平成16年第4回定例会 代表質問

地方分権改革を積極的に進め
東京の活力を呼び戻そう

野村 有信(自民党)
■真の地方分権改革
 
 去る十月、新潟県中越地方に発生した大地震での犠牲者の皆様に深く哀悼の意を表すとともに、被災された方々に心からお見舞いを申し上げます。
 それでは、平成十六年第四回東京都議会定例会に当たり、東京都議会自由民主党を代表して質問をいたします。
 さて、世界情勢も我が国の社会経済情勢も混迷の度を深めております。イラクやパレスチナを初めとする中東情勢、そして北朝鮮の核や拉致の問題、いずれの問題をとっても、解決の道筋すら見えておりません。
 国内に目を転じても、痛ましい犯罪が多発しております。先日の奈良県で起こった少女殺害事件は、その卑劣さ、残忍さにおいて、到底許すことのできない犯行であります。
 かつて日本は、世界で最も安全な国でありました。そうした国を今取り戻すことを都民は切に願っています。我が党は、都民の皆様が安心して生活できる東京を目指して全力で取り組むことを改めて表明いたします。
 経済面においては、長いトンネルの出口がようやく見えてきました。これは、民間企業がまさに血のにじむような努力を重ね、体力増強を行ってきたからです。また、我が党もこれまで、あらゆる手だてを尽くして、必死で頑張る中小企業や商店街等のため働いてまいりました。しかし、原油高や円高など新たな不安材料も生まれ、日本経済はまだまだ弱含みで推移しております。
 今こそ、こうした状況に活を入れ、東京の中小企業者や都民に再び活力を呼び戻し、明るい展望を開く施策を重点的に実施することが重要であると考えます。東京がよみがえることこそ、日本経済全体が新たな成長軌道に乗る原動力であると確信しております。
 同時に、都政の構造改革も忘れてはなりません。組織、職員定数、職員給与を都民の目線に立って不断に見直し、また、民間でできることは民間に任せていくべきです。そうして、都民のための施策を素早く着実に実現できるように改革を進めることを改めて強く求め、質問に入ります。
 

 
質問1
 まず、真の地方分権改革について伺います。
 我が国を取り巻く国際環境や少子高齢化に伴う将来的な活力低下への懸念など、今、国民、都民の心には幾多の不安が重くのしかかっています。
 こうした閉塞状況を打破するためには、今こそ政治が、我が国のあるべきグランドデザインをしっかりと見据えて、真の改革を推し進めていくことが必要です。しかしながら、国において行われている改革は、これに値するものとは到底思えません。
 特に三位一体改革については、先月末にようやく改革の全体像として政府・与党合意が成立しましたが、その内容は本質的な議論が全く行われず、地方が求める分権改革の実現からほど遠いものとなっております。
 このため、都議会としても、我が党が中心となって、地方分権改革の基本理念に立ち返って抜本的な改革を進めるよう、真の地方分権改革の推進に関する意見書を本定例会の初日に採択したところです。
 全体像の中でとりわけ問題なのは、義務教育費の取り扱いです。義務教育費のあり方については、中央教育審議会で検討し、来年秋までに結論を得るとしながら、約八千五百億円の国庫負担金を削減するとしております。
 また、社会保障についても、唐突に国民健康保険への都道府県負担を導入するとし、約七千億円の地方負担を打ち出しています。どう考えても削減ありきの議論であるとの感は否めません。
 総じて改革の全体像は、本質的な議論をないがしろにしたまま、三兆円の国庫補助負担金削減額を積み上げることだけに腐心したものと評価せざるを得ません。このようなその場しのぎの矮小化した議論だけで改革に決着がつけられてしまうことは、我々地方自治に携わる者として容認できません。
 知事は、国が決定した改革の全体像についてどのような感想をお持ちか、忌憚のないご所見をお伺いいたします。
 
答弁1
 ▼知事
 いわゆる三位一体改革についてでありますが、今回の分権改革は、政府がみずから決めた骨太なる方針によりますと、国と地方の明確な役割分担に基づいた自主自立の地域社会から成る地方分権型の新しい行政システム、つまり国全体の政治のスキームを構築し直すことにあったはずであります。
 しかし、国が決定しました全体像は、こうした理念からはるかにかけ離れておりまして、国庫補助負担金削減の数字合わせでしかないとしかいいようがございません。国の各省やそれぞれの政治家による目先の利害調整に終始しておりまして、地方分権の実現という改革の目的は忘れられていると思います。
 その政治のリーダーシップが一向に感じられず、実態は中央集権どころか、まさに実態は縦割りの中央分権という現状でありまして、極めて嘆かわしいというか、肌寒い思いがいたします。
 今、求められているのは、日本全体の発展につながる基本的改革を実現することでありまして、国と地方の役割分担を徹底してまず議論することから始め、明治以来の旧弊な現行の制度を、税制、財政の体質を思い切って改善することによって、旧弊な制度を根本的に改革することが必要だと思います。
 分権改革の成功なくして今後の我が国の確かな発展はあり得ないと思います。初心に帰って仕切り直しを行うことを、国に強く求めていきたいと思います。
 大体、今回の混乱の中で、総理大臣が、余りおれの出番をつくるなと側近にいうというのは、私はどうも解せない話でありまして……。
 

 
質問2
 もう一点、改革の全体像に関して見過ごせないのは、税源移譲にあわせて地域間の財政力格差の拡大について確実な対応を図るとしている点です。
 全体像の決定に先立って、先月中旬の経済財政諮問会議において総務大臣が提出した改革案では、行政体である東京都と地域としての東京を意図的に混同して使い、国の三位一体改革により東京に税収が集中することを殊さらに強調した上で、法人事業税の分割基準の見直しや地方譲与税の譲与制限を実施すべきとの考え方が打ち出されています。
 我が党は、このような東京をねらい撃ちにした財源調整の強化は、膨大な財政需要を擁する大都市東京の実態に目をつぶり、東京を富裕団体とみなす東京ひとり勝ち論に基づくものであるとして、その誤謬を一貫して批判してまいりました。
 地方に比べて東京だけが過度に潤っているかのように喧伝し、法人事業税の分割基準の見直しなど不合理な財源調整措置の強化を企てようとする国の動きに対して、知事はどのように対応していこうと考えておられるのか、ご所見を伺います。
 
答弁2
 ▼知事
 不合理な財源調整措置についてでありますが、本来、税財源の地域配分は、我が国全体の発展を実現するとの観点に立ちまして、地域の行政需要に応じて行われるべきであります。
 東京を初めとする大都市は、日本の経済を牽引する重大な役割を担っておりまして、膨大な行政需要を抱えているにもかかわらず、それに見合う十分な税財源が配分されてはおりません。その例には枚挙のいとまがございませんが、こうした問題については、私たちも、ある危機感を持ちまして、事前に、知事本局長と一緒に諮問委員会の有力な民間の議員を歴訪しまして、意見もただし、こちらの主張もしましたが、本質的にはみんな社会工学的に持つ大都市の意味というものを理解してくれていると思いますけれども、今後、これがどういう形で反映されるかは、まだ予断を許さないところであります。 
 お話のその総務大臣案は、行政体としての都と地域としての東京を、実は知りながらあえて混同し、改革によって都だけが増収になるような内容となっております。東京と地方を意図的に対立させ、東京からさらに税財源を吸い上げようとする、ためにする非常にこそくな論だと思います。このような都だけをねらい撃ちにした不合理な財源調整の強化は、断じて容認できません。
 都は、富裕団体、富裕団体といわれますが、富裕というものの意味合いはいろいろありまして、確かに財政の上ではまだ不交付団体に辛うじて立ちどまっておりますけれども、例えば通行、交通に関する時間というものの大きさ、あるいは個人の住宅の個人当たりの狭さなど、あるいは環境の問題もそうでありますけれども、富裕度というものは決して金目の上ではかれるものだけではないということを、やっぱり行政の主体である国も強く認識すべきだと思いますし、そういうものを踏まえて、都としては、大義なき国の動きが今後具体化することのないよう、都議会の皆様のご協力をいただきながら国に対して働きかけていくつもりでございます。
 

 
質問3
 今断行すべきは、東京を初めとする大都市の活力を生み出し、ひいては日本全体の発展を永続的に支えることのできる行財政システムを再構築することであります。そのためには、三位一体改革に加えて、東京の行財政制度全般の見直しが不可欠です。
 我が党は、こうした観点から、さきの行財政改革基本問題特別委員会の調査報告を礎に、従前の組織見直しといった都庁内部の単なる行革にとどまらない、大都市東京の行財政システムの抜本的改革を進めることが使命であると考えています。
 石原知事は、大都市東京を支える行財政システムの改革に関して、いかなるデザインをうちに描いておられるのか、お聞かせください。
 
