかこれも廃れて、戸田に移ってしまいましたけれども、私もボートをこいだこともありますが、戸田など遠過ぎるし、行っても情緒がないし、やっぱり私は、戸田の人には申しわけないが、隅田川でああいうものを、要するに、水上の交通規制をすれば優にできることですから、やりたいなと思います。
 ただ、一方、護岸は随分できましたけど、殺風景きわまりないもので、ご指摘のように、みんな建物は要するに背中を向けて、裏口もついてない。小さな船で行きますと、ちょっとこれ上ろうと思っても、上る階段も何にもない。あんなものは、川下に向かって簡単な階段をつくれば簡単なんでして、私はこの間も、河川局、国交省の方へ行って、おまえたちやらなきゃ都で勝手にやるぞといったら、どうぞと。まあ、そこまでしなくても何とかしますよということでしたが、やっぱり国の方も、東京における河川の利用というものはずさんに過ぎて、自分たちがつまらぬ川をつくり過ぎたという反省があると思います。
 そういう点で、やはり前にも申しましたが、澁澤榮一さんが、初代の商工会議所の会頭として、日本の東京をアジアのベニスにしようといわれたのは、本当に卓見だと思いますけど、まあ、今は似て非なるものにしかなっていませんが、いずれにしろ、これを考え直して、東京の水辺空間を有力な観光資源として再生しようと。
 たまたま用事があって、隅田川をさかのぼりますと、護岸下のテラスに見えるのはブルーテントばかりでしてね、あれがあると、やっぱり恋人たちは、若い人たちはそう簡単に歩けないと思うんです。
 東京都の企画で、春、桜のころですが、何杯か都の保有の船を仕立てて、新内を聞く会なんてやりますと、これはもう本当に、抽せんでも人が余って余って困るぐらい応募がありましてね。みんなやっぱりそういう昔の情緒、情趣というものにノスタルジーを持っていますし、これはもうおっしゃるとおり、こちらが思い切ってやれば、非常に吸引力のある観光資源になると確信しておりますので、来年度、東京都の水辺空間を観光資源として再生するための全体構想というものをまとめ、かつ具体的に、どことどこを重点的にやるか、まず天王洲とかそういうところでもやってみようと思います。
 そして、これを往復したりする、魅力のある舟艇のルートの開発や、それに付随した桟橋、テラスの活用などによって、都民、国民だけではなくて、まあ、外国人もということですが、いずれにしろ、あの川から東京を眺めるというのはなかなかおもしろい景観なんで、これはやっぱり一回経験されると、必ずリピーターがふえると思いますので、都としても精いっぱいの努力をするつもりでございます。
 

 
質問2
 観光振興への取り組みをさらに発展させ、地域をますます活性化させていくには、周辺地域を含めた、それぞれの観光スポットを有機的に結合し、ルートを形成するなど、地域全体の魅力を高めていくことが大切だと思うのであります。
 特に台東区には、隅田川沿いの浅草と並ぶ観光の拠点である上野地区がありますが、上野地区は、文化施設が集積しているだけではなく、その周囲には、特色のある商店街や、寺院が点在する谷中など、多くの観光資源を抱える地域が隣接しております。しかし、これらの施設を訪れる旅行者が、こうしたほかの地域にも足を伸ばすという状況には必ずしもなっておりません。
 旅行者の回遊性を高め、にぎわいを創出するには、上野を訪れた旅行者に対し、周囲にもすぐれた観光スポットが数多く存在することを伝えるとともに、安心してまち歩きを楽しむことができる仕組みが重要と考えますが、見解をお伺いいたします。
 
答弁2
 ▼産業労働局長
 上野地区における回遊性の向上についてでございますが、上野公園では本年十一月より、台東区と地域のボランティアとが連携し、英語による観光案内を開始するなど、新たな取り組みが進められているところでございます。
 都は、こうした取り組みに対し、ボランティアの待機場所の調整等を行ったほか、本年度末を目途に、谷中・根津・千駄木方面への観光案内標識を設置するなど、地域の回遊性の向上に向けた支援を行っているところでございます。
 今後とも、旅行者が、周辺地域も含め、まち歩きを楽しめるよう、適切な観光情報の提供に加え、住民や地元商店街、自治体等が連携し、地域の魅力を旅行者に伝えていくための取り組みを進めてまいります。
 

