平成15年度公営企業会計決算特別委員会 総括質疑

吉野 利明(自民党)
■都営交通の安全対策
 
 ▼吉野委員
 都は現在、第二次財政再建推進プランに基づき、財政の構造改革に努めておりますが、財政再建がいまだ達成できていないというのは紛れもない事実であります。景気は回復基調にあり、都税収入も増額となることが期待されてはおりますが、将来にわたって都民の必要とするサービスを安定的に提供するためには、執行体制の見直しなどの行財政改革に取り組み、施策展開の基盤を確固たるものにしていかなければならないのはいうまでもありません。
 このことはもちろん公営企業においても例外ではありません。公営企業の経営改革は、都政の構造改革の中でも大きなウエートを占めております。都民の日々の生活に不可欠なサービスを安定的に、そして効率よく提供するためにも、経営感覚を最大限に発揮しながら、常に自己改革を行うことが重要であるということを改めて強調して、質問に入りたいと思います。
 まず、東京都交通事業会計などにおける都営交通の安全対策について何点か伺います。
 去る十月二十三日に発生した直下型の新潟県中越地震は、先月末現在で、死者三十六人、負傷者二千人を超える大きな被害をもたらしました。亡くなられた方々のご冥福をお祈りするとともに、被災地域の一刻も早い復興を願い、都もできる限りの支援を行うべきと考えております。
 さて、この震災で我々を驚かせたのは、時速二百キロで走行していた新幹線が脱線し、大きく傾きながら約一・六キロも走行したことであります。けが人がいなかったことは不幸中の幸いでしたが、新幹線の脱線は過去に例がなく、まかり間違えば大惨事につながりかねない状況であったと思われます。
 その原因究明には時間がかかるようですが、新幹線も、平成七年一月に発生した阪神・淡路大震災を教訓に、柱の補強などの対策がとられてきました。また、この阪神・淡路大震災では、地震に強いといわれてきた地下鉄も駅舎、トンネルに被害を受けたため、国の耐震基準が変更になり、補強工事などが行われてきたと聞いております。
 そこで、阪神・淡路大震災を教訓に、都営地下鉄では耐震補強工事などに取り組んでこられたわけですが、これまでどのような対策を講じてきたのか、改めて確認をしたいと思います。
 
 ▼交通局長
 阪神・淡路大震災を契機として出されました平成七年八月の国の通達に基づきまして、交通局では、震度七程度の地震に対応できるよう、耐震補強が必要な地下鉄施設を対象に工事を実施いたしました。
 具体的には、平成七年度から、新宿線の神保町駅など地下八駅の三百一本の中柱、それから、三田線などにおきまして三百十五本の高架部橋脚の補強を行うとともに、荒川・中川橋梁など十七カ所の落橋防止工事を行っておりまして、平成十三年度までにすべて完了しております。
 
 ▼吉野委員
 今お答えいただきましたように、ハード面の対策を講じましても、今回のような直下型の地震に対しては万全とはいえないのではないかという声が上がっております。上越新幹線の場合は、幸いにも横転せず、脱線だけで済んだわけですけれども、高速走行中の列車が被災すると被害が甚大なものになる可能性は大いにあります。
 そこで、たとえ直下型地震によって脱線等が起きたとしても、被害を最小限にとどめるためのソフト面での対策が重要になってきます。
 地震発生時は、運転中の乗務員は揺れに直ちに気づきにくいと思いますが、その際には、情報を乗務員に速やかに伝え、乗務員が適切な措置を直ちにとれるようにする必要があります。
 また、地下鉄の場合、暗いトンネルの中で脱線等が発生すると、乗客はパニックに陥る危険性が大いにあります。特に大江戸線など、最近完成した地下鉄は地中深くを走るため、いざというときに迅速に避難ができるのかという心配もあると思われます。正確な情報伝達や迅速な避難誘導など、的確な対応が求められます。
 そこで、都営地下鉄では、大規模な震災を想定した実践的な訓練を実施していく必要があると思いますが、所見を伺います。
 