答弁3
 ▼知事
 行財政の改革についてでありますが、現在の日本が敗戦以来の歴史的転機にあることは、だれしも異論がないと思います。このような時期にあっては、確固たる歴史観、文明観に立って、将来を見据えた国の形を構想し、真の改革を実現することが政治の役割であると思います。
 現在、国が進めているいわゆる三位一体改革なるものにおいては、そうした指導性というものが一向に感じられません。首都東京の行政を預かる者として、国の分権改革の混迷をただ座視するわけにはいきませんし、まず、隗より始めよの言葉どおり、都みずからも、基本に立ち返りまして、東京の未来を開く抜本的な改革に取り組むことが必要であると考えております。
 官と民との役割の変化など、時代の動きを先取りした行政サービスの改革を進めるとともに、大都市行政の充実強化や首都圏全体の広域的な課題への新たな対応など、困難な課題にも立ち向かっていく決意でございます。
 従来、今までやっていなかった外部監査も入れまして、内部監査だけではなかなかつかみにくい行政のむだというものを、会計の専門家の監査の方々、公認会計士の方々に分析、指摘をしていただきました。鋭い改良についての指摘もありまして、内部も努力をしておりますが、これが一時に終わらないように、永続的にこういう姿勢というものを保持できるような、そういう新しい監視機関、管理機関というんでしょうか、それを、議会と民間、折衷した形で、私は、設けることで行政の合理性というものは確保されていくんではないか、今、その基本構想について検討中でございます。
 
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■財政
 
質問1
 さて、大企業の製造業を中心とした本年三月期の企業収益は、海外経済の堅調な動きを背景に、輸出や生産が増加するなど都税収入にも反映し、本年度上期で約千六百億円の増収と聞いております。また、本年九月期中間決算においても、上場企業は引き続き業績を伸ばしていると報道されております。
 一方、十一月に発表された七月から九月期のGDPでは、年率換算〇・三%増にとどまり、原油高やアメリカ経済の減速などによる懸念材料が入り、景気の持続回復への展望に不安を抱かせる面も見られます。
 そこで、まず都税収入ですが、堅調期を反映している本年度の都税収入の動向についてどのように見通しているのか、また、十七年度の都税収入の見通しについてお伺いいたします。
 
答弁1
 ▼主税局長
 本年度の都税収入についてでございますが、輸出、生産の増加等を背景とした企業収益の大幅な改善によりまして、法人二税を中心に堅調に推移しており、本年九月までの上期で、既に前年同期比約千六百億円の増収となっております。
 今後の税収の動向につきましては、十一月末の申告状況等を見きわめる必要がありまして、確たることを申し上げる状況ではございませんが、最近の企業業績の動向を勘案しますと、当初予算額を相当程度上回る税収が期待できるものと考えております。
 また、平成十七年度の都税収入見積もりにつきましては、現在、精査中でございますが、十七年三月期決算の大企業の収益が引き続き好調といわれています。一方、このところの景気減速に加え、原油高、円高などの懸念材料もあり、今後、景気動向などを注視しつつ、的確に算定してまいります。
 

 
質問2
 次に、都税収入に大きな比重を占める固定資産税についてお伺いします。
 我が党は、固定資産税について、これまでも、地価が下がっているのに税負担が下がらないなど、現行制度が抱えるさまざまな問題点を指摘するとともに、特に負担が過大になっている二十三区の商業地等の負担を軽減するよう、繰り返し求めてまいりました。
 そうした中、知事は、平成十四年度に、小規模非住宅用地に対する都独自の軽減措置を導入されました。この英断が厳しい経営環境にある中小企業者の大きな力添えになってきたことは、申し上げるまでもございません。
 しかし、これで固定資産税の問題が解決したわけではありません。現在、固定資産税においては、同じ評価額の土地でも、土地ごとに税負担が異なる不均衡が生じております。バブルの生成、崩壊に伴って生じた矛盾であり、十年余を経た現在まで、解消されないまま残されてきた制度のゆがみであります。
 二十三区の商業地等では、全国に比べ負担水準の高い土地が多くなっております。二十三区の事業者は、依然として高い地価に加え、負担水準の不均衡により、二重に負担が過大となっているわけであります。
 こうした固定資産税の現状について知事はどのように考えているのか、改めて所見をお伺いいたします。
 
答弁2
 ▼知事
 固定資産税の現状についてでありますが、国は、バブルの生成、崩壊の過程において、固定資産税については有効な策をもう講じることができませんでした。その結果、現行制度では負担の不均衡などさまざまな矛盾が生じておりまして、特に二十三区の商業地等は、全国に比べ過大な負担を強いられております。
 こうした状況を少しでも改善するため、平成十四年度に小規模非住宅用地の減免措置を導入しましたが、これで本質的な解決が図られたわけではありません。固定資産税に対する納税者の信頼を確保していくためには、現行制度を抜本的に見直し、不均衡を解消していく必要があると考えております。
 

 
質問3
 国は、おくればせながら、平成十六年度の税制改正において、商業地等の負担水準の上限を自治体が裁量で引き下げることができる条例減額制度を創設いたしました。
 負担水準の上限の引き下げは、不均衡の是正はもとより、二十三区の商業地等の過大な負担を軽減することで、地域の活性化にもつながります。既に我が党には、中小企業を初め数多くの関係団体から、引き下げを求める声が寄せられております。
 都は、税負担の公平等の視点に立ち、商業地等の負担水準の上限を引き下げるべきと考えますが、知事の所見をお伺いいたします。
 あわせて、非住宅用地などに対する都独自の軽減措置についても、引き続き景気に配慮し、来年度は継続すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。
 
答弁3
 ▼知事
 負担水準の上限引き下げ等についてでありますが、固定資産税は都と特別区の貴重な財源でありまして、公平、公正であることが税制の基本でありまして、不均衡の是正は早急に取り組まなければならない課題であると認識しております。
 商業地等の負担水準の上限引き下げについては、引き下げによる効果、都の財政状況、特別区や市町村への影響などを踏まえて、今後、積極的に検討していくつもりでございます。
 あわせて、小規模の住宅用地や非住宅用地、新築住宅に対する都独自の軽減措置の平成十七年度の取り扱いにつきましても、景気状況、都民の負担感などを踏まえ、今後、検討してまいります。
 

 
質問4
 来年度予算の編成は、一月の原案策定に向けてまさに佳境に入っていきます。東京がかつてのような繁栄を取り戻すためには、何といっても、東京に根づき、地域経済を盛り立て、そして日本経済をしっかりと下支えしている都内の中小事業者の皆さんに元気になっていただくことが不可欠であります。
 回復基調にある景気の足取りを確かなものとするためにも、今こそ東京に活力を呼び戻すための施策を重点的に展開することが望まれております。
 もちろん、財政再建もまた都政の重要な課題であります。我が党は、都議会において最大の議席を預かる責任政党として、目先の問題だけを扱うのではなく、将来を見据えての必要な取り組みに対しては、協力を惜しむものではありません。
 例えば、都債については、将来の負担を十分検討した上で発行することが必要であり、近年、都債の発行額が、その返済である公債費を下回る水準に抑制されているのも、我々が執行機関と協力して財政再建に取り組んだ成果であると考えております。当然ながら、十七年度予算編成においては、この流れをとめることなく、さらなる都債の抑制に努めるべきと考えます。
 いずれにしても、来年度予算をどのような予算に仕上げるか、これからがいよいよ知事の腕の見せどころであります。平成十七年度予算編成に対する知事の基本的な考え方をお伺いいたします。
 
答弁4
 ▼知事
 十七年度予算編成についてでありますが、東京は、国際競争力の向上や治安の回復、災害への備え、中小企業対策など、数多くの課題に直面しており、来年度予算では、その解決に向け、重点的に財源を配分し、都民の負託に積極的にこたえていく必要があると考えております。
 また、都財政を取り巻く環境について見ますと、昨年度までとは異なりまして、企業業績の上向きを受け、税収の回復が期待できます。しかしながら、この景気がいつまた反転するかも知れず、その兆候も散見されておりまして、加えて、三位一体改革が都財政に与える影響については、予断を許さない状況にあります。
 したがって、十七年度予算の編成に当たりましては、首都東京の再生と都民サービスのさらなる充実を目指しつつ、依然として厳しい財政状況が続く中で、第二次財政再建推進プランの着実な実施と隠れ借金の──これはかなり膨大なものがございますが、隠れ借金の解消など、都財政の体力回復に努めていきたいと思っております。
 
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■災害対策
 
質問1
 我が党は、さきに知事に、東京都の今後の政策展開について要望いたしました。先日発表されました平成十七年度重点事業は、これにもこたえた内容となっており、評価しております。さらに、今後、予算編成においても、我が党の考えが十分反映されていくことを期待しながら、個々の政策について質問をさせていただきます。
 まず、震災対策について伺います。
 先般発生した新潟県中越地震においても、いまだインフラが大きなダメージを受けたままであり、災害復旧の難しさが露呈しています。今こそ、東京の地震災害に対する備えに万全を期していくときだと考えます。
 先月十七日には、国の首都直下地震対策専門調査会が首都圏で起きる地震を想定し、震度分布図を発表しました。これによれば、都内の広範囲の地域で大きな揺れが生じ、甚大な被害が発生することが危惧されます。
 都は、八都県市と連携し、広域防災プランを策定したり、応援協定を結ぶなど応援体制を整えていますが、首都圏直下地震では八都県市が同時に被災することも予想され、実際には支援も受けられないのではないでしょうか。
 現在の地域防災計画で定めている体制で十分なのか、お伺いいたします。
 