 
質問3
 十七年度重点事業では、ICタグの活用可能性の検討として、上野などの一定のエリア内で、店舗、施設の観光情報を都民や来訪者に提供することを挙げております。
 今回の実験では、ICタグを歩道や案内板、あるいは店舗や施設などに取りつけることにより、上野などを訪れる人は、一々サイトを検索しなくとも、携帯電話や専用端末などで、現在の位置情報やお店や施設の情報、あるいはイベントの情報などを入手することができるということであります。
 しかし、私は、今回の実験の目的が観光情報の提供であるのであれば、観光振興で上野地区が抱えている回遊性という問題にも適切に対応することができるよう、周辺への本格的な展開を視野に入れて取り組んでいくべきと考えます。
 ICタグを活用した上野地区での取り組みと地域の活性化について、見解をお伺いいたします。
 
答弁3
 ▼都市整備局長
 ICタグを活用した実験についてでございますが、この取り組みは、外国人を初めとして、まちを訪れた人が観光情報などを手軽に得られる仕組みを実用化することにより、観光振興や地域の活性化などを図ることを目指しております。
 こうした新しい仕組みの実現には、実地における技術の検証が不可欠であり、都内の主要な観光地において、都が一定エリア内での実験に取り組むものでございます。
 お尋ねの上野につきましては、施設情報や施設へのルート案内などを想定しており、将来の観光まちづくりへの展開も視野に入れつつ、今後、具体的な実施内容を検討してまいります。
 

 
質問4
 現在、全国の自治体でも、観光を地域活性化の手段としてとらえ直して、外国人旅行者を受け入れるさまざまな活動を開始しており、東京都の先駆的な取り組みが、こうした動きにも波及しております。外国人旅行者を誘致するには、地域の魅力を高めることや、旅行者を温かく迎える仕組みづくりが一番重要となります。そのため、都内のさまざまな地域において、住む人が誇りを持ち、旅行者が何度でも訪れたくなるまちづくりを目指す活動が随所にあらわれつつあります。
 こうした動きをつくるきつかけの一つが、東京都も参加する形で発足した上野地区観光まちづくり推進会議が進める観光まちづくりモデル事業ではなかったかと考えます。
 本年三月に、東京都観光まちづくり基本指針が発表され、上野地区と臨海副都心地区をモデル地区として検討会が設置されました。上野地区では、東京国立博物館を初めとするライトアップ、上野公園内でのオープンカフェ、十一月にはミニトレインの試運転を実施して、多くの観光客に喜ばれております。それも、地域の観光連盟、商店街が率先して誘客に取り組んでおり、東京都と文化施設と地域とが連携した要因が最大の成果であると考えます。
 また、本年七月には浅草においても、浅草地区観光まちづくり推進協議会が設立されるなど、他の地区にも広がりを見せております。
 上野での観光まちづくりが成功しているのは、地元の観光連盟や商店街、文化施設など、地域が連携した取り組みを行い得たことが最大の要因ではありますが、行政の側においても、観光施策を所管する産業労働局に加え、公園、道路管理者である建設局や、文化施設を所管する生活文化局、さらには地元台東区などが緊密に連携をとりながら事業を進めてきたことも重要な要素であると考えます。
 今後、都内のさまざまな地域で観光まちづくりが推進されていくに当たって、こうした各局間の連携をさらに深め、総合的な取り組みを推進していくことが重要と考えますが、ご所見をお伺いいたします。
 
答弁4
 ▼産業労働局長
 各局連携による観光まちづくりの推進についてでございますが、上野地区では、お話もございましたように、公園の利用や施設の提供などにおいて複数の関係局が連携協力し、地域の主体的な観光まちづくりヘの取り組みを支援してまいりました。
 観光は、都市としての総合力が問われる課題でございまして、各局が実施する観光関連施策の効果的な連携が不可欠でございます。
 このため、庁内に観光施策連携推進会議を設置したところでございまして、各局連携のもと、施設整備や規制緩和など、ハード、ソフトの両面から観光施策を推進するとともに、地域の観光まちづくりを支援してまいります。
 
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■大手町の都市再生プロジェクト
 
 次に、都市再生についてお尋ねいたします。
 我が国の国際競争力を高めていくためには、首都東京の活力を再生させていくことが不可欠であります。とりわけ、東京駅の至近に位置する大手町地区は、金融、情報通信、新聞メディアなどの本社が数多く立地する、日本経済の中枢を担うエリアであり、この地区をグローバルビジネスの戦略拠点として再生していくことが重要であります。この地区の機能更新については、平成十五年一月に国の都市再生プロジェクトにも位置づけられているところであります。
 この都市再生プロジェクトは、民間の力を発揮させながら進めるものでありますが、都としてもさまざまな側面からサポートしていただき、我が国の国際競争力の向上に向けて取り組んでいただきたいと思います。
 そこで、幾つかお尋ねいたします。
 