 ▼交通局長
 都営地下鉄におきましては、毎年、列車の脱線などを想定した異常時総合訓練、水害等を想定した自然災害訓練、それから、各駅ごとの避難誘導マニュアルに基づいた自衛消防訓練、警察、消防と連携した避難誘導訓練などを行っております。また、東京都総合防災訓練にも参加いたしまして、減速運転訓練、お客様の避難誘導訓練などを実施しております。
 今後とも、ご指摘のとおり、実践的な訓練をより重ねることによりまして、お客様の安全確保に一層努めてまいりたいと考えております。
 
 ▼吉野委員
 ぜひ今後とも、訓練を積み重ね、いざというときに備えていただきたいと思います。
 さて、こうした地震だけではなく、先月の台風による水害や、昨年二月の韓国大邱市での地下鉄火災、あるいはテロなど、都民生活の安全・安心を確保する上でさまざまな課題が存在します。
 特にテロについては、ことし三月にスペインの首都マドリードで列車爆破テロ事件が起きてから半年以上が経過しましたが、東京も依然、アルカイダなど国際テロ組織の標的となっているといわれております。地下鉄やバスも、乗客の安全を守るため、日ごろからこうしたテロに備えておく必要があります。仮に地下鉄で、爆発物やいわゆるNBC、すなわち核物質や生物剤、化学剤によるテロが発生した場合には深刻な被害が出ることが確実であります。このようなテロに備えて、マニュアルづくりや、乗務員や関係者に対する訓練などを行うとともに、警察や消防など、関係機関との連携を一層強化する必要があります。
 テロに備えた訓練としては、ことしの一月に、江戸川区の葛西臨海公園でバスジャックを想定した訓練が行われたところであります。そこで、お聞きしますが、このバスのテロ訓練を通してどのような課題が明らかになったのか、それをその後の対策にどのように生かしてきたのでしょうか。
 
 ▼交通局長
 今回の訓練を通じて明らかになりましたことは、事件が起こったときの正確な情報の早期収集と、これをもとにした警察、消防との連携確保、マニュアルの習熟、並びに実際の現場を想定したより実践的な訓練の必要性であります。
 このため、訓練終了後、連絡体制の整備強化を図るとともに、全自動車営業所において、訓練内容を録画したビデオ等により研修を実施し、職員の危機管理意識の向上を図ったところであります。
 これらを踏まえまして、本年の十一月二十五日には、東京消防庁と連携した大規模事故を想定した訓練を予定しておりまして、危機管理への対応を一層推進してまいります。
 
 ▼吉野委員
 バスの訓練の状況などについては大体わかりましたが、地下鉄でも、駅や車内の警戒などを強化するとともに、ことしの春から夏にかけて、都庁前駅を初め十駅で、NBCや爆発物等の不審物に関する災害訓練を行ったと聞いております。今後とも、こうした訓練を積み重ねるとともに、地下を走る地下鉄の特性を踏まえ、より厳重な安全管理、危機管理をハード、ソフト両面にわたり講じていただきたいと思います。
 また、このような震災やテロなどの非常時にはどのような対応をとるかをあらかじめ利用者によく周知しておくことも、安心して都営交通を利用してもらう上で必要だと思います。その際には、交通事業者みずからの責任、ある意味での公助はもとより、みずからの生命はみずからが守るという自助や、乗客同士が助け合う共助の考え方も踏まえ、非常時対応の方策を確立するべきであると思います。
 そこで、都営交通の非常時の対策などについて、都民や利用者に対するPRを一層強化していくことが必要と考えますが、所見を伺います。
 
 ▼交通局長
 都営交通におきましては、非常の際にお客様に落ち着いて速やかに避難していただけるよう、駅の大型避難経路図の設置や誘導標識の改良、増設、それから、地元警察、消防と連携した沿線住民の参加による避難誘導訓練や、バスのテロを想定した訓練などを実施いたしますとともに、こうした取り組みをホームページやポスター、広報誌を通じて周知してきたところでございます。
 今後とも、非常時対策のPRにつきまして、より一層工夫いたしまして、万全を期してまいりたいと考えます。
 
 ▼吉野委員
 さまざまな状況を想定した対策をとる上で、何かと難しい課題も多いと思いますが、安全こそが最大のサービスであり、地下鉄やバスなどの都営交通では、今後とも、それを最優先に取り組んでいただくようお願いをしておきます。
 