答弁1
 ▼総務局長
 大規模震災時の応援体制についての質問にお答え申し上げます。
 被害が広範囲に及ぶ場合は、国はもとより、被害を受けてはおりません他府県や民間の協力を得ることが不可欠でございます。都は、地域防災計画で八都県市や一都九県など、相互応援協定によりまして、救援、救護や応急復旧対策における人的、物的支援を確保いたしますとともに、防災機関、民間団体との協力体制の確立に努めております。
 先月には、八都県市が共同で広域防災プランを策定いたしまして、複数の都県市で震度六弱以上の揺れが観測されました場合には、合同で応援調整を行う組織を設置するなど、広域応援の仕組みを構築いたしました。
 また、新たな大規模事故への対処なども含めまして、相互応援協定の見直しを検討することにいたしました。
 今後とも、他の自治体との連携を強めますとともに、民間団体、事業者との協定締結を推進し、応援協力体制の確立に努めてまいります。
 

 
質問2
 東京においても、直下の地震が起きた場合、火災の発生はもちろん、建物の倒壊や落下物、またはパニックなどにより、救助を求める人が多数発生することが予想されます。
 そこで、地震による各種災害に備え、ハイパーレスキュー隊を増強するなど、救助活動体制をさらに強化していく必要があると考えますが、ご所見を伺います。
 
答弁2
 ▼消防総監
 救助活動体制の強化についてのお尋ねでありますが、東京消防庁では、阪神・淡路大震災の教訓を踏まえ、消防救助機動部隊、通称ハイパーレスキュー隊を平成八年に二部隊整備し、その後、平成十四年には、NBC災害に対応する一部隊を増強してまいりました。このほか、救助活動専任の特別救助隊を二十二の消防署に配備するなど、救助活動体制の整備に努めてまいりました。
 しかしながら、首都東京に地震等の大規模な災害が発生した場合には、甚大な被害が想定されております。このため、今後、新潟県中越地震の被害調査結果なども踏まえまして、ご指摘のハイパーレスキュー隊の増強整備を初め、救助訓練施設の拡充や新たな救助活動資機材の導入を検討するなど、救助活動体制の一層の強化に努めてまいります。
 

 
質問3
 次に、三宅噴火災害に対する都の支援について伺います。
 三宅村では、来年二月の避難指示解除に向け、いよいよ村民の引っ越し準備が始まっています。我が党の申し入れを受け、都は三宅村民の生活再建支援のための独自制度を創設する条例案が今定例会に提案されています。しかし、村民の生活再建への支援は、今回の新制度だけでなく、他のさまざまな支援制度を含めて総合的に講じるべきです。
 そこで、帰島後の生活再建の支援に当たっての都としての基本的見解についてお伺いいたします。
 なお、条例案は、支給対象が帰島後に居住する世帯家屋を対象としており、高濃度地区に設定されている地域内の建物は対象外となっています。しかし、高濃度地区においても家屋修繕等は同じように行われることから、この支援事業にこだわらず、何らかの方法により救済を講じることを要望しておきます。
 
答弁3
 ▼福祉保健局長
 三宅村民の帰島後の生活再建についてでありますが、村民の生活再建は、自助努力を基本に、国の支援金や貸付制度などを最大限に活用しながら進められるべきものと考えております。
 しかしながら、今回の三宅島災害は、四年以上の長期にわたって避難生活を余儀なくされている、過去に例のない災害であり、住宅などの生活基盤に甚大な被害が生じていることから、今回、都は、国の制度では適用されない住宅の修繕などを対象とした、都独自の支援制度を創設することといたしました。
 これに加え、村民に対する支援策として、国の貸付金に対する都独自の上乗せや、これら貸付金に係る利息分に対する補助を実施し、負担の軽減を図ることとしております。
 都としては、村民がこれら諸制度を最大限有効に活用し、早期に生活再建を図ることができるよう、村などと緊密に連携しながら積極的に支援してまいります。
 

 
質問4
 また、帰島後に商工業者が事業を再開するに当たっては、多額の資金が必要となります。融資による支援強化に努めるべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁4
 ▼産業労働局長
 三宅島への帰島に伴う商工業者への支援についてでございますが、三宅島の商工業者に対しましては、これまで、災害復旧のための新規融資に対する利子補給や信用保証料の補助、既往債務の返済猶予などの措置を講じ、負担の軽減を図ってきたところでございます。
 帰島後の円滑な事業展開のために、新たな資金需要にこたえるべきことはご指摘のとおりでございまして、今後、災害復旧融資における支援の充実を検討してまいります。
 

 
質問5
 日本はまさに地震列島です。東京における防災対策は重要課題の一つであり、真剣に取り組まなくてはなりません。都民の生命、財産を守る立場から、知事の決意を伺います。
 
答弁5
 ▼知事
 震災対策についてでありますが、今回の新潟中越地震では、まず、みずからの生命はみずからが守るという自助と、地域の中で間近に住んでいる人たち、住民同士が助け合うという共助の大切さを再認識いたしました。
 一方、その自助、共助を前提とした、県なり、他県なりあるいは国全体の公助としてのセクターの役割の重要性も痛感いたしました。
 迅速な初動態勢の確立や適切な情報把握、指揮命令系統の一元化などの課題が改めて浮き彫りになりましたが、こうした教訓を踏まえて、今後、国、区市町村等と連携を一層強め、より震災に強い首都東京を目指していきたいと思います。
 私も、偶然、ワシントンに用事があっておりまして、九・一一を間近に体験し、私のホテルの目の前で昨日訪れたペンタゴンが炎上するのを眺めて、強いショックを受けましたが、帰国してすぐ、他県とも諮って、国にも建言しましたが、まず、国が動かないので、首都圏に限ってのFEMA、災害対策の連絡体制のようなものをつくりました。
 今までは、災害が起こったときに、東京なら東京、埼玉なら埼玉から、官邸、中央政府への連絡のカウンターパートはわかっておりましたけれども、ならば、隣接した神奈川県と東京、東京と埼玉県の連絡網というのはあるかといったら、これは全然なかったわけでありまして、そういうものを設定することで、図上訓練の上でもかなり機能的な構図ができて、これは、一たん緩急のときには即座に活用のできるそういった機能を改めて備えることができたと思っております。
 
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■DPF装置の不正事件
 
質問1
 三井物産株式会社によるDPF装置の指定申請に関する不正事件について伺います。
 昨年十月に始まったディーゼル車規制は、知事のリーダーシップのもと、とりわけ運送事業者の皆さんのご理解とご協力により、多大の成果を上げてまいりました。
 こうした中で発覚した三井物産の不正は、全くの詐欺行為であるのみならず、長年にわたり東京の環境の改善を切実に求め、効果に期待してきた都民にとっては、その信頼を裏切る最悪の背信行為といわざるを得ません。
 日本を代表する大企業の不祥事が続く中、またしてもの感を抱かざるを得ず、大企業の倫理感の欠如の蔓延に愕然としながら、強い怒りを覚えるものです。昨日、一都三県が共同して刑事告発を行いましたが、今後とも、三井物産に対し徹底した責任追及を行うべきと考えます。
 我が党は、この事件発覚後、直ちに対策委員会を設置し、事業者の皆さんの声をつぶさにお聞きしてまいりました。
 今回の事件の被害者となった皆さんは、貨物量の減少や料金引き下げへの要請など、引き続く厳しい経営環境の中で、都民の健康と東京の環境の改善のために、必死の努力をして都の施策に協力してこられた方々であります。
 運送事業者の中には、ディーゼル車規制に対応できず、廃業のやむなきに至った方もいらっしゃるのです。三井物産の装置を装着している事業者は、今後、DPFの交換などの措置が必要になるわけですが、これまでディーゼル車規制に誠実に対応してきた事業者の方々には、今回の問題で新たな金銭的負担を一切かけさせないよう、三井物産に厳しく迫るべきだと思いますが、所見を伺います。
 
答弁1
 ▼環境局長
 DPF装置の指定申請に関し不正を行った三井物産への対応についてでございますが、事業者の方々の骨身を削るようなご努力をいただいて進めてきたディーゼル車規制に関連しまして、このような事件が起きたことはまことに残念でございます。
 今回の事態は、三井物産が虚偽のデータを使用したという、事業者には全く責任のない原因によるものでございます。今後、三井物産がユーザーへの対応を誠実に実行し、被害を受けた事業者に不利益が生ずることのないよう、都として強く指導してまいります。
 

 
質問2
 三井物産からは、先日、対応策なるものが公表されておりますが、個々の事業者は、厳しい経営環境を反映した、それぞれ深刻な事情を抱えております。
 こうした状況にある事業者の皆さんが、新車への買いかえ、DPFの交換など、最良の方法を考えて、十分納得のいくような選択ができるようにする必要があります。このため、被害に遭った事業者には、親身になった弾力的な対応が行われるようにすべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼環境局長
 事業者に対する弾力的な対応についてでございますが、三井物産では、十二月一日にユーザーへの対応策として、代替品との無償交換、交換作業中の休車損害の補償、車両の買いかえが必要な事業者への対応などを公表いたしました。これらは当然の措置でございまして、三井物産に対しては、事業者の実情を踏まえた必要な対策をとるよう、さらに求めてまいります。
 また、事業者の方々の対応にはさまざまな選択が予想されるため、都としても、事業者の声を親身に受けとめまして、適切な取り扱いを行ってまいります。
 

