平成15年度公営企業会計決算特別委員会 総括質疑

古賀 俊昭(自民党)
■病院会計の一般会計繰入金
 
 ▼古賀委員
 最近、病院に行きますと、都立病院に限らず、患者さんを呼ぶときは何々様ということで、様づけで呼んでくれます。これは公立病院、民間病院を問わず、それだけ公の病院だけではなくて、すべての医療環境の中で意識改革が進んでいる一つのあかしであろうというふうに思うわけです。
 平成十五年度の都立病院会計を見ますと、総費用が一千五百億円を超えております。そのうち、一般会計からの繰入金が四百億円をこれまた超えておりますので、病院会計の実態は、約三分の一は他会計にお世話にならなければ運営できないという実態にあるわけです。都立病院のさまざまな経営診断の指標を見ますと、医療水準や医療体制は非常にいいということであると出てはいますけれども、経営の面では相変わらず課題が多いということが結論として私はいえるということをまず申し上げておきたいというふうに思うわけです。
 この他会計からの繰入金、一般会計繰入金について絞ってお尋ねをいたします。
 私はこれを、行政医療を都民に向けて提供していくために、全く無用だということをいっているわけではないわけです。その必要性に異論はありません。地方公営企業法では、第十七条の二において、第一号として「その性質上当該地方公営企業の経営に伴う収入をもつて充てることが適当でない経費」、それから第二号として「当該地方公営企業の性質上能率的な経営を行なつてもなおその経営に伴う収入のみをもつて充てることが客観的に困難であると認められる経費」については、一般会計が負担をしてもいいということを認めているわけです。
 しかし、都立病院では今日まで、従前、一般会計から必要な経費を補助金として一括して繰り入れてまいりました。自治体病院は公共性と経済性をともに発揮をしながら、住民の健康の増進と福祉の向上に寄与することが使命であるということは、だれしも異論がないところです。しかし、近年では、高齢化社会の展開、それから疾病構造の変化、医療技術が格段に高度化してきた、また、医療分野が専門化した、こういったことから、量的な拡大から質の向上へと大きな変化が今顕著なわけです。
 一方、医療費を抑制するため、平成十四年度と平成十六年度と連続して診療報酬の減額改定が行われました。そういった病院経営をめぐる環境は、現在、順風とはいえない状況にあるわけです。都立病院は、医療の質を高めながら経営改善を進めるという、一見相反する二律背反的な問題を同時に克服しなければならないという宿命を持っています。
 都立病院改革を着実に推進していくためには、今後とも自律的な病院経営の確立、それから責任の確立、明確化、こういったことが不可欠であります。そのために行政的医療に係る一般会計繰入金の負担区分の明確化を図るべきであるということを、私は公営企業の平成七年度の決算のときに、それから厚生委員会でもこれをたびたび指摘してまいりました。
 そこで、病院経営本部、前は衛生局が都立病院を所管していましたけれども、健康局になって、病院経営本部というのが組織されて独立したわけです。経営本部ですから、経営ということを一つうたっているということをまず念頭に置いておかなければなりません。
 この本部は、都立病院改革マスタープランの中で財政基準の見直しを掲げ、都立病院改革プログラムにおきまして、見直しの予定を、工程を示しています。平成十五年度から、今回決算審査を行っているこの会計年度から、一般会計繰入金については、負担金と補助金を明確にするために経理区分の変更が行われました。先ほど私申し上げましたけれども、地方公営企業法で定められているとおり、行政の立場で担わなければならない医療課題について、一般会計と企業会計との間で負担区分を明確化することは、自律的な病院経営を進める上で非常にこれは大切な前提となるものでありますので、病院経営本部が平成十五年度にようやくその第一歩を区分をして踏み出したということは、そのことについては少しだけほめておきたいというふうに思います。
 今回の見直しでは、負担金と補助金の見直しに加えて、負担金の一部を医業収益に計上しているわけでありますけれども、その考え方は何に基づくのか説明してください。
 
 ▼病院経営本部長
 一般会計繰入金につきましては、先生ご指摘のとおり、これまで一括して補助金として経理をしてまいりました。平成十五年度からは、地方公営企業の経営に伴う収入をもって充てることが適当ではない救急医療や感染症医療に関する経費などにつきましては、法の趣旨に基づきまして、一般会計負担金として医業収益に計上することといたしました。
 また、高度医療経費、特殊医療経費などにつきましては、当面、従来どおり一般会計の補助金として医業外収益に計上しているものでございます。
 
 ▼古賀委員
 少しだけ改善をされたんですよね。ですから、これから病院の経営改善を進めていくためには、病院の主たる医療活動による収益であります医業収益及びその医業活動を行うために必要な医業費用、さらに、これを用いた医業収支比率による経営分析が病院経営の改善を図っていく上で非常に重要であるということも私主張してまいりました。
 病院の健康診断を行うに当たって大切な指標というのは約百ぐらい、もっとあるかもわかりませんけれども、あるんですけれども、その中の医業収支比率というのは非常に大事な指標なんですね。ほかの指標を取り上げる時間もちょっときょうはありませんので、この医業収支比率についてお尋ねいたしますけれども、病院の主たる経営活動の結果を示す指標として、経営構造の弾力性がこれでわかるわけでありますので、この比率が低いと経営構造が硬直化しているということを意味するわけです。つまり、入ってくるお金と、それから出ていく医業費用の割合を示すわけですので、入ってくるお金が少なくて、かかるお金が、費用がたくさんかかれば、経営状態が非常に悪い、財政が硬直化しているということになるわけで、これは最も重要な指標の一つなんですね。
 そこでお尋ねをいたしますけれども、一般会計からの繰入金の経理区分を変更したこの当該年度、平成十五年度における都立病院の医業収支比率、それからもう一つ指標を取り上げたいと思いますけれども、医業収益に対する職員給与費の比率はどのように変化をしたのか、変わったのかお答えください。
 