▲ページのトップへ
■卸売市場整備計画
 
 ▼吉野委員
 卸売市場整備計画についてですが、我が国の生鮮食料品流通は大部分が卸売市場を経由しており、卸売市場の果たしている役割は極めて大きいものがあります。とりわけ東京都内の卸売市場は、小売商やスーパー等の店頭を通じて都民の台所を支えるのみならず、外食産業や総菜の原材料、また病院その他の給食施設における食材の供給など、さまざまな形で私たちの食生活を支えている、欠くことのできない、いわば社会資本としての大切な役割を果たしています。
 ところで、都内における卸売市場の中には、いわば全国の建て値市場として価格形成に大きな影響力を持つ市場が存在する一方、地域の小売商や量販店等を通じて地元住民の生活を支えている地域密着型の市場が存在するなど、さまざまな特性を持つ市場があり、それぞれの市場において、市場を構成するさまざまな関係者の皆さんが頑張っておられるご様子を私もかねがね伺っております。
 さて、国は、ことし六月に改正した卸売市場法の改正内容を踏まえ、既に第八次卸売市場整備基本方針を示し、来年三月を目途に整備計画を策定するようですが、都においても、第八次卸売市場整備計画の策定作業に入ったと聞いております。
 そこで、卸売市場整備計画について何点か質問いたします。
 都が第八次卸売市場整備計画を策定するに当たっては、最近における卸売市場をめぐる状況の変化に対する対応や国の整備基本方針等を織り込んで、時代の要請に合致した計画とすることが必要だと思います。
 そこで、都における卸売市場整備計画の現在の検討状況はどのようになっているのか、検討内容とスケジュールについて伺います。
 
 ▼中央卸売市場長
 都の第八次整備計画では、食の安全・安心を初めとする消費者のニーズに的確に対応できるようにするとともに、卸売市場を活力あるものとするため、市場の品質管理の高度化及び環境対策、市場業者の経営基盤の強化、市場の効率的な整備運営及び再編統合などへの取り組みを定めていく必要があります。
 現在、整備基本方針の策定について東京都卸売市場審議会に諮問をしており、審議会のもとに計画部会を設置して、専門的にご検討いただいているところであります。平成十七年四月に基本方針の答申をいただくことになっており、その方針に基づき、十月を目途に整備計画を策定していく予定でございます。
 
 ▼吉野委員
 今ご答弁をいただきまして、幾つか注目すべき検討課題というものが示されました。その中で、品質管理の高度化について伺いたいと思います。
 食品は直接消費者が口にするものであり、特に最近は、食肉の偽装表示、鳥インフルエンザ等、国内外でさまざまな食品事故や事件が発生しており、消費者は食品の安全性について今まで以上に敏感になっております。しかし、素人が鮮度や品質を確認しようとしても、なかなか正確には判断できません。だからこそ、流通過程における衛生対策や品質管理は大変重要であると考えます。
 そこで、品質管理の高度化を図るため、都としてどのように取り組んでいくのかについて伺います。
 
 ▼中央卸売市場長
 第八次整備計画におきましては、品質管理の高度化を図るため、使用施設ごとに品質管理の責任者を設置し、施設の温度管理や清潔、衛生保持を市場業者に義務づけるなど、品質管理の方法を具体的に定めます。また、施設整備面では、国の示すHACCP的な考え方を踏まえて、引き続き、各市場に低温卸売場や低温倉庫などの施設整備を進めてまいりたいと考えております。
 また、食品の安全や信頼にかかわる事故が生じた場合には、既に各市場に設置している安全品質管理者を活用し、販売自粛など、迅速な対応を図ってまいります。
 
 ▼吉野委員
 さて、朝の卸売市場を訪ねてみますと、荷物が卸売場からトラックや荷さばき所、仲卸売場などへと搬送され、活気が感じられます。やはり市場はこれでなくてはと思ったりしております。
 しかし、場内搬送車両が吐き出す排気ガスが大変気になります。ここで働く従業員の健康管理や周辺環境への影響はもちろん、生鮮食料品の品質管理の面から見ると、市場の場内搬送車両については、排気ガスを減少する方向で検討する必要があると考えますが、お伺いいたします。
 