 
質問3
 今回の事件は、確かに三井物産側の徹底した偽装のせいではありますが、装置の指定に当たって万全を期すべきことは当然であり、都は、国に先駆けて、他県を引っ張ってこの規制を進めてきた立場として、指導監督責任を強く自覚し、再発防止も含め、今後の対応に当たるべきでありますが、所見を伺います。
 
答弁3
 ▼環境局長
 再発防止など、今後の都の対応についてでございますが、多くの事業者の方々の多大な協力をいただいて進めてきたディーゼル車規制に関連してこのような事件が起きたことを都は重く受けとめており、今後新たに行うDPF指定審査におきましては、環境科学研究所で確認試験を行うなど、虚偽の申請に対する効果的な再発防止策を早急に講ずるほか、的確な執行体制の整備に努めてまいります。
 

 
 我が党としても、ディーゼル車規制について、事業者や関係団体、隣接各県市へご理解、ご協力をお願いしてきた立場として、責任の重さをひしひしと感じております。
 また、一昨日、審査に当たった職員が、公務員倫理にももとる行為を行ったとの報道がありましたが、関係局においては、失われた都民の信頼の回復を図るため、厳正な対応を求めます。
 この事件における三井物産と都の対応を厳しく見守っていく決意を明らかにして、次の質問に移ります。
 
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■ヒートアイランド対策
 
質問1
 ことしの夏は記録的な猛暑となり、熱中症で約九百人もの人が搬送されるなど、ヒートアイランド現象が都民の健康にも悪影響を及ぼしております。事態は殊のほか深刻で、実効性ある対策が急がれます。
 都市にさまざまな機能が集積し、発展していくことは、日本経済の活性化に欠かすことができないものですが、一方で、都市の生活環境を改善していくことも重要な課題です。夏を迎えてからでは遅きに失します。今こそ、来年に向け対策を推進していくための仕組みづくりを進めていくべきと思いますが、知事の所見を伺います。
 
答弁1
 ▼知事
 ヒートアイランド対策についてでありますが、この夏は記録的な猛暑となりました。これは、世界的な異常気象に加え、大都市特有のヒートアイランド現象によるところも大であります。
 都はこれまでも、丸の内や汐留などで、モデル事業として保水性舗装や屋上緑化等の対策を実施してまいりました。今後は、特に対策が必要な地域を推進エリアとして設定しまして、地元自治体や民間事業者と協働し、保水性舗装や校庭芝生化などの対策を中心的に実施してまいります。
 国に対しては、都市再生の一環として積極的な対策を講じるように強く働きかけ、連携して取り組んでまいります。
 

 
質問2
 知事への緊急要望の中では、ヒートアイランド現象の緩和に向け、学校の校庭芝生化など、これまでの取り組みをさらに充実させた総合的な対策を講じるべきとしています。
 都はこれまで、緑化計画書制度により、新築建築物等の屋上緑化等に取り組んでおりますが、一層の推進を図るためには、学校の校庭芝生化は重要な対策です。今後、区とも連携して校庭の芝生化を進めるなど、学校の緑化を積極的に推進すべきと思いますが、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼環境局長
 ヒートアイランド対策に関しまして、校庭芝生化についてでございますが、校庭の芝生化は、大きな緑化面積が確保でき、高いヒートアイランド対策効果があるばかりでなく、環境教育の生きた教材としての活用も期待されます。また、保護者や地域と協働で芝生の維持管理に取り組み、地域コミュニティの活性化に寄与した事例もございます。
 こうしたことから、十七年度の重点事業といたしまして、区立の小中学校の校庭芝生化や壁面緑化など、学校の緑化を地域と協働して進めるための財政支援を行うなど、ヒートアイランド対策の一層の推進を図ってまいります。
 

 
質問3
 保水性舗装についても大幅に拡大することも要望しています。夏の晴天時には、路面温度が五十度以上にもなるアスファルト舗装の道路は、都心部において面積の四分の一を占めており、ヒートアイランド現象に大きく影響していると考えられます。保水性舗装は、路面温度上昇を約十度抑制する効果があることが検証されています。なお一層の拡大を図るべきと考えますが、今後の展開についてお伺いします。
 
答弁3
 ▼建設局長
 保水性舗装についてでございますが、ヒートアイランド対策の一環として、平成十三年度から十六年度までに、都道上で約六・四ヘクタールの試験施工を実施いたしました。その結果、路面温度上昇の抑制効果や舗装の基本的性能である、ひび割れなどに対する耐久性を確認できました。
 これを踏まえ、保水性舗装を本格的に実施するため、経済的で効果的な標準構造や施工方法について、国に先駆け、都独自の基準を今年度内に定めてまいります。
 十七年度は、この新たな基準に基づき、重点事業として、ヒートアイランド対策推進エリアにおきまして保水性舗装を集中的に実施してまいります。
 
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■産業政策の展開
 
質問1
 都内至るところ網の目のように張りめぐらされた商店街は、まさに大東京の活力の源泉であります。我が党は、商店街を一貫して応援してきたところであり、都の商店街振興施策の中心的事業である新・元気を出せ商店街事業の構築に当たっても、最大限の努力をしてまいりました。
 新・元気を出せ商店街事業は、都内の半数以上の商店街が活用する制度となり、商店街活性化に着実な成果を上げております。今後、さらなる充実を要望いたします。
 元気な商店街には共通する要素があります。アイデアや発想が豊かで、企画力にすぐれていること、企画を実行に移す行動力と組織力があること、そして、こうした取り組みを支える財務基盤がしっかりしていることが挙げられます。
 中でも、財務基盤の強化は必要不可欠です。商店街の中には、駐車場の運営やポイントカード事業による収益確保のほか、株式会社を設立して収益事業を行い、地域コミュニティ活動や商店街振興に還元しているところもあります。
 このほかにも、例えば、商店街ネーミングライツ、街路灯やアーケードへの企業広告掲示、オープンカフェやフリーマーケットの運営など、工夫次第で、地域の活性化を図りながら、商店街の財務基盤の強化にも役立つさまざまな事業が可能だと考えます。
 都は、商店街のアイデアと発想を生かしたこのような取り組みを積極的に支援していくべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁1
 ▼産業労働局長
 商店街の振興についてでございますが、お話しのように、商店街が、地域の特性や商店街の実情に合わせてみずから創意工夫し、自主財源を確保しながら地域や商店街を活性化する取り組みを行うことは、極めて有意義でございます。一方、その実施に当たっては、街路の占用や景観への配慮など、関係機関との調整や地域住民の理解が必要となることもございます。
 今後、関係局等と調整を図るなど、商店街がこのような取り組みを円滑に進めていけるよう積極的に支援をしてまいります。
 

 
質問2
 次に、中小企業金融について伺います。
 今年度に入り、当初は景気が回復に向かっているとの見方が支配的でしたが、十一月の内閣府発表による月例経済報告では、景気判断が下方修正されるなど、ここに来て先行きの不透明感が広まっています。
 こうした中、産業労働局では、我が党の主張にこたえる形で、現在、制度融資の年末年始特別対策に取り組んでおります。今後、景気回復を減速させないためにも、来年度に向けて中小企業の資金繰りの改善や新たな事業展開を支える制度融資の充実を図るべきと考えます。所見を伺います。
 
答弁2
 ▼産業労働局長
 制度融資の充実についてでございますが、現在、制度融資では、中小企業の年末の資金需要にこたえるため、経営支援融資の対象事業者の売り上げ減少要件の緩和、クイック融資の限度額引き上げなどの特別対策を行っております。
 さらに今後も、引き続き厳しい経営環境にある中小企業を資金面で支えるとともに、新たなチャレンジを行う中小企業の支援にも力を入れ、本格的な景気回復と東京の産業の活性化を目指してまいります。
 こうした考えのもとに、中小企業の資金ニーズをきめ細かく把握し、制度融資の一層の充実に努めてまいります。
 

 
質問3
 依然として厳しい経営状況にある多くの中小企業は、新銀行の本格開業を心待ちにしており、新銀行がさまざまな手法を駆使して金融支援に取り組むことに大きな期待を寄せています。
 こうした中、知事は、地域金融機関と連携をとった新しい企業再生ファンドを新銀行の本格開業前に立ち上げ、順次事業展開を図っていくと表明されました。
 そこで、このたびの新銀行が設立する再生ファンドについて、全体構想をお示しください。
 