 ▼病院経営本部長
 その前に、先ほど私、お答えが不十分な点がございましたので、ちょっと補足をさせていただきますが、先ほど先生ご指摘のありました経理区分の変更によりまして、病院本来の医業における収入と費用の対比が明確になりまして、都立病院の経営改善に向けた取り組みが進めやすくなったというふうに考えております。
 また、ただいまご質問のございました医業収支比率とそれから医業収益に対する給与費の比率についてでございます。
 まず、医業収支比率についてでございますが、平成十三年度、十四年度、ともに七〇・一%であったところ、十五年度は八二・六%となっております。
 また、医業収益に対する給与費の比率についてでございますが、十三年度は七三・三%、十四年度は七四・五%と推移をしてまいりましたが、十五年度は六二・六%に低下をしております。
 
 ▼古賀委員
 十三年度、十四年度、ともに七〇・一%の医業収支比率が、十五年度は八二・六%に改善をされたということですけれども、これは一〇〇を超えることが理想なんですね。まだまだ課題が大きい。
 職員の給与費の比率も、六二・六%、十五年度。これは大体五割程度が基準だといわれていますので、まだ手綱を緩める段階では全くないということです。
 先ほど申し上げた地方公営企業法の第十七条の二の二号、経費については、いまだに繰入金の大半が負担金ではなくて補助金のままというふうになっています。一般会計の補助金とされている高度医療とか特殊医療についても、さらに精査する必要があります。今後、繰り入れの基準を明確化した上で、一般会計が税金で当然見なければならない部分については、負担金として医業収益に計上することが理想的な姿であるわけです。それがまだできていない。繰入基準の明確化は、今後健全な病院経営を促す意味でも極めて重要でありますので、今後さらに取り組みを怠らないでもらいたいと思います。
 都立病院の経営力の強化に向けて、病院経営本部が目指す繰入区分の見直しの方向、今後どのように改善に向けて一層取り組むのかお答えください。
 
 ▼病院経営本部長
 繰入ルールにつきましては、今後、新しい病院情報システムを活用いたしまして、一般会計繰入金の積算基準の精緻化を図ることによりまして、繰入ルールの見直しを進めてまいる所存でございます。
 このことによりまして、地方公営企業法に規定をいたします一般会計負担部分と、企業の経済性を最大限に発揮すべき独立採算部門とをより明確に区分して、各病院の経営状況や課題を一層正確に把握し、経営責任の明確化と自律的経営の強化を図ってまいる所存でございます。
 
 ▼古賀委員
 都立病院の現在の健康診断をして、どの程度の健康状態かというのを知る上で二つの指標を今示しましたけれども、今、公立病院は大体全国に千七あるというふうに公営企業年鑑では出ております。この中で、今例えば東京都の大久保病院、これは平成十年度でないと比較できないものですから、十五年度ではありませんけれども、医業収支比率は、全国千七の病院の中で大久保病院は九百八十五番目、ほとんどドンケツ。それから、豊島病院についても九百二十二番目。そのほかの都立病院も大体だんごになって、この辺でうごめいています。
 それから、医業収益に対する職員給与費の比率についても、例えば大塚病院は七百九十七番目、それから広尾病院が七百三十七番目。平成七年度のやはり順位を出したものを私、資料で前に用意してもらったんですけれども、当時と比べてほとんど変わっていないんですよ。だから、この七、八年、この順位はほとんど入れかわりなし、大体同じ位置に都立病院は低迷というか、金メダルにほど遠いところで、経営状態については、さきに申し上げましたように医療水準や医療体制はいいけれども、事経営の面になると、まだまだ課題は残っているという状態にあるということを、皆さん、ひとつ忘れないでいただきたいというふうに思うわけです。全国の公立病院のランクで何番目というのが今出るんですから、これで自分の健康状態をよく調べてもらいたいと思います。
 新聞記事ですが、これも皆さんごらんになったと思いますけれども、これから病院会計も企業並みにしていくということで、厚生労働省が全病院に共通する新しい会計基準を示して、今年度から、平成十六年度から、官民を問わず、自分の病院の健康状態がわかるように、病院経営の効率化を図るためにこういった指標が今新たに定められました。ぜひこれを活用して病院の経営改善に取り組んでいただきたいというふうに思います。
 それから、公立病院の経営比較診断というものも旧自治省が開発したものがありまして、こういうものを今まで使って病院の経営について見ていけば、自分の病院がどの位置にいるのかということもわかるわけですので、過去の指標、それからこれから新しく定められた会計基準等を参考にしながら、一層改革に取り組んでいただきたいと思います。
 
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