 ▼中央卸売市場長
 場内搬送車からの排気ガスにより悪化しています市場内の大気環境を改善するため、都では、電動化推進に向けた基本方針を定め、計画的に取り組んでいるところであります。
 本年十月からは、これまでの補助制度による誘導策に加え、より一層の電動化を推進するため、冷蔵庫や低温倉庫等をクリーンゾーンと指定し、その中では電動車利用の徹底を図っているところであります。
 今後、このクリーンゾーンの指定範囲をさらに拡大するとともに、第八次整備計画において、電動化に必要な充電設備を計画的に整備することとしてまいります。
 
 ▼吉野委員
 東京都は十一の中央卸売市場を計画的に配置してきたわけであります。これだけの配置があってこそ、町の八百屋さん、魚屋さんの仕入れに対応できているといえます。しかし、消費の質的な変化、輸送条件の変化などにより流通構造の多元化が進み、市場経由率は低下していると聞いており、現在の卸売市場の配置については、再検討すべき時期に来たと考えます。
 国の整備基本方針でも、卸売市場がこれまで以上に安全・安心で効率的なシステムとなるよう、生鮮食料品等の流通の実態に即して卸売市場の再編について配慮する必要があるとしております。そこで、国の再編整備の考え方について伺います。
 
 ▼中央卸売市場長
 国の卸売市場整備方針では、再編整備の指標として、取扱数量の最低基準や、一般会計からの繰入金が三年連続して総務省が定める基準を超えているかなどの四つの指標を定め、このうち三つ以上の指標に該当する場合には、地方卸売市場への転換、他の卸売市場との統合、市場の廃止、その他、市場流通の効率化などの五つの措置のうちいずれかに早期に取り組むこととしています。
 また、三つ以上の指標に該当しない中央卸売市場であっても、市場機能の強化を図る観点から、必要に応じてこれらの措置に取り組むことが望ましいとしております。
 
 ▼吉野委員
 生鮮食料品の卸売市場経由率は低下傾向にあり、市場関係業者からも、経営状況が厳しい市場があると聞いています。国の示した基準に照らした場合、都の市場の該当状況と今後の都の取り組みの考え方についてお伺いします。
 
 ▼中央卸売市場長
 都の中央卸売市場では、国の整備基本方針で示した再編整備の四つの指標のうち、三つ以上に該当する市場はありませんが、一つまたは二つの指標に該当する市場はございます。
 こうした市場については、生鮮食料品の効率的な流通と安定的な供給を確保し、市場機能の強化を図る観点から、国が示した必要な措置に取り組むことを検討することも必要であるかと考えております。
 
 ▼吉野委員
 多摩地域には唯一の中央卸売市場である多摩ニュータウン市場が存在しますが、もともと多摩地域においては、地方卸売市場が中心となって生鮮食料品流通を担ってきた歴史があり、その中で多摩ニュータウン市場は、開設以来、取扱数量が低迷しております。今回の第八次整備計画において、多摩地域の卸売市場の整備について今後どのように対応するつもりなのか、伺います。
 
 ▼中央卸売市場長
 多摩ニュータウン市場は、取扱目標数量が一日当たり七百二十トンに対しまして、開設以来、百トン未満で推移しているなど、集荷力と販売力が弱く、中央卸売市場として十分に機能していける状況にはございません。
 多摩地域においては、これまで、集荷力や販売力のある地方卸売市場が生鮮食料品流通の大部分を担ってきた実態がございます。また、今回国が発表いたしました卸売市場整備基本方針によれば、市場流通量の見通しなどから、中央卸売市場の新設は行わないということが示されております。このため、今後、多摩地域の生鮮食料品の安定供給を図るためには、地方卸売市場を中心に流通機能の強化を図ることが重要であります。
 今回の第八次整備計画の策定に当たりましては、こうした状況を踏まえ、多摩ニュータウン市場のあり方や、地方卸売市場の機能強化について検討していく必要があるものと考えております。
 
 ▼吉野委員
 多摩ニュータウン市場の現状については、運営上かなり厳しい状況であると私も認識をしております。多摩地域の生鮮食料品流通においては、卸売市場が重要な機能を有しており、多摩地域における生鮮食料品の安定的な供給を図るために、地方卸売市場の機能強化など、しっかりと対応していただきたいと思います。
 そういう意味で、第八次整備計画の策定に当たっては、卸売市場の機能強化等を図るために、品質管理の高度化や環境対策、地方卸売市場の強化策等を積極的に推進していただきたいことを申し述べておきます。
 