答弁3
 ▼知事
 新銀行の中小企業ファンドについてでありますが、中小企業が保有する貴重な人材やノウハウ、技術というものは、一たん企業が破綻すると回復がもう困難でありまして、ひいては東京の、いや、もう世界の経済にとっても大きな損失となりかねません。
 例えば、ご存じかもしれませんが、アメリカが時々新規に上げます新しい宇宙船、この宇宙船の頭部というものは、非常に巧緻に計算されたラインでできておりまして、これを計算どおり正確につくり出す技術は日本にしかありません。
 これは、本当に限られた職人が、金属の盤を回して、遠心力を使ってそれを曲げて設計図どおりつくっていくという、へら絞りという技術でありますけれども、これも、その継続者がだんだんいなくなって、非常に危機にさらされておりますが、こうした、つまり、限られた技術者というものがだんだんだんだん喪失されているということは、東京にとっても世界にとっても大きな損失となりかねないわけであります。
 また、中小企業を支える地域金融機関においても、速やかな不良債権処理が迫られておりまして、こうした状況を踏まえ、早期に中小企業の再生支援に取り組む必要があることから、先にもCLO、CBOといった債券市場というものを創設しました。
 世間から見ればといいましょうか、彼らにとっては大変なお金でありますけれども、しかし、大手の銀行が融資している額に比べれば、本当に何百万、せいぜい多くて千万、二千万という単位の金融を受けることで再生して、実際、我々が今まで対象としてきた七千社の中から既に三十二社が、再生しただけではなくて上場にこぎつけたというのは、非常に私は意味ある事実だと思います。
 こうした状況も踏まえまして、さらに早期に中小企業の再生支援に取り組む必要があることから、本格開業前に再生ファンドを立ち上げることにいたしました。
 このファンドは、従来の方式によりますが、中小企業を幅広く支援するファンド、地域金融機関との協調、連携をして再生を支援するファンド、新銀行自身の不良債権を対象とするファンドの、異なる機能を持つファンドを、地域金融機関と連携し、状況に合わせて適切に活用することによりまして、中小企業の再生を柔軟かつ効果的に実現するものであります。
 

 
質問4
 従来の方式に加え、地域金融機関とより緊密に連携をとった新しいファンドと述べていますが、具体的にどのような点が新しいのか、お伺いします。
 次に、新銀行ファンドの設立準備の状況は、現在どのようになっているか、また、その設立時期について、あわせて伺います。
 
答弁4
 ▼新銀行設立本部長
 地域金融機関と連携をとった新しい再生ファンドについてでございますが、従来の再生ファンドでは、取引先に対する債権の全額をファンドが買い取るため、長年取引のある金融機関と債務者とが切り離されることになり、企業再生が進みにくい面があることから、ファンドの活用について一定の制約がございました。
 新銀行ファンドは、提携地域金融機関と密接な関係にある中小企業に対する債権について、当該金融機関の意向を踏まえつつ、その一部を買い取り、残りの債権は地域金融機関が引き続き保有し、債権者として残る新しい方式を取り入れており、これにより、地域金融機関が当該企業との取引の継続性を保ちながら、より確実な企業再生を実現する効果を期待するものでございます。
 次に、再生ファンドの設立準備状況及び設立時期についてでございますが、現在、出資に関する規程、システム、運営体制などのインフラ整備や買い取り可能な不良債権について、必要な調査等を行っております。
 設立時期につきましては、まず、来年二月を目途に、中小企業の再生を幅広く支援する従来方式の再生ファンドを立ち上げます。さらに、新銀行の開業後に、地域金融機関の不良債権の一部を買い取り、地域金融機関と協調、連携して企業の再生を支援する新方式のファンドや、新銀行自身の不良債権を対象とするファンドを順次立ち上げてまいります。
 

 
質問5
 次に、アニメ・映像産業への支援について伺います。
 アニメ・映像産業は、国内だけでなく、海外への展開が期待される分野です。また、アニメプロダクションの約八割が東京都内に立地しているなど、アニメ・映像産業は東京の地場産業ともいえる存在です。
 しかし、韓国、中国などの各国が、映画産業やアニメ産業の振興を国家戦略とし、国を挙げて積極的な支援を行っていることから、今後、この分野における国際競争はますます激しくなると予測されます。
 したがって、都として、アニメ・映像産業に対するさらなる支援策が必要であると考えます。今回打ち出されたアニメ・映像産業支援策では、具体的にどのような内容を考えているのか、お伺いします。
 
答弁5
 ▼産業労働局長
 アニメ・映像産業への支援策についてでございますが、アニメや映像産業を支えている制作会社は、そのほとんどが中小企業であり、資金調達力や事業展開力が弱く、十分に制作能力を発揮できない現状にございます。
 都は、制作会社への資金面での支援の仕組みを国と協力して構築するとともに、アニメ・映像作品等の情報を検索、発信できるデータベースを構築するなど、海外への販路開拓を含めた事業展開支援に取り組んでまいります。
 こうした取り組みを通じまして、中小制作会社の自立的経営を促すとともに、アニメ・映像産業の活性化を図ってまいります。
 
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■産学公の連携
 
質問1
 去る九月三十日、首都大学東京の十七年四月開学が文部科学省より認可されました。首都大学東京は、これまでの大学にはなかった新しい大学の形を目指すものであり、都民にとって本当にふさわしい大学の実現に向けて、開学準備に万全を期すよう強く望みます。
 都は先般、東京の産業を活性化する意欲と能力を持つ人材を輩出するため、大学改革の一環として、平成十八年度に産業技術大学院を開学することを明らかにしました。
 我が党は、首都東京が将来にわたって発展していくためには、人材の育成こそが不可欠であり、とりわけ産業の活性化に寄与し得る人材を育てていくことが今こそ求められていると主張してきました。
 そこで、産業技術大学院における東京の産業活性化に向けて育成する人材像と、そのための取り組みについて所見を伺います。
 
答弁1
 ▼大学管理本部長
 産業技術大学院についてでございますが、現在、産業界におきましては、高度なIT技術を持った人材の不足が深刻化しております。また、東京の中小企業が持っている高度な技術を的確、迅速に製品化に結びつけることのできる人材の確保が、アジア諸国との厳しい競争の中にあって急務となっております。
 平成十八年に開設を予定しております産業技術大学院は、こうした産業界のニーズにこたえられる高度な開発力、企画力を備えた人材を育成し、東京の産業力の向上に寄与することを目的とする専門職大学院でございます。
 したがいまして、企業の現場で活躍している実務家を教員に招きまして、実際に現場で生じている具体的課題を取り上げ、それを解決することを通じまして技術や知識を体得させていくといった、一般の大学院ではできない実践的な教育に取り組んでまいります。
 

 
質問2
 先般、都は、産業技術大学院の開学にあわせ、二つの高専を統合再編して専攻科を設け、産業技術大学院も視野に入れた、九年間の一貫した体系的な技術者教育を実現させていくことを明らかにしました。このための取り組みと、より高度な専門性を持つ人材の育成という点でどのような期待ができるのか、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼教育長
 産業技術大学院を視野に入れた一貫した技術者教育についてでございますが、都立高等専門学校は、現在、法令の規定によりまして、教育委員会の所管となっております。
 このため、産業技術大学院との一体的な運営を行っていくことができますよう、構造改革特区提案を行うなど、都立高等専門学校を、都教育委員会から、来年四月設立予定の公立大学法人、首都大学東京に移管する準備を進めております。
 また、人材育成の観点からは、近年の国際競争の激化、産業の空洞化に対応するため、付加価値の高い製品を生み出すことができる開発型人材の育成が求められておりますことから、十六歳という若い世代から産業技術大学院を視野に入れた体系的な技術教育を行うことによりまして、企業が求める応用力と創造力を兼ね備えた高度専門技術者を育成してまいります。
 

 
質問3
 東京における産業活性化のためには、人材の育成のみならず、先端技術の研究活用もまた重要であります。東京の発展を支える新たな産業への支援が重点事業としても選定されておりますが、中でもナノテクノロジーは、情報通信、環境、医療など多くの産業において利用が期待される技術であり、中小企業が行うナノテクノロジーに関する技術開発や製品開発への支援は、将来にわたって東京の産業力を高めていく上で大きな意義があります。
 我が党も本年六月、最先端技術ナノテクノロジー推進議員連盟を立ち上げ、中小企業の技術開発などの取り組みを後押ししてきたところです。
 大田区の城南地域中小企業振興センターに、来年二月、ナノテクノロジーセンターの開設が予定されていますが、都は具体的にどのような事業を展開するつもりか、お伺いいたします。
 新大学と企業、そして行政が相互に密接な連携を図りつつ産業の活性化を図っていくことが今こそ求められています。そのためにも、首都大学東京においては、今後、東京のシンクタンクとしてその機能を十分に発揮していくよう要望しておきます。
 
答弁3
 ▼大学管理本部長
 いわゆるナノテクは、今後有力な成長分野であるとともに、さまざまな産業の基盤となる技術でございまして、東京の産業力強化にとって不可欠なものでございます。産業界の関心も高く、既に意欲的な七十六社がナノテク事業化協議会に参加している状況にございます。
 来年二月の開設を予定しておりますナノテクセンターにおきましては、中小企業、都立産業技術研究所、大学等による共同研究を推進するとともに、最新の機器を設置して中小企業に開放し、技術指導や技術相談を行ってまいります。
 こうした取り組みを通じまして、ナノテクセンターをナノテク分野における産学公連携、企業間連携の拠点といたしまして、中小企業の技術力の向上を図り、東京の産業を活性化してまいります。
 