質問1
 東京都などでは、このプロジェクトを、合同庁舎跡地を活用して連続的な建てかえを進める連鎖型都市再生プロジェクトとして位置づけておりますが、まず、連鎖型の意義と当面の進め方についてお伺いいたします。
 
答弁1
 ▼都市整備局長
 大手町地区の連鎖型都市再生についてでございますが、大手町地区は、日本経済の中枢機能の集積地でありますが、建物の老朽化が進み、IT化への対応にもおくれが見られております。
 加えて、この地区は二十四時間稼働型業種が多く、業務を中断することなく建物の機能更新を進めていくことが、国際競争力の強化の観点から不可欠であります。
 このため、国の合同庁舎跡地を種地として順次建てかえを進めていく新しいまちづくりのプロジエクトが、この連鎖型都市再生でございます。
 今後、都市再生機構による跡地の取得、土地区画整理事業や街路の都市計画の手続など、事業化に向けた取り組みを進めてまいります。
 

 
質問2
 ところで、先日の「赤旗」新聞に、この大手町のプロジェクトに関する記事が掲載されました。この中で、連鎖型プロジェクトの契機となる合同庁舎跡地について、随意契約でより安く跡地を購入するため、都市再生機構が土地区画整理事業を行うというくだりがありました。あたかも不適切な方法で跡地を都市再生機構に払い下げるような論調でありますが、本当はどうなのか、合同庁舎跡地の払い下げ方法についてお伺いいたします。
 
答弁2
 ▼都市整備局長
 合同庁舎跡地の売却方法についてでございますが、財務省が国有財産関東地方審議会の審議を経た上で、大手町地区の都市再生に必要な用地として、随意契約により都市再生機構へ売却するものでございます。
 また、売却価格は、今後、財務省が鑑定価格等をもとに適正な価格を決定いたします。
 機構は、本地区の連鎖型都市再生を支えるため、土地区画整理事業を実施し、また、長期にわたり種地の保有を行っていくものであります。
 したがって、これら一連の仕組みは、都市再生を進めていく上で、いずれも適切な方法であると考えております。
 

 
質問3
 このような事業を進めていく上では、都と地元区の連携が重要であります。しかし、千代田区は一時期、検討に参加していなかったと聞いております。これは大変奇妙なことであります。なぜ千代田区が参加していなかったのか、それに対する都としての所見をともに伺います。
 
答弁3
 ▼都市整備局長
 千代田区の対応についてでございますが、本年三月の大手町まちづくり推進会議開催までは、区も事業スキームの検討に参画しておりましたが、その後、区は、公平、公正、透明性の確保について共通の認識に立っていないと主張し、この検討に不参加となりました。
 その理由を、都から再三問いただしましたが、具体的な内容が示されることはなく、区の経過説明などから判断いたしますと、推進会議メンバーである地元地権者以外の企業の参加機会の確保を考えていたようであります。
 しかし、都としては、本プロジェクトは、民間の力により、みずからのまちの再生を目指すものであり、本来、地元地権者を中心として取り組むべきであると考えております。
 本プロジェクトの公平、公正、透明性について、都といたしましては、国有地の売却条件の遵守、都市計画決定や事業認可などの公的手続の実施、さらには都市再生機構による事業参画などにより十分確保されていると考えております。
 したがいまして、区の主張は、本来の公平、公正、透明性とは方向性が違うものと認識いたしております。
 

 
質問4
 区は本来、本プロジェクトを積極的に推進すべき立場と思いますが、区の協力体制などに問題はないのか、所見をお伺いし、私の質問を終わります。
 
答弁4
 ▼都市整備局長
 区の協力体制についてでございますが、先ほどお答えいたしましたように、区は一時期、検討に参加しておりませんでしたが、その後、本年十月、都市計画手続を進める期限を迎えたところで、現スキームで事業を推進することに同意したところでございます。
 しかしながら、円滑な事業化に向けた区の協力姿勢がいまだ明確ではないことから、本プロジェクトを協働して推進してきた地元地権者から不安の声も出ております。
 都といたしましては、本プロジェクトの推進に向けて、区はみずからの役割を果たしていくべきと考えており、今後とも、あらゆる機会を通じて区に働きかけてまいります。
 
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