▲ページのトップへ
■臨海副都心の開発
 
 ▼吉野委員
 先日の分科会において、臨海副都心の開発については、平成十五年度の決算に関連し、いろいろと議論のあったところですが、開発に着手して既に十数年が経過しております。昭和六十二年に策定された臨海副都心開発基本構想を初めとして、昭和六十三年に臨海副都心開発基本計画、平成元年に臨海副都心開発事業化計画と、事業実施に向けて具体的な計画を策定し、これまで開発を進めてきました。現在、平成九年に策定した臨海副都心まちづくり推進計画に基づき、開発も既に二期目の大詰めに入っています。
 その間、社会経済の状況も大きく変化しました。開発初期のころはバブル景気の真っただ中で、社会全体が行け行けの雰囲気でありました。だれもが臨海副都心に大きな夢を描き、その成功を疑いませんでした。しかし、開発の途中でバブルがはじけ、社会全体が重苦しい閉塞感に包まれ、この臨海副都心も開発自体が危ぶまれた時期もありました。まさに臨海副都心は、時代の大きなうねりに翻弄され続けてきたといっても過言ではないと思います。
 先日、港湾局長は、臨海副都心を人間に例え、現在、立派な青年期を迎えたといっていました。そういう意味では、まさに苦難の少年期を力強く生き抜き、今まさに雄々しい青年に成長したといえるのではないでしょうか。実際、臨海副都心に行ってみますと、東西、中央にプロムナードが広々としており、その緑豊かな中にさまざまな建物が建ち、台場地区や有明南地区も年々にぎわいを増してきており、よくこの時代背景の中、またこの短期間にここまで発展してきたものだと感動すら覚えます。
 そこで、改めて、平成十五年度の決算の状況を踏まえて、臨海副都心の現在の整備、開発の進捗状況について伺います。
 
 ▼港湾局長
 臨海副都心では、共同溝や地域内道路を初めとした地域内都市基盤についてはほぼ整備が完了しており、また、広域幹線道路や「ゆりかもめ」などの広域交通基盤については、ほぼ七割の整備が終了しております。全体としては約八割の整備が終了しておりまして、臨海副都心まちづくり推進計画に基づき、ほぼ計画どおりに整備が進捗していると認識しております。
 また、こうした都市基盤の整備と相まって、土地の処分につきましては、平成十五年度に計画を前倒しで処分することができ、既に八割の土地が有効に活用されております。臨海副都心の開発は順調に進められていると認識しております。
 
 ▼吉野委員
 確かに、都市基盤整備も計画どおりに進み、土地も八割が有効に活用されていることを考えれば、順調に開発が進められていると実感します。
 しかしながら、平成十五年度決算で報告されたとおり、臨海副都心の土地の処分収入は予算を大きく上回るなど、前倒しで土地処分が進められてはいますが、一方で、経常利益は平成十四年度の額を下回っています。これは、土地の売却価格は駅からの近接性、容積率等を考慮して区画ごとに決定していますが、土地の処分原価は臨海副都心内ですべての区画を一律に計算しているため、売る土地により利益の幅が異なっており、たまたま平成十五年度は利益の幅の少ない土地が売れたためと考えられます。ということは、これから処分する土地の中には利益の幅の多い土地があるということであります。
 ここで一つ気になるのは、利益の幅が多いということは、当然土地の価格が高いということになります。他の土地に比べて便利だとはいえ、土地価格が高ければ、なかなか処分することも難しくなると思いますが、どのように処分を進めていくのか、伺います。
 
 ▼港湾局長
 確かに、一般的に申せば、価格が高くなれば売りづらい、そういう側面はございます。しかしながら、社会経済状況も上向き傾向にございまして、その影響もあると思うんですが、今年度も引き続き、土地の引き合いもかなりございます。これらを一つでも成約に結びつけられるよう、鋭意営業活動を進めているところでございます。
 現在都内では、汐留、六本木、品川など、大規模な都市開発が進められております。臨海副都心もそうした地域との競争にさらされておりますが、他の開発地域にはない水辺環境のよさを初めとして、今後国際化される羽田空港、霞が関や大手町への近接性等の魅力を最大限に生かしまして、青海、有明等、それぞれの地区の特性に合致するような企業等に照準を絞りまして、これまで以上に精力的に誘致をしてまいりたいと思っております。
 