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■都市基盤整備
 
質問1
 大橋地区再開発事業ですが、首都圏三環状道路の整備は、東京の活力や国際競争力を高めるなど、首都東京を再生する上で不可欠です。とりわけ整備の進んでいる中央環状線は、この十一月に最後に残った区間である品川線の都市計画決定を行うなど、全線開通に向け大きく動き出そうとしています。
 目黒区大橋地区には、この中央環状線と放射方向の首都高速三号線とを結ぶ大橋ジャンクションが予定されています。このジャンクション整備と再開発事業とはどのように関連するのか、お伺いします。
 首都圏の交通事情をかんがみますと、三環状の早期開業は都民の悲願であります。特に、現在工事中の中央環状新宿線の一刻も早い開業が期待されており、再開発事業も早期に進める必要があると考えます。
 そこで、再開発事業の具体化に向けてどのような取り組みをしているのか、お伺いします。
 
答弁1
 ▼都市整備局長
 大橋地区再開発事業に関する二点のご質問にお答えいたします。
 まず、大橋ジャンクション整備と再開発事業との関連についてでございますが、首都高速中央環状線の大橋ジャンクションは、事業中の新宿線、東名高速とつながる三号線及び品川線と接続するなど、高速道路ネットワークの形成を図る上で極めて重要な施設でございます。
 本ジャンクションは、地域のまちづくりに大きくかかわることから、その整備に当たりましては、定住性の確保はもとより、周辺環境に配慮したにぎわいのあるまちをあわせて実現していく必要があります。このため、周辺のまちづくりを、土地の高度利用を図りながら、都施行の再開発事業で行うことといたしました。
 次に、再開発事業の具体化に向けた取り組みについてでございますが、大橋地区再開発事業は、その進捗が中央環状新宿線に大きな影響を与えることから、早期事業化が何よりも重要であります。
 このため、地権者などと精力的に話し合いを行い、コンピューターグラフィックスなどを積極的に活用いたしまして、新しいまちのイメージを具体的に提案しながら、再開発の事業計画案を作成してまいりました。
 今後は、国に事業認可申請を行うなど、事業着手に向けた手続を迅速に進め、ジャンクション整備と一体となった大橋地区のまちづくりの早期実現に努めてまいります。
 

 
質問2
 交差点すいすいプランですが、国土交通省の調査によると、都の交通渋滞による損失時間は全国一位となっており、都内の慢性的な交通渋滞は、都民の日常生活、生活環境、産業活動にはかり知れない悪影響を及ぼしています。
 現在、多摩地域を中心に実施している交差点すいすいプラン一〇〇は、渋滞緩和や交通安全を図るもので、完成した箇所では渋滞が大幅に緩和されるなど、大きな効果が明らかになっています。
 本プランでは、平成六年度から十カ年を経過した平成十五年度末で七十三カ所が完成または一部完成しており、都民からの高い評価を得ております。しかし、多摩地域においては、いまだ多くの渋滞交差点があり、その改善が急務であります。現行プランで事業が完了しない箇所について対応をどうされるのか、所見を伺います。
 また、現在策定中の次期プランでは、整備規模や計画期間をどの程度にするのか、お伺いします。
 
答弁2
 ▼建設局長
 交差点すいすいプラン一〇〇についてでございますが、すいすいプランは、比較的短期間に少額の投資で、交通渋滞の緩和、交通事故の防止、沿道環境の改善に大きな効果を上げております。平成十六年度末で八十三カ所が完成または一部完成する予定でございます。
 現行プランは、平成十七年度を最終年度として事業を進めておりますが、期間内に完了しない箇所につきましては、基本的に次期プランに組み入れ、引き続き早期の完成を目指してまいります。
 次に、次期プランの整備規模と計画期間についてでございますが、次期プランは、これまでの実績や他事業との連携など路線全体の効果を重視し、現在、中間のまとめを公表し、都民の意見を聞きながら計画策定を進めております。その規模は、現行プランと同程度のおおむね百カ所、計画期間は十カ年と考えております。
 多摩地域の渋滞対策につきましては、交差点すいすいプランの着実な推進に加え、道路ネットワークの整備や連続立体交差事業など、総合的に取り組んでまいります。
 

 
質問3
 治水事業の効果と今後の取り組みについて伺います。
 東京でも、ことしは、二つの台風が来襲するなど、一時間に五〇ミリを超える豪雨が五回ありましたが、これまでにたびたび水害が発生していた神田川や目黒川、空堀川などでは、幸いにして大規模な浸水被害は発生しませんでした。これは、中小河川の護岸整備や調節池の整備など、都がこれまで取り組んできた治水事業の成果であります。
 そこで、まず、これまで整備してきた治水施設の具体的な効果について伺います。
 一方で、都心部の港区を流れる古川では、ことしも二度の台風により、明治通りや地下鉄南北線麻布十番駅が冠水するなどの被害が発生しました。
 そこで、今後、都内中小河川の整備にどのように取り組んでいくのか、所見を伺います。
 
答弁3
 ▼建設局長
 治水施設の具体的な効果についてでございますが、ことしの台風におきまして、神田川や目黒川などでは、河道拡幅の進展に加え、環状七号線地下調節池や荏原調節池などの整備により、幸いにして河川からの洪水被害を免れました。
 特に神田川では、台風二十二号において、これと同程度の豪雨であった平成五年の台風十一号と比較して、浸水の被害を受けた家屋は三千棟から十棟程度に激減いたしました。これは、環状七号線地下調節池が一時的に洪水を貯留し、治水機能を最大限に発揮したことによるものでございます。
 中小河川整備の取り組みについてでございますが、都は、水害から都民の生命と財産を守るため、現在、市街化が著しく進展し、水害の危険性が高い石神井川や空堀川など十六河川で、重点的に河道の拡幅を実施するとともに、第二期環状七号線地下調節池などの整備を進めております。
 また、都心部の古川は、川沿いに高速道路の橋脚やビルが建ち並び、拡幅が困難なことから、早期の水害軽減に効果的な地下調節池の整備に係る基本的な調査検討を行っております。
 今後とも、財源の確保に努め、重点的かつ効率的に中小河川の整備を進めてまいります。
 

 
質問4
 海の森の構想について伺います。
 先月下旬、中央防波堤内側海の森構想中間のまとめが報告されました。我が党はかねてより、この構想に対し、広大な空間を活用して豊かな森をつくることや、都民とともに植樹をしていくこと、また、それが次の世代へのプレゼントとなるものであることなどを主張し、応援をしてきました。これが実現すれば、面積約八十八ヘクタールの区部最大級の公園となり、都民に憩いと潤いを与える貴重な財産となります。
 こうした大規模な森をつくるに当たっては、都民を初め企業やNPOなど幅広い主体へ積極的にPRを行い、これらの人々に具体的に参加してもらうことが必要です。特に、企業の社会的責任が問われている今日、社会貢献活動に積極的に取り組もうとする企業、団体などにとって、この事業は格好の受け皿となります。
 そこで、こうした民間企業や団体などに対し、今後、理解と協力を得て整備すべきと考えますが、所見を伺います。
 第二回定例会の代表質問において、我が党は、森になるまでに長い年月がかかるからこそ、早期にドングリから苗木にし、それを植えるべきだと主張しました。
 この計画地では、天皇皇后両陛下の行幸啓を仰ぎ、平成八年に全国植樹祭を催し、天皇陛下の御製「埋立てし 島に来たりて 我が妹と いてふの雄木と 雌木植ゑにけり」を賜りました。既に両陛下お手植えの植樹地が整い、今回の構想を受けて、一日でも早い取り組みが望まれるものであります。
 そこで、改めて今後のスケジュールと具体的な取り組みについてお伺いします。
 
答弁4
 ▼港湾局長
 海の森構想についての二点のご質問にお答えいたします。
 まず、海の森構想における企業等の協力についてでありますが、お話しのように、都民はもとより企業などに対して、海の森の事業についての理解と協力を得て、連携して事業を進めていくことは、この構想の大きな柱でございます。
 その一つの試みとして、この秋に、民間団体などの協力を得て、海の森に植樹する苗木を育てるため、小学校でドングリからの苗木づくりを始めたところでございます。
 現在、海上公園は、都民や地元企業の参加を得て、砂浜の清掃を行うなどの社会貢献活動の場ともなっております。
 今後、こうした実績を生かしまして、海の森づくりにおける民間との連携の仕組みを構築しながら、経済団体や個別企業等に対し、積極的な参加を働きかけてまいります。
 次に、海の森構想の今後のスケジュールと具体的な取り組みについてでございますが、現在、中間のまとめにつきまして都民意見を募集しているところであり、今年度末の最終答申に反映させてまいります。これを踏まえて、来年度は基本計画を策定し、その後、三十年にわたり段階的に整備を進めてまいります。
 これと並行しまして、土壌改良のための剪定した枝葉のリサイクルや、ドングリからの苗木づくりなどを行い、できるだけ早期の植樹に向け、着実に取り組んでまいります。
 また、森づくりの過程で利用者等の意見も聞きながら、暫定的な利用も図ってまいります。
 

 
質問5
 東京の基盤整備を担う中小建設業への発注にかかわる入札・契約制度について伺います。
 先般の国会において、我が党の公共工事品質確保に関する議員連盟で検討を進めてきた公共工事の品質確保の促進に関する法律が上程され、来年には成立するものと見込まれています。これは、公共工事の質を向上させるために、従来の価格面だけの競争から、価格と品質の両面で総合的にすぐれた調達へ転換を図るものです。
 都議会においても、我が党はこれまで、くじ引き落札や不良不適格企業の問題をたびたび取り上げ、指摘してまいりました。都は、その対策として、価格だけでなく技術力などもあわせて評価する総合評価の新たな契約手法の取り組みを表明しております。
 そこで、都が検討を進めている新たな総合評価の契約手法について、その内容と今後の実施予定についてお伺いいたします。
 
答弁5
 ▼財務局長
 公共工事の発注におきましては、価格だけでなく品質の確保を図ることが極めて重要であり、通常の最低価格による自動落札方式ではなく、技術力もあわせて評価する簡易な総合評価方式について、現在、具体的な検討を進めているところでございます。
 この方式の実施に当たりましては、価格とあわせまして、入札参加者の施工能力を示す過去の工事実績や、配置予定技術者の資格、経験等を評価対象とする方向で検討しておりまして、このことにより、安定した品質の確保や、不良、不適格企業の排除に効果が期待できるものと考えております。
 今後、本年度中に検討結果を取りまとめまして、試行を開始し、平成十七年度以降、本格実施に向けて鋭意取り組んでいく予定でございます。
 
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■福祉・医療施策
 
質問1
 次世代育成支援対策について伺います。
 我が国は、少子化の進行という国家の存亡にかかわる危機的な状況に直面しています。とりわけ東京においては、合計特殊出生率がついに一・〇を割り込み、少子化現象が先鋭的にあらわれています。
 我が党は、このような事態にかんがみ、働きながら育児を行うなど、すべての子育て家庭に対する支援の充実に加え、総合的な次世代の育成支援について社会全体で取り組むべきと主張してまいりました。
 こうした中にあって、都は、平成十七年度の新規事業として、次世代育成支援のための都独自の総合的な補助制度を検討しているとのことであります。このことは、我が党の主張を踏まえて積極的に取り組む姿勢が示されたものであり、高く評価いたします。
 都はこれまでも、石原知事のもと、東京から日本を変える政策を次々に打ち出し、大きな成果を上げてきました。この次世代育成という国家的命題に対しても、都が先導的な役割を果たすべきであります。
 また、来年度は、次世代育成支援対策推進法に基づく地域行動計画の初年度にも当たっております。
 そこで、改めて、本制度の考え方及び具体的な検討内容についてお伺いいたします。
 
答弁1
 ▼福祉保健局長
 次世代育成支援緊急対策総合補助制度についてでありますが、次代を担う子どもたちが、個性を生かし、想像力を培いながら、健全に成長することができる環境を整備することは、親はもとより、私たち大人に課せられた責務であり、社会全体の課題であります。
 本制度は、こうした観点から、区市町村が、これまでの取り組みに加え、次世代育成のための基盤を緊急に整備できるよう、都独自の総合的な支援策として検討しているものであります。
 具体的には、すべての子育て家庭に対する支援を基本に据え、子ども施設の安全・安心の実現や子どもたちの居場所づくりなどを考えております。
 

 
質問2
 一方、次代を担う子どもを健やかに育てていくためには、児童虐待や少年非行等の問題に早急に対応していく必要があります。現在、子どもの問題に対する専門相談機関として、児童相談所、保健所、教育相談センター、少年センター等があり、それぞれ一定の連携のもとに専門的な見地から対応しております。
 この児童虐待などの問題については、まず、住民に身近な区市町村がこうした専門相談機関の支援を受けながら積極的に対応し、困難事例については、専門相談機関同士が一体となって取り組むことが極めて重要であります。また、子どもに適切な支援を行っていくと同時に、親に対する支援や指導など、総合的な支援を強化していかなければなりません。
 今回、平成十七年度の重点事業として、設置に向けた検討を行っていくこととされた子ども家庭総合センターは、支援の核となるべき拠点として期待を寄せるものです。
 そこで、この子ども家庭総合センターは、具体的にどのような役割、機能を担っていく考えなのか、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼福祉保健局長
 子ども家庭総合センターの役割及び機能についてでありますが、家庭や地域の養育力が低下する中、虐待、非行などの問題は複雑、深刻化しております。問題の解決を図るためには、福祉保健医療、教育などの専門相談機関が一体となって、子どものみならず、親も含めた家庭に着目した総合的な支援を強化していく必要があります。
 そのため、都においては、虐待や非行に関する専門相談機関から成るチームが行う子どもと家庭に対する総合的かつ効果的な支援、及び虐待などにより分離した家族の再統合への専門的な支援などの機能を持つ、仮称子ども家庭総合センターの設置に向けて準備を進めてまいります。
 

 
質問3
 また、現在、児童虐待と並んで深刻化している少年非行についても、児童相談所における相談実態等を広く都民に明らかにしていくことが必要であると考えますが、所見を伺います。
 
答弁3
 ▼福祉保健局長
 非行児童の相談実態についてでありますが、児童の非行は、本人自身の問題だけではなく、家庭における不適切な養育や、社会全体の規範意識の低下などが相まって生じているものと認識しております。
 非行児童に対する有効な立ち直り支援策を講ずるためには、非行に走った原因、家庭の状況などを詳しく分析、検証を行い、実態を明らかにすることが必要であります。このため、ご提言も踏まえ、都内のすべての児童相談所と児童自立支援施設における非行相談事例の現状と課題を取りまとめ、その結果を来年の早い時期に公表し、今後の非行児童の自立支援の取り組みに生かしてまいります。
 

 
質問4
 都立病院における専門医の育成について伺います。
 近年、過疎地域を中心に、全国の公立病院では深刻な医師不足に陥っております。とりわけ小児科や産婦人科では、医師の過酷な勤務によって小児救急や周産期医療を支えている実態があります。
 多摩地域の公立病院においても、小児科、産婦人科、精神科、麻酔科などの医療分野では、医師の確保に大変苦慮しております。現状では、地域的にも、また専門分野によっても、医師の充足状況にかなりの偏りがありますが、国は楽観視しており、専門医養成の具体的な取り組みは立ちおくれているといわざるを得ません。
 現在、都立病院は、行政が主に担うべき医療課題に着目し、小児総合医療センター、がん・感染症医療センター、精神医療センターなどの再編整備を進めています。国の動きが立ちおくれている中、都が、都立病院改革を契機として、率先して地域に不足する専門医の育成を図るため必要な努力を惜しむべきでないと指摘しておきます。
 そこで、まず、都立病院の臨床現場を活用して、専門性の高い臨床医を体系的に育成すべきと考えますが、現在の取り組み状況と今後の方針についてお伺いいたします。
 
答弁4
 ▼病院経営本部長
 都立病院における専門医の育成についてでございますが、都立病院では、これまで、若手臨床研修医の受け入れを初め、都立病院独自の施策として、一定の臨床経験を有する医師を対象とし、救急、小児、精神などの各専門分野における専門研修医の育成に取り組んでまいりました。
 今後は、こうした臨床研修制度をより体系的に整備、拡充いたしまして、高度な専門知識と診療能力を有し、患者中心の医療を実践できる専門医の育成に力を入れてまいります。
 

 
質問5
 また、将来は、都立病院で育成した医師を多摩地域の公立病院へ派遣するなど、いわば都立病院が一つの医局として機能するような仕組みをつくってはどうかと考えますが、見解をお伺いいたします。
 
答弁5
 ▼病院経営本部長
 都立病院で育成をいたしました医師の派遣についてでございますが、経験豊かな指導医のもとで多様な症例を数多く経験できるという都立病院のメリットを生かしまして、若手の医師を幅広く募集し、優秀な専門医として育成、供給することを通じまして、都立病院といたしましても、多摩地域の公立病院の人材の確保に積極的に貢献をしてまいります。
 
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■個人情報保護条例
 
質問1
 今回の条例改正の大きなポイントは、一つは、公安委員会及び警視総監が条例の実施機関となることであり、二つには、都が都内民間事業者の個人情報の取り扱いについて指導等を行うようになることです。
 公安委員会、警視総監が条例の実施機関に加わると、都の行政機関のすべてが条例の適用を受けることとなり、都における個人情報保護の実効性がより高まることを期待するものです。
 民間事業者については、おれおれ詐欺の頻発に見られるように、個人情報の悪用に対する都民の不安は大きなものがあります。来年四月からは個人情報保護法が施行され、民間事業者は個人情報保護の義務を負います。しかし、個人情報が五千人以下の小規模事業者については法の適用がなく、条例による支援や指導が必要なわけであり、今回の条例改正は、この点で重要な意義があります。
 では、都内の民間事業者、特に小規模事業者が個人情報を保護し、適切に管理していくために、都は具体的にどのような取り組みを行っているのか、お伺いします。
 