 ▼吉野委員
 今後とも臨海副都心の開発を計画どおりに進めるためには、当然、土地の処分を順調に進めていくことが大前提であります。引き続き頑張ってもらいたいと思います。
 ところで、先ほどから話しておりますように、平成十五年度は土地の処分が順調に進み、収入も予想を超えて入ってきているわけであり、これはこれで明るい材料ではありますが、ここでもう一つ気になることは、大量の起債の償還が目前に迫っていることであります。
 そこで、今後償還しなければいけない起債の合計金額は幾らでしょうか。また、今後の償還の計画はどうなっているのか、伺います。
 
 ▼港湾局長
 現在の起債残高でございますが、合計で約五千二百億円でございます。このうち、平成二十二年までに、五割強の約二千九百億円の起債を償還する計画になっております。最終的には平成二十九年度に償還が完了いたします。
 
 ▼吉野委員
 今答弁のありました約五千二百億円もの額の起債を償還するのは並大抵のことではないと思います。しかも、平成二十二年度までに半分以上の金額を償還しなければいけないとなると、これは一港湾局の問題ではなく、都全体の問題として考えなければいけないと思います。我々都議会も、臨海副都心の開発については最大限の協力をこれまでにしてきたところであります。
 しかしながら、先ほどから臨海副都心を人間に例えておりますが、立派な青年になったのに、こんなに借金を残して、一体いつまで親のすねをかじっているのかと怒りたくもなってまいります。そこで、これだけの借金を返すめどは立っているのか、伺います。
 
 ▼港湾局長
 臨海副都心は、先生お話しのように、これまでも時代のうねりに翻弄されてまいりましたが、その都度、都議会の皆様のご協力もいただきながら、何とか困難を乗り切ってきたところでございます。
 先ほども申し上げましたが、平成十五年度は土地処分が前倒しで進み、また、今年度に入りましてもかなりの土地の引き合いがございます。今後着実に土地の処分を進めることにより、計画どおりに起債の償還をすることは可能であると考えております。
 今後一層気を引き締めて、精力的に、土地の売却、貸し付け等によりまして収入の確保に努め、今後の起債の償還を確実に進めていきたいと考えております。
 
 ▼吉野委員
 引き続き、土地の売却等を進めて、確実に起債の償還を進めていただきたい。
 こうして考えますと、何とか順調にここまで来た臨海副都心の開発ではありますが、これからまだまだもう一頑張りも、もう二頑張りもしなければいけないと実感します。その意味では、臨海副都心の開発はこれからがまさに正念場だと思いますが、最後に、開発にかける意気込みを聞かせていただきたいと思います。
 
 ▼港湾局長
 臨海副都心の開発につきましては、先生ご指摘のとおりに、今後、大量の起債の償還等、まだまだ財政的には厳しい局面を迎えることも事実でございます。しかしながら、平成十七年度には、「ゆりかもめ」の豊洲延伸、また晴海通りの延伸等、交通基盤の整備が大きく進む予定でございます。また、政府の月例経済報告や日銀短観等を見ておりますと、社会経済の状況も底を打ち、確実に上向いてきていると感じているところでございます。こうした臨海副都心を取り巻く明るい環境の変化を最大限に活用しまして、臨海副都心の開発を前進させたいと考えております。
 今後も一つ一つハードルを乗り越えまして、臨海副都心を、都民の方々により身近なまち、また夢のあるまちに大きく成長させていきたいと考えております。引き続き、都議会の皆様のご理解とご支援をお願いしたいと思っております。
 
 ▼吉野委員
 今、最後に局長の決意をお聞きしまして、我々も身が引き締まる思いがします。臨海副都心の開発をぜひとも成功させ、東京だけにとどまることなく、日本全体を元気にする先駆けとなってもらいたいと思います。
 今後とも、港湾局長を先頭に頑張ってもらうことを期待いたしまして、質問を終わらせていただきます。
 
▲ページのトップへ

戻る
ユーザーレビュー