答弁1
 ▼生活文化局長
 民間事業者の個人情報保護に対する都の取り組みについてでございますが、取り扱う個人情報が五千人以下の中小事業者については法の適用がありません。個人情報の適正な取り扱いを確保できるよう、都が指導を行っていく必要がございます。
 このため、都では、これまで、都内の事業者団体を訪問し、個人情報保護についての認識や意見、取り組み状況の把握を行いました。その結果、具体的な対応に悩む中小事業者が多いことから、その実態や要望を踏まえまして、個人情報を適正に取り扱う具体的方法を示した標準的な指針を策定しまして、広く周知を図るとともに、個別相談に応じるなど、きめ細かな対応をしてまいります。
 また、不適正な取り扱いが生じた場合には、今回、条例の改正によりまして、都が助言、指導、勧告などを行えることといたしまして、個人情報取り扱いの適正化を図ってまいります。
 
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■特別支援教育推進計画
 
質問1
 次に、教育関係について伺います。
 十一月に東京都特別支援教育推進計画が示されました。この計画は、心身障害教育の歴史において初めての大きな改革ともいえるものです。この計画全体を見ると、東京都の心身障害教育がこれまで抱えてきたさまざまな課題に抜本的、総合的な改善を図り、ノーマライゼーション社会の進展に寄与することを目的とした姿勢がよくわかります。
 今回の計画は、ろう学校や寄宿舎の再編整備に対する我が党の主張や、都民、学校関係者等の意見が具体的に取り入れられております。
 例えば、知的障害が軽い生徒を対象とした養護学校高等部の職業学科では、一〇〇%の企業就労を目指すとされています。計画の推進に当たり、この新たに設置する知的障害養護学校高等部が期待された成果を上げるためには、きめ細かな施策の展開が必要と考えます。見解を伺います。
 
答弁1
 ▼教育長
 新たに設置します養護学校高等部についてでございますが、特別支援教育推進計画の第一次実施計画におきまして、知的障害が軽い生徒を対象とした職業的自立を目指した養護学校高等部を三校設置してまいりますが、この新たな養護学校高等部の設置に当たっては、既に二校に設置されている職業学科の実績を生かし、新たな教育課程を開発、実践しますとともに、インターンシップの活用、充実など、将来の職業的自立に向けた専門的な教育を行っていきますとともに、就労促進や職業定着を目的とした学校版ジョブコーチ制度の導入を検討するなど、職業教育の充実と就労支援が一体となった施策を展開してまいります。
 

 
質問2
 知的障害の軽い生徒に対する支援も重要ですが、従来からの養護学校を卒業した生徒それぞれの就労への支援も必要があると思います。新たなタイプの学校による職業教育の充実のほか、公助に依存していたこれまでの考え方から脱却し、公助、共助、自助のバランスのとれた施策を推進するためには、地域の知的障害の児童生徒を受け入れている従来からの養護学校においても、自立に向けた職業教育の充実が必要と考えますが、見解を伺います。
 
答弁2
 ▼教育長
 既存の知的障害養護学校におきます職業教育の充実についてですが、ご指摘のように、障害のある生徒の社会参加や自立に向け、従来からある養護学校におきましても、職業教育の充実を図ることは重要でございますので、既存の知的障害養護学校におきましても、学齢期から社会参加期への円滑な移行支援を目指します個別移行支援計画の充実や、福祉、労働との連携による就労支援などを行いますとともに、小学部から高等部までの十二年間の一貫性のある教育内容、方法の充実のあり方の検討や、企業等の専門家を講師として活用するなど、職業教育の一層の充実を図ってまいります。
 

 
質問3
 障害者が企業就労を目指すには、雇用や福祉などの施策との関連も大きいと思いますが、これまで、それぞれの障害者施策が縦割り的に行われてきた傾向が見受けられました。こうした生徒の社会参加や自立に向けた施策の実施に当たっては、東京都の関係機関の相互の連携が欠かせないと思います。見解を伺います。
 
答弁3
 ▼教育長
 障害のある生徒の社会参加や自立に向けた関係機関の相互の連携についてですが、障害のある児童生徒に対する、個に応じた教育内容、方法を充実するためには、保健、医療、福祉、労働等の関係機関や専門家との連携を一層推進する必要がございます。
 このため、平成十六年度中に関係者間の調整を行い、十七年度に教育庁と関係局等によります協議会を設置をして、就労支援を初め、障害のある児童生徒の乳幼児期から学校卒業後までのライフステージに応じた効果的な支援を行うなど、相互の連携を図ってまいります。
 
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■国民体育大会
 
質問1
 来年二月に東京都で初めてアイスホッケー国体が開催されることになり、国体に対する都民の関心も徐々に高まってきています。平成二十五年に開催を予定している東京国体は、多摩・島しょの地域振興に係る大会として、その招致が都議会で決議されております。この趣旨を生かした国体として計画されていくものと、我が党は期待しています。
 この東京国体も開催まであと九年となりました。既に国体を開催した県の例では、国体の準備組織を立ち上げ、会場地となる区市町村の選定などの準備を開始する時期と聞いています。東京においても、速やかに開催に向けた準備を進めるべきと考えますが、所見を伺います。
 
答弁1
 ▼教育長
 国民体育大会の開催についてですが、都としては、多摩・島しょと区部の多様な地域特性を生かしながら、議会における招致決議や都民の期待、さらには昨今取り組まれている国体改革の動向を踏まえて、多摩・島しょ地区を中心とした魅力ある国体を目指してまいります。
 今後、国体の開催に向け、関係部局や区市町村による検討組織を設置しまして、区市町村や競技団体の意向を調整し、会場地などを選定しますとともに、開催基本構想の検討を行ってまいります。
 また、平成十九年には、都議会や区市町村、経済界、市民団体など、各界各層の方々による東京国体準備委員会を設立しまして、開催の具体的な取り組みを決定していく予定でございます。
 

 
質問2
 開催に当たっては、首都東京にふさわしい国体として、単なるスポーツの祭典に終わらせることなく、多摩・島しょ地域の発展にもつながるようなものとするべきです。そのためには、運営内容はもとより、都を初め会場地となる区市町村とも連携を図り、万全の体制で臨むことが重要であると考えますが、所見を伺います。
 
答弁2
 ▼教育長
 国体開催の目的とそれに向けた区市町村との連携についてですが、お話のように、都としましても、東京、とりわけ多摩・島しょ地域の持つ産業や観光資源などの魅力を全国に十分アピールして、これら地域の発展に資する大会とすることが重要でありますことから、都と区市町村が密接に連携することが不可欠でございます。
 都としましては、各種目ごとに開催される競技会の会場や宿泊などの準備の主体になる区市町村との連絡調整が円滑に進むよう、連絡会議を設置をしまして、大会に向けた合意形成を図りながら、開催準備に万全を期してまいります。
 
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■私立専門学校の振興
 
質問1
 教育問題の最後に、留学生対策など、私立専門学校の振興に向けた施策のあり方について伺います。
 去る十一月二十四日、都は、治安対策の一環として、留学生、就学生の違法活動防止のための学校調査結果を発表しました。現在、都内には、五万人を超える留学生や就学生が大学や日本語学校で学んでいると聞いています。しかし、一部の報道では専門学校だけが取り上げられたため、専門学校全体が悪印象を持たれてしまった嫌いもあります。治安対策も大事であり、それを進めるとともに、留学生の受け入れを適正に行っている学校や、まじめに勉学に励んでいる学生たちに対しては、さらに頑張っていただけるように、側面から何らかの応援をしていくべきではないかと思いますが、所見を伺います。
 
答弁1
 ▼生活文化局長
 留学生対策など、私立専門学校の振興についてでございますが、今回の調査は、留学生、就学生の違法活動防止のための学校調査でございまして、都が先鞭をつけることで全国に波及させていこうとしたものでございます。
 お尋ねの私立専門学校の振興策につきましては、現在、都の重点事業として、留学生などが在籍する学校に対する相談窓口の設置を行っておりますが、今後とも、多言語による留学生などの生活マニュアルの作成、学校関係者に対する研修内容を充実するなど、ご指摘の点を踏まえまして、留学生等が安心して生活できる環境づくりに努めてまいります。
 

 
 以上で質問は終わりますが、本日は、昭和十六年の大東亜戦争における日米開戦の日に当たり、また、日露戦争開戦から百年目に当たります。司馬遼太郎氏の小説「坂の上の雲」に、極東の小国日本が大国ロシアとの戦いに勝利するまでの道のりが描かれております。そこで登場する人々は、日本という国の国づくりに夢と志を抱き、我が身を燃焼させた、凛とした背骨を持つ美しい日本人であります。
 さて、百年の時を経て、今の日本はどうでしょうか。戦後、奇跡の経済復興を遂げ、世界で最も豊かな国の一つとなり、ある意味で坂の上の雲をつかみましたが、同時に多くのものを失いました。犯罪の激増や企業の不祥事、また、権利を主張するばかりで義務と責任を顧みない風潮や助け合う精神の希薄化に、強い危機感を感じないわけにはまいりません。
 都政がこれらの社会的風潮を正し、東京と日本が再生できる施策を全力で推進されることを強く要望します。
 そして、我が東京都議会自由民主党は、責任政党として、改めて凛とした背骨を持つ美しい日本人の姿を思い起こし、東京と日本の再生に全力を尽くすことをお誓い申し上げ、質問を終わります。
 
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